説明

医薬分析の装置および方法

医薬品または医薬類似品からの、活性剤(複数)の放出を分析するための、装置および方法が提供される。該装置および方法は、剤形に加えられる力を含めた胃腸管および口腔内の状態をより正確に模擬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品および医薬類似品の分析に関する。より詳細には、本発明は、医薬品および医薬類似品中の活性剤の放出を分析および/または予測するための装置およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
現行の溶解デバイスは、バスケット式、パドル式、および往復シリンダー式流水デバイス(USP IV)を含む。例えば、現行のパドル式の溶解デバイスは、容器の内容物を混合するインペラを備える、底面が丸みを帯びたガラス容器を有する。装置はまた、選択された時間間隔で容器内の水溶液から試料を採取するために、容器内へと挿入される自動サンプラ軸を有する。分析される錠剤が、容器内に投入され、容器の底部へと落下し、溶解実行中はそこに着座する。バスケットおよび往復シリンダー式の溶解デバイスは、同様に、錠剤が容器内にある間にデバイス内の溶液の混合を行う。
【0003】
こうした現行の溶解デバイスは、薬物放出速度の品質管理のために設計された。現行の溶解デバイスには、たとえば胃および/または腸など胃腸(GI)管内で剤形が遭遇する状態を、十分に再現することができないという欠点がある。こうした現行のデバイスはいずれも、消化状態、および胃腸管に沿ったぜん動作用により剤形に加えられる力を、模擬または考慮しない。
【0004】
図1に示すように、胃腸管内には、口腔内のそしゃく、消化筋収縮、物質移動、圧迫、ぜん動、およびその他の力に加えて、食物および液体が存在する。これらすべての状態が、薬物放出速度において、特に放出制御または徐放製品の場合に、重要な役割を果たす。これらの機械的な破壊力は、明らかに存在し、剤形が胃腸管内を移動するとき剤形に加えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、医薬品および医薬類似品からの活性医薬成分(API)または活性剤の放出を分析および予測するための、装置およびプロセスが必要とされている。さらに、胃腸管内の状態をより十分に再現または模擬する、そのような装置およびプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1の目的は、医薬品または医薬類似品からの活性剤の放出を分析および/または予測するための、より正確なプロセスおよび装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、胃腸管内にみられる状態をより十分に再現または模擬する、かかるプロセスおよび装置を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、口腔内にみられる状態をより十分に再現または模擬する、かかるプロセスを提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、活性剤(複数)の放出の、そのような分析および/または予測をより効率的に実行する、そのようなプロセスおよび装置を提供することである。
【0010】
本発明のこれらおよびその他の目的および利点は、剤形に力を加えることによって胃腸管内の状態をより正確に模擬する、医薬品または医薬類似品からの活性剤(複数)の放出を分析するための装置によって提供される。剤形に加えられる力または圧迫力の頻度、持続時間、および大きさは、制御することができ、好ましくは変えることができる。これは好ましくは、プログラム可能論理コンピュータ(PLC)によって行われる。分析デバイスは、好ましくは、既存のデバイスに胃腸管および口腔内の状態をより正確に模擬させるために、かかる現行の溶解デバイスに組み込むことができる。
【0011】
本発明のその他およびさらなる目的、利点、および特徴は、以下を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ヒトの上方胃腸管の一部を示す概略図である。
【図2】インペラおよびサンプラを含まない状態での本発明の分析デバイスを示す平面図である。
【図3】加力システムが作動される状態の、図2のデバイスを示す斜視図である。
【図4】図3のデバイスの一部を示す斜視図である。
【図5】図2のデバイスをインペラおよびサンプラと共に示す斜視図である。
【図6】臨床薬物動態結果の解析と比較した現行のUSP2溶解装置の時間に対する2層マトリックス錠剤の溶解結果(「元の溶解」)を示し、2つの製剤は、この場合はHPMCであった、持続放出層内の速度制御ポリマーの量が異なる。2層錠剤は、HPMCを含まない即時放出(IR)層、およびHPMCを含む持続放出(SR)層を含む。
【図7】図6の2層マトリックス錠剤の臨床薬物動態結果の解析と比較した本発明の時間に対する溶解結果(「ぜん動溶解」)を示す。
【図8】臨床薬物動態結果の解析と比較した現行のUSP2溶解装置の時間に対する別の持続放出剤形の溶解結果(「元の溶解」)を示す。
【図9】図8の剤形の臨床薬物動態結果の解析と比較した本発明の時間に対する溶解結果(「ぜん動溶解」)を示す。
【図10】本発明に記載の加力システムの別の実施態様の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面、特に図1を参照すると、ヒトの胃腸管に沿って移動する医薬品または剤形10が、胃腸管内に存在する食物および液体を含む様々な発生源からの力、そしゃくおよび他の「口腔効果」、消化筋収縮、物質移動、圧迫、ぜん動、およびその他の力を受ける。こうした力は、剤形10に作用し、剤形の活性剤(複数)の放出に影響を及ぼす。以下の開示は、医薬品または医薬類似品を剤形10として記載するが、本発明は、例えば、錠剤、カプセル、カプレット、チューインガム、ロゼンジ、トローチ、またはその他の剤形など、放出される活性剤(複数)を有するいかなるタイプの医薬品または医薬類似品の分析も意図することを理解されたい。
【0014】
図2から図5を参照すると、本発明の製剤分析装置またはデバイスの好ましい実施形態が図示され、参照番号100によって全体的に示される。デバイス100は、ハウジング150、頂部160、インペラ200、サンプラ250、接続または取付けプレート275、および加力システム300を有する。
【0015】
ハウジング150は、例えば、水溶液など、ヒトの胃腸管または口腔内の媒体を模擬する溶液を保持する。ハウジング150は、透明の、底部が丸みを帯びた容器である。ただし、本発明は、分析デバイス100の使用、および/または胃腸管または口腔の状態のより正確な模擬を容易にする、その他の材料およびその他の形状をハウジング150に用いることを企図する。
【0016】
インペラ200は、活性剤を溶液中に分配するために、また胃腸管または口腔の状態をさらに模擬するために、水溶液に運動を与える。本発明は、溶液中の活性剤の分配を促進し、かつ/または胃腸管または口腔内の状態をより正確に模擬することができる、インペラ200の様々な形状およびサイズ、ならびにインペラの様々な方向の運動(たとえば回転および/または軸方向)を用いることを企図する。本発明はまた、活性剤を溶液中に分配するための、また胃腸管または口腔内の媒体、溶液、および/または剤形の運動を模擬するための、たとえば円筒形容器内の往復シリンダーなどその他のデバイスの使用を企図する。
【0017】
サンプラ250は、剤形10によって放出された活性剤の量を決定するために、水溶液の試料を獲得する。好ましくは、サンプラ250は、試料を選択的に獲得し、それを処理し、かつ/またはそれを分析することができる、例えば、制御処理ユニットまたはPLC(図示せず)など制御装置に、動作可能に接続される。溶液の試料のそのような分析は、UV分析およびHCPLを含むがそれに限定されない。ただし、本発明は、溶液の試料の、様々な分析技術の使用を企図する。
【0018】
加力システム300は、接続プレート275を用いて、分析デバイス100のハウジング150、特に頂部160に取り付けられまたは接続される。接続プレート275によって、加力システム300を現行の溶解デバイスと組み込むことが可能になる。ただし、本発明は、加力システム300をハウジング150または現行の溶解デバイスに取り付けまたは接続させる、その他の構造または方法の使用を企図する。接続プレート275は、加力システム300を、接続プレートの下方で溶液中に位置決めすることを可能にする、いくつかの支持部280を有する。
【0019】
本発明はまた、溶液中の加力システム300の位置を選択的に変えることができるように、支持部280を調整可能にすることも企図する。本発明は、加力システム300をハウジング150内の選択された位置に位置決めするための、その他の構造および方法の使用をさらに企図する。
【0020】
加力システム300は、剤形ハウジング310および力付与機構320を有する。図示の実施形態では、剤形ハウジング310は、チャンバの底部に沿ってメッシュスクリーン340を有する、円筒形チャンバ330である。円筒形チャンバ330は、チャンバ内への、またチャンバを通る水溶液の流れを可能にする、いくつかの側部スロット335を有する。メッシュスクリーン340は、チャンバ330の床部であり、その上に剤形10が着座する。二層錠剤を分析するときなど、剤形10の特定の向きが望まれる場合、剤形を定位置に挟むために、2つのメッシュスクリーン340を使用することができる。
【0021】
図示の実施形態では、力付与機構320は、ピストン350である。ピストン350は、チャンバ330内への水溶液の流れを可能にする、ピストンを貫通して形成された多数の穴355を有する。ピストン350は、本実施形態では空気圧シリンダーである動力源(図示せず)によって作動させることができる、駆動軸360に連結される。ただし、本発明は、例えば、機械式カムまたは電気ソレノイド、または親ネジを有する電気モーターなど、その他の動力源の使用を企図する。力付与機構の使用に適当な別のデバイスは、その関連コントローラーを一緒に有する音声コイルアクチュエータである。剤形に接触するまでプランジャーを下降運動させ、次いで、停止させ、所定の力を加えるように制御しうるので、音声コイルアクチュエータが特に好ましい。この方法では、剤形は、実験中膨張するか、腐食するか、または方向を変えるので、プランジャーは、確実に同一の所定の力を加えうる。
【0022】
別の実施形態(図示せず)では、ピストン350を利用する加力システム300は、成形面または電解研磨されたステンレス製スチールまたは剤形10を接触させる別の適当な材料を有しうる。
【0023】
別の実施形態(図示せず)では、加力システム300は、接触媒体を有する。接触媒体は、加力システム300上に位置決めまたは配置され、そこで剤形10に力がかけられる。例えば、加力システム300がピストン350を用いる場合、接触媒体は、ピストン上に配置することができ、剤形10と接触することになる。接触媒体は、(例えば、加力システム300の天井上などの)ピストン350の下部上の、シリコンパッドとすることができる。接触媒体はまた、(たとえば、加力システム300の天井上などの)ピストン350の下部上の、ワイヤメッシュとすることもできる。
【0024】
接触媒体がワイヤメッシュである場合、溶解方法の要件に応じて、ワイヤメッシュを様々な程度の張力(例えば、非常にきつくまたは非常に緩くなど)で組み付けることができる。緩いワイヤメッシュは、ぜん動収縮を模擬するために、緩やかな力を剤形10に加えるために使用される。様々な太さのワイヤのワイヤメッシュ、および平方インチ当たりの様々な数の開口を、接触媒体に使用することができる。
【0025】
本発明は、例えば、多孔性のFDA認可シリコンパッドなど、接触媒体を取り付けまたは連結することによって修正される、図2から図5の実施形態の実質的に中実のピストン350を企図する。シリコンパッドは、溶解方法に応じて様々な厚さのものとすることができる。シリコンパッドの使用は、胃腸軟組織壁の環境を模倣または模擬し、胃腸ぜん動収縮を模倣または模擬する。
【0026】
本発明は、その他の材料および/または材料の組合せを、剤形10が胃腸管内で暴露される状態を模擬する接触媒体に使用することを企図する。この代替実施形態は、ピストン350の底部に沿って位置決めされる接触媒体を有するが、本発明は、剤形10が胃腸管内で暴露される状態を模擬する、加力システム300に沿って様々な位置に配置される接触媒体を企図する。
【0027】
図2から図5に示す実施形態に戻ると、動力源が好ましくは、デバイス100を自動化し、分析プロセスの制御を容易にし、剤形10の分析の正確な再現を可能にするように、プログラム可能なタイマまたはPLCに動作可能に接続される。加力システム300は、好ましくは、電解研磨されたステンレス製スチールで製作される。剤形ハウジング310および力付与機構320を、好ましい実施形態においてピストン−シリンダアセンブリとして説明するが、本発明は、力付与機構300が剤形10に力を選択的に加えることを可能にする、その他のアセンブリまたはデバイスを企図する。そのような代替アセンブリまたはデバイスによって、好ましくは、圧迫の、大きさ、持続時間、および頻度の制御が可能になる。さらに、そのような代替アセンブリはまた、胃腸管内の状態を模擬するために、多数の力を、かつ/または角度を変えて、剤形10に加えることも企図する。
【0028】
プログラム可能なタイマまたはPLCは、ピストン350がその下降位置(すなわち圧迫状態)にとどまる時間、圧迫が生じる頻度、および圧迫の大きさを、設定するために使用される。PLCの使用を、加力システム300によってもたらされる調整可能性と組み合わせることによって、分析デバイス100が、剤形10に加えられる力(持続時間、頻度、大きさ)を変えることが可能になる。本発明はまた、剤形が胃腸管に沿って移動するときに曝される状態をより正確に模擬するために、分析の継続時間にわたるこの制御された力の変化を利用することを企図する。
【0029】
円筒形チャンバ330は、好ましくは、約32mmの外径、約24mmの内径、および約26mmの高さを有する。円筒形チャンバ330内の側部スロット335は、好ましくは、高さ約14mm、幅約2.6mmである。メッシュスクリーン340を円筒形チャンバ330内で定位置に保持するために、スクリーン材料をその中に挿入することができるように、幅22mmおよび高さ1.5mmの2つの切込みがチャンバの低部内に存在する。
【0030】
円筒形チャンバ330は、好ましくは、接続プレート275の約8cm下方に配置される。ピストン350は、好ましくは、約23.5mmの外径、および約19mmの高さを有する。ピストン350は、ピストンを軸方向に貫通して穿孔された4つの穴355を有し、好ましくは穴はそれぞれ、底を通る流体の流れを可能にするために、約6.3mmの直径を有する。この実施形態は、胃腸管内の状態を模擬するために、上記の寸法を用いるが、本発明は、分析プロセスの制御を容易にし、剤形10の分析の正確な再現を可能にするために、その他の寸法を用いることを企図する。
【0031】
本発明は、従来のUSP3装置で使用されるものなど、ステンレス製スチールまたは適当なプラスチックなど、メッシュスクリーン340のためのその他の材料の使用を企図する。メッシュスクリーン340のメッシュサイズもまた、特定の剤形10に適当となるように変えることができる。
【0032】
ピストン350の運動をもたらす空気圧シリンダーは、2つの管(図示せず)によってプログラム可能なタイマまたはPLCに接続され、圧縮空気源は、空気圧を調節するために接続された調整器(図示せず)を用いて、プログラム可能なタイマに接続される。調整器は、空気圧の大きさを調整することによって、剤形10にかけられる力を制御するために使用することができる。ピストン350がより低い位置へと移動するとき、ピストンは、剤形10をメッシュスクリーン340に対して圧迫し、機械的応力を剤形10に加え、剤形が受けるin−vivoの力を模擬する。
【0033】
本発明のさらなる実施態様では、口腔内に保持され、活性成分を口腔に放出する薬用チューイングガムなどの剤形はまた、そしゃくの頻度および強度を模倣しうる溶解方法論を必要としうる。
【0034】
図10にて説明される、加力システム400において、シリコーンピストンキャップ420を有する、ピストン400は、図2のチャンバ330と同様である、小孔のある、ケージ類似の剤形チャンバ430中にて垂直に往復可能かつ回転可能である。チャンバは、ワイヤーメッシュスクリーン440およびスクリーンリテーナー450と一緒に提供され、ロッド470の1つである、一組のロッドにより固定プラットフォーム460から支持されている。他の支持ロッドは切断面の前面にあるので、示されていない。
【0035】
ピストン410を、ピストンロッド480のネジ下端上に通し、ネジクランプ490により固定する。ロッド480は、プラットフォーム460中のガイドブッシング500を通って伸長し、該ロッドは、垂直に往復可能かつ回転可能であり、軸継ぎ手510によって、モーター530の軸520と連結している。モーターは、適当な内部還元伝動装置を有する電気モーター、空気圧もしくは油圧操作の回転式アクチュエータ、または回転ロッド480によってピストン420に予測可能、好ましくは制御可能な回転を加えるのに適当なモーターのその他の形態でありうる。
【0036】
モーター530は、可動プラットフォーム540上に装備され、モーター軸520が伸長する穴を有する。プラットフォーム540は、一組のガイドロッド550における垂直往復運度を誘導し、プラットフォーム460に固定され、可動プラットフォーム中に装備されたブッシング560を通って伸長する。所望により、1つまたは複数の付加的なガイドロッドが提供されうる。
【0037】
ガイドロッド550はまた、示される内部ピストン580を有する空気圧式または油圧式アクチュエータでありうる、線形アクチュエータ570を支持する。あるいは、アクチュエータ570は、親ネジを有する電気モーター、または予測可能、好ましくは制御可能な力を加えることができる線形アクチュエータのその他の適当な形態でありうる。アクチュエータ軸590は、ファスナー600によって可動プラットフォーム540に連結されている。
【0038】
作動中、アクチュエータ570は、プラットフォーム540の垂直往復をもたらすことができ、順に、反対方向のロッド480を通ってピストン410の直線的往復を誘導する。同時にまたは代わりに、モーター530は、往復の方向と平行な軸の周りのピストンを回転させるように操作されうる。すなわち、ピストンは、そしゃくを模擬するために同時に回転および往復しうるか、あるいは、ピストンを一定の高さに置いている間にそれは回転しうる。
【0039】
加力システム400は、上記の加力システム300のものと同一の機能を果たしうる。すなわち、ピストン410を直線運動させることによって、システムは、患者の胃腸管内の状態を模擬しうる。しかしながら、さらに、加力システムは、患者の口腔内の状態を模擬するために、同時の直線運動の有無に関わらず、ピストンに回転を加えうる。したがって、図10の装置は、胃腸管内の経口剤形の溶解の研究だけではなく、そしゃくのプロセスでの剤形の溶解の研究もまた可能にする。
【0040】
ピストンの直線運動の数および速度、ピストンの回転の数および速度、往復運動および回転の反復速度を含む、装置の作動の状態は全て、当該分野にて周知の制御システムによって電子的に制御されうる。制御はフィードフォワードモードで作動しうるけれども、フィードバックは、歪みゲージまたは他の適当な測定デバイスをロッド480に組み込むことによって導入されうる。
【0041】
典型的な作動モードでは、ピストンがその最下位置に移動しながら、半回転、フル回転またはそれ以上回転するであろうことを企図する。該機能は、ピストンが剤形に対する破砕ならびに圧迫作用を模擬できるようにする。該モードは、チューイングガム処方の口腔内状態を模擬するために利用されうる。
【0042】
図10のデュアルモード装置に種々の修正が行われうる。例えば、ピストンの回転機能は、ピストンをピストンロッド上で回転させることによって達成されうるが、一方、ピストンおよびハウジングに関連する協調予測およびらせん状カム溝は、ハウジングの底面に接近するように所定数で自動的にピストンを回転させる。あるいは、圧迫の間にピストン回転をもたらすであろう他の機構は、当業者によって設計されうる。
【0043】
デバイス100は、その設定およびサイズにおいて柔軟である。加力システムに使用される材料は、製剤溶解分析において一般に使用される様々な表面活性剤を用いて、かつ/または用いずに、酸または塩基pHへの長期暴露に耐えることができるものである。ただし、いくつかの材料が、上記のプロセスに正しく適合しないことが見出されてきた。これらの目的に不適切であることが見出されている材料は、未処理のステンレス製スチール、薄く被覆されたPTFEステンレス製スチール、および硬質陽極酸化されたステンレス製スチールである。かかる材料は、酸性pHの溶解溶媒を使用した場合、一連の実験後に腐食した。上記装置において使用可能であることが見出されたかかる材料は、電解研磨されたステンレス製スチールであった。
【0044】
デバイス100の全体の寸法は、容器またはハウジング150のサイズ、インペラ200のサイズ、インペラ軸のサイズおよび位置、サンプラ管250のサイズ、および使用される何らかのフィルタによってある程度決定される。チャンバ330または430およびピストン350または410の最大直径は、好ましくは、ハウジング150内に嵌まるが、ハウジングの側部、インペラ200、およびサンプラ250に接触しないサイズとなる。好ましくは、チャンバの最大直径およびピストンの外径は、分析される製剤が到達する最大サイズと同じだけ大きくなる。ただし、この最大サイズは、胃内滞留のための大きな膨潤形状を考慮する場合、かなり大きくなる可能性がある。拡張する胃内滞留性剤形を評価する場合、メッシュスクリーン340または440は、幽門括約筋と同様のサイズの、固定されまたは変調された開口を有する、じょうごと同様の形状の構成要素に置き換えることができる。製剤がチャンバ内に保持される時間を記録することによって、剤形の胃排出がin vivoでいつ生じるかを予測することができる。
【0045】
デバイス100の構成要素が、USP2パドル式溶解装置に組み込まれる場合、デバイスは、従来のUSP2装置のすべての利点を利用することができ、かつ、剤形が暴露されることになるin vivoの力を模擬するために物理的な力を剤形に定期的に加えることができるピストン式のデバイス(加力システム300または400)内に、剤形10を保持することができるという利点を追加することができる。この分析から利益をより多く受ける剤形の目標タイプは、大部分が、放出制御または徐放製品である。ただし、本発明は、即時放出剤形を含めて、すべてのタイプの医薬品への、この装置および方法の使用を企図する。
【0046】
本明細書に記載する装置および方法を、ヒトの胃腸管および口腔内の状態を模擬することに関して議論してきたことを理解されたい。しかし本発明は、応用可能な場合は、本装置および方法を、その他の胃腸管および口腔を模擬するために使用することを企図する。
【0047】
別の代替実施形態(図示せず)では、加力システム300は、剤形10を保持するための袋または小袋を有する。好ましくは、袋は、ワイヤメッシュクロスで製作される。ワイヤメッシュクロスは、好ましくは、織物であり、適当な開口サイズを有する適切なゲージのワイヤを使用する。袋は、好ましくはハウジング150に動作可能に連結されるピストンに当接し、または近接する。剤形10は、袋内に配置され、ワイヤメッシュの袋の締付け運動によって剤形10に緩やかな力が加えられるように、ピストンによって袋が締付けられる。加力システム300によって剤形10に力を加えるための、この代替構造および方法は、胃腸管のぜん動収縮を模擬または模倣する。
【0048】
回転ならびに往復可能である、加力システム400に同様の修正が行われうる。
【0049】
図6および図7を参照すると、現行のパドル式のUSP2溶解デバイスと比較して分析デバイス100の精度が改善されていることを示す、二層マトリックス錠剤の溶解を予想するためのグラフによる比較が提供される。図6の現行のUSP2溶解装置の溶解(「元の溶解」)、および図7のデバイス100の溶解(「ぜん動溶解」)を、二層マトリックス錠剤の臨床薬物動態結果の解析と比較して示す。
【0050】
図7に示す結果では、デバイス100の加力システム300は、3秒の圧迫時間および6秒の間圧迫時間を用いた(すなわち「3、6」)。力は3バールの空気圧を用いて加えられた。デバイス100の精度は、例えば、1時間以降に生じる放出など、特により長い時間にわたり明らかである。本発明の装置および方法は、活性剤(複数)の放出、および特に持続的な放出の、より正確な予測をもたらす。放出性能の予測におけるそのような精度および信頼性は、本発明の装置および方法によって分析される場合、特定の医薬品に必要とされる治験の回数を低減することを可能にすることができる。
【0051】
図8および図9を参照すると、ここでも同様に、現行のパドル式のUSP2溶解デバイスと比較して分析デバイス100の精度が改善されていることを示すが、別のタイプの剤形の溶解を予想するための、グラフによる比較が提供される。図8の現行のUSP2溶解装置の溶解(「元の溶解」)、および図9のデバイス100の溶解(「ぜん動性溶解」)を、剤形の臨床薬物動態結果の解析と比較して示す。
【0052】
デバイス100を、単一の分析ユニットとして示した。ただし、本発明は、剤形10の分析に使用することができるいくつかのデバイス100の使用を意図する。そのような一代替実施形態には、加力システム300をそれぞれ有する6つのデバイス100があり、それらは互いに共通のプレート、ラック、またはその他の構造によって連結される。そのような構成によって、溶解実行の開始時に加力システム300が共にそれらの別々の溶解溶媒内(それらの別々のハウジング150内)へと降ろされる、複数の剤形10の同時分析が可能になる。またこの代替実施形態によって、プロセスをより効率的にするために協調的な制御を用いることが可能なる。
【0053】
本発明を、1つまたは複数の実施形態を参照しながら説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、その要素を代替物で置換することができることを、当業者は理解するであろう。さらに、多くの修正形態は、特定の状況または材料を本開示の範囲から逸脱することなくその教示に適合させるように製作することができる。したがって、本開示は、企図される最良のモードとして開示した特定の(1つまたは複数の)実施形態に限定されず、本開示は、本明細書および添付の特許請求の範囲内に記載されたようなすべての実施形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃腸管内の剤形からの活性剤の放出を分析するための溶解デバイスであって、
開端部を有し、媒体を収容する容器;および
チャンバおよび力付与機構を有する加力システムを含み、該チャンバが剤形を支持し該媒体と流体連絡し、該力付与機構が、胃腸管内の状態を模擬するために剤形に圧迫を加えるところの、デバイス。
【請求項2】
該加力システムが、該開端部に連結され、それによって該媒体内に配置する、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
チャンバがシリンダーであり、力付与機構がピストンを備え、該ピストンが動力源に動作可能に連結される、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
該加力システムが、剤形と力付与機構との間に配置されたパッドを有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
パッドがシリコーンである、請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
剤形に加えられる圧迫の頻度、持続時間、または大きさのうちの少なくとも1つを制御するために、ピストンに動作可能に連結される制御装置をさらに備える、請求項3記載のデバイス。
【請求項7】
溶媒を循環させるインペラをさらに備える、請求項3記載のデバイス。
【請求項8】
分析のために溶媒の試料を獲得するサンプラをさらに備える、請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
シリンダーが、該シリンダー内およびそこを通って溶媒が流れるようにする1つまたは複数のスロットを有する、請求項3記載のデバイス。
【請求項10】
シリンダーが、該シリンダーの底部に沿ってメッシュスクリーンを有する、請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
シリンダーが、該シリンダーの底部に沿った第1のメッシュスクリーンと、該第1のメッシュスクリーンの上方にあり剤形を定位置で挟む第2のメッシュスクリーンとを有する、請求項3記載のデバイス。
【請求項12】
加力システムが、少なくとも部分的に、電解研磨されたステンレス製スチールで製作される、請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
胃腸管内での剤形からの活性剤放出を分析する方法であって、
剤形を溶媒中に配置すること;
溶媒を循環させること;
胃腸管内の状態を模擬するために剤形に圧迫を加えること;および
剤形からの活性剤の放出を表す第1のデータを収集することを含む、方法。
【請求項14】
剤形に加えられる圧迫の頻度を制御することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
剤形に加えられる圧迫の持続時間を制御することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
剤形に加えられる圧迫の大きさを制御することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
剤形が、剤形に圧迫を加えるために締付けられる袋内に配置される、請求項13記載の方法。
【請求項18】
剤形のインビボでの胃排出時間を表す第2のデータを収集することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
第2のデータは、幽門括約筋と同様のサイズの固定されたまたは変調された開口を有するチャンバ内に剤形が保持される、時間を監視することによって収集される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
経口剤形からの活性剤の放出を分析するための溶解デバイスであって、
流体媒体を含有する容器;および
剤形を支持するチャンバを含み、容器中にて前記媒体と一緒に流体連結のための少なくとも1つの通路を有するチャンバであって、剤形を圧迫するための、チャンバ内の可動ピストンも含む加力システムを含むデバイス。
【請求項21】
ピストンが、その中の剤形に対し反対方向および離れた反対方向のチャンバ中にて往復可能である、請求項20記載の溶解デバイス。
【請求項22】
ピストンがまた、該方向と平行な軸の周りをチャンバ中にて回転可能である、請求項21記載の溶解デバイス。
【請求項23】
ピストンが、同時に、反対方向に往復し、該軸の周りを回転しうる、請求項22記載の溶解デバイス。
【請求項24】
該ピストンを往復させるための第1アクチュエータ、および該ピストンを回転させるための第2アクチュエータを含む、請求項22記載の溶解デバイス。
【請求項25】
剤形からの活性剤の放出を分析する方法であって、
剤形を流体媒体中に配置すること;
媒体を循環させること;
圧迫ピストンにより剤形に圧迫を加えながら、剤形に対する破砕作用をもたらすためにピストンを回転させること;および
剤形からの活性剤の放出を表すデータを回収することを含む、方法。
【請求項26】
口腔中の剤形からの活性剤の放出を分析するための溶解デバイスであって、
開端部を有し、媒体を含有する容器;
チャンバおよび力付与機構を有する加力システムを含み、該チャンバが剤形を支持し該媒体と流体連結し、該力付与機構が、口腔内の破砕ならび圧迫状態を模擬するために回転させながら剤形に圧迫を加えるところの、デバイス。
【請求項27】
圧迫力の速度および強度が変化する、請求項26記載のデバイス。
【請求項28】
破砕力の速度および強度が変化する、請求項26記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−526147(P2010−526147A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507533(P2010−507533)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/062153
【国際公開番号】WO2008/137504
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】