説明

医薬組成物、及び組成物を含む創傷接触層

本発明は、分散した親水コロイドを有する親水性基剤を含み、該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む、創傷被覆材、創傷接触層及び医薬組成物、並びに該組成物の創傷治療のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物及び創傷治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトのための治療法としては多数の軟膏類又は他の組成物が知られており、数十年にわたり使用されてきた。これらの軟膏は一般的に健康な皮膚又は一部の粘膜、例えば眼などに対する用途の、半固体の組成物である。これらの軟膏及び製剤は通常、有効薬剤成分の経皮投与による局所作用又は皮膚に対する軟化作用又は保護作用を有することが想定される。
【0003】
さらに、創傷治療のための多数の軟膏が知られている。例えば、特許文献1においては、ゲルとして製剤され、少なくとも1種のゲル形成多糖類及びヘキシレングリコールを含む創傷用軟膏が記載されている。特にゲル形成多糖類としてはカルボキシメチルセルロース又はアルギン酸ナトリウムが使用されるべきである。この組成物は抗菌作用を有し、線維形成に対する毒性が無いものであるべきである。
【0004】
さらに、特許文献2においては、例えば創傷治療又は小穴治療の際に用いる、皮膚保護用ペーストが記載されており、該ペーストはポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、水、油、及び脂肪酸エステルを含んだゲルとして製剤される。このゲルは少なくとも20重量%の水及び少なくとも45重量%の親水コロイドを含む。
【0005】
さらには、限られた分量の水を吸収し、創傷治療に用いることが出来る親水軟膏が知られている。これらの軟膏は様々なモノグリセリド類、ジグリセリド類、及びトリグリセリド類、並びに非極性油の混合物を含み、例えばいわゆる軟膏圧迫ガーゼ製造のための担体材料上のAtrauman(登録商標)の製品中に加工される。
【0006】
また、無菌創傷被覆材が特許文献3において知られており、該創傷被覆材は軟膏を含浸した担体材料及びポリビニルピロリドンの水溶性フィルムを有する。該軟膏は親水性又は疎水性軟膏であってもよい。
【0007】
特許文献4からは、滅菌可能なペースト又はクリームが知られており、該ペースト又はクリームはエマルジョン及び水不溶性ゲル形成材料を含み、該水不溶性ゲル形成材料は架橋したカルボキシメチルセルロースとすることができる。該エマルジョンはその一部に油又はろう、水、及び乳化剤を含むとされており、ここで水含有量は少なくとも40重量%に達する。
【0008】
特許文献5からは、創傷治療のための湿布が知られており、該湿布は分散した親水コロイド粒子を有する疎水性エラストマーマトリクスを含む。該マトリクスはさらに55から90重量%の非極性油及び10よりも高いHLB値を有する界面活性剤を含むとされている。
【特許文献1】欧州特許第621 031号
【特許文献2】欧州特許第107 526号
【特許文献3】欧州特許第65 399号
【特許文献4】WO 96/036,315
【特許文献5】WO 01/070,285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
技術的現状及びそれに関連する不都合を考慮し、本発明の目的は、医薬用途に適し、創傷の治癒に好ましい効果があり、さらに創傷周辺の皮膚に対し治療効果を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、60から95重量%の親水性基剤を含み、該親水性基剤が5から40重量%の分散した親水コロイドを有し、該親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む、10重量%未満の水を含んだ、創傷治療のための医薬組成物によって達成される。
【0011】
以降、全ての含有量データは、特に断りがない限り、本発明による医薬組成物の総重量に対する重量パーセントとして理解されるべきである。また、本発明による医薬組成物は、それが単相又は多相であり、少なくとも1種の乳化剤の存在によりエマルジョンとして提供される又はエマルジョンを形成し得る場合、親水性基剤として理解されるべきである。これらのエマルジョンは少なくとも1つの水相及び/又はゲル相並びに少なくとも1つの油相を含むエマルジョンであり得る。
【0012】
本組成物の1つの長所は、この組成物が親水性基剤中に分散した親水コロイドの含有によって非常に速やかに大量の液体、例えば創傷からの滲出液を吸収し得ることである。該親水性基剤は液体と接触した際に短時間にエマルジョンを形成し、その際、エマルジョン中の水が第2のステップで該基剤中に分布している分散した親水コロイドから吸収され得る。この工程は並行的にも行われ得る。どのような場合でも、親水コロイドは生成中のエマルジョンとともに第2の液体リザーバを形成する。
【0013】
前記医薬組成物の第2の好ましい態様においては、前記親水性基剤は無水であるべきである。この親水性基剤は従って単相混合物として存在し、少なくとも1種の乳化剤の存在により、例えば水が添加された際にエマルジョンを形成し得る。以降、本発明と関連して、これは前記親水性基剤が微量の水を含み得るが、水含有量は親水性基剤の重量に対し最大で1重量%までとすべきことを意味する。
【0014】
他の好ましい態様においては、前記組成物はクリームの、クリーム基剤の、又は軟膏の親水性基剤を有する。前記親水性基剤は特に親水性クリーム若しくはクリーム基剤、又は親水性軟膏である。ここ及び本出願の文脈において、軟膏は単相系と理解されるべきであるが、クリームは二層又は多相系である。これらの製剤の正確な区別はさらなる製剤の分類においてもドイツ薬局方DAB9及びその注釈書において提供されており、それに対する参照が本明細書において明示されている。
【0015】
さらに、前記組成物はさらに10から30重量%の非極性脂質を有する親水性基剤を含むことが特に規定される。
【0016】
本発明の範囲において、「脂質」という語は、脂肪類、油類、ろう類、その他の総称として用いられる。「油相」及び「脂質相」という語も同義語として利用される。脂質類はその極性によって他と区別される。水に対する界面張力を脂質又は脂質相の極性の指標として採用することが既に提案されている。これは、対応する脂質相の極性が大きいほど、この脂質相と水との間の界面張力が低いことを意味する。界面張力は本発明において任意の油成分の極性の可能な指標として考えられる。界面張力はここで、2相間の界面に位置する1メートルの長さを有する線上に働く力である。この界面張力の物理単位は伝統的に力/長さの比率に従って算出され、通常mN/mで与えられる。これは界面を減ずる傾向を示す時に正符号を有する。逆の場合、これは負の符号を有する。本発明の意味においては、脂質類は特に水に対する界面張力が20mN/m未満に達する場合極性であると考えられ、水に対する界面張力が30mN/m超に達する場合非極性であると考えられる。水に対する界面張力が20から30mN/mの間にある脂質類は一般的に中極性と呼ばれる。
【0017】
非極性脂質類は特に、分岐及び非分岐炭化水素及び炭化水素ろう、特にワセリン、ペトロラタム、パラフィン油、鉱油、及びポリイソブテンの群より選択される脂質類である。
【0018】
非極性脂質成分に加えて、親水性基剤は極性及び中極性脂質類も含み得る。極性及び中極性脂質類は、例えば、脂肪酸トリグリセリド類;脂肪酸ジグリセリド類;脂肪酸モノグリセリド類;又は例えばジグリセリン若しくはトリグリセリンの完全若しくは部分脂肪酸エステル類等のグリセロールオリゴマーの脂肪酸エステル類;の群からのものである。特にこれらは、8から24、特に12から18個のC原子の鎖長を有する、飽和及び/又は不飽和の、分岐及び/又は非分岐のアルカン炭酸類のトリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドエステル類であり得る。前記脂肪酸トリグリセリド類、脂肪酸ジグリセリド類、又は脂肪酸モノグリセリド類は、例えば合成、半合成及び天然の脂肪類又は油類の群から有利に選択され得る。
【0019】
極性及び非極性脂質の部分並びに0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤を含み、それによって前記親水性基剤における中極性及び極性脂質類の非極性脂質類に対する比率が脂質の全含有量において1:1超、特に2:1超、また非常に好ましくは3:1から10:1の間に達する混合物は、特に本発明に関連する親水性基剤として考えられる。
【0020】
本発明の組成物は特に、該組成物の総重量に対し20−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類及び/若しくはトリグリセリド類、並びに/又はグリセロールオリゴマー類の完全若しくは部分エステル類を含む親水性基剤を特徴とする。
【0021】
前記親水性基剤は特に、該組成物の総重量に対し30−70重量%、さらに特別には40−70重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、及び/若しくはトリグリセリド類、並びに/又はグリセロールオリゴマー類の完全若しくは部分エステル類を含む。ここで、該組成物が10−50重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、及び/又はトリグリセリド類、並びに10−30重量%のオリゴマーのグリセリン、特にジグリセリン又はトリグリセリンの部分エステル類を含む場合、特に好都合である。
【0022】
他の特に好ましい態様においては、本発明の組成物は該組成物の総重量に対し40−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類、特にジグリセリン又はトリグリセリンの部分エステル類と、15−30重量%の非極性脂質類と、0.5−30重量%の乳化剤とを含む親水性基剤を有する。
【0023】
水が親水性基剤に添加された際に多相性混合物、すなわちエマルジョンが生成し得るような界面活性剤の活性を特徴とする物質は、本発明と関連した乳化剤として理解されるべきである。特に、本発明の組成物は、水が添加された際に、前記親水性基剤が油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)、油中ゲル型エマルジョン(G/Oエマルジョン)、水中油型エマルジョン(O/Wエマルジョン)、ゲル中油型エマルジョン(O/Gエマルジョン)、水中油中水型エマルジョン(W/O/Wエマルジョン)、ゲル中油中ゲル型エマルジョン(G/O/Gエマルジョン)、水中油中ゲル型エマルジョン(G/O/Wエマルジョン)、ゲル中油中水型エマルジョン(G/O/Wエマルジョン)、油中水中油型エマルジョン(O/W/Oエマルジョン)、又は油中ゲル中油型エマルジョン(O/G/Oエマルジョン)を形成し得る少なくとも1種の乳化剤を含むべきである。同様に好ましくは、O/W若しくはW/Oエマルジョン又はO/G若しくはG/Oエマルジョンを形成することができ、またエチレン若しくはプロピレングリコール類又はエチレンプロピレングリコール類を含まない、即ちエチレン、プロピレン、又はエチレンプロピレングリコール単位を含むどのような物質も含まない乳化剤である。
【0024】
本発明の組成物はこれによって特に0.5−50重量%の少なくとも1種の乳化剤、特に0.5−40重量%の少なくとも1種の乳化剤、特に0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤、特に1−20重量%の少なくとも1種の乳化剤、及び非常に好ましくは1−10重量%の少なくとも1種の乳化剤も特徴とし得る。
【0025】
本発明のさらなる態様においては、本発明の組成物は従って10重量%未満の水と、5から40重量%の親水コロイドが分散している60から95重量%の親水性基剤を含み、それによって親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種のO/W乳化剤を含む。しかし、非イオン性W/O乳化剤がO/W乳化剤の代わりに使用されるとも規定され得る。
【0026】
O/W型の乳化剤が使用される場合、前記組成物の使用時、例えば水によって全組成物を創傷から特に簡便に洗い落とし得ることが好都合である。
【0027】
さらに本発明の組成物は、好ましくは、
【0028】
【化1】

【0029】
(J.Falbe、M.Regitz編集)、第10版、Georg Thieme Publishers Stuttgart、ニューヨーク(1997)、1764頁に列挙された定義に従って3から18のHLB値を示す、少なくとも1種の非イオン性乳化剤を含み得る。10から15のHLB値を示す非イオン性O/W乳化剤及び3から6のHLB値を示す非イオン性W/O乳化剤が本発明によれば特に好ましい。
【0030】
乳化剤又は乳化剤群、特に非イオン性O/W乳化剤群は:
− 一般式R−O−(CH2−CH2−O)n−Hを有する脂肪アルコールエトキシレート類又は一般式R−O−(CH2−CH(CH3)−O)n−Hを有する脂肪アルコールプロポキシレート類であって、ここでRが分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から50の数字を表すもの;
− エトキシ化又はプロポキシ化ラノリンアルコール類;
− 一般式R−O−(CH2−CH2−O)n−R’を有するポリエチレングリコールエーテル類又は一般式R−O−(CH2−CH(CH3)−O)n−R’を有するポリプロピレングリコールエーテル類であって、ここでR及びR’が独立に他の分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−Hを有する脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−Hを有する脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでRが分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から40の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−R’を有するエーテル化脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−R’を有するエーテル化脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでR及びR’が独立に分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−C(O)−R’を有するエステル化脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−C(O)−R’を有するエステル化脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでR及びR’が独立に分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− エトキシ化又はプロポキシ化の度合いが3から50の間である、飽和及び/又は不飽和の、分岐及び/又は非分岐の脂肪酸類のポリエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル類又はポリプロピレングリコールグリセリン脂肪酸エステル類;
− 3から100のエトキシ化又はプロポキシ化の度合いを有する、エトキシ化又はプロポキシ化ソルビタンエステル類;
− 3から150の間のエトキシ化又はプロポキシ化の度合いを有する、エトキシ化又はプロポキシ化トリグリセリド類;
− 分岐又は非分岐のアルカン酸又はアルケン酸をベースとしたポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類であって、例えばソルベス型の、5から100のエトキシ化の度合いを有するもの;
の群より有利に選択され得る。
【0031】
本発明の範囲において有利に使用される乳化剤は、さらに二炭酸エステル類又は三炭酸エステル類の群からの非イオン性W/O乳化剤を含む。マロン酸、コハク酸、及びアジピン酸のエステル類は特にこれらの中で適している。これらの中で特に好ましいのはまた、二炭酸類のエステル類、特にコハク酸のエステル類であり、これは飽和若しくは不飽和の、及び/若しくは直鎖又は分岐のC8−C24の脂肪アルコール類並びに/又はグリセリン及びそれらのオリゴマー、特にジグリセリン若しくはトリグリセリンで生成される。飽和し分岐したC8−C24の脂肪アルコール類並びに/又はグリセリン及びそれらのオリゴマー類との、特にジグリセリン又はトリグリセリンとのコハク酸のエステル類は、非イオン性W/O乳化剤として特に好都合であることが分かった。極めて特別に適したものはこれらの二炭酸エステル類であり、これはコハク酸及び飽和し、分岐したC8−C24の脂肪アルコール類及びジグリセリンから生成される。このような乳化剤の一つはINCI命名法ではコハク酸イソステアリルジグリセリルと呼ばれ、‘Imwitor(登録商標)780’の製品名で入手出来る。これらの乳化剤はポリエチレングリコールが含まれていない、即ちエチレングリコールのユニットを何も含んでいないというさらなる利点を有する。
【0032】
特に、イオン性O/W乳化剤も本発明と関連したO/W乳化剤として利用することが出来る。ヒドロキシカルボン酸及び/又はトリカルボン酸を有する飽和又は不飽和の脂肪酸のモノグリセリド類及び/又はジグリセリド類のエステル類の群から選択される乳化剤は、O/W乳化剤として、特にイオン性O/W乳化剤として好都合に用いることが出来る。ヒドロキシカルボン酸及び/又はトリカルボン酸を有する飽和脂肪酸類、特に乳酸及び/又はクエン酸のモノグリセリド類及び/又はジグリセリド類の部分的に中和されたエステル類は、特にO/W乳化剤として好ましい。INCI命名法でグリセリルココエートクエン酸塩乳酸塩と呼ばれる乳酸及び/又はクエン酸のエステル類は、極めて特別に好ましい。これらの乳化剤は、例えば‘IMWITOR(登録商標)380’又は‘IMWITOR(登録商標)377’の製品名で入手出来る。これらの乳化剤はポリエチレングリコール類が含まれていない、即ちエチレングリコールのユニットを何も含んでいないというさらなる利点を有する。
【0033】
本発明によると、親水コロイドという用語は、水に可溶性若しくは吸収性であり、及び/又は水で膨潤し、ゲルを形成する、親水性の合成又は天然ポリマー材料である材料として理解されるべきである。好ましくは、本発明の組成物は、例えばアルギン酸並びにその塩及びその誘導体、キチン又はその誘導体、キトサン又はその誘導体、ペクチン、セルロース又はセルロースエーテル若しくはセルロースエステル等のその誘導体、架橋又は非架橋カルボキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、寒天、グアールガム、又はゼラチンから選択される、合成又は天然ポリマー材料からの親水コロイドを含む。セルロース又はその誘導体若しくは塩、アルギン酸又はその誘導体若しくは塩、並びにその混合物は、親水コロイドとして非常に好ましく用いられ得る。
【0034】
前記親水コロイドは繊維の形態で、また組成物中に分散する粒子及び/又は繊維の形態で利用可能である。該親水コロイドは特に粒子の形態で利用可能である。前記組成物中の親水コロイドの割合は該組成物の総重量に対して5から40重量%の間に達する。親水コロイドの割合は該組成物の総重量に対して好ましくは5から30重量%の間、さらに好ましくは10から25重量%の間、特に好ましくは15から25重量%の間に達し得る。
【0035】
粒子が親水コロイド粒子に対し10重量%未満の水含有量を有する粒子形態の親水コロイドが、特に親水コロイドとして好ましい。分子内又は分子間で混ざり合った、又は架橋した親水コロイドも好ましく用いられ得る。これらの親水コロイドは例えば水又は生理食塩水に不溶性であり、即ち、これらの親水コロイドはこれらの液体が添加された際に膨潤し、膨潤した粒子が組成物内に分散するような内部凝集力を有する。
【0036】
特に好ましい態様によると、本発明の組成物は好ましくはセルロース誘導体又はその塩、アルギン酸塩又はその誘導体、キチン又はその誘導体若しくは塩の群から選択される少なくとも1種の親水コロイドを含有する。該親水コロイドの由来はここでは重要ではなく、即ちこれらの親水コロイドは植物若しくは動物由来の、又は合成的に、例えば微生物学的方法により製造されるものでよい。植物又は動物由来であって化学合成によって修飾された親水コロイドを用いることも可能である。
【0037】
本発明と関連して、セルロース誘導体の群は特にセルロースエーテル類及びセルロースエステル類、並びにそれらの塩類を含む。特にセルロースエーテル類として用いられるのはヒドロキシアルキルセルロース類;特に、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシブチルセルロース等の、ヒドロキシ−C1-6−アルキルセルロースであり、非常に好ましくはヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースである。セルロースエステル類として特に用いられるのはカルボキシアルキルセルロース類、特に、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、若しくはカルボキシブチルセルロース又はそれらの塩類等の、カルボキシ−C1-6−アルキルセルロースであり、非常に好ましくはカルボキシメチルセルロース若しくはカルボキシエチルセルロース又はそれらの塩類である。
【0038】
さらに好ましい態様によると、前記組成物は少なくとも2種の異なる親水コロイドを含む。ここで、この少なくとも2種の親水コロイドを、セルロース誘導体又はそれらの塩類、特にセルロースエステル類又はそれらの塩類、アルギン酸塩類又はそれらの誘導体、キチン又はその誘導体若しくは塩類の群から選択するのが特に好都合であることが示されている。
【0039】
さらに、上記の種類の医薬組成物を含有する創傷軟膏も本発明の目的である。特に60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む、10重量%未満の水を含んだ創傷軟膏が本発明の目的である。一方で創傷滲出物が特にこの創傷軟膏によって吸収され、他方で該液体のリザーバを形成する親水コロイドの部分が創傷のための湿潤環境を提供することから、この創傷軟膏は特に中程度から重度の滲出性創傷に使用され得る。親水コロイドは創傷軟膏において液体リザーバとして、また同時に保湿剤として作用する。
【0040】
前記創傷軟膏は好ましくは10重量%未満の水を有し、またさらに60から95重量%の親水性基剤を有し、該親水性基剤中に5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤は20−35重量%の非極性脂肪類及び0.5−30重量%までの少なくとも1種の乳化剤を含む。10重量%未満の水を有する本発明の前記創傷軟膏は非常に好ましくは60から95重量%の間までの親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤は50−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマーの部分エステル類、特にジグリセリン又はトリグリセリンと、20−35重量%の非極性脂肪類と、0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤とを含む。特に、前記創傷軟膏は無水である。
【0041】
60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含み、10重量%未満の水を含んだ組成物の、創傷治療用薬剤の製造のための使用は同様に本発明の目的である。該薬剤は特に創傷軟膏であり得、さらに火傷又は慢性創傷の治療に対しても好ましい。
【0042】
本発明のさらなる考えに従うと、担体材料及び医薬組成物を含んだ接触層も本発明の目的である。担体材料と、60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤が0.5から50重量%の間の少なくとも1種の乳化剤を含み、10重量%未満の水を含んだ組成物と、を含む創傷接触層も特に本発明の目的である。担体材料により、適用し易く、継続的に創傷に対し使用し得る形態をその創傷接触層に与えることが可能である。前記組成物は該担体材料の少なくとも片面にはけで塗るか、あるいは別のやり方で付与することが出来る。該組成物を該担体材料の両面に付与するか、又は該組成物を該担体材料に完全に含浸させることも可能である。
【0043】
周知の創傷接触層に対するさらなる利点は、創傷に対する適用時、通常これは手袋を装着した熟練した人員によって行われるが、本発明の創傷接触層は、手袋に接着したり、又はくっついたりしない。従ってこれら創傷接触層は特に安全に扱われる。
【0044】
組成物、特に軟膏、クリーム、又はクリーム基剤を担体材料に少なくとも50g/m2、特に100g/m2、非常に好ましくは100から450g/m2、最も好ましくは100から300g/m2の量で適用することが特に好都合である。
【0045】
前記創傷接触層は特に好ましくは担体材料と10重量%未満の水を含んだ組成物とを特徴とし、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤は20−35重量%の非極性脂肪及び0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む。該創傷接触層は非常に好ましくは担体材料と10重量%未満の水を含んだ組成物とを含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤は50−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類の部分エステル類、特にジグリセリン又はトリグリセリンと、20−35重量%の非極性脂肪と、0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤とを含む。特に該組成物は無水である。
【0046】
前記組成物中の脂肪酸グリセリド類の存在により、特に創傷の治癒を促す薬効成分が創傷の周囲の皮膚、いわゆる創傷周辺皮膚に対し提供される。
【0047】
極めて多様な材料が担体材料としてここで使用され得る。ポリマーフィルム類及びフォイル類、ポリマー発泡体類、並びに不織布類が織物類と同様に特に好都合にこの目的に用いられ得ることが見出された。特に編まれた、縦編みされた、又は織られた生地等の織編生地と同様に不織布も特に本発明の創傷接触層における担体材料として使用され得る。疎水性の編まれた、縦編みされた、又は織られた、脂質類を吸収し得ない生地も、ここで非常に好都合に使用され得る。本発明の創傷接触層は特にポリアミド縦編み生地を含む。
【0048】
織物担体材料が用いられる場合、該材料は特に開口部も備え得る。即ち、該担体材料は穴部を備え得るか、又は網目状であり得る。該担体材料は縦編みされた、織られた、又は編まれた生地であって、該材料が伸長されていない状態にある時に内側幅が0.3から3.0mm、好ましくは0.5から2.5mm、及び特に好ましくは0.5から2.0mmである穴を有するものと特に規定される。この穴については円形、楕円形、方形、六角形、又は八角形等のどのような望ましい形態も想定され得る。これらの縦編み生地は最小20g/m2から最大120g/m2の単位面積当たり重量を有する。
【0049】
創傷の治癒を促進する物質が同様に創傷接触層を通して放出され得る。これには特に殺カビ剤、殺菌剤、又は抗菌効果を有する物質が含まれる。特別な態様においては、該創傷接触層は少なくとも一種の殺カビ剤、殺菌剤、又は抗菌物質を有する親水コロイドを含む。キトサン、銀、銀錯体類、銀塩類、亜鉛、亜鉛塩類、又は亜鉛錯体類は本目的に特に適している。
【0050】
しかし、創傷の治癒を促進する薬剤を担体材料に直接施すことも出来る。該創傷接触層のさらなる態様においては、担体材料として、抗菌作用金属、好ましくは銀又は銀塩で被覆された、不織布、又は編まれ、縦編みされ、若しくは織られなどした織編生地が特に有利に使用され得る。このような担体材料が用いられる場合、前記組成物は該担体材料の第1面上の金属又は金属塩に直接施すことが出来る。ここでは、該組成物が無水であれば特に好都合である。
【0051】
前記担体材料が少なくともその第1面に組成物を含むという事実は、本発明に従うと、該組成物が金属を備えた該担体材料に直接配置されること、又は連続的若しくは不連続な金属層が最初に第1面に施され、その後順次該組成物が施されることのいずれかを意味する。特に該被覆材が創傷中に詰められる場合、該組成物の両面への適用が望ましいこともある。この場合、両面に金属被覆も施すか、又はそれを縦編み生地中に封入することが好都合である。
【0052】
前記組成物は特に軟膏又はクリームであり得るが、ここで金属を備えた前記担体材料と患者の創傷との間での媒介物として働く。このようにして、創傷の金属に対する直接的な接触及び特にそこへの付着も確実に回避され得る。この軟膏又はクリームはさらに創傷周辺皮膚の領域において治療効果を示し得る。創傷接触層が前記組成物によって創傷と接触した際、前記金属、例えば銀は、該組成物の影響下で、特に創傷滲出液を介して創傷被覆材から放出され、該金属が該組成物を介して創傷に到達する。用いられる金属は特に単体の銀であると規定され得る。該金属は前記担体材料上の被覆物として配置され、又は該担体材料中に含まれ得る。
【0053】
本発明はさらにカバー層と創傷接触層とを含んだ創傷被覆材を含む。ここで該創傷接触層は組成物又は創傷軟膏を含み、該組成物又は創傷軟膏は親水性基剤を含み、ここに親水コロイドが分散しており、該親水性基剤は少なくとも1種の乳化剤を含む。本発明は特にカバー層と創傷接触層とを含んだ創傷被覆材を含み、該創傷接触層は10重量%未満の水を含んだ組成物を含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤は0.5から50重量%の間までの少なくとも1種の乳化剤を含む。
【0054】
本発明は特にカバー層と創傷接触層とを含んだ創傷被覆材を含み、該創傷接触層は担体材料と10重量%未満の水を含んだ組成物とを含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤は0.5から50重量%の間までの少なくとも1種の乳化剤を含む。
【0055】
本発明のさらなる発展によれば、本発明はカバー層、吸収層、及び創傷接触層を含んだ創傷被覆材も含み、ここで該創傷接触層は10重量%未満の水を含んだ組成物を含み、該組成物は0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を有する60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散している。
【0056】
創傷被覆材は特にカバー層としてポリマーフォイル又はポリマーフィルムを特徴とし得る。特に好ましいのは高い水蒸気透過性を有するポリマーフィルム類である。ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルポリアミドコポリマー、ポリアクリレート又はポリメタクリレートフィルム類は特にこの目的に対し適している。ポリウレタンフィルム、ポリエステルウレタンフィルム、又はポリエーテルウレタンフィルムは特にポリマーフィルムとして好ましい。15から50μm、特に20から40μm、極めて好ましくは25から30μmの厚さを有するポリマーフィルム類も非常に好ましい。前記創傷被覆材の該ポリマーフィルムの水蒸気透過性は好ましくは少なくとも750g/m2/24時間、特に少なくとも1000g/m2/24時間、極めて好ましくは少なくとも2000g/m2/24時間を示す(DIN 13726による測定)。
【0057】
本発明の創傷被覆材はさらにいわゆるアイランドドレッシングとして提供され得る。ここで、前記創傷接触層はカバー層よりも小さい適用表面を有する。即ち、該創傷接触層はその外周に沿ったカバー層で囲まれている。該カバー層は、患者の皮膚に該創傷被覆材の全体が接着又はくっ付くように、接着剤を有するか又は粘着性を示すようにすることが出来る。この接着剤の適用は表面全体にわたり、又は不連続な若しくは特定の領域内のみに施し得る。使用される接着剤は通常の接着剤、特にアクリレート系接着剤又はポリウレタン類を基盤とした感圧性接着剤であってもよい。これは好ましくは特にポリウレタン類、特に水性ポリウレタン類を基盤としたゲル接着剤である。これは最も好ましくは特に水性アクリレート類を基盤としたヒドロゲル接着剤である。
【0058】
本発明のさらなる発展によれば、前記創傷被覆材は表面全体にわたって接着剤で被覆されたカバー層を有し得る。ここで、この接着剤を備えた担体材料の水蒸気透過性は、好ましくは少なくとも1000g/m2/24時間、特に少なくとも1200g/m2/24時間、さらに特別には少なくとも2000g/m2/24時間に達する(DIN EN 13726による測定)。
【0059】
本発明の創傷被覆材は、例えば三角形、円形、楕円形若しくは正方形、長方形又はあらゆる相称型若しくは非相称型等の、どのような幾何学的形状でも提供され得る。
【0060】
本発明の創傷被覆材はさらに極めて多様な機能を有する複数の層を備えることが出来る。本発明のさらなる発展によれば、該創傷被覆材は少なくとも1つのさらなる層を有する。この層は好ましくは雑菌混入からの防護物としての放出層であってよく、該創傷被覆材が利用される際に、前記創傷接触層の創傷に置かれる側の面に施される。しかし、該創傷被覆材は少なくとももう1つの層を該創傷接触層と前記カバー層との間に有することも規定され得る。このさらなる層は例えば、例えばポリウレタンの親水性発泡材料の吸収層のような吸収層であってよい。
【0061】
60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が0.5から50重量%の間までの少なくとも1種の乳化剤を含む、10重量%未満の水を含んだ医薬組成物の、創傷の治療、特に火傷又は慢性創傷の治療のための薬剤、特に創傷接触層又は創傷被覆材の製造のための使用は、結果として本発明の目的である。
【0062】
本発明の特別な態様においては、本発明の創傷被覆材は包装内に配置されると規定される。ここにおいて、該包装は無菌包装であることが特に規定される。本発明の他の好ましい態様においては、上記の種類の創傷接触層及び別の創傷被覆材を含むシステムが単一包装内に配置されることが規定される。ここにおいて、該包装は無菌包装であることが特に規定される。このシステムの特に好ましい態様においては、それぞれの個別要素又は要素各群はそれぞれ包装又は無菌包装内の個別包装内に配置される。各個別包装は個別無菌包装であることも規定され得る。
【0063】
ここに列挙される本発明の他の態様の特徴は、その個々の他の態様に限定されるものではないことがここで強調されるべきである。むしろ態様の組み合わせ又は他の態様の個々の特徴の組み合わせは同様に本発明の態様と考えられ得る。本発明は同様に決して次の図面の説明により限定的に考えられるべきでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明を図面及び実施例を参照しながら説明する。
図1は、創傷接触層の断面を示し、図2は、創傷被覆材の断面を示し、図3は、他の創傷被覆材の断面を示している。
【実施例】
【0065】
【表1】

【0066】
組成物1の製造:
フェーズA(成分1から6)をおよそ75−80℃において溶解し、攪拌する。次にフェーズB(成分7)を強力な攪拌下、フェーズA中に分散させる。該軟膏化合物を強力な攪拌下冷却し、微細結晶構造を生成させる。該組成物の滴点は46℃である(欧州薬局方 2002、方法2.2.17に従った測定)。
【0067】
【表2】

【0068】
組成物2の製造:
フェーズA(成分1から6)をおよそ75−80℃において溶解し、攪拌する。次にフェーズB(成分7)を強力な攪拌下、フェーズA中に分散させる。該軟膏化合物を強力な攪拌下冷却し、微細結晶構造を生成させる。該組成物の滴点は48℃である(欧州薬局方 2002、方法2.2.17に従った測定)。
【0069】
3)創傷接触層1
既存の創傷接触層は図1に示す構造を有する。それによると、該創傷接触層(10)は疎水性の100%ポリエステル縦編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)から形成される担体材料(1)を有し、該担体材料は両側又は両面が本発明の実施例1の組成物(2a及び2b)で被覆されている。この担体材料は該組成物で完全に湿っており、各面への適用量は140g/m2に達する。該担体材料生地は63g/m2(非伸長時)の単位面積当たり重量を有し、100cm当たりおよそ40個の六角形の開口部(図1に示さず)を有する。該開口部の最大内側幅は2mmに達する。前記創傷接触層は良好な凝集を有し、治療対象の創傷に特に良好に適用され得る。
【0070】
4)創傷接触層2:
この創傷接触層も図1に示されるものと似た構造を有する。この接触層(10)は実施例1に開示された成分の組成物を有する。担体材料(1)はおよそ90g/m2(非伸長時)の単位面積当たり重量の疎水性の100%ポリアミド縦編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)から成り、100cm当たりおよそ46個の六角形の開口部(図1に示さず)を有する。該開口部の最大内側幅は0.8−1.0mmに達する。前記組成物の被覆重量は240g/m2に達する。
【0071】
前記織編担体材料は該担体材料をガイドローラで親水性組成物1の温かい槽(40℃)を通して移動することにより該親水性組成物で被覆される。この槽の通過後、移った過剰量の組成物はスクイージによって取り除かれる。この被覆された材料は室温にされ、組み立てられ、包装され、そして滅菌される。
【0072】
5)創傷接触層3
この創傷接触層も図1に示されるものと似た構造を有する。この創傷接触層(10)では、組成物は実施例2に開示された成分を有する。担体材料(1)はおよそ80g/m2(非伸長時)の単位面積当たり重量の疎水性の100%ポリアミド縦編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)から成り、100cm当たりおよそ40個の六角形の開口部(図1に示さず)を有する。該開口部の最大内側幅は1.2−1.5mmに達する。前記組成物の被覆重量はおよそ330g/m2に達する。
【0073】
前記織編担体材料は該担体材料をガイドローラで親水性組成物2の温かい貯留槽(60℃)を通して移動することにより該親水性組成物で被覆される。この槽の通過後、移った過剰量の組成物はスクイージによって取り除かれる。この被覆された材料は室温にされ、組み立てられ、包装され、そして滅菌される。
【0074】
模擬創傷環境において市販の製品と比較した、本発明の創傷接触層の吸水率の測定:
この試験の背景は創傷接触層が創傷上で、例えば中程度の滲出又はひどい滲出を伴う創傷上で、どのように振る舞うかということに関する証拠を得ることにある。
【0075】
a)ゼラチン溶液を次のように生成する:
i)溶液Aの生成
室温において、0.277gの塩化カルシウム及び8.298gの塩化ナトリウムを1リットルのメスシリンダーに入れ、ここに脱イオン水で1リットルまで満たす。該溶液を塩類が溶解するまで攪拌する。
【0076】
ii)ゼラチン溶液の生成
ygの上記溶液Aにxgのゼラチン粉末(豚皮A型、175ブルーム、GELITAゼラチン、DGF Stoess AG、69402 Eberbach)を添加し、x%のゼラチン溶液を生成する。この目的においては、該ゼラチンを溶液Aへ全て一度に速やかに添加し、全粒子が該溶液で湿るように該溶液を強力に攪拌し、得られた混合物を60℃のウォーターバス中で24時間攪拌する。水が漏れないように注意すべきである。この方法で20%(x=20、y=80)及び35%(x=35、y=75)のゼラチン溶液が生成する。
【0077】
b)24時間後、直径9cmのペトリ皿を30gのまだ温かいゼラチン溶液で満たし、対応する蓋で密閉し、室温に冷やした。得られた固体ゲルを試験片の分析に利用した。
【0078】
c)本発明の創傷接触層を分析するため、ゼラチン溶液で満たした前記ペトリ皿中に片面が完全に入るように試験片を設置し、該ペトリ皿を対応する蓋で密閉し、これを室温で24時間置くことによって3×3cm片を分析した。24時間後、吸収された液体の量を該試験片を秤量することにより測定した。該試験片全体の重量を測定するように注意が必要である。必要に応じ、ゼラチン表面に残る残渣を、適したスクレーパーを用いて注意深く取り出し、秤量時に考慮することが出来る。結果を表1及び2に示す。ここで、試料当たり3回の測定が行われ、各試験片は別々にペトリ皿内に設置された。
【0079】
分析に含められたのは次のものである。
試料1:ベータ線(40kGy)によって滅菌された、実施例4による本発明の創傷接触層
試料2:ベータ線(40kGy)によって滅菌された、実施例5による本発明の創傷接触層
【0080】
【化2】

【0081】
試料4:Physiotulle(登録商標)、Coloplast社
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
表1に示される結果は中程度又は重度の滲出性創傷上の創傷接触層の挙動の概略を表す。これによると、実施例5(試料2)による創傷接触層は平均でその自重の158%の液体を24時間で吸収する。比較した場合、市場で入手出来る製品はずっと低い吸湿性を示す。その値は平均で、試料4については36%、試料3については15%である。同様の傾向が表2の結果で示され得る。この分析は軽度から中程度の滲出性創傷に対する模擬実験に相当する。これによると、実施例5(試料2)による創傷接触層は平均でその自重の115%の液体を24時間で吸収する。比較した場合、市場で入手出来る製品はより低い吸湿性を有する。その値は平均で、試料4については25%、試料3については19%である。両試験の結果を互いに比較すると、本発明の創傷接触層は良好な標的吸湿も示す、即ち重度な滲出性創傷からは、より軽度の滲出性創傷からよりも多くの水分が吸収されることが分かる。
【0085】
6)創傷被覆材1
所謂アイランドドレッシングとしての本発明の創傷被覆材(20)を図2に示す。該創傷被覆材は順にカバー層(24)及び創傷接触層(21)から成る。該創傷接触層は、順に、実施例1の組成物(23)で被覆されたポリエステル繊維の疎水性不織布である担体材料(22)から成る。該組成物は該ポリエステル不織布を180g/m2の被覆量で完全に覆う(ウォータージェット補強、単位面積当たり重量50g/m2)。該創傷接触層はポリアクリレート感圧性接着剤(25)で表面全体を被覆されたカバー層(24)で覆われる。該カバー層は30μm厚のポリウレタンフィルムで、1100g/m2/24時間の水蒸気透過性を有し、該創傷接触層の周縁部全辺にわたって広がり、該創傷接触層が該カバー層の接着性縁部(26a、26b)により患者の皮膚に接着し得る。該創傷接触層(22)は同時に前記感圧性接着剤(25)によって該カバー層に固定される。
【0086】
7)創傷被覆材2
本発明によるさらなる創傷被覆材(30)を図3に示す。これは図2に示す創傷被覆材(20)と比較してさらなる吸収層(37)を有する。このさらなる吸収層(37)は単位面積当たり重量500g/m2、5mm厚の親水性連続気泡ポリウレタン発泡体から形成される。該吸収層はアクリレート分散接着剤の感圧性接着層(35)によりカバー層に固定される。該カバー層は25μm厚で1200g/m2/24時間の水蒸気透過性を示すポリウレタンフィルムから成る。創傷接触層(31)は実施例1の組成物(33)で被覆された(150g/m2)ポリアミド縦編み生地(32)から成る。このポリアミド縦編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)は100cm当たり45個の六角形の開口部(図3には示さず)を有する。この開口部の最大内側幅は0.8から1.0mmの間である。単位面積当たり重量は86g/m2に達する。該創傷被覆材は特に重度滲出性創傷に対し用いられるべきである。該創傷被覆材は前記組成物中のトリグリセリド類の部分により創傷周辺皮膚を治療し、長期間にわたる使用の際にも創傷にくっ付かない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】創傷接触層の断面を示す図である。
【図2】創傷被覆材の断面を示す図である。
【図3】他の創傷被覆材の断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5から40重量%の親水コロイドが分散する60から95重量%の親水性基剤を含み、前記親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む、10重量%未満の水を含んだ、創傷治療のための医薬組成物。
【請求項2】
前記親水性基剤が無水であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記親水性基剤が、クリーム、クリーム基剤、又は軟膏であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記親水コロイドが、粒子形態で提供され、前記粒子が前記親水コロイド粒子の重量に対し10重量%未満の水含有量を有することを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記親水コロイドが、セルロース又はその誘導体若しくは塩、及びアルギン酸又はその誘導体若しくは塩、の群から選択されることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記親水性基剤がさらに20から80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、及び/若しくはトリグリセリド類、並びに/又はグリセロールオリゴマー類の完全若しくは部分エステル類を含むことを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記親水性基剤がさらに10から30重量%のワセリン、ペトロラタム、パラフィン油、又はろう類の群からの非極性脂質類を含むことを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記乳化剤がイオン性O/W乳化剤であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記乳化剤が非イオン性W/O乳化剤であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項10】
上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物を含む創傷軟膏。
【請求項11】
担体材料(1)及び上記請求項1から9のうち1項に記載の組成物又は請求項10記載の創傷軟膏を含む創傷接触層(10、21、31)。
【請求項12】
前記担体材料(1)が不織布、編物、縦編み生地、又は織物であることを特徴とする請求項11記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項13】
前記担体材料(1)が疎水性の編物、縦編み生地、又は織物で形成されていることを特徴とする上記請求項11又は12の少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項14】
前記担体材料(1)がポリアミド縦編み生地を含むことを特徴とする上記請求項11から13の少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項15】
請求項11〜14の少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)とカバー層(24、34)とを含む創傷被覆材(20、30)。
【請求項16】
前記創傷被覆材がさらに前記創傷接触層(10、21、31)に隣接する吸収層(37)を含むことを特徴とする請求項15記載の創傷被覆材(20、20)。
【請求項17】
5から40重量%の親水コロイドが分散する60から95重量%の親水性基剤を含み、前記親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む、特に上記請求項1から10のうち1項に記載の10重量%未満の水を含んだ組成物の創傷治療用薬剤製造のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−519916(P2009−519916A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544884(P2008−544884)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012101
【国際公開番号】WO2007/068491
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(500038020)パウル ハルトマン アクチェンゲゼルシャフト (64)
【Fターム(参考)】