説明

印刷サーバ及び印刷システム

【課題】より簡単で安価な構成により印刷コストを低減可能にする。
【解決手段】印刷サーバ側のプリンタドライバにより、ユーザIDと印刷条件制限とを対応付けた印刷条件制限テーブルTBLから、印刷ジョブデータのヘッダに含まれるユーザIDに対応した印刷条件を読み出し(S10、S11)、該ヘッダに含まれる印刷条件がこの印刷条件制限を満たすように、該印刷条件を変更し(S14〜S25)、この変更を電子メールでユーザに通知する(S28)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー/モノクロや両面/片面などの印刷条件を設定に基づき強制変更する機能を備えた印刷サーバ及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、企業等で印刷コスト低減のために、例えば下記特許文献1に開示されているように、ユーザやグループの印刷枚数等を制限することが行われている。
【特許文献1】特開2008−65608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の印刷制御システムでは、クライアント側とサーバ側の両方に管理プログラムを配置して両者間で連携をとる必要があり、また、プリンタドライバに関するSDK(SoftwareDevelopers Kit)を用いて管理システムを開発しなければならないので、コスト高になり、特に小規模企業等ではこのシステムの採用に至らない場合が生ずる。
【0004】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、より簡単で安価な構成により印刷コストを低減可能な印刷サーバ及びこれを備えた印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様では、印刷条件を含む印刷ジョブデータを受信し、該印刷ジョブデータをプリンタドライバでPDLデータに変換して画像形成装置に送信する印刷サーバにおいて、
ユーザ識別情報と印刷条件制限とを対応付けた制限情報をさらに備え、
該プリンタドライバは、CPUに対し、該変換前に、該印刷ジョブデータに含まれるユーザ識別情報に対応した印刷条件制限を該制限情報から読み出させ、該印刷ジョブデータに含まれる印刷条件がこの印刷条件制限を満たすように、該印刷条件を変更させる。
【0006】
本発明による印刷サーバの第2態様では、第1態様において、該制限情報はさらに、ユーザ識別情報と対応付けられた電子メールアドレスを含み、
該プリンタドライバは、該CPUに対しさらに、該印刷ジョブデータに含まれる該印刷条件を変更した場合には、そのユーザ識別情報の電子メールアドレス宛に、該印刷条件を変更したことを示す内容の電子メールを送信させる。
【発明の効果】
【0007】
上記第1態様の構成によれば、サーバ側プリンタドライバにより、ユーザ識別情報と印刷条件制限とを対応付けた制限情報から、該印刷ジョブデータに含まれるユーザ識別情報に対応した印刷条件を読み出し、該印刷ジョブデータに含まれる印刷条件がこの印刷条件制限を満たすように、該印刷条件を変更すればよいので、従来よりも簡単で安価な構成により、印刷コストを低減可能であるという効果を奏し、特に、小規模ユーザによる印刷条件制限利用拡大に寄与するところが大きい。
【0008】
また、各ユーザの印刷条件制限を変えるには制限情報のみ変更すればよいので、管理コストを低減できるという効果を奏する。
【0009】
上記第2態様の構成によれば、既存通知手段で印刷条件強制変更の内容をユーザが確認できるという効果を奏する。
【0010】
本発明の他の目的、構成及び効果は以下の説明から明らかになる。
【実施例1】
【0011】
図5は、本発明の印刷サーバが適用された印刷システムの概略ブロック図である。
【0012】
印刷サーバ10では、CPU11がインターフェイス12を介してPROM13、DRAM14、補助記憶装置15及びNIC(ネットワーク・インターフェイス)16に結合されている。図5では簡単化のために、複数のインターフェイスを1つのブロック12で表している。
【0013】
PROM13は、例えばフラッシュメモリであり、これにはBIOSが格納されている。
【0014】
DRAM14は、仮想記憶方式の主記憶装置として用いられる。
【0015】
補助記憶装置15には、仮想記憶方式のOS(オペレーティングシステム)、プリンタドライバを含む各種デバイスドライバ、及び、印刷サーバプログラム並びに印刷条件制限テーブルTBLを含む各種データが格納されている。
【0016】
この印刷サーバ10と、このサーバに対するクライアントとしての複数台のPC20、PC21、・・・と、画像形成装置30とが、有線又は無線の通信媒体COMを介し結合されて、LANが構成されている。
【0017】
画像形成装置30は、プリントエンジン並びに用紙の給紙部、搬送部及び排紙部を備え、供給されるPDLデータをビットマップ展開し、これに基づいて感光ドラムに静電潜像を形成し、この像をトナーで現像し、トナー像を用紙に転写し定着させ、排紙する。
【0018】
図3は、図5のシステムの一部を示す概略機能ブロック図である。
【0019】
ユーザはPC20で、アプリケーション22を起動させ、入力装置を対話的に操作して文書等を作成し、GUIで印刷設定を行った後に、印刷開始釦をクリックする。CPUはアプリケーション22に従って、OSのライブラリであるGDI(Graphics Device Interface)23を介しプリンタドライバ24に、GDIデータを供給させる。プリンタドライバ24は、このCPUに対し、図4(A)に示す如く、GDIデータにヘッダを付加させて、印刷ジョブデータを生成させ、スプーラ25へ供給させる。
【0020】
このヘッダの情報は、アプリケーション22と連携したプリンタドライバ24のGUI部により、上記印刷設定において設定されるものである。ヘッダには、アプリケーション22で生成された文書等を印刷する場合に、文書等のデータがカラーであってもモノクロ印刷するか否か、用紙の片面に印刷するか両面に印刷するか、物理的1頁に論理的複数頁を集約して印刷するか否か、再生紙又は普通紙等の用紙タイプ、及び、印刷部数等の印刷条件と、ユーザIDとが含まれている。
【0021】
図3に戻って、スプーラ25はCPUに対し、プリンタドライバ24からの印刷ジョブデータを順次受け付けさせて一時記憶させ、通信部26を介し印刷サーバ10がレディー状態であることを確認させ、受付順に、印刷ジョブデータを印刷サーバ10へ送信させる。
【0022】
印刷サーバ10は、PC20の通信部26、スプーラ25及びプリンタドライバ24に対応してそれぞれ通信部17、スプーラ18及びプリンタドライバ19を備えている。通信部17は、図5のNIC16と、通信ドライバとで構成されている。この点は、通信部26についても通信部17と同様である。
【0023】
スプーラ18は、CPUに対し、通信部17からの印刷ジョブデータを順次受け付けさせてジョブナンバーを付与させ、補助記憶装置15に一時記憶させ、順次プリンタドライバ19へ供給させる。
【0024】
ここで、印刷サーバ10の補助記憶装置15には、図4(B)に示すような印刷条件制限テーブルTBLが格納されている。この印刷条件制限テーブルTBLは、ユーザID及び電子メールアドレスのそれぞれのフィールドと、印刷条件制限情報としての「モノクロ」、「両面」、「集約」及び「再生紙」のそれぞれのフィールドとを備えている。
【0025】
各印刷条件制限情報は、ブーリアン型で表されている。例えば、「モノクロ」がYesであれば、このユーザIDの印刷ジョブに関してはそのヘッダに印刷条件としての印刷モードが「カラー」であっても、これを「モノクロ」に強制的に変更することを意味する。
【0026】
図3のプリンタドライバ19は、CPU11に対し、図1に示すような処理を実行させる。この処理において、ステップS2は従来の処理であり、CPU11に対し、GDIデータを、画像形成装置30が解釈可能なPDL(ページ記述言語)データに変換させ、スプーラ18及び通信部17を介し画像形成装置30に送信させる。
【0027】
本実施例1の特徴は、このステップS2の処理の前に、ステップS0とステップS1の処理を付加した点である。図2は、図1のステップS0の処理の詳細フローチャートである。以下、括弧内は図中のステップ識別符号である。
【0028】
(S10)図4(A)の印刷ジョブデータに含まれているヘッダを読取る。
【0029】
(S11)このヘッダに含まれているユーザIDで、図4(B)の印刷条件制限テーブルTBLを検索する。
【0030】
(S12)フラグFr0〜Fr3及びFuを共に初期化(リセット)する。
【0031】
(S13)ステップS11での検索がヒットした場合にはステップS14へ進み、そうでなければステップS26へ進む。
【0032】
(S14)ヘッダに含まれている印刷モードがカラーであればステップS15へ進み、そうでなければステップS17へ進む。
【0033】
(S15)検索結果の行データの「モノクロ」フィールドがYesであればステップS16へ進み、そうでなければステップS17へ進む。
【0034】
(S16)ヘッダに含まれている印刷モード「カラー」を「モノクロ」に強制的に変更し、フラグFr0をセットして、ステップS17へ進む。
【0035】
(S17)ヘッダに含まれている印刷面が「片面」であればステップS18へ進み、そうでなければステップS20へ進む。
【0036】
(S18)検索結果の行データの「両面」フィールドがYesであればステップS19へ進み、そうでなければステップS20へ進む。
【0037】
(S19)ヘッダに含まれている印刷面「片面」を「両面」に強制的に変更し、フラグFr1をセットして、ステップS20へ進む。
【0038】
(S20)ヘッダに含まれているレイアウトモードが「1in1」(物理1頁に論理1頁を配置)であればステップS21へ進み、そうでなければステップS23へ進む。
【0039】
(S21)検索結果の行データの「集約」フィールドがYesであればステップS22へ進み、そうでなければステップS23へ進む。
【0040】
(S22)ヘッダに含まれているレイアウトモード「1in1」を「4in1」(物理1頁に論理4頁を配置)に強制的に変更し、フラグFr2をセットして、ステップS23へ進む。
【0041】
(S23)ヘッダに含まれている用紙タイプが「再生紙」以外であればステップS24へ進み、そうでなければステップS27へ進む。
【0042】
(S24)検索結果の行データの「再生紙」フィールドがYesであればステップS25へ進み、そうでなければステップS27へ進む。
【0043】
(S25)ヘッダに含まれている用紙タイプを「再生紙」に強制的に変更し、フラグFr3をセットして、ステップS27へ進む。
【0044】
(S26)フラグFuをセットし、ステップS27へ進む。
【0045】
(S27)フラグFr0〜Fr3又はFuの何れかがセットされていればステップS28へ進み、そうでなければ図2の制限処理を終了して図1のステップS1へ進む。
【0046】
(S28)フラグFr0〜Fr3の少なくとも1つが‘1’であればそれぞれ「モノクロ」、「両面」、「集約」、「再生紙」に印刷条件を変更したことを内容とする電子メールを、ステップS11での検索結果の「E−Mail」フィールドのアドレス宛に、電子メールを送信する。フラグFuが‘1’であれば未登録ユーザであることを示す内容の電子メールをこの宛先へ同様に送信する。
【0047】
(S1)Fu=‘1’であればステップS2をスキップすることにより、画像形成装置30での印刷を行わない。
【0048】
図3に戻って、通信部31は、通信部17と同様に構成されている。RIP(Raster Image Processor)32は、受信したPDLデータをビットマップ展開して印刷出力部33に供給し、印刷出力部33はこれに応答して用紙に画像を形成し排紙する。
【0049】
本実施例1によれば、印刷サーバ10側のプリンタドライバ19により、印刷ジョブデータのヘッダに含まれるユーザIDに対応した印刷条件制限を印刷条件制限テーブルTBLから読み出し、該ヘッダに含まれる印刷条件がこの印刷条件制限を満たすように、該印刷条件を変更すればよいので、従来よりも簡単で安価な構成により、印刷コストを低減可能であるという効果を奏する。
【0050】
また、各ユーザの印刷条件制限を変えるには印刷条件制限テーブルTBLの内容のみ変更すればよく、管理コストを低減できるという効果を奏する。
【0051】
さらに、既存の電子メールで印刷条件強制変更の内容をユーザが確認できるという効果を奏する。
【0052】
本発明の好適な実施例を説明したが、本発明には他にも種々の変形例が含まれ、上記複数の実施例で述べた構成要素の他の組み合わせ、各構成要素の機能を実現する他の構成を用いたもの、当業者であればこれらの構成又は機能から想到するであろう他の構成も、本発明に含まれる。
【0053】
例えば、印刷条件制限として他のもの、例えば用紙サイズや印刷時間帯を加えたり、印刷条件制限の各項目をより細かく設定、例えば、用紙タイプをユーザIDによって「普通紙」に制限したり「再生紙」に制限したりする構成であってもよい。
【0054】
また、印刷サーバ10にログイン処理プログラムを備えて、図2のステップS13で必ずヒットするようにして、ステップS13及びS26の処理を省略した構成であってもよい。
【0055】
さらに、ユーザ識別情報は、印刷ジョブのヘッダに含まれるユーザIDに限定されず、印刷ジョブ本体の所定部に含まれるニックネーム又は電子メールアドレスや、パケットヘッダに含まれるIPアドレスなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例1に係る印刷サーバ側プリンタドライバの処理を示す概略フローチャートである。
【図2】図1のステップS0の処理の詳細フローチャートである。
【図3】印刷システムの一部を示す概略機能ブロック図である。
【図4】(A)はクライアント側プリンタドライバの処理を示す概略機能ブロック図であり、(B)は印刷サーバ側プリンタドライバで用いられる印刷条件制限テーブルの説明図である。
【図5】印刷システムの概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
10 印刷サーバ
11 CPU
12 インターフェイス
13 PROM
14 DRAM
15 補助記憶装置
16 NIC
17、26、31 通信部
18、25 スプーラ
19、24 プリンタドライバ
20、21 PC
22 アプリケーション
23 GDI
30 画像形成装置
32 RIP
33 印刷出力部
TBL 印刷条件制限テーブル
COM 通信媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷条件を含む印刷ジョブデータを受信し、該印刷ジョブデータをプリンタドライバでPDLデータに変換して画像形成装置に送信する印刷サーバにおいて、
ユーザ識別情報と印刷条件制限とを対応付けた制限情報をさらに備え、
該プリンタドライバは、CPUに対し、該変換前に、該印刷ジョブデータに含まれるユーザ識別情報に対応した印刷条件制限を該制限情報から読み出させ、該印刷ジョブデータに含まれる印刷条件がこの印刷条件制限を満たすように、該印刷条件を変更させる、
ことを特徴とする印刷サーバ。
【請求項2】
該制限情報はさらに、ユーザ識別情報と対応付けられた電子メールアドレスを含み、
該プリンタドライバは、該CPUに対しさらに、該印刷ジョブデータに含まれる該印刷条件を変更した場合には、そのユーザ識別情報の電子メールアドレス宛に、該印刷条件を変更したことを示す内容の電子メールを送信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷サーバ。
【請求項3】
該制限情報は、ユーザ識別情報毎に印刷条件を、モノクロ印刷、両面印刷、集約印刷又は再生紙への印刷に制限するか否かの情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷サーバ。
【請求項4】
該印刷ジョブデータのパケットに含まれる該ユーザ識別情報は、該印刷ジョブデータの該ヘッダに含まれているユーザID又は該印刷ジョブデータのパケットヘッダに含まれているIPアドレスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の印刷サーバ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の印刷サーバと、
ネットワークを介し該印刷サーバに接続されたクライアント及び画像形成装置と、
を有することを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−256958(P2010−256958A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102849(P2009−102849)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】