説明

半導体X線検出器

【課題】所望の形状に構成能で、中央部に開口部を形成して近距離での回折X線の検出に好適な形状に構成可能な半導体X線検出器を提供する。
【解決手段】半導体X線検出器は、略中央部に開口部11を有し、内部に多数のピクセル状のX線センサを形成した半導体X線センサ部10と、当該半導体X線センサ部の裏面に配置され、複数のX線センサから出力される信号の各々に所定の処理を行って検出信号を出力する読み出し部20とを備える。読み出し部は、複数の読み出しユニット22を平面状に一体に組み立てて構成され、各読み出しユニットは、それぞれ、矩形形状に形成され、表面に複数パッドを形成し、内部に複数の処理回路部や貫通ビアを備え、裏面に複数のパッドを備える。半導体X線センサ部と読み出し部は、積層して一体に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種分析において使用されるX線の検出を行う半導体X線検出器に関し、特に、試料からの回折X線を検出するのに適した新規な構造の半導体X線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を利用した各種試料の分析は、試料の分解を伴わず、所謂、非破壊分析として広い分野において採用されている。従来、例えば、以下の特許文献1によれば、X線発生装置と二次元(エリア)X線検出器を搭載した、可搬なハンドヘルド型のX線回折計が既に知られている。
【0003】
一方、回折X線などの強度を検出するためには、一般に、感光フィルムなどのイメージングプレート(IP)が利用されてきたが、しかしながら、近年における半導体製造技術の著しい発展に伴い、各種の半導体によるX線検出器が開発されている。例えば、以下の特許文献2には、複数のピクセルを具備した光子カウントモード(PCM)検出器であって、カドミウム亜鉛テルライド(CZT)検出器と、一又は複数の読み出し回路を実装したASICチップとを組み合わせたものが既に開示されている。また、以下の特許文献3には、かかるピクセル(画素)を複数備えた装置において、当該画素により収集される線量をモニタリングする方法やそのためのX線検出装置も既に知られている。また、以下の特許文献4によれば、半導体X線アレイ検出器を利用したX線撮像装置も既に知られている。
【0004】
更には、以下の特許文献4には、検出器のコンパクト化と、そして、複数の単位画素検出器を並べた場合におけるデッドスペースの発生をなくした構造が既に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7646847号
【特許文献2】特表2007−524234号公報
【特許文献3】特表2007−529004号公報
【特許文献4】特開平8−102890号公報
【特許文献5】特開2003−66151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしならが、上述した従来技術によれば、以下のような問題点がある。即ち、試料からのX線、特に、回折X線を検出する場合、X線は、三次元空間内において、試料を中心として同心円上に回折される。そのことから、かかる回折X線を検出するためには、半導体X線検出器も、従来のイメージングプレートなどと同様に、平面(二次元)的に広がる検出領域を備える必要がある。しかしながら、上記従来技術の検出器では、その構造や製造技術から、十分に大きなサイズの検出領域を確保することは難しく、そのため、例えば、上記特許文献1のX線回折計では、複数の一次元(リニア)センサ又は二次元(エリア)センサを組み合わせて使用すること、即ち、分散して配置された複数の半導体X線検出装置により、かかる回折X線を、個別に検出し、その後の処理において、これらを関連付けることにより分析を行っていた。そのため、精度の高い回折X線の分析は困難であった。
【0007】
また、上記特許文献2〜特許文献4にも開示されるように、半導体X線検出器では、特に、ASICを含むアレイ構造における配線部、特に、基板の表面上に配置される構造をその理由として、これらX線検出素子を所望の数だけ組み合わせて所望の形状のX線検出器とすることは困難であった。
【0008】
なお、上記特許文献5では、複数の単位画素検出器を並べた場合におけるデッドスペースの発生をなくすことを目的として、各素子をその配線部である引き出しパッド部が外側に配列されるように、複数の検出素子を、二列に、配置している。しかしながら、かかる配置・構造では、検出素子を二列以上に亘って配置した場合には、デッドスペースが発生してしまい、やはり、検出器を所望の数だけ組み合わせて所望の形状のX線検出器とすることは困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、即ち、複数のユニットを組み合わせることにより所望の形状に構成することが可能な半導体X線検出素子を、特に、その中央部に開口部を形成して近距離での回折X線の検出に好適な形状に構成することが可能な、新たな構成の半導体X線検出器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、本発明によれば、上記の目的を達成するため、少なくとも略中央部に開口部を有する板状の外形を有し、その表面と裏面との間に複数のピクセル状のX線センサを形成した半導体X線センサ部と、前記半導体X線センサ部の裏面に配置され、当該半導体X線センサ部を構成する複数のX線センサから出力される信号の各々に所定の処理を行って検出信号を出力する読み出し部と、を備えた半導体X線検出器であって、前記読み出し部は、各々、板状の矩形形状に形成され、表面に複数の入力部を形成すると共に、その内部に複数の処理回路部と複数の貫通ビアとを備え、かつ、裏面に複数の出力端子を備えた読み出しユニットを、複数、平面状に一体に組み立てて構成されており、かつ、当該半導体X線センサ部と当該読み出し部とを積層して一体に形成した半導体X線検出器が提供される。
【0011】
また、本発明では、前記に記載した半導体X線検出器において、前記半導体X線センサ部は、中央部に開口を有すると共に、その外形を、「ロ」の字状、「コ」の字状、又は、円形に形成されていることが好ましく、又は、前記半導体X線センサ部を構成する複数のピクセル状のX線センサの数は、前記複数の読み出しユニットにより構成された前記読み出し部の内部に形成された処理回路部の総数にほぼ等しいことが好ましい。そして、前記読み出し部を構成する前記複数の読み出しユニットの各々を、その内部に前記複数の処理回路部を3次元的に形成したASICにより構成することが、又は、前記読み出し部から出力される検出信号は、入射X線の強度信号であることが好ましい。
【0012】
また、本発明によれば、やはり上記の目的を達成するため、少なくとも略中央部に開口部を有する板状の外形を有し、その表面と裏面との間に複数のピクセル状のX線センサを形成した半導体X線センサ部と、前記半導体X線センサ部の裏面に配置され、当該半導体X線センサ部を構成する複数のX線センサから出力される信号の各々に所定の処理を行って検出信号を出力する読み出し部と、を備えた半導体X線検出器であって、前記読み出し部は、各々、板状の矩形形状に形成され、表面に複数の入力部を形成すると共に、その内部に複数の処理回路部と複数の貫通ビアとを備え、かつ、裏面に複数の出力端子を備えた、複数の読み出しユニットから構成されており、前記半導体X線センサ部は、前記読み出し部を構成する読み出しユニットの各々の表面に積層されて一体に形成されており、そして、前記読み出しユニットとその表面に一体に積層された前記半導体X線センサ部を単位として、複数を平面状に一体に組み立てられている半導体X線検出器が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によれば、所望の形状に構成することが可能な半導体X線検出素子であって、特に、その中央部に開口部を形成して近距離での回折X線の検出に好適な形状に構成することが可能な半導体X線検出器を容易に提供することが可能となるという極めて優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態になる半導体X線検出器の全体構成を示すための展開斜視図である。
【図2】上記半導体X線検出器の読み出しユニットの詳細を、X線センサ(セル)との関連により示す図である。
【図3】上記半導体X線検出器の読み出し部を、その裏面により示す斜視図である。
【図4】本発明になる半導体X線検出器を採用した場合の、X線分析装置全体の回路構成を示すブロック図である。
【図5】本発明になる半導体X線検出器による回折X線検出の一例を示すための斜視図である。
【図6】本発明の変形例になる半導体X線検出器の構造を示す展開斜視図である。
【図7】本発明の更に他の変形例になる半導体X線検出器の構造を示すための展開斜視図である。
【図8】本発明の更に他の変形例になる半導体X線検出器の構造を示すための展開斜視図である。
【図9】本発明の更に他の変形例になる半導体X線検出器の構造を示すための展開斜視図である。
【図10】本発明の更に他の変形例になる半導体X線検出器の構造を示すための展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態になる半導体X線検出器について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
まず、添付の図1は、本発明になるX線検出器の全体構成を示す。この図において、符号10は、例えば、CdTe、CdZnTe、その他の、所謂、半導体X線センサ部を示しており、以下にも詳述するように、半導体により外形略正方形状に形成され、かつ、その中央部に開口部(穴)11を設けたX線検出部12を有する。そして、当該X線検出部12の一方の面(図の上面側)には、負の電位を印加するバイアス電極13を、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料により形成すると共に、他方の面(図の下面側)には、所謂、X線のエネルギーによって発生する電子を検出するための検出電極14、14…が、多数のX線センサが、ピクセル状に形成されている。即ち、この半導体X線センサ部10では、半導体からなるX線検出部12を挟んで配置されたバイアス電極13と検出電極14により、多数のピクセル状のX線センサ(セル)が形成され、アレイ状に並んで配置されている。なお、図のように、この半導体センサ部10を中空形状に形成することによれば、以下にも詳述するが、特に、試料から発生するリング状の回折X線の強度を検出することにおいて、優れた効果を発揮することが出来る。
【0017】
次に、上述した半導体X線センサ部10の下面には、同様の形状をした(即ち、外形略正方形状であり、かつ、その中央部に開口部(穴)21を設けた)読み出し部20が設けられている。この読み出し部20は、図からも明らかなように、複数の部分(読み出しユニット22、22…:なお、本例では8個)を組み合わせることにより構成されており、そして、それぞれ、所謂、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)により、Si貫通ビア(シリコン製半導体チップの内部に垂直に貫通する電極)などにより、種々の回路が3次元的に構成されている。また、その表面には、多数の、読出し部23、23…が、上記半導体X線センサ部10の検出電極14、14…に対応する位置に形成されている。そして、この読み出し20の下方には、更に、同様の形状をした(即ち、外形略正方形状であり、かつ、その中央部に開口部(穴)31を設けた)例えば、ワイヤボンディングパッドからなる配線部30が設けられ、当該配線部30の一部(本例では、側壁部)に設けた端子部32を介して、上記多数のX線センサ(検出電極14、14…)からの出力が出力されると共に、後にも述べる必要な各種の電圧が、上記読み出し部20を介して、半導体X線センサ部10へ供給される。
【0018】
次に、添付の図2には、上記ASICからなる読み出し部20、特に、読み出し部を構成する読み出しユニット22の詳細が、上記半導体X線センサ部10を構成するX線センサ(セル)の詳細と共に示されている。
【0019】
まず、X線センサ(セル)は、上述したように、X線検出部12とそれを挟んで配置されたバイアス電極13と検出電極14により構成されている。なお、この図において、符号15は、上記X線検出部12の下面に形成された絶縁層を示しており、この図からも明らかなように、上記検出電極14は、この絶縁層15を介して形成されており、その下端部がパッド状になっている。また、上記半導体X線センサ部10の下面の一部には、上記の検出電極と同様にして、アース電極16が形成されると共に、更に、上記バイアス電極13にバイアス電圧(負の電圧:−V)を導くためのバイアス端子17が、絶縁層を介して内部に導電材を充填した、所謂、Si貫通ビアとして形成されており、かつ、その下端部はパッド状になっている。
【0020】
そして、ASICからなる読み出し部ユニット22は、本例では、例えば、4層の基板により構成されており、かつ、図からも明らかなように、これら4層の基板のそれぞれには、以下に述べる読み出し回路が形成され、そして、積層されて一体に形成されている。
【0021】
まず、図において、最上部の第一層221の表面には、図に破線で示すように、上記半導体X線センサ部10の検出電極14の位置に対応して、即ち、検出信号の入力端子としてのパッド2211が形成されると共に、上記X線検出部12に対応する位置には、検出される信号を所望の振幅に増幅するための増幅器2212と、当該増幅された信号の波形を整形するための波形整形回路2213が設けられている。そして、当該波形整形回路2213の出力は、更に、他のSi貫通ビア2214に接続されている。また、図の符号2201は、上記アース電極16のパッドに対応して形成されたSi貫通ビアを、そして、符号2202は、上記バイアス端子16のパッドに対応して形成されたSi貫通ビアを、それぞれ、示している。
【0022】
次に、第二層222の表面には、上記第一層221のSi貫通ビア2214に対応してパッド2221が設けられ、そして、比較回路2222が形成され、その出力端には、Si貫通ビア2223が設けられている。また、第二層222の表面には抵抗2224が形成され、その一端は上記比較回路2222の一方の入力に接続されると共に、その他端は、比較参照電圧VRefに接続されるSi貫通ビア2225に接続されている。また、上記第一層221のSi貫通ビア2201、2202に対応する位置にも、やはり同様に、Si貫通ビア2201、2202が形成されている。
【0023】
更に、第三層223の表面には、上記第二層222のSi貫通ビア2223に対応する位置にはパッド2231が形成されると共に、更に、計数回路2232が形成されており、その出力はSi貫通ビア2233へ接続されている。また、上記第二層222に形成したSi貫通ビア2225に対応する位置にも、Si貫通ビア2234が形成されており。そして、この第三層23にも、やはり、上記第二層のSi貫通ビア2201、2202に対応する位置には、Si貫通ビア2201、2202が形成されている。
【0024】
最後に、第四層(基板)224には、上記第三層223のSi貫通ビア2233に対応する位置に、更には、上記比較参照電圧VRefが接続されるSi貫通ビア225の位置に対応して、それぞれ、Si貫通ビア2241、2242が設けられており、その下端部(即ち、第三層23の裏面)には、それぞれ、パッドが形成されている。また、同様に、この第四層(基板)224にも、Si貫通ビア2201、2202が形成されると共に、その下端部には、それぞれ、出力端子としてパッドが形成されている。
【0025】
そして、上述した半導体X線センサ部10を、上記の第一層221から第四層224を一体に積層してなる読み出しユニット22を複数(図1の例では8枚)平面状に組み合わせて形成した読み出し部20の表面に配置することによれば、その表面にアレイ状に並んで配置された多数のピクセル状のX線センサ(セル)からの出力、即ち、検出電極14、14…からの信号は、読み出し部20を構成する複数(8個)の読み出しユニット22の内部に形成された読み出し回路において、それぞれ、所定の処理が施され、その下面に設けられた多数の端子であるパッドを介して取り出されることとなる。また、上記半導体X線センサ部10を駆動するために必要なバイアス電極13へのバイアス電圧−Vの印加や、アース電極16の接地も同様に、読み出しユニット22の一部に形成されたSi貫通ビア2201、2202を介して行なわれることとなる。
【0026】
なお、上述したみ読み出しユニット22を8枚、一体に組み立てて構成された読み出し部20を、裏面から見た様子が、添付の図3に示されている。この図からも明らかなように、当該8枚の読み出しユニット22を、平面状に、一体に組み立てて形成された読み出し部20の裏面には、各読み出しユニット22の内部に形成された読み出し回路の数を合計した数の、即ち、上記半導体X線センサ部10を構成するX線センサ(セル)の数(実際には、更に、必要なバイアス電極13へのバイアス電圧−Vの印加や、アース電極16の接地、更には、比較参照電圧VRefの供給に必要なSi貫通ビア2201、2202、2242の下端に形成されたパッドの数をも含む数)のパッド2200が、配列されることとなる。
【0027】
そして、上述した読み出し部20から上記多数のパッド2200を介して出力された出力(即ち、上記半導体X線センサ部10の各X線センサ(セル)の検出電極14からの信号)は、更に、上記ワイヤボンディングパッドからなる配線部30に導かれ、更には、ここでは図示しないが、その内部に設けられた、例えば、パラレル/シリアル変換器、又は、チャネルスイッチ、マルチプレクサ等によりその出力数を低減して、その側壁部に設けられた端子部32を介して出力される。
【0028】
続いて、添付の図4は、上述した半導体X線センサ部10、読み出し部20、更には、配線部30を含む、本発明になる半導体X線検出器を採用した場合の、X線分析装置全体の回路構成を示す。即ち、図からも明らかなように、上記半導体X線センサ部10を構成する多数のX線センサ(セル)からの検出信号(即ち、検出電極14からの信号)は、その裏面に配置された複数(8枚)の読み出しユニット22から構成された読み出し部20に導かれ、ASICによりその内部に多数形成された処理回路において所定の処理が施された後、配線部30を介して、例えば、CPUを含んで構成される情報処理装置100に入力され、得られた回折X線の情報により、各種の解析処理を実行し、更には、その結果を、表示部(ディスプレイ装置)150上に表示する。
【0029】
そして、情報処理装置100では、上記半導体X線センサ部10を構成する多数のX線センサ(セル)からの検出信号を処理する場合、上記8枚の読み出しユニット22の組み合わせにより定まる各X線センサ(セル)のXY平面上の位置(座標)を、その内部に設けたメモリ110等に予め記憶しておくことにより、当該XY平面上の多数の検出位置にける正確な入射X線の検出が可能となる。
【0030】
更に、本発明になる半導体X線検出器によれば、特に、上述した読み出し部20によれば、上記半導体X線センサ部10からの検出信号には、各々、所定の処理が施される。即ち、各X線センサ(セル)の出力端子である検出電極14からの検出信号は、読み出し部20を構成する複数(8枚)の読み出しユニット22内にASICにより形成された回路により、例えば、増幅処理、波形整形処理、比較処理、計数処理が行われており、入射X線の強度を示す信号として取り出すことが可能であることから、特に、回折X線を利用して試料の特性を測定する、X線回折装置に提供することが好ましいであろう。
【0031】
添付の図5には、上述した半導体X線検出器を利用することにより、試料からの回折X線を検出するX線回折装置を構成した場合における、回折X線検出の一例を示す。即ち、小型X線管球300により発生し、コリメータ等の入射光学系350を通したX線を、例えば、半導体X線センサ部10、読み出し部20、そして、配線部30を一体に積層してなるX線検出器の中央部に形成された貫通穴400(開口部11、21、31により形成)と介して試料に垂直に照射する。これにより当該試料から発生する回折X線をX線検出器を構成する半導体X線センサ部10、読み出し部20、そして、配線部30により、その強度を検出する。この図からも明らかなように、本発明になるX線検出器は、小型化が容易であり、かつ、その光学距離が比較的に短い検出器において好適であることから、特に、可搬なハンドヘルド型のX線回折計などに提供することも可能である。
【0032】
更に、添付の図6には、上述した半導体X線検出器の変形例を示す。この例では、例えば、より大型の半導体X線センサ部10に対応して、上記読み出し部20を構成する読み出しユニット22の枚数を増大したものであり、ここでは、24枚のユニットを組み合わせた例を示す。なお、ここでは、説明の簡単のため、配線部30については、その図示を省略する。
【0033】
また、添付の図7には、更に他の変形例として、上述した半導体X線センサ部10と読み出し部20の形状を、上記の「ロ」の字状に代えて、「コ」の字状にしたものを示している。なお、この例では、その中央の開口部11、21に代わる切り欠き部11’、21’を介して、X線管球300により発生したX線を試料の表面に照射することは、当業者であれば明らかであろう。
【0034】
加えて、添付の図8には、上記の略正方形状の読み出しユニットに代え、長方形状の読み出しユニット22を、複数枚(16枚)、組み合わせた例を示している。なお、この例では、半導体X線センサ部10と読み出し部20の形状が一致していない。更に、添付の図9には、円盤状の半導体X線センサ部10に対して、矩形状の読み出しユニット22を、複数枚(12枚)、組み合わせた例を示しており、この場合においても、半導体X線センサ部10と読み出し部20の形状が一致していない。しかしながら、かかる場合においても、上述したように、上記情報処理装置100を構成するメモリ110等に対して、対応するX線センサ(セル)が存在しない旨の情報を予め入力(格納)しておくことによれば、上記と同様のX線の検出機能が得られることは明らかであろう。なお、この場合には、出来る限り、複数の読み出しユニットを、上記半導体X線センサ部の形状に合わせるように配置することが、換言すれば、半導体X線センサ部を構成する複数のピクセル状のX線センサの数が、複数の読み出しユニットにより構成された前記読み出し部の内部に形成された処理回路部の総数にほぼ等しくなるようにすることが好ましい。
【0035】
あるいは、上述した実施例に代えて、添付の図10に示すように、互いに同一の形状(本例では、矩形)に形成した半導体X線センサ部10と読み出しユニット22とを用意し、予め、これらを重ねて一体に形成する。そして、この一体に形成したものを単位として、これらを複数、適宜、組み合わせることによっても、上記と同様にして、中央部に開口部(貫通穴)又は、切り欠き部を備えたX線検出器を構成することが出来る。
【0036】
以上の説明からも明らかなように、本発明になるX線検出器では、その中央部に開口部(貫通穴)を備え、その周辺に、試料からリング状に放射する回折X線を検出可能な形状(本例では「ロ」又は「コ」の字状)に形成され、かつ、その内部に多数のX線センサ(セル)を備えた半導体X線センサ部10を備えると共に、その裏面には、各々、矩形に形成され、その内部に3次元実装により多数の処理回路を形成した、所謂、ASICである読み出しユニット22を、複数枚、組み合わせることにより、上記半導体X線センサ部10の形状に同一に又は対応して形成された読み出し部20が積層され、一体に取り付けられている。その結果、上記半導体X線センサ部10の多数のX線センサ(セル)に対応して、その処理回路を、当該読み出し部20内に多数形成することが出来ると共に、その出力端子を、Si貫通ビアを介して、読み出し部20の裏面に取り出す構造としている。
【0037】
そして、上述した構成によれば、ASICにより構成された読み出しユニット22を、上記半導体X線センサ部10の形状に合わせて、複数枚、適宜、組み合わせることにより、その中央部に開口部(貫通穴)を備えた半導体X線センサに対応した読み出し部を、容易に構成することが出来る。その際、特に、その出力端子を読み出し部20の裏面から取り出すことによれば、当該出力端子の配置によって、複数の読み出しユニットの組み合わせ形状や枚数に制限が加えられることなく、自在に、所望の形状に組み立てることが可能となる。特に、複数の読み出しユニットの組み合わせた結果、その一部のユニットが、その周囲の四辺を他のユニットで取り囲まれても、その出力端子を、その裏面から容易に取り出すことが出来る。そのため、複数のユニットを組み合わせることにより所望の形状に構成することが可能であり、特に、その中央部に開口部を形成して近距離での回折X線の検出に好適な形状に構成することが可能な半導体X線検出器が提供されることとなる。
【符号の説明】
【0038】
10…半導体X線センサ部、11…開口部(穴)、12…X線検出部、13…バイアス電極、14…検出電極、20…読み出し部、21…開口部(穴)、22…読み出しユニット、2211…パッド、2212…増幅器、2213…波形整形回路、…、2222…比較回路、2232…計数回路、2214、2223、2225、2233、2234、2241、2242…Si貫通ビア、2200…パッド、30…配線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも略中央部に開口部を有する板状の外形を有し、その表面と裏面との間に複数のピクセル状のX線センサを形成した半導体X線センサ部と、
前記半導体X線センサ部の裏面に配置され、当該半導体X線センサ部を構成する複数のX線センサから出力される信号の各々に所定の処理を行って検出信号を出力する読み出し部と、
を備えた半導体X線検出器であって、
前記読み出し部は、各々、板状の矩形形状に形成され、表面に複数の入力部を形成すると共に、その内部に複数の処理回路部と複数の貫通ビアとを備え、かつ、裏面に複数の出力端子を備えた読み出しユニットを、複数、平面状に一体に組み立てて構成されており、かつ、当該半導体X線センサ部と当該読み出し部とを積層して一体に形成したことを特徴とする半導体X線検出器。
【請求項2】
前記請求項1に記載した半導体X線検出器において、前記半導体X線センサ部は、中央部に開口を有すると共に、その外形を、「ロ」の字状、「コ」の字状、又は、円形に形成されていることを特徴とする半導体X線検出器。
【請求項3】
前記請求項1に記載した半導体X線検出器において、前記半導体X線センサ部を構成する複数のピクセル状のX線センサの数は、前記複数の読み出しユニットにより構成された前記読み出し部の内部に形成された処理回路部の総数にほぼ等しいことを特徴とする半導体X線検出器。
【請求項4】
前記請求項1に記載した半導体X線検出器において、前記読み出し部を構成する前記複数の読み出しユニットの各々を、その内部に前記複数の処理回路部を3次元的に形成したASICにより構成したことを特徴とする半導体X線検出器。
【請求項5】
前記請求項1に記載した半導体X線検出器において、前記読み出し部から出力される検出信号は、入射X線の強度信号であることを特徴とする半導体X線検出器。
【請求項6】
少なくとも略中央部に開口部を有する板状の外形を有し、その表面と裏面との間に複数のピクセル状のX線センサを形成した半導体X線センサ部と、
前記半導体X線センサ部の裏面に配置され、当該半導体X線センサ部を構成する複数のX線センサから出力される信号の各々に所定の処理を行って検出信号を出力する読み出し部と、
を備えた半導体X線検出器であって、
前記読み出し部は、各々、板状の矩形形状に形成され、表面に複数の入力部を形成すると共に、その内部に複数の処理回路部と複数の貫通ビアとを備え、かつ、裏面に複数の出力端子を備えた、複数の読み出しユニットから構成されており、
前記半導体X線センサ部は、前記読み出し部を構成する読み出しユニットの各々の表面に積層されて一体に形成されており、そして、
前記読み出しユニットとその表面に一体に積層された前記半導体X線センサ部を単位として、複数を平面状に一体に組み立てられていることを特徴とする半導体X線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32292(P2012−32292A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172597(P2010−172597)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】