説明

升蓋貫通孔カバー及びその製造方法

【課題】水は通過可能でかつ蚊は通過不能に貫通孔を覆う耐久性に優れ安価に製造可能な升蓋貫通孔カバー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】升の蓋3に設けられた貫通孔5に着脱可能に取付け使用する升蓋貫通孔カバー1であって、貫通孔5に嵌り込むかご状部13と貫通孔5よりも大きい鍔部15とが絞り加工により一体的に形成された貫通孔5を覆う、水は通過可能でかつ蚊は通過不能な網目の金網からなるカバー本体11と、前記かご状部13の上部内側周縁部23を覆うかご状部補強部33と前記鍔部の表面25を覆いかつ前記鍔部の裏面27の一部を包み込むように覆うヘミング加工された鍔部補強部35とが一体的に形成された前記カバー本体11を補強する補強板31と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水升の蓋に設けられた排水孔など升の蓋に設けられた貫通孔に取付け使用する、水は通過可能でかつ蚊は通過不能に貫通孔を覆う着脱可能な升蓋貫通孔カバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
升には、蓋に貫通孔が設けられた升と蓋に貫通孔が設けられていない升とがある。蓋に貫通孔が設けられた升としては雨水升が例示される。このような雨水升の蓋には、雨水を升本体内に流入せしめる排水孔が設けられている。排水孔は雨水流入孔、さらには取手としての機能を果たすため取手孔と呼ばれる場合もある。排水孔が設けられた蓋を有する雨水升の場合、升本体内で蚊が発生すると、蓋に設けられた排水孔から外部に飛び出してしまう。蓋は、升本体に設けられた受け口に嵌り込むため、蓋と升本体との隙間から蚊が外部に飛び出すことは殆どない。蚊を外部に飛び出させないためには、蓋に設けられた排水孔を塞げばよいが、単純に塞ぐだけでは、雨水を升本体内に流入させることができない。このような問題を解決するために、蓋に設けられた貫通孔を網で覆う方法が多く提案されている。
【0003】
網で貫通孔を覆う方法も、升本体と蓋との間に網を挟み込む方法(例えば特許文献1参照)、蓋の底面に貫通孔を覆うように網を取付ける方法(例えば特許文献2参照)、蓋の上面から貫通孔を覆うように網を取付ける方法(例えば特許文献3参照)がある。蓋の上面から貫通孔を覆うように網を取付ける方法は、確実に網を固定できること、既存の升の蓋に簡単に取付け、取外しができることからが好ましい方法と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3410082号公報
【特許文献2】特開平7−127120号公報
【特許文献3】実用新案登録第3091525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載のカバーのうち、蓋の上面から貫通孔を覆う特許文献3に記載のカバーの一般的な製造要領を示すと、まず帯状の金属板を貫通孔の形状に合わせ曲げた後、端部を溶接し貫通孔内に嵌り込むリング状の枠を製造する。この枠の上部にドーナツ状の受け用の鍔を溶接する。金網を鍔の上に置き、さらにその上に押さえ用のドーナツ状の鍔を重ね、受け用の鍔と押さえ用の鍔とで金網を挟み込み、これらをスポット溶接することで、金網を固定することができる。このような製造要領で製造されるカバーは、製造工程数が多くなり、結果、製造コストが高くなる。網のみのカバーは、低コストで製造することができるが、形状保持性、耐久性が低い。網に代え金属板に穴を穿設する方法もあるがこの方法も手間がかかり製造コストが高くなる。
【0006】
本発明の目的は、水は通過可能でかつ蚊は通過不能に貫通孔を覆う耐久性に優れ安価に製造可能な升蓋貫通孔カバー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、升の蓋に設けられた貫通孔に着脱可能に取付け使用する升蓋貫通孔カバーであって、貫通孔に嵌り込むかご状部と前記貫通孔よりも大きい鍔部とが絞り加工により一体的に形成された前記貫通孔を覆う、水は通過可能でかつ蚊は通過不能な網目の金網からなるカバー本体と、前記かご状部の上部内側周縁部を覆うかご状部補強部と前記鍔部の表面を覆いかつ前記鍔部の裏面の一部を包み込むように覆うヘミング加工された鍔部補強部とが一体的に形成された、前記カバー本体を補強する補強板と、を備えることを特徴とする升蓋貫通孔カバーである。
【0008】
また本発明は、前記升蓋貫通孔カバーにおいて、前記升が雨水升であり、前記貫通孔が排水孔であることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、升の蓋に設けられた貫通孔に着脱可能に取付け使用する升蓋貫通孔カバーの製造方法であって、水は通過可能でかつ蚊は通過不能な網目を有する金網を用い、貫通孔に嵌り込むかご状部と貫通孔よりも大きい鍔部とが一体的に形成された、前記貫通孔を覆うカバー本体を絞り加工により製造するカバー本体製造工程と、前記カバー本体製造工程で製造されたカバー本体の上にドーナツ状の金属板を載せ、該金属板の内側を折り曲げ前記カバー本体のかご状部の上部内側周縁部を覆うかご状部補強部を形成すると共に、前記カバー本体の鍔部表面を覆うように前記金属板の外側を折り曲げる曲げ工程と、前記曲げ工程後、前記金属板をヘミング加工し、カバー本体の鍔部裏面の一部を包み込むように覆うヘミング工程と、を含むことを特徴とする升蓋貫通孔カバーの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る升蓋貫通孔カバーは、水は通過可能でかつ蚊は通過不能な網目の金網で形成されたカバー本体にこれを補強する補強板が取付けられているので、水は通過可能でかつ蚊は通過不能に貫通孔を覆うことができ、形状状保持性及び耐久性にも優れる。また本発明に係る升蓋貫通孔カバーは、かご状部と鍔部とを有するカバー本体が絞り加工により一体的に形成され、さらに補強板もかご状部補強部と鍔部補強部とが一体的に形成されているので、少ない部材でかつ少ない工程で製造することができ、結果、安価に升蓋貫通孔カバーを製造することができる。
【0011】
本発明に係る升蓋貫通孔カバーは、排水孔を有する雨水升の蓋に好適に使用することができる。
【0012】
また本発明に係る升蓋貫通孔カバーの製造方法を使用することで、少ない工程で簡単かつ安価に升蓋貫通孔カバーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態としての雨水升蓋貫通孔カバー1を表側から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての雨水升蓋貫通孔カバー1を裏側から見た斜視図である。
【図3】図1の切断線III−IIIで切断した断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態としての雨水升蓋貫通孔カバー1の製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態としての雨水升蓋貫通孔カバー1を表側から見た斜視図、図2は、雨水升蓋貫通孔カバー1を裏側から見た斜視図、図3は、図1の切断線III−IIIで切断した断面図である。
【0015】
雨水升蓋貫通孔カバー1は、雨水升本体2内で発生した蚊が雨水升の蓋3に設けられた貫通孔5からに外部7に飛び出すことを防止するために、貫通孔5に取付け使用するカバーであり、カバー本体11とカバー本体11を補強する補強板31とを含み構成される。
【0016】
カバー本体11は、水は通過可能でかつ蚊は通過不能な網目を有する金網からなり、貫通孔5に嵌り込むかご状部13と貫通孔5よりも大きい鍔部15とを有し、貫通孔5を覆う。
【0017】
金網は、市販されている一般的な金網を使用することができる。金網の材質は特に限定されないけれども耐食性に優れるものが好ましく、ステンレス製の金網を好適に使用することができる。網目の大きさは、水は通過可能でかつ蚊が通過できない大きさであれば特定の大きさのものに限定されない。蚊が通過出来ない網目であれば必要以上に網目の大きさを小さくする必要はない。網目の大きさを必要以上に小さくすると、排水孔としての機能が低下する。網目の大きさを例示すれば1mm程度である。
【0018】
かご状部13は、貫通孔5に嵌り込み貫通孔5を覆う部分であり、細長く比較的深さの浅いかご状の形状を有し、底面17は閉じているが上部19は開口している。かご状部13の底面17は、短手方向に見て半円状の形状を有し、長手方向に見て両端部が丸味を帯びているもののほぼ長方形である。かご状部の上部19は、貫通孔5と同じ形状、大きさを有する。ここで同じ形状、同じ大きさとは完全に一致する場合の他、ほぼ同一と見なすことができる場合を含む。カバー本体11は、かご状部13が貫通孔5に嵌り込んだとき蓋3にひっかかる鍔部15を有し、この鍔部15も貫通孔5を覆うように機能するため、かご状部の上部19の形状、大きさを貫通孔5の形状、大きさと厳密に一致させる必要はない。しかし、かご状部の上部19の形状、大きさが貫通孔5の形状、大きさと大きく異なると、カバー本体11を貫通孔5に取付けたときぐらつき、外れ易くなるので好ましくない。かご状部13を本実施形態に示す形状とすることで、変形に対する抵抗力が強く、形状保持性も優れる。これにより特殊な金網を使用することなく、一般的金網を使用することができる。
【0019】
鍔部15は、かご状部13に連続して、かご状部13の上端周縁部21にかご状部13に直交するように形成されている。鍔部15は、貫通孔5の大きさよりも大きく形成されており、鍔部15は、貫通孔5内に嵌り込むことはできない。鍔部15の幅は、かご状部13を貫通孔5に嵌め込んだとき、蓋3にしっかりとひっかかりカバー本体11を保持できる大きさがあればよく、必要以上に幅広くする必要はない。上記のようなカバー本体11は、小判状の金網をプレス機により絞り加工することで形成することができる。
【0020】
補強板31は、カバー本体11の形状保持、雨水升蓋貫通孔カバー1の耐久性を高めるための部材であって、カバー本体11のかご状部13の上部内側周縁部23を覆うかご状部補強部33とカバー本体11の鍔部表面25を覆いかつカバー本体11の鍔部裏面27の一部を包み込むように覆う鍔部補強部35とを有する。
【0021】
補強板31は、市販されている一般的な金属板を使用することができる。材質は特に限定されないけれども耐食性に優れるものが好ましく、ステンレス製の板を好適に使用することができる。厚さは、必要以上に厚い材料を使用する必要はなく、加工の容易性、入手の容易性、コストを考慮して決定することができる。貫通孔5の大きさにもよるが、板厚を例示すれば0.2〜1mm程度である。
【0022】
かご状部補強部33は、カバー本体11のかご状部13の上部内側周縁部23全周を覆う部分であり、カバー本体11のかご状部13の上部内側周縁部23に密着し数ミリの高さで覆う。一例を示せば、かご状部13の長手方向の長さが60〜70mm、短手方向の長さが15〜25mm、かご状部13の深さが10〜15mmの場合、かご状部補強部33の高さは、3〜5mmでよい。かご状部補強部33を設けることで、カバー本体11のかご状部13の形状がより安定し、かご状部13の変形が防止される。かご状部補強部33の高さは数ミリ程度と低いが、カバー本体11のかご状部13の形状をより安定させ、かご状部13の変形を防止する点から重要な部位である。これにより特殊な金網を使用することなく、一般的金網を使用することができる。
【0023】
鍔部補強部35は、カバー本体11の鍔部表面25を覆いかつカバー本体11の鍔部裏面27の一部を包み込むように覆う部分であり、かご状部補強部33に連続してかご状部補強部33に直交するように形成されており、ヘミング加工によりカバー本体11と密着する。これより補強板31がカバー本体11に固定される。カバー本体11の鍔部裏面27の一部を覆う部分は、カバー本体11と補強板31とが外れることなくしっかりと一体化できればよく、数ミリの幅でよい。
【0024】
上記のような補強板31は、小判状でドーナツ状の金属板をプレス機により折り曲げ加工、ヘミング加工することで一体的に形成され、カバー本体11に固定される。
【0025】
以上のように本発明に係る升蓋貫通孔カバー1は、部材的には金網と金属板とからなり、切り出した部材をプレス加工するだけで製造することができ、簡単かつ安価に製造できる。升蓋貫通孔カバー1は、貫通孔5に嵌り込むかご状部13を有しているので、風に吹き飛ばされ簡単に外れることはない。一方、升蓋貫通孔カバー1が升本体2内に落ち込むことを防止する鍔部15、鍔部補強部35を有するので、貫通孔5にかご状部13を嵌め込むだけで既設の雨水升蓋にも簡単かつ確実に取付けることができ、取り外しも簡単である。このような升蓋貫通孔カバー1を使用することで、貫通孔5の排水孔としての機能、取手としての機能を維持できる。
【0026】
次に雨水升蓋貫通孔カバー1の製造方法について説明する。
図4は、雨水升蓋貫通孔カバー1の製造手順を示すフローチャートである。小判状に切断加工した金網を、金型とプレス機とを用いて絞り加工しカバー本体11を製造する(ステップS1)。次にカバー本体11の鍔部15の上に小判状でかつドーナツ状の金属板を載せ(ステップS2)、金型とプレス機とを用いて金属板の内側を折り曲げカバー本体11のかご状部13の上部内側周縁部23を覆うかご状部補強部33を形成すると共に、カバー本体11の鍔部表面25を覆うように金属板の外側を曲げ加工し(ステップS3)、かご状部補強部33と鍔部補強部35の一部を形成する。さらに鍔部補強部35をヘミング加工し(ステップS4)、鍔部補強部35を完成させる。以上の工程で升蓋貫通孔カバー1を製造することができる。このような製造方法は、材料の切断加工も含め、トランスファプレス機を使用することで簡単に行うことができる。
【0027】
以上のように本発明に係る雨水升蓋貫通孔カバーの製造方法は、プレス加工のみで製造することが可能であり、短時間にまた安価に製造することができる。なお、上記実施形態では、升蓋貫通孔カバーとして雨水升蓋貫通孔カバーを例として説明したけれども、升蓋貫通孔カバーが雨水升蓋貫通孔カバーに限定されないことは言うまでもない。また上記実施形態では、蓋に設けられた貫通孔がいわゆる長穴状の貫通孔の例を示したけれども、貫通孔の形状は特定の形状のものに限定されない。さらに升も金属製、コンクリート製であってもよく、升蓋の形状も丸型のみならず角型であってもよいことは当然である。また升蓋には、マンホールと呼ばれる升蓋も含まれる。本発明に係る升蓋貫通孔カバーを使用することで、蚊取り線香、蚊を殺すためのスプレー、殺虫剤の使用を低減させることができ、環境上好ましい。
【符号の説明】
【0028】
1 雨水升蓋貫通孔カバー
2 雨水升本体
3 蓋
5 貫通孔
7 外部
11 カバー本体
13 かご状部
15 鍔部
17 かご状部の底面
19 かご状部の上部
21 かご状部の上端周縁部
23 かご状部の上部内側周縁部
25 カバー本体の鍔部表面
27 カバー本体の鍔部裏面
31 補強板
33 かご状部補強部
35 鍔部補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
升の蓋に設けられた貫通孔に着脱可能に取付け使用する升蓋貫通孔カバーであって、
貫通孔に嵌り込むかご状部と前記貫通孔よりも大きい鍔部とが絞り加工により一体的に形成された前記貫通孔を覆う、水は通過可能でかつ蚊は通過不能な網目の金網からなるカバー本体と、
前記かご状部の上部内側周縁部を覆うかご状部補強部と前記鍔部の表面を覆いかつ前記鍔部の裏面の一部を包み込むように覆うヘミング加工された鍔部補強部とが一体的に形成された、前記カバー本体を補強する補強板と、
を備えることを特徴とする升蓋貫通孔カバー。
【請求項2】
前記升が雨水升であり、前記貫通孔が排水孔であることを特徴とする請求項1に記載の升蓋貫通孔カバー。
【請求項3】
升の蓋に設けられた貫通孔に着脱可能に取付け使用する升蓋貫通孔カバーの製造方法であって、
水は通過可能でかつ蚊は通過不能な網目を有する金網を用い、貫通孔に嵌り込むかご状部と貫通孔よりも大きい鍔部とが一体的に形成された、前記貫通孔を覆うカバー本体を絞り加工により製造するカバー本体製造工程と、
前記カバー本体製造工程で製造されたカバー本体の上にドーナツ状の金属板を載せ、該金属板の内側を折り曲げ前記カバー本体のかご状部の上部内側周縁部を覆うかご状部補強部を形成すると共に、前記カバー本体の鍔部表面を覆うように前記金属板の外側を折り曲げる曲げ工程と、
前記曲げ工程後、前記金属板をヘミング加工し、カバー本体の鍔部裏面の一部を包み込むように覆うヘミング工程と、
を含むことを特徴とする升蓋貫通孔カバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−58276(P2011−58276A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209733(P2009−209733)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(509245463)
【Fターム(参考)】