説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 従来のOMPAC型BGAパッケージよりも更なる多ピン化、狭ピッチ化、電気特性の向上、放熱特性の向上、および実装性の向上を実現できるBGAパッケ−ジを有する半導体装置を得る。
【解決手段】 BGA(Ball Grid Array)パッケ−ジの半導体装置において、基板の中央部に形成された凹部内に半導体チップが収納され、前記基板の半導体チップの上面側に複数のボール状外部電極が形成され、前記凹部は蓋で塞がれており、さらに前記基板には半導体チップの下面側にサーマルビアが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は中空封止型BGA(Ball Grid Array)パッケ−ジの半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のBGAはOMPAC(Over Molded Pad ArrayCarrier)と呼ばれるパッケ−ジ構造が主流であった。以下、図16を用いてOMPACの構造を説明する。例えば、図16はOMPACの構造を示す断面図である。プリント基板161の主表面に形成されたダイパッド166上に半導体チップ9をダイボンドし、その半導体チップ9のパッドとプリント基板161のワイヤボンドフィンガ163とを金属ワイヤ1610により結線後、プリント基板161の主表面をモ−ルド樹脂16により封止する。プリント基板161下面には、外部電極14となる半田ボ−ルがアレイ状に並んでいる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のように構成されたOMPACは、構成部材の大部分がモ−ルド樹脂16とプリント基板161であるため、モ−ルド樹脂16とプリント基板161との二重構造であるという面を有している。そして、このような二重構造では、製造工程中にモ−ルド樹脂16とプリント基板161の熱膨張係数の差やモ−ルド樹脂16の硬化収縮によるパッケ−ジの反りが発生することがある。この反りは、BGAの場合、外部電極平坦度に大きく影響する。外部電極平坦度は基板実装性能に大きく関わる指標であり、小さいほど良いとされる。OMPACの場合は、外形サイズ27mm四方で外部電極平坦度200μm程度であり、外部電極平坦度が大きいため、外形サイズの更なる大型化は外部電極平坦度をさらに悪化させ、実装不良を引き起こすなど実使用上問題となる恐れがある。
【0004】またOMPACに用いられるプリント基板161は一般に二層基板が主流である。二層基板は絶縁基板の両面に銅箔などよりなる配線を形成したものであり、OMPACにおいては基板両面の配線は基板の周辺まで引き回され、その基板周辺に形成されたスル−ホ−ル164において基板両面の配線が一対一に結ばれている。よって、半導体チップ9のパッドから外部電極14までの配線長が長くなり、そのため、従来のOMPAC構造では、半導体装置の使用において、電気信号の伝達が遅くなり電気特性上不利になるという問題があった。
【0005】他方、外部電極形成面において外部電極間に配線を通す必要があるが、外部電極間に通せる配線数にはプリント基板加工上限界がある。そのため、従来のOMPAC構造では、外部電極数が300ピンを超える多ピン化、又は電極ピッチが1.5mm未満の狭ピッチ化は、製造上困難であるという問題があった。
【0006】また放熱性の観点からは、OMPACは図15のような構造をしているために、半導体チップ9の電気的動作によって発生する熱をパッケージ外部へ逃がす主な経路は熱伝導率の低いモールド樹脂16やプリント基板161を通すことになる。そのため、従来のOMPAC構造では、放熱性の更なる向上には限界があるという問題があった。
【0007】以上のように、従来のOMPAC型BGAの半導体装置では、その構造から、BGAパッケ−ジの更なる大型化、多ピン化、狭ピッチ化、電気特性の向上、放熱特性の向上、および実装性の向上には限界があるという問題があった。
【0008】この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、従来のOMPAC型BGAパッケージを有する半導体装置よりも更なる多ピン化、狭ピッチ化、電気特性の向上、放熱特性の向上、および実装性の向上を実現できるBGAパッケ−ジを有する半導体装置を得ることを目的としており、さらにこのような半導体装置を製造するための製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による半導体装置では、BGA(Ball Grid Array)パッケ−ジの半導体装置において、基板の中央部に形成された凹部内に半導体チップが収納され、前記基板の半導体チップの上面側に複数のボール状外部電極が形成され、前記凹部は蓋で塞がれており、さらに前記基板の半導体チップの下面側の部分にはサーマルビアが形成されている、ことを特徴としている。
【0010】また本発明において、前記サーマルビアは銅のスルーホールめっきにより形成されているのがよい。
【0011】また本発明において、前記サーマルビアは、その内部が樹脂で充填されているのがよい。
【0012】また本発明において、前記基板に上下二段のワイヤボンドフィンガが形成されており、このワイヤボンドフィンガと半導体チップとの接続は、上段のワイヤボンドフィンガと半導体チップとの間では正ボンドで、また下段のワイヤボンドフィンガと半導体チップとの間では逆ボンドで、それぞれ交互に行われているのがよい。
【0013】また本発明において、前記蓋の面積が300mm2以上のとき、前記蓋はセラミックで形成されているのがよい。
【0014】また本発明において、前記基板表面の外部電極形成部の表面は、1μm以上の厚さのニッケルの電解めっき層とその上に形成される0.5μm未満の厚さの金の電解めっき層とから形成されているのがよい。
【0015】また本発明において、前記基板には前記外部電極と対応するスルーホールが形成されており、このスルーホールは、その内壁粗さの最大高さが20μm以下に形成されており、且つその内壁の銅めっき層が20μm以上の厚さで形成されているのがよい。
【0016】また本発明において、前記基板に形成されたスルーホールは、その内部が樹脂又は金属で充填されているのがよい。
【0017】また本発明において、前記基板に形成されたスルーホールは、少なくともその端面の金属部分がソルダーレジストにより覆われているのがよい。
【0018】また本発明による半導体装置の製造方法は、前記上下二段のワイヤボンドフィンガと接続される半導体チップのパッドは千鳥パッド配置とされており、前記下段ワイヤボンドフィンガから半導体チップの外側パッドへ向かって繰り返しボンディングする工程と、その後、半導体チップの内側パッドから前記上段ワイヤボンドフィンガへ向かって繰り返しボンディングする工程とを含む、ことを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】この発明による半導体装置では、多層基板の凹部を蓋で塞ぐことによって中空封止型BGAパッケージを実現している。基板と半導体チップとの接続にアルミ線を用いた場合、樹脂封止は信頼性上好ましくない。なぜなら樹脂中の酸が水分の浸入によりアルミ線を腐食させるからである。本発明では、中空にて半導体チップを封止することによって、このような問題は解消される。また本発明では、基板の半導体チップ下面側の部分にサ−マルビアを形成しているため、半導体チップの電気的動作によって発生する熱を半導体チップ裏面からサ−マルビアを通して効率良くパッケ−ジ外部に逃がすことができ放熱性が大幅に向上する。
【0020】また本発明において、前記サーマルビアは銅のスルーホールめっきにより形成することにより、放熱性がより向上されるようになる。
【0021】また本発明において、前記サ−マルビアをエポキシ系などの樹脂にて充填している場合は、サ−マルビア内部が空洞の場合に比べてさらに一層放熱性が向上するようになる。
【0022】また本発明において、アルミニウム線ワイヤボンドにて正ボンドと逆ボンドを共存させることにより、二段のワイヤボンドフィンガを持つ多層基板への狭ピッチボンディングが可能になる。アルミニウム線ワイヤボンドは一般にウェッジ・ボンディング法で行われる。ウェッジ・ボンディングはパッケージ側から半導体チップ側に向かって繰返しボンディングする方法(それを「逆ボンド」と呼ぶ)と、逆に半導体チップ側からパッケージ側へ向かってボンディングする方法(それを「正ボンド」と呼ぶ)の二種類がある。二段のワイヤボンドフィンガを持つ多層基板へのボンディングを逆ボンドのみで行った場合、半導体チップのパッド付近でワイヤの接触が起こりやすい。これは多層基板の製造上、ワイヤボンドフィンガの上下段の横方向のずれが大きいためである。アルミニウム線ワイヤボンドは第一ボンディングでループ高さを高くとれる特徴を持つため、パッケージ下段フィンガと半導体チップ外側パッドとを逆ボンド、パッケージ上段フィンガと半導体チップ内側パッドとを正ボンドにすることによって、上下段ループに十分なクリアランスが確保でき、隣接ワイヤ同士の接触を回避できるようになる。
【0023】また本発明において、前記蓋の面積が300mm2以上のとき、前記蓋をセラミックで形成するのがよいとするのは、次のような理由による。すなわち、先にも述べたように、本発明における半導体装置は中空タイプであるため、リフロ−実装時に加わる熱により中空内部の空気膨張が起こる。パッケージが吸湿していた場合には吸湿分の気化膨張も加わる。これらの空気膨張および気化膨張による凹部内圧の上昇は蓋を外側に湾曲させる。蓋がボール電極面側にあるキャビティーダウンタイプのパッケージでは、蓋の膨れは実装上致命傷になる。なぜなら、例えば1.27mmピッチや1.5mmピッチのBGAでは外部電極高さは0.6±0.1mmであるが、実装時のボ−ル高さはパッケ−ジ重量などにより400〜450μmとなるため、それ以上の蓋膨れは蓋が実装基板に接触することによって実装不良になるからである。この問題は凹部容積が大きく蓋の面積が大きいほど顕著である。一般には蓋材の選択はBTレジン、FR4などの有機基板を用いた方がコスト的に有利である。しかし凹部の容積したがって蓋の面積の大きいパッケ−ジでは蓋膨れが大きくなるため、蓋材を鋼性の高いセラミックとすることが望ましく、より具体的には、前記蓋の面積が300mm2以上のとき、前記蓋をセラミックで形成するようにするのが望ましい、ということになる。なお、封止は蓋の周囲を樹脂でシーリングすることによってなされる。樹脂の注入性は蓋の厚みが薄い方がよく、蓋付け強度の増強と蓋膨れの低減には蓋の厚みは厚い方がよい。これらを総合して蓋の厚みは0.4〜0.7mmが適当である。
【0024】また本発明において、前記基板表面の外部電極形成部の表面は、1μm以上の厚さのニッケルの電解めっき層とその上に形成される0.5μm未満の厚さの金の電解めっき層とから形成されているのがよいとするのは、次のような理由による。通常、多層基板表面の外部電極形成部の表面は酸化防止膜付きの銅、半田、ニッケル−金などが考えられる。本発明におけるパッケージの製造上、ワイヤボンドフィンガと外部電極形成部表面は同時に処理することが工程短縮となるため、ニッケル−金が好ましい。そこで、多層基板表面の外部電極形成部の表面処理をパタ−ニングされた銅箔上にニッケル−金とする。詳しくはニッケルの電解めっきを1μm以上形成し、さらにその上に金の電解めっきを0.5μm未満形成することにより、鉛錫系半田よりなる外部電極形成後、脆い金属間化合物とされる金錫系合金層の成長が抑えられる。それにより外部電極の長期信頼性が確保されるようになる。
【0025】また本発明において、スルーホ−ルの内壁粗さを最大高さ(Rmax)20μm以下とし、且つスル−ホ−ルの銅めっき厚さを20μm以上とすることによって、スルーホ−ルの信頼性が確保される。具体的にはスルーホ−ルに施される銅めっきがBGAパッケ−ジの実装時に加えられるヒ−トショックや実装後の実使用環境上におけるヒ−トサイクルに耐え得るようになる。また本発明において、前記基板に形成されたスルーホールの内部を樹脂又は金属で充填することにより、BGAパッケ−ジの実装時に加えられるヒ−トショックや実装後の実使用環境上におけるヒ−トサイクル耐性がより向上されるようになる。
【0026】また本発明において、前記基板に形成されたスルーホールの端面の金属部分をソルダーレジストにより覆うようにすること、具体的には、外部電極側スルーホ−ル端面を感光性ソルダーレジストにより、完全に覆うか又はスルーホ−ルと同じ大きさに開口させるようにすることは、自動機による実装を容易にする。これはスルーホ−ルが複数の外部電極それぞれと一対一に隣接して存在するBGAにおいて特に有効な手段である。なぜならば自動機によるBGAの認識は通常半田ボールよりなる外部電極により行うが、自動機は、スルーホール端面の金属部分が露出していた場合に、スルーホール端面と半田ボールとを誤認識する可能性がある。このような誤認識は、スルーホール端面の金属部分をソルダーレジストにて覆うことにより、防止できる。
【0027】また本発明による半導体装置の製造方法において、前記上下二段のワイヤボンドフィンガと接続される半導体チップのパッドは千鳥パッド配置とされており、前記下段ワイヤボンドフィンガから半導体チップの外側パッドへ向かって繰り返しボンディングし、その後、半導体チップの内側パッドから前記上段ワイヤボンドフィンガへ向かって繰り返しボンディングするようにすれば、次のような作用効果が得られる。すなわち、アルミニウム線ワイヤボンドは第一ボンディングでループ高さを高くとれる特徴を持つため、パッケージ下段フィンガと半導体チップ外側パッドとを逆ボンドにし、パッケージ上段フィンガと半導体チップ内側パッドとを正ボンドにすることによって、上下段ループに十分なクリアランスが確保でき、隣接ワイヤ同士の接触を回避できるようになる。
【0028】
【実施例】以下、図1を用いて、この発明による実施例の全体構成について説明する。図1は、この発明による半導体装置の断面図である。パッケージ用多層基板1はサーマルビア2を内蔵している。図1の例では6層基板となっている。基板1内部の配線はワイヤボンドフィンガ3からスルーホール4を経由してランド(外部電極形成部)5へとつながっている。ダイボンド樹脂7によってダイパッド6に金属板8と半導体チップ9がダイボンドされる。金属板8はステンレスまたはモリブデンなどからなり、応力緩衝の役割の他にダイパッド6補強板の役割をも果たしている。つまり、この実施例では、前記金属板8は、リフロ−実装時の中空部空気膨張に伴う内圧上昇により湾曲しようとするダイパッド6及び半導体チップ9を保護している。なお半導体チップ9のサイズおよび凹部容積が小さい場合は金属板8は無くてもよい。
【0029】すなわち、本実施例では、前述のような金属板8が介在するため、金属板が無い場合に比べて熱応力集中によるダイボンド部の剥離などの不具合を回避できるようになっている。そのような不具合検出は温度サイクル試験などの耐環境性試験により評価される。その応力集中は主に多層基板と半導体チップそれぞれの熱膨張係数の差に起因するものであるため、それぞれのほぼ中間の値を有する金属板は応力緩衝の役目を果たす。半導体チップのサイズが大きくなればなるほど金属板を介在させる効果は大きくなる。これによりパッケ−ジの長期信頼性が確保できる。
【0030】また、本実施例におけるBGAは多層基板の凹部を蓋で塞いだ構造の中空タイプであるため、リフロ−実装時に加わる熱により中空内部の空気膨張が起こる。ダイパッドの厚みは通常0.5mm程度であるため、ダイパッドは上記空気膨張によって曲面に膨らもうとする。金属板が無い場合、ダイパッドに直接接着された半導体チップが割れたり、接合部に剥離が生じたりする。金属板を介在させることによって、そのような不具合も解消されるようになる。
【0031】図1において、半導体チップ9のボンディングパッドとワイヤボンドフィンガ−3とはアルミニウム線10により結線される。半導体チップ9のボンディングパッドは千鳥パッド配置(半導体チップ9の周囲に並ぶ二列のパッドが交互に配置されている)で、これと結線されるワイヤボンドフィンガ3は二段形成されている。本実施例では、下段フィンガと外側パッドが逆ボンドされた後、上段フィンガと内側パッドが正ボンドされる。基板1の凹部は蓋11により封止される。蓋11はBTレジンやFR4などの有機基板またはセラミックからなり、厚みは0.4〜0.7mmである。蓋付けはBステ−ジ(半硬化状熱硬化性接着シ−ト)12により蓋11を仮付けした後、熱硬化性ポッティング樹脂13を蓋11の周囲に注入し硬化させることによって完了する。ランド5に外部電極14を形成することによって本発明のBGAパッケ−ジが完成する。外部電極14は鉛錫系半田よりなる。
【0032】次に図2〜図15および表1を用いて、本実施例の構成要素および技術要素について詳細に説明する。
【0033】図2はサーマルビア2の詳細断面図である。図2において、2aは基材、2bは銅箔または銅めっき膜、2cは樹脂である。サーマルビア2は両面銅貼り基板のドリリングとスル−ホ−ルめっきにより形成される。サーマルビア2の内部には樹脂2cが充填されている。スル−ホ−ル側壁のめっき膜2bが半導体チップ9から発生した熱を外部へ逃がす主な伝達経路となる。本実施例では、例えばサ−マルビア2は直径0.3mmで、0.9mmピッチで千鳥配置され、124個/cm2の密度で、形成されている。
【0034】次に、図3、図4及び図5を参照して、本実施例におけるワイヤボンドの方法を説明する。図3はワイヤボンドにおいて二段形成のワイヤボンドフィンガ3a,3bの上段3a及び下段3bとも逆ボンドした例を示す断面図、図4は上下段ワイヤボンドフィンガ3a,3bの横方向のずれが大きいパッケージに上段下段とも逆ボンドした時に起こるワイヤ近接を示す平面図である。図3に示すように、上段下段とも逆ボンドした場合は、上段ワイヤ10aと下段ワイヤ10bが接近するため、上下段ループの間に十分なクリアランスが無くワイヤ接触等の不良を引き起こす可能性がある。特に図4のように上下段ワイヤボンドフィンガ3a,3bの横方向のずれが大きい場合にその問題が起こりやすい。
【0035】すなわち、ワイヤボンドフィンガは上段フィンガ3aと下段フィンガ3bが交互に配置されるのが理想的であるが、多層基板の製造上、上下段ワイヤボンドフィンガ3a,3bの横方向のずれはしばしば起こるもので、そのずれが極端な場合は、図4のように上段フィンガ3aと下段フィンガ3bが直線上に並んでしまう。この場合は、図3に示すようにワイヤボンドフィンガの上段3a及び下段3bとも逆ボンドしたとき、上段ワイヤ10aと下段ワイヤ10bが接近して、上下段ループの間に十分なクリアランスが無くワイヤ接触等の不良を引き起こす可能性が大きくなる。
【0036】このような問題を解決するために、本実施例においては、図5に示すように、ワイヤボンドフィンガの上段3aを正ボンドし下段3bを逆ボンドするようにしている。よって、この図5に示すように、上下段ループに十分なクリアランスが確保でき、ワイヤボンド品質の余裕度が向上している。したがって、上段フィンガ3aと下段フィンガ3bとの横方向のずれが生じ、図4に示すように上段フィンガ3aと下段フィンガ3bが直線上に並んでしまうような場合でも、上段ワイヤ10aと下段ワイヤ10bとの間に十分なクリアランスを確保でき、ワイヤ接触等の不良を防止できるようになる。
【0037】次に、図6は、キャビティーダウンタイプBGAにおいて実装時の熱による蓋膨れを原因として実装不良が生じた場合を示す断面図である。リフロ−実装時に加わる熱による中空内部の空気膨張とパッケージ吸湿分の気化膨張が凹部の内圧を上昇させる。凹部の内圧の上昇により外側に湾曲した蓋11が実装基板15に接触しパッケ−ジを持ち上げる。その結果、図6のような外部電極14の接合形状異常が発生する。
【0038】表1は各種蓋付け仕様におけるリフロー実装実験結果を示している。本実験結果はフタ面積が約580mm2の凹部容積の大きいパッケ−ジを使用した場合の結果である。フタ付け仕様は、フタ材、フタ厚、パッケージ基板座ぐり深さの組合わせを異にしている。評価項目は、リフロー実装時における蓋11の実装基板15への接触有無、グロスリーク耐性、及びリフロー実装後の外部電極14の形状不良の有無である。フタ材をセラッミックとすることで、30°C70%RH168hrsの吸湿条件まで全ての評価項目を満足した。また、フタ面積が約200mm2の凹部容積の小さいパッケ−ジでは表1のC構造やE構造でも問題の無いことが実験により判っている。
【0039】
【表1】


【0040】次に、図7は、本実施例における外部電極形成前のランド5を説明するための詳細断面図である。図7において、5aは銅よりなる配線パタ−ン、5bは電解ニッケルめっき膜、5cは電解金めっき膜、5dはソルダ−レジストである。電解ニッケルめっき膜5bは1μm以上、電解金めっき膜5cは0.5μm未満である。特に電解金めっき膜5cを0.5μm未満とすることにより、鉛錫系半田の外部電極形成後、脆い金属間化合物とされる金錫系合金層の成長が抑えられる。また、金めっきを無電解にて形成した場合、金めっき膜厚にかかわらず接合面に濡れ不良のような異常が発生するため、電解金めっきが良いことが判っている。
【0041】図8は外部電極の高温保存によるシェア強度変化を表しており、各サンプルは、図7のランド構造で、電解ニッケルめっき膜厚を互いに共通の1μm以上としており、且つ電解金めっきの膜厚を互いに異にしている。金めっき厚が0.1μm、0.3μm、0.44μmの場合、高温保存による強度劣化は発生しないが、金めっき厚が0.8μm、2.0μmでは、150°C48hrsで強度劣化が始まっている。各条件における破断面の観察から、金めっきが厚い場合の強度劣化は金錫系合金層の成長によるものであると判明した。また、金めっきを無電解にて形成した場合、半田ぬれ性が悪く、安定した強度が確保できないことも判っている。そこで、めっき方法は、半田ぬれ性を向上させるために電解めっきとし、金の膜厚を0.5μm未満に限定した。
【0042】次に、図9は、複数の外部電極それぞれと一対一に隣接して存在するスルーホ−ル4の詳細断面図である。図9において、4aはドリリングされた基材自身の内壁面、4bはスル−ホ−ルめっき膜、4cはスル−ホ−ルに充填された樹脂又は金属よりなるフラットプラグ、5はランド(外部電極形成部)である。次に、図10は図9のAに示す部分のスル−ホ−ルの内壁拡大図である。本実施例では、図10に示すように、基材自身の内壁面4aの表面粗さを最大高さ(Rmax)20μm以下としている。これは、ドリリング条件の最適化により実現した。さらに、スル−ホ−ルの銅めっきを20μm以上とすることにより、スル−ホ−ルめっきのカバレッジ性が向上し、スル−ホ−ルめっき膜4bはBGAパッケ−ジの実装時に加わるヒ−トショックや実装後の実使用環境上におけるヒ−トサイクルに耐え得るようになる。
【0043】次に、図11、図12を用いてスルーホール信頼性データを説明する。図11、図12はオイルディップによるスル−ホ−ル導通抵抗の変化を示したグラフである。詳しくは、図11はスル−ホ−ル内壁粗さを最大高さ(Rmax)20μm以上、且つ銅めっき厚を10μmの場合を示している。また、図12はスル−ホ−ル内壁粗さを最大高さ(Rmax)20μm以下、銅めっき厚を20μm、且つフラットプラグ形成した場合を示している。オイルディップ条件は260°C10secから20°C20secまでを1サイクルとした。図11の条件では30サイクルから導通抵抗の上昇がみられる。他方図12の条件では100サイクルまで導通抵抗は安定している。そこで、本実施例では、スルーホール構造を内壁粗さを最大高さ(Rmax)20μm以下且つ銅めっき厚を20μmとした。
【0044】次に、図13は外部電極側スルーホール端面の金属部分が露出していた場合の問題点を示す断面図、図14はこの問題点を解決するために本実施例において外部電極側スルーホ−ル端面を感光性ソルダーレジストにて完全に覆った例を示す断面図である。図13において、4bはスル−ホ−ルめっき膜、4dは金属部分が露出したスルーホール端面、5dはソルダレジスト、14は外部電極である。ソルダレジスト5dは液体感光性ソルダレジストまたは感光性ドライフィルムからなる。自動実装機によるBGAの認識は、通常外部電極14を光反射させて二値化認識する。この二値化認識する場合、BGAが図13に示す構造のときは、露出したスルーホール端面4dと外部電極14の両方が光反射するため誤認識が発生する。しかし、図14に示す本実施例によるBGAの構造では、スルーホール内が樹脂又は金属の充填部材4cで充填され、スルーホール端面4dがソルダレジスト5dで覆われるように構成されている。よって、図14の構造では、スルーホール端面4dは、図13に示すように金属部分が露出することがないので、自動実装機によるBGAの認識に際して図13で説明したような誤認識は発生せず、確実に外部電極14だけを認識することが可能になる。
【0045】また図15は、前記問題点を解決するために本発明の他の実施例において外部電極側スルーホ−ル端面を感光性ソルダーレジストにてスルーホ−ルと同じ大きさに開口させた例を示す断面図である。この図15に示す構造では、スルーホール内は充填部材で充填されてはいないが、スルーホール端面4dの金属部分がソルダレジスト5dで覆われるように構成されている。よって、この図15に示す他の実施例によっても、図14に示す実施例と同様に、自動実装機によるBGAの二値化認識において、図13で説明したような誤認識は発生せず、確実に外部電極14だけを認識することが可能になる。
【0046】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、多層基板の凹部内に半導体チップを収納し凹部を蓋で塞いで中空封止型BGAパッケージを実現することにより、従来の半導体チップを樹脂封止した場合に生じるアルミ線の腐食などの問題を回避できるようになる。また本発明では、基板の半導体チップ下面側の部分にサ−マルビアを形成しているため、半導体チップの電気的動作によって発生する熱を半導体チップ裏面からサ−マルビアを通して効率良くパッケ−ジ外部に逃がすことができ放熱性が大幅に向上するようになる。
【0047】また本発明において、前記サーマルビアは銅のスルーホールめっきにより形成することにより、放熱性がより一層向上されるようになる。
【0048】また本発明において、前記サ−マルビアの内部をエポキシ系などの樹脂により充填することにより、サ−マルビア内部が空洞の場合に比べてより一層放熱性が向上するようになる。
【0049】また本発明において、パッケージ下段フィンガと半導体チップ外側パッドとを逆ボンド、パッケージ上段フィンガと半導体チップ内側パッドとを正ボンドにすることによって、上下段ループに十分なクリアランスが確保でき、隣接ワイヤ同士の接触を回避できるようになる。つまり、アルミニウム線ワイヤボンドにて正ボンドと逆ボンドを共存させることにより、二段のワイヤボンドフィンガを持つ多層基板への狭ピッチボンディングが可能になる。
【0050】また本発明において、前記蓋の面積が300mm2以上のとき、前記蓋をセラミックで形成することにより、リフロ−実装時に加わる熱による中空内部の空気膨張と気化膨張による凹部内圧の上昇に伴う蓋膨れを抑え、蓋膨れによる実装不良を防止できるようになる。すなわち、中空タイプの半導体装置では、リフロ−実装時に加わる熱による中空内部の空気膨張と気化膨張による凹部内圧の上昇により蓋が外側に湾曲されるが、そうなると、この蓋が実装基板に接触することによって実装不良の原因となる。そして、この問題は凹部容積が大きく蓋の面積が大きいほど顕著になる。そこで、凹部の容積したがって蓋の面積の大きいパッケ−ジでは蓋膨れが大きくなるため、蓋材を鋼性の高いセラミックとすることが望ましく、より具体的には、前記蓋の面積が300mm2以上のとき、前記蓋をセラミックで形成するようにするのが望ましい、ということになるのである。
【0051】また本発明において、前記基板表面の外部電極形成部の表面を、1μm以上の厚さのニッケルの電解めっき層とその上に形成される0.5μm未満の厚さの金の電解めっき層とから形成することにより、鉛錫系半田よりなる外部電極形成後、脆い金属間化合物とされる金錫系合金層の成長が抑えられる。それにより外部電極の長期信頼性が確保されるようになる。また半田ぬれ性も向上する。
【0052】また本発明において、スルーホ−ルの内壁粗さを最大高さ(Rmax)20μm以下とし、且つスル−ホ−ルの銅めっき厚さを20μm以上とすることにより、スルーホ−ルのヒートサイクル耐性が向上されるようになる。具体的にはスルーホ−ルに施される銅めっきがBGAパッケ−ジの実装時に加えられるヒ−トショックや実装後の実使用環境上におけるヒ−トサイクルに耐え得るようになり、スルーホールの信頼性が向上するようになる。
【0053】また本発明において、スルーホ−ルの内部を樹脂又は金属で充填することにより、BGAパッケ−ジの実装時に加えられるヒ−トショックや実装後の実使用環境上におけるヒ−トサイクル耐性がより一層向上されるようになる。
【0054】また本発明において、前記基板に形成されたスルーホールの端面の金属部分をソルダーレジストにより覆うようにすることにより、実装時に自動機がスルーホール端面の金属部分と半田ボールとを誤認識することを防止できるようになる。
【0055】また本発明による半導体装置の製造方法において、前記上下二段のワイヤボンドフィンガと接続される半導体チップのパッドは千鳥パッド配置とされており、前記下段ワイヤボンドフィンガから半導体チップの外側パッドへ向かって繰り返しボンディングし、その後、半導体チップの内側パッドから前記上段ワイヤボンドフィンガへ向かって繰り返しボンディングするようにすることにより、上下段ループに十分なクリアランスが確保でき、隣接ワイヤ同士の接触を回避できるようになり、二段のワイヤボンドフィンガを持つ多層基板への狭ピッチボンディングが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例による半導体装置の断面図である。
【図2】 図1の半導体装置のサーマルビア2の詳細断面図である。
【図3】 ワイヤボンドにおいて二段形成のワイヤボンドフィンガ3a,3bの上段3a及び下段3bとも逆ボンドした例を示す断面図である。
【図4】 上下段ワイヤボンドフィンガ3a,3bの横方向のずれが大きいパッケージに上段下段とも逆ボンドした時に起こるワイヤ近接を示す平面図である。
【図5】 本実施例においてワイヤボンドフィンガの上段3aを正ボンドし下段3bを逆ボンドするようにした例を示す図である。
【図6】 キャビティーダウンタイプBGAにおいて実装時の熱による蓋膨れを原因として実装不良が生じた場合を示す断面図である。
【図7】 本実施例における外部電極形成前のランド5を説明するための詳細断面図である。
【図8】 外部電極の高温保存によるシェア強度変化を表すグラフである。
【図9】 複数の外部電極それぞれと一対一に隣接して存在するスルーホ−ル4の詳細断面図である。
【図10】 図9のAに示す部分のスル−ホ−ルの内壁拡大図である。
【図11】 スル−ホ−ル内壁粗さを最大高さ(Rmax)20μm以上且つ銅めっき厚を10μmの場合のオイルディップによるスル−ホ−ル導通抵抗の変化を示したグラフである。
【図12】 スル−ホ−ル内壁粗さを最大高さ(Rmax)20μm以下かつ銅めっき厚を20μmかつフラットプラグ形成した場合のオイルディップによるスル−ホ−ル導通抵抗の変化を示したグラフである。
【図13】 外部電極側スルーホール端面の金属部分が露出していた場合の問題点を説明するための断面図である。
【図14】 図13で説明した問題点を解決するために本実施例において外部電極側スルーホ−ル端面を感光性ソルダーレジストにて完全に覆った例を示す断面図である。
【図15】 図13で説明した問題点を解決するために本発明の他の実施例において外部電極側スルーホ−ル端面を感光性ソルダーレジストにてスルーホ−ルと同じ大きさに開口させた例を示す断面図である。
【図16】 従来のBGAでOMPAC(Over Molded PadArray Carrier)と呼ばれるパッケ−ジ構造を示す図である。
【符号の説明】
1 多層基板. 2 サ−マルビア.2c エポキシ系などの樹脂または金属. 3 ワイヤボンド用フィンガ.3a 上段フィンガ. 3b 下段フィンガ. 4 スルーホ−ル.4a スルーホ−ルの内壁. 4b スル−ホ−ルの銅めっき膜.4c エポキシ系などの樹脂または金属. 4d スル−ホ−ル端面.5 ランド(外部電極形成部). 5b ニッケルの電解めっき膜.5c 金の電解めっき膜. 6 ダイパッド. 8 金属版.9 半導体チップ. 10 アルミニウム線ワイヤ.10a 上段ワイヤ. 10b 下段ワイヤ. 11 蓋.12 Bステ−ジ(半硬化状熱硬化性接着シ−ト).13 熱硬化性ポッティング樹脂. 14 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】 BGA(Ball Grid Array)パッケ−ジの半導体装置において、基板の中央部に形成された凹部内に半導体チップが収納され、前記基板の半導体チップの上面側に複数のボール状外部電極が形成され、前記凹部は蓋で塞がれており、さらに前記基板の半導体チップの下面側の部分にはサーマルビアが形成されている、ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 請求項1の半導体装置において、前記サーマルビアは銅のスルーホールめっきにより形成されている、半導体装置。
【請求項3】 請求項1又は2の半導体装置において、前記サーマルビアは、その内部が樹脂で充填されている、半導体装置。
【請求項4】 請求項1、2又は3の半導体装置において、前記基板に上下二段のワイヤボンドフィンガが形成されており、このワイヤボンドフィンガと半導体チップとの接続は、上段のワイヤボンドフィンガと半導体チップとの間では正ボンドで、また下段のワイヤボンドフィンガと半導体チップとの間では逆ボンドで行われている、半導体装置。
【請求項5】 請求項1から4までのいずれかに記載の半導体装置において、前記蓋の面積が300mm2以上のとき、前記蓋はセラミックで形成されている、半導体装置。
【請求項6】 請求項1から5までのいずれかに記載の半導体装置において、前記基板表面の外部電極形成部の表面は、1μm以上の厚さのニッケルの電解めっき層とその上に形成される0.5μm未満の厚さの金の電解めっき層とから形成されている、半導体装置。
【請求項7】 請求項1から6までのいずれかに記載の半導体装置において、前記基板には前記外部電極と対応するスルーホールが形成されており、このスルーホールは、その内壁粗さの最大高さが20μm以下に形成されており、且つその内壁の銅めっき層が20μm以上の厚さで形成されている、半導体装置。
【請求項8】 請求項1から7までのいずれかに記載の半導体装置において、前記基板に形成されたスルーホールは、その内部が樹脂又は金属で充填されている、半導体装置。
【請求項9】 請求項1から8までのいずれかに記載の半導体装置において、前記基板に形成されたスルーホールは、少なくともその端面の金属部分がソルダーレジストにより覆われている、半導体装置。
【請求項10】 請求項4から9までのいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、前記上下二段のワイヤボンドフィンガと接続される半導体チップのパッドは千鳥パッド配置とされており、前記下段ワイヤボンドフィンガから半導体チップの外側パッドへ向かって繰り返しボンディングする工程と、その後、半導体チップの内側パッドから前記上段ワイヤボンドフィンガへ向かって繰り返しボンディングする工程とを含む、ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開平9−102559
【公開日】平成9年(1997)4月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−257671
【出願日】平成7年(1995)10月4日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(591036505)菱電セミコンダクタシステムエンジニアリング株式会社 (6)