説明

単一リーフX線コリメータ

【課題】単一リーフX線コリメータを提供する。
【解決手段】単一リーフX線コリメータは、少なくとも1つのコリメーション用開口を持つ少なくとも1つのコリメーション用リーフ部材を有する。コリメーション用リーフ部材は、X線の通路に沿って配置され、垂直又は水平平面の内の少なくとも1つに対して回転するように構成するのに適している。リーフ部材はX線ビームをほぼ楕円の形状にコリメートし、従って、照射線量効率を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、放射線コリメータに関し、より具体的には、医学的診断用イメージングに使用するためのリーフ(leaf)型X線コリメータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線コリメータは、医学的イメージング用途では、患者の身体内の診断に必要な領域を露出し且つその周囲の領域のX線に対する不必要な露出を防止するのに丁度充分な形状及びサイズにX線ビームの場を制限するために使用される。換言すると、コリメータは、X線露出を最小にし且つX線照射線量効率を最大にして、診断のための最適な量の画像データを求めるのに役立つ。
【0003】
一般に、X線コリメータは、場の減少のためにX線を阻止するリーフ又はブレードの構成に依存して、X線ビームをほぼ矩形の形状、円形の形状、或いはそれらの組合せの形状のいずれかにコリメートすることによって、X線ビームの場を減少させる。
【0004】
矩形のコリメーションを行うX線コリメータの典型的な構成では、X線減衰材料で作られ且つX線の通路に沿って配列された少なくとも一対の平面状ブレード部材を含んでいる。これらの部材は、相互に逆方向に接近するように動かされたとき、X線を阻止し、これによって、診断を必要とする患者の身体の領域に集束させるためにX線の場をほぼ矩形の形状に減少させる。しかしながら、場の矩形の形状は、画像の有用な面積に対してかなり大きいX線露出面積を含んでおり、従って、照射線量効率が低くなる。
【0005】
照射線量効率ηは次の関係式
η=画像の有用面積/同じ平面における放出面積
で与えられる。
【0006】
円形のコリメーションを行うX線コリメータの典型的な構成では、X線減衰材料で作られ且つX線の通路に沿って円形の態様で配列された離散的な一組のディスクを含んでいる。動作時、これらのディスクはX線の場のサイズを可変の直径に制限し、これによって、診断を必要とする患者の身体の領域に集束させるために離散的な円形のコリメーションを行う。離散的な円形の場の形状は、矩形の場の形状よりも面積が比較的小さいけれども、これらのディスクのための駆動機構は構造が複雑であり、また照射線量効率の有意な増大もない。
【0007】
円形のコリメーションを行うX線コリメータの別の既知の構成(これはまた核医学におけるガンマ線のコリメーションにも広く使用されている)では、X線減衰材料で作られ且つ「カメラの虹彩」型構成で配列された8〜16個のリーフを含んでいる。動作時、これらのリーフはX線ビームの直径を増減させ、これによって、診断を必要とする患者の身体の領域に集束させるためにほぼ連続した円形のコリメーションを行う。この構成は照射線量効率を改善し且つ離散的なコリメーション技術よりもかなり大きい範囲までX線の場を制限することによってほぼ連続した円形(例えば、八角形)のコリメーションを行えるようにすることができるけれども、このコリメータはX線装置に使用するために構造が遙かに複雑であり且つ非常に高価である(とは云え、ガンマ線露出に伴う高いリスクがあるので核医学に使用するために実行可能である)。
【0008】
円形コリメータの更に別の構成が欧州特許公報EP1026698A2(2000年10月8日発行、出願人「Ein-Gal, Moshe」)に記載されており、これは、複数の相互に整列可能なコリメータ及び予備コリメータにより、放射線源から生じる放射線ビームを成形することができる新規な回転式コリメータ・システムを提供している。コリメータ及び予備コリメータは、好ましくは共通軸に沿って積み重ねられた複数の回転式プレート上に取り付けられる。サーボモータを持つ制御システムがこれらのコリメータ・プレートのいずれかの1つを選択的に回転させて、放射線ビームをコリメートするための通路を形成するように複数のコリメータを整列させる。このコリメータは、事実上どのような種類の放射線治療計画にも適した広範囲の直径開口にわたって放射線ビームをコリメート及び予備コリメートする。このシステムは放射線ビームを異なる直径の円形の形状にコリメートすることができるけれども、該システムは各々1つずつのコリメータ・プレートについて選択的で独立の制御機構を使用しているのでより一層複雑である。
【0009】
円形コリメータの更に別の既知の構成では、中にコリメーション用開口を持つ摺動可能なリーフ部材を含み、摺動の程度は画像露出の投影面積に比例する。この構成は簡単な機構を採用し、且つ連続した円形のコリメーションを可能にするけれども、照射線量効率は明らかに有意ではない。
【特許文献1】欧州特許公報EP1026698A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの既知のコリメータは円形コリメーション、矩形コリメーション、又はそれらの組合せを提供するが、これらのコリメータのどれも、イ)簡単な構成、ロ)改善された照射線量効率、ハ)効率のよいコリメーション、及びニ)治療努力に対するX線露出に伴うリスクの点で、X線をコリメートするためのコスト効率のよい解決策、を提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態では、単一リーフX線コリメータを提供する。この単一リーフ・コリメータは、X線の通路に沿って配置された少なくとも1つのコリメーション用リーフ部材を有する。コリメーション用リーフ部材は少なくとも1つのコリメーション用開口を有していて、水平又は垂直平面の少なくとも1つに対して回転するように構成されており、リーフ部材はX線ビームをほぼ楕円の形状にコリメートする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の様々な実施形態では、特に医学的診断用イメージングに使用するための、X線用の単一リーフ・コリメータを提供する。しかしながら、実施形態はそのように限定されるものではなく、他のシステム、例えば、核医学装置におけるガンマ線をコリメートするため等のようなシステムに関連して具現化することができる。
【0013】
様々な実施形態では、水平又は垂直平面の少なくとも1つに対して回転するように構成されている少なくとも1つのコリメーション用リーフ部材を有するX線用の単一リーフ・コリメータを提供し、該リーフ部材はほぼ連続した楕円形のコリメートされたX線ビームを生成する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による単一リーフ・コリメータの概略平面図を示す。このコリメータは、例えば、CTスキャナなどのようなX線装置の一部としてのX線管ヘッド12及びイメージャ13の相互の間に配置された、X線減衰材料で作られた少なくとも1つのコリメーション用リーフ部材11を含む。コリメーション用リーフ部材11の中には、X線管ヘッド12の焦点面17から放出されたX線ビーム16がコリメーションのためにコリメーション用リーフ部材11を通過して、イメージャ13の前に位置決めされた患者の身体(図示せず)に集束することができるようにする少なくとも1つのコリメーション用開口111(図2に示す)が設けられる。
【0015】
一例では、コリメーション用リーフ部材11は、銅、鉛、タングステン、及びこれらの合金のようなX線減衰材料で作られる。
【0016】
別の例では、コリメーション用リーフ部材11は、タングステンを添加したプラスチック材料で作られる。
【0017】
図2の実施形態では、コリメーション用リーフ部材に設けられたコリメーション用開口111はほぼ円形の形状を有する。コリメーション用リーフ部材11は、水平又は垂直平面の少なくとも1つに対して(例えば、矢印の方向に沿って)回転(例えば、傾斜)するように構成されている。コリメーション用リーフ部材11の回転の結果、ほぼ円形の開口111を通過するX線ビーム16がほぼ連続した楕円形にコリメートされることに留意されたい。
【0018】
また、コリメーション用リーフ部材11のサイズは、実質的に、傾斜した位置でX線ビームの場の全体を覆い且つコリメーション用開口111を通してのみX線ビームを通過させる大きさであることに留意されたい。
【0019】
一例では、例えば直流サーボモータのような駆動手段を使用して、コリメートされた形状を最適にするようにコリメーション用リーフ部材111を所定の角度まで傾斜させることができる。
【0020】
別の例では、コリメーション用リーフ部材を傾斜させるために使用される駆動手段は流体圧又は空気圧式作動器とすることができる。
【0021】
一実施形態では、駆動手段及びコリメーション用リーフ部材11は共通のハウジング(図示せず)内に収容される。ハウジングは、締結具を使用してX線管ヘッド12に取外し可能に取り付けるように構成されるか、又はX線管ヘッド12と一体に構成される。
【0022】
図3は別の実施形態を示し、該実施形態では、X線減衰材料で作られた補助リーフ部材15(例えば、擬似プレート)がコリメーション用リーフ部材11と組み合わせて配置される。例えば、補助リーフ部材15はコリメーション用リーフ部材11に密に接近して固定することができる。補助リーフ部材15は、X線ビームをコリメーション用リーフ部材11へ通過させるための少なくとも1つの補助開口151を含むことができる。補助リーフ部材15のサイズは、コリメーション用リーフ部材11の全ての傾斜した位置でX線を充分に阻止するようにコリメーション用リーフ部材11よりも遙かに大きく定められる。
【0023】
例えば、コリメーション用リーフ部材11の或る傾斜した位置において、コリメーション用リーフ部材11の投影した幅がその対応する位置におけるX線ビームの幅よりも小さくなることがあり、それに起因して、X線ビームがコリメーション用リーフ部材11の縁の周りを患者の身体へ向けて通過する虞がある。補助リーフ部材15の目的は、X線ビームがコリメーションのためにコリメーション用リーフ部材11の開口111を通過することができるようにすると共に、コリメーション用リーフ部材11の全ての摺動位置でX線ビームを充分に阻止することによってX線ビームがコリメーション用リーフ部材11の縁の周りを患者の身体へ通過するのを防止することである。補助リーフ部材15と干渉することなくコリメーション用リーフ部材11を回転(傾斜)させるのに充分な空間が設定される。
【0024】
ここで、全ての傾斜した位置でX線を阻止するのに充分である大きなコリメーション用リーフ部材11を取り付けることが不可能であるか又は困難であるような装置において、補助リーフ部材15はコリメーション用リーフ部材11と組み合わせて使用するのに適していることに留意されたい。
【0025】
一例では、補助リーフ部材15は、例えば、鉛、タングステン、銅、又はこれらの合金のようなX線減衰材料で作られる。
【0026】
別の例では、補助リーフ部材は、タングステンを添加したプラスチック材料で構成される。
【0027】
一実施形態では、コリメーション用リーフ部材11を操作するための駆動手段が、補助リーフ部材15上に取り付けられる。
【0028】
例えば、コリメーション用リーフ部材11を駆動するために直流サーボモータを使用することができる。
【0029】
他の例では、コリメーション用リーフ部材11を駆動するために流体圧又は空気圧式作動器を使用することができる。
【0030】
図4は、従来技術による8つのブレードを持つ虹彩型コリメータを使用して得られたX線画像を示す。得られたX線画像は、縁におけるX線照射線量の無駄を表す8つの縁(八角形の形状)を含む。
【0031】
ここで、照射線量効率は、同じ平面上でのX線露出の面積に対する画像の有用面積の測度であることに留意されたい。従って、図5は、本発明の一実施形態による単一リーフ型コリメータを使用して得られたX線画像を示す。得られた画像は、大きい有用面積を囲む楕円形状(縁が無い)を持ち、この結果、照射線量及びコリメート効率を改善する。楕円形コリメーションによって提供される照射線量効率は、図4に示されるような矩形及び円形コリメーションの組合せの場合と比べて増大している。
【0032】
このように、本発明の様々な実施形態は、医学的診断用イメージングに使用するための単一リーフX線コリメータを提供する。
【0033】
以上、様々な特定の実施形態について本発明を説明したが、当業者には、本発明が変更して実施できること、例えば、コリメータ・リーフ部材を傾斜させると共に摺動するように構成することができること、コリメーション用リーフ部材に対して傾斜及び駆動の様々な形態及び方法を提供することができることが認められよう。コリメーション用開口及び補助開口は、様々な形状及びサイズのコリメートされたX線ビームを得るために様々な形状、例えば、楕円形状を持つことができる。ところで、全てのこのような変更は、特許請求の範囲に記載の精神及び範囲内に包含されるものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態による単一リーフ・コリメータの概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるコリメーション用リーフ部材の構造の概略図である。
【図3】本発明の別の実施形態による単一リーフ・コリメータの概略平面図である。
【図4】従来技術による矩形コリメーションによって得られるX線画像の写図である。
【図5】本発明による単一リーフ・コリメータを使用して得られるX線画像の写図である。
【符号の説明】
【0035】
11 コリメーション用リーフ部材
12 X線管ヘッド
13 イメージャ
15 補助リーフ部材
16 X線ビーム
17 焦点面
111 コリメーション用開口
151 補助開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線の通路に沿って配置された少なくとも1つのコリメーション用リーフ部材を有する単一リーフX線コリメータであって、
前記コリメーション用リーフ部材が少なくとも1つのコリメーション用開口を有し、また前記コリメーション用リーフ部材が水平又は垂直平面の少なくとも1つに対して回転するように構成されている、単一リーフX線コリメータ。
【請求項2】
前記コリメーション用開口はほぼ円形の形状を有する、請求項1記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項3】
更に、前記X線通路に沿って配置された少なくとも1つの補助リーフ部材を含んでいる請求項1記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項4】
前記補助リーフ部材は前記コリメーション用リーフ部材と組み合わせて設けられている、請求項3記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項5】
前記コリメーション用リーフ部材はX線に関して線源側とイメージャ側とを有し、前記補助リーフ部材は前記コリメーション用リーフ部材の前記線源側に配置されている、請求項1記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項6】
前記補助リーフ部材は、前記線源側から所定の距離においてX線の場の全体を覆うように予め定められたサイズを有している、請求項2記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項7】
前記補助リーフ部材は、当該補助リーフ部材の中にX線を通過させる少なくとも1つの補助開口を含んでいる、請求項2記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項8】
前記コリメーション用リーフ部材及び前記補助リーフ部材はX線減衰材料で作られている、請求項7記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項9】
前記補助リーフ部材は更に、前記コリメーション用リーフ部材を操作するための手段を含んでいる、請求項7記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項10】
ハウジングと、
前記ハウジング内でX線ビームをコリメートする手段であって、水平又は垂直平面の少なくとも1つに対して回転するように構成されている手段と、を有し、
前記X線ビームがほぼ楕円形にコリメートされるようにした単一リーフ・コリメータ。
【請求項11】
更に、前記コリメートする手段と組み合わさる補助手段を含んでいる請求項10記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項12】
前記補助手段は、前記コリメートする手段と組み合わさって、X線通路に沿って摺動するように構成されている、請求項11記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項13】
前記コリメートする手段はX線に関して線源側とイメージャ側とを有し、前記補助手段は前記コリメートする手段の前記線源側に配置されている、請求項10記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項14】
前記補助手段はX線の場のほぼ全体を覆うように構成されている、請求項11記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項15】
前記補助手段は、それを通って前記コリメートする手段へX線を通過させるように構成されている、請求項11記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項16】
前記コリメートする手段及び前記補助手段はX線減衰材料で作られている、請求項15記載の単一リーフ・コリメータ。
【請求項17】
前記補助手段は、前記コリメートする手段を操作するための手段を含むように構成されている、請求項7記載の単一リーフ・コリメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−508050(P2008−508050A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523793(P2007−523793)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/026709
【国際公開番号】WO2006/015077
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】