説明

印刷ユニットおよび印刷システム

【課題】インクリボンのインクを被記録媒体フィルムに高い品質で転写することのできる印刷ユニットを提供する。
【解決手段】第1印刷ユニット15は、第1インクリボン15eを供給する第1インクリボン供給ロール15aと、第1インクリボン15eを巻き上げる第1インクリボン巻上ロール15bと、第1インクリボン供給ロール15aと第1インクリボン巻上ロール15bとの間に設けられた第1記録ヘッド15cと、を有している。このうち第1インクリボン供給ロール15aは、第1インクリボン供給ロール15aと第1記録ヘッド15cとの間における第1インクリボン15eの張力Tが一定となるよう駆動制御される。また第1インクリボン巻上ロール15bは、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力Tが一定となるよう駆動制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体フィルムを搬送する印刷システムの搬送ラインに沿って配置され、被記録媒体フィルムに対して印刷を施す印刷ユニットに関する。また本発明は、当該印刷ユニットを備えた印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被記録媒体フィルムに画像などを印刷する手段の1つとして、インクを含むインクリボンを被記録媒体フィルムに重ね合わせ、インクリボンのインクを被記録媒体フィルムに熱溶融転写または熱昇華転写する印刷ユニットが用いられている。印刷ユニットは、インクリボン供給ロール、インクリボン巻上ロール、サーマルヘッド等の記録ヘッドおよびプラテンロールを備え、被記録媒体フィルムの搬送ラインに沿って配置されている。
【0003】
このような印刷ユニットにおいて、例えば特許文献1に開示されているように、インクリボン巻上ロールには、巻上ロール用DCモータに連動する巻上駆動用歯車が取り付けられている。この巻上ロール用DCモータの駆動力により巻上駆動用歯車が回転され、これによって、インクリボンが、インクリボン供給ロールから記録ヘッドおよびプラテンロールを介してインクリボン巻上ロールへ搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−30376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクリボンをインクリボン供給ロールからインクリボン巻上ロールへ搬送するとき、インクリボンの弛みを防止するためにインクリボンに張力が印加される。ここで、インクリボンのインクを被記録媒体フィルムに高い品質で転写するためには、インクリボンへ印加される張力を常に一定に保つ必要がある。しかしながら、ステッピングモータなどのDCモータの駆動力によりインクリボンを搬送する場合、インクリボン巻上ロールに巻き取られたインクリボンの巻径に依存して、インクリボンへ印加される張力が変動することが考えられる。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、インクリボンへ印加される張力を常に一定に保つことにより、インクリボンのインクを被記録媒体フィルムに高い品質で転写することのできる印刷ユニットを提供することを目的とする。また本発明は、当該印刷ユニットを備えた印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被記録媒体フィルムを搬送する印刷システムの搬送ラインに沿って配置され、被記録媒体フィルムに対して印刷を施す印刷ユニットにおいて、インクリボンを供給するインクリボン供給ロールと、前記インクリボン供給ロールを駆動する供給ロール用駆動モータと、前記インクリボン供給ロールから供給されたインクリボンを巻き上げるインクリボン巻上ロールと、前記インクリボン巻上ロールを駆動する巻上ロール用駆動モータと、前記インクリボン供給ロールと前記インクリボン巻上ロールとの間に設けられ、インクリボンのインクを被記録媒体フィルムに圧着する記録ヘッドと、前記記録ヘッドとの間でインクリボンと被記録媒体フィルムとを挟持するプラテンロールと、前記インクリボン供給ロールと前記記録ヘッドとの間に設けられ、インクリボンに印加されている張力を検出するインクリボン供給側張力検出部と、を備え、前記供給ロール用駆動モータは、前記インクリボン供給側張力検出部からの信号に基づいて、前記インクリボン供給ロールと前記記録ヘッドとの間におけるインクリボンの張力が一定となるようインクリボン供給側制御部により制御されることを特徴とする印刷ユニットである。
【0008】
本発明による印刷ユニットにおいて、前記巻上ロール用駆動モータは、前記記録ヘッドと前記インクリボン巻上ロールとの間におけるインクリボンの張力が一定となるようインクリボン巻上側制御部により制御されてもよい。
【0009】
本発明による印刷ユニットは、前記インクリボン供給ロールの近傍に設けられ、インクリボン供給ロールに巻き取られているインクリボンの巻径を検出するインクリボン供給側巻径検出部をさらに備えていてもよい。この場合、前記インクリボン供給側制御部は、前記インクリボン供給側巻径検出部からの信号に基づいて、前記供給ロール用駆動モータを制御する際の制御係数を調整してもよい。
【0010】
本発明による印刷ユニットは、前記インクリボン巻上ロールの近傍に設けられ、インクリボン巻上ロールに巻き取られているインクリボンの巻径を検出するインクリボン巻上側巻径検出部をさらに備えていてもよい。この場合、前記巻上ロール用駆動モータは、前記インクリボン巻上側巻径検出部からの信号に基づいて、前記記録ヘッドと前記インクリボン巻上ロールとの間におけるインクリボンの張力が一定となるよう前記インクリボン巻上側制御部により制御されてもよい。
【0011】
本発明は、フィルム供給部とフィルム巻取部とを有し、被記録媒体フィルムを搬送する搬送ラインと、搬送ラインに沿って配置され、被記録媒体フィルムに対して印刷を施す複数の印刷ユニットと、を備え、各印刷ユニットは、上記記載の印刷ユニットのいずれかからなることを特徴とする印刷システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被記録媒体フィルムを搬送する印刷システムの搬送ラインに沿って配置され、被記録媒体フィルムに対して印刷を施す印刷ユニットは、インクリボンを供給するインクリボン供給ロールと、インクリボン供給ロールを駆動する供給ロール用駆動モータと、インクリボン供給ロールから供給されたインクリボンを巻き上げるインクリボン巻上ロールと、インクリボン巻上ロールを駆動する巻上ロール用駆動モータと、インクリボン供給ロールとインクリボン巻上ロールとの間に設けられ、インクリボンのインクを被記録媒体フィルムに圧着する記録ヘッドと、記録ヘッドとの間でインクリボンと被記録媒体フィルムとを挟持するプラテンロールと、インクリボン供給ロールと記録ヘッドとの間に設けられ、インクリボンに印加されている張力を検出するインクリボン供給側張力検出部と、を備えている。ここで、供給ロール用駆動モータは、インクリボン供給側張力検出部からの信号に基づいて、インクリボン供給ロールと記録ヘッドとの間におけるインクリボンの張力が一定となるようインクリボン供給側制御部により制御される。このため、インクリボン供給ロールに巻き取られているインクリボンの巻径に依らず、インクリボン供給ロールと記録ヘッドとの間におけるインクリボンの張力を常に一定に保つことができる。このことにより、インクリボンのインクを被記録媒体フィルムに高い品質で転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施の形態における印刷システム全体を示す図。
【図2】図2は、本実施の形態において、制御部による印刷システムの制御方法を示すブロック図。
【図3】図3は、本実施の形態における第1印刷ユニットを示す図。
【図4】図4は、本実施の形態において、第1インクリボン供給側制御部による第1供給ロール用駆動モータの制御方法を示すブロック図。
【図5】図5は、本実施の形態において、第1インクリボン巻上側制御部による第1巻上ロール用駆動モータの制御方法を示すブロック図。
【図6】図6(a)は、本実施の形態において、各印刷ユニットにおける搬送速度を示す図、図6(b)は、比較例において、各印刷ユニットにおける搬送速度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。はじめに、図1および図2を参照して、印刷システム10全体について説明する。
【0015】
印刷システム
本実施の形態における印刷システム10は、被記録媒体フィルムを高速で搬送することのできる印刷システムを提供することを目的として構成されたものである。
印刷システム10の搬送ラインにおける各搬送ローラーの駆動機構としてステッピングモータが用いられる従来のプリンタにおいては、被記録媒体フィルムを高速で搬送した場合、ステッピングモータの脱調が生じることが考えられる。特定のステッピングモータにおいて脱調が生じた場合、一の印刷ユニットにおける被記録媒体フィルムの搬送速度と、その他の印刷ユニットにおける被記録媒体フィルムの搬送速度との間にずれが生じることが考えられる。印刷ユニット間で被記録媒体フィルムの搬送速度にずれが生じることは、各印刷ユニットにおいて施される印刷処理の期間が、印刷ユニット間で相違することを意味している。このため、被記録媒体フィルムの所定の領域に施される印刷の濃度が、印刷ユニット間で異なってくると考えられる。このため、各搬送ローラーの駆動機構としてステッピングモータが用いられる従来のプリンタにおいては、脱調が生じるのを防ぐよう、一般に、被記録媒体フィルムが低速で搬送されている。
本実施の形態によれば、後述するように、一対の第3搬送ローラー27a、27aが、第3張力検出部27bからの信号に基づいて、被記録媒体フィルム13の張力が一定となるよう制御部30により駆動制御される。このため、被記録媒体フィルム13を高速に搬送した場合であっても、脱調が生じることはない。このことにより、濃度ムラを抑制するとともに、被記録媒体フィルム13を高速に搬送することが可能となる。
また本実施の形態によれば、後述するように、一対の第2搬送ローラー25a、25a(中間搬送ローラー)が、中間搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度が一定となるよう制御部30により駆動制御される。これによって、後述するように、濃度ムラをさらに抑制することができる。
【0016】
図1に示すように、印刷システム10は、フィルム供給部11とフィルム巻取部12とを有し、被記録媒体フィルム13を搬送する搬送ライン14と、フィルム供給部11側から順に搬送ライン14に沿って配置され、被記録媒体フィルム13に対して印刷を施す複数、例えば4つの印刷ユニット(第1印刷ユニット15、第2印刷ユニット16、第3印刷ユニット17、第4印刷ユニット18)を備えている。本実施の形態において、各印刷ユニット15、16、17、18は、それぞれシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックのインクを被記録媒体フィルム13に印刷するためのものである。尚、印刷ユニットは前記4色に限定されるものではなく、更に、その他の特色のインクを被記録媒体フィルム13に印刷する印刷ユニットが追加されていてもよい。
【0017】
以下、印刷システム10の構成要素についてそれぞれ詳細に説明する。はじめに、フィルム供給部11について説明する。
【0018】
フィルム供給部
フィルム供給部11は、図1に示すように、搬送ライン14に被記録媒体フィルム13を供給する供給ローラー21を有しており、この供給ローラー21は、第1ベクトルインバータモータ21aにより駆動される。また図1に示すように、供給ローラー21の下流側近傍には、供給ローラー21において被記録媒体フィルム13に印加される張力を検出する供給ローラー張力検出部21bが設けられている。そして第1ベクトルインバータモータ21aは、図2に示すように、供給ローラー張力検出部21bからの信号に基づいて、供給ローラー21における被記録媒体フィルム13の張力が一定となるよう制御部30により制御されている。
【0019】
供給ローラー張力検出部21bは、いわゆるピックアップ方式で被記録媒体フィルム13に印加されている張力を検出するものであり、図1に示すように、一対のガイド21f、21fと、一対のガイド21f、21f間に設けられたピックアップロール21eと、を含んでいる。
【0020】
フィルム巻取部
次にフィルム巻取部12について説明する。フィルム巻取部12は、図1に示すように、搬送ライン14から被記録媒体フィルム13を巻き取る巻取ローラー22を有しており、この巻取ローラー22は、第2ベクトルインバータモータ22aにより駆動される。また図1に示すように、巻取ローラー22の上流側近傍には、巻取ローラー22において被記録媒体フィルム13に印加される張力を検出する巻取ローラー張力検出部22bが設けられている。そして第2ベクトルインバータモータ22aは、図2に示すように、巻取ローラー張力検出部22bからの信号に基づいて、巻取ローラー22における被記録媒体フィルム13の張力が一定となるよう制御部30により制御されている。
【0021】
巻取ローラー張力検出部22bは、いわゆるピックアップ方式で被記録媒体フィルム13に印加されている張力を検出するものであり、図1に示すように、一対のガイド22f、22fと、一対のガイド22f、22f間に設けられたピックアップロール22eと、を含んでいる。
【0022】
なお、供給ローラー張力検出部21bおよび巻取ローラー張力検出部22bが、ピックアップ方式の張力検出器に限られることはなく、ダンサーロールの位置に基づいて張力を検出するダンサ方式の検出器など、様々な方式の張力検出器が適宜使用され得る。
【0023】
次に、フィルム供給部11側からフィルム巻取部12側に向って被記録媒体フィルム13を搬送するローラーについて説明する。
【0024】
第1搬送ローラー(供給側搬送ローラー)
搬送ライン14は、フィルム供給部11と第1印刷ユニット15との間に、被記録媒体フィルム13を搬送する一対の第1搬送ローラー(供給側搬送ローラー)23a、23aと、当該一対の第1搬送ローラー23a、23aの下流側近傍に設けられ、当該一対の第1搬送ローラー23a、23aにおいて被記録媒体フィルム13に印加される張力を検出する第1張力検出部(供給側張力検出部)23bとを有している。この一対の第1搬送ローラー23a、23aは、第1張力検出部23bからの信号に基づいて、当該一対の第1搬送ローラー23a、23aにおいて被記録媒体フィルム13に印加される張力が一定となるよう制御部30により駆動制御される。具体的には、図2に示すように、一対の第1搬送ローラー23a、23aは供給側ベクトルインバータモータ23dにより駆動されており、この供給側ベクトルインバータモータ23dは、第1張力検出部23bからの信号に基づいて制御部30により制御されている。
【0025】
第1張力検出部23bは、いわゆるピックアップ方式で被記録媒体フィルム13に印加されている張力を検出するものであり、図1に示すように、一対のガイド23f、23fと、一対のガイド23f、23f間に設けられたピックアップロール23eと、を含んでいる。
【0026】
第3搬送ローラー(巻取側搬送ローラー)
また搬送ライン14は、第4印刷ユニット18とフィルム巻取部12との間にも、被記録媒体フィルム13を搬送する一対の第3搬送ローラー(巻取側搬送ローラー)27a、27aと、当該一対の第3搬送ローラー27a、27a近傍に設けられ、当該一対の第3搬送ローラー27a、27aにおいて被記録媒体フィルム13に印加される張力を検出する第3張力検出部(巻取側張力検出部)27bとを有している。この一対の第3搬送ローラー27a、27aは、第3張力検出部27bからの信号に基づいて、当該一対の第3搬送ローラー27a、27aにおいて被記録媒体フィルム13に印加される張力が一定となるよう制御部30により駆動制御される。具体的には、図2に示すように、一対の第3搬送ローラー27a、27aは巻取側ベクトルインバータモータ27dにより駆動されており、この巻取側ベクトルインバータモータ27dは、第3張力検出部27bからの信号に基づいて制御部30により制御されている。
【0027】
第3張力検出部27bは、いわゆるピックアップ方式で被記録媒体フィルム13に印加されている張力を検出するものであり、図1に示すように、一対のガイド27f、27fと、一対のガイド27f、27f間に設けられたピックアップロール27eと、を含んでいる。
【0028】
なお、第1張力検出部23bおよび第3張力検出部27bが、ピックアップ方式の張力検出器に限られることはなく、ダンサーロールの位置に基づいて張力を検出するダンサ方式の検出器など、様々な方式の張力検出器が適宜使用され得る。
【0029】
第2搬送ローラー(中間搬送ローラー)
搬送ライン14はさらに、4つの印刷ユニット15、16、17、18のうち隣り合う第2印刷ユニット16と第3印刷ユニット17との間に、被記録媒体フィルム13を搬送する一対の第2搬送ローラー(中間搬送ローラー)25a、25aと、当該一対の第2搬送ローラー25a、25aの近傍に設けられ、当該一対の第2搬送ローラー25a、25aの単位時間あたりの回転数を検出する回転数検出部25eとを有している。この一対の第2搬送ローラー25a、25aは、当該中間搬送ローラー25a、25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度が一定となるよう制御部30により駆動制御されている。具体的には、図2に示すように、一対の第2搬送ローラー25a、25aは中間ベクトルインバータモータ27dにより駆動されており、この中間ベクトルインバータモータ25dは、回転数検出部25eからの信号に基づいて、中間搬送ローラー25a、25aの単位時間あたりの回転数が一定となるよう制御部30により制御されている。
【0030】
回転数検出部25eにより第2搬送ローラー25aの単位時間あたりの回転数を検出する方式が特に限られることはなく、周知の方式により第2搬送ローラー25aの単位時間あたりの回転数を検出することができる。
また、回転数検出部25eが第2搬送ローラー25aの近傍に設けられている例を示したが、これに限られることはなく、回転数検出部25eが中間ベクトルインバータモータ25dに内蔵されていてもよい。
また、第2搬送ローラー25aの単位時間あたりの回転数を検出する回転数検出部25eが設けられている例を示したが、これに限られることはなく、例えば第2搬送ローラー25aの回転速度と中間ベクトルインバータモータ25dの回転速度との比率が常に一定である場合、中間ベクトルインバータモータ25dの単位時間あたりの回転数を検出する回転数検出部が設けられていてもよい。この場合、中間ベクトルインバータモータ25dの単位時間あたりの回転数が一定となるよう、回転数検出部からの信号に基づいて中間ベクトルインバータモータ25dが制御部30により制御される。
【0031】
また、第2搬送ローラー25aまたは中間ベクトルインバータモータ25dの単位時間あたりの回転数を一定となるよう制御することにより、中間搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度を一定とする例を示したが、これに限られることはない。例えば、中間搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度を直接検出する速度検出器を中間搬送ローラー25a近傍に設け、当該速度検出器からの信号に基づいて、被記録媒体フィルム13の搬送速度が一定となるよう中間搬送ローラー25a、25を制御部30により駆動制御してもよい。
【0032】
なお、上述の一対の第1搬送ローラー23a、23a、一対の第2搬送ローラー25a、25aおよび一対の第3搬送ローラー27a、27aのうち、各ローラーに対する被記録媒体フィルム13の抱き角を画定している一方のローラー23a、25a、27a(図1において下側に配置されているローラー23a、25a、27a)が金属から形成され、他方のローラー23a、25a、27a(図1において上側に配置されているローラー23a、25a、27a)がゴムから形成されていてもよい。
【0033】
印刷システム10において、上述のように、供給ローラー21、巻取ローラー22、一対の第1搬送ローラー23a、23aおよび一対の第3搬送ローラー27a、27aは、被記録媒体フィルム13に印加される張力が一定となるよう制御部30により各々駆動制御されている。一方、一対の第2搬送ローラー25a、25aは、被記録媒体フィルム13の搬送速度が一定となるよう制御部30により駆動制御されている。このため、印刷システム10の搬送ライン14において、基準となる搬送速度は一対の第2搬送ローラー25a、25aにより決定される。この場合、供給ローラー21、巻取ローラー22、一対の第1搬送ローラー23a、23aおよび一対の第3搬送ローラー27a、27aは、一対の第2搬送ローラー25a、25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度が一定という条件の下、各ローラーにおいて被記録媒体フィルム13に印加される張力が一定となるよう制御部30により各々駆動制御される。このため、後述するように、一対の第2搬送ローラー25a、25aを一定速度で駆動制御しない場合に比べて、濃度ムラをより抑制することができる。
【0034】
また搬送ライン14において、図1に示すように、第1印刷ユニット15の前後に、被記録媒体フィルム13を案内する一対の第1案内ローラー31、31が設けられており、同様に、第2印刷ユニット16の前後に一対の第2案内ローラー32、32が設けられている。さらに、第2張力検出部25bおよび一対の第2搬送ローラー25a、25aの前後には一対の第3案内ローラー33、33が設けられ、第3印刷ユニット17の前後には一対の第4案内ローラー34、34が設けられ、第4印刷ユニット18の前後には一対の第5案内ローラー35、35が設けられている。
【0035】
印刷ユニット
次に、図3乃至図5を参照して、各印刷ユニット15、16、17、18について詳細に説明する。なお各印刷ユニット15、16、17、18は、各々のインクリボン15e、16e、17e、18eのインクの色が異なるのみであるから、ここでは、各印刷ユニット15、16、17、18のうち第1印刷ユニット15について説明する。他の印刷ユニット16、17、18の構成は、第1印刷ユニット15の構成と略同一である。
【0036】
図3に示すように、第1印刷ユニット15は、第1インクリボン15eを供給する第1インクリボン供給ロール15aと、第1インクリボン供給ロール15aからガイド15fに沿って供給された第1インクリボン15eを巻き上げる第1インクリボン巻上ロール15bと、第1インクリボン供給ロール15aと第1インクリボン巻上ロール15bとの間に設けられ、第1インクリボン15eのインクを被記録媒体フィルム13に圧着する第1記録ヘッド15cと、第1記録ヘッド15cとの間で第1インクリボン15eと被記録媒体フィルム13とを挟持する第1プラテンロール15dと、を有している。
【0037】
また図3に示すように、第1インクリボン供給ロール15aには、第1インクリボン供給ロール15aを回転駆動する第1供給ロール用駆動モータ51が連結されている。第1供給ロール用駆動モータ51は、連結シャフト(図示せず)などを介して第1インクリボン供給ロール15aに連結されている。また、第1供給ロール用駆動モータ51と第1インクリボン供給ロール15aとの間に、減速機(図示せず)などの回転速度調整機構が介在されていてもよい。第1供給ロール用駆動モータ51は、ベクトルインバータモータ、サーボモータまたはDCモータなどから適宜選択されるが、例えばベクトルインバータモータからなっている。
【0038】
また図3に示すように、第1インクリボン巻上ロール15bには、第1インクリボン巻上ロール15bを回転駆動する第1巻上ロール用駆動モータ52が連結されている。第1巻上ロール用駆動モータ52は、連結シャフト(図示せず)などを介して第1インクリボン巻上ロール15bに連結されている。また、第1巻上ロール用駆動モータ52と第1インクリボン巻上ロール15bとの間に、減速機(図示せず)などの回転速度調整機構が介在されていてもよい。第1巻上ロール用駆動モータ52は、ベクトルインバータモータ、サーボモータまたはDCモータなどから適宜選択されるが、例えばDCモータからなっている。
【0039】
第1供給ロール用駆動モータの制御機構
上述の第1供給ロール用駆動モータ51は、第1インクリボン供給ロール15aと第1記録ヘッド15cとの間における第1インクリボン15eの張力Tが一定となるよう制御される。以下、第1供給ロール用駆動モータ51を制御するための機構について、図3および図4を参照して説明する。
【0040】
図3に示すように、第1インクリボン供給ロール15aと第1記録ヘッド15cとの間には、第1インクリボン15eに印加されている張力Tを検出する第1インクリボン供給側張力検出部53が設けられている。また図3に示すように、第1インクリボン供給ロール15aの近傍には、第1インクリボン供給ロール15aに巻き取られている第1インクリボン15eの巻径を検出する第1インクリボン供給側巻径検出部54が設けられている。第1供給ロール用駆動モータ51は、これら第1インクリボン供給側張力検出部53および第1インクリボン供給側巻径検出部54からの信号に基づいて、第1インクリボン15eの張力Tが一定となるよう第1インクリボン供給側制御部56により制御される。
【0041】
(第1インクリボン供給側張力検出部)
このうち第1インクリボン供給側張力検出部53は、図3に示すように、第1インクリボン15eを案内する一対のガイド53a、53aと、一対のガイド53a、53a間に設けられ、第1インクリボン15eに対して所定の大きさの力Fを印加するダンサーロール53bと、ダンサーロール53bを支持するダンサーアーム53cと、を含んでいる。この場合、第1インクリボン15eの張力Tは、ダンサーロール53bから第1インクリボン15eに印加される力Fの半分となっている。
【0042】
ダンサーロール53bは、ダンサーアーム53cによって、図3に示す上下方向の所定範囲内において移動可能に支持されている。このため、第1インクリボン15eの張力Tが上述の力Fの半分よりも大きくなった場合、ダンサーロール53bが第1インクリボン15eによって図3に示す下方に押し戻され、これによってダンサーロール53bが下方に移動する。反対に、第1インクリボン15eの張力Tが上述の力Fの半分よりも小さくなった場合、ダンサーロール53bが第1インクリボン15eを図3に示す上方にさらに押し込み、これによってダンサーロール53bが上方に移動する。このように、第1インクリボン15eの張力Tと、ダンサーロール53bの位置とが一対一に対応しており、このため、ダンサーロール53bの位置をセンサ(図示せず)によって測定することにより、第1インクリボン15eに印加されている張力Tを検出することが可能となる。第1インクリボン供給側張力検出部53により検出された第1インクリボン15eの張力Tに関する情報(信号)は、図4に示すように、第1インクリボン供給側制御部56に送られる。
【0043】
(第1インクリボン供給側巻径検出部)
上述のように、第1インクリボン供給側巻径検出部54は、第1インクリボン供給ロール15aに巻き取られている第1インクリボン15eの巻径を検出するものである。第1インクリボン供給側巻径検出部54は、例えば、第1インクリボン供給側巻径検出部54から、第1インクリボン供給ロール15aに巻き取られている第1インクリボン15eの最外面までの距離を測定するセンサを含んでいる。この場合、測定された距離と、第1インクリボン供給側巻径検出部54から第1インクリボン供給ロール15aの中心までの距離とに基づいて、第1インクリボン供給ロール15aに巻き取られている第1インクリボン15eの巻径が検出される。第1インクリボン供給ロール15aに巻き取られている第1インクリボン15eの最外面までの距離を測定する方法が特に限られることはなく、超音波を用いる方法や、光を用いる方法など、周知の方法が適宜用いられる。第1インクリボン供給側巻径検出部54により検出された第1インクリボン15eの巻径に関する情報(信号)は、図4に示すように、第1インクリボン供給側制御部56に送られる。
【0044】
(第1インクリボン供給側制御部)
図4に示すように、第1インクリボン供給側制御部56は、比較部56aと、設定部56bと、演算部56cと、制御係数調整部56dとを含んでいる。このうち設定部56bには、第1インクリボン供給ロール15aと第1記録ヘッド15cとの間における第1インクリボン15eの張力Tの目標値に関する情報が格納されている。第1インクリボン15eの張力Tの目標値に関する情報は、図4に示すように、設定部56bから比較部56aに送られる。
【0045】
図4に示すように、比較部56aには、第1インクリボン供給側張力検出部53から、第1インクリボン15eの張力Tの検出値に関する情報も送られる。この場合、比較部56aにより、第1インクリボン15eの張力Tの目標値と検出値との差が算出される。比較部56aによって算出された差に関する情報は、図4に示すように演算部56cに送られる。
【0046】
演算部56cは、第1インクリボン15eの張力Tの目標値と検出値との差がゼロとなるよう、第1供給ロール用駆動モータ51の駆動強度(駆動電流、トルクなど)を演算により決定するものである。演算は、例えばPID制御などの所定のアルゴリズムに基づいて行われる。このようにして、第1インクリボン15eの張力Tを常に一定とするためのフィードバック制御が行われる。なお、演算において用いられる制御係数(例えば、PID制御における比例係数、積分係数および微分係数)は、図4に示すように、制御係数調整部56dから与えられる。
【0047】
図4に示すように、制御係数調整部56dには、第1インクリボン供給ロール15aに巻き取られている第1インクリボン15eの巻径に関する情報が、第1インクリボン供給側巻径検出部54から送られている。この場合、制御係数調整部56dは、第1インクリボン15eの巻径を考慮した上で、演算部56cにおいて用いられる制御係数を決定する。
【0048】
以下、制御係数調整部56dによる制御係数の決定について具体的に説明する。ここで、第1インクリボン15eの張力Tの目標値が検出値よりも所定量(例えばΔT)だけ大きい場合を考える。この場合、演算部56cは、第1インクリボン15eの張力Tの目標値と検出値との差ΔTがゼロとなるよう、第1供給ロール用駆動モータ51の駆動強度DをΔDだけ変化させる。
一般に、第1供給ロール用駆動モータ51の駆動強度が単位量だけ変化したときの第1インクリボン15eの張力Tの変化量は、第1インクリボン15eの巻径が小さいほど大きくなる。このため、張力Tの目標値と検出値との差ΔTに対する駆動強度Dの変化量ΔDが、第1インクリボン15eの巻径に依らず一定の場合(すなわち制御係数が第1インクリボン15eの巻径に依らず一定の場合)、第1インクリボン15eの巻径が小さいほど、張力Tの変化が鋭くなると考えられる。
本実施の形態において、制御係数調整部56dは、フィードバック制御時の張力Tの変化の態様が、第1インクリボン15eの巻径によらずほぼ同様となるよう、第1インクリボン15eの巻径に応じて制御係数を調整する。このため、第1インクリボン15eの巻径に依らず、常に安定したフィードバック制御を行うことができる。
【0049】
第1巻上ロール用駆動モータの制御機構
第1供給ロール用駆動モータ51の場合と同様に、第1巻上ロール用駆動モータ52は、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力Tが一定となるよう制御される。以下、第1巻上ロール用駆動モータ52を制御するための機構について、図3および図5を参照して説明する。
【0050】
図3に示すように、第1インクリボン巻上ロール15bの近傍には、第1インクリボン巻上ロール15bに巻き取られている第1インクリボン15eの巻径を検出する第1インクリボン巻上側巻径検出部55が設けられている。第1巻上ロール用駆動モータ52は、この第1インクリボン巻上側巻径検出部55からの信号に基づいて、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力Tが一定となるよう第1インクリボン巻上側制御部57により制御される。なお、第1インクリボン巻上側巻径検出部55の構成は、上述の第1インクリボン供給側巻径検出部54の構成と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0051】
(第1インクリボン巻上側制御部)
図5に示すように、第1インクリボン巻上側制御部57は、演算部57aと、設定部57bと、を含んでいる。このうち設定部57bには、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力Tの目標値に関する情報が格納されている。第1インクリボン15eの張力Tの目標値に関する情報は、図5に示すように、設定部57bから演算部57aに送られる。
【0052】
以下、演算部57aによって第1巻上ロール用駆動モータ52の駆動強度(駆動電流、トルクなど)を演算により決定する方法について説明する。
【0053】
第1インクリボン巻上ロール15bを一定のトルクで駆動した場合、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力Tは、第1インクリボン15eの巻径が大きくなるにつれて小さくなる。このため、第1インクリボン15eの張力Tを一定に保つためには、第1インクリボン巻上ロール15bを駆動する第1巻上ロール用駆動モータ52の駆動強度を、第1インクリボン15eの巻径に応じて調整する必要がある。
【0054】
第1インクリボン巻上側制御部57の演算部57aには、第1インクリボン15eの張力Tが特定の値となる際の、第1インクリボン15eの巻径と第1巻上ロール用駆動モータ52の駆動強度との対応に関する情報が予め格納されている。この場合、演算部57aは、当該予め格納されている情報と、設定部57bからの第1インクリボン15eの張力Tの目標値に関する情報とに基づいて、第1巻上ロール用駆動モータ52の駆動強度を決定する。このことにより、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力Tを一定に保つことができる。
【0055】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。はじめに、印刷システム10によって被記録媒体フィルム13に画像を印刷する作用について説明する。
【0056】
まず、図1に示すように、被記録媒体フィルム13を巻きつけたフィルム供給部11の供給ローラー21を準備し、被記録媒体フィルム13の図示しない先端部を、第1搬送ローラー23a、第1案内ローラー31、第1印刷ユニット15、第2案内ローラー32、第2印刷ユニット16、第3案内ローラー33、第2搬送ローラー25a、第4案内ローラー34、第3印刷ユニット17、第5案内ローラー35、第4印刷ユニット18、第3搬送ローラー27aを順次通してフィルム巻取部12の巻取ローラー22まで送り、この被記録媒体フィルム13の先端部を巻取ローラー22に固定する。
【0057】
他方、印刷ユニット15、16、17、18においても、インクリボン15e、16e、17e、18eを巻きつけたインクリボン供給ロール15a、16a、17a、18aを準備し、インクリボン15e、16e、17e、18eの図示しない先端部を、記録ヘッド15c、16c、17c、18cとプラテンロール15d、16d、17d、18dとの間を通してインクリボン巻上ロール15b、16b、17b、18bまで送り、このインクリボン15e、16e、17e、18eの先端部をインクリボン巻上ロール15b、16b、17b、18bに固定する。
【0058】
次に、搬送ライン14に沿って被記録媒体フィルム13を搬送する。この際、上述のように、一対の第2搬送ローラー25a、25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度が、搬送ライン14全体における被記録媒体フィルム13の搬送速度の基準となる。
【0059】
一対の第2搬送ローラー25a、25aは、第2搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度Vが例えば5m/minとなるよう、制御部30により駆動制御される。具体的には、第2搬送ローラー25aの直径を考慮した上で、第2搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度Vが上記の値となるよう、中間ベクトルインバータモータ25dまたは第2搬送ローラー25aの単位時間あたりの回転数が制御部30により制御される。
【0060】
一方、供給ローラー21、巻取ローラー22、一対の第1搬送ローラー23a、23aおよび一対の第3搬送ローラー27a、27aは、各々において被記録媒体フィルム13に印加される張力が一定となるよう制御部30により各々駆動制御される。このようにして、供給ローラー21から巻取ローラー22に向かって被記録媒体フィルム13が搬送される。
【0061】
被記録媒体フィルム13は、順次第1印刷ユニット15、第2印刷ユニット16、第3印刷ユニット17、第4印刷ユニット18に送られる。各印刷ユニット15、16、17、18においては、被記録媒体フィルム13に、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックのインクからなる画像がそれぞれ印刷される。画像が印刷された被記録媒体フィルム13は、その後、フィルム巻取部12の巻取ローラー22により巻き取られる。
【0062】
次に、各印刷ユニット15、16、17、18の作用について、図3乃至図5を参照してさらに詳細に説明する。
【0063】
第1印刷ユニット15においては、上述のように、はじめに、第1インクリボン15eが巻きつけられた第1インクリボン供給ロール15aが準備される。次に、第1インクリボン15eの図示しない先端部を、第1インクリボン供給側張力検出部53、および第1記録ヘッド15cと第1プラテンロール15dとの間を通して第1インクリボン巻上ロール15bまで送る。そして、第1インクリボン15eの先端部が第1インクリボン巻上部15bに固定される。
【0064】
次に、第1供給ロール用駆動モータ51によって第1インクリボン供給ロール15aを駆動するとともに、第1巻上ロール用駆動モータ52によって第1インクリボン巻上ロール15bを駆動する。これによって、第1インクリボン15eが第1インクリボン供給ロール15aから第1インクリボン巻上ロール15bに向かって搬送される。このとき、上述のように、第1記録ヘッド15cと第1プラテンロール15dとの間において、第1インクリボン15eが被記録媒体フィルム13に加熱押圧される。このことにより、第1インクリボン15eのインクが被記録媒体フィルム13に熱圧着される。
【0065】
インクが被記録媒体フィルム13に熱圧着された後、第1インクリボン15eは、第1インクリボン巻上ロール15bからの張力Tにより被記録媒体フィルム13から剥離される。このようにして、インクが第1インクリボン15eから被記録媒体フィルム13に熱溶融転写される。その後、第1インクリボン15eが、第1インクリボン巻上ロール15bによって巻き上げられる。
【0066】
なお、第1記録ヘッド15cと第1プラテンロール15dとの間において、第1インクリボン15eには、第1記録ヘッド15cからの所定の摩擦力が印加されている。このため、第1インクリボン供給ロール15aと第1記録ヘッド15cとの間における第1インクリボン15eの張力Tと、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力Tとは、必ずしも同一とはなっていない。すなわち、第1インクリボン供給ロール15aと第1インクリボン巻上ロール15bとをそれぞれ独立に駆動制御することにより、張力Tを、張力Tから所定量だけ異なる値にすることが可能となる。
【0067】
ここで上述のように、第1インクリボン供給ロール15aを駆動する第1供給ロール用駆動モータ51は、張力Tが一定となるよう第1インクリボン供給側制御部56により制御されている。このため、第1記録ヘッド15cからの熱により第1インクリボン15eが伸縮した場合や、第1インクリボン供給ロール15aにおける第1インクリボン15eの巻径が変化した場合であっても、張力Tを常に一定に保つことができる。従って、第1インクリボン供給ロール15aと第1記録ヘッド15cとの間において、第1インクリボン15eの弛みが生じることはない。このことにより、第1インクリボン15eのインクを被記録媒体フィルム13に常に一定の品質で転写することができる。
【0068】
同様に、第2、第3および第4印刷ユニット16、17、18においても、インクリボン供給ロール16a、17a、18aと記録ヘッド16c、17c、18cとの間におけるインクリボン16e、17e、18eの張力が常に一定に保たれている。このことにより、インクリボン16e、17e、18eのインクを被記録媒体フィルム13に常に一定の品質で転写することができる。
【0069】
また上述のように、第1インクリボン巻上ロール15bを駆動する第1巻上ロール用駆動モータ52は、張力Tが一定となるよう第1インクリボン巻上側制御部57により制御されている。このため、第1インクリボン15eが被記録媒体フィルム13から剥離されるとき、第1インクリボン15eに印加される張力Tが常に一定に保たれる。このため、被記録媒体フィルム13からの第1インクリボン15eの剥離に起因して、第1記録ヘッド15cと第1プラテンロール15dとの間で挟持されている第1インクリボン15eが揺らぐことがない。このことにより、第1インクリボン15eのインクを被記録媒体フィルム13に常に一定の品質で転写することができる。
【0070】
同様に、第2、第3および第4印刷ユニット16、17、18においても、記録ヘッド16c、17c、18cとインクリボン巻上ロール16b、17b、18bとの間におけるインクリボン16e、17e、18eの張力が常に一定に保たれている。このことにより、インクリボン16e、17e、18eのインクを被記録媒体フィルム13に常に一定の品質で転写することができる。
【0071】
次に、印刷システム10の搬送ライン14の作用について、さらに詳細に説明する。
【0072】
各印刷ユニットにおいて印刷される画像の濃度は、各印刷ユニットにおけるインクリボンの加熱温度などに依存するとともに、各印刷ユニットにおいて施される印刷処理の期間(各印刷ユニットにおける被記録媒体フィルム13の滞在時間)にも依存すると考えられる。すなわち、各印刷ユニットにおいて印刷される画像の濃度は、各印刷ユニットを通る際の被記録媒体フィルム13の搬送速度に依存すると言える。このため、各印刷ユニット間での画像濃度のムラを抑制するには、各印刷ユニットを通る際の被記録媒体フィルム13の搬送速度Vを、所定の範囲内、例えばV±ΔVの範囲内にすることが重要になると考えられる。
【0073】
以下、各印刷ユニット15、16、17、18における被記録媒体フィルム13の搬送速度について、図6(a)を参照して説明する。本実施の形態においては、上述のように、第2搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度がVとなっている。一方、上述のように、一対の第1搬送ローラー23a、23aは、被記録媒体フィルム13に印加される張力が一定となるよう制御部30により駆動制御されている。
第1搬送ローラー23a〜第2搬送ローラー25a間において、被記録媒体フィルム13には、第1印刷ユニット15または第2印刷ユニット16から熱が印加される。このため、第1搬送ローラー23a〜第2搬送ローラー25a間において、熱による被記録媒体フィルム13の伸縮が生じていると考えられる。一方、一対の第1搬送ローラー23a、23aは、このような伸縮が生じた場合であっても被記録媒体フィルム13に印加される張力が一定となるよう、制御部30により駆動制御されている。このため、第1搬送ローラー23aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度、および、印刷ユニット15、16における被記録媒体フィルム13の搬送速度は、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vと所定量だけ相違していることが考えられる。
【0074】
すなわち、第2印刷ユニット16における被記録媒体フィルム13の搬送速度をvとすると、第1搬送ローラー23a〜第2搬送ローラー25a間における被記録媒体フィルム13の伸縮などに起因して、第2印刷ユニット16における搬送速度vが、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vと所定量だけ相違していることが考えられる。この場合の相違量をΔvとする(図6(a)参照)。
【0075】
また、第1印刷ユニット15における被記録媒体フィルム13の搬送速度をvとすると、第1搬送ローラー23a〜第2搬送ローラー25a間における被記録媒体フィルム13の伸縮などに起因して、第1印刷ユニット15における搬送速度vも、第2印刷ユニット16における搬送速度vと所定量だけ相違していることが考えられる。この場合の相違量をΔvとする(図6(a)参照)。
【0076】
第1印刷ユニット15における搬送速度vと、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vとのずれについて考える。上述のように、第1印刷ユニット15における搬送速度vは、第2印刷ユニット16における搬送速度vに対してΔvだけ相違している。また、第2印刷ユニット16における搬送速度vは、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vに対してΔvだけ相違している。このため、第1印刷ユニット15における搬送速度vは、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vに対して最大でΔv+Δvだけ累積的に相違すると言える。
【0077】
また本実施の形態においては、上述のように、第2搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度がVとなっており、一方、一対の第3搬送ローラー27a、27aが、被記録媒体フィルム13に印加される張力が一定となるよう制御部30により駆動制御されている。このため、第3印刷ユニット17における被記録媒体フィルム13の搬送速度をvとすると、第2印刷ユニット16の場合と同様に、第2搬送ローラー25a〜第3搬送ローラー27a間における被記録媒体フィルム13の伸縮などに起因して、第3印刷ユニット17における搬送速度vが、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vと所定量だけ相違していることが考えられる。この場合の相違量をΔvとする(図6(a)参照)。
【0078】
また、第4印刷ユニット15における被記録媒体フィルム13の搬送速度をvとすると、第2搬送ローラー25a〜第3搬送ローラー27a間における被記録媒体フィルム13の伸縮などに起因して、第4印刷ユニット18における搬送速度vも、第3印刷ユニット17における搬送速度vと所定量だけ相違していることが考えられる。この場合の相違量をΔvとする(図6(a)参照)。
【0079】
第4印刷ユニット18における搬送速度vと、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vとのずれについて考える。上述のように、第4印刷ユニット18における搬送速度vは、第3印刷ユニット17における搬送速度vに対してΔvだけ相違している。また、第3印刷ユニット17における搬送速度vは、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vに対してΔvだけ相違している。このため、第4印刷ユニット18における搬送速度vは、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vに対して最大でΔv+Δvだけ累積的に相違すると言える。
【0080】
以上をまとめると、本実施の形態においては、第2搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度Vに対して、各印刷ユニット15、16、17、18における被記録媒体フィルム13の搬送速度が、それぞれ最大でΔv+Δv、Δv、Δv、Δv+Δvだけ相違する。
【0081】
次に、比較例として、第3搬送ローラー27aが、搬送速度Vが一定となるよう駆動制御され、一方、第1搬送ローラー23aおよび第2搬送ローラー25aが、張力が一定となるよう駆動制御される場合を考える(図6(b)参照)。この場合、第4印刷ユニット18における搬送速度vは、第3搬送ローラー27aにおける搬送速度Vにほぼ等しくなると考えられる。一方、第1印刷ユニット15における搬送速度vは、図6(b)から明らかなように、第3搬送ローラー27aにおける搬送速度Vに対して最大でΔv+Δv+Δv+Δvだけ累積的に相違すると言える。このため、第1印刷ユニット15における搬送速度vが、上述の好ましい範囲であるV±ΔVから逸脱することが考えられる。このため、被記録媒体フィルム13に印刷される画像の濃度にムラが生じることが懸念される。
【0082】
これに対して、本実施の形態によれば、4つの印刷ユニット15、16、17、18のうち隣り合う第2印刷ユニット16と第3印刷ユニット17との間に設けられた一対の第2搬送ローラー25a、25aが、制御部30により一定速度で駆動制御されている。このため、各印刷ユニット15、16、17、18における搬送速度と、第2搬送ローラー25aにおける搬送速度Vとの間のずれを、最大でもΔv+ΔvまたはΔv+Δvに抑えることができる。このことにより、各印刷ユニット15、16、17、18における搬送速度が、上述の好ましい範囲であるV±ΔVから逸脱する可能性をより低くすることができる。これによって、被記録媒体フィルム13に印刷される画像の濃度ムラをより抑制することができる。
【0083】
なお、本実施の形態において、印刷システム10に4つの印刷ユニット15、16、17、18が設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、印刷システム10は、被記録媒体フィルム13に印刷されるインクの種類に応じて、任意の数の印刷ユニットを備えることができる。
【0084】
なお本実施の形態において、隣り合う第2印刷ユニット16と第3印刷ユニット17との間に、一定速度で駆動制御される一対の第2搬送ローラー25a、25aが設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、一定速度で駆動制御される一対の第2搬送ローラー25a、25aを、隣り合う任意の印刷ユニットの間に設けることができる。
【0085】
また本実施の形態において、一対の第2搬送ローラー25a、25aが、第2搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度Vが5m/minとなるよう、制御部30により駆動制御される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、各印刷ユニット15、16、17、18や被記録媒体フィルム13などの特性に応じて、第2搬送ローラー25aにおける被記録媒体フィルム13の搬送速度Vが適宜設定され得る。なお本実施の形態によれば、上述のように、一定速度で被記録媒体フィルム13を搬送するよう駆動制御される一対の第2搬送ローラー25a、25aと、一定張力で被記録媒体フィルム13を搬送するよう駆動制御される一対の第3搬送ローラー27a、27aと、を組み合わせることにより、濃度ムラを発生させることなく被記録媒体フィルム13を高速で搬送することを可能としている。この場合、被記録媒体フィルム13を、例えば2〜10m/minの範囲内の速度で高速搬送することが可能となる。
【0086】
また本実施の形態において、第1インクリボン供給ロール15aの近傍に、第1インクリボン供給ロール15aに巻き取られている第1インクリボン15eの巻径を検出する第1インクリボン供給側巻径検出部54が設けられている例を示した。しかしながら、第1インクリボン供給側制御部56の演算部56cにおける制御係数を第1インクリボン15eの巻径に依らず一定とした場合であっても、第1インクリボン供給側制御部56によるフィードバック制御が常に安定となっている場合、第1インクリボン供給側巻径検出部54が設けられていなくてもよい。
【0087】
また本実施の形態において、第1インクリボン供給側張力検出部53が、ダンサーロール53bを用いて張力を検出する張力検出部からなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1インクリボン供給側張力検出部53として、ピックアップロールを用いて張力を検出する張力検出部など、様々な方式の張力検出器を適宜使用することができる。
【0088】
また本実施の形態において、第1巻上ロール用駆動モータ52が、第1インクリボン巻上側巻径検出部55からの信号に基づいて、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力が一定となるよう制御される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1供給ロール用駆動モータ51の場合と同様に、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間に第1巻上側インクリボン張力検出部(図示せず)を設け、この第1巻上側インクリボン張力検出部からの信号に基づいて第1巻上ロール用駆動モータ52を制御してもよい。更に、第1巻上側インクリボン張力検出部(図示せず)と第1インクリボン巻上側巻径検出部55とを設けて、両者の信号に基づいて、第1記録ヘッド15cと第1インクリボン巻上ロール15bとの間における第1インクリボン15eの張力が一定となるよう第1巻上ロール用駆動モータ52を制御してもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 印刷システム
11 フィルム供給部
12 フィルム巻取部
13 被記録媒体フィルム
14 搬送ライン
15 第1印刷ユニット
15a 第1インクリボン供給ロール
15b 第1インクリボン巻上ロール
15c 第1記録ヘッド
15d 第1プラテンロール
15e 第1インクリボン
15f ガイド
16 第2印刷ユニット
16a 第2インクリボン供給ロール
16b 第2インクリボン巻上ロール
16c 第2記録ヘッド
16d 第2プラテンロール
16e 第2インクリボン
17 第3印刷ユニット
17a 第3インクリボン供給ロール
17b 第3インクリボン巻上ロール
17c 第3記録ヘッド
17d 第3プラテンロール
17e 第3インクリボン
18 第4印刷ユニット
18a 第4インクリボン供給ロール
18b 第4インクリボン巻上ロール
18c 第4記録ヘッド
18d 第4プラテンロール
18e 第4インクリボン
21 供給ローラー
21a 第1ベクトルインバータモータ
22 巻取ローラー
22a 第2ベクトルインバータモータ
23a 第1搬送ローラー
23b 第1張力検出部
23d 供給側ベクトルインバータモータ
25a 第2搬送ローラー
25d 中間ベクトルインバータモータ
25e 回転数検出部
27a 第3搬送ローラー
27b 第3張力検出部
27d 巻取側ベクトルインバータモータ
30 制御部
31 第1案内ローラー
32 第2案内ローラー
33 第3案内ローラー
34 第4案内ローラー
35 第5案内ローラー
51 第1供給ロール用駆動モータ
52 第1巻上ロール用駆動モータ
53 第1インクリボン供給側張力検出部
53a 案内ローラー
53b ダンサーロール
53c ダンサーアーム
54 第1インクリボン供給側巻径検出部
55 第1インクリボン巻上側巻径検出部
56 第1インクリボン供給側制御部
56a 比較部
56b 設定部
56c 演算部
56d 制御係数調整部
57 第1インクリボン巻上側制御部
57a 演算部
57b 設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体フィルムを搬送する印刷システムの搬送ラインに沿って配置され、被記録媒体フィルムに対して印刷を施す印刷ユニットにおいて、
インクリボンを供給するインクリボン供給ロールと、
前記インクリボン供給ロールを駆動する供給ロール用駆動モータと、
前記インクリボン供給ロールから供給されたインクリボンを巻き上げるインクリボン巻上ロールと、
前記インクリボン巻上ロールを駆動する巻上ロール用駆動モータと、
前記インクリボン供給ロールと前記インクリボン巻上ロールとの間に設けられ、インクリボンのインクを被記録媒体フィルムに圧着する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドとの間でインクリボンと被記録媒体フィルムとを挟持するプラテンロールと、
前記インクリボン供給ロールと前記記録ヘッドとの間に設けられ、インクリボンに印加されている張力を検出するインクリボン供給側張力検出部と、を備え、
前記供給ロール用駆動モータは、前記インクリボン供給側張力検出部からの信号に基づいて、前記インクリボン供給ロールと前記記録ヘッドとの間におけるインクリボンの張力が一定となるようインクリボン供給側制御部により制御されることを特徴とする印刷ユニット。
【請求項2】
前記巻上ロール用駆動モータは、前記記録ヘッドと前記インクリボン巻上ロールとの間におけるインクリボンの張力が一定となるようインクリボン巻上側制御部により制御されることを特徴とする請求項1に記載の印刷ユニット。
【請求項3】
前記インクリボン供給ロールの近傍に設けられ、インクリボン供給ロールに巻き取られているインクリボンの巻径を検出するインクリボン供給側巻径検出部をさらに備え、
前記インクリボン供給側制御部は、前記インクリボン供給側巻径検出部からの信号に基づいて、前記供給ロール用駆動モータを制御する際の制御係数を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷ユニット。
【請求項4】
前記インクリボン巻上ロールの近傍に設けられ、インクリボン巻上ロールに巻き取られているインクリボンの巻径を検出するインクリボン巻上側巻径検出部をさらに備え、
前記巻上ロール用駆動モータは、前記インクリボン巻上側巻径検出部からの信号に基づいて、前記記録ヘッドと前記インクリボン巻上ロールとの間におけるインクリボンの張力が一定となるよう前記インクリボン巻上側制御部により制御されることを特徴とする請求項2または3に記載の印刷ユニット。
【請求項5】
フィルム供給部とフィルム巻取部とを有し、被記録媒体フィルムを搬送する搬送ラインと、
搬送ラインに沿って配置され、被記録媒体フィルムに対して印刷を施す複数の印刷ユニットと、を備え、
各印刷ユニットは、請求項1乃至4のいずれかに記載の印刷ユニットからなることを特徴とする印刷システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate