説明

医薬的および診断的使用のための組み換えフオーミーウイルスベクター、および組み換えフオーミーウイルスベクターの作製方法

【課題】 治療的およびその他の遺伝子の真核細胞中への安全かつ効果的な導入を可能にするフォーミーウイルスベクター系を得る。
【解決手段】 フォーミーウイルス種由来の核酸および外因性核酸の、遺伝子工学を用いる試験管内組み換えによって作出され、そして適切な宿主細胞もしくは組み換え的に改変されたパッケージング(ゲノム詰め込み)細胞系によって作出される新規なベクター系を得た。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、フォーミーウイルス種由来の核酸および外因性核酸の、遺伝子工学を用いる試験管内組み換えによって作出され、そして適切な宿主細胞もしくは組み換え的に改変されたパッケージング(ゲノム詰め込み)細胞系によって産生される新規なベクター系の作製に関する。特に好適なパッケージング細胞系の組み換え的作製は、同様に本発明の構成をなす。本発明は、フォーミーウイルスベクターによる、治療的およびその他の遺伝子の真核細胞中への安全かつ効果的な伝達を特徴とする。
【0002】
フォーミーウイルスベクターは、著しく広範なスペクトルの真核細胞にわたり:それらは非常に幅広い種の哺乳動物細胞を変換する;それらは、特に、ヒトにおける多くの異なる体細胞中に遺伝子を導入するために使用することができる。
【0003】
フォーミーウイルスベクターは、外因性DNA断片に対して大きな受容能を有することを特徴とする。
【0004】
フォーミーウイルベクター中の外因性DNAの発現は、例えば、もし外因性のプロモーターが、そのベクター中に用いられない場合には、ウイルスのトランスアクチベーターbel−1によって、厳格に調節することができる。
【0005】
フォーミーウイルスから誘導されるフォーミーウイルスベクターは、ヒトには病原性はなく、それゆえに使用上安全である。ヒトのフォーミーウイルスが人間に対して病理学的作用を引き起こすという証拠はない。ヒトのフォーミーウイルスが、神経学的疾病、グレーヴス病、その他の自己免疫症状、カーベーンの甲状腺炎もしくは筋委縮性側索硬化症に関与していることを推論するこれまでの報告は、現在では、そのような臨床例のおけるフォーミーウイルスに関する徹底的解析を基に、明白に否定することができる。フォーミーウイルスの使用に関する安全性は、また、フォーミーウイルスベクターと細胞DNAの相同組み換えを起こし得る相同なDNA配列が、ヒト染色体DNAには存在しないという事実に由来する。フォーミーウイルスは、他のレトロウイルスとは系統発生的に区別されるものである。
【0006】
フォーミーウイルス、およびそれからのベクターは、発癌性をもたないことが知られている。
【0007】
中でも、複製能のあるフォーミーウイルスベクターは、ウイルス遺伝子bel−2およびbel−3を欠失させることによって作製される。
【0008】
例えば、フォーミーウイルスベクターpFOV−1、pFOV−2およびpFOV−3は、通常、bel−1遺伝子に隣接する3’方向に約420塩基対の欠失を有する。
【0009】
さらに、遺伝子工学によって同様に作製されるパッケージング細胞系において生産することができるところの、例えば、pFOV−4のような複製不能のフォーミーウイルスベクターが作製された。
【0010】
フォーミーウイルスベクターは、治療学的に活性なタンパク質もしくはアンチセンスRNAもしくはデコイ(decoy)RNAを形成するために、ヒトもしくは動物細胞において外因性DNAを発現させるのに適している。フォーミーウイルスベクターは、体液性免疫および/または細胞性免疫をつくるために、ヒトもしくは動物において外因性DNAを発現させるのに適している。
【0011】
そのベクターの外因性核酸を選択することにより、フォーミーウイルスベクターは、相同組み換えによって、ヒトもしくは動物における標的細胞の染色体DNAにおける望ましくない遺伝子を不活化するために、または遺伝子欠損を相補するために適切に使用することができる。
【0012】
標的組織のレポーター遺伝子の発現を調節することによって、またはその他の遺伝子構築によって、フォーミーウイルスベクターは、診断薬として使用するために適切である。
【0013】
ヒトフォーミーウイルス(HFV)は、レトロウイルスのスプーマウイルス・ファミリーに属している。レトロウイルスのスプーマウイルスファミリーは、他のレトロウイルスとは明らかに異なる[R.M. Fuegel et al., EMBO J. 6, 2077-2084 (1987); B. Maurer etal., J. Virol, 62, 1590-1597 (1988); A. Rethwilm et al., Nucleic AcidSRes. 18, 733-738 (1990) ]。
【0014】
HFV分離株が、これまでヒトにおいて病原性が見出されていないことは、本発明のために特に重要なことである。さらにまた、HFVは、ヒト組織に各種型の多重性を導入するので、ベクターは、“遺伝子送達系”として開発されたものであって、それは感染性分子クローンpHSRV[A. Rethwilm et al., Nucleic Acid Research 18, 733-738 1990)]から得られ、そして本発明の主題である。“遺伝子送達”のためのベクターとしてのその使用において、フォーミーウイルスは新規である。
【0015】
HFVベクターは、例えば、MoMLV(モロニー・マウス白血症ウイルス)、それからは広く普及されたN2ベクター[A.D. Miller et al., Biotechniques 7, 980-990 (1989)]が得られるが、HFVはいかなる発癌性ももたず、HFVベクターは使用上安全であると考えられる点で、そのような他のレトロウイルスベクターとは根本的に異なる。そのうえ、フォーミーウイルスは、繊維芽様細胞、上皮様細胞およびリンパ細胞を含む非常に広範な宿主スペクトルに感染する。さらに、もしフォーミーウイルスのLTR(ロング・ターミナル・リピート)が転写活性をもつならば、ウイルスのトランスアクチベーターbel−1の存在が、命令となるという事実のゆえに、HFV誘導体は安全なベクターを代表するものとなる。しかしながら、もしそのベクターが、bel−1トランスアクチベーターに関する遺伝情報を有していなければ、移動可能な複製能のある、例えば発癌性をもつHFVベクターは、LTR塩基配列が、トランスアクチベーターbel−1遺伝子なしでは転写を活性化しないので、その細胞内に産生することはできない。挿入変異誘発による細胞のがん遺伝子の活性化は、同様にありそうにもない。ベクターとしてHFV誘導体を使用することについて、さらに安全なファクターは、フォーミーウイルスの内因的相同性が知られておらず、それゆえ、内因性レトロウイルスとのいかなる組み換えの問題も起き得ないことである。この考察は、また、使用にさいしてフォーミーウイルスベクターの遺伝的安定性を特に高度にするためにも重要である。
【0016】
例えば、以下に示すpFOV−1ないしpFOV−4に関する構築実施例において記載するように、組み換えフォーミーウイルスは、遺伝子材料を、永久的な動物もしくはヒトの細胞系に、またはヒトもしくは動物の体細胞に伝達するために好適である。それらは、代々遺伝する情報を真核細胞中に導入するためのベクターを表していて、可能な応用範囲、標的細胞への遺伝子導入の効率性および操作上の安全性において、通常の遺伝子伝達系(MoMLV、アデノ随伴ウイルスもしくはシンビスウイルス、またはアデノウイルス粒子、界面活性剤およびその他の添加剤、または物理的方法を用いるDNAの形成)よりも優位性をもっている。
【0017】
したがって、実施例実験において述べられる、そしてbel−1もしくはbel−2遺伝子の領域に、外因性核酸を挿入するための多重クローニング配列を有しているフォーミーウイルスベクターは、以下に述べる目的のために使用することができる。しかしながら、多重クローニング配列を挿入し、それによって別のフォーミーウイルスベクターを構築するために、pHFVのプロウイルスDNAもしくはその他のフォーミーウイルス分離株において他の欠失をつくることもまた可能である。
【0018】
そのような組み換えフォーミーウイルスベクターは、長さで1700塩基対を容易に越えるところの外因性核酸(DNA断片)を受け入れることができるので、そのようなフォーミーウイルスベクターは、可能な多数の応用のための発現可能な外因性DNAを、生産目的のための細胞系に、または医薬的もしくは診断的目的のための体細胞に導入され得る:
【0019】
I. 予防接種のためのフォーミーウイルスベクター
組み換えフォーミーウイルスベクター中の外因性核酸は、1種もしくはそれ以上のポリペプチドを発現するために1種もしくはそれ以上の完全な遺伝子を含有することができる。そのようなペプチドは、ヒトもしくは動物において液性および/または細胞性免疫を引き出すために、好適であり、導入された標的細胞中のこのフォーミーウイルスベクターによってそれらの発現を継続して起こすことができる。細胞内で形成されたペプチドは、特殊なポリペプチドであり、細胞性免疫を引き出すために重要なものであることが、既に分かっている(J.B. Ulmer et al., Science 259, 1745-1749 (1993))。
【0020】
外因性核酸を運び、そして導入された標的体細胞において、HIV,HTLV,B型肝炎,C型肝炎,ヒトパピローマウイルス、シトメガロウイルス、HSVもしくはインフルエンザウイルス、または、例えば、PRV,BHVもしくはEHVのような動物ヘルペスウイルス等のウイルスタンパク質を発現するフォーミーウイルスベクターは、予防的に、または病原性ウイルスによるヒトもしくは動物の継続する感染の治療手段として使用される強力なワクチンを代表するものである。
【0021】
さらにまた、フォーミーウイルスベクターは、バクテリア感染に対して、マイコプラズマ感染に対して、またはプラズモジウムもしくは他の内部寄生虫による感染に対して、同じ原理による予防接種のために使用することができる。そのような予防接種のためには、複製不能であるが、感染性のフォーミーウイルスベクター粒子、バッファー溶液ml当たり10〜10タイターもしくはそれ以上の粒子が、生体内での細胞導入のために皮下もしくは筋肉内に注射される。さもなくば、繊維芽細胞、筋芽細胞もしくはその他の体細胞が、そのような細胞とフォーミーウイルスを産生している細胞とを混合培養することによって、または目的の体細胞を、ml当たり10〜10タイターのフォーミーウイルスベクターもしくはそれ以上の粒子を含有するバッファー水懸濁液とともに培養することによって、生体外で導入される。
【0022】
II. 特にウイルス性疾患およびがん性疾患の治療に関して、治療用RNAを発現するためのフォーミーウイルスベクター
組み換えフォーミーウイルスベクターにおける外因性核酸は、標的細胞で望ましくないRNA分子の配列と相補的な(アンチセンス)ヌクレオチド塩基配列を保持するか、またはほかにヌクレアーゼ活性のあるリボザイムRNAを保持するRNAを、導入細胞中で発現する1個ないしそれ以上の遺伝子を包含している。
【0023】
これらの望ましくないRNA分子は、レンチウイルスもしくはその他のRNAウイルスのゲノムRNAであり得る。それらはまた、レンチウイルス(中でも、HIV、HTLV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、シトメガロウイルス、エプスタイン・バールウイルス、単純ヘルペスウイルス、動物のヘルペスウイルス(例えばPRV,BHVおよびEHV)、またはその他の病原ウイルスもしくはマイコプラズマ、または細胞内で複製する原核生物、のような細胞内病原体のメッセンジャーRNA分子でもあり得る。
【0024】
しかしながら、望ましくないRNA分子は、また、体細胞の悪性増殖の原因となるがん遺伝子もしくはその他の遺伝子のmRNA転写物でもあり得る。したがって、c−mycRNA転写物に対するアンチセンスRNAを発現するフォーミーウイルスベクターは、例えば、バーキットリンパ腫のような悪性障害の場合に使用されるであろう。望ましくないRNA分子はまた、自己免疫障害もしくは代謝障害の遺伝もしくは発現に、原因として関与しているタンパク質をコードしていることもある。組み換えフォーミーウイルスベクターによってコードされ得る相補的アンチセンスRNAを用いて、そのような望ましくないRNA分子は、導入細胞において、ワトソン−クリック塩基対による配列選択的方法で不活化することができる。フォーミーウイルスベクターは、それゆえ、感染されたもしくは病理学的に変性した細胞において、アンチセンスRNA発現を用いて、細菌、ウイルスおよびその他の生物による感染病、およびがん性もしくは自己免疫疾患の治療のために使用することができる。
【0025】
フォーミーウイルスベクターを用いて発現されたアンチセンスRNAもしくはリボザイムRNAはまた、代謝障害もしくは神経変性障害に関与しているその他の遺伝子に対しても使用することができる。したがって、フォーミーウイルスベクターによって発現されたアンチセンスRNAもしくはリボザイムRNAを用いて、アルツハイマーβ−アミロイドタンパク質前駆体もしくは神経組織のアセチルコリンエステラーゼをコードしているmRNAを不活化することは、また治療上価値をもつものである。
【0026】
アンチセンスRNAをコードしている外因性核酸の代わりに、デコイRNAをコードする外因性核酸が、治療的に使用される組み換えフォーミーウイルスベクター中に挿入されることもある。
【0027】
デコイRNAは、強力な抗ウイルス作用を示すことができ、例えば、ウイルス感染の治療のために使用される。
【0028】
この目的のために、そのデコイRNAは、病原ウイルスの複製に不可欠なウイルスタンパク質を、それらの部分に対して、結合する特殊なヌクレオチド塩基配列を有する。したがって、デコイRNA配列は、例えば、TARヌクレオチド塩基配列およびHIV由来のREV応答要素ヌクレオチド塩基配列(RRE)の多重コピーを含有し、HIVのtatおよびrev調節タンパク質と拮抗的に結合し、それによって感染細胞中でのHIVの複製速度を低下させる。これは、治療的抗ウイルス作用を表している。
【0029】
しかしながら、そのデコイRNAはまた、HIVに関して記載したようにレンチウイルス由来のパッケージング配列を、例えば、5’−LTRおよびgag配列中への伸長との間のゲノムRNA中に含有している。
【0030】
目的の体細胞中への治療的核酸の送達のためにフォーミーウイルスベクターを用いることは、生体外もしくは生体内フォーミーウイルスの応用に関して2種の異なる方法が、適用できる、一般に:
導入されるべき細胞を含む体細胞のあるサンプルの生体外導入のためには、これらの細胞は、適切な細胞培養培地中で、一定培養時間、フォーミーウイルスベクター産生細胞系とともに混合培養される。通常、生体外導入に対する培養時間は、4〜36時間である。混合培養の条件は、標的細胞の効率的導入を許し、また導入される体細胞に再注射するかまたは再注入するために、培養後、標的細胞とフォーミーウイルスベクター産生細胞系の分別ができるように選択される。臨床適用のための体細胞の生体外導入の技術は、レトロウイルス遺伝子伝達の場合に、十分確立されている。科学文献に詳細に報告されているそのような技術は、また、フォーミーウイルスベクターによる細胞の形質導入にも応用することができる(概観のために以下を参照、Richard C. Mulligan:“遺伝子治療の基礎科学”,Science. Vol. 260, 926-932,1993; W. Frech Anderson:“ヒトの遺伝子治療”, Science、 Vol. 256, 808-813, 1992; A.Dusty Miller:“ヒトの遺伝子治療の到来”, Nature, Vol. 357, 455-460, 1992)。
【0031】
フォーミーウイルスベクターを用いる体細胞の生体内導入のために、ml当たり10〜10もしくはそれ以上のフォーミーウイルスベクター粒子を含むバッファー水懸濁液が、導入されるべき標的細胞を有する組織に注射される。容量1μl〜1mlもしくはそれ以上の懸濁液からなるフォーミーウイルスベクターが、生体内で種々の組織に注射することができる。中でも、それは、骨髄、肝臓、血液、リンパ節、骨格筋、皮膚表皮組織、皮膚繊維芽組織、脳、胸腺、もしくはその他の器官である。生体内導入は、ペースト剤もしくはクリーム剤の製剤を含有するフォーミーウイルスベクターの局所投与のような非侵入性フォーミーウイルスベクターによって、または吸入用の、エアゾル、泡沫もしくは粉末製剤によって実施されてもよい。
【0032】
生体外および生体内適用に対するフォーミーウイルスベクターの産出のために、これらのベクター粒子のいわゆる偽性タイプが使用できることも、また述べる必要がある。偽性フォーミーウイルスベクターは、遺伝的に改変されたパッケージング細胞系によるか、あるいは水泡性口内炎ウイルスに似たウイルスまたはエンベロープ糖タンパク質様タンパク質を発現している複製不能HIVもしくはその他のウイルスによって意図的に感染された生産細胞系を用いることによって、産生される。これらの外来のウイルスタンパク質は、そのベクターの異種構成分をもつエンベロープを形成するように、フォーミーウイルスベクタータンパク質コート中に取り入れられる。そのような偽性タイプベクターは、ある種の応用に対して優位性を発揮する。それらは、パッケージング細胞の上澄液中のフォーミーウイルスベクター粒子濃度を増加させるために使用できる。それらは、またフォーミーウイルスベクター粒子の宿主範囲を拡大するためにも使用できる。特に、HIVエンベロープタンパク質を保持する偽性フォーミーウイルスベクターは、そのベクターをCD4受容体を発現する標的細胞に特異的に指向させるために、興味が深い。同様に、異種エンベロープタンパク質によって、例えば、標的とするICAM−1発現細胞に対する肝炎ウイルスタンパク質もしくはライノウイルスタンパク質を用いる肝細胞類似の他の細胞に、優先的に向けられた偽性フォーミーウイルスベクターは、興味が深い。
【0033】
この優位性に加えて、偽性フォーミーウイルスベクター中のHIVエンベロープタンパク質類似の異種タンパク質は、望ましい免疫応答を発揮する。
【0034】
III. ウイルス性、がん性および自己免疫性疾患の治療に関する発現ポリペプチドのためのフォーミーウイルスベクター
組み換えフォーミーウイルスベクター中の外因性核酸は、発現ポリペプチドのための1個ないしそれ以上の遺伝子を包含することができる。もしこれらのポリペプチドが、そのベクターを導入された標的細胞中で発現されるならば、それらは、トランスドミナントに負に働き、病原ウイルスの複製速度を減退させ、それ故、抗ウイルス作用を有する調節タンパク質となることができる。トランスドミナントに負に働く調節タンパク質は、例えば、ウイルス粒子の構築を妨害するか、またはHIVの改変されたtatタンパク質もしくはrevタンパク質を表すタンパク質である。
【0035】
これらの改変されたタンパク質は、HIV RNAのTARもしくはRRE配列になお結合するので、それらの生物学的機能、すなわち抗転写終結(tat機能)またはrevのRNAプロセシング機能は、そのタンパク質の非結合部分における変異によってもはや発現されない。
【0036】
ウイルス性疾患に治療効果を有するその他の抗ウイルスポリペプチドは、ウイルス結合部位において病原ウイルスを取り込むための受容体に類似しているものである。ウイルスが細胞の受容体に結合するために重要な病原ウイルスの結合部位に結合するポリペプチドが、フォーミーウイルスベクターを用いて、生物体において発現され、分泌され、その結果、細胞中へのウイルスの取り込みを妨げる。この関係において、HIV gp120への結合によって、HIVによるヒト細胞の新規な感染を防ぐCD4ポリペプチド断片を発現するフォーミーウイルスベクターは、治療上有効なものとなろう。
【0037】
同様にして、組み換えフォーミーウイルスベクターの力を借りて形成されたそのペプチドは、増殖因子受容体の可溶性部分であってもよく、そして悪性の細胞増殖へ導きつつある発現された増殖因子を捕捉することにもなる。これらの意味によって、フォーミーウイルスベクターは、抗腫瘍性を発現することになる。
【0038】
この原理は、また自己免疫病を治療するために使用することもできるであろう。2つの例が、この関連で述べられる:
1. 免疫抑制の目的で、そして臓器移植拒絶を防ぐために、外因性核酸によって標的組織中に分泌される抗インターロイキン2抗体を発現するフォーミーウイルスベクターが、使用される。
【0039】
2. そのフォーミーウイルスベクターは、標的組織に分泌されるポリペプチドを発現し、そのポリペプチドは、アセチルコリン受容体のα−サブユニットのペプチド断片を有し、そして重症性筋無力症にかかっている患者において抗体を結合し、不活化することができる。
【0040】
組み換えフォーミーウイルスベクターを用いて発現されるその他のポリペプチドは、がん免疫療法のために、新生物性に形質転換されるが、化学的もしくは物理的手段によって増殖を妨げられる細胞中の、例えば、インターロイキン2のようなリンホカインであってもよい。この場合には、免疫療法のために使用されるその細胞は、フォーミーウイルスベクターを用いて生体外で導入される。同様に、がんの免疫療法は、実施例IIに概説したようなフォーミーウイルスベクターによる腫瘍細胞の生体内形質導入によって実施することもできる。
【0041】
フォーミーウイルスベクターの仲介により、標的組織での1種以上のインターフェロンの発現は、また抗ウイルス治療および/またはがん治療の手段として考えられる。
【0042】
さらにまた、新生物性に転換された細胞、またはレンチウイルスもしくは肝炎ウイルスに感染した細胞は、標的組織において、そのベクターが毒素もしくは細胞内の病原体によるか、または新生物性に転換された細胞の特別な代謝により細胞毒性のポリペプチドに変換されるその他のポリペプチドを発現させることによって、組み換えフォーミーウイルスベクターを用いて治療的に処置することができる。フォーミーウイルスベクターは、リシンAもしくはジフテリア毒素もしくはスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus) エンテロトキシンBもしくはコリシンE、またはその他の毒素を発現するために構築されてもよい。細胞もしくは器官に特異的なそのような生産物の発現を確実にするために、細胞特異性もしくは器官特異性であるプロモーターの調節下の細胞毒ポリペプチドを形成するフォーミーウイルスベクターが、構築されることもある。
【0043】
フォーミーウイルスベクターによって標的細胞中に内生的に発現され得るその他の治療用タンパク質は、例えば、病原性レンチウイルスもしくは肝炎ウイルスのウイルスプロテアーゼに対するプロテアーゼ阻害剤である。それらはまた、エラスターゼおよび/またはトリプシン、およびその他のプロテアーゼに対するプロテアーゼ阻害剤でもあり、それは、成人呼吸困難症候群および気腫、およびその他の病状を防ぐことになる。それらはまた、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)のようなタンパク質でもよく、それは、フォーミーウイルスベクターを用いてがん治療のために使用される。さらに、腫瘍抑制遺伝子を見落とすことが、フォーミーウイルスベクターの力で発現させることもできる。
【0044】
フォーミーウイルスベクターの重要な応用のさらなる例は、細胞静止性の化学療法剤、又は骨髄を損なうようなその他の薬剤を用いる腫瘍治療の間に、骨髄細胞(骨髄幹細胞、CD34−始原細胞およびその他の造血細胞)を保護する目的で、多剤耐性遺伝子(MDR)を造血細胞に伝達するために、このベクターを使用することである。
【0045】
IV. 細胞染色体DNAとの相同組み換えのためのフォーミーウイルスベクター
望ましくない遺伝子、例えば、レンチウイルスのプロウイルスDNA、増幅されたがん遺伝子、遺伝病を引き起こす遺伝子、およびその他の遺伝子は、望ましくない遺伝子に相同であるDNA配列を有する外因性核酸を保持しているフォーミーウイルスベクターによって不活化することができる。この目的のために、フォーミーウイルスベクターの外因性核酸が、高頻度で、適切な方法で、相同組み換えによる対応する細胞遺伝子の破壊へ導くような方向において選択される。しかしながら、欠陥遺伝子は、フォーミーウイルスベクターの外因性核酸の、完全な遺伝子との組み換えによって、遺伝子座においてこの手段で修正されることもあり得る。
【0046】
V. 遺伝病の体細胞遺伝子療法のためのフォーミーウイルスベクター
例えば、血液凝固因子VIIIもしくはIXにおける欠損、アデノシンデアミナーゼ欠損、ヘモグロビン異常症、嚢胞性繊維症、家族性高ステロール血症、デュシェン・筋ジストロフィー、もしくはその他の遺伝病のような遺伝病は、フォーミーウイルスベクターを用いて、体細胞中へ適切な修正遺伝子を導入することによって治療することができる。
【0047】
VI. 心臓血管疾患治療のためのフォーミーウイルスベクター
組み換えフォーミーウイルスベクターは、その外因性核酸が、血圧調節効果をもつポリペプチドを発現させるための1個以上の遺伝子を保持するように構築され得る。したがって、そのポリペプチドは、例えば、トランスドミナントに負に作用する調節心房性ナトリウム利尿ペプチドであってもよい。それらは、循環するANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)もしくはANF(心房性ナトリウム利尿因子)に結合し、不活化するためのポリペプチドである。これらのポリペプチドは、例えば、抗体類似タンパク質であるか、または、例えば、ANPもしくはANF結合受容体の可溶性受容体誘導体である。それらは、数種の例を挙げると、レニンの阻害剤、またはアンジオテンシン変換酵素の阻害剤であってもよい。
【0048】
フォーミーウイルスベクターにおける外因性核酸の遺伝子は、また、動脈硬化もしくはその他の心臓血管疾患の進展を阻止する生産物をコードすることもできる。これらの生産物は、内皮細胞もしくは平滑筋細胞の増殖を阻止する物質、例を挙げると、c−mybのmRNAもしくはTGF−βのmRNAに対するアンチセンスRNAである。
【0049】
これに関連して、フォーミーウイルスベクターにより生成される治療用生産物は、また、LDL受容体であってもよい。
【0050】
フォーミーウイルスベクターは、例えば、EセレクチンもしくはPセレクチンのような粘着タンパク質に対するアンチセンスRNAもしくはリボザイムRNAを発現するように構築することができる。相補性RNAによって、選択された粘着タンパク質のmRNAの翻訳を阻害するほかに、そのフォーミーウイルスベクターは、また、血液循環中に分泌され、血液細胞間の(例えば、血小板凝集)、または血液細胞と内皮細胞との相互作用を、例えば、EセレクチンもしくはPセレクチンのような粘着タンパク質に選択的に結合することによって阻止するポリペプチドを発現する外因性核酸を保持することもできる。
【0051】
血液中および内皮細胞上での粘着タンパク質の阻止は、血管の病理学的変化および炎症疾患に関しての治療原理として重要である。
【0052】
VII. 診断上の応用のためのフォーミーウイルスベクター
組み換えフォーミーウイルスベクターの外因性核酸は、検出されるべきある物質によって細胞内で活性化され、そしてそのために、特異的に、しかも増幅可能なシグナルを用いて、その物質を高い感度で検出可能にする遺伝子もしくは遺伝子断片を保持することもできる。
【0053】
細胞内のウイルス性もしくは細菌性トランスアクチベータータンパク質を、生検材料、体液、細胞系、生産細胞系もしくはその他の細胞から検出することは、例を挙げて本明細書で述べることができる。トランス活性可能な遺伝子配列を、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼもしくはペルオキシダーゼのような下流のレポーター遺伝子に共役させることによって、感染の存在を確認できるそのようなトランスアクチベータータンパク質が、検査下の細胞内のフォーミーウイルスベクターによって、感度よく検出できる。
【実施例】
【0054】
VIII. 核酸の試験管内組み換えによるフォーミーウイルスベクターの構築
感染性分子クローンpHSRV−2(図1および2)は、pHSRV−1の誘導体である。pHSRV−1は、ヒト・フォーミーウイルスベクターのcDNAクローニングおよび組み込まれていないウイルスDNAのクローニングによって得られた(A. Rethwilm et al., Gene 59, 19-28 (1987), A. Rethwilm etal., Nucleic acids Res. 18, 733-738 (1990))。pHSRV−1においては、約500塩基対が、5’LTRのU3領域から欠失し、約350塩基対が、3’LTRのU3領域から欠失している(A.Rethwilm et al., 未発表)。pHSRV−2においては、500塩基対が、両LTRで欠失している。このことは、pHSRV−1の3’LTRにおけるAflII/XbaI断片を、5’LTRの対応する断片により置換することによって容易になされた。両プラスミドは、感受性細胞へのトランスフェクションの後、感染性ウイルスを誘発する。図3−8に描かれたpFOVベクターを得るために、bel−2/bel−3における欠失が、制限エンドヌクレアーゼAccIおよびHindIIIによって、pHSRV−2の、それぞれヌクレオチド位置10420および10844の間に導入された。EcoRV、SmaIおよびNruIに対する切断部位を有する多重クローニング配列が、pFOV−1におけるこの欠失中に挿入された。pFOV−1において、外来のDNA配列は、C−末端を切り取られたBetタンパク質の融合タンパク質として発現される。pFOV−2においては、内部リボソームランディングパッド(landing pad)が、AccI/HindIII欠失中に挿入された。その上、2個の終止コドンが、bel−2の読み枠中に導入された(G.Baunach et al., J. Virol. 67, 5411-5418,(1993))。pFOV−3、pFOV−5およびpFOV−6は、pFOV−2の誘導体であり、そこには、bel−1読み枠中のスプライス供与部位(pFOV−3)、bel−2読み枠のスプライス受容部位(pFOV−5)、または両方(pFOV−6)が、変異を受けている。pFOV−2,pFOV−3,pFOV−5およびpFOV−6は、これらのベクター中に挿入された外来DNAによってコードされた真のタンパク質を生じる。
【0055】
これらのベクターは、複製能があり、外因性核酸を発現するために(例えば、CAT遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)を発現するために)引き続いて使用された。
【0056】
ベクターpFOV−4(図1,2および6)は、EcoRI(ヌクレオチド位置9529)およびHindIII(ヌクレオチド位置10844)制限部位の間でプロウイルスDNAを欠失させることにより作製された。このフォーミーウイルスベクターは、複製能をもたない。
【0057】
IX. フォーミーウイルスベクターの生産
複製能のあるフォーミーウイルスベクター、例えば、pFOV−1ないしpFOV−3は、細胞系、例えばHEL299(ATCC CCL137)ヒト胎児性肺繊維芽細胞、BHK−21(C−13)(ATCC CCL10)ハムスター腎細胞、CF2TH(ATCC CRL1430)イヌ胸腺細胞系、MRC5(ATCC CCL171)ヒト肺細胞系、CHOチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞系、VERO(ATCC CCL81)アフリカミドリザル腎細胞系、3TS−TK(ATCC CCL92)マウス繊維芽細胞系、およびその他の細胞系、または一次組織培養もしくは感染動物において増殖させられる。感染性フォーミーウイルスベクター粒子を含む細胞培養上澄液もしくは感染動物からの液は、感染させる標的細胞に対して使用できる。
【0058】
複製能をもたないフォーミーウイルスベクターは、組み換え的に改変されたパッケージング細胞系を用いて生産される。その複製能のないフォーミーウイルスベクターは、複製能のあるフォーミーウイルスによって感染されない体細胞において、そのベクターの複製を排除する遺伝子欠失をもっている。bel遺伝子に加えて、これらの遺伝子欠失は、gag遺伝子領域および/またはpol遺伝子領域および/またはenv遺伝子領域を含むことができる。
【0059】
欠失遺伝子のタンパク質は、例えば通常の伝達(例えば、エレクトロポレーションもしくはCaPO沈殿)によってパッケージング細胞系中にトランスフェクションされた1個もしくはそれ以上のフォーミーウイルス遺伝子によって産生される。パッケージング細胞系の特徴は、それが、外因性核酸を包含するベクターのゲノムRNAを、感染性フォーミーウイルス粒子中に詰め込むことを可能とするgag、polおよび/またはenvタンパク質のような1個もしくはそれ以上のフォーミーウイルスタンパク質を発現することである、何故ならば、これらのタンパク質は、パッケージング細胞系においてトランスに供給されるからである。
【0060】
感染性であるが複製能のないフォーミーウイルスベクター粒子は、安全性の理由からこの方法で生産される。パッケージング細胞系は、前記細胞系もしくはその他の適切な細胞系のひとつであり得る。
【0061】
X. 生物学的、薬理学的、および医学的研究に関して特別な生理学的性質を有する組織培養および動物(細胞および動物モデル)を作出するためのフォーミーウイルスベクター
組織培養(生体外)の細胞、または動物における組織細胞(生体内)は、そのベクターを用いて、これらの細胞に特殊な遺伝子の発現を起こさせるために、フォーミーウイルスベクターによって形質導入される。これらの方法によって、特殊な生理学的状態、特殊な代謝効果、または細胞の特殊な生化学的性質が、生体外もしくは生体内で作り出される。この方法で改変されたこれらの細胞は、生理学的、薬理学的、または医学的研究のために大きな価値をもつことができる。例えば、それらは、生体外もしくは生体内で、遺伝子の機能を決定するため、または研究中の活性化合物もしくは薬物の効果を決定するために試験される。さらに、そのような導入細胞(そのベクターによって遺伝的に改変された細胞)は、生体外細胞試験もしくは生体内動物実験によって、薬物としてさらに開発するために適切な活性化合物(化学合成的もしくは生物学的に作製された物質)に関する研究(活性化合物のスクリーニング)において、非常に価値ある助けとなり得る。具体的な例は、遺伝的に改変された細胞中のがん遺伝子のがん遺伝子的能力を研究するため、がん遺伝子依存性の腫瘍発生を研究するため、そして腫瘍発生を阻害するための活性に関して生体内で活性化合物を試験するために、選ばれた動物器官中にc−myc、ras,bcr−abl,もしくはHIV−tatのようながん遺伝子を伝達すべきそのベクターの使用によって提供される。
【0062】
bel−1を発現するパッケージング細胞系は、HIV−LTR−レポーター遺伝子構成物を保持するpFOV−4−ベクターを作製するために使用される。このベクターは、ヒト一次マクロファージ、神経細胞およびその他の体細胞に感染する。そのような導入マクロファージもしくは他の一次細胞は、実施例VIIに概説したように、HIV汚染に関して分析されるべきサンプルとの混合培養によって、感受性のHIV検出ための診断目的に対して使用することができる。何故ならば、狭い宿主領域に限定され、それゆえ、抹消の血液リンパ球サンプルで培養できない臨床関連HIV分離株があるからである。
【0063】
そのようなpVOF−4を導入されたマクロファージもしくはその他の細胞は、また、HIVの阻害物である。さらに、もしpVOF−4のレポーター遺伝子が、ブドウ球菌エンテロトキシンBもしくはリシンAのような潜在的suizide遺伝子、または細胞毒性産物をコードしているその他の遺伝子によって置換されるならば、pVOF−4は、そのような一次体細胞のHIV感染において活性化されるsuizide遺伝子のスクリーニングに使用される。
【0064】
さらに、ヒトの細胞粘着タンパク質(セレクチン)は、フォーミーウイルスベクターを用いて種々の動物の体細胞において発現され、それによって、動物(例えば、マウス)において抗炎症性、セレクチン結合性の、活性化合物のスクリーニングを可能とする。これらには、動物においてヒトのタンパク質を用いて、フォーミーウイルスベクターの力で実現されつつある“分子薬理学”に関する2例の試験モデルがある。
【0065】
本発明の特徴および態様は以下のとおりである。
1. 治療的、免疫的もしくは診断的効果を有する1個ないしそれ以上の遺伝子産物を発現するための外因性核酸を含むフォーミーウイルスベクター。
2. 上記1記載のフォーミーウイルスベクターであって、そのフォーミーウイルスベクターは、外因性核酸を挿入するためのbel−1、bel−2および/またはbel−3遺伝子の領域に欠失を有するヒト・フォーミーウイルス(ヒト・スプーマレトロウイルスHSRV−1もしくはHSRV−2の感染性もしくは非感染性DNA)の誘導体であることを特徴とする。
3. 上記1ないし2記載のフォーミーウイルスベクターであって、その外因性核酸は、液性および/または細胞性免疫化に関するポリペプチドを発現するための1個の完全な遺伝子、または数個の完全な遺伝子を含むことを特徴とする。
4. 上記1ないし2記載のフォーミーウイルスベクターであって、その外因性核酸は、アンチセンスRNA、リボザイムRNAもしくはデコイRNAを発現するための遺伝子を含むことを特徴とする。
5. 上記1ないし2記載のフォーミーウイルスベクターであって、その外因性核酸は、腫瘍形成を阻害するための遺伝子産物を発現することを特徴とする。
6. 上記1ないし2記載のフォーミーウイルスベクターであって、その外因性核酸は、標的生物において遺伝子欠損を償う遺伝子産物を発現することを特徴とする。
7. 自己免疫疾患、心臓血管疾患、腫瘍、ウイルス性疾患もしくは遺伝子欠損を治療するための上記1ないし6記載のフォーミーウイルスベクター。
8. 上記1ないし6記載のフォーミーウイルスベクターであって、それは、診断的使用のための産物を発現する外因性核酸配列を含んでいる。
9. 上記1ないし7記載のフォーミーウイルスベクターを含有する医薬品。
10.上記1ないし9記載のフォーミーウイルスベクターを産生するための、真核生物細胞系もしくは組み換え真核生物細胞系。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】pHFV(ヒト・スプーマレトロウイルスpHSRV−2の感染性プロウイルスDNA)、およびAccIおよびHindIII切断部位(それぞれ、ヌクレオチド位置10420および10844)における欠失によって、それから作出されるフォーミーウイルスベクターpFOV−1、pFOV−2およびpFOV−3のゲノム構造の図式表示。複製不能ベクターpFOV−4は、EcoRI(ヌクレオチド位置9529)およびHindIII(ヌクレオチド位置10844)の間に、より大きい欠失を有する。多重クローニング部位、例えば、ここに示されたEcoRV、SmaIおよびNruI切断部位は、その欠失の場所に挿入された。
【図2】図1と一緒になって、上述のベクターを構成する一方の部分を示す図である。
【図3】フォーミーウイルスベクターpFOV−1の制限酵素切断地図。
【図4】フォーミーウイルスベクターpFOV−2の制限酵素切断地図。
【図5】フォーミーウイルスベクターpFOV−3の制限酵素切断地図。
【図6】フォーミーウイルスベクターpFOV−4の制限酵素切断地図。
【図7】フォーミーウイルスベクターpFOV−5の制限酵素切断地図。
【図8】フォーミーウイルスベクターpFOV−6の制限酵素切断地図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト スプーマレトロウイルスpHSRV−1もしくはpHSRV−2の感染性もしくは非感染性DNAであって、bel−1、bel−2およびbel−3遺伝子の各部位にわたる内部欠失を有するか、またはbel−2およびbel−3遺伝子の各部位にわたる内部欠失を有するがbel−1遺伝子の部位には内部欠失を有さない、ことを特徴とする、pFOV−1、pFOV−2、pFOV−3、pFOV−5およびpFOV−6を除く感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項2】
欠失がbel−2およびbel−3遺伝子の各部位にわたるが、bel−1遺伝子の部位には及ばない、請求項1記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項3】
欠失がbel−1遺伝子に隣接し、かつ、3’方向において420塩基対である請求項2記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項4】
欠失がpHSRV−2の10420〜10844ヌクレオチド位にある請求項3記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項5】
ヒト スプーマレトロウイルスpHSRV−1もしくはpHSRV−2の感染性もしくは非感染性DNAであって、欠失中に外来性の核酸が挿入されており、かつ、該欠失がbel−1、bel−2およびbel−3遺伝子の各部位にわたるか、またはbel−2およびbel−3遺伝子の各部位にわたるがbel−1遺伝子の部位には及ばない、ことを特徴とする、pFOV−1、pFOV−2、pFOV−3、pFOV−5およびpFOV−6を除く感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項6】
欠失がbel−2およびbel−3遺伝子の各部位にわたるが、bel−1遺伝子の部位には及ばない、請求項5記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項7】
外来性の核酸がポリペプチドをコードする完全な遺伝子を少なくとも1つ含んでなる請求項6記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項8】
請求項5記載の感染性もしくは非感染性DNA生産することを特徴とする真核細胞系もしくは組換え真核細胞系。
【請求項9】
請求項5記載の感染性もしくは非感染性DNAでトランスフェクトされ、かつ、該外来性の核酸を発現することを特徴とするヒトもしくは動物の体細胞。
【請求項10】
欠失がbel−1遺伝子に隣接し、かつ、3’方向において420塩基対である請求項6記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項11】
欠失がpHSRV−2の10420〜10844ヌクレオチド位にある請求項10記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項12】
ポリペプチドがヒトの液性もしくは細胞性の抗原である請求項7記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項13】
外来性の核酸がアンチセンスRNA、リボザイムRNAもしくはデコイRNAからなる群より選ばれる請求項7記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項14】
ポリペプチドが腫瘍の形成を阻害できる請求項7記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項15】
ポリペプチドが標的生物体により生産性に欠陥を有するかまたは標的生物体により全く生産されない産物である請求項7記載の感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項16】
ヒト スプーマレトロウイルスpHSRV−1もしくはpHSRV−2の感染性もしくは非感染性DNAであって、欠失中に外来性の核酸が挿入されており、かつ、該欠失がbel−1、bel−2もしくはbel−3遺伝子内に存在する、ことを特徴とする、pFOV−1、pFOV−2、pFOV−3、pFOV−5およびpFOV−6を除く感染性もしくは非感染性DNA。
【請求項17】
請求項16記載の感染性もしくは非感染性DNA生産することを特徴とする真核細胞系もしくは組換え真核細胞系。
【請求項18】
請求項16記載の感染性もしくは非感染性DNAでトランスフェクトされ、かつ、該外来性の核酸を発現することを特徴とするヒトもしくは動物の体細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−82562(P2007−82562A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343352(P2006−343352)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【分割の表示】特願平6−137880の分割
【原出願日】平成6年5月30日(1994.5.30)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen,Germany
【Fターム(参考)】