説明

半導体光源点灯回路

【課題】回路規模をより小さくする。
【解決手段】半導体光源点灯回路100は、入力電圧Vinから駆動電流ILEDをスイッチング素子122を使用して生成するスイッチングレギュレータ104と、制御回路102と、を備える。制御回路102は、駆動電流ILEDの大きさと目標値とを比較するエラーコンパレータ116と、比較結果に基づいて制御デジタル値をカウントするアップダウンカウンタ118と、駆動電流ILEDの大きさに基づいて入力電圧Vinが遮断されたか否かを判定する動作クロック選択回路150と、判定結果に基づいて、制御デジタル値を取得しないし取得された制御デジタル値を保持するレジスタ162と、を含む。アップダウンカウンタ118は、スイッチングレギュレータ104が非アクティブ状態からアクティブ状態になる際、レジスタ162によって保持されるデジタル値を制御デジタル値として読み出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED(Light Emitting Diode)などの半導体光源を点灯させる半導体光源点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、前照灯などの車両用灯具に、従来のフィラメントを有するハロゲンランプに代えてより長寿命で低消費電力のLEDが利用されている。LEDの発光の度合いすなわち明るさはLEDに流す電流の大きさに依存するので、LEDを光源として利用する場合にはLEDに流れる電流を調節するための点灯回路が必要となる。そのような点灯回路は通常エラーアンプを有し、LEDに流れる電流が一定となるようにフィードバック制御する。
【0003】
例えば前照灯にはハイビームの状態とロービームの状態とがあり、また規格に合わせやすくするためにもLEDの明るさを調節できることが望ましい。LEDの明るさを変えるには、電流値を連続的に変える方法と、電流をオンオフさせそのデューティ比を変えるPWM(Pulse Width Modulation)減光と、が知られている。前者では電流値によって色味または色温度が変わるカラーシフトが生じうる。したがって車両用灯具のLED点灯回路には後者のPWM減光が採用されることが多い。
【0004】
本出願人は特許文献1においてPWM減光を採用した点灯制御装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−170704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の点灯制御装置では、スイッチングレギュレータの駆動期間に検出されたLED電流の値を、その駆動期間経過後の停止期間中、コンデンサを使用してアナログ的に保持している。しかしながら一般に、コンデンサには損失が存在するので、コンデンサに保持される電圧値は少しずつ変化する。停止期間から駆動期間に移り変わる際、LED電流をその停止期間前の値に戻すためには、停止期間中にそのように変化した電圧値を元に戻す必要がある。しかしながら、一般にLED電流の立ち上がりに比べてコンデンサの電圧値の変化は緩やかなので、電圧値が元の値に戻る前にLED電流が目標値に到達し、そこからさらに上昇するオーバーシュートが生じうる。
【0007】
また、PWM減光の場合に限らず、点灯制御装置への入力電圧が急に変わったり、駆動すべきLEDの個数が急に変わったりしたときにも、電流フィードバックループにおける誤差量の変化がそれらの変化について行けず、結果としてLED電流のオーバーシュートやアンダーシュートが起こりうる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体光源の駆動電流のオーバーシュートまたはアンダーシュートを抑制できる半導体光源点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、半導体光源点灯回路に関する。この半導体光源点灯回路は、入力電圧から、半導体光源の駆動電流をスイッチング素子を使用して生成するスイッチングレギュレータと、駆動電流の大きさが目標値に近づくようにスイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、を備える。スイッチングレギュレータが駆動電流を生成する状態をアクティブ状態と呼ぶとき、スイッチングレギュレータへの入力電圧は、スイッチングレギュレータのアクティブ状態に対応する第1電圧と非アクティブ状態に対応する第2電圧とを繰り返す。制御回路は、駆動電流の大きさと目標値とを比較するコンパレータと、コンパレータにおける比較結果によって定まるカウントの向きでデジタル値をカウントするアップダウンカウンタと、駆動電流の大きさに基づいて、スイッチングレギュレータへの入力電圧が第1電圧から外れたか否かを判定する判定回路と、判定回路において外れていないと判定されたことを条件のひとつとしてアップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値を取得し、判定回路において外れたと判定されている間、取得されたデジタル値を保持するレジスタと、アップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、デジタルアナログコンバータによる変換の結果得られるアナログ信号に基づいて、スイッチング素子のオンオフを制御する駆動回路と、を含む。アップダウンカウンタは、スイッチングレギュレータが非アクティブ状態からアクティブ状態になる際、レジスタによって保持されるデジタル値をアップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値として読み出す。
【0010】
この態様によると、判定回路において外れたと判定されている間、駆動電流の大きさと目標値との比較結果をデジタル的に保持できる。
【0011】
本発明の別の態様もまた、半導体光源点灯回路である。この半導体光源点灯回路は、半導体光源の駆動電流をスイッチング素子を使用して生成するスイッチングレギュレータと、駆動電流の大きさが目標値に近づくようにスイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、を備える。制御回路は、駆動電流の大きさと目標値とを比較するコンパレータと、コンパレータにおける比較結果によって定まるカウントの向きでデジタル値をカウントするアップダウンカウンタと、アップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、デジタルアナログコンバータによる変換の結果得られるアナログ信号に基づいて、スイッチング素子のオンオフを制御する駆動回路と、を含む。アップダウンカウンタは、駆動電流の大きさと目標値との差が大きいほど速くデジタル値をカウントする。
【0012】
この態様によると、駆動電流の大きさと目標値との比較結果をデジタル的に扱える。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体光源の駆動電流のオーバーシュートまたはアンダーシュートを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る半導体光源点灯回路を備える車載回路の構成を示す回路図である。
【図2】図1の動作クロック選択回路の構成を示す回路図である。
【図3】PWM減光モードにおける図1の半導体光源点灯回路の動作状態を示すタイムチャートである。
【図4】非減光モードで入力電圧が急変する場合の図1の半導体光源点灯回路の動作状態を示すタイムチャートである。
【図5】図1の第1制御電源回路の変形例の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、信号には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、電圧、電流あるいは抵抗などに付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値あるいは抵抗値を表すものとして用いることがある。
【0017】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0018】
図1は、車載回路10の構成を示す回路図である。車載回路10は、実施の形態に係る半導体光源点灯回路100と、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit)20と、車載バッテリ30と、車載用のLEDを3つ直列に接続して構成されるLED40と、を備える。LED40は、不図示のバイパススイッチなどによりLEDの点灯・非点灯をLEDごとに個別に制御できるよう構成されていてもよい。
【0019】
エンジンコントロールユニット20は、自動車の電気的な制御を総合的に行うためのマイクロコントローラである。エンジンコントロールユニット20は車載バッテリ30と接続され、車載バッテリ30から約12Vのバッテリ電圧Vbatを受ける。エンジンコントロールユニット20は、半導体光源点灯回路100に固定電圧すなわち接地電位VGND(=0V)を供給する。
【0020】
エンジンコントロールユニット20は、LED40の制御に関して以下の2つのモードを有する。
1.PWM減光モード
PWM減光モードでは、エンジンコントロールユニット20は、減光用スイッチング素子62を使用して、数百Hzから数kHzの減光周波数f1で矩形波状に変化する入力電圧Vinを生成する。例えば減光用スイッチング素子62がオンされると入力電圧Vinはバッテリ電圧Vbatと同等の例えば13V程度の供給電圧に向けて上昇し、減光用スイッチング素子62がオフされると入力電圧Vinは接地電位に向けて下降する。入力電圧Vinの変動の周期(=1/f1、以下、減光周期T1と称す)は、入力電圧Vinの上昇時や下降時の遷移時間よりも長く設定される。したがって、入力電圧Vinは供給電圧と接地電位付近の電圧とを繰り返す。エンジンコントロールユニット20は、生成された入力電圧Vinを半導体光源点灯回路100に供給する。
【0021】
このような入力電圧Vinのパルス変調により、LED40は減光周波数f1で点滅し、人間の目が感じる明るさが低減される。入力電圧Vinのデューティ比は、所望の発光の度合いが得られるように設定される。この場合、LED40の点灯時にLED40に流れる電流の大きさの変動が抑えられるのでカラーシフトが抑えられる。
【0022】
以下、減光用スイッチング素子62がオンされ、半導体光源点灯回路100がエンジンコントロールユニット20を介して車載バッテリ30から電力の供給を受けることを入力電圧Vinの供給と表現することがある。また、減光用スイッチング素子62がオフされ、車載バッテリ30から半導体光源点灯回路100への電力の供給が途絶えることを入力電圧Vinの遮断と表現することがある。
【0023】
2.非減光モード
非減光モードでは、エンジンコントロールユニット20は、基本的には供給電圧を入力電圧Vinとして半導体光源点灯回路100に供給する。しかしながら、エンジンの始動時など車載バッテリ30に急激な負荷が加わった時にはバッテリ電圧Vbatは低下し、負荷が無くなった時にはバッテリ電圧Vbatは上昇する。それに伴い入力電圧Vinも変動し、供給電圧とは異なる例えば16V程度の急変電圧にシフトすることがある。
【0024】
半導体光源点灯回路100は、制御回路102と、スイッチングレギュレータ104と、入力キャパシタ148と、を含む。
【0025】
入力キャパシタ148はスイッチングレギュレータ104の入力段に設けられる。入力キャパシタ148の一端には入力電圧Vin、他端には接地電位がそれぞれ印加される。入力キャパシタ148の容量は比較的大きく、動作の安定性を向上させたりラジオノイズを低減したりする役割を果たす。なお、入力キャパシタ148はスイッチングレギュレータ104の一部とされてもよい。
【0026】
スイッチングレギュレータ104は、エンジンコントロールユニット20から入力される入力電圧Vinを、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのトランジスタであってもよいスイッチング素子122を使用して、LED40の順方向電圧Vfに適した出力電圧Voutに変換し、LED40のアノードに印加する。電流の観点から見ると、スイッチングレギュレータ104は、入力電圧Vinから、LED40に流れる駆動電流ILEDをスイッチング素子122を使用して生成する。スイッチングレギュレータ104の接地電位はエンジンコントロールユニット20から供給される。
【0027】
スイッチングレギュレータ104は、入力電圧Vinがスイッチングレギュレータ104の最低動作電圧以上となっている間、スイッチング素子122を使用して駆動電流ILEDを生成する。スイッチングレギュレータ104は、入力電圧Vinがスイッチングレギュレータ104の最低動作電圧よりも低くなっている間、駆動電流ILEDを生成しない。したがって、スイッチングレギュレータ104が駆動電流ILEDを生成する状態をアクティブ状態と呼ぶとき、PWM減光モードにおいて入力電圧Vinは、アクティブ状態に対応する供給電圧や急変電圧と非アクティブ状態に対応する接地電位付近の電圧とを繰り返す。
【0028】
制御回路102は、駆動電流ILEDの大きさが目標値に近づくようにスイッチング素子122のオンオフを制御する。制御回路102は、駆動回路106と、D/Aコンバータ120と、アップダウンカウンタ118と、エラーコンパレータ116と、電流検出部112と、動作クロック選択回路150と、基本クロック生成回路110と、保持回路160と、基準電圧源114と、第1制御電源回路130と、第2制御電源回路140と、POR(Power On Reset)回路146と、を含む。
【0029】
電流検出部112は、駆動電流ILEDの大きさを検出する。電流検出部112は例えば駆動電流ILEDが流れる電流検出抵抗であり、駆動電流ILEDの大きさに応じた検出電圧Vdを生成してエラーコンパレータ116の非反転入力端子に印加する。電流検出部112は、検出電圧Vdを動作クロック選択回路150に供給する。検出電圧Vdは接地電位などの固定電圧を基準に生成される。
【0030】
基準電圧源114は、駆動電流ILEDの大きさの目標値に対応する基準電圧Vrefを生成し、エラーコンパレータ116の反転入力端子に印加する。基準電圧源114は、基準電圧Vrefを動作クロック選択回路150に供給する。基準電圧Vrefは固定電圧を基準に生成される。
【0031】
エラーコンパレータ116は、検出電圧Vdと基準電圧Vrefとを比較する。すなわちエラーコンパレータ116は検出電圧Vdが示す駆動電流ILEDの大きさと基準電圧Vrefが示す目標値とを比較する。エラーコンパレータ116は、検出電圧Vdと基準電圧Vrefとの大小関係によってアサートまたはネゲートされる誤差信号S2をアップダウンカウンタ118に出力する。特に誤差信号S2は、Vd≧Vrefのときアサートされ、誤差信号S2の電圧はハイレベルとなる。誤差信号S2は、Vd<Vrefのときネゲートされ、誤差信号S2の電圧はローレベルとなる。
【0032】
アップダウンカウンタ118は、エラーコンパレータ116における比較結果によって定まるカウントの向きで制御デジタル値をカウントする。アップダウンカウンタ118としては例えば標準ロジックICである74シリーズの’191と同様の機能を有する素子が採用されてもよい。アップダウンカウンタ118は、誤差信号S2が入力されるU/D制御端子118aと、動作クロック信号S3が入力されるクロックパルス入力端子118bと、カウントされる制御デジタル値のビット数に対応する数の出力端子118cと、カウントされる制御デジタル値のビット数に対応する数のデータ入力端子118dと、データ入力端子118dに入力されるデジタル値を制御デジタル値としてロードするか否かを制御するロード端子118eと、を有する。
アップダウンカウンタ118は制御デジタル値を出力端子118cからD/Aコンバータ120に出力する。
【0033】
表1はアップダウンカウンタ118に関する真理値表である。
【表1】

表1において、「L」はローレベル、「H」はハイレベルを示し、「X」は何でも良い(don't care)ことを示す。
【0034】
アップダウンカウンタ118は、ロード端子118eに入力される信号がローレベルのとき、データ入力端子118dに入力されるデジタル値を、出力端子118cから出力されるべき制御デジタル値としてロードする。データ入力端子118dにはレジスタ162によって保持されるデジタル値が入力されるので、アップダウンカウンタ118は、ロード端子118eに入力される信号がローレベルのとき、レジスタ162によって保持されるデジタル値を制御デジタル値として読み出す。
【0035】
D/Aコンバータ120は、出力端子118cから出力される制御デジタル値を、その制御デジタル値に応じたアナログ電圧を有するデューティ比設定信号S4に変換する。D/Aコンバータ120におけるデジタルアナログ変換処理自体は公知のデジタルアナログ変換技術を使用して行われてもよい。D/Aコンバータ120はデューティ比設定信号S4を駆動回路106に出力する。デューティ比設定信号S4は、制御デジタル値が大きいほど高い電圧を有する。
【0036】
駆動回路106は、D/Aコンバータ120による変換の結果得られるデューティ比設定信号S4に基づいて、スイッチング素子122のオンオフのデューティ比を制御する。駆動回路106は、減光周波数f1よりも高い例えば数十kHzから数百kHzのスイッチング周波数f2で電圧が鋸波状に変化する鋸波状信号とデューティ比設定信号S4とを比較する。駆動回路106はその比較に基づき、スイッチング周波数f2で電圧が矩形波状に変化する素子制御信号S12であってデューティ比設定信号S4の電圧に応じたデューティ比を有する素子制御信号S12を生成する。素子制御信号S12のハイデューティはデューティ比設定信号S4の電圧が高いほど小さくなる。駆動回路106は、生成された素子制御信号S12をスイッチング素子122のゲートに出力する。その結果、制御デジタル値が大きいほどスイッチング素子122のオンデューティは小さくなり、駆動電流ILEDを低くする方向へ作用する。このように、制御回路102では駆動電流ILEDを目標値に近づける電流フィードバック制御が行われる。
【0037】
基本クロック生成回路110は、減光周波数f1よりも高い例えば数十kHzから数百kHzの基本クロック周波数f3で電圧が矩形波状に変化する基本クロック信号S8を生成し、動作クロック選択回路150に出力する。基本クロック生成回路110は、基本クロック周波数f3よりも低い周波数を有する信号を生成する。特に基本クロック生成回路110は、基本クロック信号S8を4分周し、4分周クロック信号S14を生成する。また基本クロック生成回路110は、基本クロック信号S8を16分周し、16分周クロック信号S15を生成する。基本クロック生成回路110は、4分周クロック信号S14および16分周クロック信号S15を動作クロック選択回路150に出力する。
【0038】
動作クロック選択回路150は以下の2つの機能を有する。
機能1.駆動電流ILEDの大きさに基づいて、入力電圧Vinが供給電圧から外れたか否かを判定する判定回路としての機能。
機能2.駆動電流ILEDの大きさと目標値との差が大きいほど周波数が高くなる動作クロック信号S3を生成する動作クロック生成部としての機能。
【0039】
機能1について、動作クロック選択回路150は検出電圧Vdと基準電圧Vrefとを比較することにより、駆動電流ILEDの大きさと目標値との差または比が所定の誤差範囲内にあるか否かを判定する。誤差範囲は、差の場合は値0を含み、比の場合は値1を含む。本実施の形態では、駆動電流ILEDの大きさと目標値との差または比が誤差範囲内にあることを、入力電圧Vinが供給電圧から外れていないことに対応させ、その差または比が誤差範囲内にないことを、入力電圧Vinが供給電圧から外れたことに対応させる。動作クロック選択回路150は、その判定結果に基づいてレベルが変化する保持制御信号S16を保持回路160に出力する。保持制御信号S16は、駆動電流ILEDの大きさと目標値との差または比が誤差範囲内にあると判定される場合はハイレベルとなり、そうでない場合はローレベルとなる信号である。
【0040】
機能2について、動作クロック選択回路150は、検出電圧Vdと基準電圧Vrefとの比較に基づき、基本クロック信号S8、4分周クロック信号S14、16分周クロック信号S15のなかから動作クロック信号S3として出力すべき信号を選択する。特に動作クロック選択回路150は、駆動電流ILEDの大きさと目標値との差が大きいほど、より高い周波数の信号を選択する。動作クロック選択回路150は、動作クロック信号S3をアップダウンカウンタ118のクロックパルス入力端子118bおよび保持回路160に出力する。
【0041】
表2は動作クロック選択回路150の機能に関する表である。
【表2】

表2では「115%〜85%」が駆動電流ILEDの大きさと目標値との比についての誤差範囲である。「140%〜115%」は第1逸脱範囲、「140%以上」は第2逸脱範囲、「85%〜60%」は第3逸脱範囲、「60%以下」は第4逸脱範囲である。
【0042】
図2は、動作クロック選択回路150の構成を示す回路図である。動作クロック選択回路150は主に分圧回路群、コンパレータ群、論理ゲート群を含む。バッファ502は動作クロック選択回路150に入力される基準電圧Vrefを受け、それをバッファする。第1分圧回路506、第2分圧回路508、第3分圧回路510はそれぞれ、バッファ502によって出力される基準電圧Vrefを分圧し、第1分圧電圧V1、第2分圧電圧V2、第3分圧電圧V3を生成する。ここでは特にVref>V1>V2>V3となるよう分圧回路の抵抗値が設定される。
【0043】
調整回路504は、動作クロック選択回路150に入力される検出電圧Vdを受けて調整し、処理検出電圧Vd’を生成する。第1分圧回路506、第2分圧回路508、第3分圧回路510、調整回路504の各回路定数は、V1>Vd’≧V2が誤差範囲、Vref>Vd’≧V1が第1逸脱範囲、Vd’≧Vrefが第2逸脱範囲、V2>Vd’≧V3が第3逸脱範囲、V3>Vd’が第4逸脱範囲、にそれぞれ対応するよう設定される。
【0044】
第1コンパレータ512、第2コンパレータ514、第3コンパレータ516、第4コンパレータ518はそれぞれ、処理検出電圧Vd’と基準電圧Vref、第1分圧電圧V1、第2分圧電圧V2、第3分圧電圧V3とを比較し、前者≧後者のときハイレベル、そうでないときローレベルとなる第1比較信号S17、第2比較信号S18、第3比較信号S19、第4比較信号S20を生成する。第1抵抗520、第2抵抗522、第3抵抗524、第4抵抗526はそれぞれ、第1コンパレータ512、第2コンパレータ514、第3コンパレータ516、第4コンパレータ518のためのプルアップ抵抗である。
【0045】
第1インバータ528、第2インバータ532、第3インバータ534、第4インバータ538はそれぞれ、第1比較信号S17、第2比較信号S18、第3比較信号S19、第4比較信号S20のレベルを反転させる。
第2ANDゲート530は、第1インバータ528の出力信号と第2比較信号S18との論理積を出力する。第3ANDゲート536は、第3インバータ534の出力信号と第4比較信号S20との論理積を出力する。第1ORゲート540は、第1比較信号S17と第4インバータ538の出力信号との論理和を出力する。第2ORゲート542は、第2ANDゲート530の出力信号と第3ANDゲート536の出力信号との論理和を出力する。第7ANDゲート544は、第2インバータ532の出力信号と第3比較信号S19との論理積を出力する。
【0046】
第4ANDゲート546は、第1ORゲート540の出力信号と基本クロック信号S8との論理積を出力する。第5ANDゲート548は、第2ORゲート542の出力信号と4分周クロック信号S14との論理積を出力する。第6ANDゲート550は、第7ANDゲート544の出力信号と16分周クロック信号S15との論理積を出力する。
第4ORゲート552は、第4ANDゲート546の出力信号と第5ANDゲート548の出力信号との論理和を出力する。第5ORゲート554は、第4ORゲート552の出力信号と第6ANDゲート550の出力信号との論理和を出力する。
動作クロック選択回路150は、第5ORゲート554の出力信号を動作クロック信号S3として出力し、第7ANDゲート544の出力信号を保持制御信号S16として出力する。
【0047】
例えば、V1>Vd’>V2のとき、第1比較信号S17、第2比較信号S18はローレベル、第3比較信号S19、第4比較信号S20はハイレベルとなる。第1比較信号S17はローレベルでありかつ第4インバータ538の出力信号はローレベルなので、第1ORゲート540の出力信号はローレベルとなる。したがって、第4ANDゲート546の出力信号は基本クロック信号S8によらずローレベルとなる。また、第2ORゲート542の出力信号もローレベルなので、第5ANDゲート548の出力信号は4分周クロック信号S14によらずローレベルとなる。一方、第7ANDゲート544の出力信号はハイレベルとなるので、第6ANDゲート550の出力信号は16分周クロック信号S15となる。結果、動作クロック信号S3として16分周クロック信号S15が出力され、保持制御信号S16はハイレベルとなる。
このように、図2に示される動作クロック選択回路150により、表2に示される動作クロック信号S3、保持制御信号S16が実現される。
【0048】
図1に戻り、保持回路160はレジスタ162と第1ANDゲート164とを含む。第1ANDゲート164は、動作クロック信号S3と保持制御信号S16との論理積を出力する。第1ANDゲート164の出力信号S21は、駆動電流ILEDの大きさと目標値との差または比が誤差範囲内にあると判定される場合は動作クロック信号S3であり、そうでない場合はローレベル一定となる。
【0049】
レジスタ162は、動作クロック選択回路150において入力電圧Vinが供給電圧から外れていないと判定されたことを条件のひとつとして、アップダウンカウンタ118から制御デジタル値を取得する。レジスタ162は、動作クロック選択回路150において外れたと判定されている間、取得された制御デジタル値を保持する。
【0050】
レジスタ162としては例えば74シリーズの’194のようにロード機能とホールド機能とを有する素子が採用されてもよい。レジスタ162は、アップダウンカウンタ118のデータ入力端子118dと接続された出力端子と、アップダウンカウンタ118の出力端子118cと接続された入力端子と(図1ではこの接続関係を図示していない)、第1ANDゲート164の出力信号S21が入力されるクロック端子162aと、を有する。
【0051】
レジスタ162は、クロック端子162aに立ち上がりエッジが入力されると、レジスタ162の入力端子に入力される制御デジタル値をロードする。すなわち、レジスタ162の出力端子には、クロック端子162aに立ち上がりエッジが入力されたときのアップダウンカウンタ118における制御デジタル値が現れる。このようにして、レジスタ162は、駆動電流ILEDの大きさと目標値との差または比が誤差範囲内にあると判定される場合はデジタル値を動作クロック信号S3の周波数で更新し、そうでない場合は最後に更新されたまたは更新を止める直前のデジタル値を保持する。
【0052】
第1制御電源回路130は少なくともレジスタ162に電力を供給する。第1制御電源回路130は第1電源回路132と第1キャパシタ134とを有する。第1電源回路132は、入力電圧Vinからレジスタ162に供給すべき第1電源電圧Vs1を生成する。
【0053】
第1制御電源回路130は、PWM減光モードにおいて、入力電圧Vinが接地電位付近の電圧となっている間、レジスタ162に十分な電源電圧を供給するよう構成される。すなわち、第1キャパシタ134の一端は第1電源回路132の出力段と接続され、他端は接地される。第1キャパシタ134の容量は、入力電圧Vinが接地電位付近の電圧となっている間、第1制御電源回路130が第1電源電圧Vs1の値をレジスタ162駆動のために必要な値以上に維持できるように選択される。この場合、入力電圧Vinが接地電位付近の電圧となっている間、少なくともレジスタ162は動作を継続できる。
【0054】
第2制御電源回路140は、第1制御電源回路130が電力を供給する素子以外の回路素子に電力を供給する。第2制御電源回路140はアップダウンカウンタ118に電力を供給してもよい。第2制御電源回路140は第2電源回路142と第2キャパシタ144とを有する。第2電源回路142は、入力電圧Vinから第2電源電圧Vs2を生成する。第2キャパシタ144の一端は第2電源回路142の出力段と接続され、他端は接地される。第2キャパシタ144の容量は第1キャパシタ134の容量より小さい。
【0055】
POR回路146は入力電圧Vinを監視し、POR信号S11を生成する。POR信号S11は、入力電圧Vinが所定の第1POR電圧を下回るとハイレベルからローレベルに遷移し、入力電圧Vinが第1POR電圧よりも高い第2POR電圧を上回るとローレベルからハイレベルに遷移する。第2POR電圧は供給電圧よりも低い。POR回路146は、生成されたPOR信号S11をアップダウンカウンタ118のロード端子118eに入力する。POR回路146は必要に応じて他の回路素子にPOR信号S11を供給してもよい。
【0056】
PWM減光モードにおいては、入力電圧Vinは供給電圧付近の電圧と接地電位付近の電圧とを減光周波数f1で繰り返すので、POR信号S11のハイレベルはスイッチングレギュレータ104のアクティブ状態に対応し、ローレベルは非アクティブ状態に対応する。
【0057】
以上の構成による半導体光源点灯回路100の動作を説明する。
(PWM減光モード)
図3は、PWM減光モードにおける半導体光源点灯回路100の動作状態を示すタイムチャートである。図3は、上から順に、入力電圧Vin、駆動電流ILED、保持制御信号S16、第1ANDゲート164の出力信号S21、レジスタ162に保持されるデジタル値、POR信号S11、アップダウンカウンタ118における制御デジタル値、を示す。第1ANDゲート164の出力信号S21のハッチングされた領域は、信号が基本クロック周波数f3の1/16の周波数でハイレベルとローレベルとを繰り返していることを示す。基本クロック周波数f3の1/16の周波数は減光周波数f1よりも十分に高い。
【0058】
時刻t1において、入力電圧Vinが遮断される。入力電圧Vinは供給電圧(13V)から低下し始める。駆動電流ILEDもまた目標値Irefから低下し始める。ここで、入力電圧Vinは一気に接地電位まで低下せず、入力キャパシタ148の存在によりある傾きをもって低下する。入力電圧Vinの低下の傾きは、駆動電流ILEDの低下の傾きよりも緩やかである。
【0059】
駆動電流ILEDの低下中は誤差信号S2がローレベルとなるので、アップダウンカウンタ118は動作クロック信号S3に合わせて制御デジタル値をカウントダウンする。したがって、制御デジタル値は低下していく。制御デジタル値の低下はスイッチングレギュレータ104の出力を高めようとすることに対応する。アップダウンカウンタ118は、電流フィードバック制御の発振を抑制するため、比較的ゆっくりと制御デジタル値を変化させるよう設定されている。
レジスタ162は、第1ANDゲート164の出力信号S21のレベル遷移に合わせてアップダウンカウンタ118から制御デジタル値を読み込む。
【0060】
入力電圧Vinが低下しているにも関わらずアップダウンカウンタ118における制御デジタル値の変化は比較的少ないので、スイッチングレギュレータ104は電圧変換を満足に行うことができない。その結果、駆動電流ILEDは比較的急に低下する。
【0061】
時刻t2において、駆動電流ILEDは目標値Irefの0.85倍を下回る。保持制御信号S16はハイレベルからローレベルに遷移する。このため、第1ANDゲート164の出力信号S21はローレベル一定となる。クロック端子162aにエッジが現れなくなるのでレジスタ162はデジタル値の更新を止め、最後に更新されたデジタル値を保持する。アップダウンカウンタ118はカウントダウンを続ける。
【0062】
入力電圧Vinがその電圧より低い場合に、入力電圧Vinから生成される第2電源電圧Vs2がアップダウンカウンタ118の最低動作電圧より低くなる電圧を動作限界電圧Vlimと称す。時刻t3において、入力電圧Vinは動作限界電圧Vlimを下回る。アップダウンカウンタ118はオフされ、制御デジタル値は不定となる。なお、時刻t2から時刻t3までの期間における、アップダウンカウンタ118のカウント動作の速さについては後述する。
【0063】
時刻t4において、入力電圧Vinは第1POR電圧Vd1を下回る。POR信号S11はハイレベルからローレベルに遷移する。スイッチングレギュレータ104の動作が停止されるので、入力電圧Vinの低下すなわち入力キャパシタ148に蓄積されたエネルギの消費はより緩やかになる。
【0064】
時刻t5において、入力電圧Vinが供給される。入力電圧Vinは供給電圧を目指して上昇し始める。
【0065】
時刻t6において、入力電圧Vinは動作限界電圧Vlimを上回る。アップダウンカウンタ118はオンされる。POR信号S11はローレベルなのでアップダウンカウンタ118はカウント動作を行わず、レジスタ162に保持されるデジタル値を制御デジタル値として読み出す。すなわち、アップダウンカウンタ118は、スイッチングレギュレータ104が非アクティブ状態からアクティブ状態になる際、レジスタ162によって保持されるデジタル値を制御デジタル値として読み出す。
【0066】
時刻t2から時刻t6までの期間において、レジスタ162には第1制御電源回路130から十分な電源電圧が供給され、かつ、レジスタ162は時刻t2における制御デジタル値を保持する。したがって、時刻t6においてレジスタ162に保持されるデジタル値は、時刻t2における制御デジタル値である。
【0067】
時刻t7において、入力電圧Vinは第2POR電圧Vd2を上回る。POR信号S11はローレベルからハイレベルに遷移する。スイッチングレギュレータ104は動作を開始し、駆動電流ILEDは目標値Irefを目指して上昇し始める。アップダウンカウンタ118はカウント動作を開始する。時刻t7の時点では駆動電流ILEDは目標値Irefよりも小さいので、アップダウンカウンタ118は動作クロック信号S3に合わせて制御デジタル値をカウントダウンする。
本実施の形態では、アップダウンカウンタ118がオンとなってからPOR信号S11がハイレベルとなるように、第2POR電圧Vd2は動作限界電圧Vlimよりも高い値に設定される。
【0068】
時刻t8において、駆動電流ILEDは目標値Irefの0.85倍を上回る。保持制御信号S16はローレベルからハイレベルに遷移する。第1ANDゲート164の出力信号S21は基本クロック周波数f3の1/16の周波数のクロックパルスを示すようになる。レジスタ162はそのクロックパルスに合わせてデジタル値を更新する。
【0069】
時刻t2における制御デジタル値は時刻t1における制御デジタル値よりも低いので、時刻t8を過ぎて駆動電流ILEDが目標値Irefとなった後、制御デジタル値が時刻t1における値に戻るまで駆動電流ILEDのオーバーシュートが発生する。時刻t9において、制御デジタル値は時刻t1における制御デジタル値に戻る。
【0070】
(非減光モードで入力電圧Vinが急変)
図4は、非減光モードで入力電圧Vinが急変する場合の半導体光源点灯回路100の動作状態を示すタイムチャートである。図4は、上から順に、入力電圧Vin、駆動電流ILED、動作クロック信号S3の周波数、アップダウンカウンタ118における制御デジタル値、を示す。
【0071】
時刻t11において、入力電圧Vinは13Vの供給電圧から16Vの急変電圧へ遷移し始める。入力電圧Vinの上昇を受けて、駆動電流ILEDは目標値Irefから上昇し始める。駆動電流ILEDが目標値Irefよりも高くなるので、アップダウンカウンタ118は制御デジタル値をカウントアップする。動作クロック選択回路150は16分周クロック信号S15を動作クロック信号S3として選択しており、動作クロック信号S3の周波数は基本クロック周波数f3の16分の1である。したがって、カウントアップのスピードは比較的ゆっくりであり、駆動電流ILEDは上昇を続ける。
【0072】
時刻t12において、駆動電流ILEDは目標値Irefの1.15倍を上回る。動作クロック選択回路150は4分周クロック信号S14を動作クロック信号S3として選択し、動作クロック信号S3の周波数は基本クロック周波数f3の4分の1となる。したがって、アップダウンカウンタ118のカウントアップのスピードは速まる。
【0073】
時刻t13において、駆動電流ILEDは目標値Irefの1.4倍を上回る。動作クロック選択回路150は基本クロック信号S8を動作クロック信号S3として選択し、動作クロック信号S3の周波数は基本クロック周波数f3となる。したがって、アップダウンカウンタ118のカウントアップのスピードはさらに速まる。すなわち、アップダウンカウンタ118は、駆動電流ILEDの大きさと目標値Irefとの差が大きいほど速く制御デジタル値をカウントする。
【0074】
時刻t14において、駆動電流ILEDは目標値Irefの1.4倍を下回る。動作クロック選択回路150は4分周クロック信号S14を動作クロック信号S3として選択し、動作クロック信号S3の周波数は基本クロック周波数f3の4分の1となる。したがって、アップダウンカウンタ118のカウントアップのスピードは遅くなる。
【0075】
時刻t15において、駆動電流ILEDは目標値Irefの1.15倍を下回る。動作クロック選択回路150は16分周クロック信号S15を動作クロック信号S3として選択し、動作クロック信号S3の周波数は基本クロック周波数f3の16分の1となる。したがって、アップダウンカウンタ118のカウントアップのスピードは時刻t12以前のスピードと同等になる。
入力電圧Vinが急変電圧から供給電圧へ遷移する場合も、変化の向きが逆になることを除けば上記と同様である。
【0076】
本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100によると、スイッチングレギュレータ104自体を周期的に非アクティブ状態とすることによってPWM減光が実現される。これにより、例えばスイッチングレギュレータ104とLEDとの間に設けられたスイッチをオンオフすることでPWM減光を実現する場合と比較して、オフからオンに切り替わったときにLEDに流れる電流の大きさを抑えることができる。その結果、半導体光源点灯回路100の素子として耐電圧や耐電流がより低いより安価な素子を使用することができ、また半導体光源点灯回路100の効率も上昇する。
【0077】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、スイッチングレギュレータ104が非アクティブ状態となっている間、レジスタ162が制御デジタル値を保持する。したがって、その非アクティブ状態の前後のアクティブ状態における駆動電流ILEDをスムーズに繋ぎ合わせることができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、エラー量が制御デジタル値としてデジタル化されている。すなわち、検出電圧Vdからデューティ比設定信号S4を得るための処理を、エラーコンパレータ116、アップダウンカウンタ118、D/Aコンバータ120を使用してデジタル化している。これにより、そのような処理がアナログ的になされる場合と比較して例えばエラー量保持のための比較的容量の大きなキャパシタ等を設ける必要はなく、回路規模を低減できる。
【0079】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、入力電圧Vinをパルス変調することでPWM減光を実現している。これにより、例えば入力電圧Vinをバッテリ電圧Vbatに固定し、減光周波数f1を有するパルス信号を別途エンジンコントロールユニットから半導体光源点灯回路に送出する場合と比較して、エンジンコントロールユニット20と半導体光源点灯回路100との間の信号線をひとつ削減でき、かつパルス信号を解釈するためのインタフェース回路を設ける必要もなくなる。
【0080】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、動作クロック選択回路150はPWM減光モードにおいて、入力電圧Vinではなく駆動電流ILEDの大きさに基づいて入力電圧Vinが供給電圧付近にいるかそうでないか、言い換えると入力電圧Vinが遮断されたか否かを判定する。エンジンコントロールユニット20において入力電圧Vinが遮断された場合、駆動電流ILEDは入力電圧Vinよりも速く低下する。そこで遮断の判定に駆動電流ILEDを利用することで、入力電圧Vinが遮断されるタイミングと遮断を検知するタイミングすなわち制御デジタル値を保持するタイミングとをより近づけることができる。その結果、制御デジタル値の不必要な変動を抑えることができる。
【0081】
入力電圧Vinが遮断されるタイミングと遮断を検知するタイミングとを近づけるために、第1POR電圧Vd1を供給電圧により近づけた上で、POR信号S11により遮断されたか否かを判定することも考えられる。しかしながら、通常、POR信号S11は回路素子のリセット/リセット解除のために使用される。したがって第1POR電圧Vd1を供給電圧に近づけすぎると、入力電圧Vinに乗るノイズに対して回路の動作が不安定となりうる。これに対して本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、駆動電流ILEDに基づいて遮断の有無を判定するので、そのようなノイズに対する不安定性は生じにくい。
【0082】
また、POR回路146以外に入力電圧Vinを監視する別の回路を設けることも考えられるが、そうすると回路規模が増大しうる。これに対して本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では電流フィードバック制御のために設けられている電流検出部112の検出結果を動作クロック選択回路150における判定にも利用しているので、回路規模の増大を抑えることができる。
【0083】
また、スイッチングレギュレータ104が非アクティブ状態となっている間制御デジタル値を保持するために、レジスタ162の代わりにPOR信号S11に基づきアップダウンカウンタ118のカウント動作を止めることも考えられる。図3にはこの場合の制御デジタル値の変化が破線で示されている。この場合、入力電圧Vinが遮断されるタイミング(時刻t1)とPOR信号S11がローレベルとなるタイミング(時刻t4)とは比較的離れているので、その間の期間に制御デジタル値は大きく低下する。時刻t4においてそのように大きく低下した制御デジタル値が保持される。したがって、時刻t5において入力電圧Vinの供給が再開した後、制御デジタル値が時刻t1における値に戻るまでに長い期間が必要となるので、駆動電流ILEDのオーバーシュートは破線で示されるように大きくなり、期間も長くなる。
【0084】
これに対して本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、駆動電流ILEDに基づき遮断を検知し、遮断が検知されるとレジスタ162にそのときの制御デジタル値を保持させる。アップダウンカウンタ118は、スイッチングレギュレータ104がアクティブ状態に復帰する際、レジスタ162から制御デジタル値を読み出す。これにより、入力電圧Vinが遮断されている間にアップダウンカウンタ118がカウント動作を続ける場合であってもそうでない場合であっても、入力電圧Vinの供給が再開された後制御デジタル値をより短い期間で元の値に戻すことがきる。したがって、駆動電流ILEDのオーバーシュートを抑制できる。その結果、駆動電流ILEDの大きさがLED40の耐電流を超える可能性を低減できる。あるいはまた、より廉価で耐電流の低いLEDを使用できる。
【0085】
車両用灯具の光源としてのLEDは基板上に実装され、そのLEDへの電力の供給はワイヤーボンドにより行われることが多い。本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では駆動電流ILEDのオーバーシュートが抑制されるので、ワイヤーボンドなどの電流に敏感な部分に過電流が流れにくくなる。
また、オーバーシュートが抑制されることにより、LED40やその周辺回路の温度上昇を抑えることができる。
【0086】
非減光モードにおいて入力電圧Vinが急変するとき、何ら対策を施さないと、入力電圧Vinの変化に制御デジタル値の変化がついて行けず、大きなオーバーシュートまたはアンダーシュートを生じる場合がある。図4にはこの場合の制御デジタル値の変化および駆動電流ILEDの変化が破線で示される。入力電圧Vinが13Vから16Vに変動したとき、制御デジタル値は、入力電圧Vin=13Vにおいて駆動電流ILEDを目標値Irefとするための値から、入力電圧Vin=16Vにおいて駆動電流ILEDを目標値Irefとするための値へ比較的ゆっくり変化する。具体的には、スイッチングレギュレータ104が昇圧形態の場合、スイッチング素子122のオンデューティを小さくするように制御デジタル値がゆっくり変化する。この制御デジタル値の変化は入力電圧Vinの変動よりも遅いため、入力電圧Vinが16Vに達してもオンデューティは比較的大きいままとなる。したがって、LED40へ大きなエネルギが供給され、駆動電流ILEDはオーバーシュートしうる。入力電圧Vinが16Vから13Vに変動したときは、上記と逆の状態となり、駆動電流ILEDはアンダーシュートしうる。
【0087】
これに対して本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、アップダウンカウンタ118は、駆動電流ILEDの大きさと目標値Irefとの差が大きいほど速く制御デジタル値をカウントする。すなわち、駆動電流ILEDが目標値Irefに近いときは発振を抑制するために比較的低周波のクロックでアップダウンカウンタ118を動作させるが、駆動電流ILEDの検出値が目標値Irefから離れるほど高周波のクロックで動作させ、駆動電流ILEDを目標値Irefへ素早く収束させる。これにより、入力電圧Vinが急変した場合でも制御デジタル値はその変化により素早く追従して変化することができる。その結果、オーバーシュートやアンダーシュートを抑制し、LED40の劣化を抑制できる。
【0088】
駆動電流ILEDのアンダーシュートが大きい場合、LED40の発光が弱まる可能性がある。本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では駆動電流ILEDのアンダーシュートが抑制されるので、LED40の発光を安定させることができる。
【0089】
なお、入力電圧Vinが急変してもPOR信号S11がローレベルとならない場合、アップダウンカウンタ118はレジスタ162に保持されるデジタル値をロードしない。したがって、この場合、レジスタ162の動作に関係なく上記の作用効果が奏される。
【0090】
また、LED40を構成するLEDの個数がバイパススイッチの開閉により減ると駆動電流ILEDにオーバーシュートが現れ、増えるとアンダーシュートが現れうる。本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100によると、このようなオーバーシュートやアンダーシュートも抑制できる。
【0091】
仮に半導体光源点灯回路が、入力電圧Vin急変時にカウント動作を速くする機能を備え、PWM減光モードにおいて制御デジタル値を保持し読み出す機能を備えない場合、入力電圧Vin急変時は上記の通り好適に対応できる。しかしながら、PWM減光モードにおいて入力電圧Vinの供給が遮断された場合、駆動電流ILEDが目標値Irefから離れるにしたがって制御デジタル値はより速く元の値から離れていく。図3にはこの場合の制御デジタル値の変化が2点鎖線で示されている。したがって、入力電圧Vinの供給が再開されたときの駆動電流ILEDのオーバーシュートは、入力電圧Vin急変時にカウント動作を速くする機能がない場合よりもさらに大きくなる。
【0092】
そこで本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100は、PWM減光モードにおいて制御デジタル値を保持し読み出す機能と、入力電圧Vin急変時にカウント動作を速くする機能と、の両方を備える。したがって、PWM減光モードにおいて入力電圧Vinが遮断された後、後者の機能により制御デジタル値の変化が速くなる前にレジスタ162が制御デジタル値を保持するので、入力電圧Vinの供給が再開されたときのオーバーシュートを抑えることができる。
【0093】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、入力電圧Vinが遮断されたか否かを判定するための基準と、アップダウンカウンタ118のカウント動作を速めるか否かを決める基準とが統一されている。すなわち、駆動電流ILEDが誤差範囲から外れると、入力電圧Vinが遮断されたと判定され、かつ、動作クロック信号S3の周波数が速くなる。したがって、それぞれの基準に専用の判定回路を設ける場合と比較して、回路規模を縮小できる。
【0094】
以上、実施の形態に係る半導体光源点灯回路の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
例えば、PWM減光モードにおいて供給電圧が急変する場合にも本実施の形態に係る技術的思想を適用できる。
【0095】
実施の形態では、第1制御電源回路130と第2制御電源回路140とを並列的に設ける場合について説明したが、これに限られない。入力電圧Vinが接地電位付近の電圧となった際、レジスタ162へ供給される電源電圧のみを維持してもよいし、レジスタ162を含む周辺回路へ供給される電源電圧を維持してもよいし、デジタル回路全体の電源を維持してもよい。また、いずれの場合でも、デジタル回路が動作するためのクロックを停止することが望ましい。この場合、状態変化を防止でき、また、消費電力を低減できる。
【0096】
図5は、第1制御電源回路130の変形例の構成を示す回路図である。変形例に係る制御電源回路600は、第1電源回路132と、第1キャパシタ134と、電源切替スイッチング素子602と、を有する。電源切替スイッチング素子602は、POR信号S11によってオンオフが制御される。電源切替スイッチング素子602はPOR信号S11がハイレベルのときオンとなり、半導体光源点灯回路100のレジスタ162以外の回路素子に第1電源電圧Vs1が供給される。電源切替スイッチング素子602はPOR信号S11がローレベルのときオフとなり、レジスタ162以外の回路素子への電源供給が遮断される。本変形例によると、第2制御電源回路140を設ける必要はないので、回路規模を縮小できる。
【0097】
実施の形態では、PWM減光モードにおいて、アップダウンカウンタ118がオンとなってからPOR信号S11がハイレベルとなる場合について説明したが、これに限られない。例えば、アップダウンカウンタ118に第1制御電源回路130から電源電圧を供給してもよい。この場合、アップダウンカウンタ118は入力電圧Vinが遮断されている間もオン状態となる。したがって、POR信号S11がローレベルとなる時刻t4以降、アップダウンカウンタ118はレジスタ162からデジタル値を読み出す。その結果、その後いつPOR信号S11がハイレベルとなって制御デジタル値のカウントが開始されても、カウント開始時点の制御デジタル値は時刻t2における制御デジタル値となる。
【0098】
実施の形態では、半導体光源点灯回路100は、PWM減光モードにおいて制御デジタル値を保持し読み出す機能と、入力電圧Vin急変時にカウント動作を速くする機能と、の両方を備える場合について説明したが、これに限られない。例えば、PWM減光モードが使用されない場合は、前者の機能を有さず後者の機能を有することにより、入力電圧急変時に発生しうる駆動電流のオーバーシュートやアンダーシュートを抑制できる半導体光源点灯回路が提供されうる。あるいはまた、前者の機能を有し後者の機能を有さないことにより、PWM減光モードにおける駆動電流のオーバーシュートを抑制できる半導体光源点灯回路が提供されうる。
【符号の説明】
【0099】
100 半導体光源点灯回路、 102 制御回路、 104 スイッチングレギュレータ、 106 駆動回路、 118 アップダウンカウンタ、 122 スイッチング素子、 162 レジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧から、半導体光源の駆動電流をスイッチング素子を使用して生成するスイッチングレギュレータと、
駆動電流の大きさが目標値に近づくように前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、を備え、
前記スイッチングレギュレータが駆動電流を生成する状態をアクティブ状態と呼ぶとき、前記スイッチングレギュレータへの入力電圧は、前記スイッチングレギュレータのアクティブ状態に対応する第1電圧と非アクティブ状態に対応する第2電圧とを繰り返し、
前記制御回路は、
駆動電流の大きさと目標値とを比較するコンパレータと、
前記コンパレータにおける比較結果によって定まるカウントの向きでデジタル値をカウントするアップダウンカウンタと、
駆動電流の大きさに基づいて、前記スイッチングレギュレータへの入力電圧が第1電圧から外れたか否かを判定する判定回路と、
前記判定回路において外れていないと判定されたことを条件のひとつとして前記アップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値を取得し、前記判定回路において外れたと判定されている間、取得されたデジタル値を保持するレジスタと、
前記アップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、
前記デジタルアナログコンバータによる変換の結果得られるアナログ信号に基づいて、前記スイッチング素子のオンオフを制御する駆動回路と、を含み、
前記アップダウンカウンタは、前記スイッチングレギュレータが非アクティブ状態からアクティブ状態になる際、前記レジスタによって保持されるデジタル値を前記アップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値として読み出すことを特徴とする半導体光源点灯回路。
【請求項2】
半導体光源の駆動電流をスイッチング素子を使用して生成するスイッチングレギュレータと、
駆動電流の大きさが目標値に近づくように前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
駆動電流の大きさと目標値とを比較するコンパレータと、
前記コンパレータにおける比較結果によって定まるカウントの向きでデジタル値をカウントするアップダウンカウンタと、
前記アップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータと、
前記デジタルアナログコンバータによる変換の結果得られるアナログ信号に基づいて、前記スイッチング素子のオンオフを制御する駆動回路と、を含み、
前記アップダウンカウンタは、駆動電流の大きさと目標値との差が大きいほど速くデジタル値をカウントすることを特徴とする半導体光源点灯回路。
【請求項3】
前記制御回路は、駆動電流の大きさと目標値との差が大きいほど周波数が高くなるクロック信号を生成するクロック生成部をさらに含み、
前記アップダウンカウンタは、前記クロック生成部によって生成されるクロック信号に基づいてカウント動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の半導体光源点灯回路。
【請求項4】
前記スイッチングレギュレータが駆動電流を生成する状態をアクティブ状態と呼ぶとき、前記スイッチングレギュレータへの入力電圧は、前記スイッチングレギュレータのアクティブ状態に対応する第1電圧と非アクティブ状態に対応する第2電圧とを繰り返し、
前記制御回路は、
駆動電流の大きさに基づいて、前記スイッチングレギュレータへの入力電圧が第1電圧から外れたか否かを判定する判定回路と、
前記判定回路において外れていないと判定されたことを条件のひとつとして前記アップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値を取得し、前記判定回路において外れたと判定されている間、取得されたデジタル値を保持するレジスタと、をさらに含み、
前記アップダウンカウンタは、前記スイッチングレギュレータが非アクティブ状態からアクティブ状態になる際、前記レジスタによって保持されるデジタル値を前記アップダウンカウンタによってカウントされたデジタル値として読み出すことを特徴とする請求項2または3に記載の半導体光源点灯回路。
【請求項5】
前記アップダウンカウンタは、前記判定回路において外れたと判定されると、前記判定回路において外れていないと判定された場合よりも速くデジタル値をカウントすることを特徴とする請求項4に記載の半導体光源点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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