説明

半殻部品を製造するための方法及び装置

本発明は、絞りパンチと絞りダイを用いて半殻部品を製造する方法に関する。高い寸法安定性のある半殻部品のプロセス信頼性があり、かつ費用効率が高い製造のための方法を提供するという目的は、単一の作業工程で、絞りパンチを絞りダイの中に進め、板金ブランクを少なくとも1つのベース区分と、少なくとも1つのフレーム区分とを備え、かつ任意にフランジ区分を備え得る板金未加工部品に予備成形し、この予備成形中に、絞りパンチを用いて、板金未加工部品のベース区分及びフレーム区分又は任意のフランジ区分のいずれかに材料過剰分を導入し、かつ半殻部品を形成するように板金未加工部品を仕上げ、較正するという点において達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞りパンチと絞りダイを用いて半殻部品を製造する方法に関する。絞りパンチと絞りダイを用いて半殻部品を製造するための装置並びに前記方法によって製造できる半殻部品も本発明の主題である。
【背景技術】
【0002】
自動車の組立てにおいては、閉じているか又は開いている中空プロファイルを構造要素として一般的に使用する。これらは次第にその断面及び材料厚をそれぞれの用途に合わせて明確に適合させなければならない半殻部品で構成されるようになっている。
【0003】
半殻部品を製造するためには、典型的に板金ブランクを深絞りする。深絞り中、必然的に半殻部品に応力が導入され、これが仕上げ段階後の弾性回復につながる。しかしながら、半殻部品の弾性回復は、例えば半殻部品を溶接して閉じた中空プロファイルを形成するためのダイにおける半殻部品の正確な位置決めを複雑にする。
【0004】
そこで、特許文献1では、まず最初に第1装置で板金ブランクから、製造すべき半殻部品に比べて材料過剰分がベース区分にある板金未加工部品を予備成形することを提案している。この板金未加工部品を次にさらなる装置で仕上げ、ここで、ベース区分に存在する材料過剰分を板金未加工部品の他区分に移動させて半殻部品を形成する。このようにして、弾性回復の程度を減らすことができる。しかしながら、所望の半殻部品を得るためには2つの装置と2つの操作段階が必要である。
【0005】
特許文献2から、凸構造と凹構造が両方とも存在する、半殻部品の一部の区分を改良された品質で深絞りすることができる方法がさらに知られている。このために、絞りダイにバネ荷重滑動部が設けられている。絞りパンチの下向き運動中、まず最初に絞りパンチと可動部の対応面との間の一部の関連区分に板金ブランクが形成され、その後に板金ブランクが全体として深絞りされる。このようにして材料過剰分が特定領域で阻止されるであろう。この公知方法は、半殻部品の一部の区分の形状精度を改善できるだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007059251(A1)号明細書(DE 10 2007 059 251 A1)
【特許文献2】独国特許出願公開第19853130(A1)号明細書(DE 198 130 A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上記従来技術に基づいて、本発明の目的は、高い寸法安定性のある半殻部品のプロセス信頼性があり、かつ費用効率が高い製造のための方法及び装置を提供することである。閉じているか又は開いている中空プロファイルを少ない労力と費用で製作できる半殻部品をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
プロセスに関しては、この目的は、半殻部品の製造のため絞りパンチと絞りダイを使用するという点、及び単一の作業工程で、絞りパンチを絞りダイの中に進め、板金ブランクを少なくとも1つのベース区分と、少なくとも1つのフレーム区分とを備え、かつ任意にフランジ区分を備え得る板金未加工部品に予備成形し、この予備成形中に、絞りパンチを用いて材料過剰分を板金未加工部品のベース区分及びフレーム区分又は任意のフランジ区分のいずれかに導入し、かつ半殻部品を形成するように板金未加工部品を仕上げ、較正するという点において本発明の第1の教示により達成される。
【0009】
冷間成形工程として又は熱間成形工程として予備成形及び/又は仕上げを行うことができる。熱間成形では、鋼の板金ブランクを通常Ac1より高い温度、好ましくはAc3より高い温度で加熱して成形する。この関係では、オーステナイト構造のより良い成形特性を利用するため、かつオーステナイトのマルテンサイト又は他の構造への変化によってその後の硬化を可能にするため、熱間成形中のオーステナイトへの構造変化が望ましい。
【0010】
従って、フランジのない半殻部品の製造では板金未加工部品のベース区分及びフレーム区分、或いはフランジ付き半殻部品の製造では板金未加工部品の任意のフランジ区分のいずれかに、半殻部品の対応領域よりも多くの材料が存在する。この材料過剰分は、仕上げ及び較正中に他の区分に移動可能であり、これが塑性域にある半殻部品全体に圧縮応力を誘導し、このようにして深絞り後の弾性回復が低減又は抑制される。従って、本発明の方法は、高い寸法安定性、すなわち、非常に低い公差によって特徴づけられる半殻部品をもたらす。
【0011】
本方法の第1の変形では、絞りダイの方向に突出して位置付けできる少なくとも1つのベースパンチと、対応するベースパンチ受け部とを含む絞りパンチの使用が想定される。突出位置に配置されたベースパンチを用いると、板金未加工部品の予備成形中に材料過剰分が板金未加工部品のベース区分及びフレーム区分、又は任意のフランジ区分のいずれかに導入される。このような少なくとも2つの部品の絞りパンチを用いると、プロセス信頼性のある様式で予備成形中に材料過剰分が板金未加工部品に生じ得る。さらに、突出するように位置付けできるベースパンチを備える絞りパンチの製造は、ほとんど労力を必要としないので、低コストである。
【0012】
本方法の次の変形は、ベースパンチが、絞りダイに隣接する板金未加工部品の上で静止したらすぐに、ベースパンチをベースパンチ受け部の中に進めることによって板金未加工部品を仕上げることを想定する。このようにして、ベースパンチで特に簡単な様式で絞りダイ上に板金未加工部品を保持することができ、その結果、仕上げ及び較正において、予備成形された板金未加工部品が滑るのを防止することができる。絞りダイに隣接する板金未加工部品上にベースパンチを置くことによって、成形及び較正の非常に早い段階で目標とする様式で材料の流れをさらに制御することができ、結果として、弾性回復のない半殻部品を製造することができる。
【0013】
単一の作業工程で板金未加工部品をトリミングするという点で、本方法をさらに発展させ得る。高い寸法安定性のあるトリミングされた半殻部品の単一作業工程での製造は、一方でサイクル時間の短縮を可能にする。他方で単一装置の使用が可能である。結果として本方法の大幅な節約を達成することができる。
【0014】
絞りパンチに配置された切断エッジで板金未加工部品をトリミングするのが好ましい。この関係では、切断エッジを絞りパンチ自体に形成することができる。しかし、これとは別に、切断エッジを含む切断プレートを設けることもでき、絞りパンチに固定し、特に可動にすることもできる。別個の切断プレートを使用することによって、例えば絞りパンチの切断エッジと残りの領域は異なる程度の摩耗を受けるという事実を考慮することができる。
【0015】
さらなる変形は、絞りダイに接している板金未加工部品の上にベースパンチを置くと同時に切断エッジを板金未加工部品と接触させることを想定する。従って、切断エッジは、予備成形が大体完了する時点で板金未加工部品と接触する。このようにして、さらなる材料が絞りダイに流入するか又は再び絞りダイから流出するのを切断エッジで抑制する。予備成形中に材料過剰分を導入するため、切断エッジが、まだわずかな引張応力にさらされている可能性のある板金未加工部品の区分とさらに接触することができ、その結果、正確に定義された点で板金未加工部品をスクラップから分離することができる。
【0016】
仕上げ及び較正中に、材料過剰分を板金未加工部品のベース区分から板金未加工部品のフレーム区分及び/又は任意のフランジ区分に押し込むという点において、本発明の方法を発展させることもできる。このようにして、材料過剰分が予備成形中に導入される領域内のみならず、隣接するフレーム区分及び/又は任意のフランジ区分内でも移動が起こり、その結果、全体として半殻部品の寸法安定性をなおさらに改善することができる。
【0017】
本方法のさらなる改変においては、板金部品を少なくともフレーム区分内で、好ましくはベース区分内でも、圧縮面を使用することによって圧縮すれば、製造される半殻部品の寸法安定性が上昇し得る。圧縮を利用して、深絞りで起こる望ましくない不均質な応力及び膨張の分布を重ね合わせ、これによって意図的に調整することができ、その結果、これらは不要の弾性回復を生じさせない。特に、全断面長にわたる圧縮のため、全ての区分で非常に高い寸法安定性を有する半殻部品を製造することができる。
【0018】
このためには切断エッジに隣接する圧縮面を使用するのが好ましく、その結果、同時に板金未加工部品の切断面が圧縮面で滑らかにされる。しかし、その後、特に例えばフランジ付き半殻部品の製造において切断面と直接隣接しない、板金未加工部品のフレーム区分を圧縮すべき場合、切断エッジと圧縮面を互いに別々に配置することができる。
【0019】
本発明のさらなる変形は、少なくとも予備成形の開始時に板金ブランクを押下装置で保持することを想定する。特に薄い板金ブランクの場合、これによって深絞り中のしわの形成を大いに回避することができる。また、押下装置を用いて目標とする様式で絞りダイへの材料の流れを制御することができる。
【0020】
本発明のさらなる改変では、フランジのない半殻部品を製造する。フランジのない半殻部品をI−ジョイントで接合して、いずれの干渉する突出区分をも持たない閉じた中空プロファイルを形成することができる。このようにしてさらに重量の節減を達成することができる。
【0021】
しかしこれとは別に、フランジ付き半殻部品を製造することもできる。フランジがあれば平面が利用可能になり、例えば平面を用いて半殻部品を平構造部品上に簡単に溶接することができる。さらに、フランジは、半殻部品がさらなる構造要素に結合するための十分に大きい表面を与えることができる。
【0022】
本発明の第2の教示により、ここで前述した目的は、絞りパンチと、絞りダイと、絞りパンチを絞りダイの中に進める手段とを含む装置であって、板金ブランクを絞りパンチと絞りダイの間に位置付けることができ、板金ブランクを絞りパンチを用いて予備成形して板金未加工部品を形成することができ、絞りパンチは、材料過剰分を板金未加工部品のベース区分及びフレーム区分又は任意のフランジ区分のいずれかに導入する手段を含み、かつ半殻部品を形成するように板金未加工部品を仕上げ、較正することができる装置によって達成された。このように本発明の装置は、単一の道具で板金ブランクを高い寸法安定性のある半殻部品にすることができ、これによって大幅なコスト削減を達成することができる。材料過剰分を導入する手段は、絞りパンチの形状を変える装置という文脈の中で利用できるようになり得る。例えば圧力媒体で上反りにアーチ状に曲げられる膜をこのために使用することができる。
【0023】
しかしながら、装置の簡単な第1の変形は、絞りダイの方向に突出するように位置付けできるベースパンチと、対応するベースパンチ受け部とを想定し、これらを利用して、予備成形中に板金未加工部品に材料過剰分を導入することができる。このような絞りパンチの製造は比較的簡単なので、該装置は非常にコスト効率が高い。
【0024】
装置の次の変形は、トリミングする手段、特に絞りパンチに配置された少なくとも1つの切断エッジを備えることを想定する。この変形は、同装置を用いてトリミングを行えるようにもするので、さらなるコスト優位性及び時間節約を獲得することができる。
【0025】
さらに、絞りダイが絞りパンチの切断エッジと関連するクリアランスを有するように装置を構成することができる。板金未加工部品をトリミングするとき、このクリアランスにスクラップを移動させることができるので、特に滑らかな切断面を得ることができる。
【0026】
装置のさらなる変形によりクリアランスの深さが少なくとも、形成すべき板金ブランクの厚さに相当する場合、スクラップの固着及び妨害を防止することができ、本発明の方法をよりプロセス信頼性のある様式で行うことができる。
【0027】
絞りダイが流入輪郭、例えば流入円形部分を有する、装置の改変は、絞りダイへの材料の流れを促進する。さらに、流入輪郭は、配置中に切断エッジのセルフセンタリングを引き起こすという利点を有する。この関係では、好ましくは流入円形部分がクリアランスと関連する。
【0028】
装置のさらなる変形は、絞りダイが絞りダイの中に完全に進んだ位置では、切断エッジが、絞りダイに、特にクリアランスに配置された対向切断エッジから深絞り方向に間隔を空けて配置され、或いは同じ高さに配置される。
【0029】
板金未加工部品の圧力荷重を大幅に回避すべき場合、クリアランスの対向切断エッジを絞りパンチの切断エッジと同じ高さに配置することもできる。
【0030】
切断エッジに匹敵する様式では、絞りダイ自体の上又は絞りダイに必要に応じて可動的に固定された対向切断プレート上に切断エッジを形成することができる。
【0031】
深絞り方向に間隔を空けて配置される切断エッジでは、仕上げ及び較正中に絞りパンチと絞りダイの間の空間にある板金未加工部品が圧力荷重を受けることができ、その結果、板金未加工部品が圧縮される。このようにして、絞りプロセス後に存在する望ましくない不均質な応力及び膨張の分布を重ね合わせて、新たに調整された応力に変換することができ、これが半殻部品の望ましくない弾性回復を抑制する。すなわちその寸法安定性を改善することができる。断面全体にわたって行われる圧縮は、半殻部品の断面全体に塑性流動を生じさせる応力状態をもたらす。
【0032】
本発明の別の改変は、切断エッジに隣接する絞りパンチの圧縮面を提供する。このようにして板金未加工部品を切断面で意図的に圧縮することもでき、それによって特に滑らかな切断面を得ることができる。
【0033】
深絞り中、板金未加工部品のフレーム区分及び/又はベース区分を形成する板金ブランクの区分は、対向切断エッジと接触する可能性がある。それでもなお満足できる材料の流れを確保するため、さらなる変形では、対向切断エッジに丸みをつけることができる。
【0034】
本発明の装置及び本発明の方法を用いて、壁厚Wを有する半殻部品であって、この半殻部品の切断面の平滑切断率が壁厚Wの少なくとも3分の1である半殻部品を製造することができる。このような半殻部品は、それらの切断面にて他の構造部品にI−ジョイントで特にうまく溶接可能である。
【0035】
本発明の方法の説明で本装置のさらなる有利な特性を理解することができる。
【0036】
以下、本発明についてさらに詳細に記載し、例示実施形態を示す図面の助けを借りて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の装置の第1例示実施形態の様々な状態の断面図である。
【図2】図1に示す装置で製造できる半殻部品の例示実施形態の斜視図である。
【図3】図2に示す半殻部品の切断面(3a)を、従来技術から得た半殻部品の切断面(3b)と比較した断面図である。
【図4】本発明の装置の第2例示実施形態の様々な状態の部分断面図である。
【図5】本発明の装置の第3例示実施形態の様々な状態の断面図である。
【図6】図5に示す装置で製造できる半殻部品の例示実施形態の斜視図である。
【図7】本発明の装置の第4例示実施形態の様々な状態の断面図である。
【図8】図7に示す装置で製造できる半殻部品の例示実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示す装置は、絞りパンチ1を含み、この絞りパンチ1を手段(図示せず)で絞りダイ2の中に進めることができ、それによって、板金ブランク17からまず最初に板金未加工部品5を製造してから、この板金未加工部品5から半殻部品3を製造するように、図1a〜1cにそれぞれ示す位置に絞りパンチ1を至らせることができる。
【0039】
絞りパンチ1は、板金未加工部品5のベース区分4に材料過剰分を導入する手段を有する。それは、ベースパンチ受け部7内に移動可能に配置されるベースパンチ6によって変更可能な形状を有する。ベースパンチ6の、絞りダイ2に面しているエッジ8及び9は丸くなっているので、板金未加工部品5のベース区分4におけるキンク形成の危険を低減することができる。
【0040】
切断エッジ10及び切断エッジ10に直接隣接する圧縮面11も絞りパンチ1に形成されている。この関係では、圧縮面11は、深絞り方向、すなわち絞りパンチ1が絞りダイ2の中に進む方向に実質的に垂直に調整される。
【0041】
絞りダイ2は、流入円形部分13のあるクリアランス12を有し、これが段階的に絞りダイフレーム区分16に変わり、製造すべき半殻部品3のフレーム区分15を形成し、それによって対向切断エッジ14が形成される。同時に、深絞り中に板金ブランク17が対向切断エッジ14によって妨害されないように、クリアランス12は十分に幅が広くかつ深い。
【0042】
まず最初に板金ブランク17を絞りパンチ1と絞りダイ2の間に配置する(図1aに示す状態に相当する)。同時に押下装置18を用いて厚さPの板金ブランク17を絞りダイ2の上で保持する。ベースパンチ6は絞りダイ2の方向に突出する位置にあり、板金ブランク17と接触している。
【0043】
次に、機械式、空気圧式又は水圧式であってよい推進手段(図示せず)を利用して、絞りパンチ1と絞りダイ2を図1bに示す位置に至らせる。それによって板金ブランク17が、フレーム区分15とベース区分4を備える板金未加工部品5に予備成形される。固定手段(ここでは示さず)を利用してベースパンチ6を上記位置に固定する。しかしながら、予備成形中に、例えば水圧又は空気圧シリンダーを用いて、或いはバネを利用して、ベースパンチ6を突出した位置で保持することも考えられる。
【0044】
一方では材料を下に引くことができるが、他方では板金ブランク17がアーチ状になり、それに伴ってしわが形成されるのを回避するように、押下装置18によって板金ブランク17を絞りダイ2の上で保持する。
【0045】
突出したベースパンチ6を利用して、ベースを所望の幾何形状にたるませ、すなわち板金未加工部品5のベース区分4に材料過剰分を導入する。流入円形部分13の領域で板金未加工部品5がクリアランス12と接している。ベースパンチ6は、絞りダイ2に隣接する板金未加工部品5の上の図1bに示す位置に落ち着く。同時に絞りパンチ1の切断エッジ10が板金未加工部品5と接触する。
【0046】
この位置では、ベースパンチ6の固定装置がもはや解放され、その結果、絞りパンチ1がさらに絞りダイ2の中に進むにつれて、ベースパンチ6がベースパンチ受け部7の中に移動する。ベースパンチ6が水圧若しくは空気圧シリンダー又はバネで突出位置に保持されている場合、推進手段は、シリンダー又はバネによってもたらされる力に打ち勝てば足りる。
【0047】
絞りパンチ1と絞りダイ2が正確に規定された位置に近づくにつれて、切断エッジ10によって板金未加工部品5内に局部応力が生成され、その結果、割れ目が生じ、板金未加工部品5のトリミングが行われる。同時にスクラップ19、すなわち板金ブランク17の未使用材料は、絞りダイ2のクリアランス12の中に移動する。
【0048】
矢印で示すように、同時に、予備成形で生じた材料過剰分は、ベース区分4及びフレーム区分15から板金未加工部品5全体に押し込まれる。このようにして板金ブランク17の深絞りに起因するフレーム区分15内の応力が意図的に調整される。従って、この装置で製造された半殻部品の弾性回復はいずれの場合もほんのわずかであり、半殻部品の寸法安定性が改善される。
【0049】
図1cに示す位置では、絞りパンチ1が絞りダイ2の中に完全に進んでいる。従って、絞りパンチ1と絞りダイ2は基本的に、製造すべき半殻部品の内部及び外部の輪郭のネガ像を形成する。
【0050】
この関係では絞りパンチ1の切断エッジ10が、絞りダイ2と関連する対向切断エッジ14から深絞り方向に間隔を空けて配置されている。このようにして仕上げ及び較正の過程でフレーム区分15を圧縮することができる。このことは、図2に示すフランジのない完成半殻部品3の高い寸法安定性にも寄与し、特に相対的に滑らかな切断面20によって特徴づけられる。
【0051】
本発明の半殻部品3の壁厚Wについては、図3aに示すように、切断面20の平滑切断率が、従来技術(図3b)から得た半殻部品に比べて3分の1より高い。結果として、図示した半殻部品3を特に簡単なやり方で、さらなる構造要素、特に匹敵装置で製造された半殻部品に、I−ジョイントで、閉じた中空殻プロファイルを形成するように溶接することができる。
【0052】
図4は、フランジのない半殻部品3’を製造するための装置の代替実施形態の一部を示す。これは同様にベースパンチ6’を備える絞りパンチ1’と絞りダイ2’とを含む。しかし、クリアランス12’には段がないが、傾斜面21’を備えて絞りダイフレーム区分16’になっている。
【0053】
傾斜面21’を段のある移行部と比較すると、より鈍角の対向切断エッジ14’が形成されるという利点がある。そのため対向切断エッジ14’の摩耗を減らすことができる。さらに、より簡単に製造することができる。他方で、段のある移行部はトリミグ中に移動されるスクラップへの抵抗が少なく、装置のスクラップ妨害の危険を低減する。さらに、傾斜面21’は、トリミング中の切断エッジ10’のセルフセンタリングを引き起こす。
【0054】
図1に示す装置と同様に、完全に絞りダイ2’の中に進んだ絞りパンチ1’の位置の切断エッジ10’は、さらに、対向切断エッジ14’より深い絞り方向にある(図4e参照)。結果として、図4に示す装置では、半殻部品3’の断面全体が圧縮され、塑性状態に変わる。
【0055】
傾斜面を有するクリアランスのみならず、段のあるクリアランスも切断エッジ及び対向切断エッジの配置を併せ持つことができ、その場合、絞りダイの中に完全に進んだ絞りパンチの位置の切断エッジと対向切断エッジは、少なくとも同じ高さである。
【0056】
板金ブランク17’から板金未加工部品5’を経て半殻部品3’への成形手順の順序については、図1に関して与えた説明を参照されたい。
【0057】
最後に、図5は、フランジ付き半殻部品3’’を製造できる本発明の装置の実施形態を示す。前述した装置に対応して、図5に示す装置は同様にベースパンチ6’’を備える絞りパンチ1’’を含み、さらにフランジ形成パンチ33’’を包含する。
【0058】
絞りダイ2’’は、板金未加工部品5’’のベース区分4’’を形成する絞りダイベース区分22’’と、板金未加工部品5’’のフレーム区分14’’を形成する絞りダイフレーム区分16’’と、板金未加工部品5’’のフランジ区分23’’を形成する絞りダイフランジ区分24’’とを含む。この関係では、絞りダイフランジ区分24’’から絞りダイフレーム区分16’’への移行部25’’は、流入円形部分と絞り角半径を含む。
【0059】
対応する様式で、ベースパンチ6’’は、ベース区分26’’とベースパンチフレーム区分27’’を含み、フランジ形成パンチ33’’は、切断エッジ10’’を備えるフランジ形成パンチ区分28’’を含む。拡大して示してある傾斜面21’’は、この切断エッジ10’’と絞りダイ2’’側で係り合いを持って、切断エッジ10’’のセルフセンタリングを可能にする。
【0060】
フランジ付き半殻部品3’’を製造するため、図5aに示すように、まず最初に板金ブランク17’’を絞りパンチ1’’と絞りダイ2’’の間に配置する。そのとき絞りパンチ1’’のベースパンチ6’’は、絞りダイ2’’の方向に突出する位置にある。絞りダイフランジ区分24’’の外側で押下装置18’’によって板金ブランク17’’を絞りダイ2’’の上で保持する。同時に、押下装置18’’によって板金ブランク17’’に対して保持されている絞りダイ2’’の対向保持区分30’’は、絞りダイフランジ区分24’’に比べて絞りダイベース区分22’’からさらに間隔を空けて配置されている。
【0061】
絞りパンチ1’’を絞りダイ2’’の中に進めることによって、まず最初に板金未加工部品5’’が形成され、この板金未加工部品5’’のフランジ区分23’’に材料過剰分が生じる(図5b参照)。板金未加工部品5’’のフランジ区分23’’は、絞りパンチフランジ区分24’’の移動平面及び対向保持区分30’’のため、板金ブランクが絞られるときに凹状屈曲のみならず凸状屈曲も経験する。
【0062】
絞りダイベース区分22’’と接している板金未加工部品5’’の上にベースパンチ6’’が置かれると同時に、切断エッジ10’’が板金未加工部品5’’と接触する。
【0063】
板金未加工部品5’’上にベースパンチ6’’が置かれた後、フランジ形成パンチ33’’だけはまだ絞りダイ2’’の方向に移動し、板金未加工部品5’’が切断エッジ10’’でトリミングされてフランジ付き半殻部品3’’が形成され、仕上げ及び較正される。
【0064】
図5cに示すように、絞りパンチ1’’が絞りダイ2’’の中に完全に進んだ位置では、フランジ形成パンチ区分28’’は絞りパンチフランジ区分24’’のオフセット輪郭として形成されるのが分かる。このオフセットは板金ブランク17’’の厚さP’’を有するので、フランジ区分23’’の過剰材料によって圧縮される。絞りパンチベース区分26’’と絞りダイベース区分22’’の間のオフセットは、板金ブランク17’’の厚さP’’に相当する。絞りダイフレーム区分16’’と絞りパンチフレーム区分27’’の間では、図5a〜5cには示していないが、仕上げ及び較正中の板金未加工部品5’’の異なる区分間の材料の流れを許容するように、絞りギャップによってオフセットが増加する。
【0065】
このようにして、例えば、本装置で非常に寸法安定性のあるトリミングされた半殻部品3’’を製造することができ、図6にその斜視図を示してある。
【0066】
図7は、本発明の装置の実施形態のさらなる変形を示し、これを用いて、図8に斜視図を示すように、フランジのない半殻部品3’’’を製造することができる。
【0067】
図5a〜5cに示す装置に比べて唯一の差異は、フランジ形成パンチ33’’’が、切断エッジ10’’’を備える凹所を有することであり、その結果、板金未加工部品5’’’のトリミング後に、装置がさらに進むため、板金未加工部品5’’’の末端区分が凹所に変わる。フランジのない半殻部品3’’’が仕上げられ、較正される。
【0068】
圧縮のため、全断面が塑性状態に変わり、それによって目標とする様式で応力を調整できるという事実によって、フランジのない又はフランジ付きの半殻部品3、3’、3’’、3’’’の高い寸法安定性が促進される。
【符号の説明】
【0069】
1、1’、1’’、1’’’ 絞りパンチ
2、2’、2’’、2’’’ 絞りダイ
3、3’、3’’、3’’’ 半殻部品
4、4’、4’’、4’’’ ベース区分
5、5’、5’’、5’’’ 板金未加工部品
6、6’、6’’、6’’’ ベースパンチ
7、7’、7’’、7’’’ ベースパンチ受け部
10、10’、10’’、10’’’ 切断エッジ
11、11’’、11’’’ 圧縮面
12、12’、12’’、12’’’ クリアランス
13、13’、13’’、13’’’ 円形部分
14、14’、14’’、14’’’ 対向切断エッジ
15、15’、15’’、15’’’ フレーム区分
17、17’、17’’、17’’’ 板金ブランク
18、18’、18’’、18’’’ 押下装置
20、20’’、20’’’ 切断面
23’’、23’’’ フランジ区分
T、T’、T’’、T’’’ 深さ
P、P’、P’’、P’’’ 板金ブランク厚
W 壁厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)と絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)を用いて半殻部品を製造する方法において、単一の作業工程で、絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)を絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)の中に進め、板金ブランク(17、17’、17’’、17’’’)を少なくとも1つのベース区分(4、4’、4’’、4’’’)と、少なくとも1つのフレーム区分(15、15’、15’’、15’’’)とを備え、かつ任意にフランジ区分(23’’、23’’’)を備え得る板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)に予備成形し、この予備成形中に、絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)を用いて、板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)のベース区分(4、4’、4’’、4’’’)及びフレーム区分(15、15’、15’’、15’’’)又は任意のフランジ区分(23’’23’’’)のいずれかに材料過剰分を導入し、かつ半殻部品(3、3’、3’’、3’’’)を形成するように板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)を仕上げ、較正することを特徴とする方法。
【請求項2】
絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)の方向に突出して位置付けできる少なくとも1つのベースパンチ(6、6’、6’’、6’’’)を含む絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)を使用し、かつ板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)の前記予備成形中に、前記突出位置に配置されたベースパンチ(6、6’、6’’、6’’’)を用いて、板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)のベース区分(4、4’、4’’、4’’’)及びフレーム区分(15、15’、15’’、15’’’)及び/又は任意のフランジ区分(23’’、23’’’)に前記材料過剰分を導入することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベースパンチ(6、6’、6’’、6’’’)が、絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)に隣接する板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)の上で静止したらすぐに、ベースパンチ(6、6’、6’’、6’’’)をベースパンチ受け部(7、7’、7’’、7’’’)の中に進めることによって板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)を仕上げ、較正することを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記単一の作業工程で、好ましくは絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)に配置された切断エッジ(10、10’、10’’、10’’’)を用いて、板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)をトリミングすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)に接している板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)の上にベースパンチ(6、6’、6’’、6’’’)を置くと同時に切断エッジ(10、10’、10’’、10’’’)を板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)と接触させることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記仕上げ及び較正中に、前記材料過剰分を板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)のベース区分(4、4’、4’’、4’’’)から板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)のフレーム区分(15、15’、15’’、15’’’)に押し込むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)を、少なくともフレーム区分(15、15’’、15’’’)内で、好ましくはベース区分(4、4’’、4’’’)内でも、圧縮面(11、11’’、11’’’)を用いて、特に切断エッジ(10)に接している圧縮面(11)を用いて圧縮することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
板金ブランク(17、17’、17’’、17’’’)を少なくとも予備成形の開始時に押下装置(18、18’、18’’、18’’’)で保持することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
フランジのない半殻部品(3、3’、3’’’)又はフランジ付き半殻部品(3’’)を板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)から製造することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を用いて半殻部品を製造するための、絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)と絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)を備える装置において、この装置は絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)を絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)の中に進める手段を含み、この装置では、板金ブランク(17、17’、17’’、17’’’)を絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)と絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)の間に位置付けることができ、前記板金ブランクを前記絞りパンチで板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)に予備成形することができ、絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)は、材料過剰分を板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)のベース区分(4、4’、4’’、4’’’)及びフレーム区分(15、15’、15’’、15’’’)又は任意のフランジ区分(23’’、23’’’)のいずれかに導入する手段を含み、かつ半殻部品(3、3’、3’’、3’’’)を形成するように板金未加工部品(5、5’、5’’、5’’’)を絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)を用いて仕上げ、較正することができることを特徴とする装置。
【請求項11】
絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)が、絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)の方向に突出して位置付けできる少なくとも1つのベースパンチ(6、6’、6’’、6’’’)を有し、かつ任意にそれに対応するベースパンチ受け部(7、7’、7’’、7’’’)を有し得ることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
トリミングするための手段、特に絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)に配置された少なくとも1つの切断エッジ(10、10’、10’’、10’’’)が設けられていることを特徴とする請求項10及び11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)が、絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)の切断エッジ(10、10’、10’’、10’’’)と関連する少なくとも1つのクリアランス(12、12’、12’’、12’’’)を有することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
クリアランス(12、12’、12’’、12’’’)の深さ(T、T’、T’’、T’’’)が、少なくとも、形成すべき板金ブランク(17、17’、17’’、17’’’)の板金ブランク厚(P、P’、P’’、P’’’)に相当することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)が、流入円形部分、特に前記クリアランスに配置された流入円形部分(13、13’、13’’、13’’’)を有することを特徴とする請求項13及び14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記絞りパンチが前記絞りダイの中に完全に進んだ位置にある切断エッジ(10、10’、10’’、10’’’)は、絞りダイ(2、2’、2’’、2’’’)、特にクリアランス(12、12’、12’’、12’’’)に配置された対向切断エッジ(14、14’、14’’、14’’’)から深絞り方向に間隔を空けて配置され、或いは少なくとも対向切断エッジ(14’)と同じ高さに配置されることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
対向切断エッジ(14、14’、14’’、14’’’)が丸くなっていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
絞りパンチ(1、1’、1’’、1’’’)が圧縮面(11、11’’、11’’’)、特に切断エッジ(10)に直接隣接する圧縮面(11)を含むことを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
請求項4〜9のいずれか1項に記載の方法によって、特に請求項13〜18のいずれか1項に記載の装置を用いて製造された半殻部品において、壁厚Wを有し、かつ該半殻部品(3、3’、3’’、3’’’)の切断面(20、20’’、20’’’)の平滑切断率が壁厚Wの少なくとも3分の1であることを特徴とする半殻部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−514185(P2013−514185A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543727(P2012−543727)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069794
【国際公開番号】WO2011/083008
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510041496)ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト (18)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
【住所又は居所原語表記】Kaiser−Wilhelm−Strasse 100,47166 Duisburg Germany