説明

医薬組成物、医薬組成物における吸収促進剤の使用方法、及び医薬組成物の製造方法

【課題】 粘膜又は皮膚を介する治療薬の吸収を促進する医薬組成物を提供する。
【解決手段】 吸収促進剤は、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含む。また、好ましくは、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステル30重量%〜90重量%と、遊離ポリエチレングリコール10重量%〜50重量%と、を含む。また、吸収促進剤の量は、全組成物の0.001重量%〜99重量%である。これにより、粘膜又は皮膚を介する治療薬の吸収を促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘膜又は皮膚を介して吸収される治療薬を含む医薬組成物に関する。特に、本発明は、薬学的に活性のある治療薬の経粘膜送達又は経皮送達を促進するための吸収促進剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘膜への治療薬の投与は、当技術分野において周知である。治療薬は、疾病の局所的な治療又は全身的な効果を目的として、鼻腔に、膣腔に、経肺的(pulmonarily)に、頬側に(buccally)、舌下に、直腸に、経口的に、及び眼に送達することができる。
【0003】
吸収性のある粘膜(例えば、頬、鼻、眼、口、舌下、直腸、及び膣の粘膜)を介する薬剤の送達には、他の投与経路に対して異なる利点がある。特に、これらの体腔は、容易に接近しやすく、そのため、投与が便利である。粘膜経路を介して投与した治療薬(消化管を介する場合を除く)は、体循環へ直接輸送され、初回通過代謝を回避する。また、送達の粘膜経路は、迅速な薬理反応、特に、送達の鼻及び肺の経路の可能性を提供する。プロプラノロール及びフェンタニル等の脂溶性薬剤は、鼻粘膜を介して容易に吸収され、その結果、高いバイオアベイラビリティを生ずる。
【0004】
さらに、薬剤は、嗅粘膜を横断する又は鼻腔の三叉神経系を介して輸送されることによって、経鼻投与後にCNSへ直接吸収することができる。
【0005】
送達の粘膜経路の利点にもかかわらず、ペプチド、タンパク質及び親水性の低分子量の薬剤等の多くの治療薬は、それらの物理化学特性(例えば、高分子量、親水性、不安定性)により、粘膜を介して弱く吸収されるので、注射又は注入によって投与する必要がある。1型糖尿病患者に投与するインシュリンのようなこれらの薬剤のうちの幾つかにおいて、注射による1日複数回投与(multiple daily dosing)が必要であり、特に若い患者の間でノンコンプライアンスを生ずる[創薬の今日(Drug Discovery Today)、7, 2002, 1184-1189; J Control Rel, 87, 2003, 187-198(非特許文献1)]。特に、高分子量及び/又は高親水性の薬剤は、粘膜を介して弱く吸収される。
【0006】
粘膜は、外部環境に対する防御バリアを提供し、毒素、細菌及びウィルスの侵入に対する障害を提供する上皮細胞によって内側が覆われる。粘膜を介した治療薬の輸送に関連する経路は、細胞内及び傍細胞の輸送を含む。細胞内の輸送では、治療薬は、受動輸送系又は担体輸送系によって輸送することができる。受動的な細胞内の経路は、頂細胞膜、細胞内空間及び側底側細胞膜を介する浸透を含み、また、該経路は、比較的小さい疎水性化合物に制限される。大きい化合物は、エンドサイトーシスによって吸収され得るが、このメカニズムは、例えば、特定の分類の分子及び自然に輸送される類縁体の構造類縁体に対して選択的であり、一般に、極性の高い化合物を排除する。上皮の細胞間接合を介する受動拡散によって、傍細胞の輸送は、粘膜を介して、より多くの親水性治療薬の輸送を可能とする。したがって、治療薬の傍細胞の輸送は、緊密な上皮の接合によって制限される。
【0007】
したがって、粘膜を介して弱く吸収される薬剤は、親水性の小分子を含んでもよい。一例は、モルヒネ及び他の類似したオピオイドを含む。より一般に、それらは、大きく、高分子量であり、また、輸送は、それらのサイズ及び親水性によって阻害される。これは、ペプチド、タンパク質、ポリ核酸、SiRNA、RNA、及び抗原等の“生物製剤”(biologic drug又は”biologics”)のほとんどが極性の高分子量であるので、これらについての特別の問題である。この問題は、バイオテクノロジー研究の発展と科学の進歩による多くの生物製剤の発見によって深刻化する。
【0008】
生物製剤の送達に関する更なる問題は、特に、消化管を介して投与する場合、生物製剤が、ペプチダーゼ及びプロテアーゼ等の酵素によって分解され易いということである。鼻腔の内側を覆うような粘膜を介する送達は、送達の重要な代替的経路に、制限された酵素分解を提供する。
【0009】
粘膜の表面を介したこれらの薬剤の輸送を改善するために、特に、経鼻投与によって送達する場合、吸収促進剤を含む製剤が良好に使用されている。これまでに使用された吸着剤は、ゲル化マイクロスフィア、生体付着性ポリマー、及びキトサンを含む。これらの系の一例は、「治療用ペプチド及びタンパク質の吸入送達(Inhalation Delivery of Therapeutic Peptides and Proteins)」、AdjeiとGupta(編集)、Marcel Dekker Inc, New York (1997), 135-184で、IllumとFisherによって(非特許文献2)、及び、「鼻腔内送達:物理化学及び治療面(Intranasal delivery: Physicochemical and Therapeutic Aspects)」, lnt J Pharm, 337, 2007, 1-24で、Costantino, Ilium, Brandt, Johnson及びQuayによって(非特許文献3)、概説されている。
【0010】
しかしながら、サリチラート、胆汁酸塩、胆汁酸塩誘導体、リン脂質、リゾリン脂質、ラウリル硫酸ナトリウム、シクロデキストリン、及びキトサン誘導体等の経鼻的研究で過去に使用された吸収促進剤は、幾つかの事例で、粘膜の刺激又は損傷を引き起こすことが示されている。
【0011】
種々の他の粘膜の吸収促進剤系は、粘膜を介して治療薬を送達するために開発されているが、報告された問題点は、体循環への良好な吸収を妨げる治療薬の刺激、吸収不良及びクリアランスを含む。ポリエチレングリコール及びグリコフロラム(glycofurolum)(米国特許第5,397,771号(特許文献1))等の多くの添加剤は、強い粘着性である場合があり、鼻腔内及び粘膜の送達には適さない。
【0012】
国際公開公報第03/070280号(特許文献2)は、次の式のモノグリセリド及びジグリセリドの使用について記載する。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、C6−C26脂肪酸、PEGポリマー及び水素からなる群より選択される。但し、R1、R2及びR3の少なくとも1つがC6−C26脂肪酸残基である場合、R1、R2及びR3の少なくとも1つが、吸収促進剤及び粘膜付着剤に使用するためのPEGポリマー残基である。)
【0013】
国際公開公報第2004/06475号(特許文献3)は、粘膜を介した薬学的に活性のある薬剤の吸収を促進するためのN,N−ジメチルグリシン、チオクト酸、セバシン酸、シキミ酸、及びその塩類の使用について記載する。
【0014】
国際公開公報第2006/097793号(特許文献4)は、水溶性組成物に治療上活性のある分子を含有させることによる生体膜を介する該分子を輸送するための組成物について記載する。該水溶性組成物は、疎水性媒体に浸漬することができる。該疎水性媒体は、脂肪族分子、環状分子、又は芳香族分子からなり得る。適切な脂肪族疎水性媒体の例は、鉱油、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、エーテル、及びエステルを含む。適切な環状疎水性媒体の例は、テルペノイド、コレステロール、コレステロール誘導体、及びコレステロールエステルを含む。芳香族疎水性媒体の例は、安息香酸ベンジルを含む。該組成物は、直鎖アルコール、分岐アルコール、環状アルコール又は芳香族アルコールであり得る膜流動剤(membrane fluidizing agent)が更に追加される。
【0015】
国際公開公報第03/099264号(特許文献5)は、薬剤の経膣送達、経頬(buccal)送達又は経鼻送達のための組成物、及び細胞と胚の低温保護について記載する。該組成物は、薬学的に活性のある薬剤と組み合わせた非イオン化グリコール誘導体からなる。該非イオン化グリコール誘導体は更に、粘膜への付着及び粘膜を介する輸送のための粘膜付着剤、脂溶性又は疎水性担体と組み合わせてもよい。非イオン化グリコール誘導体は、脂肪族グリコールの複合体、又は脂肪族アルコールあるいは芳香族アルコール若しくはエステルを有する脂肪族グリコールの複合体である。該非イオン化グリコール誘導体は、グリコールエステル、グリコールエーテル、グリセリンエステルの混合物、又はその組み合わせからなる群より選択される。
【0016】
国際公開公報第2005/046671(特許文献6)号は、パクリタキセルを水性媒体に沈殿させて予備懸濁物を形成し、次いで均質化することによる、パクリタキセル又はその誘導体のサブミクロン粒子の形成に関する。生成した粒子は、一般に、約1000nm未満の平均粒子サイズであり、すぐに溶解しない。水溶性重合体又は親水性重合体と結合したリン脂質を有する界面活性剤を用いて、粒子を被覆する。Solutol(登録商標)HS15は、適切な界面活性剤の一例であり、実施例5では、“均質化の結果生じる安定化は、粒子表面の界面活性剤の再配置から発生すると考えられる”と明示されている。この再配置によって、粒子凝集の低い傾向が生じる(第31頁、第29〜32行目)。したがって、界面活性剤は、粒子を安定させて、凝集を防ぐために使用される。記載された粒子は、それらの小サイズを理由とする溶解の増加によって、改善したバイオアベイラビリティを示すことを意味する。
【0017】
国際公開公報第2006/108556号(特許文献7)は、コロイド形態の弱い可溶性活性剤(例えば、コルチコステロイド)への界面活性剤とリン脂質の混合物の使用について言及する。マクロゴールヒドロキシステアレート[Solutol(登録商標)HS15]は、例示界面活性剤の一つである。活性剤の改善した溶解性は、意図した部位へのその活性剤の改善した送達を可能にする。例えば、コロイド溶液の形成は、ネブライザーによって送達を改善する(第46頁第8行目〜第47頁第22行目の考察された利点)。
【0018】
国際公開公報第99/32089号(特許文献8)は、水性媒体中のミセルを含む医薬組成物であって、ミセルが、脂溶性グルココルチコステロイド、並びに一の及び一のみの医薬として許容し得る界面活性剤を含む、医薬組成物に関する。該界面活性剤は、ミセルを形成するために、全組成物重量の5%w/w未満の低濃度で用いる(第7頁、第1〜2行目)。好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート[Solutol(登録商標)HS15]である。
【0019】
米国特許出願公開第2007/259009号(特許文献9)は、弱可溶性のPDE4阻害剤の投与のための水性製剤に関する。アルコキシル化脂肪は、非経口製剤に必要な特性を有する透明な溶液を得るために、助溶剤として用いる(段落[0006])。適切なアルコキシル化脂肪の好ましい一例は、Solutol(登録商標)HS15である(段落[0016])。
【0020】
国際公開公報第2005/105050号(特許文献10)、及び米国特許出願公開第2006/088592号(特許文献11)は、弱吸収性薬剤の経口送達のための組成物について記載する。該組成物は、薬剤、腸粘膜を介する薬剤の吸収を増加させるための促進剤、及び、単独では該薬剤の吸収を増加させないが、促進剤の存在下で薬剤の吸収を更に増加させる、プロモーターを含む。実施例12では、パクリタキセルは、可溶化剤としてSolutol(登録商標)又はコハク酸トコフェロールポリエチレングリコールを用いて可溶化する。実施例12で用いる該促進剤及びプロモーターはそれぞれ、ステアリン酸スクロース及びグルコサミンである。
【0021】
米国特許出願公開第2007/082016号(特許文献12)は、(a)脂溶性成分、(b)、高HLB界面活性剤、及び(c)親水性成分を含んだ吸収促進剤担体媒介のδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリールアルカン酸アミドレニン阻害剤を含む、マイクロエマルジョンの予備濃縮物の形態の医薬組成物に関する。該予備濃縮物は、水性媒体(例えば、胃液)での更なる希釈で、水中油型マイクロエマルジョンに変換する、自然に分散する油中水型マイクロエマルジョンを提供する。適切な高HLB界面活性剤は、非イオン型流出阻害性(non-ionic efflux inhibiting)界面活性剤、及びそれに関する吸収促進性界面活性剤を含むが、これらに限定されない(段落[0037])。Solutol(登録商標)HS15は、適切な流出阻害剤(efflux inhibitor)として記載されている(段落[0038])。
【0022】
国際公開公報第01/19335号(特許文献13)は、粘膜を介して抗原の送達を可能にするビヒクルに抗原がカプセル化された、ワクチン組成物に関する。該ビヒクルは、水、水溶液又は極性液体の溶液の層によって互い違いになった両親媒性物質に基づく同心性の二重層の堆積によって形成した内部液体結晶構造を有するタマネギ様構造の多層ビヒクルであり、少なくとも1つの抗原が取り込まれる。該ビヒクルは、多種多様の界面活性剤、前述のポリエチレングリコールヒドロキシステアレートによって形成してもよい。好ましくは、該組成物は、種々の界面活性剤の混合物を含む。
【0023】
国際公開公報第00/00181号(特許文献14)は、コルチコステロイド化合物の吸入送達に有用な肺のドラッグデリバリー組成物に関する。高HLB界面活性剤、好ましくは、ビタミンEのE0変性(ethoxylated)誘導体、及び/又は、Solutol(登録商標)HS15等のポリエチレングリコール脂肪酸エステルを用いて、噴霧化又は経鼻投与によって送達することができるように、コルチコステロイドを可溶化する。
【0024】
米国特許出願公開第2005/058702号(特許文献15)は、それ自身生体バリアを横断することができない負に荷電した分子(分子は、“エフェクター”と呼んでいる)の該生体バリアを介する輸送を促進するアプローチについて、記載する。該アプローチは、該エフェクターを、カチオンを形成するイオン液体と配合することを含む。また、製剤は、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、プロテアーゼ阻害剤、及び還元剤からなる群より選択される少なくとも2つの物質の混合物を含んでもよいことが開示されている。開示された実施例は、Solutol(登録商標)HS15を含む、幾つかのそのような物質を含むが、原料及び他の物質の濃度は、明示されていない。実施例の製剤は、直腸内に、又は腸ループへの注射によって、投与すると言及されている。
【0025】
国際公開公報第2006/024138号(特許文献16)は、(a)抗微生物剤、(b)少なくとも2つのポロキサマポリマーを含むポロキサマ混合物、及び(c)ポリエチレングリコールのヒドロキシル脂肪酸エステルを含む、医薬製剤であって、該製剤は、室温で固体であり、また、体温で液体ゲルである、熱可逆性の医薬製剤について記載する。好ましい実施態様において、ポリエチレングリコールのヒドロキシル脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレングリコール660ヒドロキシステアレートである。該製剤は、膣又は直腸の経路を介する活性のある薬物の投与及び送達のために、坐薬形態で使用するものである。
【0026】
Bugginsらの“薬物動態に対する薬剤の添加剤の影響(The effects of pharmaceutical excipients on drug disposition)”、Advanced Drug Delivery Reviews 59 (2007) 1482-1503(非特許文献4)は、薬剤の薬物動態学及び生理学系に対する一般に使用される共溶媒及び添加剤の報告された影響について記載する概説の文献である。経口吸収に対するSolutol(登録商標)の影響は、第1497頁の4.3.4項で考察されている。Solutol(登録商標)は、弱い可溶性の薬剤サイクロスポリンAの経口吸収を増加させることが明らかになっている。CYP3A(酵素のCYP450ファミリーのメンバー)及びP−Gpの阻害は、役割を果たしていると考えられているが、この影響は、主に、腸液中のサイクロスポリンの溶解性の増加によるものであると考えられていた[Bravo Gonzalezら、雄ウィスターラットのサイクロスポリンAの口の改善されたバイオアベイラビリティ:自己分散型製剤及びミクロ懸濁液(microsuspension)を含むSolutol(登録商標)HS15の比較(Improved oral bioavailability of cyclosporin A in male Wistar rats. Comparison of a Solutol (trademark) HS15 containing self-dispersing formulation and a microsuspension), Int. J. Pharm. 245 (2002) 143-151](非特許文献5)。
【0027】
また、該論文は、水溶性薬剤コルヒチンの経口吸収に対するSolutol(登録商標)の影響をどのように調査したかについても記載する。コルヒチンの高い溶解性は、おそらく、経口吸収の増加がSolutolによる腸液での薬剤溶解性の増加によるものではないことを意味する。P−Gp及び/又はCYP450の阻害は、可能性のあるメカニズムとして示唆される;筆者は、CYP450濃度が高く、P−Gp濃度が低い場合、CYP450の阻害が、おそらく、本事例の吸収促進の主要なメカニズムであると結論付けた[Bittnerら、D−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシナートと12−ヒドロキシ-ステアリン酸のポリエトキシル誘導体(polyethoxylated derivative)の共投与によるラットにおけるコルヒチンのバイオアベイラビリティの改善(Improvement of the bioavailability of colchicine in rats by coadministration of D-alpha-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate and a polyethoxylated derivative of 12-hydroxy-steahc acid), Arzneim-Forsch, 52 (2002) 684-688](非特許文献6)。
【0028】
また、Solutol(登録商標)HS15が、インビトロでの反転ラット腸嚢を介するジゴキシン輸送を有意に増加させたこと、P−Gpトランスポーターによる薬剤の流出の抑制に起因する効果について、報告されている[Cornaireら、インビトロ及びインビボでのP-糖タンパク質基質の吸収に対する添加剤の影響(Impact of excipients on the absorption of P-glycoprotein substrates in vitro and in vivo), Int. J. Pharm. 278 (2004) 119-131](非特許文献7)。
【0029】
したがって、先行技術は、医薬組成物でのヒドロキシステアリン酸のポリエチレングリコールエステルの使用についての多数の開示を含む。しかしながら、そのような使用は、弱可溶性薬剤の可溶化及び/又はP−GpとCYP450の阻害を制限している。実際、Solutol(登録商標)HS15は、注射液の非イオン性可溶化剤として市販されている。親水性薬剤(可溶化はその問題ではない)及び/又は多くの生物製剤等の大きい分子薬剤を含む粘膜を介して薬剤の吸収を促進するそのような物質の能力は、これまで認められていない。
【0030】
粘膜表面を介する高分子量及び/又は親水性の化合物の治療上適切な輸送を可能にする、効果的で、無毒な吸収促進系の開発についての強い必要性が、依然として存在する。
【0031】
また、経皮ドラッグデリバリー‐皮膚を介する及び体循環への薬剤の送達も、特に、皮膚へ比較的接近容易であるため、薬剤送達の有用な経路であり得る。しかしながら、経皮送達も、粘膜を介するドラッグデリバリーについての上述した問題がネックになっている。皮膚の低い浸透性は、本方法で送達することができる薬剤の数を制限し、多くの親水性化合物及び/又は高分子量の化合物が、一般に経皮経路によって送達することができないという結果となる。吸収促進剤を使用しない場合、多くの薬剤は、治療上の濃度を達成するのに十分な速さで皮膚へ拡散しない。経皮送達の特別の問題は、局所刺激が適用部位で発生する可能性である。高分子量及び/又は親水性の薬剤化合物の輸送を促進するための、効果的で、無毒な吸収促進系の開発についての必要性が、依然として存在する。
【0032】
本発明者らは、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが、刺激を発生させず、損傷をもたらすことなく、粘膜表面又は皮膚を介する広範囲の治療薬の輸送を相当に促進することができ、それによって、新しいグループの吸収促進剤を構成することを今般発見した。
【0033】
上述したように、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルは、可溶化剤としての使用について公知である。特に、ポリエチレングリコール660ヒドロキシ脂肪酸エステル(マクロゴール15ヒドロキシステアレート)は、注射液用の非イオン性可溶化剤として市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】米国特許第5,397,771号明細書
【特許文献2】国際公開公報第2003/070280号
【特許文献3】国際公開公報第2004/064757号
【特許文献4】国際公開公報第2006/097793号
【特許文献5】国際公開公報第2003/099264号
【特許文献6】国際公開公報第2005/046671号
【特許文献7】国際公開公報第2006/108556号
【特許文献8】国際公開公報第1999/32089号
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/259009号明細書
【特許文献10】国際公開公報第2005/105050号
【特許文献11】米国特許出願公開第2006/088592号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2007/082016号明細書
【特許文献13】国際公開公報第2001/19335号
【特許文献14】国際公開公報第2000/00181号
【特許文献15】米国特許出願公開第2005/058702号明細書
【特許文献16】国際公開公報第2006/024138号
【非特許文献】
【0035】
【非特許文献1】Drug Discovery Today, 7, 2002, 1184-1189; J Control Rel, 87, 2003, 187-198
【非特許文献2】"Inhalation Delivery of Therapeutic Peptides and Proteins", Adjei and Gupta (eds.) Marcel Dekker Inc, New York (1997), 135-184
【非特許文献3】Costantino, Ilium, Brandt, Johnson and Quay, Intranasal delivery: Physicochemical and Therapeutic Aspects, lnt J Pharm, 337, 2007, 1-24
【非特許文献4】Buggins et al, "The effects of pharmaceutical excipients on drug disposition", Advanced Drug Delivery Reviews 59 (2007) 1482-1503
【非特許文献5】Bravo Gonzalez et al, Improved oral bioavailability of cyclosporin A in male Wistar rats. Comparison of a Solutol (trademark) HS15 containing self-dispersing formulation and a microsuspension), Int. J. Pharm. 245 (2002) 143-151
【非特許文献6】Bittner et al, Improvement of the bioavailability of colchicine in rats by coadministration of D-alpha-tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate and a polyethoxylated derivative of 12-hydroxy-steahc acid, Arzneim-Forsch, 52 (2002) 684-688
【非特許文献7】Cornaire et al, Impact of excipients on the absorption of P-glycoprotein substrates in vitro and in vivo, Int. J. Pharm. 278 (2004) 119-131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明者らは、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルが、治療薬と併用して鼻腔等の粘膜表面に投与する場合、該治療薬が、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルが製剤に含まれない場合よりも高い度合いで粘膜表面を介して吸収されることを発見した。ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルと治療薬を併用して皮膚に投与する場合には、同様の吸収促進をみることができる。
【課題を解決するための手段】
【0037】
したがって、本発明の第一の局面によれば、粘膜又は皮膚を介する治療薬の吸収を促進する薬剤としてポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含む、吸収促進剤の医薬組成物における使用を提供する。
【0038】
粘膜又は皮膚を介する“吸収促進”とは、哺乳動物の粘膜又は皮膚を介する治療薬の運動又は輸送における改善を意味する。一般に、吸収の度合いの増加は、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含まない組成物の吸収と比較して、少なくとも10%であり、より好ましくは、少なくとも25%か、又は少なくとも50%であり、最も好ましくは、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含まない組成物の吸収と比較して、少なくとも100%の増加である。
【0039】
粘膜を介して生体に吸収される治療薬は、局所領域に吸収され、局所的効果を示す、及び/又は全身輸送のための血流に直接吸収され得る。
【0040】
吸収のレベル又は吸収における変化は、従来法によって、例えば、静脈内投与後と比較した、粘膜又は経皮投与後の血液中の治療薬の濃度の比(パーセントとして表現)を定義するバイオアベイラビリティによって測定又は評価することができる。吸収は、直接的又は間接的な手段によって測定又は評価することができる。吸収の間接的な手段の一例は、血漿グルコースレベルを測定して、インシュリン吸収レベルを評価するものである。薬剤を静脈内投与する場合、定義によって、そのバイオアベイラビリティは、100%である。しかしながら、薬剤を別の経路(例えば、経口的又は経鼻的に)によって投与する場合、そのバイオアベイラビリティは、通常、不完全な吸収、吸収された薬剤の流出及び/又は薬物代謝により減少する。
【0041】
“治療薬”とは、ヒト被験者を含む哺乳動物に投与する場合、薬理学的に活性があり、治療効果を示す、化合物又は薬剤を意味する。ヒト、動物又は微生物等の生体源で、特に設計された細胞で増殖したものに由来する物質を含む、合成又は天然由来の物質であってもよい。
【0042】
治療薬は、低分子量の薬剤、核酸、タンパク質、ペプチド及び抗原を含むが、これらに限定されない。核酸は、DNA、cDNA、RNA、SiRNA、RNAiを含むが、これらに限定されない。他の高分子量の治療薬は、そのような分子(例えば、ポリマー又は細胞透過性ペプチド)の複合体を含む。
【0043】
薬剤を体循環に吸収するため、まず溶液中に存在することが必要である。弱可溶性化合物は、弱く吸収されると予想される。しかしながら、溶液の場合、該化合物が吸収に利用可能である。その範囲は、次のものを含む他の多くの要因に依存する。
【0044】
a)薬剤の疎水性/親水性(分配係数) 疎水性化合物は、通常は細胞内の経路によって、容易に生体膜を通過する。親水性化合物は、一般に、それほどよく吸収されず、密着帯を介して傍細胞によって(paracellularly)輸送される。タンパク質及びペプチドは、一般に、親水性であるため、あまり吸収されない。
【0045】
b)分子のサイズ 小さい薬剤分子は、容易に生体膜を通過する。タンパク質及びペプチドは、比較的大きな分子であるので、生体膜を介してあまり吸収されない。
【0046】
c)能動輸送−流入又は流出 P−糖タンパク質(P−Gp)は、積極的に細胞からの生体異物を輸送するATP依存性膜輸送タンパク質である。免疫組織化学的及び機能的研究では、P−Gpが、マウス、雌牛及びヒトの肝臓、膵臓、腎臓、結腸、空腸及び鼻粘膜でみられたものを含む上皮細胞の頂点側で発現することを示している。ヒトでは、P−Gpは、MDR−1遺伝子の産物である。吸収された薬剤の輸送によって、P−Gpは、その基質の堆積に重要な役割を果たし、弱いバイオアベイラビリティと、治療化合物の活性の低下を生ずるものと考えられている。P−Gpの基質は、天然産物(植物、菌類、細菌及び海綿に由来)及びそれらの小規模の変種、合成化合物及び4つのアミノ酸の長さよりも長くない小さい疎水性ペプチドを含む。P−Gpの機能は、公知の基質及びP−Gpの阻害剤を用いて、インビトロ[細胞培養物(例えば、CaCo−2)及びエクスビボモデル(例えば、反転ラット腸)]とインビボの両方で検討して、輸送タンパク質の活性を調べることができる。
【0047】
4)薬物代謝/分解 生物学的な空洞(胃など)、肝臓に存在する及び生体膜で局所化された酵素は、薬剤(特に、タンパク質及びペプチド)が体循環を入る前に、薬剤を分解することが可能である。同様に、例えば、胃の低pHは、タンパク質及びペプチド等の薬剤を分解又は変性することができ、それによって、それらの吸収を妨げる。
【0048】
生物製剤分類体系(BCS)は、一般に、体循環への薬剤の吸収を予測する指針として認められている。これは、腸の薬剤吸収に一般に適用されているが、その原理は、薬剤吸収の他の経路に適用することもできる。BCS系によれば、製剤原料は、次のように分類される。
【0049】
クラスI−高膜透過性、高溶解性: これらの化合物は、よく吸収され、それらの吸収速度は通常排泄より高い。
【0050】
クラスII−高膜透過性、低溶解性: これらの生成物のバイオアベイラビリティは、それらの溶媒化速度によって制限される。インビボのバイオアベイラビリティとインビトロの溶媒化の間で相関がみられる。
【0051】
クラスIII−低膜透過性、高溶解性: 吸収は、透過速度よって制限されるが、薬剤は、非常に速く溶媒化される。
【0052】
クラスIV−低膜透過性、低溶解性: これらの化合物には、弱いバイオアベイラビリティがある。通常、それらは、腸管粘膜であまり吸収されない。また、高い可変性が予測される。
【0053】
本発明は、上述の分類のクラスIIIに属する薬剤、並びに、通常BCS系の一部とされないが、高溶解性で低膜透過性を示すペプチド、タンパク質、ポリ核酸、SiRNA、RNA及び抗原の送達を促進するのに特に適していると考えられる。
【0054】
FDAガイダンス、“生物製剤分類体系に基づく即放性固体経口投薬形態のインビボのバイオアベイラビリティ及び生物学的同等性の検討の放棄(Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate-Release Solid Oral Dosage Forms Based on a Biopharmaceutics Classification System)”によれば、以下の通りである。
【0055】
薬剤は、250ml未満の溶媒(例えば、水)が、pH1〜7.5の範囲において、最も低い溶解性で最も高い用量強度を溶解するのに必要である場合、“高溶解性”であるとされる。あるいは、閾値は、200ml未満又は150ml未満の溶媒で設定することができる。
【0056】
製剤原料は、ヒトの吸収の度合いを、質量収支に基づき又は静脈内投与と比較して、投薬量の>90%と決定する場合、高い膜透過性であるとされる。あるいは、薬剤は、透過係数(例えば、Caco−2細胞単層で測定したもの)が1×10-4cm/秒未満である場合、“低膜透過性”とされることがある。あるいは、閾値は、1×10-5cm/秒未満、又は1×10-6cm/秒未満で設定することができる。
【0057】
本発明の特定の利点は、呼吸器官(特に経肺送達)、及び鼻腔又は口腔への治療薬の送達を可能にする、及び/又は改善することである。これらの粘膜を介する送達は、特に便利であり、また、治療薬は、体循環へ直接輸送され、それによって、胃酸、胆汁、消化酵素及び他の初回通過効果からの分解を回避することができる。その結果、送達のこれらの経路は、改善された作用開始、少ない投薬及び正確な投薬の可能性を提供し、治療薬の効能及び安全性プロファイルを向上することができる。経口投与の代わりとして、これらの代替的な経路は、嚥下障害の患者及び吐き気に苦しむ患者に有用である。
【0058】
したがって、本発明の別の局面によれば、治療薬と、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含んだ吸収促進剤とを含み、鼻腔、口腔及び/又は呼吸器官の粘膜への投与に適切な形態である、医薬組成物を提供する。
【0059】
本発明による組成物に含有する治療薬の治療効果の急速な発生は、最大血漿濃度に達するとき(Tmax)の治療薬の投与後の時間を測定することによって、評価することができる。組成物を吸収促進剤と共に経鼻投与するときのTmaxは、吸収促進剤を含まない同様の組成物のTmaxと比較して、比較的短い。また、試験では、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含まない同様の組成物の投与後の吸収と比較して、成長ホルモン及びインシュリンの鼻吸収が少なくとも2の倍数で増加し得ることを示した。
【0060】
鼻腔、口腔及び/又は呼吸器官の粘膜に投与した組成物は、好ましくは、噴霧乾燥又はフリーズドライした粒子、マイクロスフィア又はナノ粒子を含むスプレー、エアロゾル又は乾燥粉末の形態であり得る。経頬送達において好ましい付加的な組成物は、口腔錠若しくは舌下錠、トローチ若しくはロゼンジ、又は薄膜の形態の組成物である。薄膜ドラッグデリバリー(経口的に薄膜を溶解することも公知である)は、郵便切手と同様のサイズ、形状及び厚さの薄膜ストリップを指し、これは、一般に、舌の上若しくは下、又は頬の内部に沿って配置し、溶解が可能である。
【0061】
胃腸管を含む送達に関する問題にもかかわらず、経口送達は、依然として、治療薬の投与に関して普及し、容認されている経路である。本発明は、胃腸管を介する薬剤の輸送の改善を可能とするため、治療薬の経口送達に有用である。薬剤の吸収は、小腸及び結腸で生じる。経口送達用の組成物は、一般に、錠剤若しくはカプセル剤として、又は液体の形態で生産される。
【0062】
粒状形態の組成物は、粘膜への治療薬の送達に特に有用である。特に、乾燥粉末は、経鼻送達(経鼻的吸入)及び経肺送達(ドライパウダー吸入器)に用いられる。経鼻送達、経口送達及び経膣送達用の、錠剤等の固形の剤形、さらには、経口投与用のカプセル剤は、治療薬を粒状形態に組み込むことで生産することができる。
【0063】
したがって、本発明の特定の局面では、治療薬と、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含む吸収促進剤とを含み、粒状形態である、医薬組成物を提供する。
【0064】
本発明は、それ以外では粘膜又は皮膚で弱く吸収される、及びこれまで、好ましくは注射又は注入等の代替経路によって投与されていた、治療薬の送達に特に有用である。これは、一般に、高分子量、より具体的には1000より大きい分子量、特に、大きい親水性分子、さらには親水性の低分子量の分子の治療薬に適用される。
【0065】
親水性は、”logP値”で表すことができる。logP値は、分配係数Pの対数であり、ここで、Pは、平衡状態の2つの不混和性溶媒の混合物の2相での非イオン化化合物の濃度の比であり、第一の溶媒は水であり、第二の溶媒は疎水性溶媒で、最も一般的なものはオクタノールである。したがって、logP値は、水と疎水性溶媒の間の物質の差分溶解性の指標(すなわち、親水性又は疎水性の指標)である。疎水性化合物は、logP値が高く、また、親水性化合物は、logP値が低いか、又はlogP値が負の値である。一般に、本発明は、logP値が3未満の分子の吸収を促進するのに有用であり得る。幾つかの薬剤は、logP値が2.5未満、2.0未満、1.5未満又は1.0未満であり、また、好ましくは、水相の分配が負のlogP値の薬剤である。
【0066】
親水性治療薬の吸収を促進するための薬剤としてのポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルの使用は、弱水溶性薬剤の水性溶媒での可溶化を促進するそのような原料の使用についての過去の開示の恩恵を受けていない。親水性で、そのため水性溶媒によく溶解する薬剤は、可溶化を要求しない。したがって、先行技術は、そのような薬剤の処方に公知の可溶化剤を組み込むことについての動機を提供しなかった。また、これは、P−Gpの基質ではない薬剤にとって真実であり、その吸収が、P−Gpトランスポーターによる薬剤の流出の抑制によって影響を受けることは予想されない。
【0067】
本発明は、粘膜又は皮膚を介する生物製剤の送達を可能とし、これは、生物薬剤が、分子量が1000より大きい大分子である傾向があり、それ以外では粘膜又は経皮送達に不適切なので、特に有利である。
【0068】
本発明は、治療薬の送達に重要な発展、そして、ヒト及び動物の疾病の治療を提供することが考えられる。本発明の更なる局面では、粘膜又は皮膚を介する治療薬の吸収を促進する方法であって、該方法が、(a)治療薬と、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含む吸収促進剤とを含む組成物を提供すること、及び(b)該粘膜又は皮膚に該組成物を投与すること、を含む方法を提供する。
【0069】
本発明によれば、鼻腔等の粘膜経路、又は経皮的経路を介して哺乳動物に有利に投与することができる治療薬の一つのグループは、例えば、抗原又はワクチンの免疫反応を生ずる意図があるものである。粘膜又は皮膚を介する薬剤の吸収の促進によって、生じる免疫反応は改善する。
【0070】
本発明によれば、核酸は、鼻腔等の粘膜経路を介して、又は経皮的に哺乳動物に有利に投与することができる治療薬の別のグループである。特定例は、DNA、RNA及びSiRNAを含む。粘膜又は皮膚を介する核酸の吸収の促進は、組織の発現の改善又は防止を生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、可溶性インシュリンの単一の皮下注射後の血糖の変化の割合と比較した、濃度を変化させたSolutol(登録商標)HS15に溶解したインシュリンの単一の鼻腔内投与後のSD系ラット(Sprague Dawley rat)の血糖の変化の割合を示す。
【図2】図2は、5%・w/vのSolutol(登録商標)HS15中hGHの単一の鼻腔内投与後及び可溶性hGHの皮下注射後の血清中のヒト成長ホルモン(hGH)のレベルを示す。
【図3】図3は、ポリ乳酸‐グルコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)及びSolutol(登録商標)HS15と超臨界二酸化炭素(CO2)で調製したhGH微粒子の単一の鼻腔内投与後のhGHの血清レベルを示す。
【図4】図4は、Solutol(登録商標)HS15、LipoPeg(登録商標)10−S及びProtasan(登録商標)UP CL213に溶解したインシュリンの単一の鼻腔内投与後のSD系ラットの血糖の変化の割合を示す。
【図5】図5は、Solutol(登録商標)HS15とインシュリン、Solutol(登録商標)HS15の個々の成分の鼻腔内投与後、及びインシュリンの皮下注射後の血糖の変化の割合を示す。
【図6】図6は、Calu−3細胞の単層に種々の濃度で供したときのSolutol(登録商標)HS15の経上皮電気抵抗(TEER)に対する影響を示す。
【図7】図7は、種々の濃度で供したSolutol(登録商標)HS15のCalu−3細胞を介するFD4透過性に対する影響を示す。
【図8】図8は、種々の濃度で供したSolutol(登録商標)HS15のCaco−2細胞を介するFD4透過性に対する影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明の組成物は、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含む。好ましくは、該ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルは、ポリエチレングリコール660ヒドロキシ脂肪酸エステル(マクロゴール15ヒドロキシステアレートとしても公知)である。下の実施例に記載する試験で用いる好ましいポリエチレングリコール660ヒドロキシ脂肪酸エステルの一つは、Solutol(登録商標)HS15である市販品である。Solutol(登録商標)HS15は、12−ヒドロキシステアリン酸のポリグリコールモノエステル又はジエステル(主に、ポリエチレングリコール660と12−ヒドロキシステアリン酸)約70重量%、及び遊離ポリエチレングリコール(特に、ポリエチレングリコール660)約30重量%を含む。Solutol(登録商標)HS15は、水及びエタノールに可溶である。Solutol(登録商標)HS15は、現在、本発明で使用する最も好ましい吸収促進剤である。
【0073】
Solutol(登録商標)HS15に含まれる、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルと遊離ポリエチレングリコールの併用が、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルの単独使用よりも優れた吸収促進を生じ得ることが分かった。したがって、好ましい実施態様では、吸収促進剤は、約30%重量〜約90重量%のポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルと、約10%重量〜約50重量%の遊離ポリエチレングリコールとを含む。
【0074】
次に述べるものにおいては、用語“吸収促進剤”とは、遊離ポリエチレングリコールが存在する場合におけるポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルか、又はポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルと遊離ポリエチレングリコールの組み合わせを意味するものととる必要がある。該吸収促進剤は、市販品[例えば、Solutol(登録商標)HS15]の形態で用いる場合、用語“吸収促進剤”は、微量成分を含む製品を意味するのに用いてもよい。該ヒドロキシ脂肪酸エステルは、1種以上の異なる化学種を含んでもよいことが理解される。例えば、Solutol(登録商標)HS15の脂肪酸エステルの主要な脂肪酸成分が、12-ヒドロキシステアリン酸であるが、他の脂肪酸成分(例えば、ステアリン酸及びパルミチン酸)も含有してもよい。
【0075】
ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステル又は遊離ポリエチレングリコールのいずれかの成分として、吸収促進剤に含まれるポリエチレングリコールは、平均分子量が好ましくは2000Da未満であり、より好ましくは1000Da未満であり、また、最も好ましくは800Da未満である。該ポリエチレングリコールの平均分子量は、好ましくは200Da未満であり、より好ましくは400Da未満である。該ポリエチレングリコールの平均分子量は、好ましくは200〜1000Daか、又は400〜800Daである。所定の等級のポリエチレングリコールでは、分子量分布があることが理解される。また、該ポリエチレングリコールは、2以上の異なる等級の混合物であり、そのため、分子量分布は、二峰性(bimodal)又は多峰性(polymodal)であってもよい。
【0076】
本発明によって調製する組成物に含まれる吸収促進剤の量は、好ましくは、全組成物の少なくとも0.001重量%であり、より好ましくは、全組成物の少なくとも0.1重量%であり、より好ましくは、全組成物の少なくとも1重量%であり、より好ましくは、全組成物の少なくとも2重量%であり、最も好ましくは、全組成物の少なくとも5重量%である。
【0077】
本発明によって調製する組成物に含まれる吸収促進剤の量は、好ましくは、全組成物の99重量%以下であり、より好ましくは、全組成物の40重量%以下であり、より好ましくは、全組成物の20重量%以下であり、より好ましくは、全組成物の15重量%以下であり、最も好ましくは、全組成物の10重量%以下である。
【0078】
本発明によって調製する組成物に含まれる吸収促進剤の量は、好ましくは、全組成物の0.001重量%〜99重量%であり、より好ましくは、全組成物の0.1重量%〜40重量%であり、より好ましくは、全組成物の1重量%〜20重量%であり、より好ましくは、全組成物の2重量%〜15重量%であり、最も好ましくは、全組成物の5重量%〜10重量%である。好ましくは、該組成物に含まれる吸収促進剤の量は、全組成物の約7.5重量%、8重量%、8.5重量%、9重量%、9.5重量%又は約10重量%である。
【0079】
吸収促進剤の使用は、粘膜又は皮膚を介する治療薬の吸収を促進することが予想される。しかしながら、本発明は、それ以外では粘膜又は皮膚を介して弱く吸収される治療薬の吸収に特に有用である。
【0080】
本発明は、低分子量の小分子の治療薬の送達に有用である。用語“低分子量”とは、約1000Da未満の分子量を意味する。
【0081】
本発明には、親水性の低分子量の治療薬(例えば、モルヒネ)の送達において、特に有用性がある。
【0082】
粘膜又は皮膚を介する送達に関する問題が存在する親水性レベルの低分子量の治療薬は、通常logP値が約3未満である。3未満のlogP値の小さい薬剤分子の一例は、モルヒネ、アルフェンタニル、ブトルファノール及びブプレノルフィンを含む。
【0083】
本発明において小さい値であり得る送達用の薬剤の分類は、疎水性薬剤を含み、コルチコステロイドがその一例である。
【0084】
吸収促進剤の使用によって、logP値が3未満である治療薬の吸収を少なくとも10%改善することができる。
【0085】
本発明で用いる低分子量の治療薬の一例は、アシトレチン、アルベンダゾール、アルブテロール、アミオダロン、アムロジピン、アンフェタミン、アンフォテリシンB、アトルバスタチン、アトバクオン、アジスロマイシン、バクロフェン、ベクロメタゾン、ベネゼプリル、ベンゾナテート、ベタメタゾン、ビカルタニド(bicalutanide)、ブデソニド、ブプロピオン、ブスルファン、ブテナフィン、カルシフェジオール、カルシプロチエン(calciprotiene)、カルシトリオール、カンプトテシン、カンデサルタン、カプサイシン、カルバメゼピン、カロテン類、セレコキシブ、セリバスタチン、セチリジン、クロルフェニラミン、コレカルシフェロール、シロスタゾール、シメチジン、シンナリジン、シプロフロキサシン、シサプリド、クラリスロマイシン、クレマスチン、クロミフェン、クロミプラミン、クロピドロゲル(clopidrogel)、コデイン、コエンザイムQ10、シクロベンザプリン、シクロスポリン、ダナゾール、ダントロレン、デクスクロルフェニラミン、ジクロフェナク、ジクマロール、ジゴキシン、デヒドロエピアンドロステロン、デヒドロエルゴタミン、ジヒドロタキステロール、ジリスロマイシン、ドネペジル、エファビレンツ、エポサルタン、エルゴカルシフェロール、エルゴタミン、必須脂肪酸源、エトドラク、エトポシド、ファモチジン、フェノフィブラート、フェンタニル、フェキソフェナジン、フィナステリド、フルコナゾール、フルルビプロフェン、フルバスタチン、フォスフェニチオン(fosphenytion)、フロバトリプタン、フラゾリドン、ガバペンチン、ゲムフィブロジル、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリセオフルビン、ハロファントリン、イブプロフェン、イルベサルタン、イリノテカン、イソソルビドジニトレート、イソトレチノイン、イトラコナゾール、イベルメクチン、ケトコナゾール、ケトロラク、ラモトリジン、ランソプラゾール、レフルノミド、リシノプリル、ロペラミド、ロラタジン、ロバスタチン、L-サイロキシン(L-thryroxine)、ルテイン、リコペン、メドロキシプロゲステロン、メフェプリストン(mefepristone)、メフロキン、酢酸メゲステロール(megesterol acetate)、メタドン、メトキサレン、メトロニダゾール、ミコナゾール、ミダゾラム、ミグリトール、ミノキシジル、ミトキサントロン、モンテルカスト、ナブメトン、ナルブフィン、ナラトリプタン、ネルフィナビル、ニフェジピン、ニルソリジピン、ニルタニド、ニトロフラントイン、ニザチジン、オメプラゾール、オプレベルキン(oprevelkin)、エストラジオール、オキサプロジン、パクリタキセル、パリカルシトール、パロキセチン、ペンタゾシン、ピオグリタゾン、ピゾフェチン、プラバスタチン、プレドニゾロン、プロブコール、プロゲステロン、プソイドエフェドリン(pseudo-ephedrine)、ピリドスチグミン、ラベプラゾール、ラロキシフェン、ロフェコキシブ、レパグリニド、リファブチン、リファペンチン、リメキソロン、リスペリドン、リタノビル(ritanovir)、リザトリプタン、ロシグリタゾン、サキナビル、セルトラリン、シブトラミン、クエン酸シルデナフィル、シンバスタチン、シロリムス、スピロノラクトン、スマトリプタン、タクリン、タクロリムス、タモキシフェン、タムスロシン、タルグレチン(targretin)、タザロテン、テルミサルタン、テニポシド、テルビナフィン、テラゾシン、テトラヒドロカンナビノール、チアガビン、チクリロピン(ticlidopine)、チロフィブラン(tirofibran)、チザニジン、トピラメート、トポテカン、トレミフェン、トラマドール、トレチノイン、トログリタゾン、トロバフロキサシン、ユビデカレノン、バルサルタン、ベンラファキシン、ベルテポルフィン、ビガバトリン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ザフィルルカスト、ジレウトン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾピクロン、及びアカルボース;アシクロビル;アセチルシステイン;塩化アセチルコリン;アラトロフロキサシン;アレンドロネート;アルグルセラーゼ;塩酸アマンタジン;アンベノミウム(ambenomium);アミフォスチン;塩酸アミロリド;アミノカプロン酸;アンホテリシンB;抗血友病因子(ヒト);抗血友病因子(ブタ);抗血友病因子(組換え)、アプロチニン;アスパラギナーゼ;アテノロール;ベシル酸アトラクリウム;アトロピン;アジスロマイシン;アズトレオナム;BCGワクチン;バシトラシン;ベカプレルミン;ベラドナ(belladona);塩酸ベプリジル;硫酸ブレオマイシン;ヒトカルシトニン;サケカルシトニン;カルボプラチン;カペシタビン;硫酸カプレオマイシン;セファマンドールナファート;セファゾリンナトリウム;塩酸セフェピム;セフィキシム;セフォニシドナトリウム;セフォペラゾン;セフォテタン2ナトリウム;セフォタキシム;セフォキシチンナトリウム;セフチゾキシム;セフトリアキソン;セフロキシムアキセチル;セファレキシン;セファピリンナトリウム;コレラワクチン;絨毛性性腺刺激ホルモン;シドフォビル;シスプラチン;クラドリビン;臭化クリジニウム;クリンダマイシン及びクリンダマイシン誘導体;シプロフロキサシン;クロドロネート;コリスチンメタナトリウム;硫酸コリスチン;コルチコトロピン;コシントロピン;クロモリンナトリウム;シタラビン;ダルテパリンナトリウム;ダナパロイド;デスフェリオキサミン;デニロイキンディフティトックス;デスモプレシン;メグルミンジアトリゾアート及びジアトリゾ酸ナトリウム;ジシクロミン;ディダノシン;ジリスロマイシン;塩酸ドパミン;ドルナーゼアルファ;塩化ドキサクリウム;ドキソルビシン;エチドロン酸2ナトリウム;エラナプリラト(elanaprilat);エンケファリン;エノキサシン;エノキサパリンナトリウム;エフェドリン;エピネフリン;エポエチンアルファ;エリスロマイシン;塩酸エスモロール;第IX因子;ファムシクロビル;フルダラビン;フルオキセチン;ホスカルネットナトリウム;ガンシクロビル;顆粒球コロニー刺激因子;顆粒球‐マクロファージ刺激因子;組換えヒト成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;ゲンタマイシン;グルカゴン;グリコピロレート;ゴナドトロピン放出ホルモン及びその合成類似体;GnRH;ゴナドレリン;グレパフロキサシン;ヘモフィルスB共役ワクチン;不活化A型肝炎ワクチン;不活化B型肝炎ワクチン;ヘパリンナトリウム;硫酸インジナビル;インフルエンザウィルスワクチン;インターロイキン−2;インターロイキン−3;ヒトインシュリン;インシュリンリスプロ;ブタインシュリン;インシュリンNPH;インシュリンアスパルト;インシュリングラルギン;インシュリンデテミル;インターフェロンアルファ;インターフェロンベータ;臭化イプラトロピウム;イホスファミド;日本脳炎ウィルスワクチン;ラミブジン;ロイコボリンカルシウム;酢酸ロイプロリド;レボフロキサシン;リンコマイシン及びリンコマイシン誘導体;ロブカビル;ロメフロキサシン;ロラカルベフ;マンニトール;麻疹ウィルスワクチン;髄膜炎菌ワクチン;メノトロピン;臭化メペンゾラート;メサラミン;メタンアミン;メトトレキサート;メトスコポラミン;塩酸メトホルミン;メトプロロール;メゾシリンナトリウム(mezocillin sodium);塩化ミバクリウム;流行性耳下腺炎ウィルスワクチン;ネドクロミルナトリウム;臭化ネオスチグミン;メチル硫酸ネオスチグミン;ニューロンチン;ノルフロキサシン;酢酸オクトレオチド;オフロキサシン;オルパドロネート;オキシトシン;パミドロン酸2ナトリウム;臭化パンクロニウム;パロキセチン;ペフロキサシン;イセチオン酸ペンタミジン;ペントスタチン;ペントキシフィリン;ペリシクロビル(periciclovir);ペンタガストリン;フェントラミンメシレート;フェニルアラニン;サリチル酸フィゾスチグミン;ペストワクチン;ピペラシリンナトリウム;ヒト血小板由来増殖因子;多価肺炎球菌ワクチン;不活化ポリオウィルスワクチン;ポリオウィルス生ワクチン(OPV);硫酸ポリミキシンB;塩化プラリドキシム;プラムリンチド;プレガバリン;プロパフェノン;臭化プロペンタリン(propenthaline bromide);臭化ピリドスチグミン;狂犬病ワクチン;レシドロネート(residronate);リババリン(ribavarin);塩酸リマンタジン;ロタウィルスワクチン;キシナホ酸サルメテロール;シンカリド;天然痘ワクチン;ソラトール(solatol);ソマトスタチン;スパルフロキサシン;スペクチノマイシン;スタブジン;ストレプトキナーゼ;ストレプトゾシン;塩化スキサメトニウム;塩酸タクリン;硫酸テルブタリン;チオペタ(thiopeta);チカルシリン;チルドロネート;チモロール;組織型プラスミノーゲン活性化因子;TNFR:Fc;TNK−tPA;トランドラプリル;グルコン酸トリメトレキサート;トロスペクチノマイシン(trospectinomycin);トロバフロキサシン;塩化ツボクラリン;腫瘍壊死因子;腸チフス生ワクチン;尿素;ウロキナーゼ;バンコマイシン;バラシクロビル;バルサルタン;水痘ウィルス生ワクチン;バソプレシン及びバソプレシン誘導体;臭化ベクロニウム;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ビタミンB12;ワルファリンナトリウム;黄熱ワクチン;ザルシタビン;ザナマビル(zanamavir);ゾランドロネート(zolandronate);ジドブジンを含むが、これらに限定されない。
【0086】
上述するように、本発明は、BCSのクラスIIIに属する薬剤の送達に特に有用である。このクラスに属する小分子の治療薬の一例は、次のとおりである。
【0087】
アバカビル、アカルボース、アセチルカルニチン、アセチルサリチル酸、アシクロビル、アルブテロール(サルブタモール)、アレンドロン酸、アロプリノール、アミロライド、アムロジピン、アモキシシリン、アスコルビン酸、アンフェタミン、アナストロゾール、アスコルビン酸、アテノロール、アトロピン、ベンセラジド、ベンズニダゾール、ビスホスホネート、カペシタビン、カプトプリル、ビジソミド、カモスタット、カプトプリル、セファゾリン、セフカペンピボキシル、セフラコル(ceflacor)、セチリジン、セフメタゾール、セフロキサジン、クロラムフェニコール、コリンアルホスセラート、シラザプリル、シメチジン、シプロフロキサシンナトリウム、クロニジン、クロキサシリン、コデイン、コルヒチン、シクロホスファミド、ジクロキサシリン、ジダノシン、ジエチルカルバマジン、ジゴキシン、ドラセトロン、ドキシフルリジン、エナラプリル、エルゴノビン、酒石酸エルゴタミン、エリスロマイシン、エタンブトール、エトスクシミド、ファムシクロビル、ファモチジン、フェキソフェナジン、フルコナゾール、フルスルチアミン、フォリニン酸、フロセミド、ガバペンチン、ガンシクロビル、グラニセトロン、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド、イミダプリル、イソニアジド、ラミブジン、レトロゾール、レビチラゼタム(levitirazetam)、レボフロキサシン、レボチロキシン、リシノプリル、メトホルミン、メチオニン、メトトレキセート、メチルドーパ、s−メチルメチオニン、モルヒネ、ナドロール、ナイアシン、ニコランジル、ニコチン酸アミド、ニフルチモックス、ニザチジン、オロパタジン、オンダンセトロン、オセルタミビル、パラセタモール、ペニシラミン、ペリンドプリル、フェンジメトラジン、フェノキシメチルペニシリン、プラバスタチン、プレドニゾロン、プリマキン、プロカテロール、プロメタジン、プロピルチオウラシル、プソイドエフェドリン、ピラジンアミド、ピリドスチグミン、ピリドキシン、ラベプラゾール、ラニチジン、リバビリン、リボフラビン、リセドロン酸、リザトリプタン、スタブジン、スマトリプタン、タルチレリン、タムスロシン、テガフール、テノホビル、テラゾシン、テトラサイクリン、チアミン、チオクト酸、トピラマート、トリメタジジン、トリメトプリム、バラシクロビル、バルサルタン、ボグリボース、ザルシタビン、ジドブジン、ゾルミトリプタン。
【0088】
大分子で高分子量の治療薬の粘膜を介する送達は、多くの場合困難である。したがって、本発明は、大分子量の治療薬(特に、約1000より大きい、又は2000より大きい、又は4000より大きい分子量の治療薬)の送達に特に有用である。
【0089】
本発明の使用に適切な大きい治療薬のタイプの一例は、適切な複合体ポリマーと複合体を形成することが可能な、ペプチド、タンパク質、ポリ核酸、多糖類、RNA、SiRNA、抗原及び抗体を含む。そのような治療薬の具体例は、インシュリン、グルカゴン、ロイプロリド、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、血管内皮生長因子、エリトロポイエチン、ヘパリン、シクロスポリン、オキシトシン、チロシン、エンケファリン、チロトロピン放出ホルモン、濾胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、バソプレシン及びバソプレシン類縁体、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、インターロイキン−II、インターフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、メラニン細胞刺激ホルモン、グルカゴン様ペプチド−1及びその誘導体、グルカゴン様ペプチド−2及びその誘導体、カタカルシン、コレシストキニン−12、コレシストキニン−8、エキセンジン、ゴナドリベリン関連ペプチド、インシュリン様タンパク質、ロイシンエンケファリン、メチオニンエンケファリン、ロイモルフィン、ニューロフィジン、コペプチン(copeptin)、神経ペプチドY、神経ペプチドAF、PACAP関連ペプチド、膵臓ホルモン、ペプチドYY、ウロテンシン、腸ペプチド、向副腎皮質性ペプチド、上皮成長因子、プロラクチン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、成長ホルモン放出因子、ソマトスタチン、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、エンドルフィン及びアンジオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、腫瘍壊死因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、ヘパリナーゼ、血管内皮細胞増殖因子、酵素及び糖タンパク質を含む。
【0090】
インシュリン及びヒト成長ホルモン(hGH)等のペプチド及びタンパク薬剤が、親水性で、高分子量なので、それらは、P−Gpの基質ではない。したがって、鼻腔内でペプチド及びタンパク質と共に、本発明の吸収促進剤を用いて実証されたバイオアベイラビリティの増加は、P−Gpの流出の抑制によるものとはなり得ない。さらに、インシュリン及びhGHがCYP3Aの基質ではないので、吸収促進剤によるこの薬剤の代謝酵素の公知の抑制は、バイオアベイラビリティの増加の原因とはなり得ない。
【0091】
P−Gpの基質でない他の薬剤は、細胞単層(例えば、Caco−2細胞)を介する薬剤の輸送の測定、及び、公知のP−Gp阻害剤の存在下又はP−Gpの活性を低減する公知の他の条件下の測定を繰り返すことによって識別することができる。そのような条件下の薬剤輸送の低減は、P−Gpの基質である薬剤で示される。
【0092】
上にリストアップしたすべての特定の薬剤のうち、特に関心のあるものは、本発明に特に有用であると上述したカテゴリのうちの1つに属するものである[例えば、親水性のもの(例えばlogP値の低いもの)及び/又はP−Gp又はCYP-3Aの基質ではないもの]。
【0093】
本発明の組成物は、吸収促進剤と、治療薬とを含み、通常1種以上の添加剤及び/又は医薬として許容し得る担体を含む。
【0094】
該1種以上の添加剤の性質は、組成物の形態、治療薬の性質、投与方法、及び治療薬放出の用量と所定速度等を含む種々の要因に依存する。医薬組成物で用いる公知のすべての添加剤は、本発明で用いることが意図される。一般的な添加剤は、付着防止剤(antiadherent)、バインダ、生体付着剤(bioadhesive agent)、緩衝剤、コーティング剤、崩壊剤、賦形剤、希釈剤、ゲル化剤、増粘剤、染色剤、着香料及び保存剤、吸着剤、甘味料及び塩類に加え、治療薬と相互作用すること(例えば、封入体又は塩橋複合体を形成すること)、及び治療薬の制御放出を促進することが公知である、薬剤(シクロデキストリン及びイオン交換樹脂等)も含む。
【0095】
医薬として許容し得る添加剤は、粘膜上の組成物(特に、経鼻投与用の組成物)の保持を延ばすのに用いることができる。したがって、本発明の組成物は、好ましくは、生体付着剤、ゲル化剤又は増粘剤等の付加的な添加剤を含み得る。
【0096】
適切な生体付着剤(粘膜に付着する物質)の一例は、結晶セルロース、カルボポール(carbopol)及びヒドロキシプロピルセルロースを含む。本発明の組成物においては、粘膜との接触で少なくともある程度ゲル化するのが望ましい。適切なゲル化剤の一例は、ペクチン、コラーゲン、アルギン酸塩及びゼラチンを含むが、これらに限定されない。本発明の組成物に含み得る増粘剤[粘性促進剤(viscosity enhancer)とも呼ぶ]は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボポール、及びメチルセルロース(MC)を含むが、これらに限定されない。
【0097】
一般に、本発明の吸収促進剤は、複雑な製剤のタイプに頼ることなしに、製剤に含まれる治療薬の効果的な送達を提供する、開発することが可能な製剤であり得る。例えば、製剤は、リン脂質等を含まないか、又は実質的に含まず、また、リポソーム又は小胞を含まない。同様に、本発明に関連する主に関心を惹く薬剤が親水性であるので、該製剤は、ミセル溶液か、又はマイクロエマルジョンであり得ない。同様に、付加的な吸収促進剤を含んでもよいが、そのような原料の存在は、必要ではなく、該組成物は、付加的な吸収促進剤を含まないか、又は実質的に含まず、また、アミノ酸誘導体及びアミノ糖等の原料を含む。同様に、該組成物は、カチオン等を形成するイオン液体を含まない。
【0098】
本発明の組成物は、ポロキサマを含まないか、又は実質的に含まない。一般に、本発明の組成物は、熱可逆性がない。
【0099】
本願の文脈において、“実質的に”含まないとは、該組成物が、問題になる量の成分(例えば、ポロキサマ)を含まないこと、すなわち、皆無か、又は該組成物の特性に顕著な影響を及ぼさない程度に低いことを意味する。したがって、そのような原料の濃度は、全組成物の1重量%未満、0.01重量%未満、又は全組成物の0.001重量%未満であり得る。
【0100】
また、本発明の組成物は、1種以上の付加的な活性成分(例えば、付加的な治療薬及び/又は付加的な吸収促進剤)を含んでもよい。
【0101】
付加的な吸収促進剤は、粘液溶解剤、分解酵素阻害剤、及び粘膜細胞膜の流動性と浸透性を改善する化合物を含む。本発明の組成物で用いる付加的な吸収促進剤の具体例は、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体、胆汁酸塩、ポリL−アルギニン、キトサン及びキトサン誘導体、リン脂質、リゾリン脂質、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、カプリン酸ナトリウム、並びにアミノ化ゼラチンを含むが、これらに限定されない。付加的な吸収促進剤は、好ましくは、全組成物の10重量%未満の全量を含む。
【0102】
本発明は、鼻腔への治療薬の送達に特に有用であり得る。
【0103】
本発明は、肺に含む呼吸器官への治療薬の送達に特に有用であり得る。
【0104】
本発明は、口腔への治療薬の送達に特に有用であり得る。
【0105】
また、本発明は、皮膚を介する治療薬の送達に有用であり得る。
【0106】
さらに、本発明は、胃腸管への投与による(経口投与又は直腸内投与による)治療薬の送達に有用であり得る。
【0107】
本発明で用いることができる好ましい送達経路は、鼻腔、呼吸器官及び口腔への送達である。
【0108】
本発明の組成物は、適切な形態(例えば、スプレー、エアロゾル、乾燥粉末、口腔の錠剤若しくはカプセル剤、口腔錠若しくは舌下錠、トローチ若しくはロゼンジ、ペッサリー、坐薬、浣腸、ドロップ、又は薄膜)で、配合及び投与することができる。
【0109】
鼻腔粘膜への投与に有用な組成物の好ましい形態は、溶液、ゲル(及び自己ゲル化組成物)、粉末、及び鼻挿入物である。溶液は、スプレー又はエアロゾルの形態で投与することができる。粉末製剤は、乾燥粉末又は加圧エアロゾル剤であってもよい。
【0110】
鼻挿入物は、鼻腔の急な粘膜毛様体クリアランスを覆い、鼻粘膜に接触し、長時間薬剤を送達するように設計される。適切な鼻挿入物は、カラゲナン、カルボポール、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン及びキサンタンゴム等の生体付着性ポリマー系の凍結乾燥鼻挿入製剤を含む。凍結乾燥挿入物は、粘膜表面との接点で再水和し、通常鼻腔へ容易に投与することができるものよりも濃縮された粘着性のゲルを形成する。他の適切な形態の鼻挿入物は、本発明による吸収促進剤及び治療薬で前処理した吸収材料を含む。
【0111】
また、スプレー、エアロゾル及び粉末は、呼吸器官への投与に適切であり得る。
【0112】
口腔への送達に適切な組成物は、溶液及びゲル(及び自己ゲル化組成物)と共に、口腔錠又は舌下錠、トローチ若しくはロゼンジ、又は薄膜の形態の組成物を含む。
【0113】
皮膚を介する投与においては、好ましい製剤のタイプは、クリーム、軟膏、ゲル及び貼付剤を含む。
【0114】
水性媒体の溶液又は分散液を含む組成物は、スプレー又はエアロゾルとして投与することができる。エアロゾルとは、液体粒子の大気に浮遊するミストをいう。そのような製剤の調剤システムは、一般に、圧縮したプロペラントガスによって加圧した液体を含む缶又はボトルであってもよい。同様に、液体粒子のスプレーは、液体が、手動ポンプによって気圧調節され、噴霧器のノズルを通して押し出されるデバイスによって生産することができる。一般的な点鼻薬製剤は、水性溶媒に懸濁又は溶解した治療薬からなり、定量噴霧器のあるボトルに充填される。患者によるポンプの作動で、薬剤を微細液滴で鼻腔に送達する。
【0115】
肺への吸入によって治療薬を投与するのに用いるエアロゾル及びスプレーデバイスは、一般に、噴霧吸入器と呼ばれる。最も一般的なものは、エアロゾルを生産するのに圧縮空気源を利用するジェット噴霧吸入器である。利用可能な他の噴霧吸入器は、電気噴霧吸入器を含み、エアロゾルを膜又はメッシュの振動によって生成する。また、圧電気及び超音波噴霧吸入器を用いてもよい。
【0116】
本発明による治療薬を含む組成物は、粒状形態(例えば、噴霧乾燥又はフリーズドライした粒子、マイクロスフィア又はナノ粒子)で配合することができる。粒子は、例えば経鼻的吸入又は経口吸入によって、乾燥粉末として送達することができる。あるいは、粒子は、カプセルに充填することができ、他の添加剤と共に圧縮することができ、又は医薬として許容し得る担体に懸濁して、懸濁液又はエマルジョンを形成することができる。
【0117】
経鼻的吸入用の粉末送達デバイスは、一般に、圧縮する際に粒子のムラを生ずる手動操作のポンプを具備する。吸入器は、粒状の治療薬を肺に送達して、呼吸器疾患(例えば、喘息)を治療するのに使用することができる。乾燥粉末吸入器及び定量吸入器(又はエアロゾル吸入器)は、一般的なタイプの吸入器である。乾燥粉末吸入器は、通常ラクトース等の不活性担体と併用して、乾燥粉末形態の定量の治療薬を提供する。ユーザは、該粉末を流入及び崩壊して肺に到達するのに十分小さいエアロゾル粒子を形成するデバイスを介して、空気を吸入する。定量吸入器は、懸濁した粒子が存在する加圧したプロペラントガスを収容する。デバイスの作動で、粒子を含む1回量の液体プロペラントを放出する。揮発性プロペラントは、急速に蒸発する液滴に侵入して、ユーザが吸入する微粒子のエアロゾルを生ずる。
【0118】
本発明による組成物は、送達することが意図される形態で製造することができる。又は、投与前に組み合わせる独立した成分として供給することができる。例えば、治療薬を含む粒状形態の組成物が、投与前に適切なビヒクルに懸濁又は溶解することができることが意図される。
【0119】
本明細書中のナノ粒子は、例えば、Championら、Proc Natl Acad Sci USA, 104, 2007, 11901-4; Chattopadhyayら、Adv Drug Deliv Rev, 59, 2007, 444-53; Chouら、J Mater Sci Mater Med, 2007 Jun 19;[印刷物発行前の電子的発行物]; Schaffazickら、Pharmazie, 62, 2007, 354-60; Almeidaら、Adv Drug Deliv Rev, 59, 2007, 478-90; Muller, 制御された薬剤の送達とターゲッティングのためのコロイド担体(Colloid Carriers for Controlled Drug Delivery and Targeting), CRC Press, 1991;及びJorg Kreuter(編集)、コロイド状のドラッグデリバリーシステム(Colloidal Drug Delivery Systems), Marcel Dekker, 1994.の文献に記載する方法の範囲で生成することができる。一例は、ナノ沈澱(nanoprecipitation)、相分離、乳化、自己集合、高圧ホモジナイゼーション、複合体形成、及びイオンゲル化(ionic gelation)を含む。
【0120】
本明細書中のマイクロスフィアは、例えば、Cleland,治療薬とワクチンのための制御放出生物分解性マイクロスフィア製剤の生産における溶媒蒸発プロセス(Solvent Evaporation Processes for the Production of Controlled Release Biodegradable Microsphere Formulations for Therapeutics and Vaccines), Biotechnol Prog, 14(1), 102-107, 1998; Tracy, マイクロスフィアタンパク質デリバリーシステムの開発及びスケールアップ(Development and Scale-up of a Microsphere Protein Delivery System), Biotechnol Prog, 14(1), 108-115, 1998; Debenedettiら、維持された送達デバイスの生産のための超臨界流体の適用(Application of Supercritical Fluids for the Production of Sustained Delivery Devices), Journal of Controlled Release, 24, 1993, 27-44の文献に記載する方法の範囲で生成することができる。該マイクロスフィアは、改良して制御放出性を示すことができる(例えば、架橋度を制御することによって、又は治療薬の拡散性を変える添加剤の導入によって)。
【0121】
該吸収促進剤は、粒子のマトリクスに導入するか、あるいは粒子表面に付着してもよい。 薬剤は、粒子のマトリクスに導入するか、あるいは粒子表面に付着してもよい。
【0122】
ナノ粒子及びマイクロスフィアの生成に用いるポリマーは、次のものを含む:
【0123】
(a)ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ(エチレングリコール)と乳酸及びグリコール酸の共重合体、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(3−ハイドロキシブチレート)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(プロピレンフマレート)を含むポリエステル等の合成生分解性高分子;ポリ(エチレングリコール)とポリ(ブチレンテレフタレート)に基づくもののようなポリ(エーテルエステル)マルチブロック共重合体等の改質ポリエステル;HellerのACS Symposium Series 567, 292-305, 1994に記載のようなポリオール/ジケテンアセタール付加重合体を含むポリ(オルトエステル);TamadaとLangerのJournal of Biomatesials Science-Polymer Edition, 3, 315-353,1992、及びDombの生分解性高分子のハンドブック(Handbook of Biodegradable Polymers)第8巻、DombとWiseman(編集)、Harwood Academic Publishersに記載のようなポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキサン)[poly(carboxybiscarboxy phenoxyphenoxyhexane)] (PCPP)、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)、SA、CPP及びCPMの共重合体を含む酸無水物重合体;ポリ(アミノ酸);JamesとKohnの制御されたドラッグデリバリーの挑戦と戦略(Controlled Drug Delivery Challenges and Strategies)、pages 389-403, American Chemical Society, Washington DCに記載のようなものを含むポリ(擬アミノ酸)[poly(pseudo amino acids)];ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]の誘導体、SchachtのBiotechnology and Bioengineering, 52, 102-108, 1996に記載のようなポリマーを含むポリホスファゼン;及び、LloydのInternational Journal of Pharmaceutics, 106, 255-260, 1994に記載のようなものを含むアゾポリマー;
【0124】
(b)ポリエチレン、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体、ポリ(アクリル酸)ポリ(メタクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、及びその誘導体を含むビニル重合体等の合成非生物分解性高分子;及び、
【0125】
(c)デンプン、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシ-エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含んだセルロース及びその誘導体を含む炭水化物、ポリペプチド及びタンパク質等の天然重合体;コラーゲン;ゼラチン;デキストラン及びその誘導体;アルギン酸塩;キチン;及びキトサン。
【0126】
好ましいポリマーは、ウレタンエステル又はエポキシエステル、ビス-マレイミド、メタクリル酸メチル又はメタクリル酸グリシジル等のメタクリレート、トリ-メチレンカーボネート、ジメチレントリメチレンカーボネート等の非生物分解性高分子;グリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、p-ジオキサノン、ジオキセパノン(dioxepanone)、アルキレンオキザラート(alkylene oxalate)、ポリ(エチレングリコール)とポリ(ブチレンテレフタレート)に基づくもののようなポリ(エーテルエステル)マルチブロック共重合体等の改質ポリエステルなどの生物分解性合成高分子;及び、γ−カプロラクトン等のカプロラクトンを含む。
【0127】
一般に、治療薬に不活性であるポリマー又はポリマーの組み合わせを用いる。
【0128】
懸濁製剤は、例えば、エマルジョン及びコロイド懸濁液の一例を含む、Lieberman H A, Rieger M M及びBanker G S、医薬剤形:分散系(Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems)第2版、Marcel Dekker Ltd press, 1996の文献に記載の方法の範囲によって調製することができる。
【0129】
本発明による吸収促進効果は、当技術分野の公知の方法によってモニターすることができ、これらは、HPLC、LC−MS、LC−MC−MS、GC−MS、分光法、及びELISA分析を含む。治療薬の吸収の増加は、粘膜又は皮膚に対する吸収促進剤の直接的な効果の結果であり得る。
【0130】
本発明は、次の非限定的な実施例によって説明される。
【0131】
(実施例1)
インシュリンを、0.063Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中1〜40%w/vの範囲のSolutol(登録商標)HS15溶液の濃度を変化させて該溶液に溶解した。次いで、製剤4IU/kgをSD系ラット(Sprague Dawley rat)に鼻腔内投与し、血液試料を投与後2時間まで頻繁な間隔で採取した。標準グルコース計を用いて血糖を測定し、また、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって血漿中のインシュリンを測定した。
【0132】
また、鼻腔内投与との比較として、皮下注射によって、ラットのグループに、PBSに溶解したインシュリンを投与した。
【0133】
結果を図1に示す。
【0134】
PBS中7.5%及び10%・w/vのSolutol(登録商標)HS15製剤は、対照のインシュリン溶液(15%の血漿グルコースレベルの減少を示す)と比較して、70%の血漿グルコースレベルの減少を示し、鼻粘膜を介するインシュリンの輸送を促進するのに最も有効であった。
【0135】
(実施例2)
ヒト成長ホルモン(hGH)を、PBS中5%・w/vのSolutol(登録商標)HS15溶液に溶解した。次いで、該溶液を5mg/kgの投与量率でSD系ラットに鼻腔内投与し、5mg/kgのhGHの皮下投与と比較した。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、投与後24時間までの血清中のhGHレベルを測定した。
【0136】
結果を図2に示す。
【0137】
5%・w/vのSolutol(登録商標)HS15製剤は、皮下投与と比較して、17%のバイオアベイラビリティを有し、鼻粘膜を介するhGHの輸送を促進するのに有効であった。吸収促進剤なしで経鼻投与したhGHのバイオアベイラビリティは、1%未満であった。
【0138】
(実施例3)
hGH充填微粒子を調製するために、微粒子化hGH、PLGA、PLA及びSolutol(登録商標)HS15を圧力容器に加えた。該容器を密閉し、CO2を導入した。温度を32℃より高くし、圧力を76barより高くした。これらの条件下で、CO2は、超臨界的になり、ポリマーに溶解し、液化した。次いで、液化したポリマー、hGH及びSolutol(登録商標)HS15を混合し、薬剤/ポリマー混合物を粉末化及び減圧した後、凝固によって注射に適したサイズの微粒子を形成した。また、PLGA、PLA及びPEG−600を含むhGH充填微粒子製剤を、同様の方法を用いて調製した。該微粒子を5mg/kg hGHの投与量率でSD系ラットに鼻腔内投与し、hGHの皮下注射と比較した。血液試料を投与後24時間まで採取し、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、血清中のhGHレベルを測定した。
【0139】
結果を図3示す。
【0140】
PLGA、PLA/Solutol(登録商標)HS15微粒子の鼻腔内投与後の血清中のhGHを検出し、投与後1時間のピーク血清濃度は、27.6ng/mlであった。PLGA、PLA/Solutol(登録商標)HS15を含む微粒子の鼻腔内投与後の血清中では、hGHを検出しなかった。
【0141】
(実施例4)
本研究では、ラットのインシュリンの鼻吸収を促進するために、本発明の吸収促進剤の性能を、公知の吸収促進剤であるポリエチレングリコール−20ステアレート及び塩化キトサン(chitosan chloride)と比較した。用いた本発明の吸収促進剤は、市販品であるSolutol(登録商標)HS15であり、ポリエチレングリコール−20ステアレートは、市販されているLipoPeg(登録商標)10−Sであり、また、キトサン製品は、市販されているProtasan(登録商標)UP CL213である。Protasan(登録商標)UP CL213は、アセチル基の75〜90%を脱アセチルしたキトサンに基づくものである。
【0142】
インシュリンをPBS中LipoPeg(登録商標)10−Sの5%及び10%・w/v溶液、又は蒸留水中Protasan(登録商標)UP CL213の0.5% w/v溶液(pH5.0)に溶解した。製剤を、PBS中5%、7.5%及び10%・w/vのSolutol(登録商標)HS15に溶解したインシュリンと比較した。次いで、該製剤を4IU/kgでSD系ラットに鼻腔内投与し、血液試料を投与後2時間まで頻繁な間隔で採取した。標準グルコース計を用いて血糖を測定し、また、ELISAによって血漿中のインシュリン濃度を測定した。
【0143】
結果を図4示す。
【0144】
PBS中7.5%及び10%・w/vのSolutol(登録商標)HS15は、Protasan(登録商標)UP CL213及びLipoPeg(登録商標)10−Sよりも、鼻粘膜を介するグルコース吸収の促進において最も有効であった。PBS中5% w/vのSolutol(登録商標)HS15に溶解したインシュリンは、試験した濃度のProtasan(登録商標)UP CL213及びLipoPeg(登録商標)10−Sと比較して、同様のグルコース減少を示した。
【0145】
(実施例5) 7.5%・w/v Solutol(登録商標)HS15とヒト成長ホルモン(hGH)とを含む鼻腔内投与用の溶液の調製
【0146】
(原料)
0.063M リン酸緩衝生理食塩水(PBS) 100ml
Solutol(登録商標)HS15 7.5g
hGH 10mg
【0147】
(方法)
100mlのPBSに7.5gのSolutol(登録商標)HS15を加えた。溶液を撹拌しながら、透明な溶液が生成し、Solutol(登録商標)HS15がすべて溶解するまで、40℃まで徐々に加熱した。次いで、該溶液を使用前に2〜8℃に保存した。その後、1mlの7.5%・w/v Solutol(登録商標)HS15を10mgのhGHに加えた。すべてのhGHが溶解したら、該溶液は、鼻腔内投与することが可能である。
【0148】
(実施例6) 鼻腔内投与用のhGH充填微粒子の懸濁液の調製
【0149】
(原料)
カルボキシメチルセルロース 0.5g
マンニトール 5g
Tween80 0.1ml
蒸留水 100ml
hGH充填PLGA、PLA/Solutol(登録商標)HS15 250mg
【0150】
(方法)
PLGA,PLA及びSolutol(登録商標)HS15で製造したhGH充填微粒子を、超臨界CO2を用いて100μm未満の粒子サイズにした。0.5%・w/vカルボキシメチルセルロース、5.0%・w/vマンニトール、及び0.1%・v/vのTween80から成る水性注射剤ビヒクルを調製した。1mlの注射剤ビヒクルに250mgの微粒子を懸濁し、必要な投与量率でピペットによって鼻腔内投与した。
【0151】
(実施例7) 40%・w/vのSolutol(登録商標)HS15とリスペリドンとを含む鼻腔内投与用の溶液の調製
【0152】
(原料)
リスペリドン 213mg
Solutol(登録商標)HS15 4g
蒸留水 10ml
【0153】
(方法)
リスペリドン及びSolutol(登録商標)HS15を混合し、その混合物を60℃に加熱した。また、水も60℃に加熱し、該混合物に入れて十分に撹拌した。その後、製剤は、鼻腔内送達することが可能である。
【0154】
(実施例8) ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステル、遊離ポリエチレングリコール、及びこれら2物質の組み合わせの効果の比較
【0155】
次の原料について調査した。
【0156】
・ポリエチレングリコール600(PEG600)
・ポリエチレングリコール12−ヒドロキシステアリン酸(PEG−HSA)
・ポリエチレングリコール12−ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール(HSA-PEG−HSA)
・12−ヒドロキシ-ステアリン酸(HSA)
・Solutol(登録商標)HS15
【0157】
メタンスルホン酸を用いて、ポリエチレングリコール600(PEG600)及び12−ヒドロキシ-ステアリン酸(HSA)をアルゴン下120℃で還流することによって、PEG−HSA及びHSA−PEG−HSAを調製した。
【0158】
4つの化合物をインビボで試験した。次の成分を次に示す濃度で0.063Mリン酸緩衝液に溶解した。
【0159】
・PEG600‐10%・w/v溶液
・PEG−HSA−10%・w/v溶液
・HSA−0.37%溶液
・HSA−PEG−HSA−2%溶液
【0160】
低濃度のHSA及びHSA−PEG−HSAを、これらの原料の制限された溶解性の理由から用いた。
【0161】
次いで、リン酸緩衝液に溶解した成分を用いて、1mg/mlのインシュリン溶液を調製し、4IU/kgの割合で雄SD系ラットに鼻腔内投与した。すべての製剤をGilsonピペットで投与し、チップを鼻孔におよそ5mm挿入した。温度及び湿度をそれぞれ21℃±2℃及び55%±15%(相対)に維持したアクセスを制限した部屋に、動物を収容した。該部屋は、毎日12時間人工光を照らした。血液試料をラットの尾静脈から投与後0分(投与前)と投与後5、15、30、60及び120分で、ヘパリン処理した試験管に採取し、遠心分離し、また、血漿を採取した。血糖を、ワンタッチ式グルコース計を用いて、各試料採取地点に近接して、測定した。
【0162】
図5の血糖レベルは、これらの試験で、Solutol(登録商標)HS15は、血糖レベルの実質的な減少を生じるが、個々の原料(PEG、PEG−HSA、HSA、HSA−PEG−HSA)では、これらの試験で用いた濃度のすべてで、及び検討した特定の治療薬で、減少しないことを示した。したがって、PEGとPEG−HSAの組み合わせが、効果的な経粘膜吸収促進剤として特に良好な特性を示すことを結論付けることができる。
【0163】
(実施例9) 経粘膜吸収促進剤としてのSolutol(登録商標)HS15の作用機序の調査
【0164】
a)細胞培養
Calu−3細胞を、5%・CO2、37℃で、75cm3のフラスコに密集して増殖した。密集増殖したら、該細胞をプラズマ酸化処理した(plasma oxygen-treated)ポリスチレン膜(直径12mm、細孔径0.4μm)を有するTranswells(登録商標)に、ウエル当たり100,000細胞の接種密度で接種した。接種後、該細胞を、FBS(10%)、抗生物質/抗真菌剤(最終媒体濃度100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン、及び0.25μg/mlアンフォテリシンB)、及びL−グルタミン(最終媒体濃度2mM)を添加したEMEMで、5%・CO2、37℃で保持した。培養中、細胞培養液は、1日おきに交換した。細胞増殖及び密着帯形成を、経上皮電気抵抗(TEER‐密着帯開口の指標)の測定によって、接種7日から開始して1日おきに評価した(毎日のTEER測定は、細胞単層の損傷の可能性、測定過程及び電極からのイオンの漏出により回避した)。‘ブランク’膜(細胞のない)を介する抵抗を測定すること、及び単層TEERからこれを減じることによって、バックグラウンド抵抗を考慮した。
【0165】
Caco−2細胞を、5%・CO2、37℃で、75cm3のフラスコに密集して増殖した。密集増殖したら、該細胞をTranswells(登録商標)に、ウエル当たり200,000細胞の接種密度で接種した。接種後、該細胞を、抗生物質/抗真菌剤、FBS、及びL−グルタミン(Calu−3細胞で説明したもののように)を添加したDulbecoo変法イーグル培地(DMEM)で、5%・CO2、37℃で、保持した。そして、Dulbecoo変法イーグル培地(DMEM)は1日おきに交換した。21日目で、Caco−2細胞を正常な状態で完全に分化することができた。細胞増殖及び密着帯形成を、TEER測定によって、接種21日目に評価した。
【0166】
b)TEERの測定
1組のチョップスティック型電極を装備するEVOMボルトオームメーターを用いて、TEERを測定した。HBSS(pH6.0及び7.4、それぞれ上側及び基底外側)で初期の2時間、及びEMEM(一晩)で培養した細胞単層を、参照として用いた。TEERの変化は、この参照に対する割合として報告した。膜によるバックグラウンドTEERを、測定から控除した。すべての試験を3回行った。
【0167】
d)TEERに対するSolutol(登録商標)HS15の影響
Solutol(登録商標)HS15を次の濃度でHBSS/HEPES緩衝液(pH7.4)に溶解し、Calu−3細胞(ヒト気管支の上皮細胞系)に供した:0.10、0.02、0.005、0.0001%。ベースライン値を提供するために、Solutol(登録商標)HS15溶液添加前の多くの間隔でSolutol(登録商標)HS15添加前のTEERを測定した。TEER可逆性(毒性の測定)を評価するために、該細胞を洗浄し、通常培地で培養した後、該細胞を促進溶液で2時間培養した。
【0168】
ベースライン値の約50%までのSolutol(登録商標)HS15溶液添加後のTEERの減少(図6参照)は、Solutol(登録商標)HS15が、密着帯開口に対して小さな影響があることを示す比較として、キトサン(周知の密着帯開口剤)は、ベースライン値の約5%まで、同条件下で、TEERを減少させた。
【0169】
e)種々の濃度で供したときのSolutol(登録商標)HS15のCalu−3及びCaco−2細胞を介するFD4透過性に対する影響
Solutol(登録商標)HS15溶液を、FITC−デキストランMw4400(FD4)を添加したHBSS/HEPES緩衝液(pH7.4)中0.005、0.02、0.1%・w/vの濃度で調製した。該溶液を細胞単層に供し、Calu−3細胞(気管支癌)及びCaco−2細胞(腸癌)の2つの細胞系を用いた。規則的な基底外側のサンプリングによって、FD4の上側から基底外側への浸透性を測定し、また、FD4を蛍光測定によって定量した。
【0170】
図7は、基底外側のFD4濃度が、Calu−3細胞のSolutol(登録商標)HS15溶液に供したとき、対照溶液と比較して、高いことを示す。しかしながら、データの統計分析では、試験したSolutol(登録商標)HS15と対照の濃度間で有意差がないことを示した(p=0.0093)。比較として、同条件下で、キトサンが、対照の8倍高い顕著な透過性の増加を示した。図8に示すように、対照と比較したSolutol(登録商標)HS15溶液のFD4濃度の増加も、統計的に有意ではなかった(p=0.1473)。したがって、Solutol(登録商標)HS15は、密着帯開口に対して小さい影響しかないことが細胞培養試験から結論付けることができる。よって、細胞内経路が主要な作用機序であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘膜又は皮膚を介する治療薬の吸収を促進する吸収促進剤を含む医薬組成物であって、
該吸収促進剤は、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含む医薬組成物。
【請求項2】
治療薬と、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含む吸収促進剤と、を含み、鼻腔、口腔及び/又は呼吸器官の粘膜への投与が可能な形態である医薬組成物。
【請求項3】
治療薬と、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含む吸収促進剤と、を含み、粒状形態である医薬組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルは、ポリエチレングリコール660ヒドロキシ脂肪酸エステルである請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記吸収促進剤は、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルと、遊離ポリエチレングリコールと、を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記吸収促進剤は、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステル30重量%〜90重量%と、遊離ポリエチレングリコール10重量%〜50重量%と、を含む請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記吸収促進剤の量は、全組成物の少なくとも0.001重量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記吸収促進剤の量は、全組成物の99重量%以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記吸収促進剤の量は、全組成物の0.001重量%〜99重量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記治療薬のlogP値は3未満である請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記治療薬の分子量は1000より大きい請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記治療薬は、生物製剤である請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記治療薬は、ペプチド、タンパク質及び核酸である請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記治療薬は、DNA、cDNA、RNA、SiRNA及びRNAiからなる群より選択される核酸である請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記治療薬は、抗原又はワクチンである請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記治療薬は、生物製剤分類体系のクラスIIIに属する請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物は、1種以上の添加剤及び/又は医薬として許容し得る担体を更に含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物は、生体付着剤、ゲル化剤及び/又は増粘剤を更に含む請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物は、1種以上の付加的な治療薬を含む請求項1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物は、1種以上の付加的な吸収促進剤を含む請求項1〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記付加的な吸収促進剤は、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体、胆汁酸塩、ポリL−アルギニン、キトサン及びキトサン誘導体、リン脂質、リゾリン脂質、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸、カプリン酸ナトリウム、並びにアミノ化ゼラチンからなる群より選択される請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記付加的な吸収促進剤の量は、全組成物の10重量%以下である請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記粘膜は、鼻、頬、肺、膣又は直腸の粘膜である請求項1〜22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記粘膜は、鼻、頬、又は肺の粘膜である請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物は、経口投与用である請求項1〜24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記医薬組成物は、スプレー、エアロゾル、乾燥粉末、口腔の錠剤若しくはカプセル剤、口腔錠若しくは舌下錠、トローチ若しくはロゼンジ、ペッサリー、坐薬、浣腸、ドロップ、又は薄膜の形態である請求項1〜25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記医薬組成物は、スプレー、エアロゾル、乾燥粉末、口腔錠若しくは舌下錠、トローチ若しくはロゼンジ、又は薄膜の形態である請求項26記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物は、噴霧乾燥又はフリーズドライした粒子、マイクロスフィア又はナノ粒子の形態である請求項3記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の医薬組成物における吸収促進剤の使用方法であって、
該吸収促進剤を、治療薬を含む医薬組成物に使用することにより、粘膜又は皮膚を介する該治療薬の吸収を促進する吸収促進剤の使用。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法であって、
該医薬組成物に、ポリエチレングリコールのヒドロキシ脂肪酸エステルを含んだ吸収促進剤を含有する段階を含む製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−502087(P2012−502087A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526574(P2011−526574)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051188
【国際公開番号】WO2010/029374
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511058408)クリティカル ファーマシューティカルズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Critical Pharmaceuticals Limited
【Fターム(参考)】