説明

卓上切断機

【課題】切断材を載置するテーブルと、上下に移動操作する切断機本体を備えた卓上マルノコ盤において、上下動操作用のハンドル部が横型のグリップ部を備え、このグリップ部を右手で把持する場合に、手首をひねることなく楽に把持できるようにする。
【解決手段】切断刃11に対して左側に位置する使用者が右手Rの延ばしてグリップ部21を把持する場合に、このグリップ部21の握り軸線Pを基準線Sに対して角度θだけ使用者M側へ振り向けることにより手首のひねりを小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、卓上形の切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
この卓上形の切断機は、持ち運び可能であり、通常作業台の上や床上に設置して用いるもので、切断材を載置するテーブルと、このテーブルに対して上下に移動操作可能に支持された切断機本体を備えている。切断機本体は、電動モータを駆動源として回転する円形の切断刃を備えている。この切断機本体を下動させて回転する回転刃を切断材に切り込むことにより切断加工が行われる。
また、切断機本体には、使用者が主として上下に移動操作する際に把持するためのハンドル部が設けられている。この切断機を使用する場合、使用者は切断機の正面に位置して、多くの場合右手でハンドル部を把持して切断機本体を上下に移動操作する。
近年、このハンドル部には、そのグリップ部(把持部)が上下(縦)に延びる縦型のものに加えて、左右(横)に延びる横型のものが提供されている。
【特許文献1】特開2007−118383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この横型グリップ部についてもさらに改良を加える必要があった。切断機の正面に位置する使用者は、通常切断機本体の鋸刃に対して左側に位置して右手を鋸刃に対して右側に延ばしてグリップ部を把持する姿勢をとることになる。この姿勢の場合に、グリップ部が横方向であって鋸刃に対して直角に位置する場合には右手首を左側へややひねる必要がある。この右手首をひねった状態で、通常グリップ部の内側に配置されるトリガ形式のスイッチレバーを指先で引き操作する必要があり、この点で従来の横型グリップ部の操作性をさらに高める必要があった。
そこで、本発明は、横型のグリップ部についてさらにその操作性(把持しやすさ)を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した構成の卓上切断機とした。
請求項1記載の卓上切断機によれば、例えば使用者が切断機に向かって切断刃の左側に位置し、右手を切断刃の右側へ伸ばして横型のグリップ部を把持すると、その手の平当接部が平面的に見て基準線に対してその左側が右側よりも後側へ変位する方向に傾斜している。このことから、切断刃に対して左側に位置する使用者が右斜め後方へ向けて延ばした右手の延びる方向に対してグリップ部が概ね直交した状態となることから、右手首を左右にほとんどひねることなく最も無理のない楽な手首姿勢でグリップ部を把持することができ、これにより当該卓上切断機の操作性をよくすることができる。
グリップ部は、全体として片手で把持しやすい棒形状を有しており、真っ直ぐな直線形状や僅かに弓形に湾曲した形状、あるいはその太さが徐々に変化する握りやすい形状のものに対して適用することができる。
要は、横型のグリップ部が切断刃の右側に配置されている場合に、把持した状態で少なくとも手の平当接部の左端部が右端部に対して後側(使用者から離れる方向)へ僅かに変位していることにより、手首をひねることなくこのグリップ部を楽な姿勢で把持することができる。
逆に、横型のグリップ部が切断刃に対して左側に配置されている場合には、その右端部側(切断刃側の端部)が左端部側よりも後側へ変位した方向に傾斜していることにより、使用者が切断刃に対して右側に位置して、左手を切断刃の左側へ伸ばしてグリップ部を把持する際に、使用者は左手首を大きくひねることなく楽な姿勢で把持して切断機本体を上下動操作することができる。
以上のことから、横型グリップ部の切断刃側の端部がその反対側の端部よりも後側に変位する方向に傾斜しているとは、グリップ部が全体として切断刃側(使用者側)に振り向けられた構成と理解することができる。
請求項2記載の卓上切断機によれば、手首をひねることなくグリップ部を楽な姿勢で把持できるとともに、スイッチレバーを引き操作する指先についても手首に対して無理なひねりを生ずることがないので、一層ハンドル部の操作性を高めることができる。特に、スイッチレバーを引き操作した状態で指先当接部が手の平当接部に平行になるので、当該スイッチレバーを引き操作した状態を長い時間であっても手首及び指先のひねりを生ずることなく楽に維持することができる。
請求項3記載の卓上切断機によれば、基準線に対して手の平当接部が5°〜10°の範囲でその左側が右側に対して後側へ変位する方向に傾斜することにより、右手首の窮屈なひねりを生ずることなく楽な姿勢で把持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る卓上切断機1の全体を示している。本実施形態では、卓上切断機1の一例としていわゆる卓上形の丸鋸盤を例示する。この卓上切断機1は、切断材(図では省略されている)を載置するためのテーブル2と、このテーブル2を水平回転可能に支持するベース3と、テーブル2の上方において上下に移動操作可能に支持された切断機本体10を備えている。図1及び図2は、卓上切断機1を使用者側から見た状態を示している。以下、各部材等の前後方向については、使用者から見て手前側を前側とし、左右方向については図示するように使用者から見た方向を基準とする。
テーブル2の左右側方には、ベース3の補助テーブル部3a,3aが位置している。両補助テーブル3a,3a間に跨って位置決めフェンス4が取り付けられている。この位置決めフェンス4の位置決め面4a,4aは、テーブル2の上面(切断材の載置面)に対して直交しており、かつ平面的に見てテーブル2の回転中心を通っている。この位置決めフェンス4の位置決め面4aに切断材を当接させてテーブル2の面方向に位置決めすることができる。
テーブル2の後部に設けた本体支持部5を介して切断機本体10が上下に傾動操作可能に支持されている。切断機本体10は、円形の切断刃11を備えている。切断刃11の上側ほぼ半周の範囲は、ブレードケース12に覆われている。切断刃11の下側ほぼ半周の範囲は、可動カバー13で覆われている。切断機本体10を下方へ移動操作すると、この可動カバー13が開かれて、露出された切断刃11が切断材に切り込まれる。
ブレードケース12の背面側(右側部)には、切断刃11を回転させるための駆動源としての電動モータ14が取り付けられている。電動モータ14は、斜め上方に傾いた状態に取り付けられている。この電動モータ14の取り付け基部付近であってブレードケース12の右側には使用者が切断機本体10を上下動操作する際に把持するハンドル部20が設けられている。本実施形態の卓上切断機1は、このハンドル部20に特徴を有するもので、切断機1の基本的な構成については特に変更を要しない。
【0006】
ハンドル部20は、切断刃11(その回転面J11)に対して右側に配置されている。従って、多くの場合、図4に示すように使用者Mは切断刃11に対してやや左側に位置して右手Rを右側へ延ばしてこのハンドル部20を把持することとなる。ハンドル部20には、使用者Mが右手Rで把持するグリップ部21が設けられている。このグリップ部21は、いわゆる横形のグリップ部で縦方向(上下方向)ではなく横方向(左右方向)に延びる向きに配置されている。
このグリップ部21の手の平が当接する部位(使用者側の側面、以下「手の平当接部21a」と言う)は、切断刃11の回転面J11に直交する基準線S対して僅かな角度θだけ傾斜している。本実施形態では、この角度θは約7°に設定されている。このグリップ部21の手の平当接部21aは、主として平面的に見てその左端部側が右端部側よりも後側へ変位する方向に傾いている。以下、グリップ部21が延びる方向であってグリップ部21を把持した手の向きを握り軸線Pで表す。本実施形態の場合、握り軸線Pは平面的に見て基準線Sに対して時計回り方向へ角度θだけ傾斜している。
このため、切断刃11に対して左側に位置する使用者Mが右手Rを右側斜め後方へ延ばしてこのグリップ部21を把持すると、図5に示すように手首のひねり(ひねり軸線C)をほとんど生ずることなく楽な姿勢で把持することができる。これに対して、図8に示すように真横に延びる横グリップであって切断刃の回転面に対して直交する向き(基準線Sに沿った向き)に手の平当接部を有するグリップ部を同様の位置から使用者が右手で把持すると、握り軸線Pが基準線Sに一致する結果上記よりも手首をひねって把持することとなって使用者は窮屈な姿勢を強いられる。図5及び図8では、グリップ部を把持した手首にひねりがひねり軸線Cで表されている。図5に示すひねり軸線Cは、図8に示すひねり軸線Cよりも緩やかに湾曲していることから両者を比較すると、前者の方が手首のひねりがより小さいことが理解できる。
グリップ部21の後面側(手の平当接部21aとは反対側)には、スイッチレバー22が配置されている。グリップ部21を把持した右手Rの指先でこのスイッチレバー22を引き操作(オン操作)すると、電動モータ14が起動して切断刃11が回転する。このスイッチレバー22は、引き操作すると指先が当接される面(指先当接部22a)が手の平当接面21aに対して平行になる。使用者Mは、右手Rを伸ばしてグリップ部21を把持し、かつその指先でスイッチレバー22を引き操作したした場合に、指先を手の平に対してひねることなく当該スイッチレバー22のオン状態を楽に維持することができる。このため、当該卓上切断機1を用いて切断加工を行う場合に、グリップ部21を把持して切断機本体10を下動させるとともにスイッチレバー22を引き操作して切断刃11を回転させる状態を長時間維持しても疲労が少なく、この点で当該卓上切断機1の操作性が高められている。
【0007】
以上のように構成した本実施形態の卓上切断機1によれば、使用者Mがその正面に向かって切断刃11の左側に位置して右手Rを右側に延ばしてハンドル部20のグリップ部21を把持して切断機本体10を上下動操作することができる。グリップ部21は左右方向に延びる横型であり、しかも平面的に見て基準線Sに対してその握り軸線Pが時計回り方向(使用者M側へ振る方向)に傾斜している。このため、使用者Mは手首を大きくひねることなくグリップ部21を楽な姿勢で把持することができ、この点で当該ハンドル部20の操作性をより高めることができる。
また、グリップ部21の内側に配置されたスイッチレバー22を指先で引き操作すると、その指先当接部22aがグリップ部21の手の平当接部21aに対して平行に位置することから、指先を手の平に対してひねることなく楽な姿勢でスイッチレバー22を引き操作状態に維持することができる。
以上説明した実施形態には種々変更を加えて実施することができる。例えば、手の平当接部21aとその反対側(スイッチレバー22側)を含む全体として当該グリップ部21が基準線Sに対して平面的に見て時計回り方向(使用者M側へ振られた方向)へ傾斜させることによりその手の平当接部21aを同方向へ傾斜させた構成を例示したが、図6に示すようにグリップ部23のスイッチレバー24側は基準線Sに対してほぼ平行で、手の平当接部23a側のみを基準線Sに対して平面的に見て角度θだけ傾斜させることによりその握り軸線Pを同方向に傾斜させる構成としてもよい。
また、平坦な手の平当接面21a(23a)に限らず、図7に示すようにふくらみ持ったグリップ部25(手の平当接部25aが円弧形に湾曲したグリップ部25)についてもその左端部側を右端部側よりも後側へ変位した方向に傾斜させてその握り軸線Pを基準線Sに対して角度θだけ傾斜させることにより同様の作用効果を得ることができる。さらに、図示は省略したへこみを持ったグリップ部についても同方向に傾斜させることによって握り軸線Pを傾斜させた構成とすることにより同様の作用効果を得ることができる。
また、基準線Sに対する握り軸線Pの傾斜角度を約7°に設定したが、切断刃11に対するハンドル部の相対的な位置等の要因によって例えば約5°〜約10°の範囲で設定することができる。要は、切断刃11の左側に位置する使用者M側にグリップ部の少なくとも手の平当接部を僅かな角度だけ切断刃11側に振り向けることにより、使用者Mは窮屈な向きに手首をひねることなく楽な姿勢でこのグリップ部を把持することができ、これにより当該卓上切断機の操作性を一層よくすることができる。
さらに、使用者Mから見て切断刃11に対して右側にハンドル部20を備えた卓上切断機1を例示したが、切断刃に対して左側にハンドル部を有する卓上切断機においてグリップ部を切断刃側に僅かな角度だけ振り向けることにより、手首のひねりを少なくしてその操作性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る卓上切断機の斜視図である。本図は、正面側(使用者側)斜め上方から見下ろした状態を示している。また、本図では、切断機本体が上方に戻された状態が示されている。
【図2】本発明の実施形態に係る卓上切断機の斜視図である。本図は、正面側(使用者側)斜め上方から見下ろした状態を示している。また、本図では、切断機本体が下方に下ろされた状態が示されている。
【図3】図2の(III)矢視図であって本発明の実施形態に係る卓上切断機の平面図である。本図では、切断機本体が下方に下ろされた状態が示されている。
【図4】本実施形態に係る卓上切断機と使用者との位置関係を示す平面図である。本図では、卓上切断機が模式的に示されている。
【図5】本実施形態に係る横型グリップ部を右手で把持した状態を示す平面図である。本図では手首のひねりが少ない状態で把持する状態が示されている。
【図6】別形態のグリップ部の平面図である。
【図7】別形態のグリップ部の平面図である。
【図8】従来の横形グリップ部を右手で把持した状態を示す平面図である。本図では、手首を大きくひねって把持する状態が示されている。
【符号の説明】
【0009】
1…卓上切断機
2…テーブル
3…ベース、3a…補助テーブル部
4…フェンス、4a…位置決め面
5…本体支持部
10…切断機本体、11…切断刃
12…ブレードケース、13…可動カバー、14…電動モータ
20…ハンドル部
21…グリップ部、21a…手の平当接面
22…スイッチレバー、22a…指先当接部
P…手首の握り軸線
J11…切断刃11の回転面
S…切断刃の回転面J11に直交する基準線
M…使用者、R…使用者の右手
C…手首のひねり軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断材を載置するテーブルと、該テーブルの上方に位置して上下に移動操作可能に設けられた切断機本体を備えた卓上切断機であって、
前記切断機本体は、切断刃の側方に、当該切断機本体を使用者が上下に移動操作する際に把持するグリップ部を備え、該グリップ部の手の平が当たる手の平当接部が前記切断刃に直交する基準線に対して平面的に見て前記切断刃側の端部がその反対側の端部よりも後側へ変位した方向に傾斜し、かつ前記手の平当接部のいずれの位置においてもその傾斜方向と同一の方向に傾斜した構成とした卓上切断機。
【請求項2】
請求項1記載の卓上切断機であって、前記グリップ部の手の平当接部とは反対側にスイッチレバーを備え、前記グリップ部を把持して指先で前記スイッチレバーを引き操作すると、該スイッチレバーの指先当接部が前記手の平当接部に平行に位置する卓上切断機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の卓上切断機であって、前記手の平当接部が前記基準線に対して5°〜10°の範囲で後側に傾斜した卓上切断機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−89239(P2010−89239A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264052(P2008−264052)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】