説明

印刷ドラムの保管方法及び保管ケース

【課題】印刷ドラムが保有しているインキの酸化重合による固化を確実に防止して印刷時に良好な印刷を可能とする印刷ドラムの保管方法を提供する。
【解決手段】油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラム1の保管方法であって、印刷ドラムを保管ケース3の内部に収納するとともに、この保管ケースの内部に油中水型エマルジョンインキの酸化重合を抑制するための不活性ガス4を充填し、印刷ドラム1を保管する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法及び保管ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置では、複数の色を使用して印刷する場合、異なる色のインキが収納された印刷ドラムを複数用いるので、印刷ドラムを1つしか装着できない装置の場合、印刷に使用しない印刷ドラムを保管ケースに入れて保管している。あるいは予備の印刷ドラムなども保管ケースに収納されて保管している。印刷に用いるインキとして、乾性油や乾性油を含有させた油中水型エマルジョンインキが知られている。このインキは練られることで定着性が向上する半面、印刷装置を長期間使用しないでインキを空気中に曝した状態にしておくと、インキが酸化重合により固化してしまうという特性がある。
また、特許文献1には、インキを密封したインクパッケージを収納する包袋内に、ヘリウムなどの不活性ガスを充填するものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−154980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷に未使用のインキを保持していない印刷ドラムを保管ケースで保管する場合には問題とならないが、印刷に使用された印刷ドラムはインキを付着された状態で保管ケースに収納されて保管される。このため、従来のようにインキが固化してしまうと、印刷ドラムの外周に巻き付けられているマスタが保持しているインキが固化するだけでなく、ドラム内部からドラム外部へインキを供給する多孔質部分の目詰まりも発生してしまい、次の印刷時に良好な印刷が行えなくなる。
【0005】
無論、印刷装置に装着したままの状態で保管するよりも保管ケースに収納して保管する方がインキの固化は遅いが、保管ケースはドラム使用時に開放されるので、ケース内には酸素が存在する。このため、単にケース内に収納して保管するだけでは、インキの酸化重合の進行を十分に妨げるには至らない。
【0006】
特許文献1では、インキを密封したインクパッケージを収納する包袋内に、ヘリウムなどの不活性ガスを充填しているが、この充填はインキの酸化重合の進行防止ではなく、包袋の変形を防止するために充填したものである。
本発明は、印刷ドラムが保有しているインキの酸化重合による固化を確実に防止して印刷時に良好な印刷を可能とする印刷ドラムの保管方法及び保管ケースを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る、油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法は、印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部に油中水型エマルジョンインキの酸化重合を抑制するための不活性ガスを充填して印刷ドラムを保管することを特徴としている。
【0008】
本発明に係る印刷ドラムの保管方法において、不活性ガスは窒素ガスであることを特徴としている。窒素ガスは空気よりも比重が軽いため、不活性ガスとして用いる場合には、保管ケースの上部と下部に充填部と排出部をそれぞれ設け、充填部から保管ケースの内部に充填手段で窒素ガスを充填するとともに、排出部から収納ケース内の空気を排出するのが好ましい。
【0009】
本発明に係る印刷ドラムの保管方法において、不活性ガスは二酸化炭素ガスであることを特徴としている。二酸化炭素ガスは空気よりも比重が重いため、不活性ガスとして用いる場合には、保管ケースの上部と下部に排出部と充填部をそれぞれ設け、ケース下部の充填部から充填手段で二酸化炭素ガスを充填するとともに、排出口からケース内の空気を排出するのが好ましい。
【0010】
本発明に係る、油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法は、印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部の酸素を吸収する脱酸素剤を同ケースの内部に印刷ドラムと同封して印刷ドラムを保管することを特徴としている。
【0011】
本発明に係る、油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法は、印刷ドラムを保管ケースの内部に収納し、この保管ケースの内部に水蒸気充填手段で水蒸気を充填して印刷ドラムを保管することを特徴としている。
【0012】
本発明に係る、油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法は、印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部の空気を吸引手段で排出して減圧した状態で印刷ドラムを保管すること特徴としている。
【0013】
本発明に係る、油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムをその内部で保管する保管ケースは、保管ケースの内部に不活性ガスあるいは水蒸気を充填する充填部と、保管ケースの内部の空気をケース外部に排出する排気部を有することを特徴としている。
【0014】
本発明に係る、油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムをその内部で保管する保管ケースは、保管ケースの内部と連通するとともに、吸引手段が接続される減圧部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部に油中水型エマルジョンインキの酸化重合を抑制するための不活性ガスを充填して印刷ドラムを保管するので、保管ケースの内部の酸素ガスが極めて少なくなり、酸化重合によるインキの固化の進行を抑制でき、保管ケースを開放しない限りは長期間印刷ドラム内のインキを固化の進行を妨げられる。このため、印刷ドラムのインキをフレッシュな状態で保管することができ、次の印刷時に良好な印刷を行うことができる。
【0016】
本発明によれば、印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部の酸素を吸収する脱酸素剤を同ケースの内部に印刷ドラムと同封して印刷ドラムを保管するので、保管ケースの内部の酸素が脱酸素剤により除去されて保管ケースの内部の酸素が極めて少なくなり、酸化重合によるインキの固化の進行を抑制でき、保管ケースを開放しない限りは長期間印刷ドラム内のインキを固化の進行を妨げられる。このため、印刷ドラムのインキをフレッシュな状態で保管することができ、次の印刷時に良好な印刷を行うことができる。
【0017】
本発明によれば、印刷ドラムを保管ケースの内部に収納し、この保管ケースの内部に水蒸気を充填して印刷ドラムを保管するので、保管ケースの内部の酸素ガスが極めて少なくなり、酸化重合によるインキの固化の進行を抑制でき、保管ケースを開放しない限りは長期間印刷ドラム内のインキを固化の進行を妨げられる。このため、印刷ドラムのインキをフレッシュな状態で保管することができ、次の印刷時に良好な印刷を行うことができる。
【0018】
本発明によれば、印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部の空気を吸引手段で排出して減圧した状態で印刷ドラムを保管するので、保管ケースの内部の酸素ガスが極めて少なくなり、酸化重合によるインキの固化の進行を抑制でき、保管ケースを開放しない限りは長期間印刷ドラム内のインキを固化の進行を妨げられる。このため、印刷ドラムのインキをフレッシュな状態で保管することができ、次の印刷時に良好な印刷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて順に説明する。図1に符号1で示す印刷ドラムは、印刷装置の一形態であるデジタル製版部を備えた孔版印刷装置2に着脱可能とされている。印刷ドラム1は、その支持フレームに回転自在に支持されているとともに、孔版印刷装置2へ着脱可能なように、図示しない取手、スライダー、ロック解除レバーなどと一体的に孔版印刷装置2から着脱できるようにユニット化されている。
【0020】
印刷ドラム1は、その内部に配設されたインキローラ、ドクタローラを含む図示しないインキ供給機構と、開口部と非開口部とを備えた図示しない多孔性支持円筒体と、この多孔性支持円筒体の外周を覆う図示しないメッシュスクリーンと、製版済みのマスタの端部を把持する開閉自在のクランプとを備えた周知の構成である。印刷ドラム1の開口部は、インキ供給機構によって供給されるインキを透過させるための小さな孔が多数形成された部分であり、透過したインキがメッシュスクリーンから滲み出してドラム外周面に巻着された製版済みのマスタに供給されるように構成されている。インキ供給機構には、印刷ドラム1が孔版印刷装置2に装着されると、図示しないインキパックから印刷用のインキが供給されるように構成されている。印刷ドラム1の構成において、インキ供給機構と多孔性支持円筒体とメッシュスクリーンをインキング部と称し、印刷終了後においてもインキを保持した部分となる。このインキング部は、印刷ドラム1が孔版印刷装置2に装着された状態の時には空気中に曝されている。
【0021】
孔版印刷装置2では、これら空気に曝されたインキは次回の印刷で再び利用されている。この場合、排版工程でマスタに付着して廃棄されるインキは再利用されない。曝されていた後に、再び印刷に使用されると言う機能を実現するために、通常、孔版印刷に用いるインキは、微小水滴を油膜でつつむ油中水型のエマルジョンインキとなっている。つまり油膜につつまれているために水滴は蒸発し難い性質を付与されている。同時に油膜自身は常温で蒸発し難く、ほとんど酸化重合しないオイルを用いているため空気に曝されて保管されても事実上その特性がほとんど変化しない特徴を持っている。
【0022】
本形態では、乾性油、半乾性油を含むインキが酸化重合により固化しないようにするために、長期間印刷を行わない時は、図2,図3に示す開閉自在な保管ケース3内に、印刷ドラム1をユニットごと収納するとともに、この保管ケース3内に油中水型エマルジョンインキの酸化重合の進行を抑制するための不活性ガス4を充填して印刷ドラム1を保管するようにした。
【0023】
このように不活性ガス4を保管ケース3の内部に充填することで、保管ケース3内の酸素ガスがケース外部に排出されることになる。保管ケース3の内部に化学的に活性な酸素ガスが存在しないので、インキは酸化重合による固化が進行しなくなる。このような状態になっている保管ケース3を開放しない限り、印刷ドラム1が保持しているインキは長期間保管しても固化が進行しなくなり、フレッシュな状態で印刷ドラム1を保管することができ、次の印刷時に良好な印刷を行えるようになる。
【0024】
不活性ガス4としては、窒素ガスや二酸化炭素ガスが挙げられる。窒素ガスは化学的に安定な不活性ガスで、地球大気(空気)の約8割を占めているもので、人体にとって全く無害である。このため、保管ケース3を開放し、大気中に窒素ガスが放出されても環境に対して問題にならない。この窒素ガスは、空気を圧縮・冷却することで液体窒素として容易に精製することもできる。
不活性ガス4としての二酸化炭素ガスは、化学的に安定な不活性ガスであり、人体にとって無害である。そして保管ケース3を開放し、大気中に二酸化炭素ガスが放出されても安全上問題にならない。本形態において、保管ケース3は、A3サイズの製版済みマスタを巻着可能な直径の印刷ドラム1を1つ収納可能な大きさとされていて、その容量は25.3リットル程度である。この容量に充填可能な二酸化炭素ガスの量は約50gである。一般に、ガソリン1リットルが燃焼した時に発生する二酸化炭素の量は2300gとされているので、ケース開放時に二酸化炭素ガスが大気中に放出されても、地球環境への影響は軽微であるとい言えよう。また、二酸化炭素ガスは、圧縮、冷却することで液体二酸化炭素として容易に製造することができる。
【0025】
液体窒素や液体二酸化炭素は図4に示すようなコンパクトな金属容器5に充填されて市販されているため、安価で容易に入手することができる。
【0026】
このような窒素ガスや二酸化炭素ガスを不活性ガス4として印刷ドラム1が収納されている保管ケース3内に充填すると、印刷ドラム1が保持しているインキの固化を低コストで防止することができ、次の印刷時に良好な印刷を行えるようになる。
【0027】
次に、不活性ガス4を充填するための保管ケース3の構成と充填方法について説明する。
図3に示すように、保管ケース3は、本体30と、これに開閉自在に取り付けられた蓋部31と、本体30と蓋部31とを閉状態でロックするロック手段32を備えている。本体30と蓋部31の接合面には、それぞれ気密性を確保するためのシール部材33が設けられていて、蓋31を閉じてロック手段32でロックすることで、ケース内部が気密状態とされるように構成されている。
【0028】
この保管ケース3は、図5,図6に示すように、保管ケース3の内部に不活性ガス4を充填する充填部34と保管ケース3の内部の空気をケース外部に排出する排出部35を備えている。図4に示す保管ケース3では、充填部34がケース上部となる蓋31の側面31Aに、排出部35がケース下部となる本体30の側面30Aの下部にそれぞれ形成されている。図5に示す保管ケース3では、充填部34がケース下部となる本体30の側面30Bの下部に、排出部35がケース上部となる蓋30の側面30Bにそれぞれ形成されている。
【0029】
充填部34は、保管ケース3の内部と外部とを連通する充填口6と、充填口6を開閉する開閉弁7とで構成されている。開閉弁7には、レギュレーター(気化器)9を介して不活性ガス4が充填された金属容器5の口金部に接続された充填系口金8が接続されている。これら充填系口金8とレギュレーター(気化器)9は充填手段を構成している。排出部35は、保管ケース3の内部と外部とを連通する空気抜き口10と、空気抜き口10を開閉する開閉弁11とで構成されている。
【0030】
このような構成の保管ケース3に窒素ガスを充填するには、図5に示すように蓋31が閉じられてロックされている保管ケース3の上部の充填部34にレギュレーター(気化器)9と充填系口金8を介して液体窒素が充填された金属容器5Aを接続し、開閉弁7,11を開く。すると金属容器5A内の液体窒素がレギュレーター(気化器)9で気化されて充填口6から保管ケース3の内部に充填される。このとき、窒素ガス(不活性ガス4)の密度は空気より軽いので、まず保管ケース3の上部から徐々に充填されて行く。図5のハッチング領域は窒素ガスの充填状態を示している。保管ケース3は、開閉弁7,11を除いては気密状態とされているので、窒素ガスが充填されるに従い、ケース下部に設けられた空気抜き口10から窒素ガスが混合していない空気が優先的に排出されて行く。このため、充填する窒素ガスの容量を、ケース下部から充填する場合よりも節約することができる。窒素ガスを充填し、保管ケース3の内部の空気放出完了後には開閉弁7,11を閉じることで、窒素ガスの充填状態が保持される。
【0031】
一方、保管ケース3に二酸化炭素ガスを充填するには、図6に示すように蓋31が閉じられてロックされている保管ケース3の下部の充填部34にレギュレーター(気化器)9と充填系口金8を介して液体二酸化炭素が充填された金属容器5Bを接続し、開閉弁7,11を開く。すると金属容器5B内の液体二酸化炭素がレギュレーター(気化器)9で気化されて充填口6から保管ケース3の内部に充填される。このとき、二酸化炭素ガス(不活性ガス4)の密度は空気より重いので、まず保管ケース3の下部から徐々に充填されて行く。図6のハッチング領域は二酸化炭素ガスの充填状態を示している。保管ケース3は、開閉弁7,11を除いては気密状態とされているので、二酸化炭素ガスが充填されるに従い、ケース上部に設けられた空気抜き口10からは二酸化炭素ガスが混合していない空気が優先的に排出されて行く。このため、充填する二酸化炭素ガスの容量を、ケース上部から充填する場合よりも節約することができる。二酸化炭素ガスを充填し、保管ケース3の内部の空気放出完了後に開閉弁7,11を閉じることで、二酸化炭素ガスの充填状態が保持される。
【0032】
図5,図6において、排出部35は、空気抜き口10と開閉弁11とで構成したが、開閉弁11に代えて、大気圧よりやや高い圧力で開放する仕様の逆止弁を設けて排出部35を構成しても良い。このような逆止弁を設けた構成とすると、保管ケース3の内部へ不活性ガス4が充填されることで逆止弁が開き空気を放出し、充填を停止すると逆止弁が閉じ保管ケース3の内部に空気が逆流するのを防止するので、手動による開閉弁11の開閉操作が不用になるとともに、開閉弁11の閉め忘れも無いので、閉め忘れによる不活性ガス4の漏れを防止することができる。
【0033】
また、保管ケース3の内部が大気圧よりやや高めになるので、ケースの微小なすき間からケース内部へ空気(酸素)が進入する可能性も低くなり、印刷ドラム1のインキは長期間固化せずに保たれることになる。なお、図5,図6に示す保管ケース3の内部には印刷ドラム1が収納されているが、図が繁雑になるので省略している。
【0034】
保管ケース3内に充填するものとしては、窒素ガスや二酸化炭素ガス以外に水蒸気13を充填しても良い。この場合には、図7に示すように、ケース上部に設けた充填部34に水蒸気発生装置12を接続し、開閉弁7,11を開くことで保管ケース3の内部に水蒸気13を充填することができる。無論充填完了後は開閉弁7,11を閉じることで保管ケース3の内部を密閉状態とすることができる。
【0035】
水蒸気13は水が気化したものなので、人体にも無害であり容易に供給可能である。水の飽和水蒸気圧は100℃で1気圧になるので、保管ケース3に充填する水蒸気の温度は100℃以上であるのが望ましい。また、保管ケース3の内部に充填された水蒸気13は、徐々に室温まで冷やされ、飽和水蒸気圧が下がるので、密閉してある保管ケース3の内部圧力は低くなって負圧化される。このため、本体30と蓋31の接合面同士が強く押付けられることになり、保管ケース3を適切な強度とすることで、接合面の密閉度を高めることができ、気密不足によるケース内部への空気の進入を効果的に防止することができる。
【0036】
油中水型エマルジョンインキの酸化重合を抑制することでインキの固化を防止できることを考えると、保管ケース3の内部の酸素を吸収する脱酸素剤14を保管ケース3の内部に同封して印刷ドラム1を保管しても良いし、保管ケース3内の空気を排出して減圧して保管ケース3の内部の酸素量を少なくして印刷ドラム1を保管してもよい。
【0037】
保管ケース3の内部に図8に示すように脱酸素剤14を同封して保管ケース3の蓋31を閉じてロック手段32でロックして密閉すると、時間の経過とともに保管ケース3の内部の酸素が脱酸素剤14により吸着・除去される。このため、インキ含有の乾性油、半乾性油入りインキの酸化重合がなされなくなり、インキの固化を長期間防止することができる。脱酸素剤14としては、鉄系脱酸素剤が広く使われている。これは鉄が酸化する事で、密閉された保管ケース3の中部の酸素を除去するものである。適切な条件で脱酸素剤14を使用した場合、保管ケース3の中部の酸素濃度を0.1%以下にすることができる。
【0038】
このように、空気成分の20%を占める酸素が除去されると、保管ケース3の内部圧力は低くなるので、不活性ガス4を充填する場合よりも保管ケース3の密閉度を高めにすることで、大気中から保管ケース3の内部への酸素の浸入を防止できるのでより好ましい。また、保管ケース3の内部の圧力が負圧になると、本体30と蓋31の接合面同士が強く押付けられるので、保管ケース3を適切な強度とすることで、接合面の密閉度を高くすることができる。
【0039】
保管ケース3の内部を減圧する場合には、図9に示すように、長期間印刷を行わない時は印刷ドラム1を保管ケース3に収納し、排出部35の開閉弁11に吸引手段となる真空ポンプ15を接続して作動することで、保管ケース3の内部の空気が保管ケース3の外部へ排出されるため、必然的にケース内部の酸素ガスも同時に排出されることになる。この場合、排出部35は減圧部として機能することになる。
【0040】
このように保管ケース3の内部を減圧すると保管ケース3の内部に酸素が存在しなくなるので、酸化重合によるインキの固化が進行しなくなる。このため、保管ケース3を開放しない限りは長期間、印刷ドラム1が保持しているインキの固化が進行していない、フレッシュな状態で保管することができ、次の印刷時に良好な印刷を行えるようになる。
【0041】
この場合、保管ケース3に対して何かを供給するわけではないので、不活性ガス4、水蒸気13、脱酸素剤14などの供給物(サプライ)が不用となる。真空ポンプ15を動作する動力だけ供給すれば良い。動力供給源としては商用電源でも良いが、手動による構成も可能である。また保管ケース3の内部の圧力は当然低くなるので、本体30と蓋31の接合面同士が強く押付けられるので、保管ケース3を適切な強度とすることで、接合面の密閉度を高くすることができ、不活性ガス4の充填状態をより確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明にかかる印刷ドラムと、このドラムが着脱される印刷装置の一形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態である保管ケースの概観を示す斜視図である。
【図3】図2に示す保管ケースの開いた状態を示す斜視図である。
【図4】不活性ガスを収納された金属容器の一形態を示す斜視図である。
【図5】保管ケースに窒素ガスを充填する方法を説明するための模式図である。
【図6】保管ケースに二酸化炭素ガスを充填する方法を説明するための模式図である。
【図7】保管ケースに水蒸気を充填する方法を説明するための模式図である。である。
【図8】保管ケースに脱酸素剤を導入した形態を説明するための模式図である。
【図9】保管ケースの内部を減圧する形態を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 印刷ドラム
3 保管ケース
4 不活性ガス
8,9 充填手段
12 脱酸素剤
13 水蒸気
14 水蒸気充填手段
15 吸引手段
34 充填部
35 排出部(減圧部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法であって、
前記印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部に前記油中水型エマルジョンインキの酸化重合を抑制するための不活性ガスを充填して、前記印刷ドラムを保管することを特徴とする印刷ドラムの保管方法。
【請求項2】
請求項1記載の印刷ドラムの保管方法において、
前記不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする印刷ドラムの保管方法。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷ドラムの保管方法において、
前記保管ケースの上部と下部に充填部と排出部をそれぞれ設け、前記充填部から前記保管ケースの内部に充填手段で前記窒素ガスを充填するとともに、前記排出部から前記収納ケース内の空気を排出することを特徴とする印刷ドラムの保管方法。
【請求項4】
請求項1記載の印刷ドラムの保管方法において、
前記不活性ガスが二酸化炭素ガスであることを特徴とする印刷ドラムの保管方法。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷ドラムの保管方法において、
前記保管ケースの上部と下部に排出部と充填部をそれぞれ設け、前記充填部から前記保管ケースの内部に充填手段で前記二酸化炭素ガスを充填するとともに、前記排出口から前記保管ケースの内部の空気を排出することを特徴とする印刷ドラムの保管方法。
【請求項6】
油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法であって、
前記印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部の酸素を吸収する脱酸素剤を同ケースの内部に前記印刷ドラムと同封して前記印刷ドラムを保管することを特徴とする印刷ドラムの保管方法。
【請求項7】
油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法であって、
前記印刷ドラムを保管ケースの内部に収納し、この保管ケースの内部に水蒸気充填手段で水蒸気を充填して前記印刷ドラムを保管することを特徴とする印刷ドラムの保管方法。
【請求項8】
油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムの保管方法であって、
前記印刷ドラムを保管ケースの内部に収納するとともに、この保管ケースの内部の空気を吸引手段で排出して減圧した状態で前記印刷ドラムを保管すること特徴とする印刷ドラムの保管方法。
【請求項9】
油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムをその内部で保管する保管ケースであって、
前記保管ケースの内部に不活性ガスあるいは水蒸気を充填する充填部と、前記保管ケースの内部の空気をケース外部に排出する排気部を有することを特徴とする保管ケース。
【請求項10】
油相に乾性油あるいは半乾性油を含有する油中水型エマルジョンインキを使用する印刷ドラムをその内部で保管する保管ケースであって、
この保管ケースの内部と連通するとともに、吸引手段が接続される減圧部を有することを特徴とする保管ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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