半導体レーザモジュールの製造方法
【課題】 製造効率を高め、しかも、半導体レーザモジュール1の信頼性を向上させることができる製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体レーザ素子2の配置位置が固定されている状態で、フェルール11に挿通固定されている光ファイバ3を半導体レーザ素子2に対して調心する。その後に、フェルール11を固定用部材17の固定部10にレーザ溶接によって固定するが、その際に、レーザ溶接に起因してフェルール11が位置ずれして光ファイバ3が調心位置からずれる。このことから、レーザ溶接する前に、その光ファイバ3の位置ずれを見越して、予め、光ファイバ3を調心位置から前記位置ずれ分だけ逆方向にずらす。そして、フェルール11と固定部10をレーザ溶接する。このとき、フェルール11が位置ずれして光ファイバ3が調心位置に復帰する。
【解決手段】 半導体レーザ素子2の配置位置が固定されている状態で、フェルール11に挿通固定されている光ファイバ3を半導体レーザ素子2に対して調心する。その後に、フェルール11を固定用部材17の固定部10にレーザ溶接によって固定するが、その際に、レーザ溶接に起因してフェルール11が位置ずれして光ファイバ3が調心位置からずれる。このことから、レーザ溶接する前に、その光ファイバ3の位置ずれを見越して、予め、光ファイバ3を調心位置から前記位置ずれ分だけ逆方向にずらす。そして、フェルール11と固定部10をレーザ溶接する。このとき、フェルール11が位置ずれして光ファイバ3が調心位置に復帰する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信に用いられる半導体レーザモジュールの製造方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】図7には半導体レーザモジュールの一構造例が模式的な断面図により示されている。この半導体レーザモジュール1は半導体レーザ素子2を光ファイバ3と光結合状態にしてパッケージ4の内部に収容配置して成るものである。
【0003】この半導体レーザモジュール1において、パッケージ4の内部には温度制御モジュール(例えばペルチェモジュール)5が固定されており、この温度制御モジュール5の上部には金属製のベース6が固定されている。ベース6の上面にはLDキャリア7を介して半導体レーザ素子2が固定され、また、PDキャリア8を介してフォトダイオード9が固定され、半導体レーザ素子2の近傍にサーミスタ(図示せず)が配設されている。
【0004】フォトダイオード9は半導体レーザ素子2の発光状態をモニタするものであり、温度制御モジュール5は半導体レーザ素子2の温度制御を行うものである。この温度制御モジュール5の動作は、サーミスタの検出温度に基づいて、半導体レーザ素子2が一定の温度となるように制御される。温度制御モジュール5による半導体レーザ素子2の温度制御によって、半導体レーザ素子2の温度変動に起因した半導体レーザ素子2のレーザ光の強度変動および波長変動が抑制されて、半導体レーザ素子2のレーザ光の強度および波長がほぼ一定に維持される。
【0005】ベース6には、さらに、固定用部材17によってフェルール11が固定されている。フェルール11は、例えば、Fe-Ni-Co合金(コバール(商標))等の金属により構成されており、例えば円柱状に形成されている。このフェルール11の内部には前端面11aから後端面11bにかけて貫通する貫通孔(図示せず)が形成されており、この貫通孔には光ファイバ3が挿通されて例えば半田により固定されている。
【0006】この光ファイバ3の先端部はフェルール11の前端面11aから前方に突出され、半導体レーザ素子2の発光部(活性層)と間隔を介して配置されており、半導体レーザ素子2から出射されたレーザ光を受けるものである。この例では、光ファイバ3は、その先端部にレンズ12が形成されて成るレンズドファイバである。
【0007】フェルール11の後端面11bから引き出された光ファイバ3は、パッケージ4の外部に導出されており、半導体レーザ素子2から光ファイバ3の先端部に入射したレーザ光は、光ファイバ3を伝搬して所望の供給場所に導かれる。
【0008】図8には、フェルール11が固定されている部分を抜き出して上方側から見た平面図が示され、図9R>9には固定用部材17の一例が斜視図により示されている。固定用部材17は、対を成す固定部10a,10b(10a',10b')が間隔を介して基部15に配置固定されているものである。この固定用部材17は例えば図8に示されるようなQ位置でレーザ溶接(例えばYAGレーザ溶接)によりベース6に固定されている。
【0009】フェルール11は、半導体レーザ素子2に近い前方側の部位と、半導体レーザ素子2から遠い後方側の部位とにおいて、その側面が両側から固定用部材17の一対の固定部10(10a,10b、10a',10b')によって挟み込まれ、当該フェルール11は固定部10(10a,10b、10a',10b')にレーザ溶接(例えばYAGレーザ溶接)により固定されている。なお、図7や図8では、その溶接部分は黒丸Pにより示されている。
【0010】半導体レーザモジュール1の製造工程では、ベース6にLDキャリア7を介して半導体レーザ素子2を固定した後に、固定用部材17を利用してフェルール11をベース6に固定する作業が行われる。この作業の一例を示す。例えば、まず、フェルール11の前方側を固定するための固定用部材17を、ベース6上の固定位置と推定される位置に移動自在な状態で配置する。この状態で、フェルール11の前方側の部位を固定用部材17の固定部10a,10b間に配置し、フェルール11の前方側の部位を固定部10a,10bにレーザ溶接により固定する。この際、ベース6に対する半導体レーザ素子2の光軸の高さ位置と、光ファイバ3の光軸の高さ位置とがほぼ一致するように半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3の調心を行ってから(つまり、半導体レーザ素子2の光軸と光ファイバ3の光軸をY軸方向にて位置合わせしてから)、フェルール11の前方側の部位をレーザ溶接により固定部10a,10bに固定する。
【0011】その後、光ファイバ3の光軸が半導体レーザ素子2の光軸と一致するように、フェルール11の前方側の部位が固定された固定用部材17を、X軸方向やZ軸方向に移動させて、光ファイバ3の光軸のX軸方向とZ軸方向の位置合わせを行う。この位置合わせの後に、その位置合わせの状態を保持したまま、固定用部材17の基板15を溶接によりベース6に固定する。
【0012】なお、予め固定用部材17(基板15)をベース6に固定してから、その固定用部材17の固定部10a,10b間にフェルール11の前方側の部位を配置し、半導体レーザ素子2の光軸と光ファイバ3の光軸が一致するように光ファイバ3の調心を行い、その後に、フェルール11の前方側の部位を固定用部材17の固定部10a,10bに溶接固定してもよい。
【0013】然る後に、図10に示すように、調心器具(図示せず)を用い、フェルール11の後方側を、前方側の溶接部Pを支点として矢印Aの如く傾動させる。これにより、光ファイバ3の先端部をY軸方向に微動させ、再度、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を調心して精密な光軸の位置合わせを行う。この再調心の後に、その状態を維持したまま、フェルール11の後方側の部位を固定用部材17の固定部10a',10b'に溶接固定し、固定用部材17をベース6に固定する。ここでも、固定用部材17を予めベース6に固定してからフェルール11の後方側の部位を固定用部材17に溶接固定してもよい。
【0014】上記のような作業手順でもって、フェルール11が固定用部材17を介してベース6に固定されることによって、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を調心固定する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、フェルール11は、レーザ溶接によって、固定用部材17の固定部10に固定されるために、実際には、半導体レーザ素子2の光軸に対して光ファイバ3の光軸がずれてしまうという問題が起こる。
【0016】それというのは、レーザ溶接は、フェルール11と固定部10の接合対象部位にレーザ光(溶接レーザ光)を照射して局所的にその接合対象部位を加熱し、フェルール11と固定部10の金属を溶融させ、瞬時に凝固させ合金化させることによって、フェルール11と固定部10を接合固定する手法である。このレーザ溶接の際に、金属の溶融や凝固収縮に起因して、固定部10に対してフェルール11が位置ずれしてしまうという事態が発生する。
【0017】このため、光ファイバ3の調心を行ったのにも拘わらず、調心の後にフェルール11を固定用部材17の固定部10にレーザ溶接する工程において、フェルール11が位置ずれし、これにより、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3が位置ずれしてしまうという問題が生じてしまうこととなる。
【0018】これに対して、EUROPEAN PATENT APPLICATION EP 0 717 297 A2には、次に示すような手法が提案されている。この提案の手法では、図11に示されるように、フェルール11の前方側の部位を固定部19に溶接固定した後に、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を再調心し、この再調心後に、特有な形状を持つ固定用部材18を利用して、フェルール11の後方側をベース6に固定する。その固定用部材18においては、把持部20でもってフェルール11の後方側を挟持し、当該把持部20にフェルール11の後方側がレーザ溶接される。
【0019】把持部20にフェルール11の後方側をレーザ溶接した際に、前記したようなレーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれが生じるので、その光ファイバ3の位置ずれを補正するために、固定用部材18を塑性変形させて、再度、光ファイバ3の調心を行う。そして、光ファイバ3の調心が成されている状態で、固定用部材18の形状を固定する。
【0020】このように、この提案の手法では、フェルール11の後方側を固定用部材18にレーザ溶接により固定した後に、再度、光ファイバ3の調心を行わなければならないという面倒がある。
【0021】また、固定用部材18の形状が複雑であり、これにより、固定用部材18のコストが高くなり、これに起因して半導体レーザモジュール1の価格が高くなってしまうという問題がある。
【0022】さらに、フェルール11と固定用部材18をレーザ溶接した後に、固定用部材18を塑性変形させて光ファイバ3の再調心を行う際には、固定用部材18の弾性変形による戻りを見越して調心を行う必要がある。このため、その調心作業に多くの時間がかかり、半導体レーザモジュール1の製造効率を低下させてしまうという問題があった。
【0023】さらに、フェルール11の前方側のレーザ溶接の部位を支点としてフェルール11を傾動させて光ファイバ3を調心する作業を繰り返すことによって、フェルール11の前方側の溶接部にねじれ応力などによる歪みが生じ易くなる。その歪みに起因して、半導体レーザモジュール1を使用しているうちに、その溶接部にクラックなどが発生し、このクラックに起因して光ファイバ3の位置ずれが生じて、半導体レーザモジュール1の特性が劣化し、半導体レーザモジュール1の信頼性が低下してしまうという問題が生じる。
【0024】この発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、製造が容易で、製造効率を高めることができ、しかも、コストが安く、信頼性が高い半導体レーザモジュールを得るための製造方法を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決する手段としている。すなわち、第1の発明は、半導体レーザ素子と、この半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を受けて当該光を伝搬するレンズドファイバと、このレンズドファイバが挿通固定されるフェルールと、半導体レーザ素子が搭載固定されるベースと、前記フェルールの側面を両側から挟持して当該フェルールと前記ベースとの間に介在してベースに固定される固定用部材とを有する半導体レーザモジュールの製造方法において、前記フェルールに挿通固定されたレンズドファイバを、ベース上に位置決め固定された半導体レーザ素子に間隔を介して対向配置し、半導体レーザ素子に対してレンズドファイバを調心する調心工程と、この調心工程の後に、上記フェルールを、ベース上に配置された前記固定用部材にレーザ溶接するレーザ溶接工程とを含み、前記調心工程とレーザ溶接工程の間に、レーザ溶接工程で生じるフェルールの位置ずれに起因したレンズドファイバの位置ずれを見越して、予めレンズドファイバを調心位置から前記位置ずれ量分だけ逆方向にずらすオフセット工程とを含むことを特徴としている。
【0026】第2の発明は、第1の発明の構成を備え、フェルールは、半導体レーザ素子に近い前方側の部位と、半導体レーザ素子から遠い後方側の部位とにおいて、固定用部材により挟持されてベースに固定される構成と成し、フェルールの前方側の部位と後方側の部位のそれぞれにおいて調心工程とレーザ溶接工程を行ってベースに固定することとし、少なくともフェルールの後方側の部位に対してオフセット工程を行うことを特徴としている。
【0027】第3の発明は、第1又は第2の発明の構成を備え、レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれ量のデータを予め検出し、この検出データに基づいてレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を予め定めておき、このずらし量分だけ、レンズドファイバを調心位置からずらしてから、レーザ溶接を行うことを特徴としている。
【0028】第4の発明は、第1又は第2の発明の構成を備え、フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定するものとし、フェルールと固定用部材間の間隔をパラメータとしたレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量のデータを予め作成しておき、レーザ溶接の前にレンズドファイバをずらす際には、フェルールと固定用部材間の間隔を検出し、この検出値と、前記レンズドファイバのずらし量のデータとに基づいて、レンズドファイバのずらし量を決定することを特徴としている。
【0029】第5の発明は、第1又は第2の発明の構成を備え、フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定する手法を採用し、また、フェルールの側面と、当該フェルールの側面と向き合う固定用部材の面とが非平行であり、固定用部材に対するフェルールの配置高さの違いによって固定用部材とフェルール間の間隔が異なるものとし、固定用部材に対するフェルールの配置高さをパラメータとしたレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量のデータを予め作成しておき、レーザ溶接の前にレンズドファイバをずらす際には、固定用部材に対するフェルールの配置高さを検出し、この検出値と、前記レンズドファイバのずらし量のデータとに基づいて、レンズドファイバのずらし量を決定することを特徴としている。
【0030】第6の発明は、第1〜第5の発明の何れか1つの発明の構成を備え、溶接レーザ光の出力エネルギー量を考慮して、レーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を決定することを特徴としている。
【0031】この発明では、レンズドファイバの調心の後に、レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれを見越してレンズドファイバを調心位置からずらし、その後に、レーザ溶接によって、フェルールを固定用部材に固定する。このレーザ溶接工程では、レーザ溶接によってフェルールが位置ずれしてレンズドファイバが調心位置に戻ることとなる。このように、レーザ溶接によるフェルールの位置ずれによってレンズドファイバが調心位置に復帰するので、このレーザ溶接の後に、再度、レンズドファイバの調心を行わなくとも済む。これにより、作業効率を高めることができる。
【0032】また、図11に示されるような複雑な形状の固定用部材を用いなくとも、簡単な形状を有する安価な固定用部材を採用して、レンズドファイバを調心位置でもって固定することができるので、部品コストを低下させることができて、半導体レーザモジュールのコストを安くすることができる。
【0033】さらに、例えば、フェルールの前方側の溶接部を支点としてフェルールの後方側を傾動してレンズドファイバを調心する作業を複数回行わなくてもよいので、フェルールの前方側の溶接部にねじれ応力などに起因した歪みが発生することを抑制することができる。これにより、歪みに起因した溶接部の経年劣化によってフェルール(レンズドファイバ)の位置ずれが生じる事態を防止することができる。このため、半導体レーザモジュールの信頼性を向上させることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0035】第1実施形態例では、図7に示す半導体レーザモジュールを例にして、この発明に係る半導体レーザモジュールの製造方法の一例を説明する。なお、この第1実施形態例では、図7に示す半導体レーザモジュールの構造の説明は、前述したので、省略する。
【0036】この第1実施形態例では、固定用部材17を利用してフェルール11をベース6に固定する工程に特徴がある。それ以外の製造工程に関しては、製造手法が特に限定されるものではなく、何れの手法を採用してもよく、ここでは、その説明は省略する。
【0037】この第1実施形態例では、ベース6上に、LDキャリア7を介して半導体レーザ素子2が固定されている状態で、まず、図1(a)に示されるように、フェルール11に挿通固定された光ファイバ(レンズドファイバ)3を、半導体レーザ素子2と間隔を介して対向配置させ、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を調心する。なお、図1(a)に表されている符号22は、半導体レーザ素子2の発光部(活性層)を示している。
【0038】光ファイバ3の調心工程の手法は特に限定されるものではないが、その一例を示すと、例えば、半導体レーザ素子2からレーザ光を発光させ、そのレーザ光を光ファイバ3に入射・伝搬させながら、調心治具(図示せず)などを利用してフェルール11の配置位置を微妙にずらして、光ファイバ3を伝搬するレーザ光の強度(パワー)が最も強くなる位置を調心位置とする。また、次に示すようにして調心作業を行う場合もある。例えば、調心治具にステッピングモータなどの駆動手段を取り付け、また、光ファイバ3を伝搬するレーザ光の強度を検出する光強度検出装置を設ける。そして、コンピュータが、その駆動手段の駆動情報と、光強度検出装置の光強度の検出情報とに基づいて、フェルール11の配置位置をずらして、光ファイバ3を自動的に調心位置に調節してもよい。あるいは、光強度検出装置による光強度の検出結果を監視しながら、人が駆動手段によるフェルール11の移動量を調節して、光ファイバ3を調心してもよい。
【0039】このような調心工程の後に、レーザ溶接(例えばYAGレーザ溶接)によって、ベース6上に配置された固定用部材17の固定部10a,10bと、フェルール11の前方側の部位とを溶接固定するレーザ溶接工程を行うが、そのレーザ溶接により固定部10a,10bに対してフェルール11が位置ずれして光ファイバ3が位置ずれしてしまう事態が発生する。このため、この第1実施形態例では、調心工程とレーザ溶接工程との間に、図1(b)に示すように、その位置ずれを見越し、予め、光ファイバ3を調心位置から、その位置ずれ量に応じた分だけ、上記位置ずれ方向と逆方向にずらす。なお、この明細書では、そのずらす工程をオフセット工程と称する。
【0040】このときのずらし量(以下、オフセット量と称する)およびそのずらし方向(以下、オフセット方向と称する)は、予め、実験データに基づいて定められる。つまり、フェルール11と固定用部材17(固定部10)の構成材料や、レーザ溶接手法などの条件がほぼ等しければ、レーザ溶接による光ファイバ3の位置ずれ量およびその方向はほぼ同様となるからである。
【0041】このことから、予め実験などによって、レーザ溶接による光ファイバ3の位置ずれ量や、そのずれ方向のデータを多数検出し、それら検出データに基づいて、オフセット量およびオフセット方向を決定しておく。そして、この予め定めたオフセット量およびオフセット方向でもって、レーザ溶接の前に、光ファイバ3を調心位置からずらす。
【0042】なお、図1(b)に示す例では、オフセット方向は斜め右上方向であるが、もちろん、レーザ溶接による光ファイバ3の位置ずれ方向は様々な条件によって異なるものであり、オフセット方向は、図1(b)に示す方向に限定されるものではない。また、レーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれによって、半導体レーザ素子2から光ファイバ3に伝搬される光のパワーが変動することから、そのレーザ溶接に起因した伝搬光のパワー変動量を光ファイバ3の位置ずれ量のデータとして実験により検出し、この検出データに基づいて、予めオフセット量およびオフセット方向を決定してもよい。
【0043】オフセット工程の後には、図1(c)に示すように、レーザ溶接によって、フェルール11の前方側を固定用部材17の固定部10(10a,10b)に例えばPの位置で接合する。このレーザ溶接によって、フェルール11が位置ずれして、光ファイバ3は調心位置に復帰することとなる。
【0044】その後、そのフェルール11の前方側と固定部10との溶接部Pを支点として、フェルール11の後方側を傾動し、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を再調心する。この再調心によって、図2(a)に示されるように光ファイバ3の調心位置が定まると、その後に、レーザ溶接によって、フェルール11の後方側を固定用部材17の固定部10(10a',10b')に接合固定するが、この場合にも、そのレーザ溶接に起因してフェルール11の後方側が位置ずれを起こして、光ファイバ3の調心状態が崩れてしまう。
【0045】このため、フェルール11の後方側を固定部10に溶接固定する場合にも、前記同様に、レーザ溶接する前に、図2(b)に示されるように、フェルール11を調心位置から予め定めたオフセット量分だけオフセット方向にずらす。
【0046】このオフセット工程の後に、図2(c)に示すように、レーザ溶接によって、フェルール11の後方側を固定部10(10a',10b')にPの位置でもって接合する。このレーザ溶接によって、フェルール11の後方側が位置ずれして、光ファイバ3は調心位置に復帰する。
【0047】この第1実施形態例によれば、光ファイバ3の調心工程の後に、オフセット工程を行ってから、レーザ溶接によってフェルール11を固定用部材17の固定部10に接合固定するレーザ溶接工程を行う構成としたので、レーザ溶接に起因してフェルール11が位置ずれすることにより、光ファイバ3が調心位置に復帰し、光ファイバ3を調心状態でベース6に固定することができる。
【0048】これにより、フェルール11の後方側を固定用部材17に溶接固定した後に、そのレーザ溶接による位置ずれを補正するために光ファイバ3の再調心を行う必要が無くなり、その分、作業効率を高めることができて、半導体レーザモジュール1の製造時間を短縮させることが可能となる。
【0049】また、そのように、光ファイバ3の再調心が不要となることから、図11に示すような複雑な形状の固定用部材18をわざわざ用いなくともよい。つまり、簡単な形状の固定用部材を利用して光ファイバ3(フェルール11)をベース6に固定することができるので、部品コストを低下させることができて、半導体レーザモジュール1の低コスト化が容易となる。
【0050】さらに、図11に示すような固定用部材18を利用する場合には、フェルール11の後方側を固定用部材18に溶接固定した後に、光ファイバ3の調心工程を再び行うので、その再調心工程に起因して、フェルール11の前方側の溶接部Pにねじれ応力などによる歪みが発生する確率が高かった。その歪みに起因して、半導体レーザモジュール1を使用しているうちに、その溶接部Pにクラックなどが発生して半導体レーザモジュール1の特性が劣化するという問題が発生していた。
【0051】これに対して、この第1実施形態例では、フェルール11の後方側を固定部10に溶接固定した後に光ファイバ3の再調心工程を行わなくとも済むので、フェルール11の前方側の溶接部Pにねじれ応力などによる歪みが発生することを抑制することができる。このため、その歪みに起因した溶接部Pの経年劣化を抑えることができて、半導体レーザモジュール1の信頼性を高めることができる。
【0052】さらに、フェルール11の前方側を固定部10に溶接固定する際に、そのレーザ溶接に起因してフェルール11が固定部10に対してY方向だけでなく、Z方向にも位置ずれする場合がある。このような場合に、従来の手法では、そのフェルール11の位置ずれに起因した光ファイバ3のY方向の位置ずれに関しては、フェルール11の後方側を傾動させて光ファイバ3の調心作業を行うことによって修正することができるが、光ファイバ3のZ方向の位置ずれに関しては、修正することができず、ずれたままとなってしまっていた。
【0053】これに対して、この第1実施形態例では、フェルール11の前方側を固定部10に溶接固定する前に、レーザ溶接によるフェルール11のY方向の位置ずれだけでなく、Z方向の位置ずれをも考慮して、フェルール11をオフセット移動させることにより、フェルール11の前方側を固定部10に溶接固定した後に、光ファイバ3をY方向とZ方向の両方向において精度良く調心位置に配置させることができることとなる。
【0054】さらに、フェルール11の前方側を溶接固定する前にオフセット動作を行うことによって、フェルール11の後方側を傾動して光ファイバ3の再調心を行う際に、そのフェルール11の後方側の傾動量を小さくすることができる。これにより、フェルール11の後方側の傾動による前方側の溶接部Pの負担を軽減することができる。また、フェルール11の後方側を溶接固定する前にオフセット動作を行うことによって、フェルール11の後方側を溶接固定した後に、光ファイバ3の再調心を行わなくて済む。この第1実施形態例では、フェルール11の前方側を溶接固定する場合と、フェルール11の後方側を溶接固定する場合との両方において、その溶接前にオフセット動作を行う構成としたので、フェルール11の前方側のオフセット動作による効果と、後方側のオフセット動作による効果との両方を得ることができる。
【0055】なお、フェルール11と固定部10を溶接するための溶接レーザ光の出力エネルギー量が大きければ、そのレーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれ量は大きくなるという如く、溶接レーザ光の出力エネルギー量によって光ファイバ3の位置ずれ量が異なる。このことから、例えば溶接レーザ光の出力エネルギー量を可変することが考えられる場合などにおいては、溶接レーザ光の出力エネルギー量をパラメータとした光ファイバ3のオフセット量のデータを予め作成しておき、溶接レーザ光の出力エネルギー量に応じて光ファイバ3のオフセット量を決定することが望ましい。
【0056】また、ここでは、フェルール11の前方側の部位と後方側の部位に対して、それぞれ、オフセット工程を行う例を示したが、フェルール11の前方側の部位に対するオフセット工程を省略し、フェルール11の後方側の部位を固定部10に固定する際の調心工程とオフセット工程によって、前方側部位のレーザ溶接による光ファイバ3の位置ずれを吸収することとしてもよい。
【0057】以下に、第2実施形態例を説明する。この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と共通する部分の重複説明は省略する。
【0058】この第2実施形態例では、図3に示すように、フェルール11と、固定用部材17の固定部10との間に間隙Sを形成し、この状態で、フェルール11と固定部10の接合対象部位にレーザ光を照射してフェルール11を固定部10に溶接固定する場合を対象としている。なお、フェルール11の前方側と後方側の両方において、固定部10との間に隙間が形成される場合もあるし、フェルール11の前方側と後方側の一方のみにおいて、固定部10との間に隙間が形成される場合もある。この第2実施形態例では、何れの場合であってもよい。また、フェルール11の前方側の部位において、固定部10との間に隙間を形成して溶接固定することにより、フェルール11の後方側を傾動させて調心作業を行う際に、フェルール11の後方側を傾動し易くすることができる。
【0059】例えば、フェルール11の直径Rが1mmであり、レーザ溶接機の出力エネルギー量が約5〜6.5Jである場合に、フェルール11と固定部10間の間隔dが約5μmであるときには、レーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれ量が約11.3μmであった。また、前記間隔dが約10μmであるときには、レーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれ量は約12.1μmであった。この具体例に示されるように、フェルール11と固定部10間の間隔dの違いによって、レーザ溶接に起因したフェルール11(光ファイバ3)の位置ずれ量が異なる。この第2実施形態例では、このことに着目した。
【0060】ところで、この第2実施形態例では、固定部10は直方体状であり、フェルール11は円筒形状である。このことから、フェルール11と固定部10の接合対象部位において、互いに向き合っているフェルール11の面と、固定部10の面とは平行ではない。このため、対を成す固定部10a,10b(10a',10b')間の間隔が同じでも、固定部10に対するフェルール11の配設高さが異なると、図4(a)〜(c)に示されるように、接合対象部位におけるフェルール11と固定部10間の間隔dが異なることとなる。
【0061】前述したように、そのフェルール11と固定部10間の間隔dの違いによって、レーザ溶接に起因したフェルール11(光ファイバ3)の位置ずれ量が異なることから、この第2実施形態例では、そのフェルール11と固定部10間の間隔dを考慮して、レーザ溶接前のオフセット工程を行うこととした。
【0062】例えば、予め、接合対象部位におけるフェルール11と固定部10間の間隔dと、レーザ溶接によるフェルール11の位置ずれ量との関係を実験によって求め、この実験データに基づいて、フェルール11と固定部10(固定用部材17)間の間隔dをパラメータとしたレーザ溶接前の光ファイバ3のオフセット量(ずらし量)のデータを予め作成しておく。なお、オフセット作業によって、例えば図1(b)に示すように光ファイバ3を調心位置からY方向およびZ方向にずらす必要がある場合には、それら各方向毎のオフセット量のデータが作成されることとなる。また、もちろん、溶接レーザ光の出力エネルギー量を考慮して、光ファイバ3のオフセット量のデータが作成されることとなる。
【0063】そして、レーザ溶接前のオフセット工程を行う際には、フェルール11と固定部10間の間隔dを検出し、この検出値と、前記光ファイバ3のオフセット量のデータとに基づいて、オフセット量を決定する。その後、その決定したオフセット量分だけ、光ファイバ3をずらす。そして、フェルール11を固定部10にレーザ溶接する。
【0064】この第2実施形態例によれば、フェルール11と固定部10間に間隙Sが形成される場合に、そのフェルール11と固定部10間の間隔dを考慮して光ファイバ3のオフセット量を決定することとした。このため、レーザ溶接に起因したフェルール11(光ファイバ3)の位置ずれ量がフェルール11と固定部10間の間隔dの違いによって変動することによる悪影響を受けずに、レーザ溶接の後に、精度良く光ファイバ3を調心位置に復帰させることができることとなる。
【0065】これにより、フェルール11と固定部10間に間隙Sが形成される場合であっても、第1実施形態例と同様の効果を奏することができることとなる。
【0066】以下に、第3実施形態例を説明する。この第3実施形態例の説明において、前記各実施形態例と共通する部分の重複説明は省略する。
【0067】この第3実施形態例では、第2実施形態例と同様に、フェルール11と固定部10間に間隙Sが形成される場合を対象としている。この第3実施形態例では、固定用部材17の固定部10に対するフェルール11の配置高さと、フェルール11と固定部10間の間隔dとには相関関係があることに着目した。このことから、この第3実施形態例では、固定部10に対するフェルール11の配置高さの情報をフェルール11と固定部10間の間隔dの情報として利用することとした。それ以外は第2実施形態例と同様である。
【0068】例えば、固定部10の上面に対するフェルール11の頂部の高さHと、レーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれ量との関係を予め実験によって求める。そして、この実験データに基づいて、固定部10の上面に対するフェルール11の頂部の高さHをパラメータとした光ファイバ3のオフセット量(ずらし量)のデータを予め作成しておく。そして、オフセット作業を行う際には、固定部10の上面に対するフェルール11の頂部の高さHを検出し、この検出値と、上記光ファイバ3のオフセット量のデータとに基づいて、オフセット量を決定する。そして、その求めたオフセット量分だけ、光ファイバ3を調心位置からずらし、その後に、フェルール11を固定部10に溶接固定する。
【0069】この第3実施形態例においても、第2実施形態例と同様の効果を奏することができる。
【0070】なお、この発明は上記各実施形態例に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、上記各実施形態例では、フェルール11は円筒形状であったが、例えば、図5に示されるように断面多角形状であってもよく、その形状は特に限定されるものではない。
【0071】また、固定用部材の形状も特に限定されるものではなく、適宜の形状を採り得る。例えば、図6に示されるような形状としてもよい。この図6に示す例では、フェルール11の前方側をベース6に固定するための固定用部材25は、対を成す固定部26a,26bを有し、これら固定部26a,26b間の間隔が固定のものである。なお、例えば、それら固定部26a,26b間にフェルール11が配置され光ファイバ3が調心位置にあるときに、フェルール11と、固定部26a,26bとの間の間隔dが0〜20μm程度となるように、固定部26a,26b間の間隔が定められている。
【0072】また、フェルール11の後方側を固定するための固定用部材27は、対を成す固定部28a,28bを有して構成されている。それら固定部28a,28bは、その側面が両側からガイド部29によってガイドされ、配置位置調整前は、X方向にスライド移動が自在な状態となっている。それら固定部28a,28b間にフェルール11が配置された後に、各固定部28a,28bの配置位置をそれぞれ調節し、各固定部28a,28bとフェルール11との間隔が0〜約5μmとなる位置でもって、各固定部28a,28bがガイド部29に例えばYAGレーザ溶接により固定される。
【0073】さらに、上記各実施形態例では、フェルール11の前方側と後方側の両方において、オフセット工程を行ってからレーザ溶接工程を行うこととしたが、フェルール11の前方側と後方側のうちの一方側のみにおいて、レーザ溶接前にオフセット作業を行うこととしてもよい。
【0074】さらに、上記各実施形態例では、図7に示す半導体レーザモジュール1を例にして説明したが、この発明の製造方法は、レンズドファイバを挿通固定したフェルールが固定用部材を利用してベースに固定され、そのフェルールと固定用部材がレーザ溶接により接合されているタイプの半導体レーザモジュールであれば、適用することができるものである。
【0075】
【発明の効果】この発明によれば、調心工程の後に、レーザ溶接工程で生じるレンズドファイバの位置ずれを見越して、予めレンズドファイバを調心位置から前記位置ずれ量分だけ逆方向にずらし、その後に、レーザ溶接を行うこととした。このため、フェルールと固定用部材をレーザ溶接することにより、フェルールが位置ずれしてレンズドファイバを調心位置に復帰させることができる。
【0076】これにより、レーザ溶接による位置ずれを補正するためにレンズドファイバの再調心を行う必要が無くなり、その分、半導体レーザモジュールの製造効率を高めることができる。
【0077】また、レーザ溶接による位置ずれを補正するために複雑な形状の固定用部材をわざわざ用いなくともよくなり、これに起因して部品コストを低下させることができて、半導体レーザモジュールの低コスト化を図ることが容易となる。
【0078】さらに、例えば、フェルールの後方側を固定用部材に溶接固定した後に、レーザ溶接に起因したレンズドファイバのずれを補正しなくともよいので、フェルールの後方側の溶接固定後の再調心に起因した問題である半導体レーザモジュールの特性劣化の問題を抑制することができて、半導体レーザモジュールの信頼性を高めることができる。
【0079】さらに、フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定する手法を採用し、そのフェルールと固定用部材間の間隔を考慮して、レーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を決定するものにあっては、フェルールと固定用部材間の間隔によって、レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれ量が異なるが、その間隔の差異によるレンズドファイバの位置ずれ量の変動の悪影響を受けずに、レーザ溶接によってレンズドファイバを調心位置に復帰させることができて、上記のような優れた効果を奏することが可能となる。
【0080】また、フェルールと固定用部材間の間隔と、固定用部材に対するフェルールの配置高さとの間には相関関係があることから、固定用部材に対するフェルールの配置高さの情報を、フェルールと固定用部材間の間隔の情報として利用することによって、上記同様の効果を得ることができる。
【0081】さらに、溶接レーザ光の出力エネルギー量によって、レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれ量が異なることから、溶接レーザ光の出力エネルギー量を考慮して、レーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を決定することにより、より精度良く、レーザ溶接によって、レンズドファイバを調心位置に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例における半導体レーザモジュールの製造工程を説明するための図である。
【図2】図1に引き続き、第1実施形態例における半導体レーザモジュールの製造工程を説明するための図である。
【図3】フェルールと固定用部材間に間隙を形成する場合に、それらフェルールと固定用部材の配置例を示すモデル図である。
【図4】フェルールの配置高さの違いによって、フェルールと固定用部材間の間隔が異なることを説明するための図である。
【図5】フェルールのその他の形状例を示すモデル図である。
【図6】固定用部材のその他の形態例を示すモデル図である。
【図7】半導体レーザモジュールの一構造例を模式的な断面図により示したモデル図である。
【図8】図7に示す半導体レーザモジュールのフェルールの配置固定部分を抜き出して模式的に示した上面図である。
【図9】固定用部材の一形態例を示すモデル図である。
【図10】フェルールの後方側を固定用部材に溶接固定する前の調心作業の一例を説明するための図である。
【図11】フェルールの後方側を固定用部材に溶接固定した後に、レンズドファイバの位置ずれを補正するための提案手法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザモジュール
2 半導体レーザ素子
3 光ファイバ
6 ベース
11 フェルール
17 固定用部材
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信に用いられる半導体レーザモジュールの製造方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】図7には半導体レーザモジュールの一構造例が模式的な断面図により示されている。この半導体レーザモジュール1は半導体レーザ素子2を光ファイバ3と光結合状態にしてパッケージ4の内部に収容配置して成るものである。
【0003】この半導体レーザモジュール1において、パッケージ4の内部には温度制御モジュール(例えばペルチェモジュール)5が固定されており、この温度制御モジュール5の上部には金属製のベース6が固定されている。ベース6の上面にはLDキャリア7を介して半導体レーザ素子2が固定され、また、PDキャリア8を介してフォトダイオード9が固定され、半導体レーザ素子2の近傍にサーミスタ(図示せず)が配設されている。
【0004】フォトダイオード9は半導体レーザ素子2の発光状態をモニタするものであり、温度制御モジュール5は半導体レーザ素子2の温度制御を行うものである。この温度制御モジュール5の動作は、サーミスタの検出温度に基づいて、半導体レーザ素子2が一定の温度となるように制御される。温度制御モジュール5による半導体レーザ素子2の温度制御によって、半導体レーザ素子2の温度変動に起因した半導体レーザ素子2のレーザ光の強度変動および波長変動が抑制されて、半導体レーザ素子2のレーザ光の強度および波長がほぼ一定に維持される。
【0005】ベース6には、さらに、固定用部材17によってフェルール11が固定されている。フェルール11は、例えば、Fe-Ni-Co合金(コバール(商標))等の金属により構成されており、例えば円柱状に形成されている。このフェルール11の内部には前端面11aから後端面11bにかけて貫通する貫通孔(図示せず)が形成されており、この貫通孔には光ファイバ3が挿通されて例えば半田により固定されている。
【0006】この光ファイバ3の先端部はフェルール11の前端面11aから前方に突出され、半導体レーザ素子2の発光部(活性層)と間隔を介して配置されており、半導体レーザ素子2から出射されたレーザ光を受けるものである。この例では、光ファイバ3は、その先端部にレンズ12が形成されて成るレンズドファイバである。
【0007】フェルール11の後端面11bから引き出された光ファイバ3は、パッケージ4の外部に導出されており、半導体レーザ素子2から光ファイバ3の先端部に入射したレーザ光は、光ファイバ3を伝搬して所望の供給場所に導かれる。
【0008】図8には、フェルール11が固定されている部分を抜き出して上方側から見た平面図が示され、図9R>9には固定用部材17の一例が斜視図により示されている。固定用部材17は、対を成す固定部10a,10b(10a',10b')が間隔を介して基部15に配置固定されているものである。この固定用部材17は例えば図8に示されるようなQ位置でレーザ溶接(例えばYAGレーザ溶接)によりベース6に固定されている。
【0009】フェルール11は、半導体レーザ素子2に近い前方側の部位と、半導体レーザ素子2から遠い後方側の部位とにおいて、その側面が両側から固定用部材17の一対の固定部10(10a,10b、10a',10b')によって挟み込まれ、当該フェルール11は固定部10(10a,10b、10a',10b')にレーザ溶接(例えばYAGレーザ溶接)により固定されている。なお、図7や図8では、その溶接部分は黒丸Pにより示されている。
【0010】半導体レーザモジュール1の製造工程では、ベース6にLDキャリア7を介して半導体レーザ素子2を固定した後に、固定用部材17を利用してフェルール11をベース6に固定する作業が行われる。この作業の一例を示す。例えば、まず、フェルール11の前方側を固定するための固定用部材17を、ベース6上の固定位置と推定される位置に移動自在な状態で配置する。この状態で、フェルール11の前方側の部位を固定用部材17の固定部10a,10b間に配置し、フェルール11の前方側の部位を固定部10a,10bにレーザ溶接により固定する。この際、ベース6に対する半導体レーザ素子2の光軸の高さ位置と、光ファイバ3の光軸の高さ位置とがほぼ一致するように半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3の調心を行ってから(つまり、半導体レーザ素子2の光軸と光ファイバ3の光軸をY軸方向にて位置合わせしてから)、フェルール11の前方側の部位をレーザ溶接により固定部10a,10bに固定する。
【0011】その後、光ファイバ3の光軸が半導体レーザ素子2の光軸と一致するように、フェルール11の前方側の部位が固定された固定用部材17を、X軸方向やZ軸方向に移動させて、光ファイバ3の光軸のX軸方向とZ軸方向の位置合わせを行う。この位置合わせの後に、その位置合わせの状態を保持したまま、固定用部材17の基板15を溶接によりベース6に固定する。
【0012】なお、予め固定用部材17(基板15)をベース6に固定してから、その固定用部材17の固定部10a,10b間にフェルール11の前方側の部位を配置し、半導体レーザ素子2の光軸と光ファイバ3の光軸が一致するように光ファイバ3の調心を行い、その後に、フェルール11の前方側の部位を固定用部材17の固定部10a,10bに溶接固定してもよい。
【0013】然る後に、図10に示すように、調心器具(図示せず)を用い、フェルール11の後方側を、前方側の溶接部Pを支点として矢印Aの如く傾動させる。これにより、光ファイバ3の先端部をY軸方向に微動させ、再度、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を調心して精密な光軸の位置合わせを行う。この再調心の後に、その状態を維持したまま、フェルール11の後方側の部位を固定用部材17の固定部10a',10b'に溶接固定し、固定用部材17をベース6に固定する。ここでも、固定用部材17を予めベース6に固定してからフェルール11の後方側の部位を固定用部材17に溶接固定してもよい。
【0014】上記のような作業手順でもって、フェルール11が固定用部材17を介してベース6に固定されることによって、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を調心固定する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、フェルール11は、レーザ溶接によって、固定用部材17の固定部10に固定されるために、実際には、半導体レーザ素子2の光軸に対して光ファイバ3の光軸がずれてしまうという問題が起こる。
【0016】それというのは、レーザ溶接は、フェルール11と固定部10の接合対象部位にレーザ光(溶接レーザ光)を照射して局所的にその接合対象部位を加熱し、フェルール11と固定部10の金属を溶融させ、瞬時に凝固させ合金化させることによって、フェルール11と固定部10を接合固定する手法である。このレーザ溶接の際に、金属の溶融や凝固収縮に起因して、固定部10に対してフェルール11が位置ずれしてしまうという事態が発生する。
【0017】このため、光ファイバ3の調心を行ったのにも拘わらず、調心の後にフェルール11を固定用部材17の固定部10にレーザ溶接する工程において、フェルール11が位置ずれし、これにより、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3が位置ずれしてしまうという問題が生じてしまうこととなる。
【0018】これに対して、EUROPEAN PATENT APPLICATION EP 0 717 297 A2には、次に示すような手法が提案されている。この提案の手法では、図11に示されるように、フェルール11の前方側の部位を固定部19に溶接固定した後に、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を再調心し、この再調心後に、特有な形状を持つ固定用部材18を利用して、フェルール11の後方側をベース6に固定する。その固定用部材18においては、把持部20でもってフェルール11の後方側を挟持し、当該把持部20にフェルール11の後方側がレーザ溶接される。
【0019】把持部20にフェルール11の後方側をレーザ溶接した際に、前記したようなレーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれが生じるので、その光ファイバ3の位置ずれを補正するために、固定用部材18を塑性変形させて、再度、光ファイバ3の調心を行う。そして、光ファイバ3の調心が成されている状態で、固定用部材18の形状を固定する。
【0020】このように、この提案の手法では、フェルール11の後方側を固定用部材18にレーザ溶接により固定した後に、再度、光ファイバ3の調心を行わなければならないという面倒がある。
【0021】また、固定用部材18の形状が複雑であり、これにより、固定用部材18のコストが高くなり、これに起因して半導体レーザモジュール1の価格が高くなってしまうという問題がある。
【0022】さらに、フェルール11と固定用部材18をレーザ溶接した後に、固定用部材18を塑性変形させて光ファイバ3の再調心を行う際には、固定用部材18の弾性変形による戻りを見越して調心を行う必要がある。このため、その調心作業に多くの時間がかかり、半導体レーザモジュール1の製造効率を低下させてしまうという問題があった。
【0023】さらに、フェルール11の前方側のレーザ溶接の部位を支点としてフェルール11を傾動させて光ファイバ3を調心する作業を繰り返すことによって、フェルール11の前方側の溶接部にねじれ応力などによる歪みが生じ易くなる。その歪みに起因して、半導体レーザモジュール1を使用しているうちに、その溶接部にクラックなどが発生し、このクラックに起因して光ファイバ3の位置ずれが生じて、半導体レーザモジュール1の特性が劣化し、半導体レーザモジュール1の信頼性が低下してしまうという問題が生じる。
【0024】この発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、製造が容易で、製造効率を高めることができ、しかも、コストが安く、信頼性が高い半導体レーザモジュールを得るための製造方法を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決する手段としている。すなわち、第1の発明は、半導体レーザ素子と、この半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を受けて当該光を伝搬するレンズドファイバと、このレンズドファイバが挿通固定されるフェルールと、半導体レーザ素子が搭載固定されるベースと、前記フェルールの側面を両側から挟持して当該フェルールと前記ベースとの間に介在してベースに固定される固定用部材とを有する半導体レーザモジュールの製造方法において、前記フェルールに挿通固定されたレンズドファイバを、ベース上に位置決め固定された半導体レーザ素子に間隔を介して対向配置し、半導体レーザ素子に対してレンズドファイバを調心する調心工程と、この調心工程の後に、上記フェルールを、ベース上に配置された前記固定用部材にレーザ溶接するレーザ溶接工程とを含み、前記調心工程とレーザ溶接工程の間に、レーザ溶接工程で生じるフェルールの位置ずれに起因したレンズドファイバの位置ずれを見越して、予めレンズドファイバを調心位置から前記位置ずれ量分だけ逆方向にずらすオフセット工程とを含むことを特徴としている。
【0026】第2の発明は、第1の発明の構成を備え、フェルールは、半導体レーザ素子に近い前方側の部位と、半導体レーザ素子から遠い後方側の部位とにおいて、固定用部材により挟持されてベースに固定される構成と成し、フェルールの前方側の部位と後方側の部位のそれぞれにおいて調心工程とレーザ溶接工程を行ってベースに固定することとし、少なくともフェルールの後方側の部位に対してオフセット工程を行うことを特徴としている。
【0027】第3の発明は、第1又は第2の発明の構成を備え、レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれ量のデータを予め検出し、この検出データに基づいてレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を予め定めておき、このずらし量分だけ、レンズドファイバを調心位置からずらしてから、レーザ溶接を行うことを特徴としている。
【0028】第4の発明は、第1又は第2の発明の構成を備え、フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定するものとし、フェルールと固定用部材間の間隔をパラメータとしたレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量のデータを予め作成しておき、レーザ溶接の前にレンズドファイバをずらす際には、フェルールと固定用部材間の間隔を検出し、この検出値と、前記レンズドファイバのずらし量のデータとに基づいて、レンズドファイバのずらし量を決定することを特徴としている。
【0029】第5の発明は、第1又は第2の発明の構成を備え、フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定する手法を採用し、また、フェルールの側面と、当該フェルールの側面と向き合う固定用部材の面とが非平行であり、固定用部材に対するフェルールの配置高さの違いによって固定用部材とフェルール間の間隔が異なるものとし、固定用部材に対するフェルールの配置高さをパラメータとしたレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量のデータを予め作成しておき、レーザ溶接の前にレンズドファイバをずらす際には、固定用部材に対するフェルールの配置高さを検出し、この検出値と、前記レンズドファイバのずらし量のデータとに基づいて、レンズドファイバのずらし量を決定することを特徴としている。
【0030】第6の発明は、第1〜第5の発明の何れか1つの発明の構成を備え、溶接レーザ光の出力エネルギー量を考慮して、レーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を決定することを特徴としている。
【0031】この発明では、レンズドファイバの調心の後に、レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれを見越してレンズドファイバを調心位置からずらし、その後に、レーザ溶接によって、フェルールを固定用部材に固定する。このレーザ溶接工程では、レーザ溶接によってフェルールが位置ずれしてレンズドファイバが調心位置に戻ることとなる。このように、レーザ溶接によるフェルールの位置ずれによってレンズドファイバが調心位置に復帰するので、このレーザ溶接の後に、再度、レンズドファイバの調心を行わなくとも済む。これにより、作業効率を高めることができる。
【0032】また、図11に示されるような複雑な形状の固定用部材を用いなくとも、簡単な形状を有する安価な固定用部材を採用して、レンズドファイバを調心位置でもって固定することができるので、部品コストを低下させることができて、半導体レーザモジュールのコストを安くすることができる。
【0033】さらに、例えば、フェルールの前方側の溶接部を支点としてフェルールの後方側を傾動してレンズドファイバを調心する作業を複数回行わなくてもよいので、フェルールの前方側の溶接部にねじれ応力などに起因した歪みが発生することを抑制することができる。これにより、歪みに起因した溶接部の経年劣化によってフェルール(レンズドファイバ)の位置ずれが生じる事態を防止することができる。このため、半導体レーザモジュールの信頼性を向上させることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0035】第1実施形態例では、図7に示す半導体レーザモジュールを例にして、この発明に係る半導体レーザモジュールの製造方法の一例を説明する。なお、この第1実施形態例では、図7に示す半導体レーザモジュールの構造の説明は、前述したので、省略する。
【0036】この第1実施形態例では、固定用部材17を利用してフェルール11をベース6に固定する工程に特徴がある。それ以外の製造工程に関しては、製造手法が特に限定されるものではなく、何れの手法を採用してもよく、ここでは、その説明は省略する。
【0037】この第1実施形態例では、ベース6上に、LDキャリア7を介して半導体レーザ素子2が固定されている状態で、まず、図1(a)に示されるように、フェルール11に挿通固定された光ファイバ(レンズドファイバ)3を、半導体レーザ素子2と間隔を介して対向配置させ、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を調心する。なお、図1(a)に表されている符号22は、半導体レーザ素子2の発光部(活性層)を示している。
【0038】光ファイバ3の調心工程の手法は特に限定されるものではないが、その一例を示すと、例えば、半導体レーザ素子2からレーザ光を発光させ、そのレーザ光を光ファイバ3に入射・伝搬させながら、調心治具(図示せず)などを利用してフェルール11の配置位置を微妙にずらして、光ファイバ3を伝搬するレーザ光の強度(パワー)が最も強くなる位置を調心位置とする。また、次に示すようにして調心作業を行う場合もある。例えば、調心治具にステッピングモータなどの駆動手段を取り付け、また、光ファイバ3を伝搬するレーザ光の強度を検出する光強度検出装置を設ける。そして、コンピュータが、その駆動手段の駆動情報と、光強度検出装置の光強度の検出情報とに基づいて、フェルール11の配置位置をずらして、光ファイバ3を自動的に調心位置に調節してもよい。あるいは、光強度検出装置による光強度の検出結果を監視しながら、人が駆動手段によるフェルール11の移動量を調節して、光ファイバ3を調心してもよい。
【0039】このような調心工程の後に、レーザ溶接(例えばYAGレーザ溶接)によって、ベース6上に配置された固定用部材17の固定部10a,10bと、フェルール11の前方側の部位とを溶接固定するレーザ溶接工程を行うが、そのレーザ溶接により固定部10a,10bに対してフェルール11が位置ずれして光ファイバ3が位置ずれしてしまう事態が発生する。このため、この第1実施形態例では、調心工程とレーザ溶接工程との間に、図1(b)に示すように、その位置ずれを見越し、予め、光ファイバ3を調心位置から、その位置ずれ量に応じた分だけ、上記位置ずれ方向と逆方向にずらす。なお、この明細書では、そのずらす工程をオフセット工程と称する。
【0040】このときのずらし量(以下、オフセット量と称する)およびそのずらし方向(以下、オフセット方向と称する)は、予め、実験データに基づいて定められる。つまり、フェルール11と固定用部材17(固定部10)の構成材料や、レーザ溶接手法などの条件がほぼ等しければ、レーザ溶接による光ファイバ3の位置ずれ量およびその方向はほぼ同様となるからである。
【0041】このことから、予め実験などによって、レーザ溶接による光ファイバ3の位置ずれ量や、そのずれ方向のデータを多数検出し、それら検出データに基づいて、オフセット量およびオフセット方向を決定しておく。そして、この予め定めたオフセット量およびオフセット方向でもって、レーザ溶接の前に、光ファイバ3を調心位置からずらす。
【0042】なお、図1(b)に示す例では、オフセット方向は斜め右上方向であるが、もちろん、レーザ溶接による光ファイバ3の位置ずれ方向は様々な条件によって異なるものであり、オフセット方向は、図1(b)に示す方向に限定されるものではない。また、レーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれによって、半導体レーザ素子2から光ファイバ3に伝搬される光のパワーが変動することから、そのレーザ溶接に起因した伝搬光のパワー変動量を光ファイバ3の位置ずれ量のデータとして実験により検出し、この検出データに基づいて、予めオフセット量およびオフセット方向を決定してもよい。
【0043】オフセット工程の後には、図1(c)に示すように、レーザ溶接によって、フェルール11の前方側を固定用部材17の固定部10(10a,10b)に例えばPの位置で接合する。このレーザ溶接によって、フェルール11が位置ずれして、光ファイバ3は調心位置に復帰することとなる。
【0044】その後、そのフェルール11の前方側と固定部10との溶接部Pを支点として、フェルール11の後方側を傾動し、半導体レーザ素子2に対して光ファイバ3を再調心する。この再調心によって、図2(a)に示されるように光ファイバ3の調心位置が定まると、その後に、レーザ溶接によって、フェルール11の後方側を固定用部材17の固定部10(10a',10b')に接合固定するが、この場合にも、そのレーザ溶接に起因してフェルール11の後方側が位置ずれを起こして、光ファイバ3の調心状態が崩れてしまう。
【0045】このため、フェルール11の後方側を固定部10に溶接固定する場合にも、前記同様に、レーザ溶接する前に、図2(b)に示されるように、フェルール11を調心位置から予め定めたオフセット量分だけオフセット方向にずらす。
【0046】このオフセット工程の後に、図2(c)に示すように、レーザ溶接によって、フェルール11の後方側を固定部10(10a',10b')にPの位置でもって接合する。このレーザ溶接によって、フェルール11の後方側が位置ずれして、光ファイバ3は調心位置に復帰する。
【0047】この第1実施形態例によれば、光ファイバ3の調心工程の後に、オフセット工程を行ってから、レーザ溶接によってフェルール11を固定用部材17の固定部10に接合固定するレーザ溶接工程を行う構成としたので、レーザ溶接に起因してフェルール11が位置ずれすることにより、光ファイバ3が調心位置に復帰し、光ファイバ3を調心状態でベース6に固定することができる。
【0048】これにより、フェルール11の後方側を固定用部材17に溶接固定した後に、そのレーザ溶接による位置ずれを補正するために光ファイバ3の再調心を行う必要が無くなり、その分、作業効率を高めることができて、半導体レーザモジュール1の製造時間を短縮させることが可能となる。
【0049】また、そのように、光ファイバ3の再調心が不要となることから、図11に示すような複雑な形状の固定用部材18をわざわざ用いなくともよい。つまり、簡単な形状の固定用部材を利用して光ファイバ3(フェルール11)をベース6に固定することができるので、部品コストを低下させることができて、半導体レーザモジュール1の低コスト化が容易となる。
【0050】さらに、図11に示すような固定用部材18を利用する場合には、フェルール11の後方側を固定用部材18に溶接固定した後に、光ファイバ3の調心工程を再び行うので、その再調心工程に起因して、フェルール11の前方側の溶接部Pにねじれ応力などによる歪みが発生する確率が高かった。その歪みに起因して、半導体レーザモジュール1を使用しているうちに、その溶接部Pにクラックなどが発生して半導体レーザモジュール1の特性が劣化するという問題が発生していた。
【0051】これに対して、この第1実施形態例では、フェルール11の後方側を固定部10に溶接固定した後に光ファイバ3の再調心工程を行わなくとも済むので、フェルール11の前方側の溶接部Pにねじれ応力などによる歪みが発生することを抑制することができる。このため、その歪みに起因した溶接部Pの経年劣化を抑えることができて、半導体レーザモジュール1の信頼性を高めることができる。
【0052】さらに、フェルール11の前方側を固定部10に溶接固定する際に、そのレーザ溶接に起因してフェルール11が固定部10に対してY方向だけでなく、Z方向にも位置ずれする場合がある。このような場合に、従来の手法では、そのフェルール11の位置ずれに起因した光ファイバ3のY方向の位置ずれに関しては、フェルール11の後方側を傾動させて光ファイバ3の調心作業を行うことによって修正することができるが、光ファイバ3のZ方向の位置ずれに関しては、修正することができず、ずれたままとなってしまっていた。
【0053】これに対して、この第1実施形態例では、フェルール11の前方側を固定部10に溶接固定する前に、レーザ溶接によるフェルール11のY方向の位置ずれだけでなく、Z方向の位置ずれをも考慮して、フェルール11をオフセット移動させることにより、フェルール11の前方側を固定部10に溶接固定した後に、光ファイバ3をY方向とZ方向の両方向において精度良く調心位置に配置させることができることとなる。
【0054】さらに、フェルール11の前方側を溶接固定する前にオフセット動作を行うことによって、フェルール11の後方側を傾動して光ファイバ3の再調心を行う際に、そのフェルール11の後方側の傾動量を小さくすることができる。これにより、フェルール11の後方側の傾動による前方側の溶接部Pの負担を軽減することができる。また、フェルール11の後方側を溶接固定する前にオフセット動作を行うことによって、フェルール11の後方側を溶接固定した後に、光ファイバ3の再調心を行わなくて済む。この第1実施形態例では、フェルール11の前方側を溶接固定する場合と、フェルール11の後方側を溶接固定する場合との両方において、その溶接前にオフセット動作を行う構成としたので、フェルール11の前方側のオフセット動作による効果と、後方側のオフセット動作による効果との両方を得ることができる。
【0055】なお、フェルール11と固定部10を溶接するための溶接レーザ光の出力エネルギー量が大きければ、そのレーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれ量は大きくなるという如く、溶接レーザ光の出力エネルギー量によって光ファイバ3の位置ずれ量が異なる。このことから、例えば溶接レーザ光の出力エネルギー量を可変することが考えられる場合などにおいては、溶接レーザ光の出力エネルギー量をパラメータとした光ファイバ3のオフセット量のデータを予め作成しておき、溶接レーザ光の出力エネルギー量に応じて光ファイバ3のオフセット量を決定することが望ましい。
【0056】また、ここでは、フェルール11の前方側の部位と後方側の部位に対して、それぞれ、オフセット工程を行う例を示したが、フェルール11の前方側の部位に対するオフセット工程を省略し、フェルール11の後方側の部位を固定部10に固定する際の調心工程とオフセット工程によって、前方側部位のレーザ溶接による光ファイバ3の位置ずれを吸収することとしてもよい。
【0057】以下に、第2実施形態例を説明する。この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と共通する部分の重複説明は省略する。
【0058】この第2実施形態例では、図3に示すように、フェルール11と、固定用部材17の固定部10との間に間隙Sを形成し、この状態で、フェルール11と固定部10の接合対象部位にレーザ光を照射してフェルール11を固定部10に溶接固定する場合を対象としている。なお、フェルール11の前方側と後方側の両方において、固定部10との間に隙間が形成される場合もあるし、フェルール11の前方側と後方側の一方のみにおいて、固定部10との間に隙間が形成される場合もある。この第2実施形態例では、何れの場合であってもよい。また、フェルール11の前方側の部位において、固定部10との間に隙間を形成して溶接固定することにより、フェルール11の後方側を傾動させて調心作業を行う際に、フェルール11の後方側を傾動し易くすることができる。
【0059】例えば、フェルール11の直径Rが1mmであり、レーザ溶接機の出力エネルギー量が約5〜6.5Jである場合に、フェルール11と固定部10間の間隔dが約5μmであるときには、レーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれ量が約11.3μmであった。また、前記間隔dが約10μmであるときには、レーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれ量は約12.1μmであった。この具体例に示されるように、フェルール11と固定部10間の間隔dの違いによって、レーザ溶接に起因したフェルール11(光ファイバ3)の位置ずれ量が異なる。この第2実施形態例では、このことに着目した。
【0060】ところで、この第2実施形態例では、固定部10は直方体状であり、フェルール11は円筒形状である。このことから、フェルール11と固定部10の接合対象部位において、互いに向き合っているフェルール11の面と、固定部10の面とは平行ではない。このため、対を成す固定部10a,10b(10a',10b')間の間隔が同じでも、固定部10に対するフェルール11の配設高さが異なると、図4(a)〜(c)に示されるように、接合対象部位におけるフェルール11と固定部10間の間隔dが異なることとなる。
【0061】前述したように、そのフェルール11と固定部10間の間隔dの違いによって、レーザ溶接に起因したフェルール11(光ファイバ3)の位置ずれ量が異なることから、この第2実施形態例では、そのフェルール11と固定部10間の間隔dを考慮して、レーザ溶接前のオフセット工程を行うこととした。
【0062】例えば、予め、接合対象部位におけるフェルール11と固定部10間の間隔dと、レーザ溶接によるフェルール11の位置ずれ量との関係を実験によって求め、この実験データに基づいて、フェルール11と固定部10(固定用部材17)間の間隔dをパラメータとしたレーザ溶接前の光ファイバ3のオフセット量(ずらし量)のデータを予め作成しておく。なお、オフセット作業によって、例えば図1(b)に示すように光ファイバ3を調心位置からY方向およびZ方向にずらす必要がある場合には、それら各方向毎のオフセット量のデータが作成されることとなる。また、もちろん、溶接レーザ光の出力エネルギー量を考慮して、光ファイバ3のオフセット量のデータが作成されることとなる。
【0063】そして、レーザ溶接前のオフセット工程を行う際には、フェルール11と固定部10間の間隔dを検出し、この検出値と、前記光ファイバ3のオフセット量のデータとに基づいて、オフセット量を決定する。その後、その決定したオフセット量分だけ、光ファイバ3をずらす。そして、フェルール11を固定部10にレーザ溶接する。
【0064】この第2実施形態例によれば、フェルール11と固定部10間に間隙Sが形成される場合に、そのフェルール11と固定部10間の間隔dを考慮して光ファイバ3のオフセット量を決定することとした。このため、レーザ溶接に起因したフェルール11(光ファイバ3)の位置ずれ量がフェルール11と固定部10間の間隔dの違いによって変動することによる悪影響を受けずに、レーザ溶接の後に、精度良く光ファイバ3を調心位置に復帰させることができることとなる。
【0065】これにより、フェルール11と固定部10間に間隙Sが形成される場合であっても、第1実施形態例と同様の効果を奏することができることとなる。
【0066】以下に、第3実施形態例を説明する。この第3実施形態例の説明において、前記各実施形態例と共通する部分の重複説明は省略する。
【0067】この第3実施形態例では、第2実施形態例と同様に、フェルール11と固定部10間に間隙Sが形成される場合を対象としている。この第3実施形態例では、固定用部材17の固定部10に対するフェルール11の配置高さと、フェルール11と固定部10間の間隔dとには相関関係があることに着目した。このことから、この第3実施形態例では、固定部10に対するフェルール11の配置高さの情報をフェルール11と固定部10間の間隔dの情報として利用することとした。それ以外は第2実施形態例と同様である。
【0068】例えば、固定部10の上面に対するフェルール11の頂部の高さHと、レーザ溶接に起因した光ファイバ3の位置ずれ量との関係を予め実験によって求める。そして、この実験データに基づいて、固定部10の上面に対するフェルール11の頂部の高さHをパラメータとした光ファイバ3のオフセット量(ずらし量)のデータを予め作成しておく。そして、オフセット作業を行う際には、固定部10の上面に対するフェルール11の頂部の高さHを検出し、この検出値と、上記光ファイバ3のオフセット量のデータとに基づいて、オフセット量を決定する。そして、その求めたオフセット量分だけ、光ファイバ3を調心位置からずらし、その後に、フェルール11を固定部10に溶接固定する。
【0069】この第3実施形態例においても、第2実施形態例と同様の効果を奏することができる。
【0070】なお、この発明は上記各実施形態例に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、上記各実施形態例では、フェルール11は円筒形状であったが、例えば、図5に示されるように断面多角形状であってもよく、その形状は特に限定されるものではない。
【0071】また、固定用部材の形状も特に限定されるものではなく、適宜の形状を採り得る。例えば、図6に示されるような形状としてもよい。この図6に示す例では、フェルール11の前方側をベース6に固定するための固定用部材25は、対を成す固定部26a,26bを有し、これら固定部26a,26b間の間隔が固定のものである。なお、例えば、それら固定部26a,26b間にフェルール11が配置され光ファイバ3が調心位置にあるときに、フェルール11と、固定部26a,26bとの間の間隔dが0〜20μm程度となるように、固定部26a,26b間の間隔が定められている。
【0072】また、フェルール11の後方側を固定するための固定用部材27は、対を成す固定部28a,28bを有して構成されている。それら固定部28a,28bは、その側面が両側からガイド部29によってガイドされ、配置位置調整前は、X方向にスライド移動が自在な状態となっている。それら固定部28a,28b間にフェルール11が配置された後に、各固定部28a,28bの配置位置をそれぞれ調節し、各固定部28a,28bとフェルール11との間隔が0〜約5μmとなる位置でもって、各固定部28a,28bがガイド部29に例えばYAGレーザ溶接により固定される。
【0073】さらに、上記各実施形態例では、フェルール11の前方側と後方側の両方において、オフセット工程を行ってからレーザ溶接工程を行うこととしたが、フェルール11の前方側と後方側のうちの一方側のみにおいて、レーザ溶接前にオフセット作業を行うこととしてもよい。
【0074】さらに、上記各実施形態例では、図7に示す半導体レーザモジュール1を例にして説明したが、この発明の製造方法は、レンズドファイバを挿通固定したフェルールが固定用部材を利用してベースに固定され、そのフェルールと固定用部材がレーザ溶接により接合されているタイプの半導体レーザモジュールであれば、適用することができるものである。
【0075】
【発明の効果】この発明によれば、調心工程の後に、レーザ溶接工程で生じるレンズドファイバの位置ずれを見越して、予めレンズドファイバを調心位置から前記位置ずれ量分だけ逆方向にずらし、その後に、レーザ溶接を行うこととした。このため、フェルールと固定用部材をレーザ溶接することにより、フェルールが位置ずれしてレンズドファイバを調心位置に復帰させることができる。
【0076】これにより、レーザ溶接による位置ずれを補正するためにレンズドファイバの再調心を行う必要が無くなり、その分、半導体レーザモジュールの製造効率を高めることができる。
【0077】また、レーザ溶接による位置ずれを補正するために複雑な形状の固定用部材をわざわざ用いなくともよくなり、これに起因して部品コストを低下させることができて、半導体レーザモジュールの低コスト化を図ることが容易となる。
【0078】さらに、例えば、フェルールの後方側を固定用部材に溶接固定した後に、レーザ溶接に起因したレンズドファイバのずれを補正しなくともよいので、フェルールの後方側の溶接固定後の再調心に起因した問題である半導体レーザモジュールの特性劣化の問題を抑制することができて、半導体レーザモジュールの信頼性を高めることができる。
【0079】さらに、フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定する手法を採用し、そのフェルールと固定用部材間の間隔を考慮して、レーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を決定するものにあっては、フェルールと固定用部材間の間隔によって、レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれ量が異なるが、その間隔の差異によるレンズドファイバの位置ずれ量の変動の悪影響を受けずに、レーザ溶接によってレンズドファイバを調心位置に復帰させることができて、上記のような優れた効果を奏することが可能となる。
【0080】また、フェルールと固定用部材間の間隔と、固定用部材に対するフェルールの配置高さとの間には相関関係があることから、固定用部材に対するフェルールの配置高さの情報を、フェルールと固定用部材間の間隔の情報として利用することによって、上記同様の効果を得ることができる。
【0081】さらに、溶接レーザ光の出力エネルギー量によって、レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれ量が異なることから、溶接レーザ光の出力エネルギー量を考慮して、レーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を決定することにより、より精度良く、レーザ溶接によって、レンズドファイバを調心位置に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例における半導体レーザモジュールの製造工程を説明するための図である。
【図2】図1に引き続き、第1実施形態例における半導体レーザモジュールの製造工程を説明するための図である。
【図3】フェルールと固定用部材間に間隙を形成する場合に、それらフェルールと固定用部材の配置例を示すモデル図である。
【図4】フェルールの配置高さの違いによって、フェルールと固定用部材間の間隔が異なることを説明するための図である。
【図5】フェルールのその他の形状例を示すモデル図である。
【図6】固定用部材のその他の形態例を示すモデル図である。
【図7】半導体レーザモジュールの一構造例を模式的な断面図により示したモデル図である。
【図8】図7に示す半導体レーザモジュールのフェルールの配置固定部分を抜き出して模式的に示した上面図である。
【図9】固定用部材の一形態例を示すモデル図である。
【図10】フェルールの後方側を固定用部材に溶接固定する前の調心作業の一例を説明するための図である。
【図11】フェルールの後方側を固定用部材に溶接固定した後に、レンズドファイバの位置ずれを補正するための提案手法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザモジュール
2 半導体レーザ素子
3 光ファイバ
6 ベース
11 フェルール
17 固定用部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体レーザ素子と、この半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を受けて当該光を伝搬するレンズドファイバと、このレンズドファイバが挿通固定されるフェルールと、半導体レーザ素子が搭載固定されるベースと、前記フェルールの側面を両側から挟持して当該フェルールと前記ベースとの間に介在してベースに固定される固定用部材とを有する半導体レーザモジュールの製造方法において、前記フェルールに挿通固定されたレンズドファイバを、ベース上に位置決め固定された半導体レーザ素子に間隔を介して対向配置し、半導体レーザ素子に対してレンズドファイバを調心する調心工程と、この調心工程の後に、上記フェルールを、ベース上に配置された前記固定用部材にレーザ溶接するレーザ溶接工程とを含み、前記調心工程とレーザ溶接工程の間に、レーザ溶接工程で生じるフェルールの位置ずれに起因したレンズドファイバの位置ずれを見越して、予めレンズドファイバを調心位置から前記位置ずれ量分だけ逆方向にずらすオフセット工程とを含むことを特徴とした半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項2】 フェルールは、半導体レーザ素子に近い前方側の部位と、半導体レーザ素子から遠い後方側の部位とにおいて、固定用部材により挟持されてベースに固定される構成と成し、フェルールの前方側の部位と後方側の部位のそれぞれにおいて調心工程とレーザ溶接工程を行ってベースに固定することとし、少なくともフェルールの後方側の部位に対してオフセット工程を行うことを特徴とした請求項1記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項3】 レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれ量のデータを予め検出し、この検出データに基づいてレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を予め定めておき、このずらし量分だけ、レンズドファイバを調心位置からずらしてから、レーザ溶接を行うことを特徴とした請求項1又は請求項2記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項4】 フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定するものとし、フェルールと固定用部材間の間隔をパラメータとしたレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量のデータを予め作成しておき、レーザ溶接の前にレンズドファイバをずらす際には、フェルールと固定用部材間の間隔を検出し、この検出値と、前記レンズドファイバのずらし量のデータとに基づいて、レンズドファイバのずらし量を決定することを特徴とした請求項1又は請求項2記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項5】 フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定する手法を採用し、また、フェルールの側面と、当該フェルールの側面と向き合う固定用部材の面とが非平行であり、固定用部材に対するフェルールの配置高さの違いによって固定用部材とフェルール間の間隔が異なるものとし、固定用部材に対するフェルールの配置高さをパラメータとしたレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量のデータを予め作成しておき、レーザ溶接の前にレンズドファイバをずらす際には、固定用部材に対するフェルールの配置高さを検出し、この検出値と、前記レンズドファイバのずらし量のデータとに基づいて、レンズドファイバのずらし量を決定することを特徴とした請求項1又は請求項2記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項6】 溶接レーザ光の出力エネルギー量を考慮して、レーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を決定することを特徴とした請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項1】 半導体レーザ素子と、この半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を受けて当該光を伝搬するレンズドファイバと、このレンズドファイバが挿通固定されるフェルールと、半導体レーザ素子が搭載固定されるベースと、前記フェルールの側面を両側から挟持して当該フェルールと前記ベースとの間に介在してベースに固定される固定用部材とを有する半導体レーザモジュールの製造方法において、前記フェルールに挿通固定されたレンズドファイバを、ベース上に位置決め固定された半導体レーザ素子に間隔を介して対向配置し、半導体レーザ素子に対してレンズドファイバを調心する調心工程と、この調心工程の後に、上記フェルールを、ベース上に配置された前記固定用部材にレーザ溶接するレーザ溶接工程とを含み、前記調心工程とレーザ溶接工程の間に、レーザ溶接工程で生じるフェルールの位置ずれに起因したレンズドファイバの位置ずれを見越して、予めレンズドファイバを調心位置から前記位置ずれ量分だけ逆方向にずらすオフセット工程とを含むことを特徴とした半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項2】 フェルールは、半導体レーザ素子に近い前方側の部位と、半導体レーザ素子から遠い後方側の部位とにおいて、固定用部材により挟持されてベースに固定される構成と成し、フェルールの前方側の部位と後方側の部位のそれぞれにおいて調心工程とレーザ溶接工程を行ってベースに固定することとし、少なくともフェルールの後方側の部位に対してオフセット工程を行うことを特徴とした請求項1記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項3】 レーザ溶接に起因したレンズドファイバの位置ずれ量のデータを予め検出し、この検出データに基づいてレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を予め定めておき、このずらし量分だけ、レンズドファイバを調心位置からずらしてから、レーザ溶接を行うことを特徴とした請求項1又は請求項2記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項4】 フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定するものとし、フェルールと固定用部材間の間隔をパラメータとしたレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量のデータを予め作成しておき、レーザ溶接の前にレンズドファイバをずらす際には、フェルールと固定用部材間の間隔を検出し、この検出値と、前記レンズドファイバのずらし量のデータとに基づいて、レンズドファイバのずらし量を決定することを特徴とした請求項1又は請求項2記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項5】 フェルールと、固定用部材とが微小間隙を介して配置された状態で、それらフェルールと固定用部材の接合対象部位にレーザ光を照射して当該フェルールと固定用部材を溶接固定する手法を採用し、また、フェルールの側面と、当該フェルールの側面と向き合う固定用部材の面とが非平行であり、固定用部材に対するフェルールの配置高さの違いによって固定用部材とフェルール間の間隔が異なるものとし、固定用部材に対するフェルールの配置高さをパラメータとしたレーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量のデータを予め作成しておき、レーザ溶接の前にレンズドファイバをずらす際には、固定用部材に対するフェルールの配置高さを検出し、この検出値と、前記レンズドファイバのずらし量のデータとに基づいて、レンズドファイバのずらし量を決定することを特徴とした請求項1又は請求項2記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【請求項6】 溶接レーザ光の出力エネルギー量を考慮して、レーザ溶接前のレンズドファイバのずらし量を決定することを特徴とした請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の半導体レーザモジュールの製造方法。
【図3】
【図5】
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2003−57498(P2003−57498A)
【公開日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−241059(P2001−241059)
【出願日】平成13年8月8日(2001.8.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年8月8日(2001.8.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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