説明

半導体センサ

【課題】本発明の目的は、大きなバンドギャップを有する半導体をベースとして安定し且つ再現可能な信号を生成する、媒体の物理的及び/又は化学的特性を決定する半導体センサを利用可能にすることである。
【解決手段】本発明は媒体の物理的特性及び/又は化学的特性を決定する半導体センサに関する。本発明による半導体センサ1は感応面を有する電子要素3を備え、この電子要素3は大きいバンドギャップを有する半導体(ワイドギャップ半導体)をベースとしてその一部が構成されている。感応面の少なくとも一領域には、イオン感応面を有する機能層配列4が備わっている。この機能層配列4は複数の層を備え、これら複数の層のうち、少なくとも一つの層が決定対象のイオンに対して不透過性であり、少なくとも一つの他の層が決定対象のイオンに対して部分的に透過性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体の物理的特性及び/又は化学的特性を決定する半導体センサに関する。 媒体としては流体、詳細には液体又は気体がある。本発明は、詳細には液体のpH値を決定するpHセンサに関する。このタイプのセンサは電子半導体部品に基づくものであるが、本ケースではいわゆる“ワイドバンドギャップ半導体”、即ちバンドギャップが2eVを超える大きいバンドギャップを有する半導体に基づく。このタイプの半導体は、例えば窒化ガリウムやダイヤモンド等の材料系に存在する。かかる半導体部品の実施形態として適するものとして、詳細には電界効果トランジスタがあり、例えばHEMT、MODFET 、MESFET、又はいわゆるδ−FET(パルスドーピング濃度プロファイルを有する容量半導体)等がある。しかし、このタイプの電子要素に対する容量材料として、基本的に全てのIII−V半導体材料が適している。
【背景技術】
【0002】
HEMTは高電子移動度トランジスタ、MODFETは変調ドープ電界効果トランジスタ、MESFETは金属半導体接合電界効果トランジスタ、δ−FETはMESFETの一つであるが、これらの場合には表面近くのドーピングパルス濃度が高い。またSITは静電誘導型トランジスタ、HBTはヘテロ構造バイポーラトランジスタ(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)である。
【0003】
このタイプのイオン感応半導体センサは例えばDE10062044A1で開示されている。このセンサはHEMT構造として構成したIII族窒素からなるヘテロ構造を有する電界効果トランジスタを備える。層配列のうちの最上層は、測定の際に測定対象の媒体と直接接触する。代替的に、層配列のうちの最上層に機能層を設けることもでき、前記機能層は決定対象の特定のイオンが透過することを選択的に許可する層である。すべての場合において、透過を許可されたイオンが層配列のゲート面又はGaN面に当たると、すぐにセンサ効果が現れ始める。このタイプの機能層としては、詳細には例えばゼオライトのようなイオン交換体がある。
【0004】
pHセンサの場合には、構成要素の最上層へとイオン化した水素原子を選択的に透過させるイオン伝導性セラミックスを使用することが提起される。この目的に適した材料は、ORMOCERという名で知られる物質である。
【0005】
実際には、原則としてGaN又はAlGaNのようなIII−V半導体が、その極性と表面電荷により溶液又は他の媒体に対するpH感度を達成するため、特に適している。これらのセンサは上述の最新技術であるが、信号を再現することはできず、詳細にはこのタイプのpHセンサは化学的耐性を有していないという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10062044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、大きなバンドギャップを有する半導体をベースとして安定し且つ再現可能な信号を生成する、媒体の物理的及び/又は化学的特性を決定する半導体センサを利用可能にすることである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載する半導体センサによって達成される。本発明による半導体センサを有利に発展させた態様を従属請求項に示す。本発明によるこのタイプのセンサの使用については請求項32に示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による半導体センサは感応面を備える電子要素を有する。電子要素は、大きいバンドギャップを有する半導体、詳細にはIII−V半導体をベースとして構成したものである。本発明によれば、感応面の少なくとも一領域を機能層が被覆し、機能層はその一部としてイオン感応面を有するが、決定対象の媒体及び/又はイオン、若しくは材料に対しては不透過性である。
【0010】
さらに、機能層の最上層が化学的に耐性のあるものであることが実質的に有利である。さらに、機能層配列の層のうち少なくとも一つが、決定対象のイオンに対して少なくともイオン選択拡散障壁層として作用することが、実質的に有利である。
【0011】
本発明による半導体センサに対しては、例えばダイヤモンド、窒化ガリウム(GaN)、又は炭化ケイ素(SiC)等の大きい帯域幅を有する半導体を使用することが特に有利である。ただし、GaN材料系の場合には、例えば最上層がAlN、GaN、AlGa1−xN等の要素を含む場合に未処理のGaNをベースとした面を用いると、検査対象の媒体と接触した際に、安定した再現可能な機能性が達成されないことが実験によりわかっている。
【0012】
この原因が説明されたことはこれまでなかった。純粋な、特に水素終端のダイヤモンド表面又は部分的にのみ酸素終端のダイヤモンド表面を使用する場合に、同様の問題が生じる。
【0013】
例えば気体、液体、又はゲル等の媒体を測定する安定した再現可能性を達成するために、本発明では機能層又は機能層配列を感応層上に設ける。機能層は半導体部品の表面に対して媒介の役割を果たすだけであり、イオン又は測定対象の材料自体、例えば水素イオンに対しては不透過性である。
【0014】
電子要素は水平方向又は垂直方向に構成することができる。これには、例えばHEMT、MODFET、MESFET、δ−FET、又はHBT等の様々なタイプのトランジスタが適している。必要であれば機能層配列の上に位置する媒体と共に電子要素の感応面によって、ゲート電極を形成する。
【0015】
電子要素の感応面に対する材料としては、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、又は化学式AlGa1−xNの窒化アルミニウムガリウム、又は化学式InGa1−xNの窒化インジウムガリウムが適している。なお、前記化学式において0.01≦x≦0.3とする。窒化インジウムアルミニウムInAl1−xN(0<x<1)も適した材料である。
【0016】
可能な限り化学的に不活性となるように、そしてまた媒体又はイオン又は材料に対して化学的に耐性があり不透過性であるように意図する機能層配列の最上層又は別の層には酸化物が適切であり、詳細には、例えば酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe)、酸化クロムチタン(Cr1.8Ti0.2)、酸化タングステン(WO)、酸化インジウム(In)、酸化鉄ランタン(LaFeO)等の金属酸化物、又は金属、セラミック、又は窒化チタン若しくは窒化ケイ素等の窒素をベースとした材料等がある。また、ダイヤモンドやダイヤモンドライクカーボン(DLC)のような炭素含有化合物もこの目的に適している。以前に設けた層の熱酸化によって、及び/又は、酸化層自体の電子化学的蒸着及び/又はスパッタ蒸着によって生成したものであれば、酸化物層が特に適している。
【0017】
機能層配列を電子要素により接着させるために、機能層配列と電子要素との間に接着層を配置することができる。接着層に適するものとしては、例えばチタン、アルミニウム、チタンタングステン合金、シリコン、又は種々のポリマ等がある。
【0018】
センサの感応面以外は、センサ全体を密封することができる。これは例えばエポキシ樹脂及び/又はポリイミドで行うことができる。
【0019】
例えばシリコン、サファイア、炭化ケイ素、ダイヤモンド、イリジウム等を含む基板上に直接的に又は中間層上に電子要素を配置することができる。基板と電子要素との間に、例えば窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、ダイヤモンド、及び/又はそれらの組合せを含むバッファ中間層を配置することができる。電子要素はその取扱いを改良するために、例えば接着、はんだ付け、及び/又はフリップチップ技術によって支持体上に配置することができる。
【0020】
さらに、センサ信号を送出する外部の電気接点を提供することができる。本発明による半導体センサは、化学的及び/又は物理的パラメータの相対的及び絶対的な測定に非常に適している。
【0021】
センサの精度をさらに高めるべく、二つの同様のセンサを基板又は支持体上に配置することができる。こうすることで、複数の信号をやり取りして、平均化することが可能となる。
【0022】
このように配置した複数のセンサのうちの一つの感応面を不活性物質で被覆することもできる。このようにするとそのセンサは媒体の影響を受けないため、センサに関係しないその他の値、例えば温度とセンサ信号への温度による影響を測定するために使用することができる。
【0023】
本発明によるセンサは、pHセンサとしてH/H濃度又はOH濃度の測定、又は酸素センサとしてのO濃度の測定に特に適している。
【0024】
本発明によるセンサは室温での測定のみならず、詳細には50℃から500℃の高温、特に150℃から450℃の高温での測定に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による半導体センサを示す図である。
【図2】本発明による対応する半導体センサの断面図である。
【図3】本発明による更なるセンサの断面図である。
【図4】本発明による更なるセンサの断面図である。
【図5】本発明による更なるセンサの断面図である。
【図6】複数のセンサ素子を備えた本発明による更なるセンサの平面断面図である。
【図7】本発明による更なる半導体センサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による半導体センサの幾つかの例を以下に示す。同一及び同様の要素には、同一又は類似の参照番号を付して示す。さらに、本発明による半導体センサの幾つかの例を述べるが、一つの例に示す特徴全てを互いに組み合わせて一つの手段としてもよく、また本明細書中で詳細には述べなくとも更なる組み合わせにおける個別の特徴を一緒に使用しても、又は本発明の一部として個別に使用してもよいことを理解されたい。
【0027】
図1はイオンセンサとしての半導体センサ1を平面断面図で示す。
【0028】
半導体センサ1は半導体材料3を有する。断面が矩形の半導体材料4の対向する二つの側には水平方向に電気接点5a、5bがあり、それらに生成されたセンサ信号が存在する。これら接点5a及び5bは典型的に抵抗接点であるが、ブロック接点として構成してもよい。半導体材料3を材料6が被包しているが、この材料6は測定対象の媒体に対する耐性があるものとし、また絶縁性であるとする。このためには、例えばエポキシ樹脂を使用することができる。半導体材料を検査対象の媒体と接触させる開口部を表す領域8のみは、この絶縁部で被包されていない。この領域8では、半導体材料は機能層4と間接的に接触するように機能層4で被覆されている。この機能層4の材料は、イオンに対して可能な限り化学的に不活性であると共に、不透過性であるものとする。
【0029】
機能層4としては、検査対象の媒体からの特定のイオンに対する透過性が異なる幾つかのタイプがあり、またこの構造の層数を異ならせることができる。本発明では、イオンに対して総じて不透過性である層構造を好適とするが、これはイオンに対して全体的に不透過性である単一層構造を意味している。一方複数層構造では、少なくとも一つの層又は幾つかの層を少なくとも測定対象のイオンに対して不透過性とし、他の層に関してはイオン若しくは他の材料に対して部分的に、又は全体的に透過性とすることができる。
【0030】
機能層4の動作モードは以下のように説明できる:それは検査対象の媒体からのイオンと化学結合して、半導体基板全体若しくはその一部に対する通過を防止するものである。 化学結合の結果、媒体の少なくとも一つの要素の化学的濃度が電気的な値に影響し、例えば機能層の表面上の電位が変化することで、要素自体の半導体表面における電気的特性値(例えば電位)が変化することになる。このことが半導体に影響して、半導体における電気的変化(例えば電荷キャリア濃度若しくは空間電荷域の変化、そして最終的には電流及び/又はキャパシタンス)が生じる。
【0031】
機能層配列4としては、例えば酸化物、窒化物、金属、若しくはセラミックス等の材料、及び各酸化物、混合物、化学量論化合物若しくは非化学量論化合物、又は合金等を使用することができる。
【0032】
好適には、この機能層配列は複数層構造からなり、各層は特定の役割を請け負っている。例えば三層構造を選択することができ、この構造では最下の層(直接半導体に接触する層)が(例えばチタン、Al、又はTiW、Si、ポリマ等に対して)接着剤として作用する。中央の層に関しては、少なくとも特定のイオン又はすべてのイオンが半導体の表面方向へ拡散することを防ぐよう選択する。最上層(検査対象の媒体と直接接触する層)は、特定のイオン又は量に対して高い選択性を達成するよう自由に選択することができる。これは例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素(それぞれ化学量論的又は非化学量論的に)であってよく、又は例えばプラチナ等の金属若しくは化合物であってもよい。それらの層の対応する厚さは、少なくともそれぞれの層の機能を果たすことができるように選択できるが、可能な限り低損失の半導体表面への電位透過を保証する薄さとすることができる。同様に、これらの層は表面から特定の領域において特定的にアクセスできるように(例えば層に対して電気的に接触できるように)構造化することができる。
【0033】
スパッタ蒸着または電気蒸着と半導体表面上のチタン層のその後の酸化によって得られた酸化チタン層は5nmから20nmの範囲の厚さを有し、詳細にはpH値を測定するセンサの機能を達成することができる。
【0034】
その後の酸化によって生成された層は正規組成化合物を有さない、又は例えば好適には特定の結晶化度を呈さないが、例えば或る構成要素が過度に存在することによって特徴づけることができることが好ましい。これを利用して、詳細には例えば誘電率あるいは電気抵抗を調整することができる。
【0035】
さらに、アルカリと酸に対する耐性、及びNaOH及びHNOを用いたマルチCIP試験サイクル(クリーンインプレイス試験サイクル)に対する耐性を、上記酸化チタン層上に確立することができる。よって、例えば食材生産の分野や製薬業界での応用の可能性が開ける。ワイドバンドギャップ半導体を使用することによって、室温を超える温度、例えば50℃から500℃の温度、好ましくは150℃から450℃の温度での動作が可能となる。
【0036】
機能層4と共に、例えば特定の動作電流又は電圧等の既述の条件下での低い電位変化でも高い信号応答を送る半導体構造3が特に適切である(例えば熱の影響を回避する、又は検査対象の媒体の解離電圧未満の動作電圧を可能とするため):
【0037】
1.例えば AlGaN/GaN−HEMTの場合、電気的活性層3は、例えば少なくとも二つの層、即ちGaN下位層とAlGaN上位層を含む通常のALGaN/GaNトランジスタに比べて比較的低いAl含有量x、即ち1%から15%のAl含有量を有し、AlGaN層の厚さが薄い(ここでは典型的に0から20nm、通常は20から30nm)構造が好適である。Al含有量が低いことで、電荷支持層の濃度が抑えられ(通常の1013cm−2ではなく1012cm−2)、電流飽和がより早くなる(即ちより低い供給電圧で電流が飽和する。ここでは例えば4V未満で飽和する)。厚さをより薄くすると、比較的低い電荷支持層の濃度に対する伝導帯の不連続性と、構成要素のより低いカットオフ電圧に影響する。全体として、表面上の電位の変化に対する半導体部品のより高い感度を達成することができる。
【0038】
2.容量半導体の場合には、例えばGaN又はダイヤモンドの材料系に以下のような構造が存在する。
a)電気的活性層3の厚さが10nmから500nmの範囲であり、わずかな容量をドープされた構造(5×1017cm−3未満の範囲において電荷キャリア濃度が活性化する):
又は、
b)半導体表面の下の電気的活性層3の容量材料中にパルスドーピングを有する構造(1013cm−2未満の範囲において電荷キャリア層濃度が活性化する)。よって、半導体表面に対する間隙は、高い感応性を達成するべく2nmから20nmとすべきである。
【0039】
例えば、従来のISFETやCHEMFETで使用されるシリコン−MOSシステムの場合のように、機能層配列4自体がゲート絶縁膜あるいはゲート酸化膜として作用しないことが、ここでは重要である。このタイプのシリコンシステムにおけるゲート酸化膜は、構成要素の機能に絶対的に必要である。しかし本ケースでは、機能層は半導体材料3に実装される電子部品の機能から切離されている。
【0040】
したがって、感応面を直接ゲート電極として、又は測定対象の媒体と関連したものだけとして見なすべきではない。実際、感応面は例えばpHセンサにおいてOHイオン又はHイオンの割合を決定するため、機能層4の表面に存在する電位が決定される。この電位により、例えば電子部品のソース電極とドレイン電極との間の電流の流れがその一部として決定される。
【0041】
従って例えばプラチナで製造した電極を利用すれば、例えば電界効果トランジスタのような電子部品を制御するために、又は動作点を定義するために、溶液を通して表面に追加の電位を適用することができる。溶液に対して常に一定の電位を有する基準電極が好適である。
【0042】
この例では、機能層は酸化チタンを含むことが有利である。外側の絶縁部6は、詳細には半導体材料3の材料特性により全体として又は部分的に可能であれば、センサ全てを包囲する必要はない。例えば接触領域8を囲む領域、又は接点5a、5bの領域等、必要な領域においてのみ被包部6を設けるだけでよい。
【0043】
また、電気接点5a、5bの成形については、それぞれの測定方法に適応させることができる。接点5a、5bに対する基本的な形態は、図1に示すように矩形のフォーマットである。ただし、平面構造上で容量測定を行う場合には、円形構造も好適である。例えば特に局所的な高電界領域を生成するには、鋭角又は点状の形態を用いることもできる。一方センサ1全体を一つの支持体上に配置することができる。これは例えばはんだ付けやフリップチップ技術によって行うことができる。こうして一つの回路に集積することができる。例えば、メタライゼーション、接着、はんだ付け、ボンディング等と共にリソグラフィのような技術を用いて接点5a、5bに接触させ、測定環境又は電子的評価手段にセンサ1を電気的に接触させることのできるストリップ導体を支持体材料上で使用することができる。
【0044】
図1では二つの電気接点5a、5bを示す。しかし、半導体材料3上に電気接点を一つのみ備え、第2の接点は測定対象の媒体における対極を介して確立するという構造も考えられる。
【0045】
通例では、pH値を測定する際に対極はなくてもよい。なぜなら、対極自体がpHに依存し、pH値の正確な測定ができないためである。その代わりに、pHセンサの接続方法には関係なく、pH値に依存しない基準電極を使用することができる。基準電極は溶液のpH値にかかわらず、常に溶液と同じ電位を有するものである。このタイプの基準センサ及びpHセンサを活用して、未知の溶液のpH値を測定することができる。トランジスタが溶液を介して制御されることを意図する場合、又はpHセンサを特徴づける場合に、対極が必要となるだけである。しかし、これは常に周知のpH溶液で行うものである。
【0046】
さらに、非ブロッキング接点としての一つ以上の電気接点5a、5bを用いる実施形態もブロック接点と同じように可能であり、またブロッキング接点と非ブロッキング接点との併用も可能である。
【0047】
pHセンサの場合には、この図で示すものと同様に、二つの測定方法が可能である。
【0048】
一方、一定のドレインソース電圧でのドレインソース電流の変化を測定することができ、他方では一定のドレインソース電流でのドレインソース電圧の変化を測定することができる。
【0049】
図2は本発明によるセンサの更なる例を示す。図2では機能層4の下の層構成がわかる断面で示す。本例ではシリコン、サファイア、炭化ケイ素、ダイヤモンド、又はイリジウムを含む基板2の上に、例えば窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、又はダイヤモンドを含むバッファ層9が位置している。例えばGaN/AlGaN/GaN又はドープしたGaNのような更なる層配列3は電子部品を形成する。この電子部品3の表面上に電気接点構造5a、5bが位置しているが、これら接点は複数の層を含む機能層4を水平方向において画定している。
【0050】
層配列2、9、3、5a、5b、及び4は電気絶縁材料6で包囲されているが、感応層である機能層配列4の表面上の開口部8のみは被覆されておらず、開放されたままである。この開口部8を通して、検査対象の媒体が機能層配列4の表面に接することができる。
【0051】
図3はセンサの垂直方向の構成を示しており、図2の層配列と対応している。このタイプの垂直方向の構成は、例えばバイポーラトランジスタSiT等で使用できるものである。 従って電気接点5a、5bは上面若しくは下面に、又は上面と下面に配置するのが好ましい。また構造にエッチングを行う場合には、電気接点5a、5bは異なる層若しくはエッチング深さで片側に配置する。層配列の上面及び下面の局所的な領域に深いエッチングを行うこともできる。
【0052】
このタイプのセンサを例えば図4に示す。このセンサにおける層基板2、バッファ層9、半導体3、及び層配列4aを含む層配列は、図2のものに対応している。しかし層配列4aは、垂直方向に延在する隣接した層配列4bを有する。ここで、接点5bは実質的に、バッファ層9及び層配列4bと接触し、一方接点5bは電子部品3及び層配列4aと接触する。
【0053】
図5は更なるセンサ構造を示しており、このセンサ構造では、基板2、バッファ層9、半導体材料3、及び層配列4が図2のものと対応している。接点5a及び5bは、図2と同様に層配列4の水平方向に配置されている。しかしそれらは、それぞれ一部を垂直方向において層配列に導入されている電気的接続12a及び12bに接続している。このように、感応面と開口部8とは反対側の裏面側においてセンサと接触することができる。このように裏面側で接触を行うことで、センサの表面側で接触させる必要がなく、ボード若しくはキャリア上でセンサの接触及び配置を行うことが可能となる。従って、ボード又はキャリア上に設けられる電気配線、例えば印刷基板の導体と直接接触することが可能である。
【0054】
図6は、個別のセンサ素子を有する本発明による更なるセンサを部分図A及びBで示す。 図6Aでは、センサ上の平面断面を見ることができる。センサは全部で3つのセンサ素子10a、10b、及び10cを有しており、これらは電気配線12a、12b、12c、及び12dを介して接点5a、5b、5c、及び5dと接続する。接点5dは接地し、接点5a、5b、及び5cは電圧源に接続することができる。
【0055】
本発明による機能層4の感応面によって形成されるセンサ素子10a、10b、10cは、図6で示す例ではそれぞれのサイズが異なっている。センサ素子毎にイオン又は材料への反応が異なるよう、それらの特性を異ならせることができる。このように、個別のセンサ素子の機能は同じであっても異なってもよい(精巧度、反応度等)。
【0056】
図6Bに示す完成したセンサの平面図でわかるように、センサ1の表面はそのほとんどを絶縁材料6で被覆されている。絶縁材料6が被覆していないのは、接点5a、5b、5c、5dと開口部8a、8b、8cであり、このことによってセンサ素子10a、10b、10cに媒体が接触することが可能となる。
【0057】
センサ素子アレイ1の全体的な寸法は、本例では5mm×5mmであり、開口部8a、8b、8cのサイズにより決定するセンサ表面は、開口部8aに対しては10μm×50μm、開口部8bに対しては10μm×100μm、開口部8cに対しては10μm×200μmである。本例では、被覆材料6としてポリイミドを使用する。
【0058】
容易にわかるように、本発明によればセンサを大幅に小型化できるため、多様な測定方法を行うことが可能である。
【0059】
図7は図6のセンサに類似した更なるセンサを示す。図6Bに示すセンサとは対照的に、センサ素子10cの開口部8cが被覆されている。その結果、センサ素子10cは媒体に対する感度を示さないブラインドセンサである。しかし、すべての他のパラメータに関して、このブラインドセンサ素子は通常のセンサと同じ構成と同じ構造を有している。
【0060】
センサ素子10cにより、温度の変化やその他の要因に基づいてセンサ素子10a、10b等のセンサ感度の変化を判断することができると共に、それに応じて媒体を測定する通常のセンサ素子10a、10bとそれらの信号を補正することができる。このブラインドサンプルにより、被覆されたセンサ素子10cによって他の破壊的な影響を補償することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 半導体センサ
3 半導体材料
4 機能層
5a、5b 電機接点
6 電気絶縁材料
8 開口部
9 バッファ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の物理的特性及び化学的特性の少なくともいずれか一つを決定し、感応面を有する電子要素を備え、前記電子要素の構成は、2eV以上のバンドギャップを有するワイドギャップ半導体をベースとする半導体センサにおいて、
前記感応面は、少なくとも一領域において機能層配列で被覆され、前記機能層配列は前記電子要素の前記感応面とは反対側にあるイオン感応面を有し、前記機能層配列は少なくとも決定対象のイオンに対して不透過性であり、
前記機能層配列は、複数の層を備え、
前記機能層配列の前記複数の層のうち、少なくとも一つの層が前記決定対象のイオンに対して不透過性であり、少なくとも一つの他の層が前記決定対象のイオンに対して部分的に透過性であること、
を特徴とする半導体センサ。
【請求項2】
前記機能層配列は、三つの層を備え、
前記機能層配列の前記三つの層のうち、最下層は前記ワイドギャップ半導体に接触し、中央層は前記決定対象のイオンに対して不透過性であり、最上層は前記決定対象のイオンに対して接触するものであって特定のイオンに対する選択性を有する、請求項1に記載の半導体センサ。
【請求項3】
前記センサがpHセンサである、請求項1又は2に記載の半導体センサ。
【請求項4】
前記電子要素上に設けた前記機能層配列の最上層が化学的耐性を有すること、を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項5】
前記電子要素上に設けた前記最上層が、アルカリ液、水酸化ナトリウム(NaOH)、酸、及び硝酸(HNO)のうちの少なくとも一つに対して耐性があること、を特徴とする請求項4に記載の半導体センサ。
【請求項6】
前記電子要素上に設けた前記最上層が次の材料、即ち酸化物、金属酸化物、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、金属、セラミック、窒素をベースとした材料、窒化チタン、窒化ケイ素、炭素含有化合物、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン及びそれらの混合物のうちの一つ以上を含む又は一つ以上で構成されること、
を特徴とする請求項4又は5のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項7】
前記電子要素上に設けた前記最上層が酸化物層であり、非酸化層の表面を熱酸化すること、酸化物層を電子化学的に蒸着すること、酸化物層をスパッタ蒸着すること、及び熱酸化を伴うスパッタ蒸着をすること、のうちの少なくとも一つにより前記最上層を生成すること、
を特徴とする請求項6に記載の半導体センサ。
【請求項8】
前記機能層配列が、一つのタイプのイオン、又は幾つかのタイプのイオン、又は全てのタイプのイオンに対して不透過性であるイオン選択拡散障壁層を有すること、を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項9】
前記機能層配列が、前記電子要素と前記機能層配列の更なる層との間に位置する接着層を有すること、を特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項10】
前記接着層が次の材料、即ちチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、チタン−タングステン合金(TiW)、シリコン(Si)、及びポリマのうちの一つ以上を含む又は一つ以上で構成されること、を特徴とする請求項9に記載の半導体センサ。
【請求項11】
前記ワイドギャップ半導体が次の材料、即ちダイヤモンド、窒化ガリウム、及び炭化ケイ素のうちの一つ以上を含有する又は一つ以上からなること、を特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項12】
前記電子要素が、少なくとも一領域においてドープ容量材料、非ドープ容量材料若しくはヘテロ構造を含む又は含有すること、を特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項13】
前記容量材料が窒化ガリウムのようなIII−V半導体であること、を特徴とする請求項12に記載の半導体センサ。
【請求項14】
前記電子要素が、水平方向若しくは水平的に構成したものであること、又は垂直方向若しくは垂直的に構成したものであること、を特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項15】
前記電子要素が、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、MODFET(変調ドープ電界効果トランジスタ)、金属半導体接合電界効果トランジスタ(MESFET、金属半導体FET)、δ−FET、SIT(静電誘導型トランジスタ)、又はヘテロ構造バイポーラトランジスタ(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ、HBT)であり、ゲート電極を前記機能層配列の前記イオン感応面上に又は前記イオン感応面によって形成すること、
を特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項16】
前記電子要素がその最上位置に半導体層を有し、前記半導体層が前記機能層に面しており、次の材料、即ち窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、又は化学式AlGa1−xNの窒化アルミニウムガリウム、化学式InGa1−xNの窒化インジウムガリウム(0.01≦x≦0.3)、又は窒化インジウムアルミニウムInAl1−xN(0<x<1)のうちの一つを含むこと、
を特徴とする請求項15に記載の半導体センサ。
【請求項17】
前記機能層配列の露出した面と電気接点の少なくとも一部を除いて、前記センサの表面を被包部が被覆していること、を特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項18】
前記被包部がエポキシ樹脂及びポリイミドのうちの少なくとも一つを有する又は少なくとも一つからなること、を特徴とする請求項17に記載の半導体センサ。
【請求項19】
前記被包部が少なくとも一つの電気絶縁材料、少なくとも一つの化学的に耐性のある材料、及び少なくとも一つの化学的に不活性の材料のうちの少なくとも一つを有する又は少なくとも一つからなること、を特徴とする請求項17又は18に記載の半導体センサ。
【請求項20】
前記電子要素を基板上に直接的に又は基板上の中間層上に配置すること、を特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項21】
前記基板が次の材料、即ちシリコン(Si)、サファイア(Al)、炭化ケイ素(SiC)、ダイヤモンド、イリジウム(Ir)、又はそれらの組合せのうちの一つ以上を含む又は一つ以上からなること、を特徴とする請求項20に記載の半導体センサ。
【請求項22】
前記基板と前記電子要素との間にバッファ中間層を配置すること、を特徴とする請求項20又は21に記載の半導体センサ。
【請求項23】
前記バッファ中間層が次の材料、即ち窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、ダイヤモンド、又はそれらの組合せのうちの一つ以上を含む又は一つ以上で構成されること、
を特徴とする請求項22に記載の半導体センサ。
【請求項24】
前記電子要素が少なくとも一つの抵抗接点領域を有すること、を特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項25】
少なくとも一つの電気接点を前記電子要素上に配置して、前記電子要素からの電気信号を送出し、前記電気接点のうちの少なくとも一つが、前記抵抗接点領域のうちの少なくとも一つに導電的に又は半導電的に接続すること、
を特徴とする請求項24に記載の半導体センサ。
【請求項26】
前記電子要素を、キャリア上に又は前記基板と共にキャリア上に配置すること、を特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項27】
接着、はんだ付け、及びフリップチップのうちの少なくとも一つによって前記電子要素又は前記基板に前記キャリアを接続すること、を特徴とする請求項26に記載の半導体センサ。
【請求項28】
前記電子要素の信号を外部に送出するために、少なくとも一つの抵抗接点領域を前記電子要素に設けると共に、前記電子要素の前記抵抗接点領域の少なくとも一つに導電的に又は半導電的に接続する電気接点として少なくとも一つのストリップ導体を前記キャリアに設けること、
を特徴とする請求項26又は27のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項29】
前記電子要素及び前記機能層配列を含む構造全てを、前記キャリア又は前記基板上に少なくとも二層構造で配置すること、を特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載の半導体センサ。
【請求項30】
前記層構造で配置した構造のうちの少なくとも二つを、前記キャリアの層面に又は前記基板の層面に重ね合わせて配置すること、を特徴とする請求項29に記載の半導体センサ。
【請求項31】
少なくとも二つの隣接して前記配置した構造のうちの一つの前記イオン感応面を更なる非感応層で被覆すること、を特徴とする請求項30に記載の半導体センサ。
【請求項32】
10℃から500℃の範囲で、又は室温若しくは50℃から500℃の範囲で、又は150℃から450℃の範囲で、基準電極を用いて又は用いずに、対極を用いて又は用いずに、流体、気体又は液体の特性を決定するべく媒体の物理的特性及び化学的特性のうちの少なくとも一つを検出する、pHセンサ又は酸素センサとしての、請求項1から31のいずれか一項に記載の半導体センサの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−198250(P2012−198250A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167582(P2012−167582)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2008−525471(P2008−525471)の分割
【原出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(505333768)ミクロガン ゲーエムベーハー (7)