説明

半導電性基板への誘電コーティングの電着

方法は、電着組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が、高度に架橋したミクロゲル成分であるような電着組成物に、半導電性基板を浸漬する工程と、該基板と該組成物との間に電圧を印加し、該基板上に誘電コーティングを形成する工程とを含む。電着に使用する組成物は、樹脂ブレンドと、合体溶媒と、触媒と、水と、高度に架橋したミクロゲルとを含み、該組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が、高度に架橋したミクロゲルである。電着に使用する別の組成物は、界面活性剤ブレンドと、低イオンポリオールと、フェノキシプロパノールと、触媒と、水と、軟化剤と、高度に架橋したミクロゲルとを含み、該組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が、高度に架橋したミクロゲルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2008年3月19日に出願され、「Electrodeposition Of Dielectric Coatings On Semiconductive Materials」と題される、米国仮特許出願第61/037,814号の利益を主張し、この出願は、本明細書によって参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、半導電性材料をコーティングする方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
種々の電子機器は、半導電性材料から構築されている。このような機器を製造する際に、半導電性材料表面上に、誘電材料のような絶縁材料を形成し得る。
【0004】
誘電コーティングは、電着(ED)を用いて塗布し得る。水系電着の間、コーティングされる材料(電極)に電気が流れ、電着浴に分散している荷電粒子を引き寄せる。このコーティングされる材料の表面で、水の電気分解が起こる。コーティングされる材料がアノードとして働く場合、材料表面でプロトンが生成し、次いで、このプロトンが、負に帯電したコーティング粒子と反応する(アノードED)。コーティングされる材料がカソードとして働く場合、材料表面で水酸化物イオンが生成し、次いで、この水酸化物イオンが、正に帯電したコーティング粒子と反応する(カソードED)。電極に電気が容易に流れる場合(導電性材料)、半導電性材料または導電性の低い材料の場合よりも、このプロセスの効率がよい(すなわち、所与の一連のコーティング条件でより多くの膜が堆積する)。
【0005】
カソードEDの場合、正に帯電した塗料粒子を、上述の表面にある水酸化物イオンによって中和すると、粒子が水不溶性となり、カソード表面に集まる。次いで、中和した粒子を、上述の表面上で連続的な膜になるように合体させ、絶縁層を作成する。絶縁性が高まるにつれて、電着は徐々に減少し、(最終的には)停止する。
【0006】
電気コーティングによって、従来のスプレー/ブラシによるプロセスではコーティングできないすべての種類の成分(内側も外側も)を完全にコーティングすることができる。さらに、鋭角な部分、小さな穴を有する部分、とがった端部を有する部分などの多くの異なる幾何学形状をコーティングするのにも有望である。とがった端部は、元来、平坦な表面よりも、帯電しているコーティング粒子を引き寄せる力が大きい。したがって、とがった端部には、近傍の平坦な表面よりも「濡れた膜」が高く積み上がる傾向がある。しかし、表面張力の影響により、移動/硬化中に、とがった端部からコーティングが引き離される傾向がある。それに加え、表面張力は、基板ごとに異なる。コーティング厚が大きいほど、端部がコーティングに覆われた状態で維持されやすい傾向がある。これらの基板に効率よく電気が流れるため、市販のEDコーティングを用いて、導電性基板のとがった端部上に厚い膜を容易に得ることができる。この結果、端部は十分に覆われる。しかし、半導電性基板および導電性の低い基板は、より厚い膜を構築するのが難しく、これらの基板は、標準的なE−コートで十分な端部被覆度を得ることができない場合がある。
【0007】
半導電性材料を十分に絶縁する絶縁層を形成することが可能な、誘電コンフォーマルコーティングが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
第1の局面では、本発明は、半導電性基板上にコーティングを堆積させる方法に関する。この方法は、電着組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が高度に架橋したミクロゲル成分である、電着組成物中に半導電性基板を浸漬する工程と、前記基板と前記組成物との間に電圧を印加し、前記基板上に誘電コーティングを形成する工程とを含む。
【0009】
別の局面では、本発明は、樹脂ブレンドと、合体溶媒と、触媒と、水と、高度に架橋したミクロゲルとを含む電着に使用する組成物であって、該組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が高度に架橋したミクロゲルである、組成物を提供する。
【0010】
別の局面では、本発明は、界面活性剤ブレンドと、低イオンポリオールと、フェノキシプロパノールと、触媒と、水と、軟化剤と、高度に架橋したミクロゲルとを含む電着に使用する組成物であって、該組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が高度に架橋したミクロゲルである、組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例Iの組成物を用いてコーティングした基板の模式図である。
【図2】図2は、実施例IIの組成物を用いてコーティングした基板の模式図である。
【図3】図3は、実施例IIIの組成物を用いてコーティングした基板の模式図である。
【図4】図4は、実施例IVの組成物を用いてコーティングした基板の模式図である。
【図5】図5は、実施例Vの組成物を用いてコーティングした基板の模式図である。
【図6】図6は、実施例VIの組成物を用いてコーティングした基板の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
ある局面では、本発明は、回路アセンブリを調製する方法に関する。この方法は、電着組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が高度に架橋したミクロゲル成分である、電着組成物中に半導電性基板を浸漬する工程と、前記基板と前記組成物との間に電圧を印加し、前記基板上に誘電コーティングを形成する工程とを含む。
【0013】
半導電性材料は、例えば、IV族元素半導体、IV族化合物半導体、III−V族半導体、III−V族三元半導体アロイ、III−V族四元半導体アロイ、III−V族五元半導体アロイ、II−VI族半導体、II−VI族三元アロイ半導体、I−VII族半導体、IV−VI族半導体、IV−VI族三元半導体、V−VI族半導体、II−V族半導体、層状の半導体、または有機半導体および磁性半導体を含む他の半導体であり得る。
【0014】
IV族元素半導体としては、ダイヤモンド(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)が挙げられる。IV族化合物半導体としては、炭化ケイ素(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)が挙げられる。III−V族半導体としては、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、ヒ化ホウ素(BAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、アンチモン化インジウム(InSb)、ヒ化インジウム(InAs)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)が挙げられる。III−V族三元半導体アロイとしては、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs、AlGa1−xAs)、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs、InGa1−xAs)、リン化インジウムガリウム(InGaP)、ヒ化アルミニウムインジウム(AlInAs)、アンチモン化アルミニウムインジウム(AlInSb)、窒化ヒ化ガリウム(GaAsN)、ヒ化リン化ガリウム(GaAsP)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、リン化アルミニウムガリウム(AlGaP)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、ヒ化アンチモン化インジウム(InAsSb)、およびアンチモン化インジウムガリウム(InGaSb)が挙げられる。
【0015】
III−V族四元半導体アロイとしては、リン化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInP、また、InAlGaP、InGaAlP、AlInGaP)、ヒ化リン化アルミニウムガリウム(AlGaAsP)、ヒ化リン化インジウムガリウム(InGaAsP)、ヒ化リン化アルミニウムインジウム(AlInAsP)、窒化ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAsN)、窒化ヒ化インジウムガリウム(InGaAsN)、および窒化ヒ化インジウムアルミニウム(InAlAsN)が挙げられる。
【0016】
III−V族五元半導体アロイとしては、窒化ヒ化アンチモン化ガリウムインジウム(GaInNAsSb)が挙げられる。
【0017】
II−VI族半導体としては、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化カドミウム(CdS)、テルル化カドミウム(CdTe)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、およびテルル化亜鉛(ZnTe)が挙げられる。
【0018】
II−VI族三元アロイ半導体としては、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe、CZT)、テルル化水銀カドミウム(HgCdTe)、テルル化水銀亜鉛(HgZnTe)、およびセレン化水銀亜鉛(HgZnSe)が挙げられる。
【0019】
I−VII族半導体としては、塩化第一銅(CuCl)が挙げられる。
【0020】
V−VI族半導体としては、セレン化鉛(PbSe)、硫化鉛(PbS)、テルル化鉛(PbTe)、硫化スズ(SnS)、およびテルル化スズ(SnTe)が挙げられる。
【0021】
IV−VI族三元半導体としては、テルル化鉛スズ(PbSnTe)、テルル化タリウムスズ(TlSnTe)、およびテルル化タリウムゲルマニウム(TlGeTe)が挙げられる。
【0022】
V−VI族半導体としては、テルル化ビスマス(BiTe)が挙げられる。
【0023】
II−V族半導体としては、リン化カドミウム(Cd)、ヒ化カドミウム(CdAs)、アンチモン化カドミウム(CdSb)、リン化亜鉛(Zn)、ヒ化亜鉛(ZnAs)、およびアンチモン化亜鉛(ZnSb)が挙げられる。
【0024】
層状の半導体としては、ヨウ化鉛(II)(PbI)、二硫化モリブデン(MoS)、セレン化ガリウム(GaSe)、硫化スズ(SnS)、および硫化ビスマス(Bi)が挙げられる。
【0025】
他の半導体としては、セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、ケイ化白金(PtSi)、ヨウ化ビスマス(III)(BiI)、ヨウ化水銀(II)(HgI)、および臭化タリウム(I)(TlBr)が挙げられる。
【0026】
種々雑多の半導体酸化物としては、二酸化チタン:アナターゼ(TiO)、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、二酸化ウラン(UO)、および三酸化ウラン(UO)が挙げられる。
【0027】
本発明のある実施形態では、基板の表面抵抗は1×1012ohm/sq未満であり、バルク抵抗は20Mohm未満である。
【0028】
材料組成物は、端部被覆度が改良されている。これらの材料は、流動性が低く、表面張力に対して有効に抵抗し、その場にとどまることができる。高度に架橋したミクロゲル材料を使用すると、流動制限特性が増す。
【0029】
硬化性コーティング組成物は、主要な膜形成剤であるゲル化していない活性水素含有樹脂(i)を含み得る。このようなコーティングの例は、米国特許出願公開第2006/0141143 A1号に記載されており、この文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0030】
さまざまな膜形成ポリマーが知られており、硬化性コーティング組成物に使用可能であるが、但し、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY、Vol.49、3181頁(1927)に記載のZerewitinoff試験によって決定されるような、活性水素基を含むものに限る。ある実施形態では、活性水素は、ヒドロキシル基、チオール基、一級アミン基および/または二級アミン基に由来する。
【0031】
「ゲル化していない」は、樹脂が、実質的に架橋しておらず、適切な溶媒に溶解させると、例えばASTM−D1795またはASTM−D4243に従って測定されるような、固有粘度を有することを意味する。反応生成物の固有粘度は、その分子量の指標となる。一方、ゲル化した反応生成物は、本質的にきわめて大きな分子量を有するため、固有粘度は高すぎて測定できない場合がある。本明細書で使用する場合、「実質的に架橋していない」反応生成物は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した場合、重量平均分子量(Mw)が1,000,000未満の反応生成物を指す。
【0032】
本発明の実施形態で使用するのに、種々の活性水素含有樹脂材料が適している。適切な樹脂の限定されない例としては、ポリエポキシドポリマー、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ウレタンポリマー、ケイ素系ポリマー;ポリエーテルポリマー、ポリウレアポリマー、ビニルポリマー、ポリアミドポリマー、ポリイミドポリマー、これらの混合物およびコポリマーが挙げられる。本明細書で使用する場合、「ケイ素系ポリマー」は、骨格に−SiO−単位を1個以上含むポリマーを意味する。このようなケイ素系ポリマーとしては、骨格に1つ以上の−SiO−単位を有する有機ポリマーブロックを含むポリマーのようなハイブリッドポリマーが挙げられ得る。
【0033】
ポリマーは、典型的には、水分散性の電着可能な膜形成ポリマーである。水分散性ポリマーは、本質的にイオン性であり得る。すなわち、上記ポリマーは、負電荷を付与するアニオン性官能基を含有していてもよく、または、正電荷を付与するカチオン性官能基を含有していてもよい。ほとんどの場合、上記ポリマーは、カチオン性塩の基、通常はカチオン性アミン塩の基を含有する。
【0034】
本組成物(特に、電着可能なアニオン性コーティング組成物)のポリマーとして使用するのに適した膜形成樹脂の限定されない例としては、塩基に可溶性のカルボン酸基含有ポリマー(例えば、乾燥油または半乾燥状態の脂肪酸エステルと、ジカルボン酸または無水物との反応生成物または付加物);および、脂肪酸エステル、不飽和酸または無水物と、さらなる不飽和改質材料との反応生成物が挙げられ、これらはさらにポリオールと反応する。また、不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルと、不飽和カルボン酸と少なくとも1つの他のエチレン性不飽和モノマーとの、少なくとも部分的に中和されたインターポリマーも適している。さらに別の適切な電着可能な樹脂は、アルキド−アミノプラスト媒剤(すなわち、アルキド樹脂およびアミン−アルデヒド樹脂を含有する媒剤)を含む。別の適切な電着可能なアニオン性樹脂組成物は、樹脂状ポリオールの混合エステルを含む。これらの組成物は、米国特許第3,749,657号の第9欄第1行〜75行および第10欄第1行〜第13行に詳細に記載されている。さらに、例えば、当業者に十分に知られているリン酸化ポリエポキシドまたはリン酸化アクリルポリマーのような他の酸官能性ポリマーを使用することもできる。さらに、ポリマーとして使用するのに適切なのは、1つ以上のぶら下がったカルバメート官能基を含む樹脂であり、例えば、米国特許第6,165,338号に記載されているものである。
【0035】
本発明の特定の一実施形態では、ポリマーは、カソード上に堆積可能な、活性水素を含有するイオン性の電着可能なカチオン性樹脂である。このようなカチオン性膜形成樹脂の限定されない例としては、アミン塩の基を含有する樹脂、例えば、米国特許第3,663,389号;同第3,984,299号;同第3,947,338号;同第3,947,339号に記載されているような、ポリエポキシドと一級または二級アミンとの、酸可溶性反応生成物が挙げられる。直前に記載したエポキシ−アミン反応生成物以外にも、米国特許第3,455,806号および同第3,928,157号に記載されているようなカチオン性アクリル樹脂からポリマーを選択してもよい。
【0036】
アミン塩の基を含有する樹脂以外に、四級アンモニウム塩の基を含有する樹脂を使用してもよい。これらの樹脂の例としては、有機ポリエポキシドと三級アミン塩とを反応させて形成される樹脂が挙げられる。このような樹脂は、米国特許第3,962,165号;同第3,975,346号;同第4,001,101号に記載されている。他のカチオン性樹脂の例としては、三級スルホニウム塩の基を含有する樹脂および四級ホスホニウム塩の基を含有する樹脂(例えば、それぞれ、米国特許第3,793,278号および同第3,984,922号に記載されている樹脂)が挙げられる。さらに、欧州特許出願第12463号に記載されているような膜形成樹脂を使用してもよい。さらに、米国特許第4,134,932号に記載されているような、Mannich塩基から調製したカチオン性組成物を使用してもよい。
【0037】
本発明の一実施形態では、ポリマーは、一級アミン基および/または二級アミン基を含有する正に帯電した樹脂を1つ以上含み得る。このような樹脂は、米国特許第3,663,389号;同第3,947,339号;および同第4,116,900号に記載されている。米国特許第3,947,339号では、ジエチレントリアミンまたはトリエチレンテトラアミンのようなポリアミンのポリケチミン誘導体をポリエポキシドと反応させる。反応生成物を酸で中和し、水に分散させると、遊離一級アミン基が生成する。また、ポリエポキシドを過剰量のポリアミン(例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラアミン)と反応させ、過剰量のポリアミンを反応混合物から減圧下で取り除くと、同等の生成物が形成される。このような生成物は、米国特許第3,663,389号および同第4,116,900号に記載されている。
【0038】
上述のイオン性樹脂の混合物も有益に使用することができる。本発明のある実施形態では、ポリマーは、カチオン性塩の基を有し、一級、二級および/または三級アミン基を有するポリエポキシド系ポリマー(例えば、上述のもの)、ヒドロキシル官能基および/またはアミン官能基を有するアクリルポリマーから選択される。
【0039】
上述のように、本発明の特定の一実施形態では、ポリマーは、カチオン性塩の基を有する。この場合、このようなカチオン性塩の基は、典型的には、電着可能な組成物に従来から使用されているような無機酸または有機酸を用いて樹脂を可溶化させることによって形成される。可溶化させる酸の適切な例としては、限定されないが、スルファミン酸、酢酸、乳酸、ギ酸が挙げられる。本発明のある実施形態では、可溶化させる酸は、スルファミン酸および/または乳酸を含む。
【0040】
特定の実施形態では、本発明の方法で有用なコーティング組成物は、共有結合したハロゲン原子を含む成分を1つ以上含む。本発明のために、「共有結合したハロゲン原子」は、ハロゲンイオン(例えば、水溶液中の塩化物イオン)とは対照的に、共有結合しているハロゲン原子を意味すると理解されるべきである。
【0041】
コーティング組成物は、樹脂固形物の総重量を基準として、少なくとも1重量%、または少なくとも2重量%、または少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%の共有結合したハロゲン含有量を有し得る。さらに、コーティング組成物は、50重量%以下、または30重量%以下、または25重量%以下、または20重量%以下の共有結合したハロゲンの含有量を有し得る。コーティング組成物は、上述の値を任意に組み合わせた範囲(引用した値を含む)での、共有結合したハロゲン含有量を有し得る。
【0042】
本発明のある実施形態では、コーティング組成物は、水系媒体に分散した樹脂相を含む、電着可能なコーティング組成物である。この電着可能なコーティング組成物の樹脂相に含まれる共有結合したハロゲンの含有量は、樹脂(i)に共有結合したハロゲン原子に由来し得る。このような場合、共有結合したハロゲンの含有量は、上述の任意の膜形成樹脂を形成するのに使用される反応物に起因し得る。例えば、樹脂は、ハロゲン化フェノール(例えば、塩素化ビスフェノールAまたは臭素化ビスフェノールAのようなハロゲン化多価フェノール)と、エポキシ基含有材料(例えば、樹脂(i)について先に記載されたもの)との反応生成物であり得る。アニオン基含有ポリマーの場合、後にリン酸で可溶化してもよい。または、エポキシ含有化合物をハロゲン化カルボン酸と反応させた後、任意の残ったエポキシ基とリン酸とを反応させると、適切なポリマーが得られる。次いで、アミンを用いて酸基を可溶化してもよい。同様に、カチオン性塩の基を含有するポリマーの場合、樹脂は、上述のようなエポキシ官能性材料とハロゲン化フェノールとを反応させた後、任意の残ったエポキシ基とアミンとを反応させた反応生成物であり得る。次いで、反応生成物を酸で可溶化してもよい。
【0043】
本発明の一実施形態では、樹脂(i)中の共有結合したハロゲンの含有量は、ハロゲン化フェノール、ハロゲン化ポリエポキシド、ハロゲン化アクリルポリマー、ハロゲン化ポリオレフィン、ハロゲン化リン酸エステル、およびこれらの混合物のうち少なくとも1つから選択されるハロゲン化化合物から誘導され得る。本発明の別の実施形態では、樹脂(i)中の共有結合したハロゲンの含有量は、ハロゲン化多価フェノール、例えば、塩素化ビスフェノールA(例えば、テトラクロロビスフェノールA)または臭素化ビスフェノールA(例えば、テトラブロモビスフェノールA)に由来する。さらに、共有結合したハロゲンの含有量は、ハロゲン化エポキシ化合物、例えば、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに由来し得る。
【0044】
上述の活性水素含有樹脂(i)は、硬化性コーティング組成物の総重量を基準として、10〜90重量%、または30〜45重量%の量で硬化性コーティング組成物中に存在し得る。
【0045】
上述のように、組成物は、1つ以上のポリエステル硬化剤(ii)をさらに含み得る。ポリエステル硬化剤(ii)は、1分子あたり2個以上のエステル基を有する材料である。エステル基は、許容範囲にある硬化温度および硬化時間(例えば、250℃までの温度、90分までの硬化時間)で架橋させるのに十分な量存在する。許容範囲にある硬化温度および硬化時間は、コーティングされる基板および基板の最終用途に依存することが理解されるべきである。
【0046】
ポリエステル硬化剤(ii)として一般的に適した化合物は、ポリカルボン酸のポリエステルである。限定されない例としては、ジカルボン酸のビス(2−ヒドロキシアルキル)エステル、例えば、ビス(2−ヒドロキシブチル)アゼレートおよびビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート;トリ(2−エチルヘキサノイル)トリメリテート;ならびに、ジカルボン酸無水物と、アルコール(多価アルコールが挙げられる)とから調製される酸性半エステルのポリ(2−ヒドロキシアルキル)エステルが挙げられる。後者のタイプは、最終的な官能価が3以上のポリエステルを得るのに、特に適している。ある適切な例としては、まず、当量のジカルボン酸無水物(例えば、無水コハク酸または無水フタル酸)と三価または四価のアルコール(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトール)とを150℃未満の温度で反応させ、次いで、酸性ポリエステルと、少なくとも当量のエポキシアルカン(例えば、1,2−エポキシブタン、エチレンオキシド、またはプロピレンオキシド)とを反応させることによって調製されるポリエステルが挙げられる。ポリエステル硬化剤(ii)は、無水物を含み得る。別の適切なポリエステルは、末端が低級2−ヒドロキシアルキルであるポリ−アルキレングリコールテレフタレートを含む。
【0047】
特定の実施形態では、ポリエステルは、1分子あたり少なくとも1個のエステル基を含み、このエステル化されたヒドロキシルに隣接する炭素原子が、遊離ヒドロキシル基を有する。
【0048】
さらに、無水トリメリット酸とプロピレングリコール(モル比2:1)とを反応させて調製されるハーフエステル中間体を、1,2−エポキシブタンおよび分岐モノカルボン酸のグリシジルエステルと反応させて調製される、四官能ポリエステルも適している。
【0049】
特定の一実施形態では、活性水素含有樹脂(i)がカチオン性塩の基を含む場合、ポリエステル硬化剤(ii)は、実質的に酸を含まない。本明細書の記載の目的では、「実質的に酸を含まない」は、0.2meq/g未満の酸を含むことを意味する。水系の、例えば、カソード電着可能なコーティング組成物の場合、適切なポリエステル硬化剤としては、ポリカルボン酸無水物、1つ以上のグリコール、アルコール、グリコールモノエーテル、ポリオールおよび/またはモノエポキシドから調製される、非酸性ポリエステルを挙げることができる。
【0050】
適切なポリカルボン酸無水物としては、ジカルボン酸無水物、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物を挙げることができる。無水物の混合物を使用してもよい。
【0051】
適切なアルコールとしては、直鎖アルコール、環状アルコールまたは分岐アルコールを挙げることができる。アルコールは、本質的に脂肪族、芳香族または芳香脂肪族(araliphatic)であり得る。本明細書で使用する場合、グリコールおよびモノエポキシドという用語は、1分子あたり、カルボン酸官能基または無水物官能基と150℃未満の温度で反応可能な、2個以下のアルコール基を含有する化合物を含むことが意図されている。
【0052】
適切なモノエポキシドとしては、分岐モノカルボン酸のグリシジルエステルを挙げることができる。さらに、アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを使用してもよい。適切なグリコールとしては、例えば、エチレングリコールおよびポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオールを挙げることができる。グリコールの混合物を使用してもよい。
【0053】
非酸性ポリエステルは、例えば、一つ以上の工程で、無水トリメリット酸(TMA)と、分岐モノカルボン酸のグリシジルエステルとをモル比1:1.5〜1:3で、所望の場合、オクタン酸スズまたはベンジルジメチルアミンのようなエステル化触媒を助剤として用い、50〜150℃の温度で反応させることによって調製することができる。さらに、無水トリメリット酸を、2−エチルヘキサノールのようなモノアルコール3モル当量と反応させてもよい。
【0054】
または、無水トリメリット酸(1mol)を、まずは、グリコールまたはグリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル)と、モル比1:0.5〜1:1で反応させた後、生成物を分岐モノカルボン酸のグリシジルエステル2molと反応させてもよい。さらに、ポリカルボン酸無水物(すなわち、1分子あたり2個または3個のカルボキシル官能基を含有する無水物)またはポリカルボン酸無水物の混合物を、グリコール(例えば、1,6−ヘキサンジオール)および/またはグリコールモノエーテルおよびモノエポキシドと同時に反応させた後、所望の場合、生成物をモノエポキシドと反応させてもよい。水系組成物の場合、これらの非酸性ポリエステルを、ジエチレントリアミンのようなポリアミンで修飾し、アミドポリエステルを形成してもよい。このような「アミン修飾した」ポリエステルを、上述の直鎖または分岐のアミン付加物に組み込み、自己硬化性アミン付加エステルを形成してもよい。
【0055】
上述のタイプの非酸性ポリエステルは、典型的には、有機溶媒に可溶性であり、典型的には、先に記載した活性水素含有樹脂(i)と容易に混合させることができる。
【0056】
水系で使用するのに適したポリエステル、またはこのような材料の混合物は、典型的には、カチオン性塩の基またはアニオン性塩の基(例えば、先に記載したもののうちのいずれか)を含有する樹脂の存在下、水に分散する。
【0057】
場合により、エステル交換触媒(iii)が、組成物中に存在し得る。触媒(iii)は、エステル交換反応の触媒として知られた任意の適切な触媒であり得る。本発明のある実施形態では、触媒(iii)は、金属酸化物、金属錯体または金属塩を含む。
【0058】
適切な金属酸化物としては、例えば、鉛酸化物、ビスマス酸化物、スズ酸化物(酸化ジオクチルスズまたは酸化ジブチルスズのようなジアルキルスズ酸化物が挙げられる)が挙げられる。または、酸水溶液(例えば、スルホン酸水溶液)に溶解する場合、酸化鉛および酸化ビスマスを使用してもよい。
【0059】
適切な塩としては、鉛のカルボン酸塩、亜鉛のカルボン酸塩、カルシウムのカルボン酸塩、バリウムのカルボン酸塩、鉄のカルボン酸塩、ビスマスのカルボン酸塩、スズのカルボン酸塩(ジアルキルスズジカルボキシレートが挙げられる)(例えば、オクチル酸塩またはナフテン酸塩)が挙げられる。塩の限定されない例としては、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、ギ酸ジオクチルスズが挙げられる。金属錯体の適切な例は、チタンアセチルアセトナートである。
【0060】
さらに、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のオクチル酸塩、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のナフテン酸塩、ランタニドのオクチル酸塩、ランタニドのナフテン酸塩、ジルコニウム、カドミウム、クロムのオクチル酸塩、ジルコニウム、カドミウム、クロムのナフテン酸塩;鉛、亜鉛、カドミウム、セリウム、トリウム、銅のアセチルアセトナート錯体;アルカリアルミニウムアルコラート、ならびにチタンテトライソプロポキシドも適している。
【0061】
また、上述の塩、酸化物および/または錯体のうちのいずれかの混合物を使用してもよい。
【0062】
利用可能な金属酸化物、金属塩または金属錯体、またはこれらの溶液の金属含有量がさまざまであることを考慮して、触媒の量は、組成物に含まれる金属含有量によって示され得る。硬化性コーティング組成物の総重量を基準として、0.1〜3.0重量%の金属含有量が適しており、または金属含有量が0.3〜1.6重量%のものを使用し得る。
【0063】
ある局面では、本発明は、半導電性材料上へのミクロゲル分散物のカチオン電着を用いる。カチオンミクロゲルおよび電着におけるカチオンミクロゲルの使用は、米国特許第5,096,556号に記載されており、この文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
上述のイオン基含有組成物のうちのいずれかは、電気泳動によって導電性基板に塗布され得る。電着に適用する電圧は、さまざまであり得、例えば、1ボルトの低電圧から数千ボルトの高電圧までの範囲であってもよいが、典型的には、50〜500ボルトである。電流密度は、通常は、1平方フィートあたり0.5アンペア〜5アンペア(0.5〜5ミリアンペア/平方センチメートル)であり、この電流密度は、電着中に低下していく傾向があり、この低下は、コアのすべての露出した表面上に絶縁コンフォーマル膜が形成されたことを示す。本明細書、明細書および特許請求の範囲で使用する場合、「コンフォーマル」膜または「コンフォーマル」コーティングは、存在し得る任意の穴(ふさがれていないもの)の内部の表面を含め、基板の形状に合わせて実質的に均一な厚みを有する膜またはコーティングを意味する。
【0065】
上述のような適切な方法でコーティングを塗布した後、コーティングを硬化する。コーティングを、周囲温度で硬化させるか、または90〜300℃の高温で5〜90分間かけて熱硬化させ、基板上に誘電コーティングを形成させ得る。
【0066】
誘電コーティングの厚みは、50ミクロン以下であるか、または25ミクロン以下である、または20ミクロン以下である。
【0067】
当業者は、誘電コーティングを塗布する前に、コア表面を前処理してもよく、または他の方法で、誘電コーティングを塗布するために準備をさせてもよいことを認識する。例えば、誘電体を塗布する前に掃除すること、洗浄すること、および/または接着促進剤で処理することが適切な場合もある。
【0068】
誘電コーティングを塗布した後、場合により、誘電コーティング表面を所定の模様で切除し、基板の断面を露出させてもよい。このような切除は、レーザを用いておこなってもよく、または、例えば、機械による研削、化学エッチング技法またはプラズマエッチング技法のような他の従来の技法によって行ってもよい。
【0069】
以下の実施例によって本発明を説明するが、この実施例は、本発明を細目に限定するものとみなされるべきではない。別途示していない限り、以下の実施例および明細書全体のすべての部およびパーセントは、重量基準である。
【実施例】
【0070】
以下の実施例は、電着コーティングの調製法、および回路アセンブリを形成する方法におけるこの電着コーティングの使用を示す。
【0071】
(実施例1)
以下の実施例は、以下に記載する電着可能なコーティング浴で使用するカチオンバインダの合成について記載する。バインダを、以下の成分から調製した。
【0072】
【表2】

スターラー、温度プローブ、ディーンスタークトラップを取り付けた4ッ口丸底フラスコに、窒素で覆った状態で、MAZON 1651、EPON 880、テトラブロモビスフェノールAおよびTETRONIC 150R1を入れた。混合物を70℃に加熱し、15分間攪拌した。次いで、熱源をはずし、アミノプロピルジエタノールアミンおよびジエタノールアミンを加えた。反応混合物は、発熱し、約10分後に最大温度176℃になった。反応物を1時間かけて135℃まで冷却し、ここで2−ブトキシエタノールを加え、混合物をさらに125℃まで冷却した。次いで、混合物を、最大発熱時から合計2時間、125℃に維持した。EPON 880および架橋剤をもう一度加え、溶液を125℃で2.5時間攪拌した。スルファミン酸(49.5部)を脱イオン水(1287部)に溶解し、この溶液を激しく攪拌しながら、反応混合物(3428部)を注いだ。1時間攪拌した後、さらに脱イオン水(3970部)をゆっくりと加え、不揮発性物質の含有量が30.2%の分散物を得た。
【0073】
(実施例2)
この実施例は、以下に示すミクロゲルの例を合成するのに使用する、ゲル化していないカチオン性石鹸の調製について示す。カチオン性石鹸を、以下の成分から調製した。
【0074】
【表3】

反応容器に、EPON 828、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物、ビスフェノールA、2−ブトキシエタノールを入れ、窒素雰囲気下、温度125℃に加熱した。1番目の量のベンジルジメチルアミンを加えると、反応物は発熱して180℃になった。発熱中に反応物が160℃になった時点から1時間維持した。発熱がピークに達した後、樹脂を160℃まで冷まし、維持し続けた。維持した後、反応物を130℃まで冷却し、2番目の量のベンジルジメチルアミンを加えた。推定したエポキシ当量が1070になるまで、反応物を130℃に維持した。エポキシ当量が予想値になったら、ジケチミンおよびN−メチルエタノールアミンを続けて加え、混合物を、発熱させて約150℃にした。最大発熱時から、1時間そのままにし始め、その間に反応物を125℃に冷却させた。1時間維持した後、酢酸を1番目の量の脱イオン水に溶かした溶液に、樹脂を分散させた。その後、第2、第3、第4の量の脱イオン水を用い、分散物を還元した。得られたカチオン性石鹸を、メチルイソブチルケトン濃度が0.05%未満になるまで、減圧下ストリッピングした。
【0075】
(実施例3)
この実施例は、上記の実施例2で記載したカチオン性エポキシ石鹸からカチオンミクロゲルを合成することを示す。ミクロゲルを以下の成分から調製した。
【0076】
【表4】

実施例2のカチオン性石鹸に脱イオン水を加え、窒素で覆った状態で、混合物を70℃まで加熱した。EPON 828溶液を十分に攪拌しながら、15分間かけて加えた。メチルイソブチルケトンを洗浄液として加え、混合物を70℃で45分間維持した。次いで、混合物を70分間かけて90℃に加熱し、十分に混合しながら、90℃で3時間維持した。次いで、脱イオン水を加え、混合物を冷却し、不揮発性物質の含有量が18.9%のミクロゲル分散物を得た。
【0077】
実施例3のミクロゲルは、本明細書で「ミクロゲル」と称されるか、またはある場合には、「標準的なミクロゲル」と称される。
【0078】
(実施例4)
この実施例は、上記の実施例2に記載したカチオン性エポキシ石鹸から、高度に架橋したカチオンミクロゲルを合成することを示す。高度に架橋したミクロゲルは、以下の成分から調製することができる。
【0079】
【表5】

実施例4の成分を、実施例3の成分と同じ様式で混合し、処理する。実施例3のミクロゲルは、本明細書で、「高度に架橋したミクロゲル」と称される。高度に架橋したミクロゲルは、標準的なミクロゲルよりも架橋の量が多い。
【0080】
(電着コーティング浴およびコーティング)
(実施例A)
この実施例は、以下の実施例Cで記載するコーティング浴を調製するのに使用するブレンドの調製を示す。このブレンドを以下の成分から調製した。
【0081】
【表6】

実施例1の電着樹脂を、ゆっくりと攪拌しつつ容器に入れた。この樹脂に、攪拌しつつ、エチレングリコールモノヘキシルエーテルをゆっくりと加え、30分間攪拌した。次いで、この混合物に脱イオン水を加えた。
【0082】
(実施例B)
この実施例は、以下の実施例Cで記載するコーティング浴を調製するのに使用する第2のブレンドの調製を示す。実施例Aのブレンドに以下の触媒を加えることによって、この第2のブレンドを調製した。
【0083】
【表7】

上記の成分を軽く攪拌しながら、30分間混合した。
【0084】
(実施例C)
実施例Bを繰り返した。限外濾過によって、コーティング浴から透過物約1720gを取り出し、この透過物は脱イオン水で置き換えられた。限外濾過した塗料の最終的なpHは5.08であり、導電率は、566マイクロジーメンスであった。タンクの固形物の測定値(110℃で1時間)は、9.43%であった。
【0085】
(実施例D)
実施例Cの電着可能なコーティング組成物を、電着浴から、温度85°Fで240秒かけ、0.5アンペアで電気泳動によってケイ素基板に塗布した。3つのサンプルを150、200、250ボルトの電圧を用いてコーティングした。次いで、このコーティングを240℃で30分間硬化した。
【0086】
(さらなる電着組成物の例)
(実施例I)
【0087】
【表8】

(実施例II)
【0088】
【表9】

(実施例III)
【0089】
【表10】

(実施例IV)
【0090】
【表11】

(実施例V)
【0091】
【表12】

(実施例VI)
【0092】
【表13】

実施例IV〜VIで、界面活性剤ブレンドは、Air Products and Chemicals Inc.から入手可能な85−XS−139であり、低イオンポリオールはKP−96−1578であり、合体溶媒はヘキシルセルソルブであり、軟化剤は、エポキシ軟化剤(FQ 408)European Champ Code WE−43−1330である。軟化剤を製造するために、適切に装置を取り付けた3L丸底フラスコに、DER732(Dow Chemical Co.から入手可能な脂肪族エポキシ樹脂)711g、ビスフェノールA 172gを入れる。この混合物を130℃に加熱し、ベンジルジメチルアミン1.65gを加える。反応混合物のエポキシド当量が1232になるまで、反応混合物を135℃に維持する。ブトキシエタノール58.8gを加え、次いで、混合物を95℃に冷却する。Jeffamine D400(Huntsman Corp.から入手可能なポリオキシプロピレンジアミン)184.7gを加え、固形分が50%になるようにメトキシプロパノールで希釈した樹脂のサンプルのGardner−Holdt粘度が「H−J」になるまで、反応物を95℃に維持する。Epon 828 19.1gとブトキシエタノール3.4gの混合物を加え、固形分が50%になるようにメトキシプロパノールで希釈した樹脂のサンプルのGardner−Holdt粘度が「Q−」になるまで、混合物を維持する。この樹脂989gを、脱イオン水1047gと酢酸(acetic)19gの混合物に注ぎ、30分間混合する。次いで、脱イオン水1030gを加え、十分に混合する。最終的な水系分散物は、固形物含有量の測定値が30%であった。
【0093】
実施例I〜VIの性質をまとめたものを表1に示す。
【0094】
【表1】

表Iで、高温焼付樹脂ブレンドは、実施例I〜IIIのように、ポリエステルを含む高分子量のカチオン性エポキシ樹脂であり、低温焼付樹脂ブレンドは、実施例IV〜VIのように、エポキシウレタン樹脂である。端部被覆度は、図1〜6の端部付近のコーティング厚をあらわす。ビア被覆度は、基板中のビア底部でのコーティング厚をあらわす。
【0095】
図1〜6は、それぞれ、実施例I〜VIの組成物でコーティングされた基板の模式図である。
【0096】
図1は、半導電性層12を備える基板10を示しており、この例における基板10は、ケイ素である。半導電性層は、端部16および18を有するノッチまたはビア14を画定している。誘電コーティング20は、実施例Iの組成物を用い、半導電性層上に堆積している。端部付近のコーティング厚は、1ミクロン以下である。
【0097】
図2は、半導電性層24を備える基板22を示しており、この例における基板10は、ケイ素である。半導電性層は、端部28および30を有するノッチまたはビア26を画定している。誘電コーティング32は、実施例Iの組成物を用い、半導電性層上に堆積している。端部付近のコーティング厚は、約11ミクロンである。
【0098】
図3は、半導電性層36を備える基板34を示しており、この例における基板10は、ケイ素である。半導電性層は、端部40および42を有するノッチ38を画定している。誘電コーティング44は、実施例Iの組成物を用い、半導電性層上に堆積している。端部付近のコーティング厚は、約10ミクロンである。
【0099】
図4は、半導電性層48を備える基板46を示しており、この例における基板10は、ケイ素である。半導電性層は、端部52および54を有するノッチ50を画定している。誘電コーティング56は、実施例Iの組成物を用い、半導電性層上に堆積している。端部付近のコーティング厚は、2ミクロン未満である。
【0100】
図5は、半導電性層60を備える基板58を示しており、この例における基板10は、ケイ素である。半導電性層は、端部64および66を有するノッチ62を画定している。誘電コーティング68は、実施例Iの組成物を用い、半導電性層上に堆積している。端部付近のコーティング厚は、約3ミクロンである。
【0101】
図6は、半導電性層72を備える基板70を示しており、この例における基板10は、ケイ素である。半導電性層は、端部76および78を有するノッチ74を画定している。誘電コーティング80は、実施例Iの組成物を用い、半導電性層上に堆積している。端部付近のコーティング厚は、約8ミクロンである。
【0102】
最小コーティング厚が、例えば5ミクロンと特定される場合、実施例I、IV、Vは、特定された最小の厚みを満たしていないことは明らかである。しかし、実施例II、III、VIは、高度に架橋したミクロゲルを、樹脂固形物の少なくとも20%のレベルで含んでおり、ビアの端部で指定されたコーティング厚を満たしている。他の実施形態では、最小コーティング厚は、7ミクロンであり得る。
【0103】
この実施例以外の例、または別途示されている場合、明細書および特許請求の範囲で用いられている成分の量、反応条件などをあらわすすべての数値は、すべての場合に用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、矛盾する内容が示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載した数値パラメータは、本発明によって与えられると考えられる所望の性質によって変わる場合がある、近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限するつもりはなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数を考慮し、かつ、通常の丸めの技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0104】
本発明の広範な範囲を示す数値範囲および数値パラメータは近似値であるが、特定の実施例に記載した数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値にみられる標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を本質的に含んでいる。
【0105】
さらに、本明細書に記載されるいずれの数値範囲も、その範囲に包含されるすべてのサブレンジを含むことが意図されていると理解される。例えば、「1〜10」の範囲は、記載された最小値1と記載された最大値10との間にあり、これらの記載された値を含むすべてのサブレンジ、すなわち、1以上の最小値を有し、10以下の最大値を有するすべてのサブレンジを含むことを意図している。
【0106】
本発明の特定の実施形態を、説明の目的で先に記載したが、添付の特許請求の範囲に定義される通りの本発明から逸脱することなく、本発明の詳細の多くについて改変がなされ得ることは、当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が、高度に架橋したミクロゲル成分である、電着組成物中に半導電性基板を浸漬する工程と;
前記基板と前記組成物との間に電圧を印加し、前記基板上に誘電コーティングを形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記組成物中の樹脂固形物のうち20重量%〜50重量%が、高度に架橋したミクロゲル成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物中の樹脂固形物のうち27重量%〜33重量%が、高度に架橋したミクロゲル成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、前記組成物中の樹脂固形物の20重量%〜50重量%を構成する、標準的なミクロゲルと前記高度に架橋したミクロゲルとの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、高分子量のカチオン性エポキシ樹脂を含み、前記方法が、前記コーティングを少なくとも150分間、200℃以下の温度まで加熱する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、エポキシウレタン樹脂を含み、前記方法が、前記コーティングを少なくとも30分間、175℃以下の温度に加熱する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板が、直径が250ミクロン未満のビアを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基板がケイ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、活性水素含有樹脂を1つ以上含み、該活性水素含有樹脂が、前記組成物中に存在する樹脂固形物の総重量を基準として、共有結合したハロゲンを20重量%より多く含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、ポリエステル硬化剤を1つ以上含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記活性水素含有樹脂が、ポリエポキシドポリマーおよびアクリルポリマーのうち、少なくとも1つに由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂が、ハロゲン化ポリエポキシドおよび/またはハロゲン化アクリルポリマーに由来する、共有結合したハロゲン含有量を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
樹脂(i)中に存在する前記共有結合したハロゲンが、ハロゲン化多価フェノールに由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ハロゲン化多価フェノールが、塩素化ビスフェノールAおよび臭素化ビスフェノールAのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化多価フェノールが、テトラブロモビスフェノールAを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記活性水素含有樹脂が、カチオン性塩基を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリエステルが、1分子あたり2個以上のエステル基を有するポリカルボン酸ポリエステルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリエステルが、酸を実質的に含まない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリエステルが、1分子あたり少なくとも1個のエステル基を含み、このエステル化されたヒドロキシルに隣接する炭素原子が、遊離ヒドロキシル基を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、金属酸化物、金属塩または金属錯体を含むエステル交換触媒をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記金属酸化物、金属塩および/または金属錯体が、スズ、ビスマス、および鉛から選択される金属に由来する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
電着に使用する組成物であって、
樹脂ブレンドと;
合体溶媒と;
触媒と;
水と;
高度に架橋したミクロゲルとを含み、該組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が、高度に架橋したミクロゲルである、組成物。
【請求項23】
前記組成物中の樹脂固形物のうち20重量%〜50重量%が、高度に架橋したミクロゲル成分を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物中の樹脂固形物のうち27重量%〜33重量%が、高度に架橋したミクロゲル成分を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記触媒がスズを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
電着に使用する組成物であって、
界面活性剤ブレンドと;
低イオンポリオールと;
フェノキシプロパノールと;
触媒と;
水と;
軟化剤と;
高度に架橋したミクロゲルとを含み、該組成物中の樹脂固形物のうち少なくとも20重量%が、高度に架橋したミクロゲルである、組成物。
【請求項27】
前記組成物中の樹脂固形物のうち20重量%〜50重量%が、高度に架橋したミクロゲル成分を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物中の樹脂固形物のうち27重量%〜33重量%が、高度に架橋したミクロゲル成分を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記触媒がスズを含む、請求項26に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−515583(P2011−515583A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500918(P2011−500918)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037489
【国際公開番号】WO2009/117475
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)