半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法
【課題】サイクルタイムに影響を及ぼすことなく、安定した製品品質を連続操業で実現することができ、製造コストの低廉化、製造設備の小型化を図ることができる半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法を提供する。
【解決手段】鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具18を有し、該冷却用治具18に溶湯金属を供給して、該冷却用治具の底面36aに溶湯金属を流動させることで、溶湯金属に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る第1加圧鋳造装置において、冷却用治具18への溶湯金属の供給前に、冷却用治具の底面36aに対して90°未満の角度で、且つ、溶湯金属の供給側に向けて、離型剤44を塗布する離型剤塗布部42を有する。
【解決手段】鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具18を有し、該冷却用治具18に溶湯金属を供給して、該冷却用治具の底面36aに溶湯金属を流動させることで、溶湯金属に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る第1加圧鋳造装置において、冷却用治具18への溶湯金属の供給前に、冷却用治具の底面36aに対して90°未満の角度で、且つ、溶湯金属の供給側に向けて、離型剤44を塗布する離型剤塗布部42を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半凝固金属加圧鋳造において、晶出固相を微細にするために、断熱機能を備える離型剤(窒化ボロン:BN)を冷却用治具上に膜厚管理して塗布するようにした技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。なお、金型のキャビティに離型剤を塗布する技術については、例えば少量塗布技術、キャビティ内全面塗布技術、塗布後に金型から垂れてくる余分な離型剤の回収技術等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−305618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却用治具に離型剤を塗布する場合、一般に、以下に示すような課題が存在する。
【0005】
[課題1:離型剤塗布方向]
離型剤を冷却用治具に塗布した際、金型のキャビティに塗布した場合と同様に、冷却用治具にぶつかった離型剤の一部が冷却用治具に塗布され、跳ね返った一部が周囲に飛散する。ここで、金型のキャビティに塗布した場合には、飛散した余分な離型剤はキャビティ下にあるダイカストマシンのピットに落下するか、回収装置によって回収されるため、それほど問題にはならない。
【0006】
しかし、冷却用治具を使用した半凝固金属加圧鋳造装置の場合、離型剤を冷却用治具に対して鉛直方向や、溶湯の流動方向に塗布してしまうと、飛散した離型剤が冷却用治具の下端部に設置された射出スリーブもしくは容器内に混入することとなる。そのため、生成した半凝固金属内部に余分な離型剤が取り込まれ、製品内部のガス欠陥増加の原因となる。
【0007】
[課題2:連続操業性(離型剤の種類)]
冷却用治具上に溶湯金属を流動させると、半凝固金属が得られる。一方、冷却用治具上には、凝固金属片が残る。
【0008】
冷却用治具上に凝固金属片が残ると、次の溶湯金属の供給時に、溶湯の冷却を阻害するという問題がある。また、凝固金属片が、射出スリーブの給湯口を介して射出スリーブ内に落下すると、連続操業性が損なわれるばかりでなく、凝固金属片の混入による製品品質の悪影響も発生する。
【0009】
また、離型剤の有無に拘わらず冷却用治具上には凝固金属片が生成する。離型剤がある場合は、冷却用治具上の凝固金属片を除去し易いが、離型剤がないと、冷却用治具と溶湯が反応して、凝固金属片が強固に付着することになり、著しく溶融金属の除去性が損なわれることとなる。
【0010】
そこで、離型剤の種類を選択することになるが、水溶性離型剤や断熱機能を有する離型剤を使用した場合の課題を以下に示す。
【0011】
(a)水溶性離型剤を使用した場合の課題
水溶性の離型剤を使用すると、冷却用治具上に水分が残りやすく、この水分が溶湯金属と接触して水蒸気が発生し、溶湯金属を飛散させたり、また、溶湯金属内に取り込まれた水分がガス化して製品品質を著しく悪化させる。これを解決するためには、例えば水蒸気を蒸発させるために、冷却用治具の温度を100℃以上に設定することが考えられるが、その分、溶湯金属に対する冷却性能が落ちるという問題がある。
【0012】
水溶性の離型剤を塗布した際に、塗布初期の離型剤が冷却用治具に衝突した直後に冷却用治具からの熱の影響で一部が蒸発し、蒸気が冷却用治具の周囲に発生する。この発生した蒸気が冷却用治具を覆うため、連続的に塗布している後続の離型剤の冷却用治具への塗布が妨げられるという問題がある。この現象を防止するために、離型剤の塗布圧力や塗布量を増加させる必要がある。そのため、余分な離型剤が周囲に飛散し、冷却用治具の下端部に設置された射出スリーブや容器に混入するほか、余分な離型剤により冷却用治具が過剰に冷却されるという問題もある。もちろん、余分な離型剤を塗布することから、製品のコストアップにつながるという問題がある。
【0013】
(b)断熱機能を有する離型剤を使用した場合の課題
上述した特許文献1では、冷却用治具に塗布する離型剤として、断熱機能を有する離型剤、例えば窒化ボロン(BN)の膜厚が規定されているが、連続操業を行って管理していく上で、以下のような課題がある。
【0014】
すなわち、冷却用治具上にBN等の粉体を均一に塗布することは困難が伴う。目的とする膜厚が実現されていなければ、所定の半凝固金属を得ることができず、良好な製品品質を得ることができない。
【0015】
連続操業において、BN等の粉体の離型剤を毎回塗布すると、堆積してしまうため、溶湯金属を供給するたびに自動でBNの膜厚を管理しなければならない。また、コーティング膜の膜厚そのものも、連続操業中に管理することは大変困難である。
【0016】
上述した課題を解決するために、堆積する離型剤を清掃する場合、その装置が複雑化するという問題がある。また、清掃する時間によっては、サイクルタイムが延びてしまい、製品のコストアップにつながるという問題もある。
【0017】
[課題3:耐久性]
冷却用治具に何の処理も行わずに、溶湯金属を流動させると、冷却用治具が溶損(溶湯と冷却用治具との反応)し易くなるおそれがある。
【0018】
[課題4:省スペース化]
冷却用治具をダイカストマシンの例えば注湯口の周囲に設置する際、設置スペースが大きく取れない場合があるため、冷却用治具はなるべくコンパクトにする必要がある。しかし、特許文献1のように、冷却用治具上に断熱機能を有する離型剤を塗布すると、溶湯金属が冷却されにくくなり、所望の固相率を有する半凝固金属を得るためには、冷却用治具のサイズを大きくしなければならず、省スペース化においても問題が生じる。
【0019】
[課題5:半凝固金属の組織]
特許文献1のように、冷却用治具上に、断熱機能を有する離型剤を塗布すると、溶湯金属と冷却用治具との熱伝達が小さくなり、溶湯金属の冷却速度が低下する。溶湯金属の冷却速度が低下すると、溶湯金属が半凝固化する際の結晶核生成頻度が小さくなり、その結果、半凝固金属組織が粗大となり、また、目標の固相率まで至らないという問題がある。
【0020】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、サイクルタイムに影響を及ぼすことなく、安定した製品品質を連続操業で実現することができ、製造コストの低廉化、製造設備の小型化を図ることができる半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[1] 第1の本発明に係る半凝固金属加圧鋳造装置は、鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具を有し、該冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造装置において、前記冷却用治具への前記溶湯の供給前に、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布部を有することを特徴とする。
【0022】
これにより、離型剤は、冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で塗布されることから、離型剤が飛散するという現象をなるべく抑えることができる。しかも、離型剤は、射出スリーブや容器とは反対側の溶湯の供給側に向けて塗布されることから、射出スリーブや容器に混入しにくくなる。
【0023】
[2] 第1の本発明において、前記離型剤塗布部は、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、前記離型剤をエアーと共に吹き付ける1以上の離型剤塗布ノズルを有することを特徴とする。これにより、離型剤を薄く均一に塗布することが可能となる。
【0024】
[3] 第1の本発明において、前記離型剤塗布部は、前記離型剤塗布ノズルに加えて、前記冷却用治具のうち、前記溶湯が半凝固金属スラリーとして排出される下端部に向けてエアーを吹き付けるエアーノズルを有することを特徴とする。これにより、離型剤の塗布時に、冷却用治具の下端部が射出スリーブや容器に向けられていたとしても、エアーノズルから噴射するエアーが、いわゆるエアーカーテンの役割を果たし、離型剤の射出スリーブや容器への混入を阻止することができる。
【0025】
[4] 第1の本発明において、前記冷却用治具を移動して、少なくとも前記冷却用治具への前記溶湯の供給時における前記冷却用治具の位置と、前記冷却用治具への前記離型剤の塗布時における前記冷却用治具の位置とを変更する治具移動部を有することを特徴とする。これにより、離型剤の塗布時に、冷却用治具の下端部を射出スリーブや容器から離れた位置に向けることが可能となり、離型剤の射出スリーブや容器への混入を確実に防止することができる。
【0026】
[5] 第1の本発明において、前記離型剤塗布部は、2以上の前記離型剤塗布ノズルと、2以上の前記離型剤塗布ノズルを結ぶ線の傾斜角と、前記冷却用治具の前記所定の面の傾斜角とがほぼ同じであることを特徴とする。これにより、冷却用治具の所定の面上、離型剤を効率よく、且つ、薄く均一に塗布することが可能となる。
【0027】
[6] 第2の本発明に係る半凝固金属加圧鋳造方法は、鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具を有し、該冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造方法において、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、前記離型剤の塗布後に、前記冷却用治具の前記所定の面に前記溶湯を供給する工程とを有することを特徴とする。
【0028】
[7] 第2の本発明において、前記離型剤工程は、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、前記離型剤をエアーと共に吹き付けることを特徴とする。
【0029】
[8] 第2の本発明において、前記離型剤塗布工程は、前記離型剤をエアーと共に吹き付けると同時に、前記冷却用治具のうち、前記溶湯が半凝固金属スラリーとして排出される下端部に向けてエアーを吹き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係る半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0031】
(1)凝固金属片の除去性が向上し、安定した製品品質を連続操業で得ることができる。
【0032】
(2)断熱機能を有する離型剤と比較し、冷却用治具と溶湯金属との熱伝達の低下が小さく、効率よく溶湯金属を冷却することができるようになるため、冷却用治具をコンパクトに設計できる。
【0033】
(3)断熱機能を有する離型剤と比較し、冷却用治具と溶湯金属との熱伝達の低下が小さいため、半凝固金属組織の微細化により、製品品質が向上する。
【0034】
(4)連続操業において離型剤の塗布が容易になる。
【0035】
(5)余分な離型剤を塗布することなく、さらに、離型剤が射出スリーブや容器に混入することがないため、製造コストの低廉化を図ることができると共に、ガス欠陥の発生を抑制することができ、製品品質が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1加圧鋳造装置を示す構成図である。
【図2】冷却用治具及びその周辺を示す要部拡大斜視図である。
【図3】離型剤塗布部の一例を示す構成図である。
【図4】第1加圧鋳造方法を示すフローチャートである。
【図5】第2加圧鋳造装置の冷却用治具及びその周辺を示す要部拡大斜視図である。
【図6】第2加圧鋳造方法を示すフローチャートである。
【図7】第3加圧鋳造装置の冷却用治具及びその周辺を示す要部拡大斜視図である。
【図8】第3加圧鋳造方法を示すフローチャートである。
【図9】実施例及び比較例において、供給された溶湯金属が冷却用治具から出たときの温度(出口湯温)の時間の経過に伴う変化を示す特性図である。
【図10】実施例及び比較例において、出口湯温の平均を示す特性図である。
【図11】実施例及び比較例において、時間の経過に対する冷却用治具の初期温度差の変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る半凝固金属鋳造装置及び半凝固金属鋳造方法の実施の形態例を図1〜図11を参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0038】
先ず、第1の実施の形態に係る半凝固金属加圧鋳造装置(以下、第1加圧鋳造装置10Aと記す)は、図1に示すように、金型12と、射出スリーブ14と、プランジャー16と、冷却用治具18とを有する。
【0039】
金型12は、可動型20と固定型22とからなる。可動型20は、固定型22に対して進退方向に移動するようになっており、固定型22と合わさることで(型閉じ状態)、固定型22と間に鋳造空間としてのキャビティ24が区画形成される。
【0040】
射出スリーブ14は、中空部26を有する筒状に形成され、その先端部が連結部28を介して固定型22に挿入結合されて、中空部26と金型12のキャビティ24とが、可動型20に設けられた分流子30及び固定型22に設けられたランナー31を介して連通するようになされている。射出スリーブ14の後端部は開口が形成され、この開口を通じてプランジャー16が挿入されるようになっている。また、射出スリーブ14の後端部寄りの上部には給湯口32が設けられている。
【0041】
プランジャー16は、射出スリーブ14の中空部26内を金型12に対して進退方向に移動するようになっている。
【0042】
冷却用治具18は、長尺物として構成され、溶湯金属34を所定の流動速度で射出スリーブ14に導くように、支持部材19によって、鉛直方向に対して所定の角度で傾斜して設置されている。このとき、冷却用治具18の下端部は、射出スリーブ14の給湯口32に臨むように設置される。
【0043】
この場合、図2に示すように、冷却用治具18は、底部36と、該底部36の各側方端部に屈曲して連なる第1側部38a、第2側部38bとを有する。これら底部36、第1側部38a及び第2側部38bに囲繞された空間が、流動溝40として機能する。また、第1側部38a及び第2側部38bが存在することにより、冷却用治具18の側方から溶湯金属34(ないし半凝固スラリー)が溢流・落下することが防止される。
【0044】
そして、この第1加圧鋳造装置10Aは、図3に示すように、冷却用治具18への溶湯金属34の供給前に、冷却用治具18の流動溝の底面36a(所定の面)に対して90°未満の角度θで、且つ、溶湯金属34の供給側(冷却用治具18の上端部)に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布部42を有する。
【0045】
離型剤塗布部42は、冷却用治具の底面36aに対して90°未満の角度θで、且つ、冷却用治具18の上端部に向けて、離型剤44をエアーと共に吹き付ける2つの離型剤塗布ノズル(第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b)と、冷却用治具18のうち、溶湯金属34が半凝固金属スラリー48(図1参照)として排出される下端部に向けてエアー50を吹き付けるエアーノズル52(二点鎖線で示す)と、これら第1離型剤塗布ノズル46a、第2離型剤塗布ノズル46b及びエアーノズル52を冷却用治具18の底面36aに対して同じ角度θで支持する支持部54とを有する。支持部54による第1離型剤塗布ノズル46aと第2離型剤塗布ノズル46bとを結ぶ線の鉛直方向に対する傾斜角度φaと、冷却用治具18の底面36aの鉛直方向に対する傾斜角度φbとはほぼ同じに設定してある。
【0046】
ここで、第1加圧鋳造装置10Aによる加圧鋳造方法(以下、第1加圧鋳造方法)について図4のフローチャートも参照しながら説明する。
【0047】
先ず、図4のステップS1において、可動型20を駆動して可動型20と固定型22とを合わせる(型閉め)。このとき、金型12にキャビティ24が区画形成される。
【0048】
その後、ステップS2において、図3に示すように、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bから離型剤44をエアーと共に噴射して、冷却用治具18の底面36aに離型剤を塗布する。また、このステップS2においては、エアーノズル52から冷却用治具18の下端部に向けてエアー50を噴射する。
【0049】
その後、ステップS3において、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44の塗布並びにエアーノズル52によるエアー50の噴射を停止する。
【0050】
その後、ステップS4において、溶湯金属34を冷却用治具18の上端部から供給(注湯)する。供給された溶湯金属34は、冷却用治具18の流動溝40(図2参照)に沿って、傾斜した冷却用治具18の下端部に向かって流動する。この過程で、冷却用治具18によって熱が奪取され、その結果、一部が固相となる。すなわち、溶湯金属34は、冷却用治具18に案内される最中に、固相及び液相が共存する半凝固金属スラリー48に徐々に変態する。大部分の半凝固金属スラリー48は、流動溝40に導かれて射出スリーブ14の給湯口32から該射出スリーブ14の内部に移送される。
【0051】
その後、ステップS5において、所定量の半凝固金属スラリー48が射出スリーブ14の内部に導入されると、ステップS5において、プランジャー16を前進(金型12に向かって移動)する。その結果、射出スリーブ14内の半凝固金属スラリー48は、分流子30及びランナー31を介して金型12のキャビティ24に充填される。
【0052】
その後、キャビティ24にて半凝固金属スラリー48が冷却固化され、これにより鋳造品が得られることとなる。この鋳造品は、ステップS6において、いわゆる型開きが行われることによって、キャビティ24から取り出される。
【0053】
このように、第1加圧鋳造装置10A及び第1加圧鋳造方法においては、冷却用治具18への溶湯金属34の供給前に、冷却用治具18の底面36aに対して90°未満の角度θで、且つ、冷却用治具18の上端部(溶湯金属34の供給側)に向けて、離型剤44を塗布するようにしたので、離型剤44は、冷却用治具18の底面36aに対して90°未満の角度θで塗布されることから、離型剤44が飛散するという現象をなるべく抑えることができる。しかも、離型剤44は、射出スリーブ14や容器とは反対側の溶湯金属34の供給側に向けて塗布されることから、射出スリーブ14や容器に混入しにくくなる。
【0054】
特に、本実施の形態では、離型剤44をエアーと共に吹き付ける2つの離型剤塗布ノズル(第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b)を用いるようにしたので、離型剤44を薄く均一に塗布することが可能となる。
【0055】
また、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bに加えて、冷却用治具18の下端部に向けてエアー50を吹き付けるエアーノズル52を使用したので、離型剤44の塗布時に、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14や容器に向けられていたとしても、エアーノズル52から噴射するエアー50が、いわゆるエアーカーテンの役割を果たし、離型剤44の射出スリーブ14や容器への混入を阻止することができる。しかも、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44の塗布と同時に、エアーノズル52によって冷却用治具18の下端部に向けてエアー50を吹き付けるようにしたので、離型剤44を塗布した際に、冷却用治具18にあたって跳ね返った離型剤44の射出スリーブ14や容器への混入をエアー50によって効率よく遮ることができる。
【0056】
また、第1離型剤塗布ノズル46aと第2離型剤塗布ノズル46bとを結ぶ線の傾斜角度φaと、冷却用治具18の底面36aの傾斜角度φbとをほぼ同じにしたので、冷却用治具18の底面36a上に、離型剤44を効率よく、且つ、薄く均一に塗布することが可能となる。
【0057】
ここで、離型剤44の塗布に関して好ましい態様について以下に説明する。
【0058】
[好ましい態様1:塗布方法]
離型剤44の塗布にあたっては、冷却用治具18の底面36a(流動溝40の底面)において、溶湯金属34と冷却用治具18との熱伝達を阻害しないように、また、溶湯金属34の冷却用治具18への焼付け防止のために、薄く均一に塗布する必要がある。そこで、本実施の形態では、上述したように、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bからのスプレーによる噴霧にて行い、以下の条件並びに方法を満足することが好ましい。
【0059】
(1−1)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bは、離型剤44とエアーの2流体を噴霧できるものを使用する。
【0060】
(1−2)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bのノズル径は、0.1〜10mmの範囲である。
【0061】
(1−3)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bの噴霧時のエアー圧は0.01〜10MPaの範囲である。
【0062】
(1−4)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44のスプレーパターン(冷却用治具18の底面36aに塗布したときの塗布範囲を示す形状)は、冷却用治具18の底面36aに薄く均一に塗布でき、且つ、冷却用治具18以外に無駄に塗布されないように、円状、楕円状、複数ラウンド形状(円形の範囲内に複数の円形の島が配置された形状)、フラット形状(両端に湾曲部を有し、且つ、湾曲部間に長方形状が介在した形状)に塗布する。
【0063】
(1−5)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bは、冷却用治具18と干渉しない位置であって、冷却用治具18の底面36aに薄く均一に塗布でき、且つ、冷却用治具18以外に無駄に塗布されないように、冷却用治具18の底面36aと第1離型剤塗布ノズル48a及び第2離型剤塗布ノズル46b間の各最短距離を10〜2000mmとする。
【0064】
(1−6)本実施の形態では、2つの離型剤塗布ノズル(第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b)を用いたが、1つの離型剤塗布ノズル(例えば第1離型剤塗布ノズル46a)を、角度θを維持しながら冷却用治具18の下端部に向けて移動、あるいは上端部に向けて移動させて離型剤44を塗布するようにしてもよい。
【0065】
[好ましい態様2:連続操業性(塗布量管理)]
(2−1)離型剤44の塗布量は、溶湯金属34と冷却用治具18との熱伝達を阻害しないこと、気化した離型剤44が溶湯金属34内になるべく取り込まれないようにするために、1サイクルあたり、0.1〜5ccである。この数値範囲は、冷却用治具18の全長が1000mm、幅が120mmの場合に好適である。
【0066】
(2−2)離型剤44の塗布量は、塗布時間もしくは塗布流量にて管理し、連続操業においてサイクル間のばらつきをなくす。
【0067】
[好ましい態様3:離型剤44の熱伝達係数]
溶湯金属34を効率よく冷却するために、冷却用治具18と溶湯金属34との熱伝達をなるべく阻害しないことが好ましい。そこで、熱伝達係数が6kW/m2K以上の水溶性以外の離型剤を使用する。望ましくは、熱伝達係数が8kW/m2K以上の油性離型剤を使用する。
【0068】
次に、第2の実施の形態に係る半凝固金属加圧鋳造装置(以下、第2加圧鋳造装置10Bと記す)について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0069】
この第2加圧鋳造装置10Bは、上述した第1加圧鋳造装置10Aとほぼ同様の構成を有するが、冷却用治具18を移動して、少なくとも冷却用治具18への溶湯金属34の供給時における冷却用治具18の位置と、冷却用治具18への離型剤44の塗布時における冷却用治具18の位置とを変更する治具移動部56が設けられている点で異なる。特に、この第2加圧鋳造装置10Bでは、治具移動部56は、冷却用治具18を、鉛直方向に沿って延在する回転軸を中心として旋回させる旋回駆動部58を有する。
【0070】
旋回駆動部58は、支持部材19に設けられた旋回用モータ60を有する。旋回用モータ60の回転軸62は、鉛直上方に向かって延在し、その先端部は、冷却用治具18における上端部の外側壁に連結される。
【0071】
ここで、冷却用治具18の底部36の幅方向中心線は、図5中のL1として表される。すなわち、中心線L1は、底部36を軸線方向に沿って2分割する線である。この場合、回転軸62が冷却用治具18の上方端部側に偏倚して連結されているため、冷却用治具18の回転中心軸は図5中のL2となる。この回転中心軸L2と、中心線L1とを対比して諒解されるように、冷却用治具18の回転中心軸L2は、該冷却用治具18を軸線方向に沿って2分割する中心線L1からオフセットされた位置に設定される。
【0072】
そして、冷却用治具18に溶湯金属34を供給する際には、図5において実線で示すように、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32を臨む位置となるように、冷却用治具18を旋回する。一方、冷却用治具18に第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b(図3参照)で離型剤44を塗布する際には、図5において二点鎖線で示すように、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32から離れた位置(初期位置)となるように、冷却用治具18を旋回する。この第2加圧鋳造装置10Bでは、離型剤44の塗布時に離型剤44が射出スリーブ14や容器に入り込むことはないため、図3に示すエアーノズル52の設置は省略される。
【0073】
ここで、第2加圧鋳造装置10Bによる加圧鋳造方法(以下、第2加圧鋳造方法)について図6のフローチャートも参照しながら説明する。なお、冷却用治具18の下端部は初期位置にあるものとする。
【0074】
先ず、図6のステップS101において、可動型20を駆動して可動型20と固定型22とを合わせる(型閉め)。このとき、金型12にキャビティ24が区画形成される。
【0075】
その後、ステップS102において、下端部が初期位置にある冷却用治具18に、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bから離型剤44をエアーと共に噴射して、冷却用治具18の底面36aに離型剤44を塗布する。
【0076】
その後、ステップS103において、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44の塗布の噴射を停止する。
【0077】
その後、ステップS104において、冷却用治具18を旋回して、その下端部が射出スリーブ14の給湯口32を臨む位置となるようにする。
【0078】
その後、ステップS105において、溶湯金属34を冷却用治具18の上端部から供給(注湯)する。供給された溶湯金属34は、冷却用治具18の流動溝40(図2参照)に沿って、傾斜した冷却用治具18の下端部に向かって流動し、半凝固金属スラリー48として射出スリーブ14の内部に移送される。
【0079】
所定量の半凝固金属スラリー48が射出スリーブ14の内部に導入されると、ステップS106において、プランジャー16を前進(金型12に向かって移動)して、半凝固金属スラリー48を金型12のキャビティ24に充填する。
【0080】
その後、キャビティ24にて半凝固金属スラリー48が冷却固化され、これにより鋳造品が得られることとなる。この鋳造品は、ステップS107において、いわゆる型開きが行われることによって、キャビティ24から取り出される。
【0081】
このように、第2加圧鋳造装置10B及び第2加圧鋳造方法においては、旋回駆動部58によって、冷却用治具18への溶湯金属34の供給前に、冷却用治具18を旋回して、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32や容器から離れた位置(初期位置)に位置させることができるため、離型剤44の塗布時に離型剤44が射出スリーブ14や容器に入り込むことがない。エアーノズル52の設置を省略できるため、省スペース化を促進させることができると共に、エアー供給系も簡素化することができる。
【0082】
次に、第3の実施の形態に係る半凝固金属加圧鋳造装置(以下、第3加圧鋳造装置10Cと記す)について図7及び図8を参照しながら説明する。
【0083】
この第3加圧鋳造装置10Cは、上述した第2加圧鋳造装置10Bとほぼ同様の構成を有するが、治具移動部56が、冷却用治具18を、その傾斜角度φbを維持させた状態で、水平方向に移動する水平移動駆動部64を有する点で異なる。水平移動駆動部64としては、通常の油圧シリンダにて構成してもよいし、ロボット等で構成してもよい。
【0084】
そして、冷却用治具18に溶湯金属34を供給する際には、図7において二点鎖線で示すように、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32を臨む位置となるように、冷却用治具18を、傾斜角度φbを維持した状態で水平方向に移動する。一方、冷却用治具18に第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b(図3参照)で離型剤44を塗布する際には、図7において実線で示すように、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32から離れた位置(初期位置)となるように、冷却用治具18を、傾斜角度φbを維持した状態で水平方向に移動する。この第3加圧鋳造装置10Cでは、離型剤44の塗布時に離型剤44が射出スリーブ14や容器に入り込むことはないため、図3に示すエアーノズル52の設置は省略される。
【0085】
ここで、第3加圧鋳造装置10Cによる加圧鋳造方法(以下、第3加圧鋳造方法)について図8のフローチャートも参照しながら説明する。なお、冷却用治具18の下端部は初期位置にあるものとする。
【0086】
先ず、図8のステップS201において、可動型20を駆動して可動型20と固定型22とを合わせる(型閉め)。このとき、金型12にキャビティ24が区画形成される。
【0087】
その後、ステップS202において、下端部が初期位置にある冷却用治具18に、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bから離型剤44をエアーと共に噴射して、冷却用治具18の底面36aに離型剤44を塗布する。
【0088】
その後、ステップS203において、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44の塗布の噴射を停止する。
【0089】
その後、ステップS204において、冷却用治具18を、傾斜角度φを維持した状態で水平方向に移動して、その下端部が射出スリーブ14の給湯口32を臨む位置となるようにする。
【0090】
その後、ステップS205において、溶湯金属34を冷却用治具18の上端部から供給(注湯)する。供給された溶湯金属34は、冷却用治具18の流動溝40(図2参照)に沿って、傾斜した冷却用治具18の下端部に向かって流動し、半凝固金属スラリー48として射出スリーブ14の内部に移送される。
【0091】
所定量の半凝固金属スラリー48が射出スリーブ14の内部に導入されると、ステップS206において、プランジャー16を前進(金型12に向かって移動)して、半凝固金属スラリー48を金型12のキャビティ24に充填する。
【0092】
その後、キャビティ24にて半凝固金属スラリー48が冷却固化され、これにより鋳造品が得られることとなる。この鋳造品は、ステップS207において、いわゆる型開きが行われることによって、キャビティ24から取り出される。
【0093】
このように、第3加圧鋳造装置10C及び第3加圧鋳造方法においては、水平移動駆動部64によって、冷却用治具18への溶湯金属34の供給前に、冷却用治具18を、傾斜角度φbを維持した状態で水平方向に移動して、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32や容器から離れた位置(初期位置)に位置させることができるため、離型剤44の塗布時に離型剤が射出スリーブ14や容器に入り込むことがない。エアーノズル52の設置を省略できるため、省スペース化を促進させることができると共に、エアー供給系も簡素化することができる。
【実施例】
【0094】
実施例と比較例について、離型剤44の種類による影響(半凝固金属に及ぼす影響、半凝固金属組織に及ぼす影響、冷却用治具18の初期温度への復温性に及ぼす影響)をみた。
【0095】
[実施例]
実施例は、第1加圧鋳造装置10Aを用い、離型剤塗布部42として、2つの離型剤塗布ノズル(第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b)と、エアーノズル52を用いた。各ノズルのノズル径は0.5mmとし、各塗布エアー圧を0.3MPaとした。スプレーパターンは楕円状とした。また、冷却用治具18の底面36aから各ノズルの最短距離を600mmとした。そして、離型剤44として、油性離型剤、ここでは、商品名:WFR−5AL(青木科学研究所製)を用いた。
【0096】
[比較例]
離型剤として、断熱機能を有する離型剤、ここでは、商品名:ボロンコート(オキツモ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例と同じ条件とした。
【0097】
[実験]
実施例と比較例について、冷却用治具18にそれぞれ離型剤44を塗布した後に、冷却用治具18の上端部から溶湯金属34を供給した。
【0098】
[実験結果]
<離型剤の種類による半凝固金属に及ぼす影響>
供給された溶湯金属34が冷却用治具18から出たときの温度(出口湯温)の時間の経過に伴う変化を測定した。測定結果を図9に示す。図9において実線Aが実施例の特性を示し、実線Bが比較例の特性を示す。また、出口湯温の平均の違いを図10に示す。
【0099】
この図9及び図10から、油性離型剤を使用した実施例では、出口湯温の平均が601.9℃であって、溶湯金属34の半凝固化に成功しているが、断熱機能を有する離型剤を使用した比較例では、ほとんど半凝固化されていないことがわかった。従って、断熱機能を有する離型剤を使用する場合は、冷却用治具18で半凝固化できるまで抜熱できるように、冷却用治具18のサイズを大きくしなければならない。このことから、省スペース化の観点から、油性離型剤の使用が好ましいことがわかる。
【0100】
<離型剤の種類による半凝固金属組織に及ぼす影響>
生成された半凝固金属組織を確認したところ、実施例では、結晶粒子の平均粒径が46.7μmであり、比較例では、57.7μmであった。
【0101】
油性離型剤は、断熱機能を有する離型剤と比較して、冷却用治具18と溶湯金属34との熱伝達が良好であるため、溶湯金属の冷却速度が大きい。そのため、油性離型剤を使った方が、溶湯金属34が半凝固化する際の核生成頻度が高く、半凝固金属組織を微細にすることができた。
【0102】
<離型剤の種類による冷却用治具の初期温度への復温性に及ぼす影響>
冷却用治具18への溶湯金属34の供給を開始してから、冷却用治具18の温度が時間の経過と共にどのように変化するかを測定した。図11に、時間の経過に対する冷却用治具18の初期温度差の変化を示す。図11において実線Cが実施例の特性を示し、実線Dが比較例の特性を示す。
【0103】
図11から、油性離型剤を用いた実施例は、早期に温度が低下しており、比較例と比較して、冷却用治具18の初期温度への復温性が優れていることがわかる。
【0104】
なお、本発明に係る半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0105】
10A…第1加圧鋳造装置 10B…第2加圧鋳造装置
10C…第3加圧鋳造装置 12…金型
14…射出スリーブ 16…プランジャー
18…冷却用治具 24…キャビティ
36a…底面 42…離型剤塗布部
44…離型剤 46a…第1離型剤塗布ノズル
46b…第2離型剤塗布ノズル 50…エアー
52…エアーノズル 54…支持部
56…治具移動部 58…旋回駆動部
64…水平移動駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半凝固金属加圧鋳造において、晶出固相を微細にするために、断熱機能を備える離型剤(窒化ボロン:BN)を冷却用治具上に膜厚管理して塗布するようにした技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。なお、金型のキャビティに離型剤を塗布する技術については、例えば少量塗布技術、キャビティ内全面塗布技術、塗布後に金型から垂れてくる余分な離型剤の回収技術等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−305618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却用治具に離型剤を塗布する場合、一般に、以下に示すような課題が存在する。
【0005】
[課題1:離型剤塗布方向]
離型剤を冷却用治具に塗布した際、金型のキャビティに塗布した場合と同様に、冷却用治具にぶつかった離型剤の一部が冷却用治具に塗布され、跳ね返った一部が周囲に飛散する。ここで、金型のキャビティに塗布した場合には、飛散した余分な離型剤はキャビティ下にあるダイカストマシンのピットに落下するか、回収装置によって回収されるため、それほど問題にはならない。
【0006】
しかし、冷却用治具を使用した半凝固金属加圧鋳造装置の場合、離型剤を冷却用治具に対して鉛直方向や、溶湯の流動方向に塗布してしまうと、飛散した離型剤が冷却用治具の下端部に設置された射出スリーブもしくは容器内に混入することとなる。そのため、生成した半凝固金属内部に余分な離型剤が取り込まれ、製品内部のガス欠陥増加の原因となる。
【0007】
[課題2:連続操業性(離型剤の種類)]
冷却用治具上に溶湯金属を流動させると、半凝固金属が得られる。一方、冷却用治具上には、凝固金属片が残る。
【0008】
冷却用治具上に凝固金属片が残ると、次の溶湯金属の供給時に、溶湯の冷却を阻害するという問題がある。また、凝固金属片が、射出スリーブの給湯口を介して射出スリーブ内に落下すると、連続操業性が損なわれるばかりでなく、凝固金属片の混入による製品品質の悪影響も発生する。
【0009】
また、離型剤の有無に拘わらず冷却用治具上には凝固金属片が生成する。離型剤がある場合は、冷却用治具上の凝固金属片を除去し易いが、離型剤がないと、冷却用治具と溶湯が反応して、凝固金属片が強固に付着することになり、著しく溶融金属の除去性が損なわれることとなる。
【0010】
そこで、離型剤の種類を選択することになるが、水溶性離型剤や断熱機能を有する離型剤を使用した場合の課題を以下に示す。
【0011】
(a)水溶性離型剤を使用した場合の課題
水溶性の離型剤を使用すると、冷却用治具上に水分が残りやすく、この水分が溶湯金属と接触して水蒸気が発生し、溶湯金属を飛散させたり、また、溶湯金属内に取り込まれた水分がガス化して製品品質を著しく悪化させる。これを解決するためには、例えば水蒸気を蒸発させるために、冷却用治具の温度を100℃以上に設定することが考えられるが、その分、溶湯金属に対する冷却性能が落ちるという問題がある。
【0012】
水溶性の離型剤を塗布した際に、塗布初期の離型剤が冷却用治具に衝突した直後に冷却用治具からの熱の影響で一部が蒸発し、蒸気が冷却用治具の周囲に発生する。この発生した蒸気が冷却用治具を覆うため、連続的に塗布している後続の離型剤の冷却用治具への塗布が妨げられるという問題がある。この現象を防止するために、離型剤の塗布圧力や塗布量を増加させる必要がある。そのため、余分な離型剤が周囲に飛散し、冷却用治具の下端部に設置された射出スリーブや容器に混入するほか、余分な離型剤により冷却用治具が過剰に冷却されるという問題もある。もちろん、余分な離型剤を塗布することから、製品のコストアップにつながるという問題がある。
【0013】
(b)断熱機能を有する離型剤を使用した場合の課題
上述した特許文献1では、冷却用治具に塗布する離型剤として、断熱機能を有する離型剤、例えば窒化ボロン(BN)の膜厚が規定されているが、連続操業を行って管理していく上で、以下のような課題がある。
【0014】
すなわち、冷却用治具上にBN等の粉体を均一に塗布することは困難が伴う。目的とする膜厚が実現されていなければ、所定の半凝固金属を得ることができず、良好な製品品質を得ることができない。
【0015】
連続操業において、BN等の粉体の離型剤を毎回塗布すると、堆積してしまうため、溶湯金属を供給するたびに自動でBNの膜厚を管理しなければならない。また、コーティング膜の膜厚そのものも、連続操業中に管理することは大変困難である。
【0016】
上述した課題を解決するために、堆積する離型剤を清掃する場合、その装置が複雑化するという問題がある。また、清掃する時間によっては、サイクルタイムが延びてしまい、製品のコストアップにつながるという問題もある。
【0017】
[課題3:耐久性]
冷却用治具に何の処理も行わずに、溶湯金属を流動させると、冷却用治具が溶損(溶湯と冷却用治具との反応)し易くなるおそれがある。
【0018】
[課題4:省スペース化]
冷却用治具をダイカストマシンの例えば注湯口の周囲に設置する際、設置スペースが大きく取れない場合があるため、冷却用治具はなるべくコンパクトにする必要がある。しかし、特許文献1のように、冷却用治具上に断熱機能を有する離型剤を塗布すると、溶湯金属が冷却されにくくなり、所望の固相率を有する半凝固金属を得るためには、冷却用治具のサイズを大きくしなければならず、省スペース化においても問題が生じる。
【0019】
[課題5:半凝固金属の組織]
特許文献1のように、冷却用治具上に、断熱機能を有する離型剤を塗布すると、溶湯金属と冷却用治具との熱伝達が小さくなり、溶湯金属の冷却速度が低下する。溶湯金属の冷却速度が低下すると、溶湯金属が半凝固化する際の結晶核生成頻度が小さくなり、その結果、半凝固金属組織が粗大となり、また、目標の固相率まで至らないという問題がある。
【0020】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、サイクルタイムに影響を及ぼすことなく、安定した製品品質を連続操業で実現することができ、製造コストの低廉化、製造設備の小型化を図ることができる半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[1] 第1の本発明に係る半凝固金属加圧鋳造装置は、鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具を有し、該冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造装置において、前記冷却用治具への前記溶湯の供給前に、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布部を有することを特徴とする。
【0022】
これにより、離型剤は、冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で塗布されることから、離型剤が飛散するという現象をなるべく抑えることができる。しかも、離型剤は、射出スリーブや容器とは反対側の溶湯の供給側に向けて塗布されることから、射出スリーブや容器に混入しにくくなる。
【0023】
[2] 第1の本発明において、前記離型剤塗布部は、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、前記離型剤をエアーと共に吹き付ける1以上の離型剤塗布ノズルを有することを特徴とする。これにより、離型剤を薄く均一に塗布することが可能となる。
【0024】
[3] 第1の本発明において、前記離型剤塗布部は、前記離型剤塗布ノズルに加えて、前記冷却用治具のうち、前記溶湯が半凝固金属スラリーとして排出される下端部に向けてエアーを吹き付けるエアーノズルを有することを特徴とする。これにより、離型剤の塗布時に、冷却用治具の下端部が射出スリーブや容器に向けられていたとしても、エアーノズルから噴射するエアーが、いわゆるエアーカーテンの役割を果たし、離型剤の射出スリーブや容器への混入を阻止することができる。
【0025】
[4] 第1の本発明において、前記冷却用治具を移動して、少なくとも前記冷却用治具への前記溶湯の供給時における前記冷却用治具の位置と、前記冷却用治具への前記離型剤の塗布時における前記冷却用治具の位置とを変更する治具移動部を有することを特徴とする。これにより、離型剤の塗布時に、冷却用治具の下端部を射出スリーブや容器から離れた位置に向けることが可能となり、離型剤の射出スリーブや容器への混入を確実に防止することができる。
【0026】
[5] 第1の本発明において、前記離型剤塗布部は、2以上の前記離型剤塗布ノズルと、2以上の前記離型剤塗布ノズルを結ぶ線の傾斜角と、前記冷却用治具の前記所定の面の傾斜角とがほぼ同じであることを特徴とする。これにより、冷却用治具の所定の面上、離型剤を効率よく、且つ、薄く均一に塗布することが可能となる。
【0027】
[6] 第2の本発明に係る半凝固金属加圧鋳造方法は、鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具を有し、該冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造方法において、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、前記離型剤の塗布後に、前記冷却用治具の前記所定の面に前記溶湯を供給する工程とを有することを特徴とする。
【0028】
[7] 第2の本発明において、前記離型剤工程は、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、前記離型剤をエアーと共に吹き付けることを特徴とする。
【0029】
[8] 第2の本発明において、前記離型剤塗布工程は、前記離型剤をエアーと共に吹き付けると同時に、前記冷却用治具のうち、前記溶湯が半凝固金属スラリーとして排出される下端部に向けてエアーを吹き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係る半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0031】
(1)凝固金属片の除去性が向上し、安定した製品品質を連続操業で得ることができる。
【0032】
(2)断熱機能を有する離型剤と比較し、冷却用治具と溶湯金属との熱伝達の低下が小さく、効率よく溶湯金属を冷却することができるようになるため、冷却用治具をコンパクトに設計できる。
【0033】
(3)断熱機能を有する離型剤と比較し、冷却用治具と溶湯金属との熱伝達の低下が小さいため、半凝固金属組織の微細化により、製品品質が向上する。
【0034】
(4)連続操業において離型剤の塗布が容易になる。
【0035】
(5)余分な離型剤を塗布することなく、さらに、離型剤が射出スリーブや容器に混入することがないため、製造コストの低廉化を図ることができると共に、ガス欠陥の発生を抑制することができ、製品品質が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1加圧鋳造装置を示す構成図である。
【図2】冷却用治具及びその周辺を示す要部拡大斜視図である。
【図3】離型剤塗布部の一例を示す構成図である。
【図4】第1加圧鋳造方法を示すフローチャートである。
【図5】第2加圧鋳造装置の冷却用治具及びその周辺を示す要部拡大斜視図である。
【図6】第2加圧鋳造方法を示すフローチャートである。
【図7】第3加圧鋳造装置の冷却用治具及びその周辺を示す要部拡大斜視図である。
【図8】第3加圧鋳造方法を示すフローチャートである。
【図9】実施例及び比較例において、供給された溶湯金属が冷却用治具から出たときの温度(出口湯温)の時間の経過に伴う変化を示す特性図である。
【図10】実施例及び比較例において、出口湯温の平均を示す特性図である。
【図11】実施例及び比較例において、時間の経過に対する冷却用治具の初期温度差の変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る半凝固金属鋳造装置及び半凝固金属鋳造方法の実施の形態例を図1〜図11を参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0038】
先ず、第1の実施の形態に係る半凝固金属加圧鋳造装置(以下、第1加圧鋳造装置10Aと記す)は、図1に示すように、金型12と、射出スリーブ14と、プランジャー16と、冷却用治具18とを有する。
【0039】
金型12は、可動型20と固定型22とからなる。可動型20は、固定型22に対して進退方向に移動するようになっており、固定型22と合わさることで(型閉じ状態)、固定型22と間に鋳造空間としてのキャビティ24が区画形成される。
【0040】
射出スリーブ14は、中空部26を有する筒状に形成され、その先端部が連結部28を介して固定型22に挿入結合されて、中空部26と金型12のキャビティ24とが、可動型20に設けられた分流子30及び固定型22に設けられたランナー31を介して連通するようになされている。射出スリーブ14の後端部は開口が形成され、この開口を通じてプランジャー16が挿入されるようになっている。また、射出スリーブ14の後端部寄りの上部には給湯口32が設けられている。
【0041】
プランジャー16は、射出スリーブ14の中空部26内を金型12に対して進退方向に移動するようになっている。
【0042】
冷却用治具18は、長尺物として構成され、溶湯金属34を所定の流動速度で射出スリーブ14に導くように、支持部材19によって、鉛直方向に対して所定の角度で傾斜して設置されている。このとき、冷却用治具18の下端部は、射出スリーブ14の給湯口32に臨むように設置される。
【0043】
この場合、図2に示すように、冷却用治具18は、底部36と、該底部36の各側方端部に屈曲して連なる第1側部38a、第2側部38bとを有する。これら底部36、第1側部38a及び第2側部38bに囲繞された空間が、流動溝40として機能する。また、第1側部38a及び第2側部38bが存在することにより、冷却用治具18の側方から溶湯金属34(ないし半凝固スラリー)が溢流・落下することが防止される。
【0044】
そして、この第1加圧鋳造装置10Aは、図3に示すように、冷却用治具18への溶湯金属34の供給前に、冷却用治具18の流動溝の底面36a(所定の面)に対して90°未満の角度θで、且つ、溶湯金属34の供給側(冷却用治具18の上端部)に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布部42を有する。
【0045】
離型剤塗布部42は、冷却用治具の底面36aに対して90°未満の角度θで、且つ、冷却用治具18の上端部に向けて、離型剤44をエアーと共に吹き付ける2つの離型剤塗布ノズル(第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b)と、冷却用治具18のうち、溶湯金属34が半凝固金属スラリー48(図1参照)として排出される下端部に向けてエアー50を吹き付けるエアーノズル52(二点鎖線で示す)と、これら第1離型剤塗布ノズル46a、第2離型剤塗布ノズル46b及びエアーノズル52を冷却用治具18の底面36aに対して同じ角度θで支持する支持部54とを有する。支持部54による第1離型剤塗布ノズル46aと第2離型剤塗布ノズル46bとを結ぶ線の鉛直方向に対する傾斜角度φaと、冷却用治具18の底面36aの鉛直方向に対する傾斜角度φbとはほぼ同じに設定してある。
【0046】
ここで、第1加圧鋳造装置10Aによる加圧鋳造方法(以下、第1加圧鋳造方法)について図4のフローチャートも参照しながら説明する。
【0047】
先ず、図4のステップS1において、可動型20を駆動して可動型20と固定型22とを合わせる(型閉め)。このとき、金型12にキャビティ24が区画形成される。
【0048】
その後、ステップS2において、図3に示すように、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bから離型剤44をエアーと共に噴射して、冷却用治具18の底面36aに離型剤を塗布する。また、このステップS2においては、エアーノズル52から冷却用治具18の下端部に向けてエアー50を噴射する。
【0049】
その後、ステップS3において、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44の塗布並びにエアーノズル52によるエアー50の噴射を停止する。
【0050】
その後、ステップS4において、溶湯金属34を冷却用治具18の上端部から供給(注湯)する。供給された溶湯金属34は、冷却用治具18の流動溝40(図2参照)に沿って、傾斜した冷却用治具18の下端部に向かって流動する。この過程で、冷却用治具18によって熱が奪取され、その結果、一部が固相となる。すなわち、溶湯金属34は、冷却用治具18に案内される最中に、固相及び液相が共存する半凝固金属スラリー48に徐々に変態する。大部分の半凝固金属スラリー48は、流動溝40に導かれて射出スリーブ14の給湯口32から該射出スリーブ14の内部に移送される。
【0051】
その後、ステップS5において、所定量の半凝固金属スラリー48が射出スリーブ14の内部に導入されると、ステップS5において、プランジャー16を前進(金型12に向かって移動)する。その結果、射出スリーブ14内の半凝固金属スラリー48は、分流子30及びランナー31を介して金型12のキャビティ24に充填される。
【0052】
その後、キャビティ24にて半凝固金属スラリー48が冷却固化され、これにより鋳造品が得られることとなる。この鋳造品は、ステップS6において、いわゆる型開きが行われることによって、キャビティ24から取り出される。
【0053】
このように、第1加圧鋳造装置10A及び第1加圧鋳造方法においては、冷却用治具18への溶湯金属34の供給前に、冷却用治具18の底面36aに対して90°未満の角度θで、且つ、冷却用治具18の上端部(溶湯金属34の供給側)に向けて、離型剤44を塗布するようにしたので、離型剤44は、冷却用治具18の底面36aに対して90°未満の角度θで塗布されることから、離型剤44が飛散するという現象をなるべく抑えることができる。しかも、離型剤44は、射出スリーブ14や容器とは反対側の溶湯金属34の供給側に向けて塗布されることから、射出スリーブ14や容器に混入しにくくなる。
【0054】
特に、本実施の形態では、離型剤44をエアーと共に吹き付ける2つの離型剤塗布ノズル(第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b)を用いるようにしたので、離型剤44を薄く均一に塗布することが可能となる。
【0055】
また、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bに加えて、冷却用治具18の下端部に向けてエアー50を吹き付けるエアーノズル52を使用したので、離型剤44の塗布時に、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14や容器に向けられていたとしても、エアーノズル52から噴射するエアー50が、いわゆるエアーカーテンの役割を果たし、離型剤44の射出スリーブ14や容器への混入を阻止することができる。しかも、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44の塗布と同時に、エアーノズル52によって冷却用治具18の下端部に向けてエアー50を吹き付けるようにしたので、離型剤44を塗布した際に、冷却用治具18にあたって跳ね返った離型剤44の射出スリーブ14や容器への混入をエアー50によって効率よく遮ることができる。
【0056】
また、第1離型剤塗布ノズル46aと第2離型剤塗布ノズル46bとを結ぶ線の傾斜角度φaと、冷却用治具18の底面36aの傾斜角度φbとをほぼ同じにしたので、冷却用治具18の底面36a上に、離型剤44を効率よく、且つ、薄く均一に塗布することが可能となる。
【0057】
ここで、離型剤44の塗布に関して好ましい態様について以下に説明する。
【0058】
[好ましい態様1:塗布方法]
離型剤44の塗布にあたっては、冷却用治具18の底面36a(流動溝40の底面)において、溶湯金属34と冷却用治具18との熱伝達を阻害しないように、また、溶湯金属34の冷却用治具18への焼付け防止のために、薄く均一に塗布する必要がある。そこで、本実施の形態では、上述したように、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bからのスプレーによる噴霧にて行い、以下の条件並びに方法を満足することが好ましい。
【0059】
(1−1)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bは、離型剤44とエアーの2流体を噴霧できるものを使用する。
【0060】
(1−2)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bのノズル径は、0.1〜10mmの範囲である。
【0061】
(1−3)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bの噴霧時のエアー圧は0.01〜10MPaの範囲である。
【0062】
(1−4)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44のスプレーパターン(冷却用治具18の底面36aに塗布したときの塗布範囲を示す形状)は、冷却用治具18の底面36aに薄く均一に塗布でき、且つ、冷却用治具18以外に無駄に塗布されないように、円状、楕円状、複数ラウンド形状(円形の範囲内に複数の円形の島が配置された形状)、フラット形状(両端に湾曲部を有し、且つ、湾曲部間に長方形状が介在した形状)に塗布する。
【0063】
(1−5)第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bは、冷却用治具18と干渉しない位置であって、冷却用治具18の底面36aに薄く均一に塗布でき、且つ、冷却用治具18以外に無駄に塗布されないように、冷却用治具18の底面36aと第1離型剤塗布ノズル48a及び第2離型剤塗布ノズル46b間の各最短距離を10〜2000mmとする。
【0064】
(1−6)本実施の形態では、2つの離型剤塗布ノズル(第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b)を用いたが、1つの離型剤塗布ノズル(例えば第1離型剤塗布ノズル46a)を、角度θを維持しながら冷却用治具18の下端部に向けて移動、あるいは上端部に向けて移動させて離型剤44を塗布するようにしてもよい。
【0065】
[好ましい態様2:連続操業性(塗布量管理)]
(2−1)離型剤44の塗布量は、溶湯金属34と冷却用治具18との熱伝達を阻害しないこと、気化した離型剤44が溶湯金属34内になるべく取り込まれないようにするために、1サイクルあたり、0.1〜5ccである。この数値範囲は、冷却用治具18の全長が1000mm、幅が120mmの場合に好適である。
【0066】
(2−2)離型剤44の塗布量は、塗布時間もしくは塗布流量にて管理し、連続操業においてサイクル間のばらつきをなくす。
【0067】
[好ましい態様3:離型剤44の熱伝達係数]
溶湯金属34を効率よく冷却するために、冷却用治具18と溶湯金属34との熱伝達をなるべく阻害しないことが好ましい。そこで、熱伝達係数が6kW/m2K以上の水溶性以外の離型剤を使用する。望ましくは、熱伝達係数が8kW/m2K以上の油性離型剤を使用する。
【0068】
次に、第2の実施の形態に係る半凝固金属加圧鋳造装置(以下、第2加圧鋳造装置10Bと記す)について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0069】
この第2加圧鋳造装置10Bは、上述した第1加圧鋳造装置10Aとほぼ同様の構成を有するが、冷却用治具18を移動して、少なくとも冷却用治具18への溶湯金属34の供給時における冷却用治具18の位置と、冷却用治具18への離型剤44の塗布時における冷却用治具18の位置とを変更する治具移動部56が設けられている点で異なる。特に、この第2加圧鋳造装置10Bでは、治具移動部56は、冷却用治具18を、鉛直方向に沿って延在する回転軸を中心として旋回させる旋回駆動部58を有する。
【0070】
旋回駆動部58は、支持部材19に設けられた旋回用モータ60を有する。旋回用モータ60の回転軸62は、鉛直上方に向かって延在し、その先端部は、冷却用治具18における上端部の外側壁に連結される。
【0071】
ここで、冷却用治具18の底部36の幅方向中心線は、図5中のL1として表される。すなわち、中心線L1は、底部36を軸線方向に沿って2分割する線である。この場合、回転軸62が冷却用治具18の上方端部側に偏倚して連結されているため、冷却用治具18の回転中心軸は図5中のL2となる。この回転中心軸L2と、中心線L1とを対比して諒解されるように、冷却用治具18の回転中心軸L2は、該冷却用治具18を軸線方向に沿って2分割する中心線L1からオフセットされた位置に設定される。
【0072】
そして、冷却用治具18に溶湯金属34を供給する際には、図5において実線で示すように、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32を臨む位置となるように、冷却用治具18を旋回する。一方、冷却用治具18に第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b(図3参照)で離型剤44を塗布する際には、図5において二点鎖線で示すように、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32から離れた位置(初期位置)となるように、冷却用治具18を旋回する。この第2加圧鋳造装置10Bでは、離型剤44の塗布時に離型剤44が射出スリーブ14や容器に入り込むことはないため、図3に示すエアーノズル52の設置は省略される。
【0073】
ここで、第2加圧鋳造装置10Bによる加圧鋳造方法(以下、第2加圧鋳造方法)について図6のフローチャートも参照しながら説明する。なお、冷却用治具18の下端部は初期位置にあるものとする。
【0074】
先ず、図6のステップS101において、可動型20を駆動して可動型20と固定型22とを合わせる(型閉め)。このとき、金型12にキャビティ24が区画形成される。
【0075】
その後、ステップS102において、下端部が初期位置にある冷却用治具18に、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bから離型剤44をエアーと共に噴射して、冷却用治具18の底面36aに離型剤44を塗布する。
【0076】
その後、ステップS103において、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44の塗布の噴射を停止する。
【0077】
その後、ステップS104において、冷却用治具18を旋回して、その下端部が射出スリーブ14の給湯口32を臨む位置となるようにする。
【0078】
その後、ステップS105において、溶湯金属34を冷却用治具18の上端部から供給(注湯)する。供給された溶湯金属34は、冷却用治具18の流動溝40(図2参照)に沿って、傾斜した冷却用治具18の下端部に向かって流動し、半凝固金属スラリー48として射出スリーブ14の内部に移送される。
【0079】
所定量の半凝固金属スラリー48が射出スリーブ14の内部に導入されると、ステップS106において、プランジャー16を前進(金型12に向かって移動)して、半凝固金属スラリー48を金型12のキャビティ24に充填する。
【0080】
その後、キャビティ24にて半凝固金属スラリー48が冷却固化され、これにより鋳造品が得られることとなる。この鋳造品は、ステップS107において、いわゆる型開きが行われることによって、キャビティ24から取り出される。
【0081】
このように、第2加圧鋳造装置10B及び第2加圧鋳造方法においては、旋回駆動部58によって、冷却用治具18への溶湯金属34の供給前に、冷却用治具18を旋回して、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32や容器から離れた位置(初期位置)に位置させることができるため、離型剤44の塗布時に離型剤44が射出スリーブ14や容器に入り込むことがない。エアーノズル52の設置を省略できるため、省スペース化を促進させることができると共に、エアー供給系も簡素化することができる。
【0082】
次に、第3の実施の形態に係る半凝固金属加圧鋳造装置(以下、第3加圧鋳造装置10Cと記す)について図7及び図8を参照しながら説明する。
【0083】
この第3加圧鋳造装置10Cは、上述した第2加圧鋳造装置10Bとほぼ同様の構成を有するが、治具移動部56が、冷却用治具18を、その傾斜角度φbを維持させた状態で、水平方向に移動する水平移動駆動部64を有する点で異なる。水平移動駆動部64としては、通常の油圧シリンダにて構成してもよいし、ロボット等で構成してもよい。
【0084】
そして、冷却用治具18に溶湯金属34を供給する際には、図7において二点鎖線で示すように、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32を臨む位置となるように、冷却用治具18を、傾斜角度φbを維持した状態で水平方向に移動する。一方、冷却用治具18に第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b(図3参照)で離型剤44を塗布する際には、図7において実線で示すように、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32から離れた位置(初期位置)となるように、冷却用治具18を、傾斜角度φbを維持した状態で水平方向に移動する。この第3加圧鋳造装置10Cでは、離型剤44の塗布時に離型剤44が射出スリーブ14や容器に入り込むことはないため、図3に示すエアーノズル52の設置は省略される。
【0085】
ここで、第3加圧鋳造装置10Cによる加圧鋳造方法(以下、第3加圧鋳造方法)について図8のフローチャートも参照しながら説明する。なお、冷却用治具18の下端部は初期位置にあるものとする。
【0086】
先ず、図8のステップS201において、可動型20を駆動して可動型20と固定型22とを合わせる(型閉め)。このとき、金型12にキャビティ24が区画形成される。
【0087】
その後、ステップS202において、下端部が初期位置にある冷却用治具18に、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bから離型剤44をエアーと共に噴射して、冷却用治具18の底面36aに離型剤44を塗布する。
【0088】
その後、ステップS203において、第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46bによる離型剤44の塗布の噴射を停止する。
【0089】
その後、ステップS204において、冷却用治具18を、傾斜角度φを維持した状態で水平方向に移動して、その下端部が射出スリーブ14の給湯口32を臨む位置となるようにする。
【0090】
その後、ステップS205において、溶湯金属34を冷却用治具18の上端部から供給(注湯)する。供給された溶湯金属34は、冷却用治具18の流動溝40(図2参照)に沿って、傾斜した冷却用治具18の下端部に向かって流動し、半凝固金属スラリー48として射出スリーブ14の内部に移送される。
【0091】
所定量の半凝固金属スラリー48が射出スリーブ14の内部に導入されると、ステップS206において、プランジャー16を前進(金型12に向かって移動)して、半凝固金属スラリー48を金型12のキャビティ24に充填する。
【0092】
その後、キャビティ24にて半凝固金属スラリー48が冷却固化され、これにより鋳造品が得られることとなる。この鋳造品は、ステップS207において、いわゆる型開きが行われることによって、キャビティ24から取り出される。
【0093】
このように、第3加圧鋳造装置10C及び第3加圧鋳造方法においては、水平移動駆動部64によって、冷却用治具18への溶湯金属34の供給前に、冷却用治具18を、傾斜角度φbを維持した状態で水平方向に移動して、冷却用治具18の下端部が射出スリーブ14の給湯口32や容器から離れた位置(初期位置)に位置させることができるため、離型剤44の塗布時に離型剤が射出スリーブ14や容器に入り込むことがない。エアーノズル52の設置を省略できるため、省スペース化を促進させることができると共に、エアー供給系も簡素化することができる。
【実施例】
【0094】
実施例と比較例について、離型剤44の種類による影響(半凝固金属に及ぼす影響、半凝固金属組織に及ぼす影響、冷却用治具18の初期温度への復温性に及ぼす影響)をみた。
【0095】
[実施例]
実施例は、第1加圧鋳造装置10Aを用い、離型剤塗布部42として、2つの離型剤塗布ノズル(第1離型剤塗布ノズル46a及び第2離型剤塗布ノズル46b)と、エアーノズル52を用いた。各ノズルのノズル径は0.5mmとし、各塗布エアー圧を0.3MPaとした。スプレーパターンは楕円状とした。また、冷却用治具18の底面36aから各ノズルの最短距離を600mmとした。そして、離型剤44として、油性離型剤、ここでは、商品名:WFR−5AL(青木科学研究所製)を用いた。
【0096】
[比較例]
離型剤として、断熱機能を有する離型剤、ここでは、商品名:ボロンコート(オキツモ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例と同じ条件とした。
【0097】
[実験]
実施例と比較例について、冷却用治具18にそれぞれ離型剤44を塗布した後に、冷却用治具18の上端部から溶湯金属34を供給した。
【0098】
[実験結果]
<離型剤の種類による半凝固金属に及ぼす影響>
供給された溶湯金属34が冷却用治具18から出たときの温度(出口湯温)の時間の経過に伴う変化を測定した。測定結果を図9に示す。図9において実線Aが実施例の特性を示し、実線Bが比較例の特性を示す。また、出口湯温の平均の違いを図10に示す。
【0099】
この図9及び図10から、油性離型剤を使用した実施例では、出口湯温の平均が601.9℃であって、溶湯金属34の半凝固化に成功しているが、断熱機能を有する離型剤を使用した比較例では、ほとんど半凝固化されていないことがわかった。従って、断熱機能を有する離型剤を使用する場合は、冷却用治具18で半凝固化できるまで抜熱できるように、冷却用治具18のサイズを大きくしなければならない。このことから、省スペース化の観点から、油性離型剤の使用が好ましいことがわかる。
【0100】
<離型剤の種類による半凝固金属組織に及ぼす影響>
生成された半凝固金属組織を確認したところ、実施例では、結晶粒子の平均粒径が46.7μmであり、比較例では、57.7μmであった。
【0101】
油性離型剤は、断熱機能を有する離型剤と比較して、冷却用治具18と溶湯金属34との熱伝達が良好であるため、溶湯金属の冷却速度が大きい。そのため、油性離型剤を使った方が、溶湯金属34が半凝固化する際の核生成頻度が高く、半凝固金属組織を微細にすることができた。
【0102】
<離型剤の種類による冷却用治具の初期温度への復温性に及ぼす影響>
冷却用治具18への溶湯金属34の供給を開始してから、冷却用治具18の温度が時間の経過と共にどのように変化するかを測定した。図11に、時間の経過に対する冷却用治具18の初期温度差の変化を示す。図11において実線Cが実施例の特性を示し、実線Dが比較例の特性を示す。
【0103】
図11から、油性離型剤を用いた実施例は、早期に温度が低下しており、比較例と比較して、冷却用治具18の初期温度への復温性が優れていることがわかる。
【0104】
なお、本発明に係る半凝固金属加圧鋳造装置及び半凝固金属加圧鋳造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0105】
10A…第1加圧鋳造装置 10B…第2加圧鋳造装置
10C…第3加圧鋳造装置 12…金型
14…射出スリーブ 16…プランジャー
18…冷却用治具 24…キャビティ
36a…底面 42…離型剤塗布部
44…離型剤 46a…第1離型剤塗布ノズル
46b…第2離型剤塗布ノズル 50…エアー
52…エアーノズル 54…支持部
56…治具移動部 58…旋回駆動部
64…水平移動駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具を有し、該冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記冷却用治具への前記溶湯の供給前に、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布部を有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項2】
請求項1記載の半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記離型剤塗布部は、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、前記離型剤をエアーと共に吹き付ける1以上の離型剤塗布ノズルを有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項3】
請求項2記載の半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記離型剤塗布部は、前記離型剤塗布ノズルに加えて、前記冷却用治具のうち、前記溶湯が半凝固金属スラリーとして排出される下端部に向けてエアーを吹き付けるエアーノズルを有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項4】
請求項1記載の半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記冷却用治具を移動して、少なくとも前記冷却用治具への前記溶湯の供給時における前記冷却用治具の位置と、前記冷却用治具への前記離型剤の塗布時における前記冷却用治具の位置とを変更する治具移動部を有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項5】
請求項2記載の半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記離型剤塗布部は、2以上の前記離型剤塗布ノズルと、2以上の前記離型剤塗布ノズルを結ぶ線の傾斜角と、前記冷却用治具の前記所定の面の傾斜角とがほぼ同じであることを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項6】
鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具を有し、該冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造方法において、
前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、
前記離型剤の塗布後に、前記冷却用治具の前記所定の面に前記溶湯を供給する工程とを有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造方法。
【請求項7】
請求項6記載の半凝固金属加圧鋳造方法において、
前記離型剤工程は、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、前記離型剤をエアーと共に吹き付けることを特徴とする半凝固金属加圧鋳造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半凝固金属加圧鋳造方法において、
前記離型剤塗布工程は、前記離型剤をエアーと共に吹き付けると同時に、前記冷却用治具のうち、前記溶湯が半凝固金属スラリーとして排出される下端部に向けてエアーを吹き付けることを特徴とする半凝固金属加圧鋳造方法。
【請求項1】
鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具を有し、該冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記冷却用治具への前記溶湯の供給前に、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布部を有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項2】
請求項1記載の半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記離型剤塗布部は、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、前記離型剤をエアーと共に吹き付ける1以上の離型剤塗布ノズルを有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項3】
請求項2記載の半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記離型剤塗布部は、前記離型剤塗布ノズルに加えて、前記冷却用治具のうち、前記溶湯が半凝固金属スラリーとして排出される下端部に向けてエアーを吹き付けるエアーノズルを有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項4】
請求項1記載の半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記冷却用治具を移動して、少なくとも前記冷却用治具への前記溶湯の供給時における前記冷却用治具の位置と、前記冷却用治具への前記離型剤の塗布時における前記冷却用治具の位置とを変更する治具移動部を有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項5】
請求項2記載の半凝固金属加圧鋳造装置において、
前記離型剤塗布部は、2以上の前記離型剤塗布ノズルと、2以上の前記離型剤塗布ノズルを結ぶ線の傾斜角と、前記冷却用治具の前記所定の面の傾斜角とがほぼ同じであることを特徴とする半凝固金属加圧鋳造装置。
【請求項6】
鉛直方向に対して傾斜して設置された長尺な冷却用治具を有し、該冷却用治具に溶湯を供給して、該冷却用治具の所定の面上に前記溶湯を流動させることで、前記溶湯に固相を生じさせて得られた半凝固金属スラリーを金型のキャビティに充填し、前記半凝固金属スラリーを固化して鋳造品を得る半凝固金属加圧鋳造方法において、
前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、
前記離型剤の塗布後に、前記冷却用治具の前記所定の面に前記溶湯を供給する工程とを有することを特徴とする半凝固金属加圧鋳造方法。
【請求項7】
請求項6記載の半凝固金属加圧鋳造方法において、
前記離型剤工程は、前記冷却用治具の前記所定の面に対して90°未満の角度で、且つ、前記溶湯の供給側に向けて、前記離型剤をエアーと共に吹き付けることを特徴とする半凝固金属加圧鋳造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半凝固金属加圧鋳造方法において、
前記離型剤塗布工程は、前記離型剤をエアーと共に吹き付けると同時に、前記冷却用治具のうち、前記溶湯が半凝固金属スラリーとして排出される下端部に向けてエアーを吹き付けることを特徴とする半凝固金属加圧鋳造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−147975(P2011−147975A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11751(P2010−11751)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
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