説明

単離された成人糸球体由来多能性間葉系幹細胞(hGL−MSC)、それらを製造する方法および腎臓の再生医療におけるそれらの使用

本発明は、マーカープロファイルCD133、CD146、CD34およびCD105により特徴付けられる、単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)に関する。脱嚢糸球体から本発明のhGL−MSCを製造する方法、ならびに腎臓の再生処理における、特に腎臓糸球体障害または疾患の処置のための、本発明のhGL−MSCの使用も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、成人腎臓の脱嚢(decapsulated)糸球体由来であり、種々の細胞型、特に糸球体細胞型に分化する能力を示し、同時に優れた自己再生およびコロニー形成能力により特徴付けられる、多能性ヒト間葉系幹細胞に関する。さらに、本発明は、本発明の多能性ヒト間葉系幹細胞を製造する方法および再生医療における、特に腎障害および疾患の治療処置におけるこのような幹細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
幹細胞移植は、損傷または負傷組織および臓器の修復および再生の可能性を有することが知られている。結果として、ヒトおよび動物両方の起源由来の新規な多能性幹細胞を同定および単離するために、ならびに臨床適用における、とりわけ再生医療における幹細胞の有効性を研究するために、集中的な研究が最近実施されている。
【0003】
例えば、Oliverらは、BrdU保持に基づいて、成体齧歯動物腎乳頭におけるゆっくりな周期の幹細胞を同定した[3]。同じアプローチを使用して、Maeshimaらは、成体ラットの尿細管においてBrdU標識細胞を同定し、後腎臓に移植されたときに、このような幹細胞が近位尿細管、集合管細胞または繊維芽細胞を産生する可能性を示した[4]。Kitamuraらは、ラット成体腎臓におけるネフロンのS3セグメント由来の腎臓前駆細胞の独特な集団を確立し、特性化した[37]。これらの細胞は、自己再生能力を有し、腎臓胚マーカー、例えば、Pax2、Wtn4およびWtn1を発現することが示された。Hoechst色素を押し出す能力に基づいて、多能性の可能性を有するいわゆる「サイドポピュレーション」がマウス胚および成体腎臓において同定された[38]。最近、Guptaらは、成体ラット腎臓において、胚性幹細胞マーカー、例えば、Oct−4およびPax−2を発現する多能性腎臓前駆細胞の腎臓常在集団の存在を証明した[5]。しかしながら、それらの動物起源を考慮すると、これらの多能性腎臓幹細胞は、ヒト組織または臓器の再生に関する臨床適用において使用することができない。
【0004】
ヒト胚性腎臓由来の多能性CD133CD24幹細胞集団の同定は、[39]に記載されている。しかしながら、これらの胚性幹細胞は、特に胚性幹細胞系およびヒト胚からのそれらの製造と関連する倫理的な問題を考慮すると、再生医療における使用のためにヒト幹細胞を提供する問題に対する最適な解決手段を示さない。
【0005】
成人腎臓において、本発明者らは、CD133前駆細胞/幹細胞の常在集団を以前に記載した[1]。CD133細胞は、近位尿細管および糸球体付近の間質または尿細管内において珍しい細胞として見出され、それらは、インビトロおよびインビボ両方において、腎臓上皮および内皮分化を起こすことが示された。最近、Sagrinatiらは、成体腎臓のボーマン嚢由来の多能性CD133CD24細胞集団を単離して特性化した[2]。しかしながら、ヒト腎臓において同定されたCD133前駆細胞/幹細胞は、乏しい自己再生能力により特徴付けられる。さらに、このような幹細胞は、腎糸球体において見出される種々の細胞型、すなわち足細胞、内皮細胞およびメサンギウム細胞に分化する能力を有することが示されていない。
【0006】
Schwabら, Human Reproduction (Oxford), vol. 22, no. 11, November 2007, pages 2903-2911は、MSCの古典的分化能力、すなわち脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞および筋系譜細胞への分化を示す子宮内膜のCD146+ PDGF−Rβ+ CD34+ 間葉系幹細胞を記載している。この文献は、さらなる分化能力について記載していない。しかしながら、これらの細胞の子宮内膜起源は、糸球体細胞型、例えば、足細胞、メサンギウム細胞および内皮細胞を生じる能力とは反対の傾向を強く示す。
【0007】
WO2008/045498は、脂肪細胞および骨芽細胞に分化することができるCD34+ CD133− CD105− 腎臓由来細胞集団を記載している。しかしながら、糸球体細胞型への分化は記載されていない。
【0008】
間葉系幹細胞(MSC)は、間葉系起源の異なる細胞系に分化する能力により特徴付けられる[7]。間葉系幹細胞の主な貯蔵庫は骨髄(BM)である[8]。しかしながら、マウスモデルにおいて得られた最近のデータによって、MSCコンパートメントがより広範に分布していることが立証されている。事実、MSCは、血管壁と関連してすべてのマウス成体組織(脾臓、筋肉、腎臓、肺、肝臓、脳、胸腺)において実質的に検出されている[6]。ヒトにおいて、MSCは、循環血液ならびにいくつかの組織、例えば、滑膜、脂肪組織、骨梁、歯髄、真皮および肺から単離されている[9−16]。しかしながら、ヒト糸球体におけるMSCの存在は、今までに研究されていない。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
前記に照らして、腎臓の再生医療において、特にヒト腎臓障害および/または疾患、さらに特に腎臓糸球体障害および/または疾患の治療処置のための医薬として、首尾よく適用できるように、腎糸球体において見られる種々の細胞型に分化することができ、自己再生することができる成人腎臓由来の間葉系幹細胞の必要性が存在する。
【0010】
これらのおよび他の目的は、成人腎臓の脱嚢糸球体において、本発明者らにより同定され単離された、単離された多能性ヒト間葉系幹細胞により達成される。
【0011】
したがって、本発明の第1の局面は、CD133(陰性)、CD146(陽性)、CD34(陰性)およびCD105(陽性)であることで特徴付けられる、単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)である。
【0012】
単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)は、有利には、糸球体細胞型、すなわち足細胞、メサンギウム細胞および内皮細胞に分化することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様において、hGL−MSCは、CD24(陽性)およびPax−2(陽性)であることでさらに特徴付けられる。
【0014】
本発明のさらに好ましい態様において、hGL−MSCは、α−SMA(陰性)およびOct−4(陰性)であることでさらに特徴付けられる。
【0015】
本発明の他の局面は、本発明のhGL−MSCを製造する方法であって、以下の工程:
−特定の成長因子の非存在下で生理学的pHで緩衝された血清含有動物細胞培養培地を含む拡大培養培地中で成人腎臓由来の脱嚢糸球体を培養し、それにより、培養された脱嚢糸球体から増殖した細胞の混合集団を得て(該細胞の混合集団は、紡錘状CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞およびCD133(陽性)、CD146(陽性)細胞の両方を含む);そして
−混合集団から紡錘状CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞を単離する(該紡錘状細胞CD133(陰性)、CD146(陽性)は、本発明のhGL−MSCを表す)
を含む方法である。
【0016】
好ましい態様において、拡大培養培地は、6.8から7.4の範囲内、より好ましくは7.2から7.4の範囲内のpHで緩衝されている。生理学的範囲内のpHを維持することができるあらゆる緩衝剤、例えば、Hepes、PBSなどが使用され得る。
【0017】
他の好ましい態様において、本発明のhGL−MSCを表す紡錘状CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞は、少なくとも第3継代の細胞培養物または後代継代、例えば、第4継代、第5継代、第6継代などの細胞培養物から単離される。この態様は、紡錘状CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞が、上記培養条件下で第3継代の細胞培養後に生存することが見出された混合集団中の唯一の細胞型であるという事実に基づく。
【0018】
本発明の態様において、紡錘状CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞は、細胞選別法、例えば、FACSにより混合集団から単離される。あるいは、それらは、それらの紡錘状形態に基づいて単離することができる。
【0019】
本発明のhGL−MSCは、優れた自己再生およびコロニー形成能力により、ならびに限定はしないが内皮細胞、メサンギウム細胞および足細胞を含む多くの糸球体細胞型に分化する能力により有利に特徴付けられる。これらの特性は、本発明のhGL−MSCを特に腎臓再生における使用のために適するものにする。
【0020】
したがって、本発明のさらなる局面は、腎障害または疾患、特に腎糸球体障害または疾患の治療処置のための医薬としての本発明の単離されたヒト糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)の使用である。
【0021】
本発明のさらなる局面は、本発明の単離されたヒト糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)ならびに薬学的に許容される担体、希釈剤および/またはビヒクルを含む医薬組成物である。本発明のヒト糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)を含む医薬組成物は、腎障害または疾患、特に腎糸球体障害または疾患の処置のために特に適当である。
【0022】
図面の説明
本発明のさらなる利点および特性は、以下の詳細な説明と図面から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、糸球体から増殖した細胞の形態および増殖速度を示す。コラゲナーゼI処理により24時間(A)、7日(B)、2週(C)および3週(D)培養後にボーマン嚢が除去された、成人糸球体の典型的な顕微鏡写真(拡大×200)。E)5つの異なる調製物(R136、R140、R141、R147およびR148と称される)の増殖曲線を示す。
【0024】
【図2】図2は、本発明のhGL−MSCの特性化に関する。A)典型的なFACS分析は、hGL−MSCが、MSCの表面マーカー特性(CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD166)に対して陽性、CD133および特異的造血マーカー(CD45およびCD34)に対して陰性ならびに内皮マーカー(CD31)に対して陰性であることを示す。点線は同形コントロールである。B)ビメンチン、ネスチン、NanogおよびMusashiに対する抗体で染色した、hGL−MSCの典型的な免疫蛍光顕微鏡写真(拡大×600)。発達したhGL−MSC系の全てが、同じ表現型を示した。
【0025】
【図3】図3は、hGL−MSCの免疫調節性およびそれらのコロニー形成率を示す。A)hGL−MSCが、クラスII抗原および接着分子CD154ならびに共刺激分子CD80、CD86およびCD40(暗線)に対して陰性であることを示す、典型的なFACS分析。点線は同形コントロールである。B)本発明の骨髄間葉系幹細胞(BM−MSC)またはヒト糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)の添加は、PHA−誘導PBMC増殖を阻害する。PBMC(5×10/ml)を、5×10/mlのBM−MSCまたはhGL−MSC含有または非含有で2.5μg/mのPHAの存在下で48時間培養した。データは、トリプリケートにおいて4つの別々の実験の平均±SDとして示す。*p<0.05(スチューデントt検定)。C)コロニー形成率は、それぞれの培養継代において得られたクローンのパーセント(%)として示す。
【0026】
【図4】図4は、A)糸球体(矢印)におけるCD146およびCD24の共発現、B)ボーマン嚢の壁細胞(矢印)内および近位尿細管の上皮細胞(*)におけるCD133の発現、ならびに(C)糸球体CD146(陽性)およびCD24(陽性)細胞(矢印)におけるCD133発現の非存在を示す、典型的な共焦点顕微鏡写真である。実物の630×拡大。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明者らにより実施された研究は、間葉系幹細胞が成人脱嚢腎臓糸球体に存在するか否か、このような幹細胞が常在集団を示すか否かを研究することを目的とした。さらに、本発明者らは、糸球体由来MSCの、特に糸球体細胞型、例えば、足細胞、内皮細胞およびメサンギウム細胞に関しての分化能を評価した。
【0028】
明細書の実験の部に詳細に記載されているとおり、本発明の間葉系幹細胞(hGL−MSC)は、外科的に取り出されたヒト腎臓由来の皮質の正常部分から得られた。皮質を解離し、段階的な一連のメッシュに通過させた後、糸球体懸濁液を回収し、洗浄し、機械的および酵素的処理によりボーマン嚢を除去した。脱嚢糸球体(図1A)を、非分化条件下で、すなわち幹細胞分化を指示することができる特定の成長因子の非存在下で、血清含有緩衝拡大培地中で培養した。
【0029】
7日以内に、付着細胞の糸球体増殖が観察された(図1B)。コンフルエンスは、細胞単層がトリプシン−EDTA処理により分離される12−14日目までに達成された。糸球体残存物を低速遠心分離により除去し、細胞を同じ拡大培地中で拡大させた。最初の培養期間中、細胞培養中で形態的不均一性であったが(図1C)、約3週(すなわち約第4継代)後、培養物は紡錘状細胞で単形性となった(図1D)。図1Eは、5つの異なる細胞調製物の増殖曲線を示す。増殖速度は、5つの初期継代中ゆっくりであったが、細胞がもはや増殖できない第20継代(培養約100日)まで連続継代培養で増加した。継代間の間隔は、第4継代まで約3から7日間で変化し、それ以降、約7日間に固定した。
【0030】
脱嚢糸球体から増殖した紡錘状細胞は、本発明のヒト糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)である。したがって、これらの幹細胞は、それらの形態学的特性に基づいて、細胞培養物から、好ましくは少なくとも第3継代の細胞培養物または後代継代、例えば、第4継代、第5継代、第6継代の細胞培養物から単離することができる。
【0031】
さらに、本発明者らは、脱嚢糸球体から増殖した細胞が、初期細胞継代(1−3)で、フローサイトメトリーにより検出されるとき、31±11%のCD133(陽性)および74±26%のCD133(陰性)細胞(n=15調製物)を含む混合集団であったことを観察した。両方の細胞集団がCD146を発現する。
【0032】
したがって、別の形態学的方法として、本発明のヒト糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)は、細胞選別法、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)により単離することができる。好ましくは、CD133(陽性)、CD146(陽性)細胞およびCD133(陰性)、CD146(陽性)細胞は、第2、第3または第4継代からFACSにより選別されるが、それらは、また、あらゆる細胞継代から、次継代(subpassaging)前であっても単離することができる。
【0033】
FACS選別集団を特性化し、クローニングした。
【0034】
CD133CD146細胞は、マーカーCD31およびvWFを共発現することが見出され、それにより内皮表現型を示した。該CD133集団は、ネスチン(データは示していない)もMSCマーカー、例えば、ビメンチン、CD73、CD29またはCD166(データは示していない)も共発現しなかった。CD133細胞集団が消化された脱嚢糸球体の細胞懸濁液から免疫−磁気的に選別されたとき、同じ表現型が観察された(データは示していない)。拡大培地の存在下で第4継代後に、腎臓糸球体から増殖した細胞を特性化したとき、CD133細胞は、もはや検出することができなかった。
【0035】
選別されたCD133CD146細胞は、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105およびCD166を含むMSCの表面マーカー特性に対して陽性であり[25]、CD133および特異的造血マーカー(CD45およびCD34)ならびに内皮マーカー(CD31)に対して陰性であった(図2A)。免疫蛍光により、これらの細胞は、MSC−特異的マーカー・ビメンチンならびに神経および肝臓常在幹細胞マーカー・ネスチン[26、27、28]を発現し、これにより、細胞質線維状パターンを示した(図2B)。該細胞集団は、上皮性マーカー・サイトケラチンおよびE−カドヘリンを発現しなかった。分化した糸球体細胞により通常発現される他のマーカー、例えば、αSMA(これはメサンギウム細胞により対照的に発現される)もネフリン(これは足細胞により対照的に発現される)も発現しなかった(データは示していない)。これらの特性は、汚染糸球体細胞の非存在を示す。
【0036】
マーカーNanog、Oct−4およびMusashiの発現も評価した。これらの分子は、胚および成体幹細胞の自己再生および多分化能に関与することが知られている転写因子である[29−33]。本発明の幹細胞集団は、核・細胞質においてNanogおよびMusashiの両方の発現を示したが(図2B)、Oct−4を発現しなかった(示されていない)。
【0037】
BM−MSCに関して記載されているとおり[34]、hGL−MSCも、MHCクラスI抗原を構成的に発現することを示したが(図2A)、それらは、クラスII抗原および接着分子CD154ならびに共刺激分子CD80、CD86およびCD40に対して陰性であった(図3A)。加えて、PHA誘導性PBMC増殖を阻害することが知られているBM−MSCと同様に、hGL−MSCは、PHA誘導性PBMC増殖の顕著な減少を誘導した(図3B)。しかしながら、BM−MSCと反対に、hGL−MSCは、CD24(陽性)およびPax−2(陽性)であった。さらに、本発明のhGL−MSCが、マウス腎臓から単離された腎臓幹細胞と反対に、α−SMAおよびOct−4の両方に対して陰性であることを見出した。
【0038】
糸球体から得られたhGL−MSC集団の自己再生能力を証明するために、本発明者らは、選別されたCD133CD146およびCD133CD146細胞において、コロニー形成アッセイを行った。単一細胞懸濁液を96−ウェルプレートに播種し、拡大培地における第3継代培養物の糸球体からの増殖物を選別した。CD133CD146細胞のコロニー形成率は25.3±5.1%であったが、CD133CD146細胞はコロニー形成しなかった(図3C)。CD133CD146細胞の初代クローンから産生された単一細胞懸濁液の播種は2代クローンを提供し、2代クローンから産生された単一細胞の播種は3代クローンの産生をもたらした(図3C)。これらのデータは、糸球体CD133CD146細胞がコロニー形成し、インビトロで自己再生能力を示したが、CD133CD146細胞はこれらの培養条件下でクローンを産生することができなかったことを示す。CD133CD146クローンをフローサイトメトリーおよび免疫組織化学により分析し、非クローン集団由来のhGL−MSCと同じ間葉系表現型が示された(データは示していない)。拡大培地の存在下で第4継代後に、糸球体から増殖した非選別細胞を特性化したとき、それら全てが間葉系表現型を示し、これにより、使用された培養条件がhGL−MSCの拡大に選択的であったことを示す。
【0039】
本発明者らは、また、本発明のGL−MSCが糸球体内に局在するBM−由来MSC集団よりはむしろ、常在腎臓集団であるか否かを試験する目的の実験を行った。この目的のために、常在およびBM−由来幹細胞により異なって発現されるマーカーの存在を、最初に試験した。hGL−MSCはCD24を発現したが、CD24は、対照的にBM−由来MSCにおいては陰性であり、腎臓常在幹細胞のマーカーと考えられる[2、35]。hGL−MSCの腎臓起源も、臓器−特異的胚性Pax−2タンパク質および遺伝子の発現により示唆された。Pax−2は、BM−MSCにより発現されなかった。Pax−2は、後腎間充織の幹細胞[36]ならびに成体ラットおよびヒト腎臓から単離された幹細胞[1、5]により発現される転写因子である。さらに、本発明者らは、女性レシピエントに移植された男性ドナー由来の移植腎臓の糸球体からhGL−MSCを単離した。移植された腎臓由来のhGL−MSCは、正常腎臓由来のhGL−MSCと同じ表現型を示した(データは示していない)。レシピエントの骨髄または移植された腎臓のどちら由来のhGL−MSCかを評価するために、hGL−MSCにおけるY染色体の存在を第2および第6継代で分析した。第2継代(478個の核;23個の中期)および第6継代(436個の核;25個の中期)で、全体で914個の核および48個の中期を分析した。デュアルカラーX(緑色)/Y(赤色)動原体プローブのハイブリダイゼーションパターンのFISH分析は、90%の核が男性赤色/緑色パターンを有し、10%の核が1つの緑色スポットだけを有したことを示した。1つの緑色スポットを有する核は、培養中に頻繁に起こる、Y染色体を失った男性核由来であろう。女性核は観察されなかった(2つの緑色スポット)。hGL−MSCの全48個の中期において検出された核型は、男性であった。FISH対比染色に使用されるDAPIで観察された中期染色体は、正常のように見えた。これらのデータは、hGL−MSCがレシピエントの骨髄に由来しなかったことを示唆する。むしろ、それらは、ドナー腎臓の糸球体における常在集団を示す。
【0040】
間葉系幹細胞の最も顕著な特性の1つは、その多様な間葉系系統に分化する能力であるため、本発明者らは、特定の結合組織細胞に分化する本発明のhGL−MSCの能力を評価した。第2または第3継代で選別されたCD133CD146集団は、規定の培養条件下で脂肪細胞、骨細胞および軟骨細胞系統に分化することができないことを示した(データは示していない)。対照的に、15人の患者(第4−10継代)から得られた元のCD133CD146 hGL−MSC系および後に得られた4つのクローンの両方は、多分化能を有することを示した。
【0041】
hGL−MSCは、カルシウム沈着のAlizarin Red染色により示される場合、骨形成培地中で、14日後に骨細胞分化を効率的に起こした。
【0042】
脂肪細胞−培地において21日間培養したとき、hGL−MSCは、脂質滴を含む細胞を生じた。未分化コントロールにおいて、鉱化または脂質滴の証拠が観察されなかった。
【0043】
hGL−MSCの軟骨細胞への分化を、軟骨細胞−選択培地[7]を使用して観察した。分化ペレットを、軟骨細胞の分化に特有であるサフラニンOおよびアルシアンブルー[7]での染色処理で28日目に回収した。
【0044】
全体を考慮すると、これらの結果は、本発明のhGL−MSCの多分化能を示す。ほぼ同様の結果が、最初に単離された15個のhGL−MSC系および元の細胞系から後に得られた4つのクローンで得られたという事実も価値がある。
【0045】
適当な培養条件下で、特定の糸球体細胞集団、例えば、内皮細胞、足細胞およびメサンギウム細胞に分化するhGL−MSCの能力も、評価した。内皮分化を得るために、hGL−MSCを、VEGFの存在下でEBM中で3週間培養した。フローサイトメトリー分析は、特異的内皮マーカー、例えば、CD105、KDR、CD34およびCD31の発現を示した。加えて、Matrigel中で培養したとき、内皮分化したhGL−MSCおよび非−未分化細胞は、特徴的な毛細血管様組織を形成した(データは示していない)。PDGFbbおよびTGFβ1の存在下で、hGL−MSCは、メサンギウム様表現型を獲得した。具体的には、それらは、α−SMAおよびアンジオテンシン2受容体1(AT1)の発現を獲得した。20μM/LのATRAの存在下で3週間培養したとき、hGL−MSCは、足細胞により発現される特異的上皮性マーカー、例えば、サイトケラチン、ポドシン、ネフリンおよびシナプトポジンの発現を獲得した。ネフリン発現をリアルタイムPCRにより確認し、ネフリン転写産物が、足細胞への分化後にhGL−MSCに存在したが、分化を防止する拡大培地中で維持されたhGL−MSCに存在しなかったことが示された。3つのクローン細胞系の試験は、同様の結果であった。
【0046】
全ての実験条件において、一般的に成熟細胞により発現されるCD90およびCD146を維持したメサンギウムおよび内皮分化細胞を除いて(データは示していない)、分化細胞は、幹細胞性関連マーカー、例えば、Nanog、Musashi、ビメンチン、ネスチン、CD90、CD146、CD73を失った。全てのhGL−MSC細胞系およびクローンは、同じ分化能力を示した。同じ培養条件下でBM由来MSCは、内皮細胞および筋肉様細胞に分化することができたが、足細胞様細胞に分化することはできなかった(データは示していない)。
【0047】
要するに、本発明者らは、ボーマン嚢に結合している幹細胞の存在を回避するために、予め脱嚢されたヒト糸球体内の幹細胞の存在を試験した。初代継代の脱嚢糸球体から増殖した細胞は、2つの異なる集団、CD133CD146集団およびCD133CD146集団からなることが見出された。CD133細胞は、内皮マーカーを共発現するため、恐らく内皮関連細胞集団を示す。さらに、第3継代後に、CD133CD146細胞は生存しなかった。加えて、CD133CD146集団を選別したとき、それは自己再生することができず、コロニー形成しなかった。
【0048】
対照的に、脱嚢ヒト糸球体から単離されクローニングされたCD133CD146集団は、長期培養で産生することができる間葉系幹細胞の多能性集団であることが見出された。興味深いことに、それらは、細胞培養第4継代後に生存することができる糸球体から増殖した細胞のみであった。これらの細胞をhGL−MSCと称した。hGL−MSCは、BM−由来MSCおよび他の成体組織由来のMSC[9−16、26−28]と以下の特性を共有していた。CD29、CD44、CD166、CD73、CD90、CD105、CD146、ビメンチンおよびネスチンの発現、CD34およびCD45の欠失、中胚葉分化(骨細胞、軟骨細胞および脂肪細胞)するための能力。加えて、hGL−MSCは、細胞維持に関与するNanogおよびMusashi胚マーカーを発現した。BM−由来MSCと同様に、hGL−MSCは、PBMCのPHA−誘導性増殖を阻害することができた。同様の免疫調節効果が、成体マウス由来の非尿細管Sca−1+lin−多能性幹/前駆細胞[40]ならびに心臓、脾臓および腎周囲脂肪由来のヒトMSC[41]に対して示された。
【0049】
成体臓器内のMSCの起源について議論する。本研究において、本発明者らは、単離されたhGL−MSCが常在腎臓幹細胞の表現型特性を有することを見出した。事実、hGL−MSCは、BM−MSCとは対照的に、腎臓常在前駆細胞のマーカー[2、35]として考えられているCD24、ならびにPax−2胚臓器特異的転写因子[1、5、36]を発現した。Pax−2の発現は、腎臓常在幹細胞集団のマーカーであることが以前に示されている[1、5、36]。さらに、腎臓同種移植におけるドナー性同一性のhGL−MSCの存在は、成人糸球体内に局所的に存在するMSC集団の存在に関する証拠を提供した。この結果は、肺移植試験由来のヒト肺において提供される組織常在MSCに関する以前の証拠と一致する[16]。
【0050】
hGL−MSCの腎臓関与は、内皮細胞ならびに特定の糸球体系統、例えば、足細胞およびメサンギウム様細胞に適当な培養条件下で分化する能力により示される。実際に、hGL−MSCは、ATRAおよびIV型コラーゲンの存在下で培養したとき、足細胞のスリット膜に対して特異的なマーカー、例えば、ネフリン、シナプトポジンおよびポドシンを発現する上皮細胞に分化することができた。これは、BM−MSCと対照的である。
【0051】
hGL−MSCの糸球体メサンギウム細胞への分化は、BM由来の多能性成体前駆細胞において平滑筋細胞分化を誘導することが報告されている[20]、TGFベータ1およびPDGF−bbの組合せの存在下で細胞を培養することにより得られた。さらに、hGL−MSCは、BM−MSCと同様に[23−25]、PHA−刺激PBMCの増殖を阻害したので、免疫調節特性を示した。hGL−MSCの免疫調節活性は、炎症性糸球体疾患と関連する。
【0052】
要するに、本研究の結果は、成人脱嚢糸球体における、異なる糸球体特異的細胞型の代謝回転に寄与する可能性のある間葉系表現型を発現する常在多能性幹細胞集団の存在を証明する。
【0053】
成人腎臓糸球体からの本発明のヒト糸球体間葉系幹細胞の単離およびそれらの特性は、以下の実験の部により詳細に記載されているが、これは説明のみの目的のために提供し、特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例】
【0054】
実験の部
材料および方法
ヒト糸球体および骨髄由来の間葉系幹細胞の単離および培養
糸球体由来のヒト間葉系幹細胞(hGL−MSC)を、外科的に取り出された腎臓(15個の異なる調製物)由来の皮質の正常部分から得た。皮質を解離し、段階的な一連のメッシュ(60および120メッシュ)に通過させた後、糸球体懸濁液を回収し、Hans平衡塩溶液(GIBCO, Grand Island, NY)で洗浄し、10mlピペットを使用する数回の吸引/排出により機械的に、およびコラゲナーゼI(Sigma, St. Louis, MO)での2分間消化により酵素的にボーマン嚢を除去した。脱嚢糸球体を、フィブロネクチン被覆T25フラスコ(Falcon, BD Bioscience, Two Oak Park, Bedford, MA)に移した。
【0055】
いくつかの培養培地を比較した。1×ITS(Sigma)およびHepes(遊離酸、10mM)(Sigma)の存在下で10%のFCS(Euroclone, Wetherby, UK)を有するRPMI(Sigma)(拡大培地)がhGL−MSCの最大増幅を引き起こしたので、後の実験において使用した。
【0056】
ヒトMSCをBMから単離し、以前に記載されているとおりに培養した[7]。
【0057】
成長速度論
培養速度論を描く増殖曲線は、以前に記載されているとおりに作成した[6]。25cmに相当する初代hGl−MSC培養により占有される増殖面積を、簡素化のため1と見なした。第2継代を行なったとき、継代1の分割比(1:3)にその値を乗じ、このことは、継代1の最後に累積増殖面積が3(すなわち、初代培養により占有される増殖面積の3倍)であったことを意味した。第2継代の最後に、継代2での分割比(1:3)に、継代1の累積増殖面積で乗じた(3×3=9)。この手順をそれぞれの継代に対して繰り返し、細胞数に正比例する理論的増殖曲線を提供した。増殖を、5つの異なる糸球体調製物において評価した。
【0058】
糸球体由来間葉系幹細胞の特性化
細胞蛍光分析を、[1]に記載されているとおりに行い、以下の抗体、全てのフィコエリトリン(PE)またはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合を使用した。抗−CD105、−CD29、−CD31、−CD146、−CD44、−CD24、−CD90(Dakocytomation, Copenhagen, Denmark)、−CD73、−CD34、−CD45、−CD80、−CD86、−CD166、HLA−I(Becton Dickinson Biosciences Pharmingen, San Jose, CA)、−CD133(Miltenyi Biotec, Auburn)、KDR(R&D Systems, Abington, U.K.)、−HLA−II(Chemicon International Temecula, CA)、−CD40(Immunotech, Beckman Coulter)、−CD154(Serotec, Raleigh, NC USA)モノクローナル抗体。マウスIgG同形コントロールは、Dakocytomationから入手した。全てのインキュベーションを、0.1%のウシ血清アルブミンおよび0.1%のアジ化ナトリウムを含む100μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で4℃で行った。それぞれのサンプルにおいて、10,000個の細胞をFACSCaliburサイトメーター(BD Biosciences Pharmingen)で分析した。ゲーティングを陰性コントロールに基づいて構築し、補正コントロールを行われる全ての分析に含んだ。集団パーセントおよび数を、Cell Questソフトウェア(BD Biosciences Pharmingen)を使用して、それぞれの実験からゲーティングされた集団に関して得た。
【0059】
間接免疫蛍光を、2%のスクロースを含む4%のパラホルムアルデヒドで固定し、必要によりHepes−Triton×100バッファー(Sigma)で透過処理した、チャンバースライド(Nalgen Nunc International, Rochester, NY, USA)で培養し、未分化または分化hGL−MSCで行った。以下のモノクローナル抗体を使用した。抗−ビメンチン(Sigma)、抗−サイトケラチン(Biomeda, Foster City CA)、抗−E−カドヘリン(Dakocytomation)、アルファ−平滑筋アクチン(αSMA)(Dakocytomation)、抗−シナプトポジン(Progen Biotechnik, Heidelberg)。抗−フォン・ヴィレブランド因子(vWF)(Dakocytomation)、抗−ネスチン(Chemicon International)、抗−Pax−2(Covance, Princeton, NJ)、抗−Nanog、抗−Oct−4、抗−Musashi(AbCam, Cambridge, Science Park Cambridge UK)、抗−ポドシン、抗−アンジオテンシンII受容体1(AT1)(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)ウサギポリクローナル抗体およびブタポリクローナル抗−ネフリン(Progen Biotechnik)を使用した。一次抗体の排除または非免疫ウサギ、ラットもしくはマウスIgGでの置換を、適宜、コントロールとして使用した。Alexa Fluor 488 抗−ウサギまたは抗−ブタIgGおよびTexas Red 抗−マウスIgG(Molecular Probes, Leiden, The Netherlands)を二次Abとして使用した。共焦点顕微鏡分析を、Zeiss LSM 5 Pascalモデル共焦点顕微鏡(Carl Zeiss International, Germany)を使用して行った。Hoechst 33258 色素(Sigma)を核染色のために加えた。
【0060】
マーカー発現プロフィールの要約
以下の表1は、本発明のヒト糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)のマーカー発現プロフィールの要約を提供する。
表1
【表1】

【0061】
Fish試験
hGL−MSCを、女性レシピエントに移植された男性ドナー由来の移植腎臓の糸球体から単離した。45歳の女性患者に男性移植片を移植した。該移植片は、巣状糸球体硬化症の生検診断で、治療に抵抗性の重度腎炎症候群の再発のため、9つのマウント後に移植された。
【0062】
サブコンフルエンス(70%)の培養物を、最終濃度0.01μg/mlのVelbeで一晩インキュベーション(16−18時間)した。細胞をペレット化し、ペレットを低張溶液(0.2gのKCl+0.2gのクエン酸Na/100ml)に再懸濁した。37℃で20分インキュベーション後、細胞を3:1のメタノール−酢酸で固定し、18時間、−20℃で保存した。中期染色体を清潔なスライドガラスに約50μlの懸濁液を滴下することにより調製し、空気乾燥させた後、顕微鏡法を使用して視覚化した。
【0063】
FISH試験を、市販のX(緑色)およびY(赤色)染色体動原体プローブならびにY古典的サテライトIIIヘテロクロマチンプローブ(Aquarius Cytocell, Cambridge, UK)を使用して行った。プローブを、製造業者の指示にしたがって、調製し変性させた。調製されたプローブを、カバースリップ下に変性させた中期および核(70℃で70%のホルムアミド/2×SSC中で1.45分)を含むスライド上に加えた。ハイブリダイゼーションを一晩37℃で行った。次に、スライドを72℃で2分間0.4×SSCで1回洗浄し、次に、室温で5−10分間4×SSC+Tween20(Sigma)で2回目の洗浄をした。染色体および核をDAPIで対比染色し、抗フェード溶液中に置いた。サンプルを、直接顕微鏡視覚化(Nikon落射蛍光顕微鏡)で男性(XY)/女性(XX)核および中期の同定のために分析した。デジタル画像をCytovision Cytogenetics Image Analysis Systemを使用して得た。
【0064】
免疫磁気分離、細胞選別および細胞クローニング
細胞を、新鮮な脱嚢糸球体または第2もしくは3継代の細胞培養物から免疫磁気分離した。解離し、段階的な一連のメッシュに通過させた後、脱嚢糸球体の懸濁液をコラゲナーゼI(Sigma)で8分間消化し、CD133細胞を、MACSシステム(Miltenyi Biotech)を使用して、磁気細胞選別により単離した。
【0065】
拡大培地における第2または第3継代培養物で糸球体から培養した集団由来のCD133CD146およびCD133CD146細胞を、細胞選別(MoFloTM、Dakocytomation)により分離し、両方の集団を特性化し、培養し、細胞選別による96−ウェルプレートにおける単一細胞懸濁液の播種によりクローニングした。得られたクローンの数、形態および速度論を分析し、それらのいくつかをサブクローニングおよび分化アッセイのために選択した。
【0066】
インビトロ分化
hGL−MSCの脂肪細胞、骨細胞および軟骨細胞分化能力は、以前に記載されているとおりに測定した[7]。
【0067】
簡潔には、hGL−MSCを、脂肪生成培地(Lonza, Basel Switzerland)で3週間培養した。分化を評価するために、細胞を、20分間室温で4%のパラホルムアルデヒドで固定し、20分間室温でメタノール(Sigma)中の0.5%のOil Red O(Sigma)で染色した。
【0068】
骨細胞分化を、骨形成培地(Lonza)中でhGL−MSCを培養することにより評価した。培地を、3週間にわたって1週間に2回交換した。分化を評価するために、細胞を、20分間4%のパラホルムアルデヒドで固定し、20分間室温でAlizarin Red、pH4.1(Lonza)で染色した。
【0069】
軟骨細胞分化に関して、2.5×10個のhGL−MSCを、15mlの円錐形ポリプロピレンチューブ(Falcon BD Bioscience)中で150gで5分間遠心分離し、DMEMで2回洗浄した。ペレットを、10ng/mlの形質転換成長因子β3(Lonza)を補った軟骨形成培地(Lonza)で培養した。培地を、28日間にわたって3日ごとに交換した。ペレットを一晩で4%のパラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋切片を、グリコサミノグリカンに対して0.1%のサフラニンO(Sigma)を使用して、硫酸化プロテオグリカンに対して1%のアルシアンブルーで染色した。
【0070】
内皮細胞分化を、以前に記載されているとおりに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF、10ng/ml、Sigma)を有する内皮細胞用基本培地(EBM)(Lonza)の存在下でhGL−MSCを3週間培養することにより得た[17]。
【0071】
足細胞分化を、オール・トランスレチノイン酸(ATRA、Sigma、20μmol/L)を含有する拡大培地中でhGL−MSCを3週間培養することにより得た[18]。分化を、IV型コラーゲン(Sigma)で被覆したチャンバースライドで行った[19]。
【0072】
メサンギウム分化を、10%のFCS、TGF−ベータ1(2.5ng/ml、Sigma)[20]およびPDGFbb(5ng/ml Sigma)[21]の存在下で、DMEM高濃度グルコース中でhGL−MSCを6日間培養することにより得た。分化を、フィブロネクチンで被覆したチャンバースライドで行った。
【0073】
リアルタイムPCR
定量的逆転写PCRを、以前に記載されているとおりに行った[22]。一本鎖cDNAを、大容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems, Foster City, CA 94404, USA)を使用して、全RNAから生産した。簡潔には、1または2μgのmRNA、2μlのRTバッファー、0.8μlのdNTP混合物、2μlのRTランダムプライマー、1μlのMultiScribe逆転写酵素および4.2μlのヌクレアーゼ非含有水を、それぞれのcDNA合成のために使用した。逆転写後、cDNAを−20℃で保存した。リアルタイムPCRによる相対的量子化を、48ウェルStepOneTMリアルタイムシステム(Applied Biosystems)を使用して、リアルタイムにおけるPCR産物のSYBR−緑色検出を使用して行った。リアルタイムPCRを行うために、以下の配列−特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、全てMWG-Biotech AG, Ebersberg, Germanyから購入した。(i)[22]に記載されているヒトネフリンフォワードおよびリバースプライマー、(ii)[1]に記載されているヒトPAX2フォワードおよびリバースプライマー、および(iii)[1]に記載されているヒトβ−アクチンフォワードおよびリバースプライマー。Power SYBR(登録商標)Green PCR Master Mixは、Applied Biosystemsから購入した。熱サイクル条件は以下のとおりである、95℃10分のAmpliTaq Gold(登録商標)DNAポリメラーゼLDの活性化、次に、95℃15秒および60℃(ネフリン、pax2およびβ−アクチンに対して)1分の増幅を45サイクル。増幅の対数期を検出するために、蛍光レベル(産物の定量化)をそれぞれのサイクルで測定した。蛍光が域値に達したサイクルを記録し、トリプリケート間で平均し、β−アクチンに関する域値の平均サイクルに標準化した。コントロールに対する発現の倍数変化を、全てのサンプルに対して計算した。
【0074】
同種異系末梢血単核細胞−MSC共培養
[23、24]に記載されているとおり、修飾され混合された細胞培養物において、健常ボランティア由来の末梢血単核細胞(BPMC)を、Histopaque−1077(Sigma)で分画し、キラー細胞として使用し、同種異系MSCを刺激細胞として使用した。簡潔には、hGL−MSCを、100μlの完全培地において5×10細胞/mlで96−ウェルプレート上にトリプリケートにおいて播種し、1から2時間でプラスチックに付着させた。PBMCを5×10細胞/mlで再懸濁し、最終濃度2.5μg/mlで、マイトジェンフィトヘマグルチニン(PHA、Sigma)の存在または非存在下で、Gl−MSC含有または非含有のウェル(100μlの容量)に加えた。Gl−MSC対PBMC比は1:10であった。BM由来のヒトMSCを、コントロールとして使用した。培養を16−48時間維持し、培養期間後、リンパ球増殖を評価した。
【0075】
細胞増殖を、製造業者の指示にしたがって酵素免疫吸着アッセイキット(Chemicon International)を使用して、細胞DNAへの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)の取り込みとして検出されるDNA合成により試験した。データは、[23]に記載されているとおりに計算される刺激指数(SI)値として示す。該実験は、記載されているそれぞれの時点に対して少なくとも3回行った。
【0076】
統計分析
データは、3回以上の実験由来の平均±標準偏差として示した。統計的有意性を、両側スチューデントt検定により評価した。
【0077】
インビボ局在試験
本発明者らは、また、本発明の幹細胞集団のヒト腎臓におけるインビボ局在を明らかにするために実験を行った。結果は図4に示されている。糸球体においてCD24(陽性)を共発現する、CD146(陽性)およびCD133(陰性)細胞の存在を、免疫蛍光により試験した。図4に示されるとおり、CD24(陽性)を共発現するCD146(陽性)細胞を、糸球体(平均2.22±0.2/糸球体 n=60)において検出することができ、これらの細胞はCD133陰性であった。さらに、CD146は、内皮細胞により糸球体係蹄内で発現した。CD133(陽性)細胞は、主にボーマン嚢において観察された。
【0078】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーカーCD133(陰性)、CD146(陽性)、CD34(陰性)およびCD105(陽性)により特徴付けられ、少なくとも以下の細胞型、足細胞、内皮細胞およびメサンギウム細胞に分化する能力によりさらに特徴付けられる、単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項2】
さらに骨細胞(osteogenic)、脂肪細胞(adipogenic)および軟骨細胞分化することができる、請求項1に記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項3】
マーカーCD24およびPax−2に対して陽性である、請求項1または2に記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項4】
マーカーα−SMAおよびOct−4に対して陰性である、請求項1から3のいずれかに記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項5】
マーカーCD45に対して陰性である、請求項1から4のいずれかに記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項6】
マーカーCD31に対して陰性である、請求項1から5のいずれかに記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項7】
CD29、CD44、CD73、CD90、CD166またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される間葉系幹細胞の表面マーカー特性に対して陽性である、請求項1から6のいずれかに記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項8】
マーカーNanogおよびMusashiに対して陽性である、請求項1から7のいずれかに記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項9】
ビメンチンおよびネスチンに対して陽性であり、サイトケラチンに対して陰性である、請求項1から8のいずれかに記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項10】
MHCクラスI抗原を構成的に発現し、MHCクラスII抗原に対して陰性である、請求項1から9のいずれかに記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項11】
共刺激分子CD80、CD86およびCD40に対して陰性である、請求項10に記載の成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)を製造する方法であって、
特定の成長因子の非存在下で生理学的pHで緩衝された血清含有動物細胞培養培地を含む拡大培養培地中で成人腎臓由来の脱嚢(decapsulated)糸球体を培養し、それにより、培養された脱嚢糸球体から増殖した細胞の混合集団を得て、ここに、該細胞の混合集団は、紡錘状CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞およびCD133(陽性)、CD146(陽性)細胞の両方を含む工程、および
混合集団から紡錘状CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞を単離し、ここに、該紡錘状細胞CD133(陰性)、CD146(陽性)は、所望の成人腎臓由来のヒト多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)を表す工程
を含む方法。
【請求項13】
紡錘状CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞が少なくとも第3継代の細胞培養物から単離される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞がそれらの紡錘状形態に基づいて単離される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
CD133(陰性)、CD146(陽性)細胞が細胞選別法により単離される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
医薬としての請求項1から11のいずれかに記載の単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項17】
再生医療のための医薬としての請求項16に記載の単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項18】
腎障害または疾患の治療処置のための医薬としての請求項17に記載の単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項19】
腎糸球体障害または疾患の治療処置のための医薬としての請求項18に記載の単離された成人腎臓由来の多能性糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)。
【請求項20】
請求項1から11のいずれかに記載の単離されたヒト糸球体間葉系幹細胞(hGL−MSC)ならびに薬学的に許容される担体、希釈剤および/またはビヒクルを含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−507304(P2012−507304A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535090(P2011−535090)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064468
【国際公開番号】WO2010/052192
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(597075904)フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【Fターム(参考)】