説明

千鳥配置された焼灼素子のアセンブリ

焼灼カテーテルは、近位端と遠位端との間で長手方向軸に沿って長手方向に延びるカテーテル本体と、カテーテル本体に接続された複数の焼灼素子を有する焼灼素子アセンブリと、を備え、各焼灼素子は通電されて焼灼ゾーンを形成する。焼灼素子の焼灼ゾーンが長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたるが、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼素子全部の焼灼ゾーンが、長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたるように、焼灼素子は千鳥状に配置されている。焼灼ゾーンは閉じたループを形成しないため、腎動脈/静脈狭窄のリスクが低減するか、またはそのリスクがない。任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼素子全部の焼灼ゾーンが実質的に閉じたループにわたるため、実質的に完全な腎除神経が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年11月13日出願の米国仮特許出願第61/260,978号に基づくものであり、その利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して焼灼装置に関し、特に千鳥状に配置された焼灼素子のアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
高血圧は、世界的に大きな健康上の問題となっている。先進国の成人人口の推定30〜40%が高血圧に罹患している。さらに、その罹患率は、特に開発途上国で増加が予想されている。高血圧の診断や治療は先進国でも最適に行われていない。固定複合薬(fixed-drug combinations)を含む多数の安全且つ有効な薬理学的療法が利用可能であるにもかかわらず、十分な血圧コントロールを達成してガイドラインの目標値に至る患者のパーセンテージは依然として低い。薬理学的方法では十分な血圧コントロールを達成できないことが多いが、それは、大部分が無症候性である疾患に対する生涯にわたる薬理学的療法に対する医師の惰性と、患者の不服従および不履行と、の両方によるものと考えられる。従って、新規な高血圧管理法の開発は優先事項である。これらの考慮事項は、とりわけ、いわゆる治療抵抗性高血圧患者(即ち、最も高い忍容用量で多剤併用療法を行っても目的の血圧値を達成できない患者)に関するものである。このような患者は大きな心血管事象のリスクが高い。
【0004】
腎交感神経遠心性および求心性神経は、腎動脈壁内で腎動脈壁にすぐ隣接してあり、全身性高血圧の発症および維持に非常に重要である。確かに、高血圧の治療方法としての交感神経の調節は、最近の薬理学的療法が出現するずっと以前に考えられた。胸部、腹部、または骨盤交感神経の除神経を行うための根治手術法は、いわゆる悪性高血圧患者の血圧降下に成果があった。しかし、これらの方法には、高い周術期罹患率および死亡率、ならびに重度の体位性低血圧に加えて、腸、膀胱、および勃起不全を含む長期合併症が伴った。腎除神経とは、腎神経を部分的にまたは完全に損傷して腎神経活動を部分的にまたは完全に遮断するように、化学薬剤もしくは外科的処置を適用すること、またはエネルギーを印加することである。腎除神経により、腎交感神経活動が低減または完全に遮断され、腎血流(RBF)が増加し、腎血漿ノルエピネフリン(NE)含有量が減少する。
【0005】
腎除神経の目的は、動脈性高血圧に関与する腎交感神経系の作用を抑制することである。装置に基づく腎除神経によってこのような目的を達成し得るが、それにより腎動脈/静脈狭窄の合併症が起こるおそれがある。従って、腎除神経を実施することができ、腎動脈/静脈狭窄のリスクが低い装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態は、千鳥配置された焼灼素子のアセンブリに関し、この焼灼素子は、通電されて、長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたる焼灼ゾーンを形成するが、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼素子全部の焼灼ゾーンが、長手方向軸の周囲の実質的に閉じたループにわたる。腎神経はほぼ長手方向を向いている。焼灼ゾーンは閉じたループを形成しないため、腎動脈/静脈狭窄のリスクが低減するか、またはそのリスクがない。他方、任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼素子全部の焼灼ゾーンは、実質的に閉じたループにわたるため、実質的に完全な腎除神経が達成される。
【0007】
本発明の一態様によれば、焼灼カテーテルは、近位端と遠位端との間で長手方向軸に沿って長手方向に延びる細長いカテーテル本体と、カテーテル本体に接続された複数の焼灼素子を有する焼灼素子アセンブリと、を備え、各焼灼素子は通電されて焼灼ゾーンを形成する。焼灼素子の焼灼ゾーンが長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたり、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼素子全部の焼灼ゾーンが、長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたるように、焼灼素子は千鳥状に配置されている。
【0008】
幾つかの実施形態では、焼灼素子は、長手方向または横方向の少なくとも1つで互いに不連続に離間しており、焼灼素子の少なくとも2つが互いに長手方向に離間している。焼灼素子は、長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたるが、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼素子全部が、長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたる。複数の焼灼素子はRF電極である。焼灼素子は、同時に、順次、または任意の順番で通電されて焼灼ゾーンを形成するように、独立して制御される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、焼灼カテーテルは、近位端と遠位端との間で長手方向軸に沿って長手方向に延びる細長いカテーテル本体と、カテーテル本体から離れるように外側に焼灼電極を付勢する弾性付勢部材によってカテーテル本体に接続された複数の焼灼電極を有する電極アセンブリと、を備え、各焼灼電極は通電されて焼灼ゾーンを形成する。電極アセンブリは折畳配置と拡張配置との間で移動可能であり、弾性付勢部材は、カテーテル本体から離れて拡張配置に向かって外側に焼灼電極を付勢する。焼灼電極の焼灼ゾーンが長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたり、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼電極全部の焼灼ゾーンが、長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたるように、焼灼電極は千鳥状に配置されている。
【0010】
幾つかの実施形態では、焼灼電極の温度を測定するため複数の温度センサが複数の焼灼電極と熱的に結合されている。カテーテル本体は、焼灼電極の方に灌流液を送出するため、複数の焼灼電極の近傍に複数の灌流液流路を備える。複数の焼灼電極のそれぞれが、カテーテル本体から離れるように外側に1つの焼灼電極を付勢する対応の弾性付勢部材を有する。弾性付勢部材の少なくとも幾つかはカテーテル本体の遠位端に接続されている。弾性付勢部材の少なくとも幾つかは、遠位端の近位のカテーテル本体の外周面に接続されている。焼灼電極の少なくとも幾つかの横方向の寸法はその長手方向の寸法より大きい。拡張配置の焼灼電極は被焼灼面と接触し、拡張配置の焼灼電極は長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたるが、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する拡張配置の焼灼電極全部が、長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたる。焼灼電極は、同時に、順次、または任意の順番で通電されて焼灼ゾーンを形成するように、独立して制御される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、焼灼カテーテルは、近位端と遠位端との間で長手方向軸に沿って長手方向に延びる細長いカテーテル本体と、カテーテル本体に接続された焼灼電極と、を備え、電極アセンブリは複数の背骨を備える。各背骨はカテーテル本体に接続された近位端と、遠位端と、を有する。背骨の遠位端は背骨遠位接合部に接続されている。各背骨は、中間セグメント、背骨の近位端と中間セグメントとの間の近位剛性変化部、および背骨の遠位端と中間セグメントとの間の遠位剛性変化部を備える。背骨は中間セグメントに複数の焼灼電極を備え、各焼灼電極は通電されて焼灼ゾーンを形成する。電極アセンブリは、折畳配置と拡張配置との間で移動可能であり、拡張配置の背骨の中間セグメントは、折畳配置に関する背骨の近位端と遠位端とに対して外側に移動する。焼灼電極の焼灼ゾーンが長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたり、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼電極全部の焼灼ゾーンが、長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたるように、焼灼電極は中間セグメント上に千鳥状に配置されている。
【0012】
幾つかの実施形態では、各背骨は、背骨の中間セグメントと近位端との間に連結された近位脚部と、背骨の中間セグメントと遠位端との間に連結された遠位脚部と、を備える。近位脚部は中間セグメントより剛性が低く、遠位脚部は中間セグメントより剛性が低い。各背骨は、近位脚部と中間セグメントとの間に連結された近位蝶番と、遠位脚部と中間セグメントとの間に連結された遠位蝶番と、を備える。近位脚部は中間セグメントより断面積が小さく、遠位脚部は中間セグメントより断面積が小さい。焼灼電極の温度を測定するために複数の温度センサが複数の焼灼電極と熱的に結合されている。背骨は、焼灼電極の方に灌流液を送出するため、複数の焼灼電極の近傍に複数の灌流液流路を備える。焼灼電極の少なくとも幾つかの横方向の寸法はその長手方向の寸法より大きい。拡張配置の焼灼電極は、被焼灼面と接触し、拡張配置の焼灼電極は長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたるが、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する拡張配置の焼灼電極全部では、長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたる。背骨の少なくとも1つは、拡張配置の方に背骨を付勢する形状記憶材料を有する。
【0013】
以下の特定の実施形態の詳細な説明から、当業者には本発明の前述のおよび他の特徴および利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す図である。
【図2】温度センサおよび灌流液流路の一例を示す、背骨の断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す図である。
【図4】本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す図である。
【図5】本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す図である。
【図9】カテーテルの長手方向軸周りの開いた弧状セグメントにわたる焼灼素子の焼灼ゾーンを示す図である。
【図10】長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出したとき、カテーテルの長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたる、焼灼素子全部の焼灼ゾーンを示す図である。
【図11】カテーテルの内部ルーメンにガイドワイヤを挿通することにより、カテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを手術部位に導入するためのオーバーザワイヤ構成を示す図である。
【図12】千鳥配置された焼灼素子のアセンブリの遠位端に設けられた穴にガイドワイヤを挿通することにより、カテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを手術部位に導入するためのオーバーザワイヤ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の以下の詳細な説明において、本開示の一部を構成する添付の図面を参照するが、本発明を実施し得る例示的な実施形態は、説明の目的で示されているのであって、それに限定するものではない。図面中、同様の番号は、幾つかの図を通して実質的に類似の構成要素を表す。さらに、詳細な説明では、下記に記載し、図面に示す様々な例示的な実施形態を提供するが、本発明は本明細書に記載し図示する実施形態に限定されるものではなく、当業者に公知の、または公知となる他の実施形態にも拡大され得ることに留意されたい。本明細書中で「一実施形態」、「この実施形態」または「これらの実施形態」とは、その実施形態に関して記載される特定の機構、構造、または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、これらの語句は本明細書中の様々な箇所に記載されているが、それらは必ずしも全て同じ実施形態に言及しているのではない。さらに、以下の詳細な説明において、本発明が十分理解されるように多数の具体的詳細を記載する。しかし、これらの具体的詳細が全て本発明の実施に必要なわけではないことが当業者には明らかであろう。他の場合、本発明を不必要に不明瞭にしないように、周知の構造、材料、回路、プロセスおよびインターフェースは詳細に記載しなかった、および/またはブロック図の形態で示すことがある。
【0016】
以下の説明において、水平、鉛直、左、右、頂部および底部という用語などの相対的な方向および配置に関する専門用語を使用する。これらの用語は、二次元配置図のある一定の向きに対する、二次元配置図中の相対的方向および配置を指すことが分かるであろう。配置図の異なる向きに対して、異なる相対的方向および配置の用語を使用し、同じ対象または操作を表すようにしてもよい。
【0017】
本発明の例示的な実施形態は、下記にさらに詳細に説明するように、狭窄のリスクが低く腎除神経に特に適した、千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを提供する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す。図1aの斜視図では、焼灼カテーテル10は、近位端(図示せず)と遠位端14との間で長手方向軸16に沿って長手方向に延びる細長いカテーテル本体12を備える。焼灼素子アセンブリ20は、カテーテル本体12に接続された複数の焼灼素子22を備える。焼灼素子22は、長手方向および/または横方向に互いに不連続に離間しており、焼灼素子22の少なくとも2つが長手方向に互いに離間している。
【0019】
この実施形態では、焼灼素子22はRF電極などの電極である。焼灼電極アセンブリ20はカテーテル本体12の遠位端14に接続されている。図1a〜1dに示すように、電極アセンブリ20は、ほぼ長手方向に向けられてよい複数の背骨24を備える。各背骨24は、カテーテル本体12に接続された近位端26と、遠位端28と、を有する。背骨24の遠位端28は背骨遠位接合部30に接続されている。各背骨24は、中間セグメント32、背骨24の近位端26と中間セグメント32との間の近位剛性変化部、および背骨24の遠位端28と中間セグメント32との間の遠位剛性変化部を備える。背骨24は中間セグメント32に複数の焼灼電極22を備える。
【0020】
図1bに示すように、電極アセンブリ20は、折畳配置20aと拡張配置20bとの間で移動可能であり、拡張配置20bにおける背骨24の中間セグメント32は、折畳配置20aに関する背骨24の近位端26および遠位端28に対して外側に移動する。
【0021】
各背骨24は、背骨24の中間セグメント32と近位端26との間に連結された近位脚部34、および背骨24の中間セグメント32と遠位端28との間に連結された遠位脚部36を備える。各背骨24は、近位脚部34と中間セグメント32との間に連結された近位蝶番44、および遠位脚部36と中間セグメント32との間に連結された遠位蝶番46を備える。蝶番44、46は、この実施形態では、折畳配置20aと拡張配置20bとの間での背骨24の中間セグメント32の移動を容易にする剛性変化部である。さらに、各背骨24は、折畳配置20aと拡張配置20bとの間での背骨24の中間セグメント32の移動をさらに容易にするため、近位脚部34と近位端26との間に連結された近位端蝶番40、および遠位脚部36と遠位端28との間に連結された遠位端蝶番42をさらに備えてもよい。
【0022】
使用時、電極アセンブリ20を有するカテーテル10は、折畳配置20aで(ガイドシース等に入れられて)血管等に挿入され、拡張配置20bに展開される。血管内で電極アセンブリ20を横切る血流を可能にし、閉塞を低減または回避するため、図1cの背骨24は、幅の狭い中間セグメント32、近位脚部34、および遠位脚部36を有する。図1dでは、中間セグメント32は比較的幅が広いが、近位脚部34および遠位脚部36は、中間セグメント32より断面積が小さくなるようにテーパ状になっており、それによって閉塞が低減する。さらに、電極アセンブリ20は、血管内での移動がより容易に且つより円滑になるように、好ましくは鋭い隅部も縁部も有しておらず、丸みのある隅部および縁部を有する。
【0023】
拡張配置20bの焼灼電極22は、被焼灼面に接触して、組織の焼灼および/または神経の除神経を行う。焼灼電極22の表面接触を確実にするため、中間セグメント32は、好ましくは、拡張配置20bでの屈曲を回避するまたは最小限にするのに十分な剛性を有する。電極アセンブリ20は、任意の適した機構により折畳配置20aから拡張配置20bに移動する。一実施例では、背骨24の近位脚部34、遠位脚部36、近位端蝶番40および遠位端蝶番42のいずれかまたは全部が弾性付勢され(例えば、ばねまたは記憶材料で)、電極アセンブリ20を拡張配置20bに向かって移動させてもよい。別の実施例では、電極アセンブリ20の中心にある長手方向ロッド60が、背骨遠位接合部30に接続されており、背骨遠位接合部30をカテーテル本体12の遠位端14の方に引いて電極アセンブリ20を拡張配置20bに向かって移動させるために使用されることができる。
【0024】
焼灼電極の温度を測定するために複数の温度センサ50が複数の焼灼素子22と熱的に結合されている。図2は、背骨24上に支持されている電極22に隣接して配置された温度センサ50の一実施例を示す、背骨24の断面図である。さらに、背骨24は、図2に示すように、灌流液を焼灼電極22の方に送出するため、複数の焼灼電極22の近傍に複数の灌流液流路54を備えてもよい。
【0025】
図3は、本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す。図3aは折畳配置の電極アセンブリ60を示し、図3bは拡張配置の電極アセンブリ60を示す。電極アセンブリ60は、カテーテル本体の遠位端に接続されていてもよく、またはカテーテル本体の遠位端から近位方向に配置されていてもよい。
【0026】
図3の電極アセンブリ60は、図1の電極アセンブリ20と幾つかの点で異なる。まず、焼灼電極62はそれぞれ、横方向の寸法よりその長手方向により大きな寸法を有する。電極62の横方向の寸法は、電極62を支持する背骨64の横方向の寸法より大きい。各背骨64は、近位脚部66、遠位脚部68、および中間セグメント70を有する。各電極62は円弧状の形状を有し、これにより長手方向軸に対して横方向を向いている焼灼ゾーンが形成される。このような焼灼ゾーンは、ほぼ長手方向を向いている腎神経の除神経を行うのに、より効率的且つ有効である。
【0027】
図1の電極アセンブリ20とは異なり、図3の電極アセンブリ60は、背骨に蝶番を備えていない。代わりに、背骨64は、電極アセンブリ60の折畳配置から拡張配置への移動を容易にするように構成されている。例えば、近位脚部66は中間セグメント70より剛性が低く、遠位脚部68は中間セグメント70より剛性が低い。そのため、近位脚部66および遠位脚部68は、電極アセンブリ60を拡張配置に移動させる力がかかると屈曲または変形することになる。その力は、形状記憶材料(例えば、ニチノール)製の背骨64の少なくとも1つによって生じ得る。電極アセンブリ60の中心にある長手方向ロッド65は、背骨遠位接合部67に接続されていてもよく、背骨遠位接合部67を近位方向に引いて電極アセンブリ60を拡張配置20bに向かって移動させるために使用されることができる。
【0028】
図4は、本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す。図4aは折畳配置の電極アセンブリ80を示し、図4bは拡張配置の電極アセンブリ80を示す。図4の電極アセンブリ80は、図3の電極アセンブリ60と1つの点で異なる。血管内での電極アセンブリの移動がより容易に且つより円滑になるように、鋭い隅部の代わりにテーパ状の/丸みのある隅部81を使用する。電極アセンブリ80の中心にある長手方向のロッド85は、背骨遠位接合部87に接続されていてもよく、背骨遠位接合部87を遠位方向に引いて電極アセンブリ80を拡張配置に向かって移動させるために使用されることができる。
【0029】
図5の電極アセンブリ60は図3の電極アセンブリ60に類似している。それらは、焼灼電極62の配置だけが異なっている。図3では、焼灼電極62は長手方向に螺旋状に千鳥配置されている。図5では、焼灼電極62はほぼ対向する対になるように配置されている。これらの実施例は、焼灼電極62を千鳥状に配置して電極アセンブリ60を形成する多くの異なる方法の幾つかを示す。
【0030】
図6の電極アセンブリ80は図4の電極アセンブリ80に類似している。それらは、焼灼電極82の配置だけが異なっている。図4では、焼灼電極82は長手方向に螺旋状に千鳥配置されている。図6では、焼灼電極82はほぼ対向する対になるように配置されている。これらの実施例は、焼灼電極82を千鳥状に配置して電極アセンブリ80を形成する多くの異なる方法の幾つかを示す。
【0031】
図7は、本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す。遠位端92を有するカテーテル本体90を示す。図7aは折畳配置の電極アセンブリ100を示し、図7bは拡張配置の電極アセンブリ100を示す。複数の焼灼電極102が、遠位端92に対して近位方向にあるカテーテル本体90の外周面に接続されている。焼灼電極102は、図7aの折畳配置のカテーテル本体90の外周面に当接して配置されている。複数の弾性付勢部材104が、焼灼電極102を図7bの拡張配置の方に付勢する。図示する実施形態では、各焼灼電極102は、1つの焼灼電極102をカテーテル本体90から離れるように外側に付勢する、対応する弾性付勢部材104を有する。焼灼電極102は、それぞれ横方向の寸法の方がその長手方向の寸法より大きい円弧状である。
【0032】
図8は、本発明の別の実施形態によるカテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリを示す。遠位端112を有するカテーテル本体110を示す。電極アセンブリ120は、カテーテル本体90の遠位端92に接続されている複数の焼灼電極122を備える。複数の弾性付勢部材124が、図8に示すように、焼灼電極122を拡張配置の方に外側に付勢する。
【0033】
図9は、カテーテルの長手方向軸周りの開いた弧状セグメントにわたる焼灼素子の焼灼ゾーン130を示す。各焼灼素子は、対応する焼灼ゾーン(130a、130b、130c、...)を有する。各焼灼素子に関して、焼灼ゾーンは、焼灼ゾーン内で組織の焼灼または神経の除神経を行うために十分なエネルギーで通電される領域である。焼灼ゾーン130は、対応する焼灼素子とほぼ同じ形状およびサイズであってもよい。RF電極等に関して、焼灼ゾーンは、対応するRF電極より大きくなる可能性がある。焼灼素子の焼灼ゾーン130が、長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたるように、焼灼素子は千鳥状に配置されている。
【0034】
図10は、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出したとき、カテーテルの長手方向軸周りの閉じたループにわたる、焼灼素子全部の焼灼ゾーン130を示す。図10に示される実施形態では、閉じたループは完全に閉じている。他の実施形態では、ループは実質的に閉じている。実質的に閉じたループは、1つ以上の開放部分を有する。実質的に閉じたループの開放部分の総計は、実質的に閉じたループの約30%以下である。エネルギー源は、独立して制御される焼灼素子に同時にまたは順次または任意の順番でエネルギーを供給し、焼灼ゾーンを形成する。このようにして、組織焼灼または腎除神経等を効率的に、有効に、且つ迅速に、使用者の選択に従って行うことができる。
【0035】
特定の実施形態では、拡張配置の焼灼電極は、長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたるが、長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する拡張配置の焼灼電極全部では、長手方向軸の周囲の実質的に閉じたループにわたる。実質的に閉じたループは1以上の開放部分を有する。実質的に閉じたループの開放部分の総計は、実質的に閉じたループの約30%以下である。
【0036】
図11は、カテーテル182の内腔にガイドワイヤ200を挿通することにより、カテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリ180を手術部位に導入するためのオーバーザワイヤ構成を示す。ガイドワイヤ200は、アセンブリ180の遠位端にある開口部202を通り、アセンブリ180を通ってカテーテル182の内腔まで延びる管204をその遠位端から近位端まで通って延びる。アセンブリ180の遠位端は、カテーテル182の遠位端184の遠位方向に配置されている。
【0037】
図12は、アセンブリ190の遠位端に設けられた遠位開口部212にガイドワイヤ210を挿通することにより、カテーテルの千鳥配置された焼灼素子のアセンブリ190を手術部位に導入するためのオーバーザワイヤ構成を示す。ガイドワイヤ210は、アセンブリ190の遠位端にある遠位開口部212を通り、および切り欠きまたは側部もしくは中間開口部216を有する管214を一部通って延び、その切り欠きまたは側部/中間開口部から出て、さらにカテーテル192の外部をカテーテル192の近位端の方に延びる。図12では、遠位開口部212と中間開口部216は両方とも、カテーテル192の遠位端194の遠位方向に配置されている。
【0038】
説明中、本発明が十分理解されるように説明するため、多くの詳細を記載している。しかし、これらの具体的詳細が全て本発明の実施に必要なわけではないことが当業者には明らかであろう。さらに、本明細書に特定の実施形態を図示し説明してきたが、同じ目的を達成するように計算されている構成であればいずれも、開示する特定の実施形態の代わりに使用できることが当業者には分かる。本開示は、本発明の変更形態または変形形態のいずれも全て包含するものとし、以下の特許請求の範囲で使用される用語は、本発明を本明細書中に開示される特定の実施形態に限定するものと解釈すべきではない。むしろ、本発明の範囲はもっぱら、確立されたクレームの解釈の基本原則に従って解釈されるべきである以下のクレーム、ならびにこのようなクレームの権利範囲に含まれる均等物の範囲全体によって決定されるものとする。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】

【図1(d)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端との間で長手方向軸に沿って長手方向に延びる細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体に接続された複数の焼灼素子を有する焼灼素子アセンブリであって、各焼灼素子が通電されて焼灼ゾーンを形成する、焼灼素子アセンブリと、を備える焼灼カテーテルであって、
前記焼灼素子の焼灼ゾーンが前記長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたるが、前記長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼素子全部の焼灼ゾーンが、前記長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたるように、前記焼灼素子が千鳥状に配置されている、焼灼カテーテル。
【請求項2】
前記焼灼素子が、長手方向または横方向の少なくとも1つで互いに不連続に離間しており、前記焼灼素子の少なくとも2つが互いに長手方向に離間している、請求項1に記載の焼灼カテーテル。
【請求項3】
前記焼灼素子が前記長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたるが、前記長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する焼灼素子全部が、前記長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたる、請求項1に記載の焼灼カテーテル。
【請求項4】
前記複数の焼灼素子がRF電極である、請求項1に記載の焼灼カテーテル。
【請求項5】
前記焼灼素子が、同時に、順次、または任意の順番で通電されて前記焼灼ゾーンを形成するように、独立して制御される、請求項1に記載の焼灼カテーテル。
【請求項6】
前記細長いカテーテル本体が、ガイドワイヤを受け入れるために前記細長いカテーテル本体の近位端から遠位端までの内腔を有しており、
前記焼灼素子アセンブリが、前記細長いカテーテル本体の内腔を通って延びる前記ガイドワイヤを受け入れる開口部を有する遠位端を備え、前記焼灼素子アセンブリの遠位端が前記細長いカテーテル本体の遠位端の遠位方向に配置されている、請求項1に記載の焼灼カテーテル。
【請求項7】
前記焼灼素子アセンブリが、ガイドワイヤを受け入れるように、前記焼灼素子アセンブリの遠位端の遠位開口部と中間開口部とを有する管を備え、前記ガイドワイヤは、前記管の遠位開口部から前記中間開口部まで延びるとともに、前記細長いカテーテル本体の外部を前記細長いカテーテル本体の近位端に向かって延びる、請求項1に記載の焼灼カテーテル。
【請求項8】
近位端と遠位端との間で長手方向軸に沿って長手方向に延びる細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体から離れるように外側に焼灼電極を付勢する弾性付勢部材によって前記カテーテル本体に接続された複数の焼灼電極を有する電極アセンブリであって、各焼灼電極が通電されて焼灼ゾーンを形成する、電極アセンブリと、を備える焼灼カテーテルであって、
前記電極アセンブリが折畳配置と拡張配置との間で移動可能であり、前記弾性付勢部材が前記カテーテル本体から離れて前記拡張配置に向かって外側に前記焼灼電極を付勢し、
前記焼灼電極の焼灼ゾーンが前記長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたり、前記長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する前記焼灼電極全部の焼灼ゾーンが、前記長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたるように、前記焼灼電極が千鳥状に配置されている、焼灼カテーテル。
【請求項9】
前記焼灼電極の温度を測定するため、前記複数の焼灼電極と熱的に結合されている複数の温度センサをさらに備える、請求項8に記載の焼灼カテーテル。
【請求項10】
前記カテーテル本体が、灌流液を前記焼灼電極の方に送出するため、前記複数の焼灼電極の近傍に複数の灌流液流路を備える、請求項8に記載の焼灼カテーテル。
【請求項11】
前記複数の焼灼電極のそれぞれが、前記カテーテル本体から離れるように外側に前記1つの焼灼電極を付勢する対応の弾性付勢部材を有する、請求項8に記載の焼灼カテーテル。
【請求項12】
前記弾性付勢部材の少なくとも幾つかが前記カテーテル本体の遠位端に接続されている、請求項8に記載の焼灼カテーテル。
【請求項13】
前記弾性付勢部材の少なくとも幾つかが前記遠位端の近位の前記カテーテル本体の外周面に接続されている、請求項8に記載の焼灼カテーテル。
【請求項14】
前記焼灼電極の少なくとも幾つかの横方向の寸法がその長手方向の寸法より大きい、請求項8に記載の焼灼カテーテル。
【請求項15】
前記拡張配置の焼灼電極が被焼灼面と接触し、
前記拡張配置の焼灼電極が、前記長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたり、前記長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する前記拡張配置の焼灼電極全部が、前記長手方向軸の周囲の実質的に閉じたループにわたる、請求項8に記載の焼灼カテーテル。
【請求項16】
前記焼灼電極が、同時に、順次、または任意の順番で通電され前記焼灼ゾーンを形成するように、独立して制御される、請求項8に記載の焼灼カテーテル。
【請求項17】
近位端と遠位端との間で長手方向軸に沿って長手方向に延びる細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体に接続された電極アセンブリであって、電極アセンブリが複数の背骨を有し、前記背骨のそれぞれが、前記カテーテル本体に接続された近位端と遠位端とを有し、前記背骨の遠位端が背骨遠位接合部に接続されており、各背骨が、中間セグメント、前記背骨の近位端と中間セグメントとの間の近位剛性変化部と、前記背骨の遠位端と中間セグメントとの間の遠位剛性変化部と、を備え、前記背骨が前記中間セグメントに複数の焼灼電極を備え、各焼灼電極が通電されて焼灼ゾーンを形成する電極アセンブリと、を備える焼灼カテーテルであって、
前記電極アセンブリが折畳配置と拡張配置との間で移動可能であり、前記拡張配置の前記背骨の中間セグメントが、前記折畳配置に関する前記背骨の近位端と遠位端とに対して外側に移動し、
前記焼灼電極の焼灼ゾーンが前記長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたり、前記長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する前記焼灼電極全部の焼灼ゾーンが、前記長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたるように、前記焼灼電極が前記中間セグメント上に千鳥状に配置されている、焼灼カテーテル。
【請求項18】
各背骨が、前記背骨の中間セグメントと近位端との間に連結された近位脚部と、前記背骨の中間セグメントと遠位端との間に連結された遠位脚部と、を備える、請求項17に記載の焼灼カテーテル。
【請求項19】
前記近位脚部は前記中間セグメントより剛性が低く、前記遠位脚部は前記中間セグメントより剛性が低い、請求項18に記載の焼灼カテーテル。
【請求項20】
各背骨が、前記近位脚部と前記中間セグメントとの間に連結された近位蝶番と、前記遠位脚部と前記中間セグメントとの間に連結された遠位蝶番と、を備える、請求項18に記載の焼灼カテーテル。
【請求項21】
前記近位脚部は前記中間セグメントより断面積が小さく、前記遠位脚部は前記中間セグメントより断面積が小さい、請求項18に記載の焼灼カテーテル。
【請求項22】
前記焼灼電極の温度を測定するため、前記複数の焼灼電極と熱的に結合している複数の温度センサをさらに備える、請求項17に記載の焼灼カテーテル。
【請求項23】
前記背骨が、灌流液を前記焼灼電極の方に送出するため、前記複数の焼灼電極の近傍に複数の灌流液流路を備える、請求項17に記載の焼灼カテーテル。
【請求項24】
前記焼灼電極の少なくとも幾つかの横方向の寸法がその長手方向の寸法より大きい、請求項17に記載の焼灼カテーテル。
【請求項25】
前記拡張配置の焼灼電極が被焼灼面と接触し、
前記拡張配置の焼灼電極が前記長手方向軸周りの1以上の開いた弧状セグメントにわたり、前記長手方向軸に垂直な任意の横方向の面上に長手方向に突出する前記拡張配置の焼灼電極全部が、前記長手方向軸周りの実質的に閉じたループにわたる、請求項17に記載の焼灼カテーテル。
【請求項26】
前記背骨の少なくとも1つが、前記拡張配置に向かって前記背骨を付勢する形状記憶材料を有する、請求項17に記載の焼灼カテーテル。

【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−510689(P2013−510689A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539047(P2012−539047)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056644
【国際公開番号】WO2011/060339
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(500232466)セント ジュード メディカル インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】