説明

印判

【課題】栓体からテーパースプリングが脱落しないので、製品性能が低下せず、また、脱落したテーパースプリングに付着したインキで、周囲を汚損するおそれもない印判を提供する。
【解決手段】無数の連続気泡を有する多孔性印字体2をその印字面21が下端開口より露呈した状態として嵌装保持させた枠金3を短筒体1の一端に嵌着し、前記短筒体内にテーパースプリング4を内挿するとともに、前記短筒体の他端には前記テーパースプリングを多孔性印字体に向け圧接させる栓体5を着脱自在に装着した印判であって、栓体内面に設けた係合爪55と、テーパースプリング4の側面とを遊嵌させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無数の連続気泡を有する多孔性印字体を使用した印判に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スタンプ面とそれを保持するケースとの間にバネ材を配するスタンプ機構が開示され、スタンプ面に加わる衝撃を前記バネ材で吸収し、スタンプ転写が二重となる、いわゆるリバウンド現象を防止する旨記載がある。
また、特許文献2には、無数の連続気泡を有する多孔性印字体をその印字面が下端開口より露呈した状態として嵌装保持させた受金を本体の一端に嵌着して該本体内にキャップ付のカートリッジ吸蔵棒を嵌挿するとともに本体の他端には該カートリッジ吸蔵棒を多孔性印字体に向け、合成樹脂製キャップの上面に一体に設けた板体付バネを介し圧接させる口栓を着脱自在に装着する印判が開示され、キャップの外周側面に設けた突起部と口栓開口端近くの内側面に設けた凸部によりキャップが口栓から脱落することを防止する旨記載がある。
【特許文献1】実開平02−41963号公報
【特許文献2】実公平06−12943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のスタンプ機構は、何らかの事情によりケース2からケース3を外した際に、バネ材がケース2から脱落する可能性がある。脱落するとそれを紛失してしまう場合があり、そうすると前記リバウンド現象を防止できなくなる。また、仮にスタンプ面が連続気泡を有する多孔性印字体である場合は、バネ材にインキが付着している可能性があり、その場合、脱落したバネ材が周囲を汚損する可能性がある。
また、特許文献2の印判は、キャップが口栓から脱落することを防止する構成を有してはいるものの、板バネと一体に設けられたキャップの外周側面に突起を設ける等、構成が複雑となり、金型製造及び組立製造上コスト高となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために完成された第1の発明の印判は、無数の連続気泡を有する多孔性印字体をその印字面が下端開口より露呈した状態として嵌装保持させた枠金を短筒体の一端に嵌着し、前記短筒体内にテーパースプリングを内挿するとともに、前記短筒体の他端には前記テーパースプリングを多孔性印字体に向け圧接させる栓体を着脱自在に装着した印判であって、前記栓体内面に設けた係合爪と、前記テーパースプリングの側面とを遊嵌させたことを特徴とする。
また、第2の発明の印判は、前記テーパースプリングが、その先細側を多孔性印字体に向けて前記短筒体内に内挿されたことを特徴とする第1の発明の印判である。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、栓体内壁面に設けた係合爪と、前記テーパースプリングの外側面とを遊嵌させているため、栓体からテーパースプリングが脱落しない。テーパースプリングが脱落しないため紛失のおそれがないので、製品性能が低下しない。また、脱落したテーパースプリングに付着したインキで、周囲を汚損するおそれもない。
また、テーパースプリング4は、スプリング径が次第に小さくなる様に形成されており、係合爪55との接触がなくなっていくため、一様に同一径であるいわゆる通常のスプリングと比べて、栓体5内に収容しやすく、熟練さや治具等を別途必要としない。
また、昨今の商品構成には分別廃棄が容易にできるよう環境に配慮した構成が望まれているが、前記の通り収容作業が容易ということは、当然解体作業も容易なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
短筒体1は、POM(ポリアセタール)樹脂等の耐インク性に優れた強靭な合成樹脂材よりなる。該短筒体1はその中間に環状隆起部11が設けられてその一端方部を枠金嵌着部12に形成するとともに他端方部には拡開補助用の縦切込13が複数個配設されており、前記枠金嵌着部12にはスポンジゴム等の無数の連続気泡を有する多孔性印字体2をその印字面21のみが下端開口より露呈した状態として嵌装保持させた枠金3が嵌着されている。枠金3の材質としては、ステンレス等の金属製を用いる。
前記短筒体1内にテーパースプリング4を内挿する。テーパースプリング4は、一端側から他端へ向かってスプリング径が次第に大きくなる様に形成された所謂テーパースプリング4である。前記テーパースプリング4の材質としては、ステンレス等の金属製や、POM(ポリアセタール)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックを用いてもよい。また、テーパースプリング4の材質や線材の径、腕体の長さあるいは角度等を変更することによってテーパースプリング4の復元力の大きさを調整することができる。テーパースプリング4は、スプリング径が小さい先細側端部41が多孔性印字体2に当接するように、前記短筒体1内に内挿する。
栓体5は、短筒体1の他端に着脱自在に装着される。栓体5の材質としては、ポリブチレン-テレフタレート(PBT)樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂を用いることができる。前記栓体5は空気流通孔51を有する頭部52に係止用リブ53を周面に形成した挿込用筒部54を続かせ、さらに、前記挿込用筒部54の開口端近くの内壁面に複数個の係合爪55を突設させるとともに挿込用筒部54に複数個の縦切込56を配設したものとして、頭部52の内側天上部57に前記テーパースプリング4の先太側端部42を当接させ、栓体5を短筒体1の他端に装着すると、前記テーパースプリング4は圧縮されて、先細側端部41を多孔性印字体2に向け圧接するようになっている。
【0007】
ここで、前記内側天上部57に前記テーパースプリング4の先太側端部42を当接させる際に、係合爪55と前記テーパースプリング4の外側面とを遊嵌させる。遊嵌とは、遊びがある状態に嵌めることを意味し、栓体5を短筒体1の他端に装着した状態では、係合爪55とテーパースプリング4の外側面との間には間隔がある状態を意味する。さらに詳述すると、先太側端部42の外径と、複数個の係合爪55間の最小内径を略同寸とした場合、先太側端部42が係合爪55を乗り越えて嵌まり、さらに押し込むと、テーパースプリング4は先細側端部41に向かって、スプリング径が次第に小さくなる様に形成されているため、前記係合爪55との接触がなくなっていき、最終的に、係合爪55とテーパースプリング4の外側面との間に間隔がある状態で収容されることとなる。
このような構成であるため、一様に同一径であるいわゆる通常のスプリングと比べて、テーパースプリング4は、前記挿込用筒部54内に収容しやすい。なぜなら、通常のスプリングはスプリング径が一様なため、係合爪55に常にスプリングの外側面が接触し接触抵抗を受け続ける。そのため、収容作業には、熟練さや治具等を別途必要とする。また、昨今の商品構成には分別廃棄が容易にできるよう環境に配慮した構成が望まれているが、前記の通り通常のスプリングを採用した場合に収容作業が大変ということは、当然解体作業も大変なものである。一方で、テーパースプリング4を採用した本構成では、これらの作業を容易に行うことができる。
【0008】
ここで、前記係合爪55の形状に特に制限はないが、内側天上部57に向かってテーパーを設けると、テーパースプリング4の先太側端部42が入りやすく好ましい。また、係合爪55の数も特に制限はないが、1個より複数個の方が、テーパースプリング4を遊嵌したとき安定し、4個より3個、3個より2個にした方が、遊嵌時の接触抵抗を減らすことができ好ましい。尚、図3では、係合爪55を4個設けた状態を示している。
【0009】
また、他の実施の形態として、図示しないが、係合爪55を外側に向けて突設させてもよい。その場合は、頭部52の内面に筒状突部を設け、その筒状突部の外周面に前記係合爪55を突設させればよい。このような構成とする場合は、前記係合爪と、前記テーパースプリング4の内側面とを遊嵌させることとなるため、前記テーパースプリング4の向きは、先太側端部42を多孔性印字体2に向け前記短筒体内に内挿することとなる。さらに詳述すると、先細側端部41の内径と、複数個の係合爪55間の最大外径を略同寸とした場合、先細側端部41が係合爪55を乗り越えて嵌まり、さらに押し込むと、テーパースプリング4は先太側端部42に向かって、スプリング径が次第に大きくなる様に形成されているため、前記係合爪55との接触がなくなっていき、最終的に、係合爪55とテーパースプリング4の内側面との間に間隔がある状態で収容されることとなる。それ以外は、前記実施の形態と同様である。
【0010】
また、インク補充時には、短筒体1の他端に着脱自在に装着されている栓体5を取り外して栓体5に遊嵌されているテーパースプリング4を抜き出した後、短筒体1の開口部から多孔性印字体2にインキが吸い込まれるのを確認しながら、ゆっくりと補充する。その後再び、テーパースプリング4が遊嵌された栓体5を短筒体1の他端に装着すればよい。
本発明の印判を実施するに際し、前記枠金3に着脱自在にキャップを装着し、多孔性印字体2の印字面21を覆うような構成が採用可能である。また、このままでも使用可能であるが、短筒体1の露呈部分に筒体を取付けたり、ボールペン等の筆記具や化粧用具のような携行品の尾端に取付けることも可能である。
【0011】
尚、本発明を前記実施例により説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明印判の正面図
【図2】本発明印判の断面図
【図3】本発明印判の栓体を示す図
【符号の説明】
【0013】
1 短筒体
11 環状隆起部
12 枠金嵌着部
13 縦切込
2 多孔性印字体
21 印字面
3 枠金
4 テーパースプリング
41 先細側端部
42 先太側端部
5 栓体
51 空気流通孔
52 頭部
53 係止用リブ
54 挿込用筒部
55 係合爪
56 縦切込
57 内側天上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無数の連続気泡を有する多孔性印字体をその印字面が下端開口より露呈した状態として嵌装保持させた枠金を短筒体の一端に嵌着し、前記短筒体内にテーパースプリングを内挿するとともに、前記短筒体の他端には前記テーパースプリングを多孔性印字体に向け圧接させる栓体を着脱自在に装着した印判であって、前記栓体内面に設けた係合爪と、前記テーパースプリングの側面とを遊嵌させたことを特徴とする印判。
【請求項2】
前記テーパースプリングが、その先細側を多孔性印字体に向けて前記短筒体内に内挿されたことを特徴とする請求項1に記載の印判。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−132021(P2009−132021A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309673(P2007−309673)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)