説明

半固形栄養剤注入装置

【課題】 胃瘻からの半固形栄養剤を注入する装置で、栄養剤を安全かつスムーズに注入することができる装置で、構成の簡単な注入装置を提供する。
【解決手段】 本発明の半固形栄養剤注入装置は、栄養剤容器を保持する容器保持部と、栄養剤容器を加圧する容器加圧部と、当該容器保持部と当該容器加圧部を開閉するヒンジ部とを備え、前記容器保持部に接続された加圧ネジ保持部と加圧ネジとを有し、前記加圧ネジの先端に備えた圧接部が前記加圧容器部を押すように構成するとともに、前記加圧ネジを回すことによって前記加圧容器部を押す事により、前記栄養剤容器に押圧力が印加され、栄養剤容器内の半固形栄養剤が押し出されるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃瘻(PEG)からの半固形栄養剤を注入する装置に関するものであり、胃瘻をとおして半固形栄養剤を患者に注入する際に、簡便な装置で栄養剤バッグから粘度の高い半固形栄養剤を押出し、安全かつスムーズに注入することができる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食事の経口摂取が困難な患者の栄養補給方法として、腹壁に胃瘻(PEG)を造設し栄養剤を補給する方法が、経静脈栄養法に代わる方法として多くの高齢者の生命予後を改善してきた。一方で、下痢や胃食道逆流による誤嚥性肺炎などの合併症の出現や離床時間の減少によるQOLの低下などの問題も生じている。これらの問題を改善する方法として、液体栄養剤を半固形化し短時間で注入する半固形栄養法が開発され、誤嚥性肺炎発生の減少や下痢の改善、血糖の安定などが認められ、注目されている。しかし、手動で注入する際には粘度があるため、半固形栄養剤をバッグから押し出す際に強い力が必要であり、手やひじに負担がかかっていた。また全量を押し出す事が難しく、栄養剤がバッグ内に残るなど、注入に労力がかかるという問題があった。これを解決するために以下の方法が提案されている。
【0003】
このような問題を解消するために、特許文献1に開示された押し出し装置では、エアーの供給を受けて膨らむエアーバッグ(加圧バッグ)と、加圧バッグに対向した受け部材とを用いる。半固形栄養剤を充填した栄養剤バッグをこの間に装着した状態で、加圧バッグを膨らますことによって、栄養剤バッグ内の栄養剤を押し出す。それにより、袋状容器内に充填された栄養剤を、手で押圧する方法よりも、短時間で押し出すことができる。
【特許文献1】特開2007−29562
しかしながら特許文献1に開示された押し出し装置では、押圧初期では栄養剤が流出する速度は大きいが、容器内の残量が減るにつれて、流出速度が小さくなり、所定時間後はほとんど栄養剤の流出がみられなくなる。手動で動作させるので栄養剤の注入量を必要に応じて正確に制御することが困難という問題があった。
【0004】
このような問題を解消するために、特許文献2に開示された栄養剤の注入装置では加圧媒体液が収容された加圧媒体液容器と、可撓性加圧容器部を含み、栄養剤バッグの保持部が設けられ、加圧媒体液容器からポンプにて加圧媒体液を加圧容器部に充填して、栄養剤バッグに押圧力が印加され、栄養剤が押し出されるように構成されたものである。
本注入装置によれば、半固形栄養剤は、加圧媒体液容器から移送されて加圧容器部に充填される加圧媒体液の量に応じた量が押し出される。加圧媒体液の充填量は、ポンプの駆動を制御することにより、安定して精度よく調整することが可能であり、従って、半固形栄養剤の押し出し量を必要に応じて精度よく制御することができる。
【特許文献2】特開2010−99406
【0005】
しかしながら特許文献2に開示された装置は、装置が大がかりになりコストが高くなるという問題点があった。また一度加圧容器部に送った加圧媒体液を再度加圧媒体液容器に回収するために装置が複雑になるという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の装置はこうした問題点を解決して、簡便な装置で、安全でスムーズな半固形栄養剤の注入装置を提供するものである。
【問題を解決しようとする手段】
【0007】
前記課題の解決のため、本発明の半固形栄養剤注入装置は、栄養剤容器を保持する容器保持部と、栄養剤容器を加圧する容器加圧部を備え、前記容器保持部に接続された加圧ネジ保持部と加圧ネジとを有し、当該加圧ネジを回すことによって前記加圧容器部を押すようにした前記加圧ネジの先端に備えた圧接部で構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の栄養剤注入装置は胃瘻をとおして半固形栄養剤を患者に注入する際に、栄養剤バッグから粘度の高い半固形栄養剤を押出し、簡便で安価な装置で、安全かつスムーズに注入することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の栄養剤注入装置は半固形栄養剤の入った可撓性を有する栄養剤容器から、前記半固形栄養剤を押し出して注入するための半固形栄養剤の注入装置であって、栄養剤容器を保持する容器保持部と、栄養剤容器を加圧する容器加圧部と、当該容器保持部と当該容器加圧部を開閉するヒンジ部とを備え、前記容器保持部に接続された加圧ネジ保持部と加圧ネジとを有し、前記加圧ネジの先端に備えた圧接部が前記加圧容器部を押すように構成するとともに、前記加圧ネジを回すことによって前記加圧容器部を押す事により、前記栄養剤容器に押圧力が印加され、栄養剤容器内の半固形栄養剤が押し出されるように構成したものである。
以下本発明の実施例について述べる。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の栄養剤注入装置の具体的な実施例の斜視図である。
図1において、1は栄養剤容器の容器保持部、2は栄養剤容器の容器加圧部、21は加圧部材、3は加圧ネジ保持部、4は加圧ネジ、5は圧接部、6は栄養剤容器、7は栄養剤抽出口、8は抽出口固定金具である。
加圧ネジ保持部3は容器保持部1に接続されており、加圧ネジ保持部3には加圧ネジ4が取り付けられて、そのネジの先端にある圧接部5は容器加圧部2に接している。
以上の構成からなる本発明の半固形栄養剤の注入装置について以下詳細を説明する。
【0011】
図1において、半固形栄養剤が入った栄養剤容器6を容器保持部1と容器加圧部2の間に装着する。次に加圧ネジ4を手で回転させるとネジ保持部3は容器保持部1に接続されているので、ネジの圧接部5が下がり容器加圧部2が加圧ネジ4の回転に伴って閉じるため、栄養剤容器6が押圧されて容器内の半固形栄養剤が栄養剤抽出口7から押し出されてくる。容器保持部1と容器加圧部2は片側で開閉用のヒンジ部によってつながれているので加圧ネジ4の回転によって次第に閉じる事になる。ここで加圧ネジ4の回転は手動にて操作するので、栄養剤の抽出の状態を見ながら患者に負担にならないように、また安全に半固形栄養剤を注入することが出来る。
また加圧ネジ4の回転トルクを圧接部5の押圧力にかえているので、比較的軽い力で栄養剤容器6を加圧する事が可能である。栄養剤抽出口7は患者の胃瘻に接続カテーテルを通して接続されており、患者に半固形栄養剤をスムーズに注入することが出来る。この場合、容器加圧部2はアクリル樹脂等の透明性を持った材料で構成するのが望ましく、加圧を加えた時の栄養剤容器6から栄養剤の抽出の状態を見えやすくすることが出来る。
【0012】
図2は、本発明の実施例をさらに詳しくした栄養剤注入装置の断面図である。
図2において、1bは容器保持部、2bは容器加圧部、11bは容器保持部1bと容器加圧部2bを接続している開閉用のヒンジ部、21bは加圧部材、3bは加圧ネジ保持部、4bは加圧ネジ、5bは圧接部、6bは栄養剤容器、7bは栄養剤抽出口、8bは抽出口固定金具である。図2において加圧部材21は栄養剤容器6bと容器保持部1bとの間に挿入されたものであり、栄養剤容器6bから半固形栄養剤が一定にかつスムーズに抽出できるように構成されたものである。
実施例の図1においては、容器保持部1と容器加圧部2とで直接栄養剤容器6をはさんで押圧すると、注入の初期に大きな圧力がかり、また注入の最後は栄養剤抽出口7に容器保持部1が接触するため完全に栄養剤を栄養剤容器6から出し切る事ができず、栄養剤が残ってしまうことがあった。そのため注入の初期は加圧ネジ4をゆっくり回し、最後は栄養剤抽出口7が容器加圧部2と接触しない程度に栄養剤容器6を前にずらして配置することが必要であった。
【0013】
こうした問題の解決するため、図2に於いては、容器保持部1bと栄養剤容器6bの間に、弾性特性を持った加圧部材21bを備え、前記加圧部材21bの栄養剤容器6bと接する面が滑らかに押圧するように構成したものである。加圧部材21bは注入の初期にかかる圧力を和らげるため、弾性特性を持ち押圧力を分散させるようにしたものである。その後容器加圧部2bが閉じるに従って一定の押圧力で注入して、また最後の注入では栄養剤抽出口7bが容器保持部1bと接触しないように加圧部材21bを構成したものである。
【0014】
加圧部材21の構成材料としては弾性を持った材料で構成され、軟質の合成樹脂やゴム材料としては軟質の塩化ビニール、ポリブタジエン、シリコーン樹脂などがあげられる。この場合、栄養剤が触れても樹脂の中の添加剤の溶出が少なく、樹脂が変質しない材料が望ましい。加圧部材21弾性特性や厚み等の形状は半固形栄養剤の粘度によっても選択する事が出来る。
加圧ネジ4bの取っ手の形状は容易に手動でネジが回せるようにした形状がいくつか考えられる。この場合栄養剤を補給加圧する時は軽い力で、また栄養剤を交換する解除の時はすばやく回転できる形状の構成が望ましい。
図2に於いて、容器保持部1bに取り付けられた抽出口固定金具8bは栄養剤容器6bの栄養剤抽出口7bを固定するように配置されており、栄養剤容器6bの位置が決まるように設定している。抽出口固定金具8bは栄養剤抽出口7bの形状に合わせて形状を選択調整する事も出来る。なを13bは容器保持部1bに取り付けられたすべり止め部材であり、容器保持部1bが滑らないように構成された弾性ゴム部材である。
【0015】
図3は本発明に使用する半固形栄養材の容器の設置方法を示す図である。先ず容器加圧部2cを開いて、栄養剤容器6cを加圧部材11cの上に置く。このとき栄養剤容器6cは栄養剤抽出口7cが抽出口固定金具8cに固定されるように設置する。次に加圧ネジ4cを回して栄養剤容器6cを押圧して中の半固形栄養材を抽出する。
【0016】
以上のように本発明の半固形栄養剤注入装置は、構成も簡便な装置で栄養剤バッグから粘度の高い半固形栄養剤を押出し、手動でネジを回しながら少ない力で注入する事が出来る。さらに患者の状態を見ながら注入量を調節できるため、安全かつスムーズに半固形栄養剤を注入することができ、残量もほとんどなく効率的に使用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の半固形栄養剤注入装置は、胃瘻をとおして半固形栄養剤を患者に注入する際に、栄養剤バッグから粘度の高い半固形栄養剤を押出し、簡便な装置で、安全かつスムーズに注入することができるものであり、低コストで実現できるため産業上利用可能性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の栄養剤注入装置の具体的な実施例の斜視図である。
【図2】本発明の栄養剤注入装置の具体的な使用方法を説明する断面図である。
【図3】本発明に使用する半固形栄養材の容器の設置方法を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 容器保持部
2 容器加圧部
21 加圧部材
3 加圧ネジ保持部
4 加圧ネジ
5 圧接部
6 栄養剤容器
7 栄養剤抽出口
8 抽出口固定金具
1b 容器保持部
11b ヒンジ部
13b すべり止め部材
2b 容器加圧部
21b 加圧部材
3b 加圧ネジ保持部
4b 加圧ネジ
5b 圧接部
6b 栄養剤容器
7b 栄養剤抽出口
8b 抽出口固定金具
11c 加圧部材
2c 容器加圧部
4c 加圧ネジ
6c 栄養剤容器
7c 栄養剤抽出口
8c 抽出口固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半固形栄養剤の入った可撓性を有する栄養剤容器から、前記半固形栄養剤を押し出して注入するための半固形栄養剤の注入装置であって、栄養剤容器を保持する容器保持部と、栄養剤容器を加圧する容器加圧部と当該容器保持部と当該容器加圧部を開閉するヒンジ部を備え、前記容器保持部に接続された加圧ネジ保持部と加圧ネジとを有し、前記加圧ネジの先端に備えた圧接部が前記加圧容器部を押すように構成するとともに、前記加圧ネジを回すことによって前記加圧容器部を押す事により、前記栄養剤容器に押圧力が印加され、栄養剤容器内の半固形栄養剤が押し出されるように構成されたことを特徴とする半固形栄養剤の注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半固形栄養剤の注入装置において、容器保持部と栄養剤容器の間に、加圧部材を備え、前記加圧部材が弾性を持った材料で構成したことを特徴とする半固形栄養剤の注入装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半固形栄養剤の注入装置において、前記容器加圧部が透明性の材料で構成したことを特徴とする半固形栄養剤の注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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