説明

単糖誘導体を含有する細胞増殖抑制剤

【課題】増大した活性を有する新規細胞増殖抑制剤の提供。
【解決手段】


[式中、
1は、置換されていてもよいアシルオキシまたは−NHR(Rは置換されていてもよいアシル)であり、
2は、置換されていてもよいアシルであり、
3は、置換されていてもよいアシルオキシまたはハロゲンであり、
4は、置換されていてもよいアシルオキシおよびハロゲンから選ばれる群から選択される1以上の置換基で置換されたメチルである]
で示される化合物を含有する細胞増殖抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖誘導体、具体的には単糖誘導体を含有する細胞増殖抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗癌剤のような、望ましくない細胞増殖の抑制に有効な薬剤として、糖誘導体の研究がなされている。糖の細胞膜への透過性を上げるために疎水性官能基が重要であることは認識されているが、抗癌剤として知られている糖誘導体はいずれも、糖の全ての水酸基をアルキル鎖で修飾したものや、アノマー位の水酸基を嵩高い置換基(例えば多環系芳香族炭化水素基)で修飾したものである(例えば非特許文献1および2)。
【0003】
5−FUに代表される代謝拮抗薬は、抗癌剤として臨床で用いられている。これらはG1期の細胞に特異的に作用するものであるが、毒性が低い一方、癌の種類によっては抗癌効果が著しく低い。また、シスプラチンに代表される白金製剤も抗癌剤として用いられており、これらは細胞周期非特異的ではあるが、毒性が高いうえ、ほとんどの癌がいずれ耐性を持つようになる。
【0004】
【非特許文献1】Carbohydrate. Res. 1984. 126. 27-43
【非特許文献2】Carbohydrate. Res. 2000. 329. 287-300
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
活性が強く、癌細胞等、増殖が望ましくない細胞に対して広範な増殖抑制効果を有する薬物の開発は依然として要望されている。本発明は、従来の化合物とは異なる作用に基づく優れた細胞増殖抑制効果を有する単糖誘導体、およびそれを有効成分とする新規の細胞増殖抑制剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、単糖誘導体の細胞増殖抑制効果においてアノマー位の水酸基が寄与することを発見した。具体的には、単糖誘導体のアノマー位の水酸基を露出させることにより、意外にも、従来の単糖誘導体より優れた細胞増殖抑制効果が得られることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)次式:
【化1】

[式中、
1は、置換されていてもよいアシルオキシまたは−NHR(Rは置換されていてもよいアシル)であり、
2は、置換されていてもよいアシルであり、
3は、置換されていてもよいアシルオキシまたはハロゲンであり、
4は、置換されていてもよいアシルオキシおよびハロゲンから選ばれる群から選択される1以上の置換基で置換されたメチルである]
で示される化合物を含有する細胞増殖抑制剤である。
【0008】
上の構造式に示される通り、本発明において示される単糖誘導体は、糖のアノマー位のみに水酸基を有し、糖の他の全ての水酸基が疎水性官能基またはハロゲン基等によって修飾されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の単糖誘導体を含有する細胞増殖抑制剤は、低濃度でより高い細胞増殖抑制効果を有する。また、本発明の単糖誘導体はアノマー位に水酸基を有するので、本発明の細胞増殖抑制剤は増大した水溶性を有する。さらに、本発明の単糖誘導体は、G2/M期特異的に細胞周期を停止させ、従来の化合物とは異なるメカニズムで細胞増殖を抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一態様では、本発明の化合物は、アノマー位のみに水酸基を有するグルコース(Glc)またはN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)誘導体であり、次式:
【化2】

[R2、R3およびR4は、前記と同意義であり、Rは置換されていてもよいアシルを表する]
で示される。
【0011】
本発明の別の態様では、本発明の化合物は、アノマー位のみに水酸基を有するガラクトース(Gal)またはN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体であり、次式:
【化3】

[R2、R3およびR4は、前記と同意義であり、Rは置換されていてもよいアシルを表する]
で示される。
【0012】
本明細書において用いられる「アシル」とは、カルボン酸から水酸基を除いた形の原子団を意味し、例えば、炭素数1〜12の脂肪族アシル、炭素環カルボニルおよび複素環カルボニルを包含する。具体的には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、アクリロイル、プロピオロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、シクロヘキサンカルボニル、ピリジンカルボニル、フランカルボニル、チオフェンカルボニル、ベンゾチアゾールカルボニル、ピラジンカルボニル、ピペリジンカルボニル、チオモルホリノ等が例示される。本発明においては特にアセチルが好ましい。
【0013】
本発明において、上記R1、R2、R3およびR4のアシル部分は置換されていてもよい。本明細書における「置換されていてもよいアシル」は、R1、R2、R3およびR4のアシル部分が、以下の置換基群Aから選択される1以上の置換基で置換されていてもよいことを意味する。また、該アシル部分が、炭素環カルボニルまたは複素環カルボニルである場合は、その環の部分が、低級アルキル、置換基群A、および置換基群Aから選択される1以上の基により置換された低級アルキルからなる群から選択される1以上の基により置換されていてもよい。
置換基群A:
ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロ、アジド、炭素環式基および複素環式基。
【0014】
本明細書における「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。上記R3およびR4におけるハロゲンとしては、フッ素が特に好ましい。
【0015】
本明細書において用いられる「低級アルキル」は、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖または分枝状のアルキルを包含し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n−へプチル、イソヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、n−ノニルおよびn−デシル等が挙げられる。
【0016】
本明細書において用いられる、「低級アルコキシ」、「ヒドロキシ低級アルコキシ」、「低級アルコキシ低級アルコキシ」、「低級アルコキシカルボニル」、「低級アルキルアミノ」、「低級アルコキシイミノ」、「低級アルキルチオ」、「低級アルキルカルバモイル」、「ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル」、「低級アルキルスルファモイル」、「低級アルキルスルフィニル」の低級アルキル部分もまた、上記「低級アルキル」と同様である。
【0017】
本明細書において用いられる「炭素環式基」は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールおよび非芳香族縮合炭素環式基等を包含する。
【0018】
本明細書において用いられる「複素環式基」は、O、SおよびNから任意に選択されるヘテロ原子を環内に1以上有する複素環式基を包含し、具体的にはピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル等の5〜6員のヘテロアリール;
ジオキサニル、チイラニル、オキシラニル、オキセタニル、オキサチオラニル、アゼチジニル、チアニル、チアゾリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチアゾリル、テトラヒドロチアゾリル、テトラヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジニル、ヘキサヒドロアゼピニル、テトラヒドロジアゼピニル、テトラヒドロピリダジニル等の非芳香族複素環式基;
インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンゾピラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、チエノピリジル、チエノピロリル、チエノピラゾリル、チエノピラジニル、フロピロリル、チエノチエニル、イミダゾピリジル、ピラゾロピリジル、チアゾロピリジル、ピラゾロピリミジニル、ピラゾロトリアニジル、ピリダゾロピリジル、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、キナゾリニル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンズオキサジニル、ジヒドロベンズイミダゾリル、テトラヒドロベンゾチエニル、テトラヒドロベンゾフリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキソニル、クロマニル、クロメニル、オクタヒドロクロメニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾオキセジニル、ジヒドロベンゾジオキセピニル、ジヒドロチエノジオキシニル等の2環の縮合複素環式基;および
カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル、イミダゾキノリル、テトラヒドロカルバゾリル等の3環の縮合複素環式基等を包含する。
好ましくは5〜6員のヘテロアリールまたは非芳香族複素環式基である。
【0019】
上記「炭素環カルボニル」の炭素環部分は上記「炭素環式基」と同様である。また、上記「複素環カルボニル」の複素環部分は上記「複素環式基」と同様である。
【0020】
本発明の単糖誘導体として、好ましくは以下のものが挙げられるが、これら化合物には限定されない。当業者は、本明細書において開示した、上で定義した置換基の任意の組み合わせが有用であることを認識する。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

式中、Acはアセチルを示す。
【0021】
さらに好ましくは、本発明の単糖誘導体として以下に示す化合物が挙げられる。
【化8】

【化9】

式中、Acはアセチルを示す。
【0022】
本発明の化合物は、当分野において知られている合成法により製造することができる。出発物質は、市販されているか、または当分野において知られている合成法により製造することができる。具体的な反応条件は個々の反応に応じて当業者が適宜選択することができる。本発明の化合物は、例えば、以下の手順にしたがって製造することができる。
【0023】
反応用ナス型フラスコに出発原料を入れ、THFを加えて溶かし、その中にベンジルアミンを滴下し室温で2時間反応させる。反応液をクロロホルムで希釈し、分液した後、シリカゲルカラム(展開溶媒クロロホルムのみからクロロホルム:メタノール=50:1)で単離精製する(方法1)。
【化10】

【0024】
あるいは、反応用ナス型フラスコに出発原料を入れ、DMFを加えて溶かす。氷冷し、その中に、N24・H2O:AcOH=5:6の混合液を滴下して室温で2時間半反応させる。反応液を酢酸エチルで希釈し、分液した後、シリカゲルカラムで単離精製する(方法2)。
【化11】

【0025】
本発明はさらに、本発明の化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明の単糖誘導体は、以下の試験例に示されるように、細胞増殖抑制効果を有する。したがって、本発明は、本発明の化合物を有効成分として含有する細胞増殖抑制剤を提供する。
【0027】
また、本発明の単糖誘導体は細胞周期を停止させる効果を示す。したがって、本発明の医薬組成物は、細胞周期停止剤として用いることができる。
【0028】
さらに、本発明の単糖誘導体はアポトーシスを誘導する効果も示す。したがって、本発明の医薬組成物は、アポトーシス誘導剤としても用いることができる。
【0029】
本明細書に開示した本発明のこのような効果に基づき、本発明の医薬組成物は、例えば抗癌剤として用いることができる。また、感染後の菌細胞の増殖抑制を企図した抗感染症薬などにも用いることができる。
【0030】
さらに、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患は、不要になった自己の細胞や異物化された自己の細胞に由来する分子を抗原とする自己免疫反応よって炎症を引き起こし発症するといわれている。本発明の医薬組成物は、そのような自己細胞を、アポトーシスを誘導することによって排除し得るので、自己免疫疾患の予防および治療にも有用である。
【0031】
本発明の化合物を治療目的で用いる場合には、本発明の単糖誘導体を含有する医薬組成物を、例えば細胞増殖が望ましくない疾患に罹患しているヒトを含む動物に、有効量投与する。投与経路は経口または非経口のいずれでもよい。そのためには本発明の化合物を、製薬的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤と混合し、カプセルに充填するか、錠剤に打錠する。あるいは、粉剤、顆粒剤等の剤形としてもよい。また、非経口投与のためには、皮下注射、静脈注射、腹腔内注射、筋肉注射等に適した水溶液または懸濁液とする。さらに坐剤、外用剤、点眼剤などとしても利用できる。
【0032】
経口投与は、通常の方法に従って調製した固形又は液状の用量単位、例えば、錠剤、粉末剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、ドロップ剤、舌下錠その他の剤型によって行うことができる。必要に応じて、経口投与のための用量単位処方はマイクロカプセル化してもよい。この処方はまた、被覆をしたり、高分子・ワックス等中に埋めこんだりすることにより作用時間の延長や持続放出をもたらすこともできる。
【0033】
非経口投与は、通常の方法によって調製された液状用量単位形態、例えば溶液や懸濁液の形態の注射剤を用いることによって行うことができる。これらの投与方法のうち、経口投与、注射による静脈内投与が好ましい。投与に際してはこれらの投与方法に適した剤型で投与されるのはもちろんである。
【0034】
以下の実施例および試験例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例および試験例のみに限定されるものではない。従って、上記の一般的説明および以下の実施例の具体的説明を参照しつつ、出発化合物、反応試薬及び反応条件などを適宜選択し、必要に応じてこれらの方法に適切な修飾ないしは改変を加えることによって、当業者は、本発明の化合物をいずれも製造可能である。
【実施例】
【0035】
実施例1
N−アセチル−3,6−ジアセチル−4−フロロ−α−D−グルコサミン(4F−Ac2−GlcNAc(1−OH))
【化12】

10mlのナス型フラスコにN−アセチル−1,3,6−トリアセチル−4−フロロ−α−D−グルコサミン(131mg、0.375mmol)を入れ、THF1.5mlを加えた。その中に、ベンジルアミン(0.081ml、0.74mmol)を滴下した。室温で2時間反応させた。反応液をクロロホルムで希釈し、分液した。シリカゲルカラム(展開溶媒クロロホルムのみからクロロホルム:メタノール=50:1)で単離精製した。50%の収率で白色の結晶58mgが得られた。
1H−NMR δ (CDCI3)(α体):6.06 (1H,d, J=9.3 Hz) (NH), 5.42 (1H,ddd,J=9.2, 10.7, 14.0 Hz ) (H−3), 5.22 (1H, t, J=2.7 Hz) (H−1), 4.52 (1H, dt, J=9.3, 50.9 Hz) (H−4), 4.49〜4.43 (1H, m) (H−6a), 4.26〜4.20(3H, m) (H−5,H−6b,H−2), 2.11 (6H, s) (2COCH3),1.98 (3H, s) (NHCOCH3
【0036】
実施例2
N−アセチル−3,6−ジアセチル−4−フロロ−α−D−ガラクトサミン(4F−Ac2−GalNAc(1−OH))
【化13】

10mlのナス型フラスコにN−アセチル−1,3,6−トリアセチル−4−フロロ−α−D−ガラクトサミン(59mg、0.169mmol)を入れ、THF1mlを加えた。その中に、ベンジルアミン(0.022ml、0.21mmol)を滴下した。0℃にて18時間反応させた。反応液を酢酸エチルで希釈し分液した。シリカゲルカラム(展開溶媒クロロホルムのみからクロロホルム:メタノール=30:1)で単離精製した。84%の収率で白色の結晶43mgが得られた。
1H−NMR δ (MeOD)(α体):5.19 (1H, ddd, J=2.7, 11.4, 27.6 Hz) (H−3), 5.16 (1H,d,J=3.2 Hz ) (H−1), 4.89 (1H, dd, J=2.7, 51.1 Hz) (H−4), 4.43 (1H, dd, J=3.2, 11.4 Hz) (H−2), 4.33 (1H, dt, J=6.5, 29.2 Hz) (H−5), 4.23 (1H, dd, J=6.5, 11.2 Hz) (H−6b), 4.18 (1H, dd, J=6.5, 11.2 Hz) (H−6a), 2.07 (3H, s) (COCH3), 2.05 (3H, s) (COCH3),1.94 (3H, s) (NHCOCH3
【0037】
実施例3
N−アセチル−3,4−ジアセチル−6−フロロ−α−D−ガラクトサミン(6F−Ac2−GalNAc(1−OH))
【化14】

10mlのナス型フラスコにN−アセチル−1,3,4−トリアセチル−6−フロロ−α−D−ガラクトサミン(32mg、0.0916mmol)を入れてTHF0.5mlを加えた。室温にて、ベンジルアミン(0.02ml、0.183mmol)を滴下した。45℃にて4時間反応させた。反応終了後、反応液を酢酸エチルで希釈し分液した。シリカゲルカラム(展開溶媒ヘキサンのみ→へキサン:酢酸エチル=1:2から1:4)で単離精製した。36%の収率で白色の結晶10mgが得られた。
1H−NMR δ (CDCI3)(α体):5.70 (1H, d, J=10.9 Hz) (NH−), 5.43 (1H, d, J=3.2 Hz) (H−4), 5.37 (1H,t,J=3.1 Hz) (H−1), 5.27 (1H, dd, J=3.2, 10.9 Hz) (H−3), 4.60 (1H, dt, J=3.1, 10.9 Hz) (H−2), 4.49〜4.46 (1H, m) (H−5), 4.44 (2H, dd, J=6.3,9.0,44.5 Hz) (2H−6), 3.18 (1H, br, s) (1−OH), 2.17 (3H, s) (COCH3), 2.02 (3H, s) (COCH3), 1.99 (3H, s) (NHCOCH3
【0038】
実施例4
N−アセチル−3,4−ジアセチル−6−フロロ−α−D−グルコサミン(6F−Ac2−GlcNAc(1−OH))
【化15】

出発物質としてN−アセチル−1,3,4−トリアセチル−6−フロロ−α−D−グルコサミンを用いることを除いては実施例3と同様の手順にしたがい、表題化合物を製造した。
1H−NMR δ (CDCI3)(α体):5.81 (1H, d, J=10.0 Hz) (NH−), 5.32 (1H, t, J=10.0 Hz) (H−3),5.30 (1H, d, J=3.2 Hz) (H−1),5.07 (1H, t, J=10.0 Hz) (H−4),4.45 (2H, dd, J=3.7,47.2 Hz) (H−6), 4.30 (1H, dt, J=3.2, 10.0 Hz) (H−2), 4.23 (1H, ddt, J=3.7, 10.0, 22.0 Hz) (H−5), 3.49 (1H, br, s) (1−OH), 2.06 (3H, s) (COCH3), 2.03 (3H, s) (COCH3), 1.97 (3H, s) (NHCOCH3
【0039】
製造例1
N−レブリノイル−1,3,4,6−O−テトラアセチル−D−グルコサミン
D−グルコサミン塩酸塩7.5g(34.9mmol)に、H2O 25mlと、レブリン酸3.58ml(34.9mmol)、1N NaOH水溶液35mlを加え、撹拌した。DTM−MM 11.5g(41.9mmol)を加え、室温で1日間反応させた。反応をTLC(CHCl3:MeOH:H2O=5:4:1)で確認した後、吸引濾過により沈殿物を除去し、エバポレーターで反応溶液を除去した。ピリジンを100ml加え室温で撹拌し、完全に溶かした後、0℃に冷やして、Ac2O 50mlを加え、室温で18時間反応させた。反応をTLC(CHCl3:MeOH=10:1)で確認した後、エバポレーターで反応溶液を濃縮した。反応溶液をCHCl3で希釈し、1N HCl、飽和NaHCO3水溶液、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。エバポレーターで溶媒を除去し、CHCl3で溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:EtOAc=1:3)で精製して、白色の結晶9.18gを得た(収率59%)。
1H-NMR (CDCl3)σ: 6.14(1H, d, J=3.6 Hz)(H-1), 5.94(1H, d, J=9.1 Hz)(NH), 5.27(1H, t, J=10.3 Hz)(H-3), 5.19(1H, t, J=10.3 Hz)(H-4), 4.43(1H, ddd, J2,1=3.6 Hz, J2,NH=9.1 Hz, J2,3=10.3 Hz)(H-2), 4.26(1H, dd, J6a,5=4.1 Hz, J6a,6b=12.5 Hz)(H-6a), 4.06(1H, dd, J6b,5=2.2 Hz, J6b,6a=12.5 Hz)(H-6b), 4.02-3.99(1H, m)(H-5), 2.80(1H, dt, 3J =6.1 Hz, 2J=18.9 Hz)(CH3CO-CH2-a), 2.71(1H, dt, 3J =6.1 Hz, 2J=18.9 Hz)(CH3CO-CH2-b), 2.34(2H, t, J=6.1 Hz)(NHCO-CH2), 2.22(3H, s)(COCH3), 2.15(3H, s)(COCH3), 2.08(3H, s)(COCH3), 2.08(3H, s)(COCH3), 2.04(3H,s)(COCH3
(α体)
【0040】
実施例5
N−レブリノイル−3,4,6−O−トリアセチル−D−グルコサミン
【化16】

製造例1で製造したN−レブリノイル−1,3,4,6−O−テトラアセチル−D−グルコサミン9.18g(20.6mmol)にTHF180mlを加え、室温で撹拌した。ベンジルアミン4.49ml(41.2mmol)を加え、室温で44時間反応させた。反応をTLC(CHCl3:MeOH=10:1)で確認した後、エバポレーターで溶媒を除去した。残留物をCHCl3に溶解し、EtOAcで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色の結晶2.81gを得た(収率34%)。
1H-NMR (CDCl3)σ: 6.01(1H, d, J=9.9 Hz)(NH), 5.32(1H, t, J=9.9 Hz)(H-3), 5.25(1H, t, J=3.1 Hz)(H-1), 5.12(1H, t, J=9.9 Hz)(H-4), 4.27(1H, dt, J2,1=3.1 Hz, J =9.9 Hz)(H-2), 4.24-4.11(1H, m)(H-5), 4.21(1H, dd, J6a,5=5.2 Hz, J6a,6b=13.4 Hz)(H-6a), 4.13(1H, dd, J6b,5=3.4 Hz, J6b,6a=13.4 Hz)(H-6b), 3.65(1H, d, J=3.1 Hz)(OH-1), 2.77(2H, m)(CH3CO-CH2), 2.39(2H, t, J=6.2 Hz)(NHCO-CH2), 2.17(3H, s)(COCH3), 2.10(3H, s)(COCH3), 2.05(3H, s)(COCH3), 2.04(3H,s)(COCH3
(α体)
【0041】
実施例6
N−アジドアセチル−3,4,6−O−トリアセチル−D−グルコサミン(6)
【化17】

メチルアジドアセテート(2)
ブロモ酢酸メチル(1)7.83ml(85mmol)に、DMF15mlを加え、撹拌した。アジ化ナトリウム480mg(3.9mmol)を加え、7時間反応させた。反応溶液をEt2Oで希釈し、水で3回分液した。エバポレーターで濃縮して無色の液体9.17gを得た(収率93%)。
【0042】
ナトリウムアジドアセテート(3)
メチルアジドアセテート(2)9g(78mmol)に、1M NaHCO360mlと、MeOH50mlを加え、室温で1時間反応させた。陽イオン交換樹脂DOWEX50で中和し、吸引濾過によりDOWEX50を除去した。エバポレーターで溶媒を除去し、白色の結晶6.86gを得た(収率66%)。
【0043】
N−アジドアセチル−1,3,4,6−O−テトラアセチル−D−グルコサミン(5)
D−グルコサミン塩酸塩(4)842mg(3.9mmol)に、DMF4mlを加え、撹拌して完全に溶かした。0℃に冷却し、ナトリウムアジドアセテート(3)480mg(3.9mmol)と、ジフェニルホスホリルアジド0.91ml(4.3mmol)と、トリエチルアミン1.2ml(6.8mmol)を加え、19時間反応させた。反応をTLC(CHCl3:MeOH=10:1)で確認した後、エバポレーターで反応溶液を除去した。ピリジン10mlを加え、室温で撹拌し、完全に溶かした後、0℃に冷却し、Ac2O4mlを加え、室温で12時間反応させた。反応をTLC(ヘキサン:EtOAc=2:3)で確認した後、エバポレーターで反応溶液を濃縮した。反応溶液をCHCl3で希釈し、水、1NHCl、飽和NaHCO3水溶液、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。エバポレーターで溶媒を除去し、CHCl3に溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン→ヘキサン:EtOAc=1:1)により精製して白色の結晶784mg(収率47%)を得た。
1H-NMR (CDCl3)σ: 6.43(1H, d, J=8.8 Hz)(NH), 6.21(1H, d, J=3.6 Hz)(H-1), 5.30(1H, t, J=10.3 Hz)(H-3), 5.21(1H, t, J=10.3 Hz)(H-4), 4.45(1H, ddd, J2,1=3.6 Hz, J2,NH=8.8 Hz, J2,3=10.3 Hz)(H-2), 4.27(1H, dd, J6a,5=3.8 Hz, J6a,6b=12.5 Hz)(H-6a), 4.08(1H, dd, J6b,5=2.3 Hz, J6b,6a=12.5 Hz)(H-6b), 4.03(1H, ddd, J5,6b=2.3 Hz, J5,6a=3.8 Hz, J5,4=10.3 Hz)(H-5), 3.90(2H, s)(COCH2), 2.20(3H, s)(COCH3), 2.09(3H, s)(COCH3), 2.06(3H, s)(COCH3), 2.05(3H,s)(COCH3
(α体)
【0044】
N−アジドアセチル−3,4,6−O−トリアセチル−D−グルコサミン(6)
N−アジドアセチル−1,3,4,6−O−テトラアセチル−D−グルコサミン(5)196mg(0.46mmol)に、DMF2mlを加え、撹拌して完全に溶解した。0℃に冷却し、N24・H2O:AcOH=5:6の混合液0.057ml(0.50mmol)を加え、室温で3時間反応させた。反応をTLC(ヘキサン:EtOAc=2:3)で確認した後、反応溶液をCHCl3で希釈し、水、1N HCl、飽和NaHCO3水溶液、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。エバポレーターで溶媒を除去し、CHCl3に溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=2:3→1:2)により精製して白色の結晶157mg(収率89%)を得た。
1H-NMR (CDCl3)σ: 6.84(1H, d, J=9.9 Hz)(NH), 6.12(1H, s)(OH-1), 5.34(1H, t, J=9.9 Hz)(H-3), 5.14(1H, d, J=3.1 Hz)(H-1), 5.13(1H, t, J=9.9 Hz)(H-4), 4.30(1H, dt, J2,1=3.1 Hz, J =9.9 Hz)(H-2), 4.17-4.14(2H, m)(H-5, H-6a), 4.10(1H, d, J6b,6a=10.2 Hz)(H-6b), 3.92(2H, s)(COCH2), 2.09(3H, s)(COCH3), 2.04(3H, s)(COCH3), 2.02(3H, s)(COCH3),
(α体)
【0045】
試験例1
(方法)
ヒト前立腺癌細胞株PC−3(ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)より入手:資源番号JCRB9110)またはヒト前立腺上皮細胞PrEC(CAMBREX)を96ウェルプレートに播種(5000細胞/ウェル/100μL)し、一晩培養し接着させた後、試験化合物を48時間接触させ、細胞増殖50%阻害濃度(IC50)をGraphPad Prismにより算出した。生細胞の測定にはCell Counting Kit-8(同仁化学)を用いた。
(結果)
結果を以下の表に示す。
【表1】


Ac4-GlcNAc: N-アセチル-1,3,4,6-テトラアセチル-α-D-グルコサミン
Ac3-GlcNAc(1-OH): N-アセチル-3,4,6-トリアセチル-α-D-グルコサミン
4F-Ac3-GlcNAc(β): N-アセチル-1,3,6-トリアセチル-4-フルオロ−β-D-グルコサミン
4F-Ac2-GlcNAc(1-OH): N-アセチル-3,6-ジアセチル-4-フルオロ−α-D-グルコサミン
6F-Ac2-GlcNAc(6-OH): N-アセチル-3,4-ジアセチル-6-フルオロ−α-D-グルコサミン

PC−3において、Ac3−GlcNAc(1−OH)のIC50は113μMであり、対照(アノマー位アセチル化誘導体:Ac4−GlcNAc)のIC50の約1/5であった。さらに4位水酸基をフッ素で置換した本発明の単糖誘導体4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)のIC50は74μMを示し、対照(アノマー位アセチル化誘導体:4F−Ac3−GlcNAc)のIC50の約1/8であった。IC50は細胞の継代数にも依存するが、4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)では50〜100μMの範囲に収束し、アノマー位アセチル化誘導体の約1/10であった。一方で、6位に水酸基を有するアノマー位アセチル化誘導体(4F−Ac2−GlcNAc(6−OH))は1mMまでの濃度では全く細胞増殖抑制効果を示さなかったことから、アノマー位の水酸基の効果は大きい。
抗がん剤として多用されている5−フルオロウラシル(5−FU)およびシスプラチンを同様に測定した場合、前者では50μM以上の高濃度でも60%程度までしか細胞増殖を抑制しなかったが、後者のIC50は82μMであった。5−FUおよびシスプラチンと比較しても4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)は抗がん剤として有効である。
また、正常細胞PrECにおけるIC50は、4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)で672μM、シスプラチンで210μMであり、4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)はシスプラチンよりも癌細胞の増殖を特異的に抑制することから、副作用の小さい抗がん剤としての効果が期待できる。
【0046】
試験例2
(方法)
ヒト前立腺癌細胞株PC−3(ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)より入手:資源番号JCRB9110)を2130細胞/ウェル/100μLまたはヒト前立腺上皮細胞(PrEC, CAMBREX)を1243細胞/ウェル/100μLにて96ウェルプレートに播種し、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、4F−N−アセチル−D−グルコサミン、4F−N−アセチル−D−ガラクトサミンの完全アセチル化誘導体および本発明のアノマー位水酸基を有する単糖誘導体を、終濃度2〜500μMで添加し培養した。糖誘導体添加後24時間および48時間の細胞増殖をCell Counting Kit-8(同仁化学)により測定した。グラフは0μM、24時間を100%としたときの値である。
(結果)
結果を図1〜4に示す。
Ac3−GlcNAc(1−OH)に関しては100μM以上で、Ac3−GalNAc(1−OH)では250μM以上で、特に48時間接触した場合に正常細胞(PrEC)に比べて癌細胞(PC−3)の顕著な増殖阻害がみられた。4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)では50μM以上で、4F−Ac2−GalNAc(1−OH)では250μM以上で同様の現象を示した。
【0047】
試験例3:細胞周期解析
10−cmセルカルチャーディッシュにヒト前立腺癌細胞株PC−3(ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)より入手)を培養し接着させた後、D−グルコース、N−アセチル−D−グルコサミン、4F−N−アセチル−D−グルコサミンの完全アセチル体および1位のみOH基のアセチル体を、対数増殖期にある細胞に対し終濃度50μM(0.5%DMSO含有)で添加し48時間培養した。0.05%トリプシン−0.53mM EDTA処理により細胞を回収後、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、70%エタノール/PBSに懸濁し−20℃で細胞の固定を行った。エタノール固定により膜透過性を確保した細胞に対しRNase処理を行った後、ヨウ化プロピジウム(PI)によりDNAを染色しFACSCanto(BD Biosciences)により細胞周期の解析を行った。
結果を図5に示す。
図5に示されるように、PC−3の細胞周期分布は、Ac3−GlcNAc(1−OH)(化合物E)および4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)(化合物G)によって変化を示した。即ち、G1期の割合の減少に伴ってG2期の割合が増加しており、G2/M期での細胞周期の停止が認められた。一方、Ac4−Glc(1−OH)(化合物C)では細胞周期の停止効果は認められなかった。アノマー位が置換された化合物(化合物B、D、F)との比較から、アノマー位に水酸基を有する本発明の化合物は、細胞周期をG2/M期で停止させることにより、細胞増殖の抑制に寄与していると考えられる。
【0048】
試験例4:Annexin Vによるアポトーシスの判定
ヒト前立腺癌細胞株PC−3を6−ウェルマルチウェルプレートに1×105細胞/ウェルで播種し一晩培養後、4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)を終濃度50μM、100μM、200μMで添加し48時間培養した。0.05%トリプシン−0.53mM EDTA処理により細胞を回収後、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、ApoScreen(登録商標)Annexin V アポトーシスキット(Southern Biotechnology Associates, Inc., Birmingham, AL)を用い、FITC標識Annexin VおよびPIで二重染色を行い、FACSCanto(登録商標)フローサイトメーター(BD Biosciences)により細胞膜構造の変化を解析した。結果を図6に示す。
図6に示されるように、PC−3における4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)のIC50は50〜80μM程度であるが、100〜200μMの間では、FITCで染色された細胞数の著しい増加が観察された。これは、細胞膜リン脂質の構造に乱れが生じ、ホスファチジルセリン(PS)が細胞膜外側へ露出してAnnexinVと結合していることを示している。また、初期のアポトーシス細胞(FITC+、PI−)を経て、さらに細胞膜の破壊が進んだアポトーシス後期の細胞(FITC+、PI+)が検出された。特に200μMで48時間の処理により、4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)はPC−3細胞の60%以上にアポトーシスを誘導した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の細胞増殖抑制剤は、低濃度でより高い細胞増殖抑制効果が得られるので、細胞増殖抑制剤、特に抗癌剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ヒト前立腺癌細胞株PC−3およびヒト前立腺上皮細胞PrECに対する試験化合物の細胞増殖抑制効果を示す。上段:Ac4−GlcNAc(N-アセチル-1,3,4,6-テトラアセチル-α-D-グルコサミン。下段:Ac3−GlcNAc(1−OH)(N-アセチル-3,4,6-トリアセチル-α-D-グルコサミン)。
【図2】ヒト前立腺癌細胞株PC−3およびヒト前立腺上皮細胞PrECに対する試験化合物の細胞増殖抑制効果を示す。上段:Ac4−GalNAc(N-アセチル-1,3,4,6-テトラアセチル-α-D-ガラクトサミン)。下段:Ac3−GalNAc(1−OH)(N-アセチル-3,4,6-トリアセチル-α-D-ガラクトサミン)。
【図3】ヒト前立腺癌細胞株PC−3およびヒト前立腺上皮細胞PrECに対する試験化合物の細胞増殖抑制効果を示す。上段:4F−Ac3−GlcNAc(N-アセチル-1,3,6-トリアセチル-4-フルオロ−D-グルコサミン)。下段:4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)(N-アセチル-3,6-ジアセチル-4-フルオロ−D-グルコサミン)。
【図4】ヒト前立腺癌細胞株PC−3およびヒト前立腺上皮細胞PrECに対する試験化合物の細胞増殖抑制効果を示す。上段:4F−Ac3−GalNAc(N-アセチル-1,3,6-トリアセチル-4-フルオロ−D-ガラクトサミン)。下段:4F−Ac2−GalNAc(1−OH)(N-アセチル-3,6-ジアセチル-4-フルオロ−D-ガラクトサミン)。
【図5】ヒト前立腺癌細胞株PC−3の細胞周期解析の結果を示す。A:対照(0.5%DMSO);B:50μM Ac5−Glc(1,2,3,4,6−ペンタアセチル−D−グルコース);C:50μM Ac4−Glc(1−OH)(2,3,4,6−テトラアセチル−D−グルコース);D:50μM Ac4−GlcNAc(N−アセチル−1,3,4,6−テトラアセチル−D−グルコサミン);E:50μM Ac3−GlcNAc(1−OH)(N−アセチル−3,4,6−トリアセチル−D−グルコサミン);F:50μM 4F−Ac3−GlcNAc(N−アセチル−1,3,6−トリアセチル−4−フルオロ−D−グルコサミン);G:50μM 4F−Ac2−GlcNAc(1−OH)(N−アセチル−3,6−ジアセチル−4−フルオロ−D−グルコサミン)全細胞数に対する各細胞周期の細胞数の割合を百分率で示す。* one-way ANOVA, Dunnetの多重比較法; P<0.01
【図6】ヒト前立腺癌細胞株PC−3のアポトーシス解析の結果を示す。全細胞数に対するアポトーシスが誘導された細胞数の割合を百分率で示す。FITC+,PI−:初期のアポトーシス細胞、FITC+,PI+:後期のアポトーシス細胞もしくはネクローシス細胞を示す。*one-way ANOVA, Dunnetの多重比較法; P<0.01

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】

[式中、
1は、置換されていてもよいアシルオキシまたは−NHR(Rは置換されていてもよいアシル)であり、
2は、置換されていてもよいアシルであり、
3は、置換されていてもよいアシルオキシまたはハロゲンであり、
4は、置換されていてもよいアシルオキシおよびハロゲンから選ばれる群から選択される1以上の置換基で置換されたメチルである]
で示される化合物を含有する細胞増殖抑制剤。
【請求項2】
前記化合物が、次式:
【化2】

[R1、R2、R3およびR4は、請求項1と同意義である]
で示される、請求項1記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項3】
前記化合物が、次式:
【化3】

[R1、R2、R3およびR4は、請求項1と同意義である]
で示される、請求項1記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項4】
1が置換されていてもよいアシルオキシである、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項5】
1が−NHR(Rは置換されていてもよいアシル)である、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項6】
2が置換されていてもよいアセチルである、請求項1〜5のいずれかに記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項7】
3がハロゲンである、請求項1〜6のいずれかに記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項8】
3がフッ素である、請求項7に記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項9】
3が置換されていてもよいアシルオキシである、請求項1〜6のいずれかに記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項10】
3が置換されていてもよいアセトキシである、請求項9に記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項11】
4がモノフルオロメチルである、請求項1〜10のいずれかに記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項12】
4がアセトキシメチルである、請求項1〜10のいずれかに記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項13】
アシル基の置換基が、以下からなる群:
ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ低級アルコキシ、低級アルコキシ低級アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アミノ、アシルアミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、ヒドロキシイミノ、低級アルコキシイミノ、低級アルキルチオ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ヒドロキシ低級アルキルカルバモイル、スルファモイル、低級アルキルスルファモイル、低級アルキルスルフィニル、シアノ、ニトロ、アジド、炭素環式基および複素環式基
から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の細胞増殖抑制剤。
【請求項14】
以下からなる群:
【化4】

【化5】

[式中、Acはアセチルを示す]
から選択される化合物を含有する細胞増殖抑制剤。
【請求項15】
以下からなる群:
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

[式中、Acはアセチルを示す]
から選択される化合物。
【請求項16】
請求項15に記載の化合物を含有する医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−29770(P2009−29770A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309073(P2007−309073)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】