説明

半冷凍飲料製造装置の撹拌ブレード構造

【目的】 半冷凍飲料製造装置において、運転再開時の内部残留氷の発生を防止する。
【構成】 冷却管31が外面に巻かれた円筒ケーシング33の内部に設けられ、ギヤモータ53によって回転される撹拌ブレード組立体40は、シャフト41,両端の支持腕、支持腕の外端間に架設された外側ブレード板47,及び支持腕の内端間に架設された内側ブレード49を有する。外側ブレード板47は平板状に形成され、外側ブレード板47とシャフト41の間には、補強部材であるサポートプレート48が設けられているが、シャフト41で終端しており、シャフト41と内側ブレード49との間にはない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、水、シロップ、及び炭酸ガスからなる原料液が撹拌混合されながら凍結されたシャーベット状の半冷凍飲料を製造する装置に関し、特にその撹拌混合に用いられる撹拌ブレードの構造に関する。
【0002】半冷凍飲料は、水、シロップ及び炭酸ガスが混合されながら半凍結されたものであり、シロップと水の混合液に炭酸ガスを含有させた原料液を円筒ケーシング内に供給し、冷却しながら撹拌すると得られる。即ち、図5において、冷却管1が卷装された円筒ケーシング3の中に供給された原料液は、円筒ケーシング3の内面に接した部分から冷却され、含有水は氷となる。ギヤモータ5によって回転されるブレード7が、冷却された原料液を円筒ケーシング3の内面から引き離し、その部分に内側の未冷却の原料液が入り、円筒ケーシング3の内面から冷却される。ブレード7の回転を続け、掻取、撹拌、混合を続けて行くと、原料液は、細かい氷の粒、シロップ及び炭酸ガスの混合されたシャーベットになる。このシャーベット状の半冷凍飲料は、注出コック9から注出されて飲食に供されるが、冷却や撹拌、混合を中断すると溶けて原料液に戻ったり、凍結して固くなったりするので、営業時間中は冷却及びブレード7の回転が続けられ、夜間等の営業時間外には運転が停止される。
【0003】ブレード7は、円筒ケーシング3の内面に成長した氷層を掻取又は削り取るので、大きい力が加わる上に長いので撓み易い。図6及び図7に代表的なブレード7の構造が示されているが、図示されるように中心のシャフト11に離れてサポート13,15が取着されており、サポート13,15の外端間に外側ブレード17が架設されている。更にサポート13,15の内端間には内側ブレード19が架設されている。ブレード7は、図7の矢印の方向に回転し、円筒ケーシング3に近い外側ブレード17は、主として掻取撹拌を行い、中心部の内側ブレード19は主として撹拌、混合を行う。外側ブレード17は、軽量かつ高剛性にするため板の縁部を折り曲げてフランジ17aを形成している。フランジ17aは、回転方向に対し後退しており円筒ケーシング3との間に三角形断面の空間Wが形成され、空間Wに氷を巻き込み、回転負荷が大きくなる。又、氷を無理に剥ぎ取るので、氷の粒が粗くなってしまい、本来半冷凍飲料は、フワッとしたクリーム状のものであるものがザラザラのものになるという問題も生ずる。
【0004】以上のような半冷凍飲料の品質上の問題に鑑み外側ブレードを平板状にしたものが提案されている。即ち図8及び図9に示すようにシャフト11に互いに離れてサポート23,25が取着され、その外端間に穴のあいた平板状の外側ブレード27が架設され、円筒ケーシング3の内面に近接する部分が切刃となっている。又、サポート23,25の内端間には、内側ブレード29が架設され、その内側ブレード29にも穴が明けられていて、外側ブレード27と内側ブレード29の間に補強部材であるサポートプレート28が架設されている。このようにすると、円筒ケーシング3と外側ブレード27との間に空間Wのような氷を巻き込む空間がなく、外側ブレード27も中間部で支持されているので撓まず、前述のような問題は生じない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】而して、半冷凍飲料製造装置は、主として昼間の営業時間中に冷却、撹拌運転を行ない、夜間の閉店時に電源を切って運転を停止する。運転停止中に円筒ケーシング内のシャーベット状半冷凍飲料は、外側から溶けていく。そして朝には、デフロスト運転を行って円筒ケーシング内の残留半冷凍飲料(氷)を溶かし、すべて原料液の状態に戻した後冷却、撹拌運転を行うこととしている。円筒ケーシング内の中心部に位置する前述の補強部材がない場合、ブレードに付着していた氷は、デフロスト運転中にばらばらになって原料液中に落ち、溶解が促進されていたが、補強部材であるサポートプレートがあると氷がこれに堅く付着し、デフロスト運転中も落下せずに残留することがある。
【0006】残留氷があると、半冷凍飲料の製造運転中に離脱して破片が半冷凍飲料中に混入し、注出コックの詰まりの原因になったり、半冷凍飲料の品質低下の原因となる。また、残留氷が脱落しないと、これがだんだん成長し、数日経つと円筒ケーシング内一杯に拡大し正常な運転が困難になる。従って、本発明は、撹拌ブレードに過大な力が作用したり、半冷凍飲料がザラザラになったり或は残留氷が生じたりといった前述の問題点の無い半冷凍飲料製造装置の撹拌ブレード構造を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】叙上の目的を達成するため、本発明によれば、外面に冷却管が卷装された円筒ケーシングと、該円筒ケーシングの一端を閉じると共に注出コックを具備した蓋と、該円筒ケーシング内に回転自在に同軸的に設けられた撹拌ブレード組立体とを有する半冷凍飲料製造装置において、その該撹拌ブレード組立体は、円筒ケーシングの中心軸部を通る中心軸と、この中心軸の両端部から半径方向外方に向けて延出した一対の支持腕と、この支持腕の外端間に架設され前記円筒ケーシングの内面に近接して回転する平板状掻取撹拌ブレードと、前記支持腕の内端間に架設され前記円筒ケーシング内の中心部を回転する撹拌ブレードと、前記平板状掻取撹拌ブレードと前記中心軸の中央部との間に架設された補強部材とを有し、前記平板状掻取撹拌ブレードは回転方向に傾斜していることを特徴とする。そして、好適には、その平板状掻取撹拌ブレードの円筒ケーシング内面に近接した部分は、刃状に形成される。
【0008】
【作用】前述の構成の本発明によれば、回転方向に傾斜している平板状掻取撹拌ブレードは、撹拌ブレード組立体が回転するに際し円筒ケーシングの内面に成長した氷層をスムースに掻取り又は削り取り、氷を含む原料液を中心側に移動し、撹拌する。補強部材は、中央部に位置して平板状掻取撹拌ブレードを支持してその変形を防止するが、撹拌ブレードから離れていて氷結した半冷凍飲料の脱落を妨げない。
【0009】
【実施例】以下添付の図面を参照して本発明の実施例を説明する。まず図1及び図2を参照して半冷凍飲料製造装置の全体構造と運転要領を概説する。図1は、本考案の実施例にかかる半冷凍飲料の製造装置30の要部を示している。図において、断熱材に囲まれた円筒ケーシング31は、横方向に延び、外面に冷却管33が巻かれている。冷却管33は、図示しない通常の冷凍装置に連絡し、その内部を通る冷媒の蒸発熱によって、円筒ケーシング31及びその内部を冷却する。円筒ケーシング31の開口端は、水密に装着された蓋35によって閉じられており、これには、内部の半冷凍飲料を注出するための注出コック36が突設されている。撹拌ブレード組立体40の中心軸41は、その先端が蓋35に設けられた軸受37によって支持され、その基端が、駆動軸39、カップリング51を介してギヤモータ53の出力軸に連絡されている。駆動軸39の外周には、メカニカルシール55が囲装され、内部の流動物の漏出を防いでいる。更に、円筒ケーシング31には、原料液の入口57が設けられ、これに円周方向に隔たって、サーミスタ58が貫装されている。
【0010】円筒ケーシング31の原料の入口57に連なる製造装置30の原料液供給系は図2に示されているが、入口57は、開閉弁59を備えた配管61を介してサブタンク63に連絡している。サブタンク63は、原料を一次的に混合するための容器で、まず、フローレギュレータ65及びシロップバルブ67を備えた配管69を介してシロップタンク71に連絡している。シロップタンク71の中のシロップは、配管73を介して連絡した炭酸ガスボンベ75のガス圧によって、配管69を通ってサブタンク63へ送給される。また、サブタンク63は、途中にポンプ77を有する配管79を介してフロートタンク81に連絡し、そのフロートスイッチ83の検知水位に応じて開閉される給水弁85を介して、外部からの給水をフロートタンク81で一時保留する。そして、ポンプ77により、フロートタンク81から水がサブタンク63に供給される。前述の炭酸ガスボンベ75は、炭酸ガス弁87を介してサブタンク63に連絡すると共に、開閉弁89及び前述の開閉弁59を介して、円筒ケーシング31の入口に連絡している。符号91は、いずれも逆止弁を示し、系統を流れる流体(シロップ、水、炭酸ガス)の逆流を防止するものである。
【0011】前述のように、炭酸ガスに加圧されたシロップは、フローレギュレータ65により定量制御されてサブタンク63に入り、フロートタンク81内の水はポンプ77によってサブタンク63に入って一次的に混合する。また、これ等の混合液は、炭酸ガスボンベ75からの炭酸ガスにさらされ、たっぷりとこれを含有して原料液となり、炭酸ガスにより加圧されて、円筒ケーシング31へ送給される。この際のサブタンク63の内部圧力は、圧力センサ93で検出され、円筒ケーシング31からの低温の伝播は、ヒータ95で防止される。
【0012】次に本発明の特徴的構成を図3及び図4を参照して説明する。図3において、撹拌ブレード組立体40の中心軸即ちシャフト41には軸方向に間隔を置いて両端部に支持腕43,45が取着されていて、それらの長腕間に穴の明いた平板状の掻取撹拌ブレード即ち外側ブレード板47が架設されている。外側ブレード板47の右端(図において)が、支持腕43より若干張り出している。支持腕43,45の短腕の間には、同様に撹拌ブレード即ち内側ブレード49が架設されており、その左端(図において)が支持腕45より若干張り出している。図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図であるが、図示するように外側ブレード板47は、矢印で示す回転方向に対し傾いており、これは中央部で補強部材即ちサポートプレート48を介してシャフト41に支持されている。図1に示されるように、外側ブレード板47は、円筒ケーシング31の内面に近接しており、更に図4に示すように外側ブレード板47の外端47aは刃状に形成されている。一方、内側ブレード49は、円筒ケーシング31の半径方向中心部に位置している。
【0013】以上説明した構成の撹拌ブレード組立体40は、前述の全体説明でのべたように、ギヤモータ53によって回転駆動される。すなわち、図4において、矢印の方向に回転する。その際、外側ブレード板47は、円筒ケーシング31の内面に氷層が発生、成長していればこれを掻取又は削り取り、混合原料液を押し退ける。そして、その部分に内方の原料液が入り込む。他方、内側ブレード49は、中心部を回転し、原料液を撹拌する。冷却が進行し、原料液が、シャーベット状に近付いてくれば、外側ブレード板47,内側ブレード49は、専ら混練作業を行う。
【0014】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の本発明によれば、掻取撹拌ブレードは、平板状に形成されて円筒ケーシングに対し回転方向に傾斜して交差し、且つ補強部材によって支持されているので、円筒ケーシングとの間に氷の巻き込み空間などは形成されず問題となる変形も生じない。このため円筒ケーシングの内面に成長した氷層を無理なくスムースに掻取ることができ、フワッとした良質の半冷凍飲料を製造することができる。そして、補強部材は、中心軸と中央部の撹拌ブレードとの間にないので中央部の氷状半冷凍飲料は、デフロスト運転中に容易に溶解し、残留氷の発生が防止される。更に、請求項2の発明によれば、板状掻取撹拌ブレードの円筒ケーシングに近接する外端が刃状に形成されているので、氷層の掻取が更に円滑にでき、常にフワッとした良質の半冷凍飲料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の全体構造を示す一部切欠立面図である。
【図2】 前記実施例の全体系統図である。
【図3】 前記実施例の要部を示す側面図である。
【図4】 図3のIV−IV線に沿う立断面図である。
【図5】 従来の装置の一例を示す一部切欠立面図である。
【図6】 従来構造の一例を示す側面図である。
【図7】 従来構造の一例を示す正面図である。
【図8】 従来構造の他の一例を示す側面図である。
【図9】 図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【符号の説明】
30…半冷凍飲料製造装置、31…円筒ケーシング、33…冷却管、35…蓋、36…注出コック、40…撹拌ブレード組立体、41…シャフト(中心軸)、43…支持腕、45…支持腕、47…外側ブレード板(掻取撹拌ブレード)、48…サポートプレート(補強部材)、49…内側ブレード(撹拌ブレード)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外面に冷却管が卷装された円筒ケーシングと、該円筒ケーシングの一端を閉じると共に注出コックを具備した蓋と、該円筒ケーシング内に回転自在に同軸的に設けられた撹拌ブレード組立体とを有する半冷凍飲料製造装置において、該撹拌ブレード組立体は、前記円筒ケーシングの中心軸部を通る中心軸と、同中心軸の両端部から半径方向外方に向けて延出した一対の支持腕と、同支持腕の外端間に架設され前記円筒ケーシングの内面に近接して回転する平板状掻取撹拌ブレードと、前記支持腕の内端間に架設され前記円筒ケーシング内の中心部を回転する撹拌ブレードと、前記平板状掻取撹拌ブレードと前記中心軸の中央部との間に架設された補強部材とを有し、前記平板状掻取撹拌ブレードは回転方向に傾斜していることを特徴とする半冷凍飲料製造装置の撹拌ブレード構造。
【請求項2】 平板状掻取撹拌ブレードの円筒ケーシングの内面に近接する部分を刃状に形成してなることを特徴とする請求項1記載の半冷凍飲料製造装置の撹拌ブレード構造。

【図1】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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