説明

印刷インキ組成物

【課題】本発明は、非塗工紙および微塗工紙などの低密度の用紙にオフセット印刷してなる印刷物の製造において、オフセット印刷インキ用黒色顔料に関し、青味を有し且つ高漆黒度を有するインキ用カーボンブラックを提供するものである。
【解決手段】本発明は、カーボンブラック5〜40重量%、バインダー樹脂20〜50重量%、溶剤成分として植物油類及び鉱物油類の単独または2種類以上の組み合わせが20〜70重量%からなる平版印刷用インキ組成物において、カーボンブラックの比着色力が50〜80%、窒素吸着比表面積が30〜50m/g、DBP吸油量が100〜140cm/100gであることを特徴とするオフセット印刷用インキである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非塗工紙および微塗工紙などの低密度用紙に、オフセット印刷することにおいて、それに使用されるオフセット印刷用インキおよびそれを用いて印刷される印刷物に関する。さらに、詳しくは、オフセット印刷用墨インキにおいて、青味を有し且つ高漆黒度の色調を有するオフセット印刷用インキおよび印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷用墨インキでは顔料としてカーボンブラックが用いられるのが一般的である。オフセット印刷では印刷後の紙上におけるインキ膜厚が薄くなるため、印刷濃度を確保するためにカーボンブラックの配合率が通常15〜25%と高い。また、印刷画線の色相は赤味あるいは黄味がかった色相を呈するが、この色相は印刷インキとしては好まれず、色相を青味に調整するために高価な青色顔料あるいは染料を添加させてコントロールしている(非特許文献1、2)。
【0003】
オフセット印刷用墨インキに使用されるカーボンブラックは一次(基本)粒子と呼ばれる球状のカーボン粒子が融着し連鎖状あるいは不規則な鎖状に枝分かれした複雑な凝集形態を示しており、ぶどうの房に例えられる凝集体を形成している。この凝集体をアグリゲートと呼び、このアグリゲートを形成している一次粒子の融着の程度をストラクチャーと呼んでいる。インキビヒクル中にカーボンブラックを分散させた場合においては、アグリゲートよりも細かく分散することは不可能とされている(非特許文献2、3)。
【0004】
オフセット印刷の中でも高品質を要求されるインキでは高い光沢を要求されるため、インキを薄膜とした場合にもインキ膜表面の平滑度を高くするためにアグリゲート径が小さいカーボンブラックが選択される。しかし、非塗工紙および微塗工紙といった低密度の用紙に対して印刷を行うインキにおいては、カーボンブラックがインキビヒクルとともに用紙の内部に沈み込んでしまい印刷濃度が維持できないため、アグリゲート径の大きいカーボンブラックを選択する必要がある(非特許文献3)。
【0005】
球状のカーボン粒子がぶどう状に連なっているカーボンブラックの構造から考えた場合、アグリゲート径の大きいカーボンブラックを選択するには、一次粒子径およびストラクチャーに着目すればよい(非特許文献3)。すなわち、一次粒子径およびストラクチャーを大きくすれば、アグリゲート径が結果として大きくなり、黒色度が高いオフセット印刷が可能となる。
【0006】
一次粒子を大きくした場合、ストラクチャーが同一であってもアグリゲート径は相対的に大きくなる。一次粒子径の大きさは、窒素吸着法により測定されるカーボンブラックの比表面積により評価することができる。この窒素吸着法により測定された比表面積は、一次粒子径とほぼ反比例の関係であり、一次粒子径が大きい場合には、比表面積は小さくなる。しかしながら、一次粒子径が大きい、すなわち、比表面積の小さいカーボンブラックを用いたインキで印刷を行った場合、印刷画線の色相は良好な青味色相を呈するが、その一方、ドライダウンと呼ばれるインキが乾燥していく過程で印刷濃度が低下して印刷直後と乾燥後で画線の印刷濃度に差が生じる現象の程度が大きく、乾燥後の印刷物において黒色度の不足が問題となりやすい(非特許文献3)。
【0007】
このドライダウンを防ぐ目的で、基材である紙の加工を行う方法、例えば、特開平6−192996号公報、特開平10−131089号公報、特開2002−327393号公報等に開示されているが、何れもドライダウンには、効果があると思われるが、特殊な紙基材であり、生産性、コストにおいて実用的ではない。
【0008】
また、ストラクチャーを大きくすると、一次粒子径が同一であってもアグリゲート径は相対的に大きくなる。ストラクチャーの大きさは、フタル酸ジブチル(本発明において、DBPと略す。)吸油量測定法により評価することができる。すなわち、ストラクチャーが大きいとDBP吸油量は大きくなる。DBP吸油量の高いカーボンを用いたインキで印刷を行った場合、ドライダウンが少なくなり、乾燥後の印刷物でも良好な印刷濃度を維持できるためインキの品質としては、有利である。しかし、DBP吸油量の高いカーボンを使用する場合には、印刷画線の色相が黄味色相を呈するため、色相を青味とするために高価な青色顔料または染料を添加しなければならずコストを上昇させる要因となっている。そのため、カーボンブラックに代わる特殊な黒色顔料を使用する方法が、特開2002−265837号公報に開示されているが、カーボンブラックに比較して高価であり、実用性が乏しい。
【0009】
これらの問題を解消する手段のひとつとして、粒子径の大きいカーボンブラックとストラクチャーの大きいカーボンブラックを併用して用いられることがある(例えば、特開平7−18200号公報実施例2)が、大量に生産を行う場合にカーボンブラック用のサイロが複数必要であり、計量作業が煩雑になる等、印刷インキ生産における設備面や工程上の負荷が必要となる。
【0010】
また、粒子径およびストラクチャーの双方を大きいカーボンを使用した場合は、アグリゲート径が大きくなりすぎるため、印刷画線におけるインキ膜厚の薄いオフセット印刷においては必要な分散性を維持できず、また、著しい光沢の劣化や印刷時に版やガイドローラー等にカーボン粒子が堆積する問題が発生するため好ましくない。
【0011】
さらに、特開平7−18200号公報および特開平8−176463号公報には、印刷インキ用カーボンブラックが開示されており、しかもこの印刷インキ用のカーボンブラックを使用した平版新聞オフセット輪転インキの調製を行っているが、この特開平7−18200号公報および特開平8−176463号公報には、インキに必要な樹脂成分として「樹脂ワニス」としか記述がなく、実質的に印刷用インキおよびその製造方法さらに製造された印刷インキにより形成された印刷物について、何ら開示されておらず、開示されているインキ適性等に疑義が持たれる。
【0012】
また、特開平11−349311号公報には、多環芳香族成分含有量が少ない鉱物油に分散性の良好なカーボンブラックが開示されているが、インキを製造した場合に単純にこのような鉱物油に分散性が良いだけでは、インキとしての物性が良いとは限らない。
【0013】
さらに、本発明のような墨顔料としてカーボンブラックを、樹脂ワニスとしてロジン変性フェノール樹脂を使用した例としては、以下の例が挙げられる。
【0014】
すなわち、特開平9−25444号公報には、墨顔料としてカーボンブラックを、樹脂ワニスとしてロジン変性フェノール樹脂を使用し、さらに、顔料分散剤を用いたオフセット印刷用墨インキ組成物を用いる例が、開示されている。しかしながら、印刷インキの安定性(分散性)は、向上するが、単純にカーボンブラックを選定するだけでは、高品質の印刷物を得ることができない。
【0015】
また、特開2004−269572号公報には、特定の物性を有するカーボンブラックおよび樹脂ワニスにより製造される印刷インキが開示されているが、カーボンブラックの物性としてDBP吸収量(吸油量)が、30〜65(cm/100g)であると規定されているが、DBP吸油量が80(cm/100g)以下である場合に、非塗工紙または微塗工紙に印刷すると、ドライダウンが大きく、印刷後の黒色度不足が起こる可能性がある。
【0016】
さらに、特開2004−107585号公報には、特定の物性を有するカーボンブラックおよび樹脂ワニスから製造されるインキ組成物が、開示されている。しかしながら、樹脂ワニスとして、ロジン変性フェノール樹脂が、開示されているものの、DBP吸油量および粒子径だけでは、高品質を要求されるインキとしては使用できず、しかも、開示されている粒子径では、非塗工紙または微塗工紙に印刷した場合に、印刷濃度が維持できない。
【0017】
また、特開2002−322407号公報、特開2002−322408号公報、特開2002−327143号公報には、カーボンブラックと常温で固体の樹脂ワニスとを予め乾式粉砕を行い、溶剤等を加えて混合して製造する方法が開示されている。しかも、特定のカーボンブラックを使用することが記載されているが、これらのカーボンを使用し、この製造方法を行った場合には、ストラクチャーが破壊され、非塗工紙または微塗工紙等の低級紙用途としては、適切ではない。
【0018】
一般に、カーボンブラックは、アグリゲート径が小さいほど黒色度が高くなるが、アグリゲート径が小さくなるほど流動性が悪くなる。そのため、特開2001−72912号公報には、アミノシランによるカーボンブラックの表面処理方法が開示されているが、カーボンブラックの分散性は向上するが、インキの乾燥性は低下する問題がある。
【0019】
さらに、特開2001−192584号公報には、表面処理を行わずに、表面酸化処理したカーボンブラックの欠点である乾燥性に劣るという点を改善した表面処理を行わないで、カーボンブラックを製造する方法および印刷インキ組成物が開示されている。しかしながら、製造されているカーボンブラックのDBP吸油量がすべて80(cm/100g)以下であり、この場合に、非塗工紙または微塗工紙に印刷すると、ドライダウンが大きく、印刷後の黒色度不足が起こる可能性がある。
【0020】
また、特開2006−282774号公報には、カーボンブラックの比着色力:80〜95(%)、DBP吸油量:80〜120(cm/100g)、窒素吸着比表面積:60〜120(m/g)を使用した青味色相を有するオフセット印刷用墨インキが開示されているが、青味色相に対して不十分である。
【0021】
現状では、カーボンブラック単独ではなく、高価な青色補色顔料を添加させ、黒色感を増長することで、印刷インキの色調をコントロールしているが、補色顔料による印刷インキのコストアップは大きい。そのため、補色顔料を添加すること無しに、青味色調を呈するカーボンブラックを使用したオフセット印刷用インキが求められており、非塗工紙および微塗工紙などの低密度用紙にオフセット印刷してなる印刷物および製造方法の開発が望まれている。それにより、高価な補色顔料の減量が可能となりコストダウンが達成できる。
【非特許文献1】「印刷と紙2000」平成12年3月5日発行、発行所紙業タイムス社
【非特許文献2】「カーボンブラック年鑑No.54(2004)」 カーボンブラック協会編
【非特許文献3】「カーボンブラック便覧」平成7年4月15日、第三版、編集発行者カーボンブラック協会
【特許文献1】特開平6−192996号公報
【特許文献2】特開平10−131089号公報
【特許文献3】特開2002−327393号公報
【特許文献4】特開2002−265837号公報
【特許文献5】特開平7−18200号公報
【特許文献6】特開平8−176463号公報
【特許文献7】特開平11−349311号公報
【特許文献8】特開平9−25444号公報
【特許文献9】特開2004−269572号公報
【特許文献10】特開2004−107585号公報
【特許文献11】特開2002−322407号公報
【特許文献12】特開2002−322408号公報
【特許文献13】特開2002−327143号公報
【特許文献14】特開2001−72912号公報
【特許文献15】特開2001−192584号公報
【特許文献16】特開2006−282774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、非塗工紙および微塗工紙といった低密度の用紙にオフセット印刷してなる印刷物を提供することにあり、オフセット印刷用インキとして、カーボンブラックの配合量を多くし、インキ粘度を上昇することなく黒色感を維持し、且つ高価な補色顔料を添加することなく、特定のカーボンブラックを含有させることで、青味色調を有するオフセット印刷用インキを提供することにある。そのことにより、補色顔料の減量あるいは添加する必要がなくなることが可能となり、コストダウンが達成できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者ら鋭意検討した結果、特定のカーボンブラック、ロジン変性フェノールおよび溶剤を含有させたオフセット印刷用インキは、高価な補色顔料を添加することなく、青味色調を有することを見出し、本発明を完成した。
【0024】
すなわち、本発明は、比着色力:50〜80(%)、DBP吸油量:100〜140(cm/100g)、窒素吸着比表面積:30〜50(m /g)であるカーボンブラック、ロジン変性フェノール樹脂および溶剤を含有することを特徴とするオフセット印刷用インキである。
【0025】
また、溶剤が、石油系溶剤、植物油類から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記のオフセット印刷用インキである。
【0026】
さらに、石油系溶剤のアニリン点が65〜110(℃)であることを特徴とする上記のオフセット印刷用インキである。
【0027】
また、植物油類が大豆油、ヤシ油、アマニ油、菜種油から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記のオフセット印刷用インキである。
【0028】
また、ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量が、10,000〜400,000であることを特徴とする上記のオフセット印刷用インキである。
【0029】
さらに、ロジン変性フェノール樹脂のノルマルヘプタントレランスが1ml〜40mlであることを特徴とする上記のオフセット印刷用インキである。
【0030】
また、浸透乾燥型であることを特徴とする上記のオフセット印刷用インキである。
【0031】
さらに、上記のオフセット印刷用インキを非塗工紙または微塗工紙に印刷してなる印刷物である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によって、印刷適性に優れ、青味色相を有し、且つ高漆黒度を有するオフセット印刷用インキを得ることができる。すなわち、本発明の特定のカーボンブラックを含有するオフセット印刷用インキは、補色顔料を添加すること無しに、青味色調を有し、且つ高漆黒度の色調を達成できることから、高価な補色顔料の含有量を、低減あるいは含有させる必要がなくなることが可能となった。しかも、本発明のオフセット印刷用インキは、非塗工紙および微塗工紙などの低密度用紙にも適用可能で、さらに、印刷物の品位は、高く、本発明の工業的価値は、甚大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明におけるカーボンブラックは、比着色力が50〜80%、窒素吸着比表面積が30〜50m/g、DBP吸油量が100〜140cm/100gである。窒素吸着表面積が50m/gを超えると赤み色相が強くなり、DBP吸油量が100cm/100g未満になると濃度が出にくくなり、漆黒感が薄れるため好ましくはない。尚、本発明における比着色力、DBP吸油量、窒素吸着比表面積はいずれもJISK6217に準拠して定義されたものである
本発明に用いるカーボンブラックは上記性状を満たすものであれば形状は粉状あるいは粒状を問わず使用することができる。
【0034】
粒状のカーボンブラック種の中では、ASTM D1765−01で規定されるN539及びN550が比着色力50〜80%、窒素吸着比表面積30〜50m/g、DBP吸油量100〜140cm/100gに当てはまり好ましい。
【0035】
本発明で使用される樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂以外に、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂及び石油樹脂等は任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。樹脂の重量平均分子量としては、10,000〜400,000のものが好ましい。重量平均分子量10,000未満ではインキの粘弾性が不足し、400,000を超えるとインキとしての流動性が不充分となる。
【0036】
本発明におけるノルマルヘプタントレランスは、ビーカーに樹脂1gを秤量しトルエン9gに常温で溶解させ、ノルマルヘプタンをビュレットにて滴下していき、溶液が白濁しビーカー下の新聞紙活字が判定出来なくなるまでのノルマルヘプタン滴下量を測定することによって得られる。本発明に用いるロジン変性フェノール樹脂は、ノルマルヘプタントレランスが1ml〜40mlが好ましく、さらに好ましくはノルマルヘプタントレランスが5ml〜35mlが良い。ノルマルヘプタントレランスが1ml以下だとインキの流動性が悪くなり着肉が悪化し、40ml以上だと粘弾性が強くなり地汚れ性が悪化する。
【0037】
上記樹脂(ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキッド及び石油樹脂等)は石油系溶剤、植物油類から選ばれる少なくとも一種である溶剤と、場合によってはアルミニウムキレート化合物のようなゲル化剤を添加して、190℃程度で溶解してワニス化したものとして使用される。樹脂の添加量は印刷インキ組成物の全量に対して20%〜50重量%である。
【0038】
本発明における植物油類とは植物油並びに植物油由来の化合物であり、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセライドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセライドと、それらのトリグリセライドから飽和または不飽和アルコールとをエステル反応させてなる脂肪酸モノエステルが挙げられる。
【0039】
植物油として代表的ものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。特に大豆油、ヤシ油、アマニ油、菜種油が好ましい。
【0040】
本発明において、使用される植物油エステルとしては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油、菜種油等の植物油由来の脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、モノアルキルエステル化合物が挙げら、モノエステルを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が例示できる。脂肪酸モノエステルを構成するアルコール由来のアルキル基は、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基が例示できる。これら脂肪酸モノエステルは、単独で、または2種以上を組合わせて使用でき、本発明においては、植物油成分として、植物油、脂肪酸エステルをそれぞれ単独で用いてもよく、両者を併用しても良い。溶剤の添加量としては、インキ中10〜50重量%が好ましい。
【0041】
本発明で使用される石油系溶剤としては、パラフィン系、ナフテン系のであり、これらの混合溶剤であり、溶剤中の芳香族炭化水素の含有量が1重量%以下が好ましい。溶剤のアニリン点は65℃〜110℃が好ましい。アニリン点が110℃より高い溶剤を使用すると、インキ組成中の使用樹脂との溶解性が乏しいため、インキの流動性が不十分となり、レベリング不良から光沢のない印刷物しか得られない。また、65℃より低いアニリン点の溶剤を使用したインキでは、乾燥時のインキ皮膜からの溶剤の離脱性が悪く乾燥劣化を起こしてしまう場合がある。
【0042】
本発明においては、カーボンブラックをワニスに分散させる際に有機ベントナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、シリカといったカーボンブラック以外の顔料を添加することも可能であり、添加を行っても同様の効果が得られる。
【0043】
本発明で使用する他の助剤としては、分散剤、ゲル化剤、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦剤(ワックス)等の添加剤を適宜用いることができる
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもではない。なお、以下の例中、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」「重量%」を示す。
【0045】
カーボンブラックAは、昭和キャボット(株)のショウブラックN550(比着色力:62%、窒素吸着比表面積:42m/g、DBP吸油量:115cm/100g)のビーズカーボンを使用した。
【0046】
カーボンブラックBは、三菱化学(株)のミツビシカーボンブラック#32(比着色力:113%、窒素吸着比表面積:85m/g、DBP吸油量:100cm/100g)のパウダーカーボンを使用した。カーボンBは赤味色相の強いカーボンで、カーボンAとの比較例として選んだ。
〔オフセット用ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスAの製造〕
コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製:重量平均分子量22.4万、軟化点178℃、樹脂粘度42Pa・s)45.0部、大豆油15部、AFソルベント5(新日本石油(株)製、アロマフリーインキソルベント、アニリン点88.2℃)39.5部を仕込み、180℃に昇温して、同温で30分間攪拌した後、放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド0.5部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み、180℃で30分間攪拌してオフセット用ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスA(以下ゲルワニスAと称す)を得た。
〔オフセット用ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスBの製造〕
コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製:重量平均分子量8.0万、軟化点170℃、樹脂粘度15Pa・s)50.0部、大豆油15部、AFソルベント5を34.5部仕込み、180℃に昇温して、同温で30分間攪拌した後、放冷し、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド0.5部を仕込み、180℃で30分間攪拌してオフセット用ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスB(以下ゲルワニスBと称す)を得た。
〔インキ作成例〕
表1の配合にて、常法に従い三本ロールを用いて、粘度が45.0Pa・s〜50.0Pa・sになるようにインキを作成し、実施例1〜2及び比較例1〜2とした。
【0047】
【表1】

【0048】
インキ評価(濃度 b値)
色相評価については、RIテスターを使用して更紙(非塗工紙)に展色することにより展色刷を作成。グレタグ社製分光光度計SpectroEyeでの展色濃度が1.00〜1.01のとき、および1.10〜1.11のときのb値を測定した。尚、b値の値が高いと黄味色相が強いこと示し、b値の値が低いと青味色相が強いことを示す。
本発明に係わる実施例1〜2は、比較例1〜2よりもb値が低く青味色相が強いことが認められた(表2)。
【0049】
インキ評価(漆黒感)
漆黒感については、目視による展色刷の評価を行った。漆黒感が強いほど点数を高く、弱くなるほど低い点数をつけた。
本発明に係わる実施例1〜2の展色刷は、比較例1〜2の展色刷よりも漆黒感が強いことが認められた(表2)。
【0050】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、オフセット印刷用インキのカーボンブラックとして補色顔料を添加することなく青味色調を有するインキ組成物であり、カーボンブラックの配合量を変えることで目的に応じた色調のインキ組成物を作成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比着色力50〜80(%)、DBP吸油量100〜140(cm/100g)および窒素吸着比表面積30〜50(m /g)であるカーボンブラック、ロジン変性フェノール樹脂および溶剤を含有することを特徴とするオフセット印刷用インキ。
【請求項2】
溶剤が、石油系溶剤、植物油類から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用インキ。
【請求項3】
石油系溶剤のアニリン点が65〜110(℃)であることを特徴とする請求項1または2記載のオフセット印刷用インキ。
【請求項4】
植物油類が大豆油、ヤシ油、アマニ油、菜種油から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3何れか記載のオフセット印刷用インキ。
【請求項5】
ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量が、10,000〜400,000であることを特徴とする請求項1〜4何れか記載のオフセット印刷用インキ。
【請求項6】
ロジン変性フェノール樹脂のノルマルヘプタントレランスが1ml〜40mlであることを特徴とする請求項1〜5何れか記載のオフセット印刷用インキ。
【請求項7】
浸透乾燥型であることを特徴とする請求項1〜6何れか記載のオフセット印刷用インキ。
【請求項8】
請求項1〜7何れか記載のオフセット印刷用インキを非塗工紙または微塗工紙に印刷してなる印刷物。

【公開番号】特開2008−163063(P2008−163063A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350786(P2006−350786)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】