説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】半導体ウエハ等の半導体基板に反りが発生しないようにするとともに、封止性能が低下しないようにする。
【解決手段】 一方の面112に下層配線17が形成された半導体基板110の前記一方の面112と、フィルム材120と、を接着剤層119を介して接着し、半導体基板110の他方の面113に保護膜124を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップのパッケージ方法として、いわゆるWLP(Wafer Level Package)法がある。WLP法は、チップサイズに細分割する前の半導体ウエハに配線をパターニングした後、その半導体ウエハに液体樹脂を塗布し、その液体樹脂を硬化して封止層にし、半導体ウエハを封止層ごと細分割する方法である(特許文献1、特許文献2参照)。これにより、半導体チップとほぼ同じサイズの小型パッケージを製造することができる。
【0003】
また、封止層の形成後、半導体ウエハの細分割前に、半導体ウエハの裏面を研削して半導体ウエハを薄型化し、半導体ウエハの裏面に保護膜を形成する(特許文献1、特許文献2参照)。半導体ウエハの裏面に保護膜を形成することによって、半導体ウエハが保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−229112号公報
【特許文献2】特開2006−229113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、液体樹脂が硬化する際には、樹脂が収縮する。そのため、封止層を形成すると、半導体ウエハが反ってしまう。そのため、封止層の形成後に半導体ウエハの裏面を研削することが難しい上、半導体ウエハを充分に薄くすることができない。
半導体ウエハの反りを抑えるべく、封止層を薄くすると、封止性能が低下してしまう。封止層が薄いと、半導体ウエハが充分に補強されないから、その後に保護膜を形成する際にも半導体ウエハが反ってしまう。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、半導体ウエハ等の半導体基板に反りが発生しないようにするとともに、封止性能が低下しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための本発明に係る半導体装置の製造方法は、
一方の面に下層配線が形成された半導体基板の前記一方の面と、フィルム材と、を接着剤層を介して接着し、
前記半導体基板の他方の面に保護膜を形成する方法である。
【0007】
本発明に係る半導体装置は、
一方の面に下層配線が設けられた半導体基板と、
フィルム材と、
前記半導体基板の前記一方の面と、前記フィルム材と、を接着する接着剤層と、
前記半導体基板の前記他方の面に設けられた保護膜と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接着剤層によってフィルム材と半導体基板を接着するから、半導体基板の反りの原因となる接着剤層を薄くすることができるとともに、半導体基板の反りの原因とならないフィルム材を厚くすることができる。そのため、半導体基板の反りを防止しつつ、フィルム材の厚みによって封止性能の向上を図れる。フィルム材によって半導体基板が補強されるから、保護膜を形成する際にも半導体基板に反りが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の断面図。
【図2】同実施形態に係る半導体装置の製造に用いる半導体ウエハの断面図。
【図3】同実施形態に係る半導体装置を製造する方法の一工程における半導体ウエハの断面図。
【図4】図3の工程の後の工程における断面図。
【図5】図4の工程の後の工程における断面図。
【図6】図5の工程の後の工程における断面図。
【図7】図6の工程の後の工程における断面図。
【図8】図7の工程の後の工程における断面図。
【図9】図8の工程の後の工程における断面図。
【図10】図9の工程の後の工程における断面図。
【図11】図10の工程の後の工程における断面図。
【図12】図11の工程の後の工程における断面図。
【図13】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の断面図。
【図14】本発明の第3実施形態に係る半導体装置の断面図。
【図15】同実施形態に係る半導体装置を製造する方法の一工程における半導体ウエハの断面図。
【図16】図15の工程の後の工程における断面図。
【図17】図15の工程の後の工程における断面図。
【図18】図16の工程の後の工程における断面図。
【図19】図18の工程の後の工程における断面図。
【図20】本発明の第4実施形態に係る半導体装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の断面図である。
図1に示すように、この半導体装置1は、チップサイズにパッケージしたものであって、いわゆるCSP(Chip Size Package)である。特に、この半導体装置1は、予め硬化した樹脂フィルムを半導体ウエハの一方の面に接着した後に、それをチップサイズに個片化したものである。つまり、半導体装置1は、CSPの中でも特にWLP(Wafer Level Package)である。
【0012】
この半導体装置1は半導体基板10、パッシベーション膜15、下層配線17、接着剤層19、フィルム材20、上層配線22及びバンプ23等を備える。
【0013】
半導体基板10は、半導体ウエハを個片化したものである。半導体基板10は、一方の面12と、一方の面12の反対側となる他方の面13とを有するとともに、一方の面12と他方の面13の間に厚みを有する。一方の面12は正方形型又は長方形型の外縁12aを有し、他方の面13も一方の面12と同形状の外縁13aを有する。半導体基板10は、一方の面12の外縁12aと他方の面13の外縁13aとを結ぶとともに、半導体基板11の厚み部分を囲んだ周側面11を有する。半導体基板10は半導体(例えば、シリコン、GaAs)等からなり、半導体基板10の一方の面12には集積回路及び複数の接続パッド14が形成されている。接続パッド14は、半導体基板10の一方の面12に形成された集積回路の配線の一部であったり、その集積回路の構成要素である各種電気素子(例えば、ダイオード、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等)の電極であったりする。
【0014】
パッシベーション膜15が、半導体基板10の一方の面12上に成膜されている。パッシベーション膜15が半導体基板10の一方の面12を被覆し、半導体基板10の一方の面12に形成された集積回路がパッシベーション膜15によって保護される。パッシベーション膜15は、酸化シリコン又は窒化シリコンをからなる。パッシベーション膜15のサイズは半導体基板10のサイズよりも僅かに小さく、パッシベーション膜15の周縁が半導体基板10の周縁から内側に離れている。なお、パッシベーション膜15のサイズが半導体基板10のサイズに等しく、パッシベーション膜15の周縁が半導体基板10の周縁に揃っていてもよい。
【0015】
パッシベーション膜15のうち接続パッド14に重なる位置には、開口16が形成されている。接続パッド14の一部又は全体が開口16内に位置している。
【0016】
下層配線17が、半導体基板10の一方の面12との間にパッシベーション膜15を介して、一方の面12の上に形成されている。具体的には、下層配線17がパッシベーション膜15の上に直接形成されている。
【0017】
下層配線17の一部が開口16に埋められ、下層配線17が開口16を通じて接続パッド14に接続されている。パッシベーション膜15の上において、下層配線17の一部(主に端部)がランド18であり、ランド18が島状(例えば、丸形島状、角形島状、リング形島状)に形作られている。
【0018】
下層配線17は、パターニングされた一の導体層(例えば、Cu層)からなるか、又はパターニングされて且つ積層された複数の導体層からなる。下層配線17が複数の導体層からなる場合、各層の導体金属の種類が同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、下層配線17は、スパッタリング等によってパッシベーション膜15上に成長したチタン(Ti)の層、そのチタンの層上に成長した銅(Cu)の無電解メッキ層、その無電解メッキ層上に成長した銅(Cu)の電解メッキ層からなる積層体をパターニングしたものである。その場合、各層の厚さについて一例を挙げると、チタンの層と無電解メッキ層の厚さの総和が200nm〜2000nmであり、電解メッキ層の厚さが1μm〜10μmである。
【0019】
フィルム材20は、半導体基板10の一方の面12に対向している。フィルム材20が下層配線17及びパッシベーション膜15との間に接着剤層19を介して下層配線17及びパッシベーション膜15に貼着されている。フィルム材20が下層配線17及びパッシベーション膜15を被覆する。
接着剤層19は、フィルム材20と下層配線17を接着するとともに、フィルム材20とパッシベーション膜15を接着する。また、接着剤層19は、パッシベーション膜15の縁の外側において、フィルム材20と半導体基板10を接着する。
【0020】
接着剤層19は、接着剤(例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤)が層状になって硬化したものである。
【0021】
フィルム材20は、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂を含む。例えば、フィルム材20は、繊維強化ポリイミド樹脂又は繊維強化エポキシ樹脂からなるか、又は、繊維強化されていないポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂からなる。なお、フィルム材20が、液晶ポリマーフィルム材であってもよい。
繊維強化ポリイミド樹脂とは、(1)フィラー充填ポリイミド樹脂(例えば、フィラーは、ガラスフィラー等の無機フィラー若しくはアラミド繊維フィラー等の有機フィラー又は無機フィラーと有機フィラーの混合物である。)、(2)ガラス布基材ポリイミド樹脂、(3)アラミド繊維布基材ポリイミド樹脂、(4)フィラー(例えば、ガラスフィラー等の無機フィラー若しくはアラミド繊維フィラー等の有機フィラー又は無機フィラーと有機フィラーの混合物)で充填されたガラス布基材ポリイミド樹脂、(5)フィラー(例えば、ガラスフィラー等の無機フィラー若しくはアラミド繊維フィラー等の有機フィラー又は無機フィラーと有機フィラーの混合物)で充填されたアラミド繊維布基材ポリイミド樹脂である。
繊維強化エポキシ樹脂とは、(1)フィラー充填エポキシ樹脂(例えば、フィラーは、ガラスフィラー等の無機フィラー若しくはアラミド繊維フィラー等の有機フィラー又は無機フィラーと有機フィラーの混合物である。)、(2)ガラス布基材エポキシ樹脂、(3)アラミド繊維布基材エポキシ樹脂、(4)フィラー(例えば、ガラスフィラー等の無機フィラー若しくはアラミド繊維フィラー等の有機フィラー又は無機フィラーと有機フィラーの混合物)で充填されたガラス布基材エポキシ樹脂、(5)フィラー(例えば、ガラスフィラー等の無機フィラー若しくはアラミド繊維フィラー等の有機フィラー又は無機フィラーと有機フィラーの混合物)で充填されたアラミド繊維布基材エポキシ樹脂である。
繊維強化されていないポリイミド樹脂とは、フィラー及び布の両方が含まれていないポリイミド樹脂である。
繊維強化されていないエポキシ樹脂とは、フィラー及び布の両方が含まれていないポリイミド樹脂である。
【0022】
フィルム材20は、パッシベーション膜15に接着される前に予め硬化されたものである。フィルム材20の厚さは、15μm以上であり、好ましくは30〜40μmである。
また、フィルム材20が繊維強化エポキシ樹脂又は繊維強化ポリイミド樹脂である場合、フィルム材20の熱膨張率は、半導体基板10を構成するシリコンの熱膨張率に近似した値であるか、又はそのシリコンと同じ値である。フィルム材20の熱膨張率は、含有する低熱膨張率のフィラーや布の含有率が調整されることによって所望の値に調整されている。例えば、フィルム材20の熱膨張率は、例えば6[ppm/℃]である。
【0023】
フィルム材20と接着剤層19のうち片方又は両方が遮光性を有することが好ましい。
【0024】
フィルム材20及び接着剤層19のうち下層配線17のランド18に重なる位置には、ビアホール21が形成されている。ランド18の一部又は全体がビアホール21内に位置している。
【0025】
上層配線22がフィルム材20上に形成されている。上層配線22の一部がビアホール21に埋められて、上層配線22が下層配線17に接続されている。上層配線22のうちフィルム材20上に形成された部分が、パッド(ランド)22aとなっている。
【0026】
上層配線22は、パターニングされた一の導体層(例えば、Cu層)からなるか、又はパターニングされて且つ積層された複数の導体層からなる。上層配線22が複数の導体層からなる場合、各層の導体金属の種類が同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
上層配線22のうちフィルム材20上に形成されたパッド22aにバンプ23が形成されている。具体的には、上層配線22のうちフィルム材20上に形成されたパッド22aの全体がバンプ23によって覆われるようにして、バンプ23が形成されている。バンプ23は、半田バンプ又は金バンプである。
なお、上層配線22のうちフィルム材20上に形成されたパッド22aの表面に金メッキ(又は、ニッケルメッキ及び金メッキ)が形成され、バンプ23がその金メッキを介して上層配線22に形成されていてもよい。上層配線22が銅からなり、バンプ23が半田からなる場合、金メッキ(又は、ニッケルメッキと金メッキの積層体)は、バンプ23のスズ(Sn)が上層配線22に拡散することを抑制する。
【0028】
上層配線22は、下層配線17と比較して、接着剤層19とフィルム材20の厚み分だけ半導体基板10から離間している。そのため、上層配線22及びバンプ23は、下層配線17と比較して、半導体基板10と電気的に干渉しにくい。
【0029】
半導体基板10の他方の面13上には、保護膜24が形成されている。保護膜24は、樹脂、金属又は金属錯体を含む。具体的には、保護膜24は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂その他の樹脂からなる。又は、保護膜24は、メッキ法により成長した金属膜(例えば、Cu膜)、蒸着法により成長した金属膜(例えば、Cu膜、Ni膜、Au膜)、若しくは、スパッタリング法により成長した金属膜(例えば、Cu膜、Ni膜、Au膜)である。又は、保護膜24は、金属錯体膜(例えば、Cu錯体膜、Ni錯体膜)である。又は、保護膜24は、導体(金属)ナノペーストを硬化したものである。又は、保護膜24は、薄膜の積層体(例えば、樹脂膜と金属膜の積層体)である。
【0030】
保護膜24は、遮光性を有することが望ましい。なお、保護膜24の主成分が樹脂のように透明である場合、染料又は顔料が保護膜24に含まれ、保護膜24が遮光性を有する。
【0031】
半導体装置1の製造方法について説明する。
図2に示された半導体ウエハ110から複数の半導体装置1を製造する。半導体ウエハ110は図1に示された半導体基板10よりも大きな半導体基板であって、複数の半導体基板10を半導体ウエハ110から取ることができる。半導体ウエハ110は、半導体ウエハ110の一方の面112に向かって見て格子状になった分割予定線102によって複数のチップ領域101に区分けされている。半導体ウエハ110の一方の面112には、チップ領域101ごとに集積回路が形成されている。なお、図1に示された断面図では、図示されたバンプ23の数を4としたが、図2〜図12に示された断面図では、一つのチップ領域101に図示されるバンプ23の数を2とすることで、図面を簡略化する。
【0032】
まず、図3に示すように、半導体ウエハ110の一方の面112上にパッシベーション膜15を成膜し、パッシベーション膜15をパターニングすることによってパッシベーション膜15をチップ領域101ごとに分断するとともに、パッシベーション膜15に複数の開口16を形成する。
【0033】
次に、図3に示すように、パッシベーション膜15上に下層配線17を形成する。下層配線17の形成は、アディティブ法(例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法)、サブトラクト法その他のパターニング方法によって行う。アディティブ法とは、パッシベーション膜15の一部をマスクで覆った状態で、パッシベーション膜15上に選択的に導体金属膜(下層配線17)を成長させる方法である。サブトラクト法は、パッシベーション膜15の上全体に導体金属膜を成長させた後に、その導体金属膜の一部をエッチング法等によって除去して、残留した導体金属膜を下層配線17とする方法である。
下層配線17の形成と同時に、アライメントマーク117も半導体ウエハ110の周辺部に形成する。
【0034】
これまでの工程では、半導体ウエハ110の他方の面113に厚い膜が形成されておらず、半導体ウエハ110の一方の面112に形成されたパッシベーション膜15がとても薄いから、半導体ウエハ110に反りが発生していない。
【0035】
次に、図4に示すように、半導体ウエハ110の他方の面113を研削することによって半導体ウエハ110を薄くする。この際、例えば、半導体ウエハ110の厚さを50μmにする。
半導体ウエハ110が反っていないから、半導体ウエハ110を汎用のグラインダによって容易に研削することができる。そのため、半導体ウエハ110を薄型化するのに特別なプロセスを必要とせず、低コストで半導体ウエハ110を薄型化することができる。
【0036】
次に、図5に示すように、フィルム材120及びフレーム130を準備する。
このフィルム材120は図1に示されたフィルム材20よりも大きく、複数のフィルム材20をフィルム材120から取ることができる。従って、フィルム材120の組成は、図1に示されたフィルム材20と同様である。フィルム材120は、B-stage状態(半硬化されたプリプレグ)又は液状のものではなく、硬化したものである。
フィルム材120は、一方の面120aと、その一方の面120aの反対側となる他方の面120bとを有するとともに、これら一方の面120a,他方の面120bの間に厚みを有する。
フィルム材120の一方の面120aには、接着剤層119が形成されている。具体的には、接着剤がフィルム材120の一方の面120aに塗布されることによって、又は半硬化状の接着剤がフィルム材120に貼着されることによって、接着剤層119が形成されている。
フィルム材120の他方の面120bには、導体金属膜122が成膜されている。なお、導体金属膜122が無くてもよい。
フィルム材120及び導体金属膜122の周縁部には、アライメント用開口121が形成され、アライメント用開口121が半導体ウエハ110のアライメントマーク117に対応する位置にある。アライメント用開口121は、アライメントマーク117に比べて十分に大きい口径を有しており、半導体ウエハ110に対するフィルム材120のアライメント精度は要求されないようになっている。
フレーム130は、枠状に形作られている。フレーム130は、金属製であることが好ましい。
【0037】
次に、フィルム材120の一方の面120aを半導体ウエハ110の一方の面112に対向させ、アライメントマーク117とアライメント用開口121の位置を合わせる(図5参照)。
【0038】
次に、図6に示すように、フィルム材120と半導体ウエハ110を互いに近づけ、半導体ウエハ110の一方の面112、パッシベーション膜15及び下層配線17とフィルム材120との間に接着剤層119を挟む。
また、フレーム130の内側に半導体ウエハ110を配置し、半導体ウエハ110をフレーム130によって囲う。そして、半導体ウエハ110の周辺においてフレーム130とフィルム材120との間に接着剤層119を挟む。なお、接着剤層119を半導体ウエハ110とフィルム材120の間に挟む工程と、接着剤層119をフレーム130とフィルム材120の間に挟む工程とを同時に行っても良いし、どちらかの工程を先に行ってもよい。
【0039】
次に、接着剤層119を硬化することによって、半導体ウエハ110の一方の面112、パッシベーション膜15及び下層配線17とフィルム材120が接着剤層119によって接着され、フレーム130とフィルム材120が接着剤層119によって接着される。接着剤層119を硬化する工程は、フレーム130と半導体ウエハ110の両方を硬化前の接着剤層119に貼着した後に行う。
【0040】
以上のように、接着剤層119は、半導体ウエハ110とフィルム材120を接着するばかりだけでなく、半導体ウエハ110の周辺においてフィルム材120とフレーム130を接着する。そのため、薄型化された半導体ウエハ110をフレーム130と一体的に取り扱うことが可能になる。つまり、後の工程において半導体ウエハ110をフレーム130ごと取り扱うことができる。また、フレーム130によって半導体ウエハ110が補強されるから、後の工程において半導体ウエハ110の搬送及び加工を容易に行なうことができるようになる。
また、接着剤層119がフィルム材120と比べても極めて薄いから、接着剤層119が硬化する際に接着剤層119が収縮しても、その収縮によって生じる応力が小さい。また、半導体ウエハ110の周辺では、剛性なフレーム130が接着剤層119を固定しているため、半導体ウエハ110の下面に位置する接着剤層119の収縮がフレーム130によって抑えられる。接着剤層119が収縮しにくいので、半導体ウエハ110の反りが抑えられる。ひいては、フレーム130自体の剛性によって半導体ウエハ110の反りが抑えられる。
接着剤層119は、フィルム材120と半導体ウエハ110との接着と、フィルム材120とフレーム130の接着も兼ねている。そのため、製造工程が効率的になる。
【0041】
次に、図7に示すように、レーザービア加工を行う。つまり、レーザー光(例えば、CO2レーザー光又はUVレーザー光)を導体金属膜122及びフィルム材120に向けて照射することによって、導体金属膜122、フィルム材120及び接着剤層119に複数のビアホール21を形成し、ビアホール21を通じて下層配線17を部分的に露出する。レーザー光を照射する位置は下層配線17のランド18の位置であり、下層配線17のランド18がビアホール21を通じて露出される。レーザー光を照射する位置は、アライメントマーク117の位置を基準にして決める。このビアホール21をレーザービア加工により細く形成する。
フィルム材120にビアホール21を形成する際には、CO2レーザー光によるレーザービア加工が好ましい。
フィルム材120にビアホール21を形成する際には、下層配線17の一部にもレーザー光が当たる。ところが、下層配線17が1〜12μm程度の充分な厚みを有しているので、下層配線17がレーザービア加工による影響を受けない。
なお、レーザービア加工ではなく、フォトリソグラフィー法・エッチング法によってビアホール21を形成してもよい。
【0042】
次に、無電解メッキ法によってビアホール21内に薄く銅箔(シード層)を形成し、その銅箔を導体金属膜122に繋げた後、その銅箔及び導体金属膜122を電極として電解メッキ法を行う。このような工程を経ることによって、図8に示すように、厚膜金属層122aをビアホール21内及びフィルム材120の他方の面120b上に成長させる。なお、無電解メッキ法による銅箔(シード層)の形成工程を省略してもよい。
フィルム材120の他方の面120bに導体金属膜122が形成されていなければ、無電解メッキ工程の前に気相成長法(例えば、スパッタリング法)によって薄い金属膜(例えば、チタン膜)をビアホール21内及びフィルム材120の他方の面120bに成膜することが好ましい。フィルム材120の他方の面120bに導体金属膜122が予め形成されていれば、気相成長法による金属膜の成膜工程を確実に行わなくて済むので、製造工程を簡略化することができる。気相成長法は、真空空間内で行う必要があるので、製造工程のコストアップの要因になってしまう。
半導体ウエハ110とフレーム130が一体的になっているから、電解メッキ用の電極によって導体金属膜122(又は銅箔)及びフレーム130を把持することができるので、電解メッキ用電極を半導体ウエハ110に接触せずに、電解メッキ工程を行うことができる。そのため、半導体ウエハ110の静電破壊等を防止することができる。
ビアホール21をレーザービア加工により形成したのであれば、ビアホール21を細くすることができるので、ビアホール21内に埋まる厚膜金属層122aの一部を細くすることが可能になる。
【0043】
次に、図9に示すように、厚膜金属層122aを形状加工することによって厚膜金属層122aから上層配線22を形成する。具体的には、厚膜金属層122a上にレジストを塗布し、そのレジストの露光・現像をした後、厚膜金属層122aをエッチングによって部分的に除去する。厚膜金属層122aのうち残留した部分が、上層配線22である。
【0044】
なお、図8、図9に示すように、サブトラクト法によって上層配線22を形成したが、アディティブ法(例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法)によって上層配線22を形成してもよい。
【0045】
上層配線22の形成後、上層配線22の表面に金メッキ処理(又は、ニッケルメッキ処理及び金メッキ処理)を施す。この処理は省略してもよい。
【0046】
次に、図10に示すように、保護膜124を半導体ウエハ110の他方の面113上に形成する。なお、保護膜124の形成工程は、半導体ウエハ110の他方の面113の研削後であれば、何時行ってもよい。例えば、半導体ウエハ110及びフレーム130をフィルム材120に接着する工程(図6参照)と、保護膜124の形成工程を同時に行ってもよい。
【0047】
以下、保護膜124の形成方法の具体例について説明する。
【0048】
[例1] 気相成長法(例えば、スパッタリング法、蒸着法)によって半導体ウエハ110の他方の面113に保護膜124を成長させる。成膜された保護膜124は、金属単体膜、金属酸化物膜その他の金属膜である。
【0049】
[例2] 上記例1のように金属膜を成膜した後、更に無電解メッキ法若しくは電解メッキ法又はこれらの両方によって金属膜の上に別の金属膜を成長させる。そのようにして積層された金属膜が保護膜124である。
【0050】
[例3] スピンコート法、印刷法、ディスペンサ法、液滴吐出法(インクジェット法)その他の塗布法によって銅錯体溶液、ニッケル錯体溶液その他の金属錯体溶液を半導体ウエハ110の他方の面113に塗布した後、塗布した金属錯体溶液を乾燥せずに又は乾燥して、塗布した金属錯体溶液を焼結する。成膜された金属錯体膜が保護膜124である。
【0051】
[例4] スピンコート法、印刷法、ディスペンサ法、液滴吐出法(インクジェット法)その他の塗布法によって液体樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂)を半導体ウエハ110の他方の面113に塗布して、その液体樹脂を硬化する。硬化した樹脂が保護膜124である。
【0052】
[例5] 硬化された樹脂フィルムを半導体ウエハ110の他方の面113に貼着することで、その樹脂フィルムを保護膜124にする。その際、樹脂フィルムと半導体ウエハ110の他方の面113の間に接着剤を介在してもよいし、樹脂フィルムを半導体ウエハ110の他方の面113に熱溶着してもよい。樹脂フィルムの素材は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂である。なお、この例5の場合、フィルム材120の貼着工程(図5参照)と同時に、樹脂フィルム(保護膜124)の貼着工程も行うことができる。
【0053】
[例6] 半硬化されたプリプレグを半導体ウエハ110の他方の面113に貼着して、そのプリプレグを硬化することで、そのプリプレグが保護膜124になる。なお、この例6の場合、フィルム材120の貼着工程(図5参照)と同時に、プリプレグの貼着工程も行うことができる。
【0054】
[例7] 樹脂膜と金属膜の積層フィルムを用いる。この際、積層フィルムの樹脂膜を半導体ウエハ110の他方の面113に貼着することで、積層フィルムを保護膜124にする。その際、積層フィルムの樹脂膜と半導体ウエハ110の他方の面113の間に接着剤を介在してもよいし、積層フィルムの樹脂膜を半導体ウエハ110の他方の面113に熱溶着してもよい。樹脂フィルムの素材は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂である。なお、例7の場合、フィルム材120の貼着工程(図5参照)と同時に、積層フィルムの貼着工程を行える。
【0055】
[例8] 導体ナノペーストを半導体ウエハ110の他方の面113に塗布して、塗布した導体ナノペーストを硬化する。導体ナノペーストが硬化されると、その導体ナノペーストが保護膜124になる。
【0056】
半導体ウエハ110がフレーム130によって囲われ、半導体ウエハ110とフレーム130が一体となっているから、上述のように保護膜124を形成する際には、半導体ウエハ110に反りが発生しにくい。
【0057】
保護膜124の形成後、図11に示すように、上層配線22上にバンプ23を形成する。
【0058】
次に、図12に示すように、ダイサーを用いて、半導体ウエハ110、フィルム材120、接着剤層119及び保護膜124を格子状の分割予定線102に沿って切断するとともに、フレーム130を分離する。これにより、半導体ウエハ110、フィルム材120、接着剤層119及び保護膜124等の積層体を複数の半導体装置1に細分割する。半導体ウエハ110を分割して得られた個片が半導体基板10であり、フィルム材120を分割して得られた個片がフィルム材20であり、接着剤層119を分割して得られた個片が接着剤層19であり、保護膜124を分割して得られた個片が保護膜24である。
【0059】
なお、完成した半導体装置1のみならず、上記各工程における中間生産物も半導体装置である。集積回路が焼き付けられた半導体ウエハ110を材料(原材料)として用いたためである。
【0060】
本実施の形態によれば、以下のような効果が生じる。
【0061】
(1) 上層配線22は、下層配線17と比較しても、半導体基板10からより離れている。そのため、上層配線22は、下層配線17よりも半導体基板10と電気的に干渉しにくい。
【0062】
(2) 接続パッド14とバンプ23を繋ぐ電流経路が、下層配線17と上層配線22の組み合わせである。そのため、パッシベーション膜15のうち下層配線17に重なってない領域を広くすることができる。その領域は、他の配線や電気素子を設けるためのスペースとして利用することが可能になる。
【0063】
(3) 接着剤層119によってフィルム材120と半導体ウエハ110を接着するから(図5、図6参照)、半導体ウエハ110の反りの原因となる接着剤層119を薄くすることができるとともに、半導体ウエハ110の反りの原因とならないフィルム材120を厚くすることができる。そのため、半導体ウエハ110の反りを防止しつつ、フィルム材120の厚みによって封止性能の向上を図れる。
【0064】
(4) 保護膜124を形成する工程(図10参照)の前に、半導体ウエハ110の他方の面113を研削する工程(図4参照)を行った。更に、フィルム材120を半導体ウエハ110に接着する工程(図5、図6参照)よりも前に、半導体ウエハ110の他方の面113を研削する工程(図4参照)を行った。つまり、半導体ウエハ110に反りが生じない段階で、半導体ウエハ110の他方の面113を研削した。そのため、半導体ウエハ110の研削が容易であり、半導体ウエハ110を均一の厚さにすることができる。更に、半導体ウエハ110をより薄く研削することができ、出来上がった半導体装置1の薄型化を図ることができる。
【0065】
(5) 予め硬化したフィルム材120を半導体ウエハ110に接着したから、フィルム材20,120による封止効果が高い。つまり、フィルム材20,120は、液体樹脂の塗布により形成された封止層よりも封止性に優れている。
【0066】
(6) 半導体ウエハ110を薄くした状態で、接着剤層119を硬化したから(図6参照)、接着剤層119の硬化は半導体ウエハ110の反りの大きな要因となる。しかし、半導体ウエハ110がフレーム130やフィルム材120によって補強されているから、接着剤層119が硬化しても、半導体ウエハ110に大きな反りが発生しない。
【0067】
(7) 半導体ウエハ110を薄くした状態で、保護膜124を形成したから(図10参照)、保護膜124の形成は半導体ウエハ110の反りの大きな要因となる。しかし、半導体ウエハ110がフレーム130によって補強されているから、保護膜124が形成されても、半導体ウエハ110に大きな反りが発生しない。
【0068】
(8) 半導体ウエハ110がフィルム材120に接着され、フレーム130がフィルム材120に接着されているから、半導体ウエハ110をフレーム130ごと取り扱うことができる(図6〜図11参照)。そのため、半導体ウエハ110の搬送・加工を容易に行なうことができ、半導体装置1を容易に製造することができる。
【0069】
(9) 半導体基板10に接着されたフィルム材20の熱膨張率が半導体基板10の熱膨張率に等しいか、又は近似する。そのため、半導体装置1の使用時に半導体装置1の温度が変化しても、半導体基板10とフィルム材20の境界部分に大きな応力が発生しない。従って、半導体基板10からフィルム材20が剥離するのを防止することができる。
【0070】
(10) 半導体基板10とフィルム材20の熱膨張率が等しいか、近似しているから、半導体装置1の温度が変化しても、半導体基板10とフィルム材20が大きく反ることはない。そのため、回路基板に接合されたバンプ23に大きな応力が発生しない。従って、バンプ23が損傷しない。
【0071】
(11) 半導体基板10の他方の面13に保護膜24が形成されているから、衝突等により半導体基板10の角部等に欠けが発生することを防止することができる。
【0072】
(12) 保護膜24によって半導体基板10が遮光されるから、半導体基板10に焼き付けられた集積回路が誤動作しない。
【0073】
(13) 保護膜24が金属材料のように導電性を有すれば、電磁波が保護膜24によって遮断され、半導体基板10に焼き付けられた集積回路が誤動作しない。
【0074】
(14) 保護膜24が金属材料のように高熱伝導率を有すれば、保護膜24がヒートスプレッダとして機能し、放熱効果が向上する。
【0075】
〔第2実施形態〕
図13は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置1Aの断面図である。第2実施形態と第1実施形態は、互いに対応する部分に同一の符号が付されている。第1実施形態と第2実施形態の相違点について説明し、一致点についての説明は割愛する。
【0076】
第1実施形態では、図1に示すように、上層配線22のうちフィルム材20上に形成された部分がランド22aのみであったが、第2実施形態では、図13に示すように、上層配線22のうちフィルム材20上に形成された部分はランド22aと、ランド22aからビアホール21まで繋がった線状部22bとを有する。バンプ23は上層配線22のうちランド上に形成されている。
【0077】
また、第1実施形態では、図1に示すようにフィルム材20が露出していたのに対し、第2実施形態では、図13に示すようにフィルム材20がオーバーコート膜25によって覆われている。オーバーコート膜25は、感光性樹脂を硬化したものである。オーバーコート膜25は、ソルダ−レジスト膜である。つまり、バンプ23が不要な箇所に付着することを防止する。また、オーバーコート膜25は保護膜であり、上層配線22のうちフィルム材20上に形成された、ランド22aからビアホール21まで繋がった線状部22bがオーバーコート膜25によって覆われている。オーバーコート膜25のうち上層配線22のランド22aに重なる位置には、開口26が形成されている。バンプ23が開口26内において上層配線22のランド22a上に形成されている。
【0078】
以上に説明したことを除いて、第2実施形態の半導体装置1Aと第1実施形態の半導体装置1は、互いに対応する部分が同様に構成されている。
【0079】
半導体装置1Aの製造方法について説明する。
第2実施形態に係る半導体装置1Aの製造方法と第1実施形態に係る半導体装置1の製造方法は、パッシベーション膜15をパターニングする工程から上層配線22をパターニングする工程までが同じである(図1〜図9参照)。但し、第2実施形態では、上層配線22をパターニングするに際して、ビアホール21に上層配線22の一部を埋めるようにするとともに、ランド22aとランド22aからビアホール21まで繋がった線状部22bとをフィルム材20上に形成する。
【0080】
上層配線22の形成後、スピンコート法、印刷法、ディスペンサ法、液滴吐出法(インクジェット法)その他の塗布法によって感光性樹脂をフィルム材20及び上層配線22に塗布し、その感光性樹脂の露光・現像をすることによって、オーバーコート膜25及び開口26をパターニングする。
その後、第1実施形態の場合と同様に、保護膜124の形成工程(図10参照)、バンプ23の形成工程(図11参照)及び細分割工程(図12参照)をこれらの順に行う。
【0081】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、更に以下のような効果も奏する。
下層配線17と上層配線22が別層であり、上層配線22のうちフィルム材20上に形成された部分22aが線状部を有するから、下層配線17と上層配線22を立体交差することもできる。そのため、配線レイアウトの自由度が向上するとともに、バンプ23の配置位置の自由度が向上する。
【0082】
〔第3実施形態〕
図14は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置1Bの断面図である。第3実施形態と第1実施形態は、互いに対応する部分に同一の符号が付されている。第1実施形態と第3実施形態の相違点について説明し、一致点についての説明は割愛する。
【0083】
第3実施形態では、半導体基板10の周側面11に第二保護膜27が形成され、半導体基板10の周側面11が第二保護膜27によって覆われている。第二保護膜27が保護膜24に繋がっており、第二保護膜27と保護膜24が一体形成されている。また、第二保護膜27の組成物と保護膜24の組成物は同じである。なお、第二保護膜27の組成物と保護膜24の組成物が異なっていて、第二保護膜27と保護膜24が一体形成されていなくてもよい。
【0084】
また、第二保護膜27は接着剤層19の外縁まで至っており、接着剤層19の外縁が第二保護膜27の一部によって覆われている。
【0085】
以上に説明したことを除いて、第3実施形態の半導体装置1Bと第1実施形態の半導体装置1は、互いに対応する部分が同様に構成されている。
【0086】
半導体装置1Bの製造方法について説明する。
第3実施形態に係る半導体装置1Bの製造方法と第1実施形態に係る半導体装置1の製造方法は、パッシベーション膜15をパターニングする工程から上層配線22をパターニングする工程までが同じである(図1〜図9参照)。
【0087】
上層配線22のパターニング後、図15に示すように、半導体ウエハ110の他方の面113から半導体ウエハ110を分割予定線102に沿ってハーフダイシングすることによって、半導体ウエハ110の他方の面113に格子状の溝111を形成する。ダイシングに際しては、半導体ウエハ110の他方の面113からフィルム材120の途中(又は接着剤層119)まで切り込むが、フィルム材120の他方の面120bまでは切り込まない。そのため、ダイシングの切り込み深さ(溝111の深さ)は半導体ウエハ110の一方の面112から他方の面113までの厚みよりも大きいが、半導体ウエハ110の他方の面113からフィルム材120の他方の面120bまでの厚みより小さい。このようなハーフダイニング処理によって、半導体ウエハ110は複数の半導体基板10に細分割されるが、フィルム材120は細分割されない。
【0088】
次に、図16に示すように、半導体ウエハ110の他方の面113(半導体基板10の他方の面13)に保護膜124を形成するとともに、溝111に埋込保護材127を埋め込む。又は、図17に示すように、半導体ウエハ110の他方の面113(半導体基板10の他方の面13)に保護膜24を形成するとともに、溝111の内壁面(半導体基板10の周側面11)に第二保護膜27を形成する。図17に示す場合には、溝111内が完全に埋められていないから、保護膜24が半導体基板10ごとに分断されている。また、溝111の底において隣同士の第二保護膜27が繋がっており、第二保護膜27と保護膜24も繋がっている。
【0089】
図16又は図17に示す工程には、第1実施形態で説明した[例1]〜[例8]を適用することができる。以下、詳細に説明する。
【0090】
[例1]のように気相成長法によって金属膜(保護膜24)を成膜した場合には、図17に示すように、第二保護膜27が溝111の内壁面(半導体基板10の周側面11)に成膜される。
【0091】
[例2]のように無電解メッキ法を行った場合には、図17に示すように、溝111の内壁面(半導体基板10の周側面11)に成膜された第二保護膜27が金属膜積層体である。[例2]のように電界メッキ法を行った場合には、図16に示すように金属メッキの埋込保護材127が溝111に埋められるか、又は図17に示すように金属膜積層体である第二保護膜27が溝111の内壁面(半導体基板10の周側面11)に成膜される。
【0092】
[例3]のように金属錯体溶液を用いた場合には、塗布された金属錯体溶液が溝111に充填され、溝111内の金属錯体溶液が固まって、図16に示す埋込保護材127(図16参照)になる。
【0093】
[例4]のように液体樹脂を塗布した場合には、塗布した液体樹脂が溝111に充填され、溝111に充填された樹脂が硬化して、図16に示す埋込保護材127になる。溝111に液体樹脂が充分に充填されて、溝111内にボイドが形成されないように、真空雰囲気で液体樹脂の塗布を行うことが好ましい。
【0094】
[例5]のように硬化された樹脂フィルムを接着剤によって半導体ウエハ110の他方の面113に接着した場合には、接着剤の一部が溝111に充填され、硬化した接着剤が図16に示す埋込保護材127になる。[例7]のように積層フィルムを接着剤で接着する場合も同様である。[例5]のように硬化された樹脂フィルムを半導体ウエハ110の他方の面113に熱溶着した場合には、溶けた樹脂の一部が溝111に充填され、その樹脂が硬化して図16に示す埋込保護材127になる。[例7]のように積層フィルムの樹脂膜を熱溶着した場合も同様である。溶けた樹脂又は接着剤が溝111に充分に充填されて、溝111内にボイドが形成されないように、真空雰囲気で樹脂フィルム又は積層フィルムの貼着を行うことが好ましい。また、樹脂フィルム又は積層フィルムを貼着する際に、樹脂フィルム又は積層フィルムを圧縮すると、溶けた樹脂又は接着剤が溝111に充分に充填される。
【0095】
[例6]のようにプリプレグを半導体ウエハ110の他方の面113に貼着した場合には、プリプレグの一部が溝111に充填され、それが硬化することで、図16に示す埋込保護材127になる。プリプレグの貼着は真空雰囲気で行うことが好ましい。また、プリプレグの貼着する際に、プリプレグを圧縮することが好ましい。
【0096】
[例8]のように導体ナノペーストを半導体ウエハ110の他方の面113に塗布する場合には、導体ナノペーストが溝111に充填され、それが硬化することで、図16に示す埋込保護材127になる。この場合も、真空雰囲気で導体ナノペーストの塗布を行うことが好ましい。
【0097】
保護膜124又は保護膜24の形成後、図18に示すように、上層配線22上にバンプ23を形成する。
【0098】
次に、細分割処理を行う。つまり、溝111に埋込保護材127を埋め込んだ場合には(図16参照)、図19に示すように、分割予定線102及び溝111に沿って保護膜124、埋込保護材127、接着剤層119及びフィルム材120をダイシングし、複数の半導体装置1Bに細分割する。この際のダイシングストリート幅(切り込み幅)を溝111の幅よりも狭くし、溝111の中心線に沿って切断するから、埋込保護材127が第二保護膜27に分割され、保護膜124が保護膜24に分割される。保護膜124及び埋込保護材127が樹脂であれば、保護膜124及び埋込保護材127の切断に用いるダイシングブレードを交換せずに、そのダイシングブレードで接着剤層119及びフィルム材120を切断する。
【0099】
保護膜124及び埋込保護材127が金属材料であれば、保護膜124及び埋込保護材127の切断に用いるダイシングブレードを金属材料切断用のダイシングブレードとし、接着剤層119及びフィルム材120の切断に用いるダイシングブレードを樹脂材料切断用のダイシングブレードとする。そのため、製造工程の削減及びダイシングの容易化の観点からすると、保護膜124及び埋込保護材127が樹脂材料であることが好ましい。
【0100】
一方、溝111の内壁面(半導体基板10の周側面11)に第二保護膜27を成膜した場合には(図17参照)、分割予定線102及び溝111に沿って溝111の底から第二保護膜27、接着剤層119及びフィルム材120をダイシングし、複数の半導体装置1Bに細分割する。この際のダイシングストリート幅(切り込み幅)を埋められていない溝111の幅よりも狭くし、溝111の中心線に沿って切断するから、半導体基板10の周側面11に形成された第二保護膜27がダイシングブレードによって除去されることはない。
【0101】
なお、上述のハーフダイシング工程において接着剤層119が複数の接着剤層19に分断されていれば、この細分割工程では接着剤層19は切断されない。
【0102】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、更に以下のような効果も奏する。
ハーフダイシングによって溝111を形成する際に、フレーム130をダイシングフレームとして利用することができる。そのため、半導体ウエハ110の搬送及び加工を容易に行なえるとともに、製造コストの削減を図ることができる。
半導体基板10の周側面11に第二保護膜27が形成されているから、衝突等により半導体基板10の角部等に欠けが発生することを防止することができる。
第二保護膜27によって半導体基板10が遮光されるから、半導体基板10に焼き付けられた集積回路が誤動作しない。
第二保護膜27が金属材料のように導電性を有すれば、電磁波が第二保護膜27によって遮断され、半導体基板10に焼き付けられた集積回路が誤動作しない。
第二保護膜27が金属材料のように高熱伝導率を有すれば、第二保護膜27がヒートスプレッダとして機能し、放熱効果が向上する。
保護膜24と第二保護膜27が繋がっているから、半導体基板10の他方の面13の外縁13a及びその周辺も確実に保護される。
【0103】
〔第4実施形態〕
図20は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置1Cの断面図である。第4実施形態と第3実施形態は、互いに対応する部分に同一の符号が付されている。第4実施形態と第3実施形態の相違点について説明し、一致点についての説明は割愛する。
【0104】
第3実施形態では、図14に示すように、上層配線22のうちフィルム材20上に形成された部分がランド22aのみであったが、第4実施形態では、図20に示すように、上層配線22のうちフィルム材20上に形成された部分はランド22aと、ランド22aからビアホール21まで繋がった線状部22bとを有する。バンプ23は上層配線22のうちランド22a上に形成されている。
【0105】
また、第3実施形態では、図1に示すようにフィルム材20が露出していたのに対し、第4実施形態では、図20に示すようにフィルム材20がオーバーコート膜25によって覆われている。オーバーコート膜25は、感光性樹脂を硬化したものである。オーバーコート膜25は、ソルダ−レジスト膜である。つまり、バンプ23が不要な箇所に付着することを防止する。また、オーバーコート膜25は保護膜であり、上層配線22のうちフィルム材20上に形成された、ランド22aからビアホール21まで繋がった線状部22bがオーバーコート膜25によって覆われている。オーバーコート膜25のうち上層配線22のランド22aに重なる位置には、開口26が形成されている。バンプ23が開口26内において上層配線22のランド22a上に形成されている。
【0106】
以上に説明したことを除いて、第4実施形態の半導体装置1Cと第1実施形態の半導体装置1Bは、互いに対応する部分が同様に構成されている。
【0107】
半導体装置1Cの製造方法について説明する。
第4実施形態に係る半導体装置1Cの製造方法と第3実施形態に係る半導体装置1Bの製造方法は、パッシベーション膜15をパターニングする工程から上層配線22をパターニングする工程までが同じである(図1〜図9参照)。但し、第4実施形態では、上層配線22をパターニングするに際して、ビアホール21に上層配線22の一部を埋めるようにするとともに、ランド22aとランド22aからビアホール21まで繋がった線状部とをフィルム材20上に形成する。
【0108】
上層配線22の形成後、スピンコート法、印刷法、ディスペンサ法、液滴吐出法(インクジェット法)その他の塗布法によって感光性樹脂をフィルム材20及び上層配線22に塗布し、その感光性樹脂の露光・現像をすることによって、オーバーコート膜25及び開口26をパターニングする。
その後、第3実施形態の場合と同様に、溝111を切り込む工程(図15参照)、保護膜124と埋込保護材127又は保護膜24と第二保護膜27の形成工程(図16又は図17参照)、バンプ23の形成工程(図18参照)及び細分割工程(図19参照)をこれらの順に行う。
【0109】
第4実施形態によれば、下層配線17と上層配線22が別層であるから、下層配線17と上層配線22を立体交差することもできる。そのため、配線レイアウトの自由度が向上するとともに、バンプ23の配置位置の自由度が向上する。
【0110】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0111】
〔付記〕
<請求項1>
一方の面に下層配線が形成された半導体基板の前記一方の面と、フィルム材と、を接着剤層を介して接着し、
前記半導体基板の他方の面に保護膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
<請求項2>
前記フィルム材と前記半導体基板の接着前に前記半導体基板の前記他方の面を研削して、前記半導体基板を薄型化し、
前記保護膜の形成後に、前記フィルム材及び前記接着剤層にビアホールを開けて前記下層配線の一部を露出し、前記フィルム材上及び前記ビアホール内に上層配線を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
<請求項3>
前記接着剤層の硬化前に前記半導体基板を囲うフレームと前記フィルム材との間に前記接着剤層を挟んだ後、前記接着剤層を硬化することによって前記半導体基板の前記一方の面及び前記下層配線と前記フィルム材を前記接着剤層によって接着するとともに、前記フィルム材と前記フレームを前記接着剤層によって接着することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
<請求項4>
前記保護膜の形成前に、前記半導体基板の前記他方の面から前記一方の面まで至って前記フィルム材の表面にまで至らない格子状の溝を形成し、
前記溝の形成後に、前記保護膜を前記溝によって分断するように前記保護膜を前記半導体基板の前記他方の面に形成するとともに、前記溝の内壁面に第二保護膜を成膜し、
前記フィルム材及び前記第二保護膜を前記溝の中心線に沿って切断することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
<請求項5>
一方の面に下層配線が設けられた半導体基板と、
フィルム材と、
前記半導体基板の前記一方の面と、前記フィルム材と、を接着する接着剤層と、
前記半導体基板の前記他方の面に設けられた保護膜と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
<請求項6>
前記下層配線はランドを有しており、
前記接着層は前記ランド上を除く前記下層配線上に設けられており、
前記ランド上及び前記フィルム材上に上層配線が設けられており、
前記保護膜は、樹脂、金属又は金属錯体を含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
<請求項7>
第二保護膜を更に備え、
前記半導体基板が、前記前記一方の面の外縁と前記他方の面の外縁とを結ぶ周側面を更に有し、
前記第二保護膜が前記半導体基板の前記周側面に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0112】
1,1A,1B,1C 半導体装置
10 半導体基板
11 周側面
12 一方の面
13 他方の面
17 下層配線
19 接着剤層
20 フィルム材
21 ビアホール
24 保護膜
27 第二保護膜
110 半導体ウエハ(半導体基板)
111 溝
119 接着剤層
120 フィルム材
124 保護膜
127 埋込保護材
130 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に下層配線が形成された半導体基板の前記一方の面と、フィルム材と、を接着剤層を介して接着し、
前記半導体基板の他方の面に保護膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記フィルム材と前記半導体基板の接着前に前記半導体基板の前記他方の面を研削して、前記半導体基板を薄型化し、
前記保護膜の形成後に、前記フィルム材及び前記接着剤層にビアホールを開けて前記下層配線の一部を露出し、前記フィルム材上及び前記ビアホール内に上層配線を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤層の硬化前に前記半導体基板を囲うフレームと前記フィルム材との間に前記接着剤層を挟んだ後、前記接着剤層を硬化することによって前記半導体基板の前記一方の面及び前記下層配線と前記フィルム材を前記接着剤層によって接着するとともに、前記フィルム材と前記フレームを前記接着剤層によって接着することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記保護膜の形成前に、前記半導体基板の前記他方の面から前記一方の面まで至って前記フィルム材の表面にまで至らない格子状の溝を形成し、
前記溝の形成後に、前記保護膜を前記溝によって分断するように前記保護膜を前記半導体基板の前記他方の面に形成するとともに、前記溝の内壁面に第二保護膜を成膜し、
前記フィルム材及び前記第二保護膜を前記溝の中心線に沿って切断することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
一方の面に下層配線が設けられた半導体基板と、
フィルム材と、
前記半導体基板の前記一方の面と、前記フィルム材と、を接着する接着剤層と、
前記半導体基板の前記他方の面に設けられた保護膜と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記下層配線はランドを有しており、
前記接着層は前記ランド上を除く前記下層配線上に設けられており、
前記ランド上及び前記フィルム材上に上層配線が設けられており、
前記保護膜は、樹脂、金属又は金属錯体を含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
第二保護膜を更に備え、
前記半導体基板が、前記前記一方の面の外縁と前記他方の面の外縁とを結ぶ周側面を更に有し、
前記第二保護膜が前記半導体基板の前記周側面に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−26310(P2013−26310A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157594(P2011−157594)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(311014314)株式会社テラミクロス (42)