説明

半導体上に電流トラックを形成する方法

【課題】半導体のための電流トラックを製造する方法を提供する。
【解決手段】半導体をコーティングする二酸化ケイ素もしくは窒化ケイ素上にロジン樹脂およびワックスを含むホットメルトインクレジストを選択的に堆積させ、次いで二酸化ケイ素もしくは窒化ケイ素層のコーティングされていない部分を無機酸エッチング剤でエッチングして半導体を露出させ、同時にホットメルトインクレジストのアンダーカットを阻害することを含む。エッチングされた部分は、次いで、金属化されて複数の実質的に均一な電流トラックを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実質的に均一に寸法形成された電流トラックを半導体上に形成する方法に関する。より具体的には、本発明は、アンダーカットを抑制するためにホットメルトレジストとポリオール含有無機酸エッチング剤との組み合わせを使用して、実質的に均一に寸法形成された電流トラックを半導体上に形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力素子および太陽電池のような半導体デバイスの製造は半導体の前面および裏面上に導電性接点もしくは電流トラックの形成を伴う。電荷担体が妨害なく半導体から導電性接点に出現するのを確実にするために、金属塗膜は半導体とオーミック接触を確立することができなければならない。電流損失を回避するために、金属化コンタクトグリッドは適切な電流伝導性、すなわち、高い伝導性もしくは充分に高い導体トラック断面を有していなければならない。
【0003】
太陽電池の裏面をコーティングする金属について、上記要求を満たす多くのプロセスが存在する。例えば、太陽電池の裏面での電流伝導を向上させるために、この裏面の直接に下側のp−ドーピングが強められる。この目的のために、通常、アルミニウムが使用される。アルミニウムは、例えば、蒸着によって、または裏面上に印刷されることにより適用され、そして組み込まれ、またはそれぞれ合金化される。厚膜技術を使用する金属コーティングは導体トラックを金属化するための従来の方法である。使用されるペーストは金属粒子を含み、その結果として導電性である。このペーストはスクリーン、マスク、パッド、印刷もしくはペースト描画によって適用されうる。一般的に使用されるプロセスはスクリーン印刷プロセスであり、そこでは80μm〜100μmの最小線幅の指型金属コーティング線が製造される。このグリッド幅でさえ、純粋金属構造と比較した導電損失は明白である。これは直列抵抗に対する、並びに太陽電池の効率および曲線因子(filling factor)に対する悪影響を有する場合がある。このプロセスは導体トラックをより平坦にするので、より狭い印刷導体トラック幅でこの影響は強められる。金属粒子間の非伝導性酸化物およびガラス成分はこの低減された伝導性の根本的要因を構成する。
【0004】
金属が前面もしくは光入射面をコーティングする場合には、光子を捕捉するためにその面のできるだけ多くを使用するために、その目的は活性半導体面の最も少ない量の遮蔽を達成することである。前面接点を製造するための複雑なプロセスはレーザーおよび導体トラック構造の画定のための他の像形成技術を使用する。ウェハの前面は場合によっては、その面に反射を低減させる向上した光入射ジオメトリを付与するために、結晶配向テクスチャエッチングにかけられることができる。半導体接合を生じさせるために、リン拡散もしくはイオン注入がウェハの前面上で起こって、n−ドープ(n+もしくはn++)領域を生じさせそしてPN接合を有するウェハを提供する。n−ドープ領域はエミッタ層とも称されうる。
【0005】
ウェハの前面もしくはエミッタ層に反射防止層が追加される。さらに、反射防止層は不導体化層として機能しうる。好適な反射防止層にはSiOのような酸化ケイ素層、Siのような窒化ケイ素層、または酸化ケイ素層と窒化ケイ素層との組み合わせが挙げられる。上記式においては、xは酸素原子の数であり、典型的にはxは整数2である。このような反射防止層は様々な蒸着方法、例えば、化学蒸着および物理蒸着によるなど多くの技術によって堆積されうる。
【0006】
次いで、開口もしくはパターンが前面上に画定される。パターンは反射防止層を貫通してウェハの半導体本体の表面を露出させる。このパターンを形成するために、これに限定されないが、レーザーアブレーション、機械的手段、化学的およびリソグラフィプロセスをはじめとする様々なプロセスが使用されることができる。このような機械的手段にはソーイングおよびスクラッチングが挙げられる。典型的なフォトリソグラフィプロセスは像形成可能な材料をウェハの表面上に配置し、像形成可能な材料をパターン形成して反射防止層に開口を形成し、そのパターンをウェハに転写し、開口内に金属層を堆積させ、そして像形成可能な材料を除去する。前面上に開口を形成する化学的方法の例は、緩衝酸化物エッチング剤のようなエッチング組成物を用いたエッチングである。このような緩衝酸化物エッチング剤は1種以上の無機酸をアンモニウム化合物のような緩衝剤と組み合わせて含むことができる。エッチング工程の前にこのエッチング剤のエッチング活性に耐性であるマスクが、電流トラックの部位のパターンに対してネガのパターンに適用される。エッチング後で、電流トラックの金属化の前に、通常、マスクは除去される。
【0007】
電流トラックの形成中に多くの場合生じる主たる問題はアンダーカットである。これは欠陥があって役に立たない半導体デバイスを生じさせる。マスクと組み合わせたエッチング方法を用いて電流トラックが形成される場合にこの問題は一般的である。選択的にマスクされた半導体にエッチング剤を適用する際に、このエッチング剤はマスクで覆われていない反射防止層の部分を除去することができるだけでなく、マスクと反射防止層との界面でのマスクの下での毛管現象浸透によって、マスクによって覆われている反射防止層の部分が望ましくなくエッチング除去させられる場合がある。このことは最終的に金属化されたデバイスにおいて不規則で不均一な電流流れを生じさせる不規則な幅を有する電流トラックを生じさせる。さらに、このようなアンダーカットは隣り合う電流トラックを接合して電気的短絡を生じさせる支流を形成する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
産業界はより薄く、より繊細な半導体ウェハを使用して半導体デバイスを製造し、同時に電気的出力を増大させるためにウェハの前面上に複数の電流トラックを増大させることを求めているので、この問題はより小さく、より繊細な材料を用いて作業する困難性によって悪化することとなる。さらに、より小さな寸法を有する電流トラックはシャドウイングを低減させる。半導体が例えば、光起電力素子および太陽電池において入射放射線を集める手段として使用される場合には、大きな電流トラックは反射防止層での衝突からの入射光をブロックする場合があり、これにより、半導体によって吸収される入射光の量を低減し、光起電力素子および太陽電池の効率を悪化させる結果を伴う。よって、半導体ウェハ上での電流トラックの形成におけるアンダーカットの問題を実質的に低減させるもしくは除去し、並びに微細線電流トラックの形成を可能にする方法についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態においては、方法はa)前面がSiO、窒化ケイ素もしくはその組み合わせからなる反射防止層を含む、前面および裏面を含む半導体を提供し;b)酸官能基を有する水素化ロジン樹脂の1種以上、および1種以上の脂肪酸を含むホットメルトインクレジストであって、少なくとも190の酸価を有するホットメルトインクレジストを反射防止層に選択的に適用し;並びにc)1種以上の無機酸を含むエッチング組成物を半導体に適用して、半導体反射防止層の露出部分をエッチング除去し、同時にアンアーカットを抑制することを含む。
別の実施形態においては、方法はa)前面がドープエミッタ層を含む、前面および裏面を含む半導体を提供し;b)酸官能基を有する水素化ロジン樹脂の1種以上、および1種以上の脂肪酸を含むホットメルトインクレジストであって、少なくとも190の酸価を有するホットメルトインクレジストをドープエミッタ層に選択的に適用し;並びにc)1種以上の無機酸を含むエッチング組成物を半導体に適用して、ドープエミッタ層の露出部分をエッチング除去し、同時にアンアーカットを抑制することを含む。
【発明の効果】
【0010】
本方法は、反射防止層もしくは被覆された部分のドープエミッタ層において、低減されたアンダーカットを有するかもしくは検出可能なアンダーカットを有しない、半導体上での複数の電流トラックの形成を可能にする。これは金属電流トラックが均一な寸法を有し、従来の方法で製造された多くの従来の半導体デバイスとは対照的な増大した電気的出力、並びに均一な電流流れの半導体デバイスを提供する。支流を相互接続するせいで、隣り合う電流トラックの短絡が低減されもしくは除去される。本方法は微細な線寸法の電流トラックの形成も可能にし、よって半導体上の複数の電流トラックを増大させ、並びにより小さなサイズのウェハ上での電流トラックの形成を可能にする。さらに、電流トラックのサイズを低減させることにより、望まれないシャドウイングが低減されもしくは除去され、よってシャドウイングを低減し、半導体デバイスによる入射光の吸収の増大を可能にする。ホットメルトインクレジストは、毛管現象によるホットメルトインクレジストの下でのエッチング剤の浸透を抑制するのに充分な接着を反射防止層もしくはエミッタ層との界面にもたらす組成物である。さらに、ホットメルトインクレジストは、アルカリ水溶液を用いて、膨潤させ持ち上げるのではなく、溶解することによって、何らかの残留する残渣が金属めっきを悪化させうるか、もしくは最終的なデバイスを汚染しうる懸念なく、反射防止層もしくはドープエミッタ層の表面から容易にかつ素早く除去されうる。これは、溶解したレジストが中和によって沈殿させられうるので、容易な廃棄物処理を可能にする。また、これは、装置のより少ない定期的なメンテナンスを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
反射防止層を選択的に除去するために使用されるエッチング剤は、それがホットメルトインクレジストと化学的に相互作用せず、かつ反射防止層もしくはエミッタ層とホットメルトインクレジストとの界面でホットメルトインクジェットレジストの下に浸透しないように、ホットメルトインクレジストと適合性である。エッチング剤は穏やかな条件下で適用され、よってそれを使用する作業者への危険を低減させる。
【0012】
本明細書を通じて使用される場合、用語「堆積」および「めっき」は交換可能に使用される。用語「電流トラック」および「電流線」は交換可能に使用される。用語「組成物」および「浴」は交換可能に使用される。用語「選択的に堆積」とはある物質の堆積が基体上の特定の所望の領域で起こることを意味する。用語「レジスト」は無機もしくは有機酸を含むエッチング剤によって物理的もしくは化学的に変えられない組成物を意味する。用語「水素化」はその不飽和化学結合(−C=C−)の一部分もしくは全部が化学的に処理されて、その結合を水素で破壊もしくは飽和させた(−CH−CH−)化合物を意味する。
【0013】
文脈が明確に示さない限りは、以下の略語は以下の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;mg=ミリグラム;cps=センチポイズ;1cps=1×10−3パスカル(Pas)=0.01ポイズ=1.02×10−4kps/m;A=アンペア;dm=デシメートル;μm=マイクロメートル;nm=ナノメートル;およびUV=紫外線。
【0014】
全てのパーセンテージおよび比率は他に示されない限りは重量基準である。全ての範囲は包括的であり、かつそのような数値範囲が合計で100%になることに制約されることが明らかである場合を除いて、任意に組み合わせ可能である。
【0015】
光起電力素子および太陽電池は単結晶もしくは多結晶もしくは非晶質シリコン半導体ウェハからなることができる。以下の記載はシリコン半導体ウェハに関するものであるが、他の好適な半導体ウェハ、例えば、ガリウム−ヒ素、シリコン−ゲルマニウム、およびゲルマニウムも使用されうる。シリコンウェハが使用される場合には、それらは典型的にはp−型ベースのドーピングを有する。
【0016】
ウェハの前面は、その表面に反射を低減する改良された光入射ジオメトリを付与するために、場合によっては結晶配向テクスチャエッチングにかけられうる。半導体接合を生じさせるために、リン拡散もしくはイオン注入がウェハの前面上で起こって、n−ドープ(n+もしくはn++)領域を生じさせそしてPN接合を有するウェハを提供する。n−ドープ領域はエミッタ層とも称されうる。
【0017】
ある実施形態においては、反射防止層がウェハの前面もしくはエミッタ層に追加される。さらに、反射防止層は不導体化層として機能しうる。好適な反射防止層にはSiOのような酸化ケイ素層、Siのような窒化ケイ素層、または酸化ケイ素層と窒化ケイ素層との組み合わせが挙げられる。上記式においては、xは酸素原子の数であり、典型的にはxは整数2、すなわち二酸化ケイ素である。このような反射防止層は様々な蒸着方法、例えば、化学蒸着および物理蒸着によるなど多くの技術によって堆積されうる。酸化ケイ素層および窒化ケイ素層の厚みの限定はないが、典型的には、それらは100nm〜250nmの厚みである。
【0018】
ホットメルトインクレジストはインクジェット印刷、エアロゾルもしくはスクリーン印刷によって選択的に堆積させられうる。ホットメルトインクレジストは選択的に適用されて、電流トラックに対してネガである像を形成する。国際公開第2005/013323号および第2005/011979号は光起電力素子の製造においてレジストをスクリーン印刷する方法を開示する。好ましくはホットメルトインクレジストは、インクジェット印刷もしくはエアロゾルを使用して反射防止層に選択的に適用される。より好ましくは、それらはインクジェット印刷を用いて選択的に適用される。インクジェット印刷もしくはエアロゾルによる適用中のホットメルトインクレジストの粘度は7cps〜21cps、好ましくは9cps〜15cpsの範囲である。最も好ましくは、ホットメルトは10cps〜12cpsの粘度で適用される。
【0019】
別の実施形態においては、反射防止層の適用前に、ホットメルトインクレジストはインクジェット印刷、エアロゾルもしくはスクリーン印刷によって、ドープエミッタ層に直接、選択的に堆積されることができる。これは選択的エミッタ実施形態として知られている。選択的エミッタ実施形態においては、ホットメルトインクレジストは電流トラックに対してポジである像を形成する。典型的には、この実施形態においては、エミッタ層はより重度にドープされ、例えば、n++ドーピングである。
【0020】
インクジェット印刷方法は連続的インクジェット方法もしくはドロップオンデマンド方法であることができる。この連続的方法は、ポンプを用いてインクレジストを連続的に噴射しつつ、電磁場を変化させることによりインクレジストの方向が調節される印刷方法である。ドロップオンデマンドは、電子信号に基づいて必要とされる場合にのみインクレジストを分配する方法である。ドロップオンデマンドは、電気により機械的変化を生じる圧電プレートを使用することにより圧力が発生させられる圧電インクジェット方法と、熱により生じた泡の膨張によって発生する圧力を使用する熱インクジェット方法とに分けられうる。
【0021】
インクジェット印刷方法とは対照的に、エアロゾル方法は最初にインクレジストのエアロゾルを形成する。このエアロゾルは加圧ノズルを介して半導体基体に導かれ、この加圧ノズルはプリントヘッドに取り付けられている。エアロゾルは集束用ガスと混合されて、集束された形態で加圧ノズルに輸送される。インクレジストを分配するための集束用ガスの使用はノズルの詰まりの可能性を低減し、インクジェット適用を用いるよりも、より微細な電流トラック、より大きなアスペクト比の形成も可能にする。
【0022】
ホットメルトインクレジストは、95℃以下、好ましくは65℃〜90℃の温度で反射防止層もしくはドープエミッタ層の表面に適用される。より好ましくは、ホットメルトインクジェットレジストは70℃〜80℃の温度で適用される。このような低いインクジェット温度は、ほとんどのインクジェットプリントヘッドモジュールもしくはエアロゾルにおいてインクが使用されるのを可能にする。また、このインクレジストは低温でさらに長い貯蔵寿命を有する。ホットメルトインクレジストは適用後に素早く固化し、反射防止層もしくはドープエミッタ層の表面に接着するので、固化剤もしくは架橋剤が配合物中に必要とされない。よって、UV適用工程および他の従来の固化工程はこの方法から除かれうる。
【0023】
典型的には、ホットメルトインクレジストは、反射防止層もしくはドープエミッタ層を含み金属成分を含まない半導体基体に適用される。本方法を用いて製造される電流線の厚みに限定はないが、典型的には、ホットメルトインクレジストはドープエミッタ層、またはSiOもしくは窒化ケイ素のコーティングに選択的に適用されて、100μm以下、または例えば80μm〜20μm、または例えば70μm〜30μmの幅を有する電流線を形成する。
【0024】
ホットメルトインクレジストは1種以上の水素化ロジン樹脂を含み、この水素化ロジン樹脂は主成分として水素化もしくは部分水素化ロジン酸もしくはその塩を含み、このロジン酸もしくはその塩は、一般式C1929COOHを有し、フェナントレン核を有するアビエチンおよびピマル型のロジン酸から生じる。異性体には、これに限定されないが、レボピマル酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸(3つが可能である)およびテトラヒドロアビエチン酸が挙げられる。平均重量分子量は300〜308、または例えば302〜306の範囲である。酸価は少なくとも150、または例えば155〜200、または例えば170〜190(mgKOH/g)である。ロジンは松の木(主として、ダイオウマツおよびスラッシュマツ)から得られる。ガムロジンは生きている木から採取されたオレオレジンからのテレピン油の蒸留後に得られる残留物である。木材ロジンはマツの幹をナフサで抽出し、揮発性画分を蒸留除去することにより得られる。タル油はタル油の分画の副生成物である。水素化ロジン樹脂は商業的に得られうるか、またはその天然のソースから抽出され、そして文献に開示されている方法に従って精製されることができる。商業的に入手可能な部分的に水素化されたロジン樹脂の例は、Pinova Incorporated(ピノバ インコーポレーテッド)から入手可能なSTAYBELITE登録商標A水素化ロジンである。別の商業的に入手可能な部分的に水素化されたロジン樹脂はSTAYBELITE登録商標レジン−Eである。商業的に入手可能な完全に水素化されたロジンはFORAL商標AX−Eである。一般的に、水素化ロジン樹脂はホットメルトインクレジストに、10重量%以上、または例えば10重量%〜40重量%、または例えば20重量%〜30重量%の量で含まれうる。
【0025】
ホットメルトインクレジストは式RCOO−M(式中、Rは7〜48個の炭素原子、好ましくは12〜24個の炭素原子を有する線状、分岐もしくは環式アルキルもしくはアルケニル基であり、Mは水素または対イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、もしくはNH(CHCHOH)、yおよびzは0〜4の整数であり、その合計は常に4である)を有する1種以上の脂肪酸もしくはその塩も含むことができる。このような脂肪酸には、これに限定されないが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、リノール酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、またはその塩が挙げられる。典型的には、脂肪酸はラウリン酸、リノール酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびその塩から選択される。好ましくは、脂肪酸はミリスチン酸、パルミチン酸、およびその塩から選択される。このような脂肪酸およびその塩は200以上、典型的には215〜250(mgKOH/g)の酸価を有する。脂肪酸もしくはその塩の多くは天然油、例えば、海産物、菜種、獣脂、トール油、ダイズ、綿実およびココナッツから得られうる。このような脂肪酸、塩および混合物は商業的に入手可能であるか、または当該技術分野において既知の技術によって製造されうる。一般的に、このような脂肪酸およびその塩は、少なくとも60重量%、または例えば65重量%〜90重量%、または例えば70重量%〜80重量%の量でホットメルトインクレジストに含まれうる。
【0026】
場合によっては、ホットメルトインクレジストは1種以上の任意の光沢剤を含む。従来の蛍光増白剤、例えば、蛍光漂白剤が使用されうる。このような蛍光増白剤には、これに限定されないが、4,4’−ビス[2−(2−メトキシフェニル)エチル]−1,1’−ビフェニル;1,4−ビス(2−シアノスチリル)ベンゼン;2,2’−(1,4−ナフタレンジイル)ビスベンゾオキサゾール;2,2’−(2,5−チオフェンジイル)ビス[5−(1,1−ジメチルエチル)]−ベンゾオキサゾール;2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール);および2,2’−(1,2−エテンジイルジ−4,1−フェニレン)ビスベンゾオキサゾールが挙げられる。商業的に入手可能な蛍光漂白剤の例には、チバ(Ciba)スイスによるUVITEX商標FPおよびUVITEX商標OB、およびバイエル(Bayer)A.G.ドイツによるBLANKOPHOR商標ERである。このような蛍光増白剤はホットメルトインクレジスト中に0.01重量%〜1重量%、または例えば0.05重量%〜0.1重量%の量で含まれうる。
【0027】
エッチング剤は半導体基体に適用されることができ、選択的に適用されたホットメルトインクレジストは反射防止層もしくはドープエミッタ層を当該技術分野において知られている何らかの好適な方法で被覆する。このような方法には、これに限定されないが、半導体基体のエッチング浴中での浸漬、インクジェット印刷、エアロゾルもしくは従来の噴霧装置を使用することによる選択的適用が挙げられる。エッチング剤は、多くの従来のエッチングプロセスとは対照的に穏やかな温度で適用される。穏やかな温度はレジスト上への攻撃を低減しもしくは妨げるのを助け、それにより、インクレジストはエッチング中にその一体性を維持し、エッチング剤によるアンダーカットを抑制する。エッチング温度は室温〜50℃、または例えば25℃〜40℃の範囲である。
【0028】
エッチング剤は1種以上の無機酸、および場合によって1種以上のポリオールと、残部の水を含む。エッチング剤は80秒以下の期間で、典型的には5秒〜60秒の期間で、最も典型的には20秒〜40秒の期間で添加される。
【0029】
無機酸には、これに限定されないが、フッ化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸が挙げられる。典型的には、無機酸は濃厚もしくは希釈水溶液としての水性形態で提供される。最も典型的には、無機酸はフッ化水素酸である。無機酸はエッチング剤の1重量%〜20重量%の量で含まれうる。
【0030】
ポリオールは典型的には室温で水溶性であり、安定性の問題がないように無機酸と適合性である。このようなポリオールには、これに限定されないが、グリコール、例えば、多価アルコール、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびグリセリンが挙げられる。好ましくは、ポリオールはエチレングリコールおよびプロピレングリコールから選択される。このようなポリオールは、エッチング剤中に20体積%〜80体積%、または例えば40体積%〜70体積%、または例えば50体積%〜60体積%の量で含まれうる。
【0031】
無機酸およびポリオールに加えて、アンモニウム化合物がエッチング剤中に含まれても良い。典型的には、エッチング剤は1種以上のアンモニウム化合物を含む。アンモニウム化合物には、これに限定されないが、フッ化アンモニウムおよび二フッ化水素アンモニウムが挙げられる。典型的にはアンモニウム化合物はフッ化アンモニウムである。典型的にはアンモニウム化合物は水性濃厚物として、もしくは希溶液として提供される。このようなアンモニウム化合物はエッチング剤の10重量%〜40重量%の量で含まれうる。
【0032】
典型的には、アンモニウム化合物がエッチング剤に含まれる場合には、アンモニウム化合物:無機酸の体積比は10:1〜4:1である。好ましいエッチング剤は40体積%〜60体積%の量の1種以上のポリオールを含む、10:1〜4:1の体積:体積比の水性フッ化アンモニウムおよび水性フッ化水素である。
【0033】
ホットメルトインクレジストとエッチング剤との組み合わせは、電流線が実質的に均一な幅を有し、および隣り合う電流線との支流形成が実質的にないように、アンダーカットを阻害する。典型的にはエッチング剤をホットメルトの下に浸透させ、アンダーカットを生じさせ、最終的に電流線が不規則な寸法および効果のない電流伝導を有することとなる、ホットメルトインクレジストと反射防止層もしくはコーティングされたエミッタ層との界面での毛管現象を、ホットメルトインクレジストとエッチング剤との組み合わせが抑制する。
【0034】
エッチングが完了した後で、半導体はエッチング剤を除去するために水ですすがれうる。次いで、ホットメルトインクレジストは半導体基体から剥離される。全体的なホットメルトインクレジストについての酸価は少なくとも190、または例えば190〜250、または例えば200〜230(mgKOH/g)の範囲である。ホットメルトインクレジストは水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウムのような希アルカリ水溶液で剥離される。水酸化物濃度は0.1重量%〜5重量%の範囲でありうる。このような穏やかなアルカリ水溶液は室温〜50℃の温度で適用される。剥離は素早く、1分以下で起こりうる。レジストの剥離は実質的に完全である。多くの従来のレジストのように持ち上がりもしくは浮き上がりによる除去とは対照的に、レジストはSiOもしくは窒化ケイ素層、またはエミッタ層の表面から溶ける。少量の残留物は半導体から水ですすがれうる。
【0035】
エッチングおよび剥離の後で、次いで基体の金属化が行われる。しかし、選択的エミッタ実施形態においては、上述のような反射防止層を形成するための材料および方法を使用して、エミッタ層のエッチングされた部分上に反射防止層が堆積されうる。ホットメルトインクレジストでコーティングされたエミッタ層の部分はエッチングされた部分よりも高いドーピングを有し、半導体の前面上に金属めっきされて電流線を形成するエミッタ層の部分である。
【0036】
いずれかの実施形態の前面金属化の前に、半導体ウェハの裏面が、例えばアルミニウムで金属化されて低抵抗ウェハを提供する。あらゆる従来の方法が使用されうる。典型的には、半導体ウェハのシート抵抗としても知られる表面抵抗は40〜90オーム/スクエアの範囲であることができる。
【0037】
次いで、金属の層が前面電流線上に堆積される。典型的には銀ペーストが電流線に適用され、焼かれる。これは次いで、典型的には光誘起金属めっきされる。金属には、これに限定されないが、銀、銅およびニッケルが挙げられる。金属のソースが無電解浴である場合には、外部電流の適用なしにめっきが行われる。金属のソースが電解浴からである場合には、裏面電位(整流器)が半導体ウェハ基体に適用される。商業的に入手可能な無電解ニッケル浴の例はDURAPOSIT商標SMT88、並びにNIPOSIT商標PM980およびPM988である。商業的に入手可能な電解ニッケル浴の例は電解製品のNICKEL GLEAM商標シリーズである。商業的に入手可能な銅電気めっき浴の例は、COPPER GLEAM商標ST901および901である。商業的に有用な銀めっき浴の例はENLIGHT商標620銀プレートとして入手可能である。上記商業的に入手可能な浴の全てはマサチューセッツ州マルボロのローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズLLCから得られうる。
【0038】
光は連続的もしくはパルスであることができる。半導体は金属めっき浴中に浸漬され、半導体に光が適用され、電流線に金属めっきを生じさせる。光源には、これに限定されないが、白熱灯、LED光(発光ダイオード)、赤外灯、蛍光灯、水銀灯、ハロゲンランプおよびレーザーが挙げられる。
【0039】
典型的な電流密度は0.1A/dm〜5A/dmである。具体的な電流要求は、使用されるウェハの具体的なサイズに応じて変化する。使用される電気めっきプロセスは従来のものである。典型的には、このような金属層は厚さ1μm〜50μm、より典型的には5μm〜25μmの範囲である。
【0040】
下記の実施例は本発明の様々な形態を示すために記載されるが、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0041】
例1(比較)
以下の表に開示される配合を有するホットメルトインクジェットレジストが準備された。このレジストは室温で固体であった。
【0042】
【表1】

STAYBELITE登録商標A 典型的な組成および特性:アビエチン酸<3重量%、デヒドロアビエチン酸6−10重量%、ジヒドロアビエチン酸60−80重量%、テトラヒドロアビエチン酸5−15重量%、他のレジン酸および中性物質10−15重量%、軟化点、Ring&Ball、℃=65−69、酸価158−160。
UVITEX OB商標:蛍光増白剤。
【0043】
ホットメルトはDirectMask商標DoD65インクジェットプリンター(シュミッド(Schmid)GmbH、フローデンスタット、ドイツから入手可能)のリザーバーに入れられた。リザーバー内の温度は75℃に上げられて、ホットメルトレジストを溶融させた。12枚の単結晶シリコンウェハの二酸化ケイ素コーティング上に、室温で、このレジストが選択的に印刷されて、ウェハ上に「H」パターンを形成した。
【0044】
次いで、エッチングされたウェハについての線幅が、MIS,Inc.(サーゴインスビル、テネシー州、米国)からの同梱のPAX−itイメージ分析ソフトウェアを用いたPAXcamデジタル顕微鏡カメラを用いて測定された。この線幅はレジスト堆積物の端から端にわたって測定された。12枚のウェハについての平均線幅は54.2μm±3.2であると決定された。
【0045】
フッ化アンモニウムおよびフッ化水素を体積:体積比6:1からなるエッチング水溶液が40重量%の水性フッ化アンモニウムおよび49重量%の水性フッ化水素から製造された。このエッチング剤は単結晶シリコンウェハに30℃で、エッチング溶液中にウェハを浸漬することにより適用された。ウェハは25秒間、その溶液と接触したままであった。次いで、このウェハはエッチング溶液から取り出され、室温で水ですすがれてエッチング剤およびエッチング残留物を除去した。
【0046】
次いで、ホットメルトレジストは、0.5重量%の水酸化カリウムのアルカリ水溶液を用いて、ウェハをこの剥離溶液に40℃で浸漬することにより、ウェハから剥離された。剥離後のウェハの線幅は、同梱のPAX−it像分析ソフトウェアを用いてPAXcamデジタル顕微鏡カメラを使用して決定された。平均線幅は79.9μm±4.4であると決定された。幅の増大はホットメルトレジストをアンダーカットするエッチング剤のせいであった。このアンダーカットは12.8μm/面(剥離後の線幅−剥離前の線幅/2)であると決定された。
【0047】
例2(比較)
別のセットの二酸化ケイ素を備える12枚のウェハを用いて例1に記載される方法が繰り返された。同じホットメルトインクジェットレジストが使用されて、ウェハ上に「H」パターンを形成し、そのウェハは同じエッチング溶液でエッチングされた。線幅は、実施例1におけるのと同じPAXcamデジタル顕微鏡および同梱のPAX−itイメージ分析ソフトウェアを用いて測定された。印刷されたウェハについての平均線幅は58.5μm±4.4であり、エッチングおよび剥離後の平均線幅は69.7μm±2.5であると測定された。アンダーカットは5.6μm/面であると決定された。
【0048】
実施例3
エッチング剤が、体積:体積比6:1で水性フッ化アンモニウムおよび水性フッ化水素に加えて、50体積%のエチレングリコールを含んでいたことを除いて、例1に記載される方法が繰り返された。
二酸化ケイ素のコーティングを有する例1および2において使用された種類の12枚の単結晶ウェハが、例1において表に開示されたホットメルトインクジェットレジストで選択的にコーティングされて「H」パターンを形成した。線幅は、PAXcamデジタル顕微鏡で測定された。印刷後のウェハの第1のセットについての平均線幅は49.5μm±4.4であり、ウェハの第2のセットの印刷後の平均線幅は52.0μm±3.3であった。エッチングおよびホットメルトレジストをウェハの第1のセットからアルカリ水溶液で剥離した後の平均線幅は49.2μm±2.2であり、第2のセットのウェハについては52.0μm±4.5であった。第1のセットのウェハについてのアンダーカットは0.15μm/面であると決定され、第2のセットについては0μm/面であると決定された。例1および2におけるのと対照的に、本発明の方法は二酸化ケイ素コーティングした単結晶ウェハにおけるアンダーカットを有意に低減させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)前面がSiOもしくは窒化ケイ素からなる反射防止層を含む、前面および裏面を含む半導体を提供し;
b)酸官能基を有する水素化ロジン樹脂の1種以上、および1種以上の脂肪酸を含むホットメルトインクレジストであって、少なくとも190の酸価を有するホットメルトインクレジストを反射防止層に選択的に適用し;並びに
c)1種以上の無機酸を含むエッチング組成物を半導体に適用して、半導体反射防止層の露出部分をエッチング除去し、同時にアンアーカットを抑制する:
ことを含む方法。
【請求項2】
水素化ロジン樹脂がアビエチン酸もしくはピマル酸から生じる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化ロジン樹脂が少なくとも10重量%の量で含まれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
脂肪酸が少なくとも60重量%の量で含まれる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
無機酸がフッ化水素、硫酸もしくは塩酸から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エッチング組成物が1種以上のアンモニウム化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エッチング組成物が1種以上のポリオールをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1種以上のポリオールがエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびグリセリンから選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ホットメルトインクジェットレジストが95℃以下の温度で選択的に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
エッチング剤が室温〜50℃で適用される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリオールが20体積%〜80体積%の量で含まれる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
a)前面がドープエミッタ層を含む、前面および裏面を含む半導体を提供し;
b)酸官能基を有する水素化ロジン樹脂の1種以上、および1種以上の脂肪酸を含むホットメルトインクレジストであって、少なくとも190の酸価を有するホットメルトインクレジストをドープエミッタ層に選択的に適用し;並びに
c)1種以上の無機酸を含むエッチング組成物を半導体に適用して、ドープエミッタ層の露出部分をエッチング除去し、同時にアンアーカットを抑制する:
ことを含む方法。
【請求項13】
水素化ロジン樹脂がアビエチン酸もしくはピマル酸から生じる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
無機酸がフッ化水素、硫酸もしくは塩酸から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
エッチング組成物が1種以上のアンモニウム化合物をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
エッチング組成物が1種以上のポリオールをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
1種以上のポリオールがエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびグリセリンから選択される請求項16に記載の方法。

【公開番号】特開2011−243985(P2011−243985A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−108912(P2011−108912)
【出願日】平成23年5月15日(2011.5.15)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】