説明

医薬的に許容できるデュロキセチンの塩及びその中間体の調製方法

DNT−塩基、デュロキセチンアルキルカルバメート、デュロキセチン−塩基及びデュロキセチン塩酸塩を調製するための方法が提供される。また、DNT−塩基、デュロキセチンアルキルカルバメート、及びデュロキセチン−塩基の医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換するための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、デュロキセチン(duloxetine)中間体の調製方法を提供する。本発明はまた、それらのデュロキセチン中間体を、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
デュロキセチン塩酸塩は、神経伝達物質セロトニン及びノルエピネフリンの二重再摂取インヒビターである。それは、緊張性尿失禁(SUI)、鬱病及び痛みの処理のために使用される。デュロキセチン塩酸塩は、次の化学構造:
【0003】
【化1】

【0004】
及び名称(S)−(+)−N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミン塩酸塩を有する。
【0005】
デュロキセチン塩基、及びその調製方法は、アメリカ特許第5,023,269号(US‘269)に開示される。ヨーロッパ特許第457559号、及びアメリカ特許第5,491,243号(US‘243)及び第6,541,668号は、デュロキセチン塩基の調製のための改良された合成路を提供する。US‘269は、N, N−ジメチル−3−(2−チエニル)−3−ヒドロキシプロペンアミンとフルオロナフタレンとの反応(段階a)、続くフェニルクロロホルメート又はトリクロロエチルクロロホルメートにより脱メチル化(段階b)及び塩基性加水分解(段階c)によるデュロキセチン塩基の調製を次のスキームに従って記載する:
【0006】
【化2】

【0007】
デュロキセチン塩基のその塩酸塩への転換は、US‘243及びWheeler, W, J.,など., J. Label. Cpds. Radiopharm, 1995, 36, 312に記載されている。両出版物においては、転換反応は、酢酸エチルにおいて行われ、そしてWheeler, W. J. など. の出版物におけるこの方法についての報告される収率は、45%である。
【0008】
EP‘559は、水酸化ナトリウムによる、N, N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミンオキサレート(DNT−オキサル)の、N, N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミン(DNT−塩基)への転換を開示する。
【0009】
US‘343においては、段階bに記載される工程が55℃でフェニルクロロホルメート/ジイソプロピルエチルアミンシステムにおいて行われ、そして国際特許出願公開番号WO04/056795号においては、この段階は、60℃でクロロエチルクロロホルメートの存在下で行われる。
【0010】
上記特許及び出版物に記載される方法の欠点は、段階cにおいて非常に毒性の物質、例えばフェノール及びトリクロロエタノールの形成をもたらす、段階bへのフェニル及びトリクロロ化されたクロロホルメートの使用である。さらに、それらの方法は、55℃よりも高い温度を必要とする。
【0011】
アメリカ特許第5,023,269号(US‘269)及び第5,362,886号(US‘886)は、プロピレングリコール/水酸化ナトリウムシステム及びジメチルスルホキシド/水酸化ナトリウムシステムがそれぞれ使用される段階cの反応のための工程を開示する。
従って、デュロキセチン中間体の調製のための改良された合成方法、及び究極的には、毒性副生成物の生成を低め、そして収率を高めるデュロキセチンHClへのそれらの転換の必要性が当業界において存在する。本発明は、そのような方法を提供する。
【発明の開示】
【0012】
発明の要約
1つの態様においては、本発明は、DNT−塩基を含む有機溶液を得るために、DNT−オキサル、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を組合すことを含んで成るDNT−塩基の調製方法を提供する。
【0013】
好ましくは、前記DNT−オキサルは(S)−(+)−DNT−オキサルであり、そして前記得られるDNT−塩基は(S)−DNT−塩基である。
本発明はさらに、上記のようなDNT−塩基を調製し;そして前記DNT−塩基を、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法を提供する。
好ましくは、前記DNT−塩基はデュロキセチン塩酸塩に転換される。
【0014】
好ましくは、DNT−塩基は(S)−DNT−塩基であり、そしてデュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
もう1つの態様においては、本発明は、DNT−塩基を、有機溶媒に溶解し;アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を、約5℃〜約80℃の温度で添加し;そしてデュロキセチンアルキルカルバメートを回収することを含んで成る、デュロキセチンアルキルカルバメートの調製方法を提供する。
【0015】
好ましくは、前記DNT−塩基は(S)−DNT−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチンアルキルカルバメートは(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートである。
本発明はさらに、上記のようなデュロキセチンアルキルカルバメートを調製し;そして前記デュロキセチンアルキルカルバメートを、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法を提供する。
【0016】
好ましくは、前記デュロキセチンアルキルカルバメートは、デュロキセチン塩酸塩に転換される。
好ましくは、デュロキセチンアルキルカルボメートは(S)−デュロキセチンアルキルアルバメートであり、そしてデュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
【0017】
もう1つの態様においては、本発明は、DNA−塩基、有機溶媒及びプロトントラップを組合し;アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を添加し;そしてデュロキセチンアルキルカルバメートを回収することを含んで成る、デュロキセチンアルキルカルバメートの調製方法を提供する。
【0018】
好ましくは、前記DNT−塩基は(S)−DNT−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチンアルキルカルバメートは(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートである。
本発明はさらに、上記のようなデュロキセチンアルキルカルバメートを調製し;そして前記デュロキセチンアルキルカルバメートを、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法を提供する。
【0019】
好ましくは、前記デュロキセチンアルキルカルバメートは、デュロキセチン塩酸塩に転換される。
好ましくは、デュロキセチンアルキルカルボメートは(S)−デュロキセチンアルキルアルバメートであり、そしてデュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
【0020】
もう1つの態様においては、本発明は、デュロキセチンアルキルカルバメート、及び脂肪族アルコール、エーテル及び芳香族炭化水素から成る群から選択された有機溶媒と、KOH及びNaOHから成る群から選択された塩基とを組合し;そしてデュロキセチン−塩基を回収することを含んで成る、デュロキセチン−塩基の調製方法を提供する。
好ましくは、前記デュロキセチンアルキルカルバメートは(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートであり、そして前記得られるデュロキセチン−塩基は(S)−デュロキセチン−塩基である。
【0021】
本発明はさらに、上記のようなデュロキセチン−塩基を調製し;そして前記デュロキセチン−塩基を、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法を提供する。
好ましくは、前記デュロキセチン−塩基は、デュロキセチン塩酸塩に転換される。
好ましくは、デュロキセチン−塩基は(S)−デュロキセチン−塩基であり、そしてデュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
【0022】
もう1つの態様においては、本発明は、デュロキセチン−塩基、及び水、芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を組合し;デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;そしてデュロキセチン塩酸塩を回収することを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法を提供する。
好ましくは、デュロキセチン−塩基は(S)−デュロキセチン−塩基であり、そしてデュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
【0023】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)DNT−塩基を含む有機溶液を得るために、DNT−オキサル、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を一緒にし;
b)DNT−塩基を、第2有機溶媒に溶解し;
c)アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を、約5℃〜約80℃の温度で添加し;
d)デュロキセチンアルキルカルバメートを回収し;
e)デュロキセチンアルキルカルバメート、並びに脂肪族アルコール、エーテル及び芳香族炭化水素から成る群から選択された有機溶媒と、アルキル金属とを一緒にし;
f)デュロキセチン−塩基を回収し;
g)デュロキセチン−塩基、並びに芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を一緒にし;
h)デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;
i)固形物残渣を得るために前記反応混合物を維持し;そして
j)デュロキセチン塩酸塩を回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法を提供する。
【0024】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)DNT−塩基を含む有機溶液を得るために、DNT−オキサル、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を一緒にし;
b)DNA−塩基、第2有機溶媒及びプロトントラップを一緒にし;
c)アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を添加し;
d)デュロキセチンアルキルカルバメートを回収し;
e)デュロキセチンアルキルカルバメート、並びに脂肪族アルコール、エーテル及び芳香族炭化水素から成る群から選択された有機溶媒と、アルキル金属とを一緒にし;
f)デュロキセチン−塩基を回収し;
g)デュロキセチン−塩基、並びに芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を一緒にし;
h)デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;
i) 固形物残渣を得るために前記反応混合物を維持し;そして
j)デュロキセチン塩酸塩を回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の特定の記載
本明細書において使用される場合、用語DNT−オキサルとは、N, N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミンオキサレートを言及し、そして用語DNT−塩基とは、N, N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミンを意味する。
【0026】
本発明は、DNT−塩基を調製し、前記DNT−塩基をデュロキセチンカルバメート中間体に転換し、そして前記デュロキセチンカルバメート中間をデュロキセチン−塩基及びデュロキセチン塩酸塩に転換するための方法を提供する。
1つの態様においては、本発明は、DNT−塩基を含む有機溶液を得るために、DNT−オキサル、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を組合すことを含んで成るDNT−塩基の調製方法を提供する。
【0027】
上記方法に使用されるDNT−オキサル及び得られるDNT−塩基は、ラセミ体か又は鏡像異性体のいずれかであり得る。
好ましくは、前記DNT−オキサルは(S)−(+)−DNT−オキサルであり、そして前記得られるDNT−塩基は(S)−DNT−塩基である。
好ましくは、DNT−オキサルが水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒と組み合わされる温度は、ほぼ室温、すなわち約18℃〜約30℃、より好ましくは約20〜約25℃である。
【0028】
好ましくは、前記有機溶媒は、芳香族炭化水素、C4-8アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選択される。より好ましくは、有機溶媒は、アルコール、例えばブタノール、又は芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン又はエーテル、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルである。最も好ましくは、有機溶媒はトルエンである。
【0029】
本発明はさらに、上記のようなDNT−塩基を調製し;そして前記DNT−塩基を、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法を提供する。
好ましくは、前記DNT−塩基はデュロキセチン塩酸塩に転換される。
【0030】
好ましくは、前記DNT−塩基は(S)−DNT−塩基であり、そして前記デュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−DNT−デュロキセチン塩酸塩である。
DNT−塩基の調製は、水酸化ナトリウムを用いる場合、例えば従来技術において観察される、所望しない沈殿及び副生成物の形成を妨げる水酸化アンモニウムを用いて行われる。
【0031】
もう1つの態様においては、本発明は、DNT−塩基を、有機溶媒に溶解し;アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を、約5℃〜約80℃の温度で添加し;そしてデュロキセチンアルキルカルバメートを回収することを含んで成る、デュロキセチンアルキルカルバメートの調製方法を提供する。
【0032】
上記方法において使用されるDNT−塩基及び得られるデュロキセチンアルキルカルバメートは、ラセミ体又は鏡像異性体のいずれかである。
好ましくは、前記DNT−塩基は(S)−DNT−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチンアルキルカルバメートは(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートである。
【0033】
好ましくは、前記カルバメートのアルキル残基は、C1-8枝分れ又は枝なしのアルキル、例えばエチル又はイソブチルである。最も好ましくは、アルキルはエチルである。
好ましくは、前記有機溶媒は、C4-8置換された又は置換されていない、脂肪族又は芳香族炭化水素、C1-6線状又は枝分れ鎖のエステル及びアセトニトリルから成る群から選択される。
【0034】
好ましい脂肪族炭化水素はヘプタンである。好ましい芳香族炭化水素はベンゼン、トルエン及びキシレンである。最も好ましい芳香族炭化水素はトルエンである。好ましいC1-6エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸ベンジル及び酢酸フェニルである。最も好ましいC1-6エステルは、酢酸エチルである。
【0035】
好ましくは、前記アルキルクロロホルメートは、約50℃の温度で添加される。
好ましくは、反応混合物に存在するいずれかの水は除去される。水の除去は、当業界において知られているいずれかの手段、例えば高温での共沸蒸留、又はいずれかの適切な乾燥剤下での乾燥により行われる。
本発明はさらに、上記のようなデュロキセチンアルキルカルバメートを調製し;そして前記デュロキセチンアルキルカルバメートを、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法を提供する。
【0036】
好ましくは、前記デュロキセチンアルキルカルバメートは、デュロキセチン塩酸塩に転換される。
好ましくは、デュロキセチンアルキルカルバメートは(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートであり、そしてデュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
【0037】
もう1つの態様においては、本発明は、DNA−塩基、有機溶媒及びプロトントラップを組合し;アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を添加し;そしてデュロキセチンアルキルカルバメートを回収することを含んで成る、デュロキセチンアルキルカルバメートの調製方法を提供する。
【0038】
上記方法において使用されるDNT−塩基及び得られるデュロキセチンアルキルカルバメートは、ラセミ体又は鏡像異性体のいずれかである。
好ましくは、前記DNT−塩基は(S)−DNT−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチンアルキルカルバメートは(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートである。
好ましくは、カルバメートのアルキル残基及び有機溶媒は、上記の通りである。
【0039】
プロトントラップは、反応を妨げないで、反応に存在する酸と塩を形成する塩基である。好ましくは、プロトントラップは、C3-C8トリアルキルアミン、炭酸水素塩、Na2CO3及びK2CO3から成る群から選択され、より好ましくは、プロトントラップは、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン及びK2CO3から成る群から選択される。最も好ましくは、プロトントラップは、K2CO3である。
【0040】
好ましくは、反応混合物に存在するいずれかの水は除去される。水の除去は、上記のようにして行われる。
上記方法のいずれか1つの方法に従って調製されるデュロキセチンカルバメートは、当業界において知られているいずれかの方法、例えば相の分離、及び乾燥算さが形成されるまで有機相の濃縮により回収され得る。分離の前、カルバメートは、無機又は有機不純物を除去するために、洗浄され得る。カルバメート中間体をさらに精製するために、それは、水のほかに、弱塩基、例えばNH4OH及び酸水溶液、例えば水性HClにより洗浄され得る。
【0041】
本発明はさらに、上記のようなデュロキセチンアルキルカルバメートを調製し;そして前記デュロキセチンアルキルカルバメートを、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法を提供する。
好ましくは、前記デュロキセチンアルキルカルバメートが、デュロキセチン塩酸塩に転換される。
【0042】
好ましくは、前記デュロキセチンアルキルカルバメートは(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートであり、そして前記デュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
【0043】
カルバメート中間体の調製は、カルバメートのデュロキセチンへの加水分解の間、アルコール副生成物がアルキルアルコールであるよう、アルキルクロロホルメートを用いて行われる。アルキルアルコールの廃棄は、従来の方法において生成されるアルコール、例えばフェノールに比較して、より便利であり且つ環境的に安全である。
【0044】
もう1つの態様においては、本発明は、デュロキセチンアルキルカルバメート、並びに脂肪族アルコール、エーテル及び芳香族炭化水素から成る群から選択された有機溶媒と、アルキル金属塩基とを一緒にし;そしてデュロキセチン−塩基を回収する、ことを含んで成る、デュロキセチン−塩基の調製方法を提供する。
【0045】
上記方法に使用されるデュロキセチンアルキルカルバメート及び得られるデュロキセチン−塩基は、ラセミ体又は鏡像異性体のいずれかであり得る。
好ましくは、前記デュロキセチンアルキルカルバメートは(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートであり、そして前記得られるデュロキセチン−塩基は(S)−デュロキセチン−塩基である。
【0046】
好ましくは、前記有機溶媒は、EtOH、IPA、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、DMSO及びトルエンから成る群から選択される。
好ましくは、前記有機溶媒はトルエンである。
好ましくは、前記塩基はKOHである。
好ましくは、デュロキセチンアルキルカルバメート及び有機溶媒と塩基とを組合した後、反応混合物は、約60℃〜溶媒のほぼ還流温度で約1〜4時間、維持される。
【0047】
本発明はさらに、上記のようなデュロキセチン−塩基を調製し;そして前記デュロキセチン−塩基を、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法を提供する。
好ましくは、前記デュロキセチン−塩基は、デュロキセチン塩酸塩に転換される。
好ましくは、前記デュロキセチン−塩基は(S)−デュロキセチン−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
【0048】
デュロキセチン−塩基の調製は、プロピレングリコール/水酸化ナトリウムシステム及びジメチルスルホキシド/水酸化ナトリウムシステムを用いる場合、従来技術において観察されるよりも、収率を高める溶媒/トリエン/KOHの塩基対を用いて行われる。また、トリエン/KOHの使用は、デュロキセチンアルキルカルバメート調製に使用される同じ溶媒を用いて、デュロキセチンアルキルカルバメートを製造する場合、得られる反応混合物からの直接的なデュロキセチン−塩基の調製を可能し、そして従って、産業的及び経済学的利点を有する。
【0049】
もう1つの態様においては、本発明は、デュロキセチン−塩基、並びに水、芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を一緒にし;デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;そしてデュロキセチン塩酸塩を回収することを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法を提供する。
【0050】
上記方法に使用されるデュロキセチン−塩基及び得られるデュロキセチン塩酸塩は、ラセミ体又は鏡像異性体のいずれかである。
好ましくは、前記デュロキセチン−塩基は(S)−デュロキセチン−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチン塩酸塩は(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である。
【0051】
好ましくは、前記溶媒は、水、トルエン、イソプロピルアルコール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、MTBE又はそれらの混合物から成る群から選択される。最も好ましくは、溶媒はアセトンである。
溶媒の代わりに、塩酸がデュロキセチン−塩基と組合されるワン−ポット反応もまた、実行可能である。
上記方法において使用される溶媒は、デュロキセチン塩酸塩を高収率で生成する。
【0052】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)DNT−塩基を含む有機溶液を得るために、DNT−オキサル、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を一緒にし;
b)DNT−塩基を、第2有機溶媒に溶解し;
c)アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を、約5℃〜約80℃の温度で添加し;
d)デュロキセチンアルキルカルバメートを回収し;
e)デュロキセチンアルキルカルバメート、並びに脂肪族アルコール、例えばEtOH、IPA、エーテル、例えばエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、DMSO、及び芳香族炭化水素、例えばトルエンから成る群から選択された有機溶媒と、アルキル金属とを一緒にし;
f)デュロキセチン−塩基を回収し;
g)デュロキセチン−塩基、並びに、芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を一緒にし;
h)デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;
i)固形物残渣を得るために前記反応混合物を維持し;そして
j)デュロキセチン塩酸塩を回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法を提供する。
【0053】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)DNT−塩基を含む有機溶液を得るために、DNT−オキサル、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を一緒にし;
b)DNA−塩基、第2有機溶媒及びプロトントラップを一緒にし;
c)アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を添加し;
d)デュロキセチンアルキルカルバメートを回収し;
e)デュロキセチンアルキルカルバメート、並びに脂肪族アルコール、例えばEtOH、IPA、エーテル、例えばエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、DMSO、及び芳香族炭化水素、例えばトルエンから成る群から選択された有機溶媒と、アルキル金属とを一緒にし;
f)デュロキセチン−塩基を回収し;
g)デュロキセチン−塩基、並びに、芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を一緒にし;
h)デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;
i) 固形物残渣を得るために前記反応混合物を維持し;そして
j)デュロキセチン塩酸塩を回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法を提供する。
【0054】
一定の好ましい態様に関して本発明を記載して来たが、他の態様が本明細書の考慮から当業者に明らかに成るであろう。本発明はさらに、本発明の組成物の調製及びその使用方法を詳細に記載する次の例により定義される。材料及び方法に関する多くの修飾が本発明の範囲内で行われ得ることは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0055】
(S)−デュロキセチンエチルカルバメートの調製
例1:
機械攪拌機、温度計、ディーンスターク及び冷却器を備えた100mlの三つ首フラスコを、5gの(S)−DNT−塩基及び25mlのトルエンにより充填した。その透明な溶液を加熱し、そして共沸蒸留を、約30〜約60分間、行った。室温に冷却した後、4.6mlのエチルクロロホルメートを、1〜2時間にわたって添加し、そして反応混合物を室温で一晩、撹拌した。
【0056】
希釈されたNH4OHを、反応混合物に添加し、これをさらに30分間、撹拌した。相分離の後、有機相を水(3×20ml)により洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして濃縮乾燥し、褐色の油状物5.2gを得た(88%の化学的収率)。
【0057】
例2:
機械攪拌機、温度計、ディーンスターク及び冷却器を備えた100mlの三つ首フラスコを、4gの(S)−DNT−塩基及び20mlのトルエンにより充填した。その透明な溶液を加熱し、そして共沸蒸留を、約30〜約60分間、行った。60℃に冷却した後、3.7mlのエチルクロロホルメートを、1時間にわたって添加し、そして反応混合物を同じ温度で、さらに4.5時間、撹拌した。
【0058】
得られる反応混合物を、希HCl、水、希NH4OH及び再び水により洗浄した。相分離の後、有機溶液を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして濃縮乾燥し、3.59gの褐色の油状物を得た(76%の化学的収率)。
【0059】
例3:
機械攪拌機、温度計、ディーンスターク及び冷却器を備えた100mlの三つ首フラスコを、4gの(S)−DNT−塩基及び20mlのトルエンにより充填した。その透明な溶液を加熱し、そして共沸蒸留を、約30〜約60分間、行った。冷却の後、3.4mlのジイソプロピルエチルアミンを添加し、そして反応混合物を60℃に加熱した。次に、3.7mlのエチルクロロホルメートを1時間にわたって添加し、そしてその反応混合物を同じ温度でさらに1.5時間、撹拌した。
【0060】
得られる反応混合物を、希HCl及び水により洗浄し、そしてNH4OH及び水により希釈した。相分離の後、有機溶液を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして濃縮乾燥し、4.17gの褐色の油状物を得た(88%の化学的収率)。
【0061】
例4:
機械撹拌機、温度計及び冷却器を備えた100mlの三つ首フラスコを、4gの(S)−DNT−塩基、20mlのn−ヘプタン及び3.5mlのジイソプロピルエチルアミンにより充填した。その混合物を60℃に加熱した。次に、3.7mlのエチルクロロホルメートを、1時間にわたって添加し、そしてその反応混合物を同じ温度でさらに2.5時間、撹拌した。
【0062】
例5:
機械撹拌機、温度計及び冷却器を備えた100mlの三つ首フラスコを、6gの(S)−DNT−塩基、30mlのアセトニトリル及び2gのK2CO3により充填した。その混合物を60℃に加熱した。次に、6.3mlのエチルクロロホルメートを、1時間にわたって添加し、そしてその反応混合物を同じ温度でさらに1時間、撹拌した。得られる反応混合物を水により洗浄し、そして60mlのEtOAcにより希釈し、続いて希HCl及びブラインにより洗浄した。その有機溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして濃縮乾燥し、2.75gの褐色の油状物を得た(38.67%の収率)。
【0063】
(S)−デュロキセチンイソブチルカルバメートの調製
例6:
機械攪拌機、温度計、ディーンスターク及び冷却器を備えた100mlの三つ首フラスコを、6gの(S)−DNT−塩基、2.01gのK2CO3及び30mlのトルエンにより充填した。その混合物を加熱し、そして共沸蒸留を、約30〜約60分間、行った。60℃に冷却した後、3.7mlのイソブチルクロロホルメートを、1/2時間にわたって添加し、そして反応混合物を同じ温度で、さらに2.5時間、撹拌した。
【0064】
得られる反応混合物を、希HCl、水、希NaHCO3、NH4OH及び再び水により洗浄した。相分離の後、有機溶液を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして濃縮乾燥し、5.71gの褐色の油状物を得た(74.54%の化学的収率)。
【0065】
(S)−デュロキセチン塩基の調製
例7:
機械撹拌機、温度計及び冷却器を備えた100mlの三つ首フラスコを、2.5gの(S)−デュロキセチンエチルカルバメート、及び20mlのトルエンにより充填した。その混合物を撹拌し、そして4.8gのKOHを少しずつ添加し、続いて約3時間、還流した。
冷却の後、30mlの水、続いて20mlのトルエンを添加し、そして得られる有機相を水(3×20ml)により洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして濃縮乾燥し、1.70gの油状生成物を得た(85.31%の収率)。
【0066】
(S)+(+)−デュロキセチン塩酸塩の調製
例8:
15mlの水中、2gの(S)−デュロキセチンの混合物に、塩酸の32%溶液を、pHが3〜4に達するまで、ゆっくりと添加した。その混合物を、黄色の油状物が白色固形物に変わるまで、撹拌した。得られる固形物を濾過し、水により洗浄し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、1.30gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を白色固形物として得た(HPLC面積%に基づいて、99.60%の純度及び57.94%の収率)。
【0067】
例9:
20mlのトルエン中、1.9gの(S)−デュロキセチンの溶液に、塩酸の10%溶液2.4mlを、pHが3〜4に達するまで、ゆっくりと添加した。その混合物を、黄色の油状物が固形物に変わるまで、1時間、撹拌した。得られる固形物を濾過し、20mlのトルエンにより洗浄し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、1.20gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(56.34%の収率)。
【0068】
例10:
20mlのトルエン中、2gの(S)−デュロキセチンの溶液に、7mlの飽和HCl/トルエンを、pHが3に達するまで、ゆっくりと添加した。その混合物を、白色固形物が形成されるまで、撹拌した。得られる固形物を濾過し、トルエンにより洗浄し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、1.30gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(57.94%の収率)。
【0069】
例11:
20mlのイソプロピルアルコール中、1.95gの(S)−デュロキセチンの溶液に、3mlの飽和HCl/イソプロピルアルコール溶液を、pHが1に達するまで、ゆっくりと添加した。その混合物を、白色固形物が形成されるまで、撹拌した。得られる固形物を濾過し、イソプロピルアルコールにより洗浄し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、1.35gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(61.64%の収率)。
【0070】
例12:
20mlのアセトン中、2gの(S)−デュロキセチンの溶液に、2mlの飽和HCl/アセトン溶液を、pHが1に達するまで、ゆっくりと添加した。その混合物を、白色固形物が形成されるまで、撹拌した。得られる固形物を濾過し、アセトンにより洗浄し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、1.24gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(55.21%の収率)。
【0071】
例13:
20mlのジエチルエーテル中、2gの(S)−デュロキセチンの溶液に、2mlの飽和HCl/ジエチルエーテル溶液を、pHが2に達するまで、ゆっくりと添加した。その混合物を、白色固形物が形成されるまで、撹拌した。得られる固形物を濾過し、アセトンにより洗浄し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、1.82gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(81.10%の収率)。
【0072】
例14:
10mlのイソプロピルアルコール中、1gの(S)−デュロキセチンの溶液に、37%塩酸溶液0.32mlをゆっくりと添加した。その混合物を、白色固形物が形成されるまで、撹拌した。得られる固形物を濾過し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、0.98gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(87.5%の収率)。
【0073】
例15:
10mlのMTBE中、1gの(S)−デュロキセチンの溶液に、37%塩酸溶液0.32mlをゆっくりと添加した。その混合物を、白色固形物が形成されるまで、撹拌した。得られる固形物を濾過し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、1.03gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(91.96%の収率)。
【0074】
例16:
10mlのメタノール中、1gの(S)−デュロキセチンの溶液に、37%塩酸溶液0.32mlをゆっくりと添加した。その混合物を、少なくとも1時間、撹拌し、そして生成物を、エーテルの添加により沈殿せしめた。得られる白色固形物を濾過し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、0.70gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(62.50%の収率)。
【0075】
例17:
10mlのMEK中、1gの(S)−デュロキセチンの溶液に、37%塩酸溶液0.32mlをゆっくりと添加した。その混合物を、白色固形物が形成されるまで、撹拌した。得られる固形物を濾過し、そして真空オーブンにおいて乾燥し、0.50gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を得た(94.64%の収率)。
【0076】
(S)−DNT−塩基の調製
例18:
機械撹拌機を備えた2Lの反応器を、100gの(S)−(+)−DNT−オキサル、600mlの水、96mlの22%水酸化アンモニウム溶液及び1Lのトルエンの混合物により充填した。その混合物を25℃で20〜30分間、撹拌し、そして有機相を分離し、そして300mlの水により3度、洗浄し、(S)−DNT−塩基のトルエン溶液を得、これを、蒸発しないで、例19に使用した。
【0077】
(S)−デュロキセチンエチルカルバメートの調製
例19:
機械攪拌機、温度計、ディーンスターク及び冷却器を備えた1Lの反応器を、1020mlのトルエンに溶解された、例18から得られた(S)−DNT−塩基、及び13gのK2CO3により充填した。その混合物を加熱し、そして284mlの前記混合物の共沸蒸留を行った。50℃に冷却した後、47.46mlのエチルクロロホルメートを、30分間にわたって添加し、そして反応混合物を同じ温度で、さらに2時間、撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を、230mlの水、130mlの5%HCl溶液、130mlの水、130mlの5%NaHCO3溶液、及び130mlの水により洗浄した。得られる(S)−デュロキセチンエチルカルバメートのトルエン溶液を、蒸発しないで例20に使用した。
【0078】
(S)−デュロキセチン塩基の調製
例20:
機械攪拌機、温度計、及び冷却器を備えた1Lの反応器を、例19において調製された(S)−デュロキセチンエチルカルバメートの溶液により充填した。その混合物を加熱し、そして268mlの前記混合物の共沸蒸留を行った。60℃に冷却した後、85%KOH溶液82.18gを添加し、そしてその混合物94℃に約4時間、加熱した。60℃に冷却した後、270mlの水を添加し、そして得られる有機相を、270mlの水により3度、洗浄し、そして4.6gの木炭(S×1)により15分間、処理し、超流動相を通して濾過し、そして60mlのトルエンにより洗浄した。その溶液を、約1〜2体積のトルエンが得られるまで、20〜30mmHgの真空下で30〜40℃で蒸留した。得られる(S)−デュロキセチン塩基のトルエン溶液を、例21に使用した。
【0079】
(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩の調製
例21:
機械攪拌機、温度計、及び冷却器を備えた1Lの反応器を、例20において調製された、トルエン中、(S)−デュロキセチン−塩基の溶液により充填した。室温に冷却した後、670mlのアセトンを添加し、そしてその溶液を30℃に加熱した。塩化水素ガスを、混合物のpHが3〜5に調節されるまで、前記溶液中に泡立て、そしてその混合物を同じ温度で1時間、撹拌した。室温に冷却した後、得られる固形物を濾過し、そして100mlのアセトンにより3度、洗浄した。真空オーブンにおいて45℃で15時間、乾燥した後、47.5gの(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩を、オフホワイト色の粉末として得た(HPLC面積%に基づいて、99.42%の純度、56.66%の全体的収率)。
【0080】
本明細書に開示される発明は、上記に言及される目的を満たすために十分に考慮されることは明らかであるが、多くの修飾及び態様が当量者により考案され得ることが理解されるであろう。従って、本発明は、本発明の範囲内で、そのようなすべての修飾及び態様を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N, N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミン(DNT−塩基)を含む有機溶液を得るために、N, N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミンオキサレート(DNT−オキサル)、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を一緒にすることを含んで成る、DNT−塩基の調製方法。
【請求項2】
前記DNT−オキサルが(S)−(+)−DNT−オキサルであり、そして前記得られるDNT−塩基が(S)−DNT−塩基である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程が、約18℃〜約30℃の温度で行われる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記工程が、約20℃〜約25℃の温度で行われる請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、芳香族炭化水素、C4-8アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選択される請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、ブタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル及びジブチルエーテルから成る群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、ブタノール及びトルエンから成る群から選択される請求項6記載の方法。
【請求項8】
a)請求項1記載のDNT−塩基を調製し;そして
b)前記DNT−塩基を、医薬的に許容できるデュロキセチン(duloxetine)の塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法。
【請求項9】
段階b)において、前記DNT−塩基をデュロキセチン塩酸塩に転換する請求項8記載の方法。
【請求項10】
a)DNT−塩基を、有機溶媒に溶解し;
b)アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を、約5℃〜約80℃の温度で添加し;そして
c)デュロキセチンアルキルカルバメートを回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチンアルキルカルバメートの調製方法。
【請求項11】
前記DNT−塩基が(S)−DNT−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチンアルキルカルバメートが(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートである請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記カルバメートのアルキル残基が、エチル及びイソブチルから成る群から選択されたC1-8枝分れ又は枝なしのアルキルである請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記アルキル残基がエチルである請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒が、C4-8置換された又は置換されていない、脂肪族又は芳香族炭化水素、C1-6線状又は枝分れ鎖のエステル及びアセトニトリルから成る群から選択される請求項10〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記有機溶媒が、ヘプタン、ベンゼン、トリエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸ベンジル及び酢酸フェニルから成る群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記有機溶媒が、トルエン及び酢酸エチルから成る群から選択される請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記アルキルクロロホルメートが、約50℃の温度で添加される請求項10〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記反応混合物に存在する水が、高温での共沸蒸留を用いて、又はいずれかの適切な乾燥剤下で乾燥することにより除去される請求項10〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
a)請求項10記載のデュロキセチンアルキルカルバメートを調製し;そして
b)前記デュロキセチンアルキルカルバメートを、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換する;
ことを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法。
【請求項20】
段階b)において、前記デュロキセチンアルキルカルバメートが、デュロキセチン塩酸塩に転換される請求項19記載の方法。
【請求項21】
a)DNA−塩基、有機溶媒及びプロトントラップを一緒にし;
b)アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を添加し;そして
c)デュロキセチンアルキルカルバメートを回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチンアルキルカルバメートの調製方法。
【請求項22】
前記DNT−塩基が(S)−DNT−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチンアルキルカルバメートが(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートである請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記カルバメートのアルキル残基が、エチル及びイソブチルから成る群から選択されたC1-8枝分れ又は枝なしのアルキルである請求項21又は22記載の方法。
【請求項24】
前記アルキル残基がエチルである請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記有機溶媒が、C4-8置換された又は置換されていない、脂肪族又は芳香族炭化水素、C1-6線状又は枝分れ鎖のエステル及びアセトニトリルから成る群から選択される請求項21〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記有機溶媒が、ヘプタン、ベンゼン、トリエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸ベンジル及び酢酸フェニルから成る群から選択される請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記有機溶媒が、トルエン及び酢酸エチルから成る群から選択される請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記プロトントラップが、C3-C8トリアルキルアミン、炭酸水素塩、Na2CO3及びK2CO3から成る群から選択される請求項21〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記プロトントラップが、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン及びK2CO3から成る群から選択される請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記プロトントラップがK2CO3である請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記反応混合物に存在する水が、高温での共沸蒸留を用いて、又はいずれかの適切な乾燥剤下で乾燥することにより除去される請求項21〜30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
a)請求項21記載のデュロキセチンアルキルカルバメートを調製し;そして
b)前記デュロキセチンアルキルカルバメートを、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換する;
ことを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法。
【請求項33】
段階b)において、前記デュロキセチンアルキルカルバメートが、デュロキセチン塩酸塩に転換される請求項32記載の方法。
【請求項34】
a)デュロキセチンアルキルカルバメート、並びに脂肪族アルコール、エーテル及び芳香族炭化水素から成る群から選択された有機溶媒と、アルキル金属とを一緒にし;そして
b)デュロキセチン−塩基を回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチン−塩基の調製方法。
【請求項35】
前記デュロキセチンアルキルカルバメートが(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートであり、そして前記得られるデュロキセチン−塩基が(S)−デュロキセチン−塩基である請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記有機溶媒が、EtOH、IPA、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、DMSO及びトルエンから成る群から選択される請求項34又は35記載の方法。
【請求項37】
前記有機溶媒がトルエンである請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記塩基がKOHである請求項34〜37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
段階a)の後、反応混合物を、約60℃〜溶媒のほぼ還流温度で約1〜4時間、維持する請求項34〜38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
a)請求項34記載のデュロキセチン−塩基を調製し;そして
b)前記デュロキセチン−塩基を、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩に転換することを含んで成る、医薬的に許容できるデュロキセチンの塩の調製方法。
【請求項41】
段階b)において、前記デュロキセチン−塩基が、デュロキセチン塩酸塩に転換される請求項40記載の方法。
【請求項42】
デュロキセチン塩酸塩へのデュロキセチン−塩基の転換が、デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加することを含んで成る請求項41記載の方法。
【請求項43】
a)デュロキセチン−塩基、並びに水、芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を一緒にし;
b)デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;そして
c)デュロキセチン塩酸塩を回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法。
【請求項44】
前記デュロキセチン−塩基が(S)−デュロキセチン−塩基であり、そして前記得られるデュロキセチン塩酸塩が(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記溶媒が、水、トルエン、イソプロピルアルコール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、MTBE又はそれらの混合物から成る群から選択される請求項43又は44記載の方法。
【請求項46】
前記溶媒がアセトンである請求項45記載の方法。
【請求項47】
a)DNT−塩基を含む有機溶液を得るために、DNT−オキサル、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を一緒にし;
b)DNT−塩基を、第2有機溶媒に溶解し;
c)アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を、約5℃〜約80℃の温度で添加し;
d)デュロキセチンアルキルカルバメートを回収し;
e)デュロキセチンアルキルカルバメート、並びに脂肪族アルコール、エーテル及び芳香族炭化水素から成る群から選択された有機溶媒と、アルキル金属とを一緒にし;
f)デュロキセチン−塩基を回収し;
g)デュロキセチン−塩基、並びに芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を一緒にし;
h)デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;そして
i)デュロキセチン塩酸塩を回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法。
【請求項48】
前記DNT−オキサルが(S)−(+)−DNT−オキサルであり、前記DNA−塩基が(S)−DNT−塩基であり、前記デュロキセチンアルキルカルバメートが(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートであり、前記デュロキセチン−塩基が(S)−デュロキセチン−塩基であり、そして前記デュロキセチン塩酸塩が(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である請求項47記載の方法。
【請求項49】
a)DNT−塩基を含む有機溶液を得るために、DNT−オキサル、水、水酸化アンモニウム溶液及び有機溶媒を一緒にし;
b)DNA−塩基、第2有機溶媒及びプロトントラップを一緒にし;
c)アルキルクロロホルメート又はハロアルキルクロロホルメート(クロロアルキルクロロホルメートではない)を添加し;
d)デュロキセチンアルキルカルバメートを回収し;
e)デュロキセチンアルキルカルバメート、並びに脂肪族アルコール、エーテル及び芳香族炭化水素から成る群から選択された有機溶媒と、アルキル金属とを一緒にし;
f)デュロキセチン−塩基を回収し;
g)デュロキセチン−塩基、並びに芳香族添加水素、C1-4エステル(酢酸エチルではない)、C2-8エーテル、C1-8アルコール、アセトニトリル及びケトンから成る群から選択された溶媒を一緒にし;
h)デュロキセチン塩酸塩を得るために、約1〜約5のpHを提供するのに十分な量、塩酸を添加し;そして
i)デュロキセチン塩酸塩を回収する;
ことを含んで成る、デュロキセチン塩酸塩の調製方法。
【請求項50】
前記DNT−オキサルが(S)−(+)−DNT−オキサルであり、前記DNA−塩基が(S)−DNT−塩基であり、前記デュロキセチンアルキルカルバメートが(S)−デュロキセチンアルキルカルバメートであり、前記デュロキセチン−塩基が(S)−デュロキセチン−塩基であり、そして前記デュロキセチン塩酸塩が(S)−(+)−デュロキセチン塩酸塩である請求項49記載の方法。

【公表番号】特表2007−523213(P2007−523213A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500846(P2007−500846)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/047079
【国際公開番号】WO2006/071868
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】