説明

印刷システムおよび印刷方法

【課題】所望の印刷機に対して印刷指示を出して、すぐに出力結果を得ることができるようにする。
【解決手段】クライアントデバイスから送られる印刷ジョブおよびユーザー情報を蓄積するジョブ蓄積部と、クライアントデバイスの位置情報を順次取得する位置情報取得部と、位置情報からクライアントデバイスの移動速度を算出する移動速度算出部と、地図情報を管理するインフラ管理部と、印刷機の設置場所が登録される設置場所登録部と、算出された移動速度と蓄積されている位置情報と地図情報とからクライアントデバイスの移動手段を推定する移動手段推定部と、推定された移動手段に応じて印刷機を探索する範囲を決定し、設置場所がクライアントデバイスの現在位置から当該範囲内にある印刷機を選定する送信範囲決定部と、選定された印刷機に対して印刷データを送信するジョブ管理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、ネットワーク上に存在する「クラウド」と呼ばれるコンピューティングシステムに対して印刷ジョブを送信し、送信された印刷ジョブを印刷機に対してさらに送信することで、遠く離れた場所の印刷機に対して印刷を実行させる、あるいは印刷ジョブ送信の時間からしばらく経過した時点で印刷機が印刷ジョブを受け取る、といったことが可能となっている。クラウドを利用した印刷はクラウドプリンティングと呼ばれる。会社内、あるいは家庭内LANだけでなく、WWW上のクラウド環境を用いれば、公共の場所にある印刷機を用いて誰でも簡単に印刷が可能となる。
【0003】
クラウドプリンティングは、モバイル端末などから行われることもしばしばあり、GPS(Global Positioning System)やWi−Fi(Wireless Fidelity)を利用して位置情報を取得し、モバイル端末を持つユーザーの近くにある印刷機を判別することも可能となっている。これにより、近くにある印刷機をリスト化して、モバイル端末をもつユーザーに、近くにある印刷機を指定してもらうということも可能である。
【0004】
特許文献1や特許文献2には、クラウドプリンティングを行う目的で、ユーザーの近くにある印刷機を選ばせて、そのプリンタに印刷を実行させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、GPSやWi−Fiを利用して位置情報を取得し、さらに近くにある印刷機の情報を取得して、近くにある印刷機をユーザーに選ばせてその印刷機に対して印刷を実行させる、という方法では、指定した印刷機以外で印刷できないため、指定した印刷機が故障中の場合や、指定した印刷機とは異なる他の印刷機に変更しようとした場合に対応できないという問題があった。
【0006】
また、ユーザーが印刷機の前に立って印刷指示をしてクラウド上にある印刷ジョブを出力する方法であれば、ユーザーが印刷したい印刷機に対して印刷指示をすることが可能であるが、印刷ジョブがクラウド上に存在するため、印刷機はこの印刷ジョブをダウンロードする必要がある。印刷ジョブのデータサイズが大きい場合は、ダウンロードに時間がかかってしまうため、ユーザーが印刷機に対し印刷指示を行ってから印刷物が出力されるまでに時間がかかってしまい、ユーザーがすぐに印刷物を入手できない、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印刷を行いたいユーザーが自分の望む印刷機に対して印刷指示を出して、すぐに出力結果を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の印刷システムは、クライアントデバイスから送られる印刷ジョブおよびユーザー情報を蓄積するジョブ蓄積部と、前記クライアントデバイスの位置情報を順次取得する位置情報取得部と、前記位置情報から前記クライアントデバイスの移動速度を算出する移動速度算出部と、地図情報を管理するインフラ管理部と、印刷機の設置場所が登録される設置場所登録部と、算出された前記移動速度と蓄積されている前記位置情報と前記地図情報とから前記クライアントデバイスの移動手段を推定する移動手段推定部と、前記移動手段推定部により推定された移動手段に応じて印刷機を探索する範囲を決定し、設置場所がクライアントデバイスの現在位置から当該範囲内にある印刷機を選定する送信範囲決定部と、前記送信範囲決定部により選定された印刷機に対して前記印刷ジョブおよびユーザー情報を元に印刷データを送信するジョブ管理部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、地図情報を管理するインフラ管理部と印刷機の設置場所が登録される設置場所登録部とを備える印刷システムにおける印刷方法であって、ジョブ蓄積部が、クライアントデバイスから送られる印刷ジョブおよびユーザー情報を蓄積する工程と、位置情報取得部が、前記クライアントデバイスの位置情報を順次取得する工程と、移動速度算出部が、前記位置情報から前記クライアントデバイスの移動速度を算出する工程と、移動手段推定部が、算出された前記移動速度と蓄積されている前記位置情報と前記地図情報とから前記クライアントデバイスの移動手段を推定する工程と、送信範囲決定部が、前記移動手段推定部により推定された移動手段に応じて印刷機を探索する範囲を決定し、設置場所がクライアントデバイスの現在位置から当該範囲内にある印刷機を選定する工程と、ジョブ管理部が、前記送信範囲決定部により選定された印刷機に対して前記印刷ジョブおよびユーザー情報を元に印刷データを送信する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザーが所望の印刷機に印刷指示をする前にユーザーが使用するであろう印刷機に対して印刷ジョブの送信を済ませることになるので、クライアントデバイスから印刷ジョブを送信したユーザーが自分の望む印刷機に対して印刷指示を出して、すぐに出力結果を得ることができるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態にかかるクラウドプリンティングシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、ユーザーが携帯端末から印刷ジョブを発してから印刷結果を得るまでの処理の流れについて説明するフローチャートである。
【図3】図3は、携帯端末の位置情報と地図情報から移動手段を推定する処理について説明するフローチャートである。
【図4】図4は、携帯端末の位置情報と地図情報から移動手段を推定する処理について説明するフローチャートである。
【図5】図5は、移動する携帯端末の速度に対するその移動手段と次に移動するであろう範囲を規定するマトリクスの一例を示す図である。
【図6】図6は、移動手段の決定から印刷ジョブの送信までを説明するフローチャートである。
【図7】図7は、実際の印刷データの送信例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるクラウドプリンティングシステムの実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかるクラウドプリンティングシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、一般的なPC(パーソナルコンピュータ)1や携帯電話機等の携帯端末2など、印刷ジョブを生成する複数のクライアントデバイスと、実際にユーザーが印刷物を得るために印刷を行う複数の印刷機3とが、無線または有線のネットワーク(インターネット等)を介してクラウドプリンティングシステム10に接続されている。ユーザーのクライアントデバイスからは、印刷ジョブとユーザー情報がクラウドプリンティングシステム10に送られ、この印刷ジョブとユーザー情報を元に印刷データ(ユーザー情報の一部または全部を含む)が、クラウドプリンティングシステム10から後述のようにしてピックアップされた1または複数の印刷機3へ送信される。
【0014】
なお、上記印刷ジョブおよび印刷データ(印刷データと印刷ジョブは同一でもよく、以下では)の内容およびフォーマットは、システムに応じて規定されるものであり、本実施形態において特に限定されるものではない。ただし、印刷機3が印刷データを受信後、直ちに印刷を開始するのではなく、印刷機3においてユーザーによる印刷指示がなされるまで待つことを示す情報を含む。印刷機3は、印刷指示の受け付け時に、同時に入力されるユーザー情報と、印刷データと同時に送信されたユーザー情報とからユーザーを特定し、対応する印刷データについて印刷を開始することとなる。
【0015】
クラウドプリンティングシステム10は、ジョブ/ユーザー管理部20と、移動手段決定部30と、インフラ管理部40とからなり、このジョブ/ユーザー管理部20と、移動手段決定部30と、インフラ管理部40は、1または複数のサーバーに備わる各CPU等の制御手段が、そのサーバーに備わるROMまたはHDD等の記憶手段に格納された制御プログラムを実行することによりそれらの機能(詳細は下記)が実現される。なお、PC1および携帯端末2ならびにサーバーの構成等は周知であるので、ここではその説明は省略する。
【0016】
ジョブ蓄積部21は、クライアントデバイスから送られた印刷ジョブをユーザー毎に蓄積する。
【0017】
印刷機設置場所登録部22は、地図上の印刷機3の設置場所の位置情報(緯度・経度等)とネットワーク上の印刷機3のアドレスを含む情報が登録され、印刷機3の設置場所等を管理する。ここで、これらの情報は、予め登録されているものとする。その方法は、例えば、印刷機3をネットワークにつなぐと印刷機3が自動で所定のURLへアクセスし登録する方法や、印刷機設置場所登録部22に手動で登録するといった方法で行うことができる。
【0018】
位置情報取得部31は、GPSやWi−Fiを利用する、移動する携帯端末2等のクライアントデバイス(以降、携帯端末2として説明する)から一定時間毎に発信される、携帯端末2の現在の位置情報(緯度・経度等)を取得する。なお、携帯端末2から発信される位置情報には、携帯端末2を識別するための識別情報が含まれるものとする。また、携帯端末2は、自機の移動を検知したときのみ、位置情報等を発信するように構成してもよい。また、携帯端末2の識別情報は、携帯端末2から印刷ジョブが送信される際に送られるユーザー情報にも含まれるものとする。これにより、携帯端末2とそのユーザーとを関連付けることができ、当該携帯端末2の位置情報とユーザーとを関連付けることができる。
【0019】
位置情報差分管理部32は、位置情報取得部31が取得した位置情報をユーザー毎にロギングし、ある時点の位置情報と次の時点の位置情報の差分から移動距離を算出し、さらに速度などを算出して、該当ユーザーの移動情報として管理する。
【0020】
インフラ管理部40は、地図情報41や路線情報42(本実施形態では、これらをまとめて地図情報と総称する)を管理する。
【0021】
移動手段マッチング部33は、インフラ管理部40が管理する地図や路線などの情報(地図情報)および位置情報差分管理部32により管理される携帯端末2の移動の速度を基に、移動している携帯端末2の移動手段を判別する(詳細は後述)。
【0022】
送信範囲決定部34は、移動手段マッチング部33で判別されたユーザーの移動手段を基にジョブ送信範囲を決定する。そして、位置情報取得部31が取得した携帯端末2の現在位置と、印刷機設置場所登録部22が管理している印刷機3の設置場所の位置情報と、インフラ管理部40が管理する地図情報とから、当該ジョブ送信範囲内にある印刷機3をピックアップする。
【0023】
ユーザー管理部23は、本システムを利用しているユーザーに関する情報(個人情報等;以下、ユーザー情報)を管理する。ユーザー情報は、このユーザー管理部23がユーザー毎にIDなどの識別情報(ここでは、ユーザーIDとして説明する)を割り当てて管理する。
【0024】
ジョブ管理部24のジョブ送信部24aは、ユーザー管理部23からユーザー情報を受け取り、送信範囲決定部34から該当ユーザーに対応するジョブ送信範囲内でピックアップされた印刷機3の情報(アドレス等)を受け取って、ジョブ蓄積部21に蓄積されている該当ユーザーの印刷ジョブを対象の印刷機3に送信する処理を行う。また、ジョブ管理部24のジョブ削除部24bは、印刷されたデータの情報を該当の印刷機3から受け、このジョブ管理部24が各印刷機3内部に蓄積されたままになっている印刷データを削除するコマンドを発行することにより、各印刷機3から印刷データを削除する。また、前回印刷ジョブを送信した印刷機3で今回ピックアップの対象から外れたものがある場合、該当の印刷機3にデータ削除のコマンドなどを送り、その印刷機3内部から対象の印刷データを削除する。
【0025】
次に、ユーザーが携帯端末2から印刷ジョブを発してから印刷結果を得るまでの処理の流れを、図2を用いて説明する。図2は、ユーザーが携帯端末2から印刷ジョブを発してから印刷結果を得るまでの処理の流れについて説明するフローチャートである。
【0026】
はじめに、ユーザーが携帯端末2から印刷ジョブを送信する(ステップS101)。このときユーザー情報も送信される。なお、ここでは、印刷ジョブの送信元を携帯端末2として説明するが、印刷ジョブの送信元はPC1やその他のデバイスでもよい。
【0027】
印刷ジョブとユーザー情報を受けたクラウドプリンティングシステム10は、ユーザー情報を元にユーザーと関連付けて、ジョブ蓄積部21が印刷ジョブを蓄積する(ステップS102)。クラウドプリンティングシステム10は、ユーザー毎にユーザーIDを割り当てて管理するユーザー管理部23を備えているため、PC1、携帯端末2その他デバイスからユーザー情報が印刷ジョブと同時に送信されれば、ユーザー管理部23が印刷ジョブとそのユーザーとの関連付けを行う。ユーザーと関連付けられた印刷ジョブはジョブ蓄積部21に蓄積される。
【0028】
ユーザーが携帯端末2を持ったまま移動すると、当該携帯端末2は一定時間毎にその位置情報をクラウドプリンティングシステム10に送信する。携帯端末2はGPSなどを利用した位置検知手段を備えているので、当該携帯端末2の位置情報を送信することができる。この位置検知手段は、GPSを利用するものの他、Wi−Fiを利用した位置情報検索など、位置情報を取得できる手段であればよい。携帯端末2から送信された携帯端末2の位置情報は、位置情報取得部31が取得する(ステップS103)。
【0029】
携帯端末2からの位置情報等を位置情報取得部31が取得した後、位置情報差分管理部32、移動手段マッチング部33、およびインフラ管理部40が協働してユーザーの移動手段を割り出し、割り出されたユーザーの移動手段と携帯端末2の位置情報とから、送信範囲決定部34がジョブ送信範囲を決定する(ステップS104)(詳細は後述)。
【0030】
さらに、上記で決定されたジョブ送信範囲と印刷機設置場所登録部22が管理する印刷機の設置場所の位置情報とインフラ管理部40が管理する地図情報とから、送信範囲決定部34が、携帯端末2を持って移動しているユーザーの近くにある送信対象となる印刷機3を割り出す(ステップS105)。具体的には、印刷機3は、あらかじめ印刷機設置場所登録部22が各印刷機3の設置場所の情報を持っているため、携帯端末2の位置情報および上記で決定されたジョブ送信範囲と照合して該当する印刷機3をピックアップしリスト化する(詳細は後述)。
【0031】
ピックアップされた印刷機3に対して、ジョブ管理部24が、ユーザー情報と対象の印刷ジョブを元に印刷データを送信する(ステップS106)。ジョブ管理部24により送信された印刷データは、対象の印刷機3のHDDやメモリ内に蓄積される。
【0032】
ユーザーが近くにある対象の印刷機3のいずれかにて印刷指示をすると、印刷機3に蓄積されている当該ユーザーに対応した印刷データを出力し、ユーザーは所望の印刷物を得ることとなる(ステップS107)。なお、印刷されたデータの情報をジョブ管理部24が該当の印刷機3から受け、ジョブ管理部24が各印刷機3内部に蓄積されたままになっている印刷データを削除するコマンドを発行することにより、各印刷機3から不要な印刷データを削除することができる。こうすることで、印刷し終わって不要となったデータがいつまでも各印刷機3のHDDやメモリ内に蓄積される続けることによるリソースの無駄をなくすことができる。
【0033】
次に、携帯端末2をもつユーザーの移動手段を推定する方法の概略を、図3および図4を用いて説明する。図3および図4は、携帯端末2の位置情報と地図情報から移動手段を推定する処理について説明するフローチャートである。
【0034】
ユーザーの携帯端末2が、携帯端末2の位置情報を一定時間毎に位置情報取得部31に送信する(ステップS201)。
【0035】
位置情報取得部31が携帯端末2の位置情報を取得すると、この位置情報に含まれる携帯端末2の識別情報からユーザー情報を特定して、位置情報とユーザーIDとを位置情報差分管理部32に渡す。
【0036】
位置情報差分管理部32は、位置情報取得部31から渡される位置情報をユーザー毎(ユーザーID毎)にロギングするとともに、前述のように移動情報を算出し管理する(ステップS202)。同時に、インフラ管理部40から地図や路線の情報を取得して、移動情報と地図情報を移動手段マッチング部33に渡す(ステップS203)。
【0037】
移動手段マッチング部33は、位置情報差分管理部32から渡された移動情報と地図情報とから、現在ユーザーがどの移動手段(徒歩・車・自転車・電車など)で移動しているかを推定する(ステップS204)。例えば、ロギングしている位置情報から路線上を移動していることが判別されたら(図4のステップS301でYes)、移動手段は電車であると判断し(ステップS302)、そうでなければ(ステップS301でNo)、その他の移動手段であると判断する(ステップS303)。その他の移動手段であると判断された場合は(詳細は下記)、例えば、単位時間(1分など)あたり70mの距離を移動(=時速4.2km)していれば徒歩であると判断する、などして移動手段を推定する。
【0038】
図5に、移動する携帯端末2の速度に対するその移動手段と次に移動するであろう範囲を規定するマトリクスの一例を示す。このマトリクスは、移動手段が電車以外である場合の移動手段の推定に用いる(後述)。
【0039】
移動する携帯端末2の位置が路線図に示される路線上である場合は、上記のように移動手段は電車と判別することができるが、移動する携帯端末2が路線上にない場合(すなわち、ユーザーが電車に乗車していない場合)は、移動手段は電車以外であるとして、本実施形態では、位置情報差分管理部32により求められた移動する携帯端末2の速度を、図5に示すようなマトリクスに当てはめて移動手段(図5の例では、徒歩、自転車または車)と次の1時間に移動するであろう範囲を決定する。なお、マトリクス中の速度の範囲や移動手段などは、性別や年齢、あるいは実際の移動手段である自転車や車の種類などに応じて変えるのが好ましく、最初はデフォルト値をセットしておき、ユーザー登録時などにそれぞれのユーザーが細かく各値を設定できるようにするのが望ましい。
【0040】
次に、移動手段の決定後から印刷ジョブの送信までの処理の流れを、図6を用いて説明する。図6は、移動手段の決定から印刷ジョブの送信までを説明するフローチャートである。
【0041】
上記のように移動手段の決定とともに、送信範囲決定部34は、上記マトリクスから、推定された移動手段に対応する次に移動するであろう範囲を、印刷データを送信する範囲(ジョブ送信範囲)として、その値を取得する(ステップS401)。なお、移動手段が電車の場合は、予め規定される範囲(ジョブ送信範囲)の値を取得する。
【0042】
次いで、送信範囲決定部34は、携帯端末2の現在位置を、位置情報差分管理部32から取得する(ステップS402)。
【0043】
さらに、携帯端末2の現在位置を中心に上記ジョブ送信範囲を半径とした円を地図上に描き、その中に含まれる印刷機3をピックアップしリスト化する(ステップS403)。このリストは毎回保存しておく。なお、移動手段が電車の場合は、予め規定される範囲を用い、路線上の次に到達する駅を中心として所定のジョブ送信範囲を半径とした円内にある印刷機3をリストアップする。また、印刷データ送信の対象とする印刷機3をリストアップする際、ジョブ送信範囲内にある印刷機3であっても、図7を用いて後述するように、条件によって対象から除外するようにするのが好ましい。
【0044】
また、リストアップされたそれぞれの印刷機3に対して、前回リストアップされて印刷データを送信済みで、かつ今回も印刷データ送信の対象となっているものについては(この場合、ステップS404でNoかつステップS405でNo)、すでに印刷データが印刷機3に対して送信済みのため、特に何もしないようにする。
【0045】
もし前回対象ではなく、今回新たに対象となった印刷機3があれば(この場合、ステップS404でYes)、その印刷機3に向けて印刷データを送信する(ステップS406)。
【0046】
また、前回送信した印刷機3で今回対象から外れたものがある場合(この場合、ステップS405でYes)、該当の印刷機3にデータ削除のコマンドなどを送り(ステップS407)、印刷機3内部から対象の印刷データを削除するようにする。これは、恒久的に印刷データを印刷機3に溜めておくと、印刷機3に搭載されているHDDやメモリを消費してしまい、利用できなくなってしまうためである。これを防ぐため、携帯端末2の位置が対象の印刷機3から離れた場合、ユーザーがその印刷機3から印刷する可能性は低いとして対象のユーザーの印刷データを削除するようにする。こうすることで、印刷機3の資源を無駄なく利用することができるようになる。
【0047】
ここで、実際の印刷データの送信例を挙げ説明する。図7は、実際の印刷データの送信例を説明する図である。この図7では、図中A、B、Cに印刷機3が設置されているとしている。また、Aは車が通れない場所とし、Cには駐車場がなく、Bには駐車場が設置されているとする。
【0048】
位置xにユーザーが居るとした場合、移動手段が徒歩であれば、ジョブ管理部24は、前述のように求められたジョブ送信範囲内にある一番近くのAの位置の印刷機3に印刷データを送信するが、ジョブ送信範囲外のBとCの位置の印刷機3には送信しない、といった挙動を行う。また、位置xにユーザーがいて、移動手段が車であれば、その場合のジョブ送信範囲内のBとCの位置の印刷機3に印刷データを送るが、車が通れないAの位置の印刷機3には印刷データを送信しない、ということも可能である。これらは印刷機3の位置と地図情報とを照らし合わせて判断ができる。
【0049】
ユーザーがyの位置にいてその速度を検知した結果、電車に乗っているものと判断されたとする。この場合、BとCの位置はほぼ当距離であるが、ユーザーは駅以外では乗降が不可能であるため、この場合は駅から遠いCには印刷データを送信せずに、駅に近いBのみに印刷データを送信する、といったことも可能である。
【0050】
また、ユーザーがzの位置にいて車で移動していると判断された場合、Cの位置には駐車場が存在しないため停車スペースがなくユーザーはこの場所の印刷機3を利用しない、といった判断を行うことも可能である。その場合、駐車場がある最寄りのBの印刷機3に向けて印刷データを送信する。このようにジョブ送信範囲内にある印刷機3であっても、さらに移動手段に関連した条件を加えて、ジョブ管理部24は、印刷データを印刷機に送信するか否かを決定するようにすることができる。また、このような判断のための条件は、印刷機設置場所登録時に、設置場所と地図情報から印刷機3の状況を予めリストアップしておくことで、スムーズな処理(条件分岐)を実現することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のクラウドプリンティングシステム10では、移動する携帯端末2の近くにある印刷機3を割り出し、ユーザーが印刷機3に対し印刷指示をする前に、ユーザーが利用するであろう1または複数の印刷機3に対して印刷データを送信する。これにより、ユーザーが印刷機3に対して印刷指示を行う頃には、印刷機3は印刷データを受けているので、従来のような、印刷データのダウンロード時間をなくすことができる。その結果、印刷を行いたいユーザーが自分の望む印刷機3に対して印刷指示を出して、すぐに出力結果を得ることができるようになる。
【0052】
なお、上述したクラウドプリンティングシステム10の機能を実現する制御プログラムは、サーバーのHDD等の記憶手段に予め組み込まれて提供されるが、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。あるいは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供または配布するように構成しても良い。
【0053】
また、上記にて、発明を実施するための実施の形態について説明を行ったが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 PC
2 携帯端末
3 印刷機
10 クラウドプリンティングシステム
20 ジョブ/ユーザー管理部
21 ジョブ蓄積部
22 印刷機設置場所登録部
23 ユーザー管理部
24 ジョブ管理部
24a ジョブ送信部
24b ジョブ削除部
30 移動手段決定部
31 位置情報取得部
32 位置情報差分管理部(移動速度算出部)
33 移動手段マッチング部(移動手段推定部)
34 送信範囲決定部
40 インフラ管理部
41 地図情報
42 路線情報
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2007−272609号公報
【特許文献2】特開2002−132462号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアントデバイスから送られる印刷ジョブおよびユーザー情報を蓄積するジョブ蓄積部と、
前記クライアントデバイスの位置情報を順次取得する位置情報取得部と、
前記位置情報から前記クライアントデバイスの移動速度を算出する移動速度算出部と、
地図情報を管理するインフラ管理部と、
印刷機の設置場所が登録される設置場所登録部と、
算出された前記移動速度と蓄積されている前記位置情報と前記地図情報とから前記クライアントデバイスの移動手段を推定する移動手段推定部と、
前記移動手段推定部により推定された移動手段に応じて印刷機を探索する範囲を決定し、設置場所が前記クライアントデバイスの現在位置から当該範囲内にある印刷機を選定する送信範囲決定部と、
前記送信範囲決定部により選定された印刷機に対して前記印刷ジョブおよびユーザー情報を元に印刷データを送信するジョブ管理部と、
を備えたことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
クライアントデバイスの移動速度の範囲毎に、移動手段と印刷機を探索する範囲とを規定したマトリクスを備え、前記移動手段推定部は、前記マトリクスを用いて移動手段を推定し、前記送信範囲決定部は、前記マトリクスを用いて前記移動手段に応じた印刷機を探索する範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
路線情報を備え、前記移動手段推定部は、前記路線情報と蓄積されている前記位置情報とから、移動手段が電車であるか否かを推定し、移動手段が電車であると推定される場合は、前記送信範囲決定部は、路線上の次に到達する駅から前記移動手段に応じた印刷機を探索する範囲内にある印刷機を選定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記送信範囲決定部は、前記範囲内にある印刷機を選定する際、さらに、推定された前記移動手段に関連して所定の条件を満たす印刷機を選定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記ジョブ管理部は、印刷済みの印刷データを蓄積している印刷機または印刷データを送信済みで今回前記送信範囲決定部による選定の対象からはずれた印刷機に対し、印刷機内の不要な印刷データを削除するために所定のコマンドを送信することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記位置情報取得部は、無線または有線のネットワークを介して前記クライアントデバイスから位置情報を取得し、前記ジョブ管理部は、前記ネットワークを介して前記印刷機に印刷データを送信することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項7】
地図情報を管理するインフラ管理部と印刷機の設置場所が登録される設置場所登録部とを備える印刷システムにおける印刷方法であって、
ジョブ蓄積部が、クライアントデバイスから送られる印刷ジョブおよびユーザー情報を蓄積する工程と、
位置情報取得部が、前記クライアントデバイスの位置情報を順次取得する工程と、
移動速度算出部が、前記位置情報から前記クライアントデバイスの移動速度を算出する工程と、
移動手段推定部が、算出された前記移動速度と蓄積されている前記位置情報と前記地図情報とから前記クライアントデバイスの移動手段を推定する工程と、
送信範囲決定部が、前記移動手段推定部により推定された移動手段に応じて印刷機を探索する範囲を決定し、設置場所が前記クライアントデバイスの現在位置から当該範囲内にある印刷機を選定する工程と、
ジョブ管理部が、前記送信範囲決定部により選定された印刷機に対して前記印刷ジョブおよびユーザー情報を元に印刷データを送信する工程と、
を含むことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−12039(P2013−12039A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144365(P2011−144365)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】