説明

卓上型乳加工製品製造装置

【課題】 小規模の飲食店や家庭において少量の乳加工製品を製造するのに好適な、卓上型乳加工製品製造装置の機能性、安全性を向上させるための機構を開発することを技術課題とした。
【解決手段】 加温機構5はヒータユニット50を具えて成るものであり、このヒータユニット50は、本体部1における下部筐体11に対し、高さ調節機能、断熱機能及び撥水機能が具えられた台座52を介在させて固定されているものであることを特徴として成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチーズ、バター等の乳加工製品の製造装置に関するものであって、特に数リットル程度の少量の原料乳を用いて乳加工製品を製造するのに好適な卓上型乳加工製品製造装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
チーズの製造は、原料乳を殺菌処理し、続いて原料乳に対してスタータ(乳酸菌、カビ類)を注入し、乳酸醗酵を行うとともに、レンネット(凝乳成分であるキモシンを主成分とする乳凝固剤)を注入して混合した後、所定時間静止させてカード(固体成分)を形成するというものである。次いでこのカードを成型し、適宜の条件で熟成させることにより、様々なチーズとして製品化される。
【0003】
そしてこのようなチーズの製造における殺菌、醗酵を行うための製造装置は、国内ではほとんど開発されていないため、欧州等から輸入された装置が用いられている。しかしながら輸入される装置は非常に高価且つ大型であるため、小量生産には不向きなものであった。
そこで小規模の飲食店や家庭でチーズ作りを行う場合には、鍋を直接火にかけたり、あるいは鍋よりも一回り大きな容器を用いて湯せんを行って原料乳の温度を高め、殺菌、 醗酵に適した温度を維持する手法が採られている。この際、火(湯)加減を調節することにより温度管理が行われているが、殺菌工程や醗酵工程では厳密な温度管理が要求されるため、作業者が付っきりになることを余儀なくされ、この間は他の作業が行えなくなってしまう。そしてこのことが、特に小規模飲食店等でチーズ作りが定着しない要因となっていた。
【0004】
そこで本出願人は、小規模の飲食店や家庭において少量の乳加工製品を製造するのに好適な卓上型乳加工製品製造装置を開発し、既に特許出願に及んでいる(特許文献1参照)。
その後、前記卓上型乳加工製品製造装置を市場に投入するにあたって改善要素を検討したところ、使い勝手や安全面での改善の余地が顕在化した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−252678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、小規模の飲食店や家庭において少量の乳加工製品を製造するのに好適な、卓上型乳加工製品製造装置の機能性、安全性を向上させるための機構を開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の卓上型乳加工製品製造装置は、原料乳を収容するためのボウルを本体部に具えて成る装置であって、前記本体部には、原料乳を攪拌するためのミキサ機構と、原料乳の殺菌、醗酵または凝固のいずれか一つまたは複数を促すための加温機構とが具えられ、一方、前記ボウルは、本体部に対して着脱可能に取り付けられるものである卓上型乳加工製品製造装置において、前記加温機構はヒータユニットを具えて成るものであり、このヒータユニットは、前記本体部における下部筐体に対し、高さ調節機能、断熱機能及び撥水機能が具えられた台座を介在させて固定されているものであることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の卓上型乳加工製品製造装置は、前記要件に加え、前記ヒータユニットは、発熱体が金属に鋳込みされて成るものであり、裏面に対して輻輻射熱分散板が具えられていることを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載の卓上型乳加工製品製造装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記輻射熱分散板には、加熱側温度センサが具えられていることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の卓上型乳加工製品製造装置は、前記請求項2または3記載の要件に加え、前記輻射熱分散板には、温度ヒューズが具えられていることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、ヒータユニットは、本体部における下部筐体との間に、高さ調節機能、断熱機能及び撥水機能が具えられた台座を介在させて固定されているため、ヒータユニットにおける接触面を、ジャケットまたは収容部の底面に密接させることが可能となる。またヒータユニットから本体部への熱の移動を防止して、安全且つ省エネルギーでの運転が可能となる。更にまた、収容部または収容部とジャケットとの間から水分が漏れた場合であっても、この水分がヒータユニットにおける端子に到達するのを防ぐことができる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、ヒータユニットにおける裏面からの輻射熱を、輻射熱分散板の全面から緩やかに外部に放熱することができる。このため、ヒータユニット下方の雰囲気や部材の急激な温度上昇、局所的な温度上昇を防ぐことができる。
【0013】
更にまた請求項3記載の発明によれば、ヒータユニットの温度を輻射熱分散板の温度として検知することができる。
【0014】
更にまた請求項4記載の発明によれば、ヒータユニットが想定外の高温状態となった場合に、輻射熱分散板を通じて温度ヒューズの温度が上昇することとなり、ヒューズ素子が溶断することにより機器の損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の卓上型乳加工製品製造装置を示す斜視図である。
【図2】取手兼用連結部を構成する収容部取手片及びジャケット取手片並びにこれらが係合した状態を示す斜視図及び平面図である。
【図3】収容部取手片及びジャケット取手片並びにこれらが係合する様子を段階的に示す斜視図である。
【図4】取手兼用連結部によってジャケットと収容部とが所定の間隔を保った状態に位置決めされている様子を示す縦断面図、平面図及び側面図である。
【図5】加熱機構におけるヒータユニット周辺を示す分解斜視図である。
【図6】ヒータユニットにおける接触面の反対面に対して輻射熱分散板が具えられる様子を示す分解斜視図である。
【図7】ジャケットが装着されたボウルを本体部に着脱する様子を示す側面図である。
【図8】攪拌子の装着の様子と攪拌子が収容部内に位置して回転している様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の卓上型乳加工製品製造装置の形態は一例として以下の実施例に説明するとおりのものであるが、この実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0017】
図中、符号Dで示すものが本発明の卓上型乳加工製品製造装置であって、このものは本体部1に対して着脱可能に組み付けられるボウル2を具えて成るものである。
そして前記本体部1には、ボウル2に収容される原料乳M0等の被処理物を攪拌するためのミキサ機構3及び原料乳M0等の殺菌、醗酵を促すための加温機構5が具えられる。
以下、これら卓上型乳加工製品製造装置Dを構成する各要素について説明する。
【0018】
まず前記本体部1は図1、7、8に示すように、側面視L字型の上部筐体10と下部筐体11とをヒンジ接続により組み合わせて成るものであり、上部筐体10と下部筐体11との接合面が接した状態で側面視コの字型となって自立する筐体である。
そして上部筐体10に前記ミキサ機構3が具えられ、一方、下部筐体11に対して前記ボウル2が固定されるものであり、このような構成が採られることにより、ボウル2を下部筐体11に固定した状態で、上部筐体10を回動させてミキサ機構3に具えられる攪拌子30がボウル2内に入出できるように構成されている。
なおボウル2と下部筐体11との固定構造については後程説明を行う。
【0019】
また前記ミキサ機構3は、モータ31を動力源として回転軸32を回転駆動することにより、この回転軸32の先端に取り付けられる攪拌子30によって原料乳M0等の攪拌を行うための部材である。そしてこの実施例では、前記攪拌子30にランダムな軌道を与えるための遊星歯車機構33が具えられるものであり、前記回転軸32は遊星歯車機構33の遊星歯車に接続されて、モータ31からの動力によって回転する太陽歯車を中心として、自転しつつ公転することとなる。なおミキサ機構3としては、遊星歯車機構33を具えることなく、攪拌子30が定位置で回転するような構成とすることもできる。
また前記回転軸32には、原料乳M0等の加工状態に応じた好適な形状の攪拌子30が選択的に装着されるものであり、この実施例では図1、8に示すようにフック型のものを装着するようにしたが、ビーター型、ホイッパー型等の攪拌子30を装着することもできる。もちろん攪拌子30としてはこれらの形状のほかに、適宜の形状が採り得るものである。
【0020】
また前記加温機構5は図5に示すように、一例としてシーズ線等の発熱体50bが、アルミニウム等の金属に鋳込みされて形成されたヒータユニット50を具えて成るものである。なおヒータユニット50の形状は一例として平面視円形状とされるものであり、その下部外縁には係合凸部50aが一例として六ヶ所に形成される。
なおヒータユニット50における接触面50cは、後述するボウル2(収容部21、ジャケット22)の底面21a、底面22aと同じ曲面を有するものとされ、これらに対して密接するように形成されている。
【0021】
そして前記ヒータユニット50には、前記係合凸部50aに合致する係合凹部51aが形成された断熱マット51が外嵌されるものであり、更にこの断熱マット51と略同形状の押え枠53が、断熱マット51及び係合凸部50aに載置される。そしてヒータユニット50は台座52を介在させた状態で、下部筐体11にビス等によって固定されるものであり、ヒータユニット50における係合凸部50aは、押え枠53と台座52とによって挟まれた状態となる。
なお下部筐体11には取付穴110が形成されており、この取付穴110を下方から覆うようにして安全カバー56が取り付けられる。
また前記台座52は、一例としてPTFEから成る素材が所定の高さ寸法に設定された円筒状に成形されることにより、ヒータユニット50の高さ調節機能並びに断熱機能及び撥水機能が具えられたものである。
また前記断熱マット51は、一例として耐熱ファイバーや耐熱ゴム等のノンアスベスト素材により形成されるものである。
【0022】
また前記ヒータユニット50の裏面50fに対しては、アルミニウム等、熱放射性に優れた素材によって形成された輻射熱分散板55が具えられる。
具体的には図6に示すように、裏面50fには発熱体50bに給電するための端子50dが設けられるとともに、メネジ孔50eが二箇所に形成されており、このメネジ孔50eに対して輻射熱分散板55がビス止めされる。
なお輻射熱分散板55の形状はヒータユニット50と同様に平面視円形状とされるものであるが、前記端子50dを避けるように一部が切除されている。
【0023】
また前記輻射熱分散板55には、一例としてサーミスタが適用された加温側温度センサ75が具えられるものであり、この加温側温度センサ75は後述する制御部7に接続される。
また図示は省略するが温度ヒューズが具えられるものであり、この温度ヒューズは、一方の端子50dに接続される給電線に対して設けられるものであり、所定値以上に温度が上昇した場合に、内部に具えられたヒューズ素子が溶断することにより、給電を停止するものである。
【0024】
なお前記ヒータユニット50としては、上述したシーズ線やニクロム線のようにジュール熱を発生させる発熱体50bが具えられたものの他、一方の面が吸熱し、反対面に発熱が起こるペルチェ素子等を用いられたものとすることも可能である。この場合、ボウル2の底面21a、22aと接する接触面50cを吸熱面として機能させることにより、ボウル2を冷却してアイスクリームやシャーベットを製造することも可能となる。
【0025】
また前記ボウル2は図4に示すように、ステンレススチール等により構成された容量5〜10リットル程の深底の容器である収容部21の外側に、一定間隔が保たれた状態でジャケット22が具えられた二重構造体を形成するものである。
そしてボウル2の底部には円筒状の勘合部23が具えられるものであり、この勘合部23には、前記下部筐体11に設けられる係合片11aと噛み合うバヨネット溝23aが形成されている。なお前記係合片11aの下方には液抜口11bが形成される。
【0026】
ここで前記収容部21の底面21a及びジャケット22の底面22aの形状について説明する。具体的には、収容部21及びジャケット22の縦断面形状は図4(a)に示すように、上下反転した放物線状の側壁部を有するものであり、更に中央部分において盛り上がった状態となって底面21a、22aが形成されている。
このような形態が採られることにより、収容部21またはジャケット22内に入れられた被処理物は、底面21a、22a付近において中央部分(平面視)と側壁部との間に形成される最深部に流下することとなる。この結果図4(a)に示すように、遊星運動を行う攪拌子30が作用しない、中央部分に位置する被処理物を、攪拌子30が作用する部位(最深部)にまで取り込むことができ、被処理物を満遍なく攪拌することが可能となるものである。
なお底面21a、22aの曲面は、前記ヒータユニット50における接触面50cと同じ曲面となっており、これらが密に接触することが可能となっている。
【0027】
また前記ジャケット22の下部には、被加温側温度センサ76を保持するためのホルダ24が具えられるものであり、このホルダ24は、収容部21を用いることなくジャケット22のみが用いられる場合に、ジャケット22に収容される被処理物の温度を計測する場合に用いられるものである。
【0028】
ここで前記収容部21とジャケット22とを所定の間隔を保った状態に位置決めするとともに、その状態を維持するための取手兼用連結部6の構成について説明する。
まず、前記収容部21におけるフランジ21bには、位置決め機構を兼ねた取手片61が具えられ、一方、前記ジャケット22におけるフランジ22bには、図2に示すような位置決め機構を兼ねた取手片62が具えられる。
そしてこれら取手片61、62にはそれぞれ、凸部または凹部が形成されるものであり、この実施例では、取手片62の上面に連結凹部62bを形成し、一方、取手片61の下部付近を凸部として機能させるようにした。
そして図2(c)に示すように、取手片61が連結凹部62bに嵌り込むように係合した状態で、これらが取り付けられている収容部21とジャケット22とが所定の間隔を保った状態に位置決めされる(図3(c)、図4参照。)。この実施例では、取手片61と取手片62とが、それぞれ収容部21、ジャケット22に対して、対向する二箇所の位置に具えられているため、前記位置決めはより正確且つ強固に行われることとなる。
【0029】
また上述したように係合状態にある取手片61、取手片62を固定するためのロック機構が具えられるものであり、ここでこのロック機構について説明する。
具体的には図2(b)に示すように、取手片62における一方の長辺の中心から他方の長辺に向けて、一定幅の切り込みを入れ、この部分をロックバー受入部62aとするものである。そしてこのロックバー受入部62aの最奥部には、ロックバー63が軸支されるものであり、このロックバー63の回動端側には図3に示すようにオネジが形成されている。そしてこのオネジに対して、ノブ64に形成されたメネジが螺合することとなる。
一方、取手片61にも同様のロックバー受入部61aが形成されるものであり、図2(d)に示すように、取手片61と取手片62が係合した状態で、ロックバー受入部61aとロックバー受入部62aとはピッタリと重なることとなる。
なお前記ロックバー受入部62aの開放側は、平面視V字状に切欠62cが形成されるものとした。
また前記取手片61、62は、樹脂材料等、熱伝導性の低い素材により形成されるものとする。
【0030】
また前記本体部1における下部筐体11には制御部7が具えられるものであり、この制御部7には、表示部71、メインスイッチ72、ヒータスイッチ73、ミキサ速度調節ツマミ74、加温側温度センサ75、被加温側温度センサ76及び磁気センサ78が接続されている。
更に前記本体部1には、被加温側温度センサ76によって検出された値と、予め設定された値とを比較して、ヒータユニット50に供給する電力の調整やオンオフ操作を行うようなプログラムが記憶されている。
また制御部7には、加温側温度センサ75によって検出された値が、予め設定された値よりも高くなった場合に、ヒータユニット50への給電を強制的に停止するようなプログラムも記憶されている。
また制御部7には、本体部1の適宜の個所に設けられた磁気センサ78から所定の信号が送られてこない場合に、モータ31及びヒータユニット50への電力供給が行われないようなプログラムも記憶されている。なおこの実施例では、図7(b)に示すように、下部筐体11におけるボウル2と対面する個所に磁気センサ78が具えられるようにした。
【0031】
また前記下部筐体11の背面には、被加温側温度センサ76を保持するためのホルダ12が具えられている。
更に前記上部筐体10におけるミキサ機構3付近には、ガード8が具えられる。このガード8は、上部筐体10を下方に回動させて攪拌子30をボウル2内に進入させた状態で、ボウル2の上部開口部を実質的に塞ぐものであり、例えば小児がボウル2内に手を入れてしまうことを防ぐことができる。
この実施例では一例として、線材をメッシュ状に組むことによりガード8を構成し、稼働中のボウル2内を目視することができるようにした。
【0032】
本発明の卓上型乳加工製品製造装置Dは一例として上述したように構成されるものであり、この装置を用いて、原料乳の殺菌、殺菌乳の冷却、乳酸醗酵、凝固、ミキシングが行われた後、分断、静置することにより、チーズ原製品(いわゆるフレッシュチーズ)が得られるものである。
以下、このような製造工程において行われる準備操作、加熱操作、混合操作について説明する。
【0033】
〔収容部とジャケットの組み付け〕
まずジャケット22内に収容部21を入れ込んだ状態で、取手片61を連結凹部62bに嵌め込む。これにより、収容部21はジャケット22に対し所定の間隔を保った状態に位置決めされた状態でセットされる(図3(b)、図4参照。)。この際、取手片61の下部形状は、連結凹部62bの形状に合致しており、更に取手片61と取手片62とが、それぞれ収容部21、ジャケット22に対して、対向する二箇所の位置に具えられているため、前記位置決めを正確且つ迅速に行うことができる。
次に図3(c)に示すようにロックバー63を引き起こすとともに、ノブ64を締め込んで、取手片61と取手片62との係合状態を保持することによりボウル2が形成される。
【0034】
〔下部筐体へのボウルの組み付けと攪拌子の装着〕
次いで図7(a)に示すように、上部筐体10を上方に回動させてた状態で、ボウル2(ジャケット22)のバヨネット溝23aを下部筐体11における係合片11aに係合させることにより、ボウル2を本体部1に固定する(図7(b))。
この状態で磁気センサ78によって下部筐体11にボウル2が装着されたことが検知されるものの、上部筐体10が上方に回動した状態であるため、ミキサ機構3は起動できない状態とされている。
更に図8(a)に示すように回転軸32に攪拌子30を装着する。
なお図7、8においては、卓上型乳加工製品製造装置Dを、ガード8が装着されていないものとしたが、もちろん図1に示すようにガード8を具えるようにしてもよい。
【0035】
〔被処理物の加温〕
次にボウル2内の被処理物の加温操作について説明する。
まずボウル2におけるジャケット22と収容部21との間の空間に水Wを注入し、更に収容部21内に原料乳M0を投入する。
またヒータスイッチ73をオン状態とするとともに、ジャケット22内の水Wに被加温側温度センサ76を挿入し、表示部71上の温度設定値を一例として65℃にセットすると。
すると制御部7によってヒータユニット50がオン状態とされ、ここからボウル2に熱が伝導されて水Wの温度が上昇し、更に原料乳M0の温度が上昇する。やがて被加温側温度センサ76の検出値に応じて適宜オンオフが繰り返され、水W(原料乳M0)の温度が設定値に保たれることとなる。
この際、ジャケット22の底面22aは、ヒータユニット50の接触面50cと同様の曲面を有しているため、熱伝導が高効率で行われることとなる。
また収容部21内に収容された原料乳M0には、ヒータユニット50の熱がジャケット22内に収容された水Wを介在させて伝導されるため、原料乳M0の温度変動を緩やかなものにして、原料乳M0を殺菌に適した温度に、高精度で保つことができる。
【0036】
そして上述のように加温機構5が機能している状態では、ヒータユニット50の裏面50fからの熱の輻射は避けられないものであるが、この熱は輻射熱分散板55にいったん吸収され、その全面から緩やかに外部に放熱されることとなる。このため、ヒータユニット50下方の雰囲気や部材の急激な温度上昇、局所的な温度上昇を防ぐことができる。
また加温側温度センサ75により、ヒータユニット50の温度を輻射熱分散板55の温度として検知することができ、この値が所定の値よりも高くなった場合には、前記被加温側温度センサ76の検出値に関わらず、ヒータユニット50への給電が停止される。
更にまたヒータユニット50が想定外の高温状態となった場合に、輻射熱分散板55を通じて温度ヒューズ57の温度が上昇することとなり、ヒューズ素子が溶断することによりヒータユニット50への給電を停止し、機器の損傷を回避することができる。
【0037】
更にまた前記ヒータユニット50は、本体部1における下部筐体11との間に、高さ調節機能、断熱機能及び撥水機能が具えられた台座52を介在させて固定されているため、ヒータユニット50における接触面50cを、ジャケット22または収容部21の底面22a、21aに密接させることが可能となる。またヒータユニット50から本体部1への熱の移動を防止して、安全且つ省エネルギーでの運転が可能となる。更にまた、収容部21または収容部21とジャケット22との間から水分が漏れた場合であっても、この水分がヒータユニット50における端子50dに到達するのを防ぐことができる。
【0038】
〔被処理物の混合〕
次にボウル2内に投入された被処理物の混合操作について説明する。
まず図8(a)に示す状態から、上部筐体10を下方に回動させて上部筐体10と下部筐体11との接合面が接した状態とし、攪拌子30をボウル2内に位置没入させる(図8(b))。
このような状態では、磁気センサ78によって下部筐体11にボウル2が装着されたことが検知され、更に上部筐体10が下方に回動した状態であるため、制御部7はミキサ機構3の起動を許容することとなる。
そしてミキサ速度調節ツマミ74を操作してミキサ機構3を起動するものであり、攪拌子30は、ミキサ速度調節ツマミ74の位置に応じた速度で、太陽歯車を中心として自転しつつ公転する。
この際、攪拌子30はボウル2内全域に作用するように設計されているが、ボウル2の断面形状に由来して、どうしても作用しない部位が存在してしまう。
しかしながら、収容部21及びジャケット22の縦断面形状は図4(a)に示すように、上下反転した放物線状の側壁部を有するものであり、更に中央部分において盛り上がった状態となって底面21a、22aが形成されているため、収容部21またはジャケット22内に入れられた被処理物は、底面21a、22a付近において中央部分(平面視)と側壁部との間に形成される最深部に流下することとなる。この結果図4(a)に示すように、遊星運動を行う攪拌子30が作用しない、中央部分に位置する被処理物を、攪拌子30が作用する部位(最深部)にまで取り込むことができ、被処理物を満遍なく攪拌することが可能となるものである。
【0039】
その後、ボウル2を下部筐体11から取り外す際に、前記取手片61、62は、樹脂材料により形成されたものであるため、収容部21またはジャケット22からの伝導熱によって取手片61、62が熱くなってしまうのを回避して、迅速且つ安全に行うことができるものである。
【符号の説明】
【0040】
D 卓上型乳加工製品製造装置
1 本体部
10 上部筐体
11 下部筐体
11a 係合片
11b 液抜口
110 取付穴
12 ホルダ
2 ボウル
21 収容部
21a 底面
21b フランジ
22 ジャケット
22a 底面
22b フランジ
23 勘合部
23a バヨネット溝
24 ホルダ
3 ミキサ機構
30 攪拌子
31 モータ
32 回転軸
33 遊星歯車機構
5 加温機構
50 ヒータユニット
50a 係合凸部
50b 発熱体
50c 接触面
50d 端子
50e メネジ孔
50f 裏面
51 断熱マット
51a 係合凹部
52 台座
53 押え枠
55 輻射熱分散板
56 安全カバー
6 取手兼用連結部
61 取手片
61a ロックバー受入部
62 取手片
62a ロックバー受入部
62b 連結凹部
62c 切欠
63 ロックバー
64 ノブ
7 制御部
71 表示部
72 メインスイッチ
73 ヒータスイッチ
74 ミキサ速度調節ツマミ
75 加温側温度センサ
76 被加温側温度センサ
78 磁気センサ
8 ガード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料乳を収容するためのボウルを本体部に具えて成る装置であって、前記本体部には、原料乳を攪拌するためのミキサ機構と、原料乳の殺菌、醗酵または凝固のいずれか一つまたは複数を促すための加温機構とが具えられ、一方、前記ボウルは、本体部に対して着脱可能に取り付けられるものである卓上型乳加工製品製造装置において、前記加温機構はヒータユニットを具えて成るものであり、このヒータユニットは、前記本体部における下部筐体に対し、高さ調節機能、断熱機能及び撥水機能が具えられた台座を介在させて固定されているものであることを特徴とする卓上型乳加工製品製造装置。
【請求項2】
前記ヒータユニットは、発熱体が金属に鋳込みされて成るものであり、裏面に対して輻射熱分散板が具えられていることを特徴とする請求項1記載の卓上型乳加工製品製造装置。
【請求項3】
前記輻射熱分散板には、加熱側温度センサが具えられていることを特徴とする請求項2記載の卓上型乳加工製品製造装置。
【請求項4】
前記輻射熱分散板には、温度ヒューズが具えられていることを特徴とする請求項2または3記載の卓上型乳加工製品製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200201(P2012−200201A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67407(P2011−67407)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名 第11回厨房設備機器展 主催者名 社団法人日本能率協会 社団法人日本厨房工業会 開催日 平成23年2月22日〜25日
【出願人】(509003195)大生機設株式会社 (6)