説明

印刷プログラム、情報処理装置および記録媒体

【課題】印刷データに、PCに記憶されたフォントを使用したウォーターマークを透過させて付加することができる印刷プログラム、情報処理装置および記録媒体を提供する。
【解決手段】文字列の塗り潰しを指示する第1コマンドを生成する第1生成部と、生成された第1コマンドをプリンタドライバに送信する第1送信部と、第1コマンドを受信した場合に、第2コマンドを生成する第2生成部と、第1コマンドと、第2コマンドを送信する第2送信部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷プログラム、情報処理装置および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタドライバには、アプリケーションから印刷したデータに、文字データ(「社外秘」等)、図形データ、画像データを付加するというウォーターマーク(Water Mark)機能があることが既に知られている。
【0003】
通常、ポストスクリプト等のページ記述言語を使用する情報処理装置がウォーターマーク機能を実現する場合、情報処理装置はプリンタに対しウォーターマークの印刷を指定するコマンドを送信する。このコマンドには付加するウォーターマークのフォントや文字列が含まれる。プリンタは情報処理装置からコマンドを受信し、内蔵しているフォントを使用してラスタライズすることでデバイスフォントによるウォーターマーク出力を行う。
【0004】
しかし、従来は、プリンタに内蔵されているフォントでなければデバイスフォントでウォーターマーク機能を実現することができなかった。例えば、情報処理装置がフォントCをサポートしていないプリンタに対し、フォントCでウォーターマークを付加するコマンドを送信した場合、プリンタはウォーターマークを付加することができなかった。
【0005】
この問題を解決する方法として、PC(Personal Computer)のOS(Operating System)の機能として実装されているアウトラインフォントシステムの1つであるTrue Typeフォントを使ってウォーターマークを付加する方法が普及している。
【0006】
しかし、ポストスクリプトではPCのTrue Typeフォントを使用してOSに描画させてラスタライズされたデータを送信することはできるが、ラスタオペレーションをサポートしていないため、ラスタオペレーションを用いて透過させることができなかった。ここで、ラスタオペレーションとは、描画の際に、描画される色(ソース)と描画する色(ディスティネーション)をピクセルレベルで比較して比較結果に基づいて描画命令を実行するピクセル操作のことである。
【0007】
また、フォントを内蔵しておらず、ウォーターマークのコマンドに対応できないプリンタでウォーターマークを含むマークや模様を印刷する目的で、ウォーターマーク機能を実現可能なプリンタドライバを備えた印刷システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1のプリンタドライバは、用紙上に予め印刷される地模様のビットマップデータを指定し、地模様が印刷された用紙上に重ねて印刷される任意の画像のビットマップデータを生成し、生成したビットマップデータを印刷用データに重ね合わせてプリンタに供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、印刷データ上にウォーターマークを透過させたビットマップデータを新たに生成することはできるが、ミニドライバのようなOSが提供する機能を利用するプリンタドライバではPCのTrue Typeフォントを使用したウォーターマークを印刷データ上に透過させて付加することはできなかった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印刷データに、PCにインストールされたフォントを使用したウォーターマークを透過させて付加することができる印刷プログラム、情報処理装置および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる印刷プログラムは、コンピュータを、描画処理部と、印刷データを処理する処理制御部として機能させ、前記処理制御部は、前記コンピュータに記憶されたフォントによる文字列であって、前記印刷データに付加される文字列の塗り潰しを指示する第1コマンドを生成する第1生成部と、生成された前記第1コマンドを前記プリンタドライバに送信する第1送信部と、を備え、前記描画処理部は、前記第1コマンドを受信した場合に、前記文字列を塗り潰す部分と、前記文字列を塗り潰さず前記印刷データを透過させる部分とからなるマスクパターンにより前記文字列を出力する指示である第2コマンドを生成する第2生成部と、生成された前記第1コマンドと、生成された前記第2コマンドを送信する第2送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる情報処理装置は、コンピュータに記憶されたフォントによる文字列であって、前記印刷データに付加される文字列の塗り潰しを指示する第1コマンドを生成する第1生成部と、生成された前記第1コマンドをプリンタドライバに送信する第1送信部と、前記第1コマンドを受信した場合に、前記文字列を塗り潰す部分と、前記文字列を塗り潰さず前記印刷データを透過させる部分とからなるマスクパターンにより前記文字列を出力する指示である第2コマンドを生成する第2生成部と、生成された前記第1コマンドと、生成された前記第2コマンドを送信する第2送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる記録媒体は、コンピュータに記憶されたフォントによる文字列であって、前記印刷データに付加される文字列の塗り潰しを指示する第1コマンドを生成する第1生成部と、生成された前記第1コマンドをプリンタドライバに送信する第1送信部と、前記第1コマンドを受信した場合に、前記文字列を塗り潰す部分と、前記文字列を塗り潰さず前記印刷データを透過させる部分とからなるマスクパターンにより前記文字列を出力する指示である第2コマンドを生成する第2生成部と、生成された前記第1コマンドと、生成された前記第2コマンドを送信する第2送信部と、を備えた印刷プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷データに、PCにインストールされたフォントを使用したウォーターマークを透過させて付加することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる情報処理装置が接続された印刷システムの全体構成図である。
【図2−1】図2−1は、プリンタによるウォーターマークの出力結果の一例を示す図である。
【図2−2】図2−2は、プリンタによるウォーターマークの出力結果の一例を示す図である。
【図3】図3は、Windows(登録商標)プリントアーキテクチャの動作順序を示す流れ図である。
【図4】図4は、PCの構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、プリントプロセッサの機能ブロック図である。
【図6】図6は、プリンタドライバの機能ブロック図である。
【図7】図7は、PCによる印刷指示送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、透過パターンを設定するユーザインタフェースの一例を示す図である。
【図9】図9は、プリントプロセッサからGDIに送信されるコマンドの一例を示す図である。
【図10】図10は、ウォーターマークの文字列のうち塗り潰す部分と透過させる部分とを示す図である。
【図11】図11は、プリンタドライバにより生成されるマスクパターンのコマンドの一例を示す図である。
【図12】図12はプリンタによる印刷結果の一例を示す図である。
【図13】図13は、プリンタドライバにより決定される塗り潰す部分を示す図である。
【図14】図14は、プリンタドライバにより生成されるマスクパターンのコマンドの一例を示す図である。
【図15】図15はプリンタによる印刷結果の一例を示す図である。
【図16】図16は、プリンタドライバにより決定される塗り潰す部分を示す図である。
【図17】図17は、プリンタドライバにより生成されるマスクパターンのコマンドの一例を示す図である。
【図18】図18は、本実施の形態にかかる情報処理装置のハードウェア構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本実施の形態にかかる情報処理装置が接続された印刷システムの全体構成を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる情報処理装置が接続された印刷システムの全体構成図である。図1に示すように、印刷システムは、情報処理装置としてのPC(Personal Computer)100と、プリンタ200aと、プリンタ200b(以下、プリンタ200と総称する。)とがネットワーク180により接続されている。
【0016】
PC100は、ユーザから印刷データに描画データを付加する指示を受け付け、指示に従って描画データを生成し、プリンタ200に印刷データと生成した描画データと共に印刷指示を送信し、印刷させる。
【0017】
プリンタ200は、PC100から印刷データに描画データを付加する印刷指示を受信した場合、PC100からの印刷指示に従って印刷データおよび描画データを印刷する。
【0018】
次に、デバイスフォントを使用してウォーターマークを印刷する従来例を説明する。図2−1および図2−2は、プリンタによるウォーターマークの出力結果の一例を示す図である。図2−1に示すように、PCは、フォントAでウォーターマークの文字列「社外秘」を書くようにプリンタに指示する。プリンタは、フォントAとフォントBを内蔵しているので、PCからの指示によりフォントAを用いて文字列「社外秘」を印字することが可能である。
【0019】
一方、図2−2では、PCは、フォントCでウォーターマークの文字列「社外秘」を書くようにプリンタに指示する。プリンタは、フォントAとフォントBを内蔵し、フォントCをサポートしていない。そこで、プリンタは、フォントCによるウォーターマークを印字することができない。このように、従来、デバイスフォントを使用してウォーターマークを印刷する場合、プリンタに内蔵されていないフォントではウォーターマークを印刷することができなかった。
【0020】
次に、上記従来の問題を解決する本実施の形態について説明する。図3は、Windows(登録商標)プリントアーキテクチャを用いたPC100による印刷動作の流れの概要を説明する。図3は、Windows(登録商標)プリントアーキテクチャの動作順序を示す流れ図である。図3に示すように、PC100は、ユーザから印刷設定を受け付けるプリンタドライバのUI部106aと、ユーザから印刷命令を受け付けるアプリケーション104と、受け取ったGDIコールをEMFデータやDDIコールに変換し、スプーラ105bやプリンタドライバ106に渡すGDI105aと、データの言語形式を変換するプリンタドライバ106と、印刷データを蓄積するスプーラ105bと、スプーラ105bから受け取った印刷データを編集するプリントプロセッサ107を備え、プリンタ200と接続されている。なお、各部の機能および構成の詳細については後述する。
【0021】
まず、UI部106aは、ユーザから印刷設定の変更を受け付ける(ステップS1)。例えば、UI部106aは、印刷データに付加するウォーターマークの印刷設定を受け付ける。ウォーターマークの印刷設定には、印刷データの一部をマスクするマスクパターンの指定が含まれる。また、マスクパターンは、印刷データの解像度、指定された文字列および透過パターンで構成される。なお、文字列は、PC100にインストールされたフォントによる文字であり、透過パターンは、文字列を塗り潰す部分(以下、塗り潰す部分という。)と、塗り潰さず印刷データを透過させる部分(以下、透過させる部分という。)とで形成されるパターンである。
【0022】
アプリケーション104は、ユーザから印刷命令を受け付ける(ステップS2)。アプリケーション104は、UI部106aおよびDEVMODEと呼ばれる印刷設定が入っている構造体とやり取りすることによりユーザの印刷設定を受け付ける(ステップS3、ステップS4)。ここで、アプリケーション104は、印刷設定とともに、印刷対象となる印刷データの指定を受け付ける。印刷データは、アプリケーション104によるプロセス過程においてEMF(Enhanced Metafile Format)形式で作成されたものである。なお、プリントプロセッサ107から送信されたGDIコールのDDIコールへの変換は、スプーラ105bによるスプールプロセスにおいて実行される。
【0023】
アプリケーション104は、GDI105aに印刷データの印刷命令をGDI(Graphic Device Interface)コールとして伝える(ステップS5)。GDI105aは、スプールデータとしてEMF形式の印刷データをスプーラ105bに渡す(ステップS6)。スプーラ105bは、アプリケーション104により作成された印刷データを全てスプールすると、プリントプロセッサ107に印刷データをデスプールする通知を送信した上で、プリントプロセッサ107に印刷データをデスプールする(ステップS7)。
【0024】
プリントプロセッサ107は、スプーラ105bから受信した印刷データを読み取ってページごとに編集し、編集した内容をGDI105aにGDIコールとして伝える(ステップS8)。ここで、プリントプロセッサ107は、UI部106aが受け付けた印刷設定に従って印刷データをデバイスコンテキストに描画し編集する。
【0025】
GDI105aは、プリンタドライバ106にプリントプロセッサ107から受信したGDIコールを、パススルーデータを含むDDI(Device Driver Interface)コールとして伝える(ステップS9)。なお、DDIコールに含まれるパススルーデータは、マスクパターンをプリンタ200に出力させる指示であり、識別子等であってもよい。
【0026】
プリンタドライバ106は、GDI105aから受信したパススルーデータを含むDDIコールを受信すると、印刷命令の対象となるEMF形式の印刷データをRAW形式に変換し、変換したRAWデータをスプーラ105bに送信する(ステップS10)。
【0027】
スプーラ105bは、プリンタドライバ106から受信したパススルーデータを含むRAWデータをプリンタ200に送信する(ステップS11)。
【0028】
図4は、PC100の構成を示すブロック図である。図4に示すように、PC100は、処理部101と、記憶部102と、通信部103とを備えている。処理部101は、図示しない制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)と、ROMおよびメインメモリとなるRAMを有するメモリ群とを含んで構成されている。PC100の起動・実行時には、ROMおよび記憶部102からアプリケーション104と、OS105と、各種ドライバ(図4においては、プリンタドライバ106のみ記載)と、プリントプロセッサ107とが、メインメモリ上にロードされ展開されて、これらがCPUにより実行される。
【0029】
なお、PC100は、キーボードやマウスなどの入力装置やディスプレイなどの出力装置等を備える通常のコンピュータを利用したハードウェア構成を有するが、図4においては説明の簡潔化のため省略している。
【0030】
図4に示す処理部101内の機能ブロック(後述)は、プリンタ200に対する印刷制御を実現するための主要部となる機能または手段である。
【0031】
記憶部102は、様々な情報を記憶する記憶手段である。具体的にはHDD等である。記憶される情報には、プリンタドライバ106が有する機能を実現するための処理に関する情報(処理に用いる設定値や、設定値の変更をするための表示情報など、処理に必要なあらゆる情報)を定義した設定情報がある。
【0032】
通信部103は、ネットワーク180を介して接続されたプリンタ200と情報の送受信を行うネットワークI/Fである。
【0033】
アプリケーション104は、ユーザが印刷指示することができるソフトウェア(例えば、ワードプロセッサ)とする。ユーザはアプリケーション104で編集したデータを印刷したい場合、アプリケーション104が、ユーザによる印刷指示を受け付ける。この場合、アプリケーション104は、単体でプリンタ200に対する印刷データの生成を行わず、上記印刷指示に応じた印刷要求と共に、印刷対象の情報を、GDI105aや、UI部(プリンタドライバ)106aに対してDEVMODEで渡す。例えば、アプリケーション104は、印刷データをGDI(Graphics Device Interface)コールでOS105のGDI105aに渡す。
【0034】
OS105は、PC100のハードウェアとソフトウェアとを管理するプログラムである。OS105は、プログラムの起動、情報の読み込みや保存の制御等を行う。OSのうち代表的なものとしては、MS Windows(登録商標)等が知られている。また、OS105のGDI105aは、アプリケーション104からGDIコールで渡された設定情報を含む印刷要求と共に、印刷対象の情報(テキストデータ、グラフィック・データ、イメージ・データ等)を、DDI(Device Driver Interface)コールでプリンタドライバ106に渡す。そして、プリンタドライバ106で生成された印刷データをスプーラ105bに蓄え、順次通信部103に供給してプリンタ200に送る。
【0035】
プリントプロセッサ107は、印刷データを処理する処理制御部としての機能を有し、スプーラ105bからスプールされた印刷データを受け取る。また、プリントプロセッサ107は、アプリケーション104により受付けたユーザ指示に従って、印刷データに付加する描画データを生成する。
【0036】
図5は、プリントプロセッサ107の機能ブロック図である。図5に示すように、プリントプロセッサ107は、第1生成部107aと、送受信部107bを備える。
【0037】
第1生成部107aは、UI部106aにより受け付けたウォーターマークの印刷設定の指示により、塗り潰しコマンドを生成する。ここで、塗り潰しコマンドとは、マスクパターンを構成する文字列を塗り潰すコマンドのことである。
【0038】
送受信部107bは、第1生成部107aにより生成された塗り潰しコマンドを、GDI105aを介してプリンタドライバ106に送信する第1送信部としての機能を有する。送受信部107aは、プリンタドライバ106、GDI105aと各種情報を送受信する。
【0039】
次に、プリンタドライバ106の詳細を、図6を用いて説明する。図6は、プリンタドライバ106の機能ブロック図である。図6に示すように、プリンタドライバ106は、描画処理部としての機能を有し、UI部106aと、描画部106bと、第2生成部106cと、出力制御部106dと、送受信部106eとを備える。
【0040】
UI部106aは、ユーザによる印刷設定を受け付けるユーザインタフェース(UI)を制御する。例えば、UI部106aは、印刷データに付加するウォーターマークの印刷設定(解像度、文字列、透過パターン)を受け付ける。UI部106aは、受け付けた印刷設定を、GDI105aを介してプリントプロセッサ107に送信する。
【0041】
第2生成部106cは、アプリケーション104で作成された印刷データをプリンタが理解可能な形式に変換する。例えば、描画部106bは、アプリケーション104からEMF形式で作成された印刷データを、RAW形式に変換する。
【0042】
また、第2生成部106cは、GDI105aを介してプリントプロセッサ107から塗り潰しコマンドを受信すると、マスクパターンのポストスクリプトコマンドを生成する。マスクパターンのポストスクリプトコマンドとは、塗り潰す部分と透過させる部分に従ってマスクパターンを出力するポストスクリプトで生成された命令であり、塗り潰す部分と透過させる部分を含む。例えば、第2生成部106cは、UI部106aにより受け付けた印刷データの解像度、文字列、および透過パターンにより塗り潰す部分と透過させる部分とを決定し、決定した塗り潰す部分と透過させる部分をマスクパターンのポストスクリプトコマンドとする。
【0043】
出力制御部106dは、第2生成部106cにより生成されたマスクパターンのポストスクリプトコマンドを、送受信部106eを介してプリンタ200に送信し、プリンタ200に送信した印刷データにマスクパターンを付加して出力させる。
【0044】
送受信部106eは、プリントプロセッサ107から塗り潰しコマンドを、GDI105aを介して受信する。また、送受信部106eは、GDI105a、プリントプロセッサ107、スプーラ105b、プリンタ200等と各種情報を送受信する。
【0045】
次に、以上のように構成されたPC100によりプリンタ200に印刷指示を送信する印刷指示送信処理の手順について説明する。図7は、PC100による印刷指示送信処理の手順を示すフローチャートである。
【0046】
UI部106aは、ユーザからウォーターマークの印刷設定を受け付ける(ステップS101)。ここで、UI部106aは、ウォーターマークの印刷設定として、印刷データの解像度、文字列、および透過パターンの指定を受け付ける。アプリケーション104は、ユーザから印刷命令を受け付ける(ステップS102)。ここで、アプリケーション104は、GDI105a、UI部106aに対してDEVMODEを渡す。
【0047】
アプリケーション104は、GDI105aに対してウォーターマークの印刷設定を含む印刷データをGDIコールで渡す(ステップS103)。
【0048】
GDI105aは、アプリケーション104からGDIコールにより印刷設定を含む印刷データを受け取り、EMFデータに変換し、変換したEMFデータをスプーラ105bに渡す(ステップS104)。
【0049】
スプーラ105bは、EMFデータをプリントプロセッサ107に渡す(ステップS105)。プリントプロセッサ107は、出力するウォーターマークの文字列のパスを取得し、取得した文字列のパスの中を塗り潰すというポストスクリプトコマンドをパススルーデータとして生成する(ステップS106)。
【0050】
プリントプロセッサ107は、GDI105aに対してパススルーデータと印刷設定を含む印刷データをGDIコールで渡す(ステップS107)。GDI105aは、GDIコールを受け取り、受け取ったGDIコールをDDIコールに変換しプリンタドライバ106に渡す(ステップS108)。
【0051】
プリンタドライバ106は、指定された透過パターンを取得し、ポストスクリプトコマンドを生成する(ステップS109)。ここで、プリンタドライバ106は、塗り潰す部分と透過させる部分とを含むポストスクリプトコマンドを生成する。
【0052】
プリンタドライバ106は、GDI105aからDDIコールで受け取ったパススルーデータをPDL(Page Description Language)(ポストスクリプト)に変換する(ステップS110)。
【0053】
プリンタドライバ106は、生成し、変換したポストスクリプトコマンドと、受け取ったパススルーデータをスプーラ105bに渡す(ステップS111)。スプーラ105bは、受け取った印刷データであるRAWデータをプリンタ200に送信する(ステップS112)。
【0054】
図8は、透過パターンを設定するユーザインタフェースの一例を示す図である。図8に示すように、PC100の操作表示部(不図示)には、「基本」、「縦縞」、「横縞」、「自分で設定」の4種類の透過パターンが選択可能に表示される。なお、「自分で設定」が選択された場合、透過パターンの詳細をユーザが独自に作成、定義可能に設定する画面を呼び出すための「詳細設定」が併せて選択可能に表示させる。
【0055】
UI部106aが、ユーザから「基本」の選択を受け付けた場合、プリンタドライバ106は、文字列「A」が格子柄のパターンを形成するように塗り潰す部分と透過させる部分とを決定する。また、UI部106aが、ユーザから「縦縞」の選択を受け付けた場合、プリンタドライバ106は文字列「A」が縦縞のパターンを形成するように塗り潰す部分と透過させる部分とを決定する。また、UI部106aが、ユーザから「横縞」の選択を受け付けた場合、プリンタドライバ106は文字列「A」が横縞のパターンを形成するように塗り潰す部分と透過させる部分とを決定する。さらに、UI部106aは、ユーザから「自分で設定」の選択を受け付けた場合、プリンタドライバ106は、ユーザにより設定されたマスクパターンを形成するように塗り潰す部分と透過させる部分とを決定する。なお、プリンタドライバ106は、塗り潰す部分と透過させる部分とを解像度や印刷データ等に応じて決定する。
【0056】
次に、ウォーターマークの透過パターンに従ってプリンタドライバ106により決定される塗り潰す部分と透過させる部分について、図8で示した透過パターンの種類別に説明する。図9は、プリントプロセッサ107からGDI105aに送信されるコマンドの一例を示す図である。図9では、SetPatternからClosepathで特定されたパスを塗り潰す(fill)コマンドが指定されている。
【0057】
まず、印刷データの解像度1200dpi、透過パターン「基本(格子柄)」(図8)が選択された場合にプリンタドライバ106により決定される塗り潰す部分について説明する。図10は、ウォーターマークの文字列のうち塗り潰す部分と透過させる部分とを示す図である。
【0058】
図10の左側の図で、「1」は、プリンタドライバ106により決定された塗り潰す部分を示し、「0」は、プリンタドライバ106により決定された透過させる部分を示す。ここでは、プリンタドライバ106は、行では「0」と「1」がそれぞれ2つ連続させ、かつ、列の前後で「0」と「1」が異なる配置となるように、塗り潰す部分である「1」のパターンを決定している。
【0059】
プリンタドライバ106は、塗り潰す部分「1」と、透過させる部分「0」で構成される透過パターンをプリンタ200に送信する。図10の右側の図は、プリンタ200によるウォーターマークの出力結果を示す。プリンタ200は、塗り潰す部分「1」と、透過させる部分「0」に従って図10の右側の図に示すようにウォーターマークを印字する。これにより、基本(格子柄)の透過パターンが形成される。
【0060】
図11は、プリンタドライバ106により生成されるマスクパターンのコマンドの一例を示す図である。図11では、プリンタドライバ106は、たとえば、透過パターンの種類を「Pattern Type1」等で指定し、塗り潰す領域のサイズ(8×8)等を数字で指定している。プリンタドライバ106は、生成したコマンドを、スプーラ105bを介してプリンタ200に送信する。
【0061】
図12はプリンタ200による印刷結果の一例を示す図である。図12では、ウォーターマークの文字列「A」を塗り潰して出力した印刷結果のイメージを示す。図12では、図9で示された文字列「A」のパスである座標(100、100)、(80、180)、(85、180)、(125、180)、(130、180)、(110、100)に従って文字列「A」が生成されている。
【0062】
プリンタ200は、プリントプロセッサ107により生成された「A」のパスを、図10に示す透過パターンで塗り潰して印刷している。ここで、プリンタ200により黒く塗り潰された部分は、背面の印刷データが透けないが、黒く塗り潰されていない部分は背面の印刷データが透けている。これにより、印刷データ上でウォーターマークが透過しているように見える。
【0063】
次に、印刷データの解像度600dpi、透過パターン「横縞」(図8)が選択された場合にプリンタドライバ106により決定される塗り潰す部分について説明する。図13は、プリンタドライバ106により決定される塗り潰す部分を示す図である。図13の左側の図で、「1」は、プリンタドライバ106により決定された塗り潰す部分を示し、「0」は、プリンタドライバ106により決定された透過させる部分を示す。ここでは、プリンタドライバ106は、「0」と「1」をそれぞれ1つの行に同一の数字を並べ、かつ、2列ごとに「0」と「1」が交互に現われる配置となるように、塗り潰す部分である「1」のパターンを決定している。
【0064】
プリンタドライバ106は、塗り潰す部分「1」と、透過させる部分「0」で構成される透過パターンをプリンタ200に送信する。図13の右側の図は、プリンタ200によるウォーターマークの出力結果を示す。プリンタ200は、塗り潰す部分「1」と、透過させる部分「0」に従って図13の右側の図に示すようにウォーターマークを印字する。これにより、横縞の透過パターンが形成される。
【0065】
図14は、プリンタドライバ106により生成されるマスクパターンのコマンドの一例を示す図である。図14では、プリンタドライバ106は、たとえば、透過パターンの種類を「Pattern Type1」等で指定し、塗り潰す領域のサイズ(8×8)等を数字で指定している。プリンタドライバ106は、生成したコマンドを、スプーラ105bを介してプリンタ200に送信する。
【0066】
図15はプリンタ200による印刷結果の一例を示す図である。図15では、ウォーターマークの文字列「A」を塗り潰して出力した印刷結果のイメージを示す。図15では、図12と同様に、図11で示された文字列「A」のパスである座標(100、100)、(80、180)、(85、180)、(125、180)、(130、180)、(110、100)に従って文字列「A」が生成されている。
【0067】
プリンタ200は、プリントプロセッサ107により生成された「A」のパスを、図14に示す透過パターン(横縞)で塗り潰して印刷している。ここで、プリンタ200により黒く塗り潰された部分は、背面の印刷データが透けないが、黒く塗り潰されていない部分は背面の印刷データが透けている。これにより、印刷データ上でウォーターマークが透過しているように見える。
【0068】
次に、印刷データの解像度1200dpi、透過パターン「横縞」(図8)が選択された場合にプリンタドライバ106により決定される塗り潰す部分について説明する。図16は、プリンタドライバ106により決定される塗り潰す部分を示す図である。図16の左側の図で、「1」は、プリンタドライバ106により決定された塗り潰す部分を示し、「0」は、プリンタドライバ106により決定された透過させる部分を示す。ここでは、プリンタドライバ106は、「0」と「1」をそれぞれ1つの行に同一の数字を並べ、かつ、4列ごとに「0」と「1」が交互に現われる配置となるように、塗り潰す部分である「1」のパターンを決定している。
【0069】
プリンタドライバ106は、塗り潰す部分「1」と、透過させる部分「0」で構成される透過パターンをプリンタ200に送信する。図16の右側の図は、プリンタ200によるウォーターマークの出力結果を示す。プリンタ200は、塗り潰す部分「1」と、透過させる部分「0」に従って図16の右側の図に示すようにウォーターマークを印字する。これにより、横縞の透過パターンが形成される。
【0070】
図17は、プリンタドライバ106により生成されるマスクパターンのコマンドの一例を示す図である。図17では、プリンタドライバ106は、たとえば、透過パターンの種類を「Pattern Type1」等で指定し、塗り潰す領域のサイズ(16×16)等を数字で指定している。プリンタドライバ106は、生成したコマンドを、スプーラ105bを介してプリンタ200に送信する。
【0071】
次に、本実施の形態にかかる情報処理装置のハードウェア構成について図18を用いて説明する。図18は、本実施の形態にかかる情報処理装置のハードウェア構成を示す説明図である。
【0072】
本実施の形態にかかる情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)51などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)52やRAM(RANDOM Access Memory)53などの記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F54と、HDD(Hard Disk Drive)、CD(Compact Disc)ドライブ装置などの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、キーボードやマウスなどの入力装置と、各部を接続するバス61を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0073】
本実施の形態にかかる情報処理装置で実行される印刷プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD−R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供される。
【0074】
また、本実施の形態にかかる情報処理装置で実行される印刷プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施の形態にかかる情報処理装置で実行される印刷プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0075】
また、本実施の形態の印刷プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0076】
本実施の形態にかかる情報処理装置で実行される印刷プログラムは、上述した各部(第1生成部、第2生成部、出力制御部、送受信部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU51(プロセッサ)が上記記録媒体から印刷プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、上述した各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0077】
100 情報処理装置
101 処理部
102 記憶部
103 通信部
104 アプリケーション
105 OS
106 プリンタドライバ
106a UI部
106b 描画部
106c 第2生成部
106d 出力制御部
106e、107b 送受信部
107 プリントプロセッサ
107a 第1生成部
180 ネットワーク
200a、200b プリンタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開2002−333959号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、描画処理部と、印刷データを処理する処理制御部として機能させ、
前記処理制御部は、
前記コンピュータに記憶されたフォントによる文字列であって、前記印刷データに付加される文字列の塗り潰しを指示する第1コマンドを生成する第1生成部と、
生成された前記第1コマンドを前記プリンタドライバに送信する第1送信部と、
を備え、
前記描画処理部は、
前記第1コマンドを受信した場合に、前記文字列を塗り潰す部分と、前記文字列を塗り潰さず前記印刷データを透過させる部分とからなるマスクパターンにより前記文字列を出力する指示である第2コマンドを生成する第2生成部と、
生成された前記第1コマンドと、生成された前記第2コマンドを送信する第2送信部と、
を備えたことを特徴とする印刷プログラム。
【請求項2】
前記印刷データには、前記印刷データの解像度を含む印刷設定が付加されており、
前記第2生成部は、付加された前記印刷設定に含まれる前記解像度に応じて、異なる前記マスクパターンの出力を指示する第2コマンドを生成すること、
を特徴とする請求項1に記載の印刷プログラム。
【請求項3】
前記マスクパターンは、前記塗り潰す部分と、前記透過させる部分とからなる透過パターンにより前記文字列を構成し、構成した前記文字列により前記印刷データの一部をマスクするパターンであって、
前記印刷データには、複数の前記透過パターンのうち指定された透過パターンを含む印刷設定が付加されており、
前記第2生成部は、前記印刷データに付加された前記印刷設定に含まれる前記透過パターンにより前記文字列を構成し、構成した前記文字列により前記印刷データの一部をマスクする前記マスクパターンにより前記文字列を出力する指示である第2コマンドを生成すること、
を特徴とする請求項1に記載の印刷プログラム。
【請求項4】
前記透過パターンは、格子柄、横縞、および縦縞のうち少なくともいずれか1つであること、
を特徴とする請求項3に記載の印刷プログラム。
【請求項5】
コンピュータに記憶されたフォントによる文字列であって、前記印刷データに付加される文字列の塗り潰しを指示する第1コマンドを生成する第1生成部と、
生成された前記第1コマンドをプリンタドライバに送信する第1送信部と、
前記第1コマンドを受信した場合に、前記文字列を塗り潰す部分と、前記文字列を塗り潰さず前記印刷データを透過させる部分とからなるマスクパターンにより前記文字列を出力する指示である第2コマンドを生成する第2生成部と、
生成された前記第1コマンドと、生成された前記第2コマンドを送信する第2送信部と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
前記印刷データには、前記印刷データの解像度を含む印刷設定が付加されており、
前記第2生成部は、付加された前記印刷設定に含まれる前記解像度に応じて、異なる前記マスクパターンの出力を指示する第2コマンドを生成すること、
を特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記マスクパターンは、前記塗り潰す部分と、前記透過させる部分とからなる透過パターンにより前記文字列を構成し、構成した前記文字列により前記印刷データの一部をマスクするパターンであって、
前記印刷データには、複数の前記透過パターンのうち指定された透過パターンを含む印刷設定が付加されており、
前記第2生成部は、前記印刷データに付加された前記印刷設定に含まれる前記透過パターンにより前記文字列を構成し、構成した前記文字列により前記印刷データの一部をマスクする前記マスクパターンにより前記文字列を出力する指示である第2コマンドを生成すること、
を特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記透過パターンは、格子柄、横縞、および縦縞のうち少なくともいずれか1つであること、
を特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の印刷プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−118941(P2012−118941A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270728(P2010−270728)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】