説明

半田付け装置

【課題】コテ先が交換可能であってコスト低減が可能な半田付け装置を提供すること。
【解決手段】半田付け装置1は、ヒータ部222が内蔵された棒状のヒータユニット200と、ヒータユニット200が着脱可能な半田コテ本体100と、ヒータユニット200の先端部220に着脱可能に装着されるコテ先300とを備える。コテ先300は、ヒータユニット200の先端部220を包囲する凹部306を有し、凹部306の内径側に配置されるヒータユニット200の先端部220熱膨張率が、凹部306を形成するコテ先300の熱膨張率よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田ごての先端部分を交換可能な半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半田ごての先端部分の交換が可能な半田付け装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この半田付け装置は、コテ先とヒータ部とが一体となった着脱可能なコテ先ユニットと、このコテ先ユニットのプラグ部に対応するソケット部を有する半田コテ本体とを備えている。コテ先ユニット全体が着脱可能であり、必要に応じてコテ先ユニット全体の交換が行われる。
【特許文献1】特開平4−351268号公報(第3−4頁、図1−5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示された半田付け装置では、先端部分が消耗した場合にはコテ先ユニット全体を交換する必要があり、ヒータ部を含むコテ先ユニットは比較的高価であることから、継続使用可能なヒータ部等を含めて交換することになるため無駄が多く、交換時のコストが増加するという問題があった。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、コテ先が交換可能であってコスト低減が可能な半田付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の半田付け装置は、ヒータ部が内蔵された棒状のヒータユニットと、ヒータユニットが着脱可能な半田コテ本体と、ヒータユニットの先端に着脱可能に装着されるコテ先とを備え、コテ先は、ヒータユニットの先端を包囲する凹部を有し、凹部の内径側に配置されるヒータユニットの熱膨張率が、凹部を形成するコテ先の熱膨張率よりも大きい。具体的には、例えば、上述した凹部の内径側に配置されるヒータユニットの材質はアルミニウムで、凹部を形成するコテ先の材質は銅で形成されている。
【0006】
ヒータユニットと着脱可能なコテ先とを組み合わせて用いているため、腐食等によってコテ先が消耗した場合に、コテ先のみを交換してヒータユニットを継続使用することができるため、ヒータユニットとコテ先を含む全体を交換する場合に比べてコスト低減が可能となる。また、ヒータユニットも半田コテ本体から着脱可能であるため、ヒータ部の断線等の不具合が発生したときに、半田コテ本体やコテ先とは別にヒータユニットのみを交換することができ、さらなるコスト低減が可能になる。さらに、ヒータユニットの方がコテ先よりも熱膨張率が大きい材質を用いることにより、ヒータ部に通電した加熱時に、ヒータユニットとコテ先との間の隙間を減少させることができ、ヒータユニットからコテ先への熱の伝達を確実に行うことができ、交換可能なコテ先を用いた場合であっても効率よくコテ先の温度を上げることができる。
【0007】
また、上述したヒータ部の非通電状態において、ヒータユニットとコテ先との間には隙間が形成され、ヒータ部の通電状態において、ヒータユニットとコテ先との間の隙間がなくなることが望ましい。これにより、ヒータ部への通電時にヒータユニットとコテ先とを完全に一体化することができ、コテ先を交換可能な別部品としたことによる熱伝達効率の低下を防止することができる。
【0008】
また、上述したコテ先の外周面にはヒータユニットの長手方向と垂直な向きの溝が形成されており、この溝に外周側から凸部を押圧することにより、ヒータユニットに対するコテ先の位置決めおよび固定を行うことが望ましい。これにより、ヒータユニットの先端にコテ先を装着する際の位置決めを行うことが可能となる。
【0009】
また、上述した凸部は球体であり、板バネによって球体を溝に向けて加圧するボールプランジャがヒータユニットに備わっていることが望ましい。球体を板バネで押さえるだけの簡素な構成のボールプランジャを用いているため、ヒータユニットへの装着が容易になるとともに構造の複雑化を防止することができる。
【0010】
また、上述したヒータユニットの先端には、温度を検出する温度検出素子が埋め込まれていることが望ましい。これにより、ヒータユニットの先端温度と相関のあるコテ先温度を検出することができ、コテ先温度の検出結果に基づいた温度表示や温度制御が可能になる。
【0011】
また、上述したヒータユニットの反先端側の端部には、ヒータ部と温度検出素子のそれぞれから延びる配線が接続された端子を有するプラグ部が設けられ、半田コテ本体には、プラグ部の端子と電気的に接続可能な端子を有するソケット部が設けられていることが望ましい。これにより、ヒータユニットと半田コテ本体との間の複雑な配線をなくすとともに、半田コテ本体側での温度表示や温度制御が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態の半田付け装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態の半田付け装置の全体を示す図である。図1に示すように、本実施形態の半田付け装置1は、半田コテ本体100、ヒータユニット200、コテ先300を含んで構成されている。この半田付け装置1は、自動半田付けロボットに組み込まれることを想定しているが、手作業用半田付け装置に適用することもできる。
【0014】
半田コテ本体100は、ヒータユニット200が挿入可能な凹部110を有し、この凹部110の底面(開口と反対側の面)にソケット部120が、その近傍に固定部130がそれぞれ設けられている。固定部130は、ヒータユニット200の挿入方向に対して垂直な向きに移動可能なストッパピン132と、このストッパピン132を外周側から押圧するバネ134とを有する。ストッパピン132は、半田コテ本体100の壁面に設けられた貫通穴に収納され、その先端が凹部110の内周面よりも突出した位置で係止されている。
【0015】
図2は、ヒータユニット200にコテ先300を装着した状態を示す斜視図である。図3は、ヒータユニット200とコテ先300とを分離した状態を示す斜視図である。
【0016】
ヒータユニット200は、ヒータ部222が内蔵された棒状の形状を有し、半田コテ本体100に対して着脱可能であって、筒体210と、筒体210の一方端側に取り付けられる先端部220と、コテ先固定部230、筒体210の他方端側に取り付けられるプラグ部240とを有する。図4は、コテ先固定部230を除くヒータユニット200の側面図である。
【0017】
先端部220には、ヒータ部222と温度検出素子(例えば熱電対、図示せず)とが埋め込まれている。コテ先固定部230は、ヒータユニット200の先端部220を覆うようにコテ先300を着脱可能に装着する際に、コテ先300の位置決めと固定を行う。
【0018】
プラグ部240は、ヒータ部222や温度検出素子のそれぞれから延びる配線が接続された端子を有する。このプラグ部240は、半田コテ本体100に設けられたソケット120に対応しており、半田コテ本体100の凹部110にヒータユニット200を装着したときに、プラグ部240の端子と、ソケット部120に備わった端子とが電気的に接続される。また、プラグ部240の外周面には溝242が形成されている。半田コテ本体100の凹部110にヒータユニット200を挿入すると、最初はプラグ部240の先端によって半田コテ本体100のストッパピン132を外側に押し出しながらこの挿入が進行し、ストッパピン132が溝242に係合したときにプラグ部240とソケット部120とが互いに係止してこの挿入が終了する。
【0019】
コテ先300は、ヒータユニット200の先端部220に着脱可能に装着される。コテ先300は、ヒータユニット200の先端部220を包囲(内包)する凹部306を有し、さらにその先端(凹部306の開口と反対側)は中実の円錐形状を有している。この円錐形状の部分は、半田付けの対象部位の形状や種類に応じて適宜形状が変更される。本実施形態では、ヒータユニット200の先端部220の熱膨張率がコテ先300の熱膨張率よりも大きくなるようにそれぞれの材質が決定されている。具体的には、例えば先端部220の材質としてはアルミニウムが用いられ、コテ先300の材質としては銅が用いられている。また、ヒータ部222の非通電状態において、ヒータユニット200の先端部220とコテ先300の凹部306内周面との間には隙間が形成され、ヒータ部222の通電状態において温度が上昇してそれぞれが熱膨張したときに、ヒータユニット200の先端部220とコテ先300の凹部306内周面との間の隙間がなくなるように、先端部220の外径とコテ先300の凹部306の内径とが設定されている。
【0020】
図5は、コテ先固定部230の詳細を示す図である。図6は、コテ先300の詳細を示す図である。
【0021】
図5(A)に示すように、コテ先固定部230は、コテ先固定部本体232、ボール(球体)234、板バネ236を有する。コテ先固定部本体232は、内周側が段付形状を有しており、内径が小さい部分232Aが筒体210の外径とほぼ同じ径を有して筒体210に固定され、内径が大きい部分232Bが先端部220の外周に配置されて先端部220の外周面との間に所定の隙間が形成される。この隙間には、コテ先300が挿入される。また、内径が大きい部分232Bの一部には、内径側に突出した位置決めピン238が押圧されており、この押圧箇所とほぼ反対側には段付穴239が形成されている。段付穴239の外周側にはボール234が配置され、その外側からボール234をリング状(図5(B))の板バネ236で押さえるようになっている。板バネ236には、ボール234の位置に合わせて穴237が開いている。板バネ236でボール234を外側から押圧した状態では、ボール234の端部が内径が大きい部分232Bの内周面より内径側に部分的に突出した状態となる。
【0022】
図6に示すように、コテ先300の凹部306の一部にはスリット304が形成されている。図6(A)にはコテ先300の平面形状が、図6(B)には図6(A)のVI−VI線断面形状がそれぞれ示されている。このスリット304が上述した位置決めピン238に係合するように、コテ先固定部本体232とヒータユニット200の先端部220の間に形成された隙間にコテ先300が装着される。また、凹部306に対応するコテ先300の外周面には、ヒータユニット200の長手方向と垂直な向きに溝302が形成されている。上述した板バネ236によってボール234を溝302に向けて加圧するボールプランジャが構成されている。このように、スリット304と位置決めピン238を用いることによりコテ先300の周方向の位置決め固定が行われ、板バネ236とボール234で構成されるボールプランジャと溝302によってコテ先300の挿入方向の位置決め固定が行われる。
【0023】
このように、本実施形態の半田付け装置1では、ヒータユニット200と着脱可能なコテ先300とを組み合わせて用いているため、腐食等によってコテ先300が消耗した場合に、コテ先300のみを交換してヒータユニット200を継続使用することができるため、ヒータユニットとコテ先を含む全体を交換する場合に比べてコスト低減が可能となる。また、ヒータユニット200も半田コテ本体100から着脱可能であるため、ヒータ部222の断線等の不具合が発生したときに、半田コテ本体100やコテ先300とは別にヒータユニット200のみを交換することができ、さらなるコスト低減が可能になる。さらに、ヒータユニット200の先端部220の方がコテ先300よりも熱膨張率が大きい材質を用いることにより、ヒータ部222に通電した加熱時に、ヒータユニット200とコテ先300との間の隙間を減少させることができ、ヒータユニット200からコテ先300への熱の伝達を確実に行うことができ、交換可能なコテ先300を用いた場合であっても効率よくコテ先300の温度を上げることができる。
【0024】
また、ヒータ部222の非通電状態において、ヒータユニット200とコテ先300との間には隙間が形成され、ヒータ部222の通電状態において、ヒータユニット200とコテ先300との間の隙間がなくなるように設定されているため、ヒータ部222への通電時にヒータユニット200とコテ先300の間の隙間をなくしてこれらを完全に一体化することができ、コテ先300を交換可能な別部品としたことによる熱伝達効率の低下を防止することができる。
【0025】
また、ボール234を板バネ236で押さえるだけの簡素な構成のボールプランジャを用いてコテ先300の位置決め固定を行っているため、コテ先300のヒータユニット200への装着が容易になるとともに構造の複雑化を防止することができる。
【0026】
また、ヒータユニット200の先端部220には、温度を検出する温度検出素子が埋め込まれているため、ヒータユニット200の先端温度と相関のあるコテ先300の温度を検出することができ、コテ先温度の検出結果に基づいた温度表示や温度制御が可能になる。例えば、図1に示す温度表示部400では、温度検出素子の検出結果に基づいて温度表示を行う。あるいは、図1に示す温度制御部410では、温度検出素子の検出結果に基づいてヒータ部222に供給する電流値あるいは電圧値を調整し、コテ先300が設定された温度となるように制御を行う。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、ヒータユニット200の先端部220をアルミニウムで、コテ先300を銅で形成したが、先端部220の方がコテ先300に比べて熱膨張率が大きいという条件を満たすように他の材質を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態の半田付け装置の全体を示す図である。
【図2】ヒータユニットにコテ先を装着した状態を示す斜視図である。
【図3】ヒータユニットとコテ先とを分離した状態を示す斜視図である。
【図4】コテ先固定部を除くヒータユニットの側面図である。
【図5】コテ先固定部の詳細を示す図である。
【図6】コテ先の詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 半田付け装置
100 半田コテ本体
110、306 凹部
120 ソケット部
200 ヒータユニット
210 筒体
220 先端部
222 ヒータ部
230 コテ先固定部
232 コテ先固定部本体
234 ボール
236 板バネ
238 位置決めピン
240 プラグ部
242、302 溝
300 コテ先
304 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ部が内蔵された棒状のヒータユニットと、
前記ヒータユニットが着脱可能な半田コテ本体と、
前記ヒータユニットの先端に着脱可能に装着されるコテ先と、
を備え、前記コテ先は、前記ヒータユニットの先端を包囲する凹部を有し、
前記凹部の内径側に配置される前記ヒータユニットの熱膨張率が、前記凹部を形成する前記コテ先の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記凹部の内径側に配置される前記ヒータユニットの材質はアルミニウムであり、前記凹部を形成する前記コテ先の材質は銅であることを特徴とする半田付け装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ヒータ部の非通電状態において、前記ヒータユニットと前記コテ先との間には隙間が形成され、前記ヒータ部の通電状態において、前記ヒータユニットと前記コテ先との間の隙間がなくなることを特徴とする半田付け装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記コテ先の外周面には前記ヒータユニットの長手方向と垂直な向きの溝が形成されており、この溝に外周側から凸部を押圧することにより、前記ヒータユニットに対する前記コテ先の位置決めおよび固定を行うことを特徴とする半田付け装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記凸部は球体であり、板バネによって前記球体を前記溝に向けて加圧するボールプランジャが前記ヒータユニットに備わっていることを特徴とする半田付け装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記ヒータユニットの先端には、温度を検出する温度検出素子が埋め込まれていることを特徴とする半田付け装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記ヒータユニットの反先端側の端部には、前記ヒータ部と前記温度検出素子のそれぞれから延びる配線が接続された端子を有するプラグ部が設けられ、
前記半田コテ本体には、前記プラグ部の端子と電気的に接続可能な端子を有するソケット部が設けられていることを特徴とする半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12472(P2010−12472A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171960(P2008−171960)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000101606)アポロ精工株式会社 (2)