説明

印刷インキ用バインダー及び印刷インキ

【課題】 塩素を含まず、ポリエステル、ナイロン及びポリオレフィン等の各種プラスチックフィルムに対し、従来のインキ用バインダーと同等以上の接着性を有し、ポリエステル、ナイロン及びポリオレフィン等の各種プラスチックフィルムに汎用的に使用できる印刷インキ用バインダーを提供する。
【解決手段】 脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(a)と、少なくともポリオール(b)及びポリアミン(c)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(U)からなる印刷インキ用バインダーであって、前記ポリアミン(c)の少なくとも50重量%が複素環式ポリアミン(c1)であることを特徴とする印刷インキ用バインダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷インキ用バインダー及び印刷インキに関する。更に詳しくは、非塩素系で、被印刷物としてのポリエステル、ナイロン、ポリエチレン及びポリプロピレン等の各種プラスチックフィルムのいずれにも好適に用いることができる印刷インキ用バインダー及び印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インキ用バインダーとして、ポリウレタン樹脂や塩素化ポリオレフィンがよく知られている。ポリウレタン樹脂をバインダーとする印刷インキはポリエステルフィルムやナイロンフィルムに対しては単独で優れた接着力を有するが、汎用フィルムであるポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムに対しては充分な接着力がなく、また、塩素化ポリオレフィンをバインダーとした印刷インキはポリオレフィンフィルムに対しては良好な接着力を示すが、ポリエステルフィルムやナイロンフィルムに対しては充分な接着力がないため基材フィルムが制限されるという問題がある。
ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム及びポリオレフィンフィルムに対する接着力を向上させ、各種プラスチックフィルムに汎用的に使用する目的で、ポリウレタン樹脂と塩素化ポリオレフィンとを混合することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−251594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境問題への取り組みが重視されるようになり、使用済み品の廃棄処理において、有害物質の発生を抑制することが強く望まれている。塩素化ポリオレフィンは、塩素を含んでいるため、焼却時に有害物質が発生し、環境を汚染するおそれがあった。
本発明は、塩素を含まず、ポリエステル、ナイロン及びポリオレフィン等の各種プラスチックフィルムに対し、従来のインキ用バインダーと同等以上の接着性を有し、ポリエステル、ナイロン及びポリオレフィン等の各種プラスチックフィルムに汎用的に使用できる印刷インキ用バインダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため、種々検討を重ねた結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(a)と、少なくともポリオール(b)及びポリアミン(c)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(U)からなる印刷インキ用バインダーであって、前記ポリアミン(c)の少なくとも50重量%が複素環式ポリアミン(c1)であることを特徴とする印刷インキ用バインダー、並びに前記印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の印刷インキ用バインダーは、下記の効果を有する。
非塩素系であるため、焼却時に有害物が発生して環境を汚染するおそれがなく、ポリエステル、ナイロン及びポリオレフィン等の各種プラスチックフィルムに対し、従来のインキ用バインダーと同等以上の接着性、耐熱性及び耐ブロッキング性を有し、各種プラスチックフィルム用の印刷インキ用のバインダーとして汎用的に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の印刷インキ用バインダーは、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(a)と、少なくともポリオール(b)及びポリアミン(c)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(U)からなり、前記ポリアミン(c)の少なくとも50重量%が複素環式ポリアミン(c1)であることを特徴とする。
【0008】
脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(a)としては、例えば炭素数(NCO基中の炭素を除く。以下同様)2〜12の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート及び2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート等]、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアート[イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート等]、これらの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレタン基、ウレア基、ビューレット基及びイソシアヌレート基等を含有する変性物等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0009】
これらの内、ポリウレタン樹脂(U)の溶剤溶解性の観点から好ましいのは、2官能の脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートであり、更に好ましいのは、HDI、IPDI及び水添MDIである。
【0010】
ポリオール(b)としては、低分子ポリオール(b1)、高分子ポリオール(b2)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0011】
低分子ポリオール(b1)としては、水酸基当量(水酸基価測定による水酸基1個当たりの分子量:以下同様)が250未満の、低分子ジオール(b11)及び3〜8価の低分子ポリオール(b12)等が挙げられる。
【0012】
水酸基当量が250未満の低分子ジオール(b11)としては、例えば以下の(1)〜(3)が挙げられる。
【0013】
(1)炭素数2〜12の脂肪族ジオール類;
直鎖ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等)及び分岐鎖を有するジオール(1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール及び1,2−デカンジオール等)等。
【0014】
(2)炭素数6〜25の環状基を有するジオール類;
脂環基含有ジオール[1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び水添ビスフェノールA等]、及び芳香環含有ジオール〔m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、2価フェノール[単環2価フェノール(ハイドロキノン等)、ビスフェノール類(フェノールA、ビスフェノールS及びビスフェノールF等)及びジヒドロキシナフタレン等]のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物(水酸基当量250未満)、芳香族ジカルボン酸のビスヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)エステル[ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート等]等〕等。
【0015】
(3)3級アミノ基含有ジオール;
ヒドロカルビルジアルカノールアミン類〔1級モノアミン[例えば炭素数1〜12の脂肪族又は脂環式1級モノアミン類(メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、ヘキシルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、2−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、3−アミノヘプタン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン及びドデシルアミン等)及び炭素数6〜12の芳香族1級モノアミン類(アニリン及びベンジルアミン等)]のビスヒドロキシアルキル化物(炭素数2〜4のAO2モル付加物等)〕等。
【0016】
水酸基当量が250未満の3〜8価の低分子ポリオール(b12)としては、3価アルコール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)、4〜8価のアルコール(ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース及びショ糖等)、これらのAO付加物(水酸基当量250未満)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0017】
上記低分子ポリオール(b1)及び後述の高分子ポリオール(b2)におけるAOとしては、炭素数2〜10又はそれ以上のアルキレンオキサイド及びそのフェニル又はハロ置換体[エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、炭素数5〜10又はそれ以上のα−オレフィンオキサイド、エピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)]並びにこれらの2種以上の混合物等が挙げられ、好ましいのはEO、PO及びこれらの併用である。尚、AOを併用する場合、その結合形式はブロック付加でもランダム付加でもこれらの併用でもよい。
【0018】
低分子ポリオール(b1)として、ポリウレタン樹脂(U)の溶剤溶解性の観点から好ましいのは、2官能のポリオール(ジオール)である。
【0019】
高分子ポリオール(b2)としては、ポリエーテルポリオール(b21)、ポリエステルポリオール(b22)、ポリジエンポリオール(b23)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
(b2)の水酸基当量は通常250〜2,000、好ましくは300〜1,500であり、官能基数は溶剤溶解性の観点から、通常2〜4、好ましくは2〜3であり、特に2が好ましい。
【0020】
ポリエーテルポリオール(b21)としては、前記低分子ポリオール(b1)のAO付加物等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール(b21)の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(ブロック及び/又はランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシブチレン−ポリオキシエチレン(ブロック及び/又はランダム)グリコール、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレン(ブロック及び/又はランダム)グリコール、ビスフェノールAのEO及び/又はPO付加物、並びにこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0021】
ポリエステルポリオール(b22)としては、(1)前記低分子ポリオール(b1)及び/又はポリエーテルポリオール(b21)とジカルボン酸との縮合重合によるもの;(2)前記低分子ポリオール(b1)及び/又はポリエーテルポリオール(b21)にラクトンモノマーを開環付加したもの;(3)前記低分子ポリオール(b1)及び/又はポリエーテルポリオール(b21)と炭酸ジエステル(炭酸ジメチル及び炭酸エチレン等)との縮合重合によるもの;並びにこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。上記におけるポリエーテルポリオール(b21)としては水酸基当量が500以下のものが好ましい。
【0022】
上記(1)におけるジカルボン酸の具体例としては、炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸及びフマル酸等)、炭素数8〜15の芳香族ジカルボン酸[テレフタル酸及びイソフタル酸等]及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられ、これらのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル及び酸ハライド(酸クロライド等)等]をジカルボン酸の代わりに使用することもできる。
【0023】
上記(2)におけるラクトンモノマーとしては、炭素数4〜12のラクトン、例えばγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0024】
ポリエステルジオール(b22)の具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(ジエチレングリコール)イソフタレートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0025】
ポリアミン(c)としては、炭素数4〜15の複素環式ポリアミン(c1)、炭素数2〜20のジアミン類(c2)及びポリアルキレンポリアミンのイミノ基のみにAOが付加したジアミン(c3)が挙げられる。
【0026】
炭素数4〜15の複素環式ポリアミン(c1)としては、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン及び1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等が挙げられる。これらの内、ポリウレタン樹脂(U)の溶剤溶解性の観点から好ましいのはN−アミノエチルピペラジンである。
【0027】
炭素数2〜20のジアミン類(c2)としては、例えば脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン及びデカメチレンジアミン等のアルキレンジアミン等)、脂環式ジアミン(ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン及びジフェニルエーテルジアミン等)及び芳香脂肪族ジアミン(キシリレンジアミン等)等が挙げられる。
【0028】
ポリアルキレンポリアミンのイミノ基のみにAOが付加したジアミン(c3)におけるポリアルキレンポリアミンとしては、ポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜6)ポリ(n=3〜7)アミン(ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等)等が挙げられる。これらの内、ポリウレタン樹脂(U)のアルコール溶解性の観点から好ましいのは、ポリ(n=2〜4)アルキレン(炭素数2〜4)ポリ(n=3〜5)アミン、更に好ましいのはポリ(n=2〜3)アルキレン(炭素数2〜3)ポリ(n=3〜4)アミン、特にジエチレントリアミンである。
【0029】
(c3)におけるAOとしては、炭素数2〜4のもの(EO、PO及び1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイド)及びこれらの混合物等が挙げられ、ポリウレタン樹脂(U)の溶剤溶解性の観点から好ましいのはEO、PO及びこれらの併用である。
【0030】
(c3)は、例えばポリアルキレンポリアミンの両末端のアミノ基をケトンと反応させてケチミンとし、イミノ基にAOを付加した後、ケチミン部分を加水分解することにより得ることができる。
【0031】
(c1)の割合は、(c)の重量に基づいて、オレフィン基材への接着性の観点から、少なくとも50重量%、好ましくは80〜100重量%である。
【0032】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)は、通常のポリウレタン樹脂の製造方法と同様にして、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(a)と、少なくともポリオール(b)及びポリアミン(c)を用いて製造することができる。
製造に際しては、(a)、(b)及び(c)を一括して反応させることもできるが、(a)と(b)を反応させて末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造した後、ポリアミン(c)を反応させる方法が好ましい。
【0033】
末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造する際の(a)と(b)の当量比[(a)/(b)]は、通常1.2/1〜10/1、好ましくは1.2/1〜5/1である。
【0034】
末端がイソシアネート基であるプレポリマーの製造に際しては、反応を促進するために、必要により、ポリウレタン樹脂の製造に通常用いられる触媒を使用することができる。このような触媒としては、有機金属化合物(例えばジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、オクタン酸鉛及びオクタン酸ビスマス)、3級アミン〔例えばトリエチレンジアミン、アルキル基の炭素数1〜8のトリアルキルアミン(トリエチルアミン等)、ジアザビシクロアルケン類(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等)〕及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。触媒の使用量は(a)と(b)の合計重量に基づいて通常2重量%以下、好ましくは0.001〜1重量%である。
【0035】
ポリウレタン樹脂(U)の製造において、必要により、反応停止剤を用いることができる。停止剤としては1価アルコール及びモノアミンが挙げられる。
1価アルコールの具体例としては、炭素数1〜10の脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、エチルセロソルブ及びエチルカービトール等)、炭素数6〜10の脂環式1価アルコール(シクロヘキサノール等)、炭素数7〜20の芳香環含有1価アルコール[ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルベンゼン;1価フェノール類(フェノール、クレゾール等)の(ポリ)オキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度1〜5)エーテル等]及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0036】
モノアミンの具体例としては、アルキル基の炭素数1〜10のモノ又はジアルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン及びジ−n−ブチルアミン等)、炭素数6〜10の脂環式モノアミン(シクロヘキシルアミン等)、炭素数6〜15の芳香環含有モノアミン(ベンジルアミン及びアニリン等)、炭素数4〜10の複素環式モノアミン(モルホリン等)、ヒドロキシアルキル基の炭素数2〜4のモノ又はジアルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらの内好ましいものは、脂肪族1価アルコール及びモノ又はジアルキルアミンである。
【0037】
また、反応を促進するため、必要により上記末端がイソシアネート基であるプレポリマーの製造方法において記載したものと同様の触媒を使用することができる。
【0038】
ポリウレタン樹脂(U)の製造に当たって、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(a)のNCO基と、高分子ジオール(b)、ポリアミン(c)及び必要により使用される反応停止剤の活性水素含有基の合計量との当量比は、通常0.7:1〜0.99:1、好ましくは0.8:1〜0.98:1である。
【0039】
また、ポリウレタン樹脂(U)の製造は、有機溶剤の存在下でも非存在下でも実施できる。
有機溶剤存在下での反応に使用できる有機溶剤としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラハイドロフラン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、アルコール類(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、多価アルコール誘導体(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、アミド類(ジメチルホルムアミド等)スルホキサイド類(ジメチルスルホキサイド等)及びこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。これらの内好ましいものはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、テトラハイドロフラン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル及びこれらの2種以上の混合溶剤である。有機溶剤の使用量は、ポリウレタン樹脂(U)と有機溶剤の重量比が、通常100/0〜10/90、好ましくは80/20〜20/80の範囲になる量である。
【0040】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)の重量平均分子量(以下、Mwと略記)[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ジメチルホルムアミドを溶媒とし、標準ポリスチレンを基準にして測定されるもの]は、溶剤への溶解性と乾燥後の樹脂物性の観点から好ましくは20,000〜100,000である。
【0041】
本発明の印刷インキは、本発明の印刷インキ用バインダーの他に副成分として、以下の樹脂(D)をバインダーとして含有することができる。(D)としては、例えば、本発明以外のポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体、マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂及びケトンレジン等が挙げられる。(D)の配合量は、印刷インキ用バインダーの総重量に基づき、好ましくは30%以下である。
【0042】
本発明の印刷インキを構成する顔料としては、一般に印刷インキで使用可能な有機又は無機の着色顔料又は体質顔料を用いることができる。これら顔料の含有量は、印刷インキの重量に基づいて、好ましくは1〜50重量%である。また、必要に応じて、耐摩耗性向上剤、可塑剤、架橋剤、インキ流動性、及び顔料分散性を改良するための界面活性剤等を添加することができる。
【0043】
本発明の印刷インキは、通常、印刷インキ用として知られている溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル系溶剤、n−ヘキサン及びn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、並びにシクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤が挙げられ、これらの2種以上の混合物として用いるのが好ましい。これら溶剤の使用量は、印刷インキの重量に基づいて、好ましくは20%以上である。
【0044】
本発明の印刷インキは、ボールミル、アトライター及びサンドミル等の通常の印刷インキ製造装置を用いて上記の成分を混練することにより製造することができる。
【0045】
本発明の印刷インキ用バインダーは、ポリエステル、ナイロン及びポリオレフィン等の各種プラスチックフィルムとの接着性に優れるので、これらフィルムの印刷インキ用バインダーとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を以て本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を示す。
【0047】
[印刷インキ用バインダーの製造]
実施例1
攪拌装置を備えた反応容器に、ポリネオペンチレンアジペートジオール[三洋化成(株)製「サンエスター5620」:水酸基価=56.1]200部、水添MDI 26部及びHDI 17部を仕込み、窒素雰囲気下110℃で5時間反応させ、NCO含量が3.5%のウレタンプレポリマーを得た。40℃に冷却後、酢酸エチル397部を加え均一な溶液とした。次にイソプロパノール201部を加えて均一になるまで撹拌後、N−アミノエチルピペラジン13部を加え、40℃で1時間反応させて本発明の印刷インキ用バインダーであるポリウレタン樹脂(U−1)の溶液を得た。(U−1)のMwは41,000であった。
【0048】
実施例2
攪拌装置を備えた反応容器に、ポリネオペンチレンアジペートジオール[三洋化成(株)製「サンエスター5620」:水酸基価=56.1]200部及びIPDI 45部を投入し、窒素雰囲気下110℃で5時間反応させ、NCO含量が3.5%のウレタンプレポリマーを得た。40℃に冷却後、酢酸エチル400部を加え均一な溶液とした。次にイソプロパノール208部を加えて均一になるまで撹拌後、N−アミノエチルピペラジン8.7部とイソホロンジアミン6.7部を加え、40℃で1時間反応させて本発明の印刷インキ用バインダーであるポリウレタン樹脂(U−2)の溶液を得た。(U−1)のMwは39,000であった。
【0049】
比較例1
N−アミノエチルピペラジン8.7部とイソホロンジアミン6.7部の代わりに、イソホロンジアミン16部を用いたこと以外は実施例2と同様にして、比較用の印刷インキ用バインダーであるポリウレタン樹脂(U’−1)の溶液を得た。(U’−1)のMwは38,000であった。
【0050】
比較例2
水添MDI 26部とHDI 17部の代わりに、トリレンジイソシアネート(TDI)35部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較用の印刷インキ用バインダーであるポリウレタン樹脂(U’−2)溶液を得た。(U’−2)のMwは45,000であった。
【0051】
[印刷インキの製造及び評価]
実施例3〜4及び比較例3〜4
上記で得られたポリウレタン樹脂(U−1)若しくは(U−2)の溶液又は比較用のポリウレタン樹脂(U’−1)若しくは(U’−2)の溶液30部、酸化チタン(ルチル型)90部、トルエン150部及びガラスビーズ150部からなる混合物をペイントコンディショナー(レッドデビル社製)にて1時間混練して印刷インキを作製した。
【0052】
比較例5
(U−1)の溶液30部の代わりに(U’−1)の溶液15部と塩素化ポリプロピレンの溶剤溶液[日本製紙(株)製「スーパークロン892L」:塩素含有率22%(対樹脂分)、樹脂分20%]23部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、印刷インキを作製した。
【0053】
得られた印刷インキについて、以下の試験方法により接着性を評価した結果を表1に示す。
【0054】
[接着性の試験方法]
表面処理ポリプロピレンフィルム(OPP)、表面処理ポリエステルフィルム(PET)及び表面処理ナイロンフィルムにインキを固形分で2〜3μmの厚みになるようにバーコーターで塗布し、60℃で1分間乾燥後、塗布面にセロハンテープ(ニチバン製、12mm巾)を貼り、このセロハンテープの一端を塗面に対して、垂直方向に急速に引き剥がしたときの塗布面状態を観察して以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:インキが全く剥がれない。
○:インキが80%以上残る。
×:インキの残りが80%未満。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の印刷インキ用バインダーは、非塩素系であり環境汚染の恐れが無く、しかもポリエステル、ナイロン及びポリオレフィン等の多種類のフィルムに対して接着性に優れるので、各種のフィルムに汎用的に使用できる印刷インキ用のバインダーとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(a)と、少なくともポリオール(b)及びポリアミン(c)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(U)からなる印刷インキ用バインダーであって、前記ポリアミン(c)の少なくとも50重量%が複素環式ポリアミン(c1)であることを特徴とする印刷インキ用バインダー。
【請求項2】
前記(a)がイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートである請求項1記載の印刷インキ用バインダー。
【請求項3】
前記複素環式ポリアミン(c1)が、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン及び1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の複素環式ポリアミンである請求項1又は2記載の印刷インキ用バインダー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキ。

【公開番号】特開2013−28684(P2013−28684A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164626(P2011−164626)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】