説明

半生米菓およびその製造方法

【課題】チョコレートをコーティングした半生米菓およびその製造方法を提供する。
【解決手段】製餅加工した米菓生地を成形、乾燥、焼成した後に、調味液に浸漬して半生状にし、表面をさらに乾燥した後チョコレートコーティングする。
【効果】これまでにない味及び食感を有し、保存性が高められた濡れ米菓となり、濡れ米菓の特徴である独特の食感を長期間維持することができる。また、チョコレートをコーティングしにくい半生米菓に対して、良好にチョコレートをコーティングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な米菓およびその製造方法に関する。より具体的には、濡れせんべいや濡れおかきなどの濡れ米菓およびその製造方法に関し、さらには、もち米を主原料とする濡れ米菓の表面にチョコレートがコーティングされた濡れ米菓およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のパリッとした食感の米菓とは異なる、独特のしっとりとした食感を有する濡れせんべいや濡れおかきを始めとする濡れ米菓(以下、半生米菓ともいう)は、多くの消費者に好まれ、近年は、米菓の一つのジャンルとして市場に定着してきている。
【0003】
このような濡れ米菓の製造方法としては、特許文献1に記載の「濡れせんべいの製法」が知られている。具体的には、「精米した米を粉末にし、次いで餅状にした後、所定の形状に成形し且つ乾燥して生地を得、更に二次乾燥に供した後焼上げ、而る後に調味料の味付けを成し、その後乾燥してせんべいを製造する方法において;上記調味料の味付け工程は、焼き上げたせんべいを冷やす事なく、直ちにしょうゆ、液状みそ等の液状の調味料中に浸漬し、せんべいの組織中に調味料を浸み込ませて実施し、而もこの後の乾燥工程は調味料成分が含浸せるせんべいの表面のみを僅かに乾燥させる程度とし、含浸調味料によりせんべい全体に湿感を呈せしめ、軟らかい食感を与えるようにした事を特徴とする濡れせんべいの製法」によって、独特のしっとりとした食感を有する濡れせんべいを製造しており、調味液としては、しょうゆやみその液状物を使用している。
【0004】
また、特許文献2には、しっとりとした食感を有するだけでなく、米菓内部が餅状で弾力感に富んだ濡れ米菓の製造方法が記載されている。具体的には、「半生米菓の製造方法」として、「米菓原料を製餅等加工した米菓生地を所定形状に成形する成形工程と、成形工程で成形された米菓生地を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で乾燥された米菓生地を焼成する焼成工程と、焼成工程で焼成された素焼き製品を調味液に浸漬して半生状にする浸漬工程とを備えた半生米菓の製造方法であって、最終製品の内部が餅のような弾力感のあるものとなるよう、上記焼成工程において、焼成後の素焼き製品の表面の水分含量が1〜3%となるようにし、かつ、その内部の水分含量が表面の2倍以上となるように調整して焼成することを特徴とする半生米菓の製造方法」が開示されている。この方法によれば、調味液の浸透を損なうことなく柔らかくすることができると共に、多量の調味液のしみ込みを防止して味の調整を行い易くし、更には、製品の固さや味のばらつきをできるだけ生じないようにすることができるとされている。
【0005】
さらに、特許文献3には、トレハロースを含む調味液を使用することにより、半生米菓の保存性を向上させる技術が記載されている。具体的には、「半生米菓の製造方法」として、「米菓原料を加工した米菓生地を所定形状に成形する成形工程と、成形工程で成形された米菓生地を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で焼成された素焼き製品を調味液に浸漬する浸漬工程とを備えた半生米菓の製造方法であって、上記浸漬工程における調味液にトレハロースを添加することを特徴とする半生米菓の製造方法」が開示されている。
【0006】
上記のように、濡れ米菓に関して、食感を含めた味覚の点においても、保存性を始めとする品質向上の点においても、種々の改良が提案されてきた。
【特許文献1】特公平4−36659号公報
【特許文献2】特許第3047173号
【特許文献3】特開2001−8630号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、これまでにない味及び食感を有し、保存性が高められた新しい濡れ米菓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究したところ、以下のような全く新しいタイプの濡れ米菓を開発することに成功した。本発明は、これに限定されるものではないが、例えば、以下の発明を包含する。
(1) もち米を主原料とする半生米菓と該半生米菓にコーティングされたチョコレート層とを有する、チョコレートコーティング半生米菓。
(2) コーティング層内部の半生米菓が、10〜20%の水分含量である、(1)に記載のチョコレートコーティング半生米菓。
(3) コーティング層内部の半生米菓が、餅のように弾力感のあるものである、(1)または(2)に記載のチョコレートコーティング半生米菓。
(4) 前記チョコレート層が、小片状のトッピングを含む、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のチョコレートコーティング半生米菓。
(5) もち米を主原料とする半生米菓をチョコレートでコーティングする工程を含む、チョコレートコーティング半生米菓の製造方法。
(6) 前記コーティング工程において、半生米菓の温度を35℃以下まで低下させた状態でチョコレートをコーティングする、(5)に記載の製造方法。
(7) もち米を含む原料を製餅加工した米菓生地を所定の形状に成形する成形工程と;成形工程で成形された米菓生地を乾燥させる第1の乾燥工程と;乾燥工程で乾燥された米菓生地を焼成する焼成工程と;焼成工程で焼成された素焼きを調味液に浸漬して半生状にする浸漬工程と;浸漬工程後の半生米菓の表面を乾燥させる第2の乾燥工程と;第二乾燥工程後に米菓を常温で少なくとも1時間以上ねかせる、ねかせ工程と、を含む、(5)または(6)に記載の製造方法。
(8) 前記焼成工程において、焼成後の素焼き製品の表面の水分含量が4%以下、かつ、焼成後の素焼き製品の内部の水分含量が5%以上となるように生地を焼成し、最終製品の内部が餅のような弾力感のあるものとなるようにした、(7)に記載の製造方法。
(9) 前記浸漬工程において、調味液にトレハロースが添加されている、(7)または(8)に記載の製造方法。
(10) (5)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたチョコレートコーティング半生米菓。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、これまでにない味及び食感を有し、さらに保存性が高められた濡れ米菓が提供される。具体的には、半生米菓と該半生米菓にコーティングされたチョコレート層とを有するチョコレートコーティング半生米菓が提供される。
【0010】
したがって、本発明によれば、表面にコーティングされたチョコレートの味および食感に加えて、コーティング層内部の濡れ米菓が有する味および食感とを、一度に楽しむことができる。そして、チョコレートを表面にコーティングすることによって、始めはチョコレートの味および食感、次いで、濡れ米菓の味および食感というように、経時的な味の変化を楽しむことができる。特に、通常の濡れ米菓は、しょうゆ味や味噌味であることが多いため、チョコレートとという全く系統の異なる味を楽しむことができる。また、本発明の濡れ米菓は、外観において一見チョコレートのように見えるため、消費者は、意外な味および食感の変化を楽しむことができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、表面のチョコレートコーティングにより、米菓から水分が失われることが防がれるため、より長期間、半生米菓本来の品質を保持することができ、味覚面だけでなく、内部の半生米菓自体の品質をも向上させることができる。より具体的には、本発明によれば、濡れ米菓の大きな特徴である柔らかさをより長期間維持することが可能である。
【0012】
さらに、従来の濡れ米菓は、通常の米菓と比べて水分量が大きく、表面が若干べとついていたため、消費者の手が汚れてしまうという問題があったが、本発明が提供する新規な濡れ米菓によれば、消費者は手を汚すことなく、本発明の米菓を楽しむことができる。
【0013】
また、本発明は、チョコレートコーティング半生米菓の製造方法を提供する。特に、半生米菓は、通常の乾燥した米菓と比べて水分量が大きいため、チョコレートをコーティングしにくいという技術的な課題が存在していたところ、本発明によれば、かかる課題が解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の1つの態様において、半生米菓と該半生米菓にコーティングされたチョコレート層とを有するチョコレートコーティング半生米菓が提供される。
本発明における米菓は、もち米を主原料として製造されたものである。ここで、もち米を主原料とするとは、原料中にもち米を含むことを意味し、好ましくは、原料中にもち米を50重量%以上、より好ましくは原料中にもち米を80重量%〜100重量%含む。これは、もち米を原料とする米菓は、焼成により膨張し易く、球に近い形状となりやすいため、後述するチョコレートコーティングに適すること、及び、餅のような弾力感のある食感を得やすいことを理由とする。また、本発明における半生米菓とは、ぬれせんべいやぬれおかき等と呼ばれるしっとりとした食感を有する米菓をいう。特に、本発明のチョコレートコーティング半生米菓は、チョコレートコーティング層により内部の半生米菓の水分蒸発を防ぐことができるため、水分含量が多い半生米菓をコーティングすると本発明の利点を最大限に活用することができ好適である。すなわち、本発明によれば、(1)吸湿し易く表面がベタ付き易いので作りたての柔らかい食感及びしみ込んだ調味液の風味を長持ちさせることが困難であることや、(2)澱粉の老化により常温または低温下での硬化,パサ付き及び白濁等の品質劣化が生じ易く、日が経つと食感が悪くなるという半生米菓の技術課題を解決することができる。特に、濡れ米菓の内部が餅状になっているものを使用すると、表面のチョコレート層と内部の濡れ米菓との味および食感のコントラストがより明確になり好適である。また、本発明の半生米菓として、内部が餅のような弾力性を有するぬれおかきを用いた場合、その特徴である独特の弾力感ある食感を長期間維持することが可能になり、より好適である。
【0015】
本発明に使用するチョコレートは特に限定されず、当業者が使用し得るあらゆるチョコレートを使用することができる。したがって、本発明のチョコレートは、種々のフレーバーを含んでいてもよく、カラーも目的に応じて適宜選択することができる。また、融点や硬さ、流動性などの物性も適宜選択するととができる。したがって、本発明でいうチョコレートには、通常いうところのチョコレート及び準チョコレートの他、チョコレート油脂以外の油脂、糖類、乳製品等を含むチョコレート様の物性をもったものも含まれることとする。例えば、チョコレートとしてホワイトチョコレートを使用すると、内部の半生米菓との色の違いを楽しむことができる。これに限定されるものではないが、本発明におけるチョコレートとして、例えば、砂糖40−50重量%、ココアパウダー30〜35重量%、全粉乳20〜25重量%、その他(乳化剤、香料など)1%未満を含むチョコレートを使用することができる。
【0016】
また、本発明のチョコレートコーティング層は、小片状のトッピングを有するチョコレートコーティング層とすることもできる。小片状のトッピングを加えることにより、食感や味にさらに変化を与えることができるだけでなく、チョコレートコーティング層の被覆を確実にし、チョコレートが剥がれにくくすることができるため、本態様は特に好適である。トッピングとしては、特に限定はないが、ピーナツやアーモンドなどのナッツ類を砕いたものや、水分を少なくした若しくは乾燥したフルーツ類、パフ類、キャンデー類、ビスケット、米菓その他の破片などを挙げることができる。
【0017】
本発明の1つの態様において、本発明は、半生米菓をチョコレートでコーティングする工程を含むチョコレートコーティング半生米菓の製造方法である。本発明において、コーティング方法は特に限定されず、従来行われているコーティング方法を採用することができる。これに限定されるものではないが、例えば、レボルビングパン、ドラ掛機などを用いてコーティングを行うことができる。また、半生米菓を、例えば、融解したチョコレート等の中に浸漬した後に引き上げる方法や、融解したチョコレートを塗り付ける方法、さらには、融解したチョコレートを吹きつける方法などによりコーティングすることもできる。
【0018】
本発明において、コーティングの際の半生米菓の温度は、好ましくは35℃以下、さらに好ましくは25℃以下である。半生米菓の温度が35℃以下の場合、コーティングの際に半生米菓が変形することが少なくなり、チョコレートのコーティングが容易になるためである。
【0019】
本発明においては半生米菓が使用されるが、半生米菓の製法は特に限定されない。ある態様において、本発明の半生米菓は、以下の工程を含む製法によって製造することができる:
・もち米を含む原料を製餅加工した米菓生地を所定形状に成形する成形工程
・成形工程で成形された米菓生地を乾燥させる第1の乾燥工程
・乾燥工程で乾燥された米菓生地を焼成する焼成工程
・焼成工程で焼成された素焼きを調味液に浸漬して半生状にする浸漬工程
・浸漬工程後の半生米菓の表面を乾燥させる第2の乾燥工程
・第二乾燥工程後に米菓を常温で少なくとも1時間以上ねかせる、ねかせ工程。
【0020】
本発明においては、半生米菓として内部が餅のような弾力性を有する半生米菓を使用することが好ましい。本発明は半生米菓をチョコレートでコーティングするため、半生米菓の水分の蒸発を抑制できることから、半生米菓の特徴をより長期間保持することができるためである。内部が餅のような弾力性を有する半生米菓は、例えば、半生米菓の製造の乾燥工程において、やや水分が多い状態で乾燥を終了させ、焼成をおこなうことにより製造することが望ましい。具体的には、乾燥工程において、米菓生地の水分含量を25〜35%とすることが望ましく、また、焼成工程において、焼成後の素焼き製品の表面の水分含量を通常の米菓製品における素焼き製品と同様の4%以下とし、かつ、焼成後の素焼き製品の内部の水分含量を5%以上となるように生地を焼成し、焼成後の素焼き製品が冷えないうちに高温のまま調味液に浸漬することにより、半生米菓の内部を餅のような弾力感のあるものとすることができるため、このような態様は本発明において好ましい。なお、半生タイプでない通常の米菓においては、素焼き製品の水分含量を5%以上とするといわゆる「しけった」状態になり食感の悪い米菓となってしまうため、焼成後の素焼き製品の水分含量は、表面と内部とを区別することなく1〜3%程度、すなわち4%以下とし、内部が硬くなるまで焼成する。また、焼成後から調味液に浸漬するまでの時間は60秒以内が望ましく、50秒以内とすることがより望ましく、20秒以内とすることが最も望ましい。
【0021】
本発明においては、半生米菓の形状は、球に近く、角があまりない形状をしていることが好ましい。半生米菓がこのような形状であると、チョコレートが付着しにくく又剥がれやすい角の部分が少ないため、チョコレートのコーティングが容易となるためである。例えば、半生米菓の成形工程において、生地重量を小さくし、形状を平たくすること、生地の水分含量を高くすること、さらには、半生米菓の焼成工程において、焼成温度を高めに設定して、内部に気泡を多く形成させ、米菓生地を十分に膨化させることにより、全体的な形状を球状に近くすることができる。例えば、好ましい態様において、成形工程で、生地重量を5g以下とし、厚さ5mm〜10mmとなるように成形し、記第1の乾燥工程において、米菓生地の水分含量を29〜34%となるよう調整し、焼成工程において、285〜330℃にて焼成して、内部に気泡を多く形成させ、全体的な形状が球状に近くなるように米菓生地を十分に膨化させることができる。
【0022】
また、本発明においては、コーティングの際に半生米菓が、10〜25%の水分含量であることが好ましい。より好ましくは、18〜20%の水分含量である。水分含量が低すぎると半生米菓の特徴が損なわれてしまい、また、水分含量が高すぎると、コーティングの際に半生米菓が変形したり、半生米菓の表面に水分がしみ出てしまい、チョコレートのコーティングが難しくなるためである。
【0023】
また、1つの態様において、本発明においては、ねかせ工程を常温にて少なくとも1時間以上ねかせることを一つの特徴とするが、望ましくは2時間以上、より望ましくは4時間以上おこなうことが好ましい。ねかせ工程によって、半生米菓の温度を下げ、水分を均一化させ、表面の水分を少なくすることにより、後のチョコレートコーティングがより容易になるためである。
【0024】
本発明においては、半生米菓に小片状のトッピングを施すことが好ましい。例えば、半生米菓表面に小片状のトッピングを付着させ、その後チョコレートをコーティングしてもよいし、また、チョコレートと同時にトッピングをコーティングしてもよい。半生米菓に小片状のトッピングをを付着させることにより、最終製品に新たな食感や風味を加えることができるだけでなく、半生米菓へのチョコレートのコーティングをより確実にし、チョコレートが剥がれにくくなるため、この態様は好適である。トッピングを半生米菓の表面に付着させる方法は特に限定されないが、例えば、浸漬工程で使用する調味液に粘着性を付与しておくことにより、半生米菓にトッピングを付着させたり、新たに接着性を有する材料を半生米菓に塗布し、その後にトッピングを付着させる方法などが挙げられる。より具体的には、調味液の中に加工澱粉などを添加して調味液に粘着性を付与する方法が、簡便で望ましい。
【0025】
また、成形工程においては、常法の範囲内で適宜、任意の形に成形すればよいが、焼成後の半生米菓の形状が球状になりやすいため、やや小さく、薄く成形することが望ましい。具体的には、米菓生地の質量を5g以下とし、かつ、生地の厚さを5mm〜10mmとすることが望ましい。より好ましくは、米菓生地の質量は2〜4g、生地の厚さは6mm〜8mmである。
【0026】
半生米菓の製造における調味液は、特に限定されず、最終製品として所望の風味を得られるように調製することができる。したがって、本発明の調味液は、例えば、しょうゆ、味噌、糖類などの、種々の調味料や種々の添加物を含むことができる。糖類は、任意のものでよい。例えば、砂糖、転化糖ふどう糖、水飴、蜂蜜、麦芽糖、果糖、乳糖、糖アルコール、トレハロースなど、あるいは、これらの2種以上の組み合わせでもよい。添加物として、調味、着色、品質保持のために本発明の目的の範囲内のものを使用することができることはいうまでもない。
【0027】
特に好適な態様において、本発明の調味液にトレハロースを添加することが好ましい。トレハロースを添加することにより半生米菓の弾力性をより長期間維持することができるためである。
【0028】
本発明において水分含量は、常圧加熱乾燥法によって測定を行う。具体的には、(社)日本食品衛生協会の「食品衛生検査指針」(2005年度版19〜23頁)に記載の方法に基づいて測定することが可能である。なお、本発明において素焼き製品とは、素焼き製品の外表面および外表面付近の焼色の付いた表層部分を意味し、ナイフ等により比較的容易に剥離する。また、素焼き製品の内部とは、表面以外の残りの比較的柔らかい部分を意味し、調味液に浸漬して半生米菓としたときに餅のような弾力感を有するようになる部分である。
【0029】
以下、実施例を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明するが、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
チョコレートコーティング濡れ米菓の製造
以下に示す手順によりチョコレートコーティング濡れ米菓を製造した。
1.もち仕込み工程
もち米100%からなる米を、精米し、水洗い、水漬けした。水漬けは、15〜23℃の水を用い、15〜20時間おこなった。その後、水漬け後の米を、蒸米しておこわにし、このおこわを用いて製餅した。製餅は、おこわを搗(つ)いて、もち水分が45%前後になるようにおこなった。次いで、得られた餅20kgを容器に入れ、冷蔵庫にて2〜5℃で48時間保管し、餅を成形可能な固さに冷却した。
【0031】
2.成形工程
得られた餅を裁断して成形をおこなった。本実施例は、生地寸法を15mm×21mm、厚み7.2mmとし、1個当たりの質量を約2.7gとした。
【0032】
3.乾燥工程
成形した生地を乾燥した。まず第一次乾燥として、50℃で2時間10分間乾燥して水分含量を約41%にした後、常温下で24時間エージング(ねかし)した。次いで、第二次乾燥として、50℃で2時間乾燥して水分を約31%にした後、常温下で24時間エージングした。
【0033】
4.焼成工程
得られた乾燥後の生地を、反復焼成機(ロータリー機)で焼成した。LPGガスで釜の温度を約280℃まで上げて、1回当たり15kgの焼成量にて12〜14分間、焼き上げた。焼成後の素焼き製品の表面の水分含量は1〜3%であり、内部の水分含量は6〜10%だった。
【0034】
5.浸漬工程
焼成直後の素焼き製品をカゴにとり、焼成後50秒以内に調味液に浸漬した。約3分間浸漬した後、遠心分離器(毎分330回転で15秒)にて、半生米菓から調味液を振り切った。浸漬直前の素焼き製品温度は約140℃であり、浸漬終了直後の半生米菓の温度は約60℃だった。なお、調味液の組成は以下の通りだった:醤油25重量%、トレハロース25重量%、糖類(砂糖、麦芽糖など)40.0重量%、みりん7重量%、その他(調味料、酸味料、カラメル色素など)3重量%。
【0035】
6.乾燥工程
80〜90℃で約30分間乾燥した。乾燥後の半生米菓の水分含量は18〜20%だった。
【0036】
7.ねかせ工程
常温にて46時間、半生米菓をねかせた。この際、製品温度は約20℃だった。
8.コーティング工程
ドラ掛機(新井機械製作所製)により、ねかせ工程後の半生米菓にチョコレートをコーティングした。コーティングおよび表面乾燥を5〜6回繰り返して、半生米菓へのチョコレートコーティングをおこなった。ここで、コーティング用チョコレートの組成は、砂糖45重量%、ココアバター30重量%、全粉乳24重量%、その他(乳化剤、香料など)1重量%だった。
【実施例2】
【0037】
官能評価
実施例1に従って製造した半生米菓(チョコレートコーティングあり、チョコレートコーティングなし)について、製造から1ヶ月経過後にモニターによる食味テストをおこなった。その結果、チョコレートコーティングのない半生米菓と比較して、チョコレートコーティング半生米菓の方が、全体的に柔らかく、半生米菓内部の餅のような弾力感が維持されており、また、口溶けも良好だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
もち米を主原料とする半生米菓と該半生米菓にコーティングされたチョコレート層とを有する、チョコレートコーティング半生米菓。
【請求項2】
コーティング層内部の半生米菓が、10〜20%の水分含量である、請求項1に記載のチョコレートコーティング半生米菓。
【請求項3】
コーティング層内部の半生米菓が、餅のように弾力感のあるものである、請求項1または2に記載のチョコレートコーティング半生米菓。
【請求項4】
前記チョコレート層が、小片状のトッピングを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のチョコレートコーティング半生米菓。
【請求項5】
もち米を主原料とする半生米菓をチョコレートでコーティングする工程を含む、チョコレートコーティング半生米菓の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング工程において、半生米菓の温度を35℃以下まで低下させた状態でチョコレートをコーティングする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
もち米を含む原料を製餅加工した米菓生地を所定の形状に成形する成形工程と、
成形工程で成形された米菓生地を乾燥させる第1の乾燥工程と、
乾燥工程で乾燥された米菓生地を焼成する焼成工程と、
焼成工程で焼成された素焼きを調味液に浸漬して半生状にする浸漬工程と、
浸漬工程後の半生米菓の表面を乾燥させる第2の乾燥工程と、
第二乾燥工程後に米菓を常温で少なくとも1時間以上ねかせる、ねかせ工程と、
を含む、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記焼成工程において、焼成後の素焼き製品の表面の水分含量が4%以下、かつ、焼成後の素焼き製品の内部の水分含量が5%以上となるように生地を焼成し、最終製品の内部が餅のような弾力感のあるものとなるようにした、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記浸漬工程において、調味液にトレハロースが添加されている、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたチョコレートコーティング半生米菓。