説明

印刷制御プログラム、印刷制御装置、印刷制御方法

【課題】商用印刷装置において稼働率を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】印刷データと当該印刷データに対応する印刷設定情報とを含む印刷ジョブであって、スプールされた複数の前記印刷ジョブを取得し、前記印刷設定情報から、前記印刷データを印刷する印刷媒体の種類を指定する情報を取得し、同時に一種類のみの印刷媒体を装填可能な一台の印刷装置に装填されている印刷媒体の種類を示す情報を取得し、前記印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類と、前記印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブが、一致しない印刷ジョブより先に印刷されるように、前記スプールされている印刷ジョブの実行順序を並べ換え、実行順序が並べ換えられた複数の前記印刷ジョブに基づいて、前記印刷装置に印刷を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用印刷装置を制御するための印刷制御プログラム、印刷制御装置、印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のクライアントコンピュータから出力された複数の印刷ジョブをスプールし、印刷装置に順に印刷を実行させるために、印刷ジョブを管理する技術が知られている。特許文献1には、複数の印刷ジョブによる印刷を実行している途中で、印刷用紙などの消耗品が不足することが予測されるとき、その旨をユーザに通知することが記載されている。また、印刷用紙が不足することが予測される場合、ユーザが例えばページ数の少ない印刷ジョブの順番を先に持ってくるような操作を行うと、その順序変更操作に従って、ページ数の少ない印刷ジョブの印刷を優先的に実施することが記載されている。
【特許文献1】特開平11−157174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
商用印刷装置では、一般消費者向けやオフィス向けの印刷装置と比較して、大量の印刷が行われる。そのため、一つの印刷ジョブにかかる印刷が始まってから終了するまでに長時間を要することはまれではない。したがって、印刷実行の間中オペレータが印刷装置を監視することは難しい。また、商用印刷装置には、同時に一種類の印刷媒体しか装填できないタイプがある。従来このタイプの商用印刷装置を制御する印刷制御装置では、所謂ホットフォルダと呼ばれる共有フォルダを準備し、この共有フォルダに投入された印刷ジョブの印刷を投入順に実行していた。
【0004】
しかし、実行中の印刷ジョブが、オペレータが印刷装置のそばを離れている間に終了し、次の印刷ジョブでは現在装填されている印刷媒体とは異なる印刷媒体が指定されている場合、印刷媒体が異なるために商用印刷装置の稼働が停止し、商用印刷装置の稼働率が低下してしまうという問題があった。また、現在装填されている印刷媒体とは異なる印刷媒体で次の印刷ジョブにかかる印刷を実行するときは、次の印刷ジョブで指定されている印刷媒体に交換するだけでなく、新しく装填された印刷媒体に関する種々の設定変更を、オペレータが印刷装置や印刷制御装置に対して行わなければならない。頻繁に設定変更を行うのは効率が悪い。
【0005】
また、前述のように商用印刷装置では大量の印刷が行われることから、扱われる印刷媒体の量も多く、印刷媒体の交換作業には時間と労力を要する。したがって、商用印刷装置においては、複数の印刷ジョブにかかる印刷を実行するにあたり、印刷媒体の交換回数はなるべく少ないことが望ましい。
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、商用印刷装置において稼働率を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明においては、スプールされている複数の印刷ジョブを取得し、印刷ジョブに含まれる印刷設定情報から、印刷データを印刷する印刷媒体の種類を指定する情報を取得し、同時に一種類のみの印刷媒体を装填可能な一台の印刷装置に装填されている印刷媒体の種類を示す情報を取得し、前記印刷設定情報において指定されている印刷媒体の種類と前記印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブが、一致しない印刷ジョブより先に印刷されるように、印刷ジョブの実行順序を並べ換え、実行順序が並べ換えられた複数の前記印刷ジョブに基づいて、前記印刷装置に印刷を実行させる。
【0007】
本発明で対象とする印刷装置は、本発明による印刷制御プログラムを実行する印刷制御装置に一台だけ接続されている印刷装置であって、同時に一種類のみの印刷媒体を装填可能な印刷装置である。したがって、現在の印刷ジョブで指定される印刷媒体と、次の印刷ジョブで指定される印刷媒体とが異なる場合、現在の印刷ジョブにかかる印刷が終了した時点で印刷媒体の交換作業が発生する。本発明によると、本発明が対象とする印刷装置において、複数の印刷ジョブにかかる印刷を実行させるにあたり、頻繁に印刷媒体を交換しなければならない状況を発生しにくくすることができる。
【0008】
印刷ジョブ取得機能は、スプールされている複数の印刷ジョブを取得する機能である。印刷ジョブには印刷データと、当該印刷データの印刷を印刷装置に実行させるための各種の印刷設定情報とが含まれている。印刷設定情報としては、例えば、印刷媒体の種類や、印刷データのページ数、印刷部数などが含まれる。さらに、取得した印刷データの形式や印刷装置に出力するデータの形式によるが、取得した印刷データを変換(レンダリング、解像度変換、色変換、ハーフトーニング、並べ替え等)するためのパラメータが含まれていてもよい。
【0009】
印刷設定情報解析機能は、印刷設定情報を解析し、印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類や、前述したようなその他の情報を取得する機能である。印刷媒体の種類として、例えば印刷媒体のサイズ、材質、厚み、印刷媒体の形などが指定されている。なお、印刷媒体の種類は、印刷媒体メーカーと型番で指定されていてもよく、その場合、メーカーや型番により、印刷媒体のサイズや材質や厚みや形などが特定される。
【0010】
印刷装置情報取得機能は、印刷装置の現在の状態や印刷装置に固有の情報など印刷装置から取得する機能である。印刷装置情報取得機能は、印刷装置に現在装填されている印刷媒体の種類を示す情報を取得する機能を有している。印刷装置情報取得機能は印刷媒体の種類の他にも後述するように、印刷媒体の残量や印刷装置のスループットを取得する機能を有していてもよい。
【0011】
印刷ジョブ並べ換え機能は、スプールされている印刷ジョブの実行順序を、スプールされている印刷ジョブにかかる印刷を実行するにあたりなるべく印刷媒体の交換作業が少なくなるように、並べ換える機能である。すなわち、印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類と、印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブを、一致しない印刷ジョブよりも先に印刷が実行されるように、印刷ジョブの実行順序を変更する。
【0012】
印刷指示機能は、実行順序が並べ換えられた複数の印刷ジョブに基づいて、印刷装置に印刷を実行させる機能である。個々の印刷ジョブに関しては、その印刷ジョブに含まれる印刷設定情報に基づいて印刷データを印刷装置への出力形式に変換し、変換したデータを印刷装置に受け渡す機能を有している。
【0013】
さらに、本発明において印刷設定情報解析機能は、印刷設定情報から印刷データの印刷に要する印刷媒体の必要量を取得する機能を有していてもよく、印刷装置情報取得機能は、印刷装置に装填されている印刷媒体の残量を取得する機能を有していてもよい。このとき印刷制御プログラムは、並べ換え後の複数の印刷ジョブに基づいて印刷を実行させると仮定したとき、印刷媒体の必要量と印刷媒体の残量とに基づいて、印刷媒体の再装填の要否に関する情報をオペレータに案内する案内機能をさらに備えていてもよい。すなわち、スプールされている複数の印刷ジョブの印刷を実行するにあたり、印刷媒体の装填作業が発生するか否かを案内する機能を備えていてもよい。
【0014】
この構成によると、スプールされている印刷ジョブにかかる印刷を全て実行するにあたり、印刷媒体の装填作業が発生するか否かを、オペレータは知ることができる。なお、印刷媒体の必要量は、同じ印刷媒体を指定する印刷ジョブを全て終了させるために必要な印刷媒体の量を示しており、例えば印刷枚数などで表される。あるいはロール紙の場合は裁断後の枚数以外にもロール紙の長さとして表されてもよい。また、印刷媒体の残量は、装填されている印刷媒体の量を表すことができればよく、例えばロール紙であれば長さやロールの厚みや裁断後の枚数、カット紙であれば枚数、装填されている状態のカット紙全体の厚みなどで表される。あるいは装填されている印刷媒体の重さで表されてもよい。なお、印刷媒体の必要量と印刷媒体の残量とは、比較可能なように適宜単位を変換することが可能である。例えば、残量がロール紙の長さや全体の厚みや重さ等で表された場合であっても、印刷媒体の種類に応じて印刷物一枚あたりの長さや厚みや重さが特定されるので、裁断後の枚数に変換が可能である。
【0015】
さらに、本発明において、印刷装置情報取得機能は、印刷装置で印刷設定情報に基づいて印刷データを印刷する場合のスループットを取得する機能を有していてもよく、案内機能は、印刷媒体の必要量が印刷媒体の残量を上回る場合、印刷媒体の残量とスループットとに基づいて、印刷媒体を再装填するタイミングを案内する機能を有していてもよい。スループットは、印刷装置の処理能力を表すことができればよく、例えば、一枚の印刷媒体の印刷を開始してから次の一枚の印刷を開始するまでに要する時間で表されるものであってもよい。また例えば、単位時間の間に印刷できる枚数(ページ数でもよい)で表されるものであってもよい。もちろん、このように表されるスループットは、印刷品質や印刷媒体のサイズや紙質等の様々な条件に応じて異なりうる。
【0016】
この構成によると、スプールされている印刷ジョブを全て完了するにあたり、印刷媒体を再装填するタイミングをオペレータは知ることができる。なお、印刷媒体の再装填は、同一の印刷媒体を再び装填することや、現在装填されている印刷媒体と異なる印刷媒体を装填することが想定されている。前者の場合は、装填されている印刷媒体がなくなるため補充するタイミングを示している。後者の場合は、現在装填されている印刷媒体を指定する印刷ジョブが終了し、異なる印刷媒体を指定する印刷ジョブへ移行するタイミングを示している。そのため、オペレータは例えば印刷媒体の不足が発生して印刷装置が停止しないかどうかを監視しておく必要がなくなる。
【0017】
さらに本発明において、案内機能は、並べ換え後の複数の印刷ジョブに基づいて印刷を実行させると仮定し、印刷媒体の必要量が印刷媒体の残量以下である場合、印刷媒体の必要量とスループットとに基づいて、スプールされている複数の印刷ジョブに対応する印刷が完了するタイミングを案内する機能を有していてもよい。この場合、オペレータは、スプールされている全ての印刷ジョブにかかる印刷が終了するまでに印刷媒体の再装填が必要でないことや、全ての印刷ジョブの印刷が終了するタイミングを知ることができる。そのため、オペレータは例えば印刷媒体の不足が発生して印刷装置が停止しないかどうかを監視しておく必要がなくなる。
【0018】
さらに本発明において、印刷装置は、印刷の後工程を実行する機器に対して、印刷後の印刷媒体を連続的に搬送する搬送装置を備えていてもよい。ここで印刷の後工程を実行する機器とは、例えば紙折り機、製本機、断裁機、封入機、帳合機などを想定してよい。すなわち本発明が対象とする印刷装置は、商用印刷装置であり、一種類のみの印刷媒体を装填して長時間に渡って同じ印刷媒体に対して連続的に印刷する方が効率がよい。なぜならこのような商用印刷装置と、印刷の後工程を担当する上述の後工程機器とが連動しているからである。印刷媒体の交換作業が発生すると、印刷装置が停止するだけでなく、後工程機器も停止するため、印刷工程以降の工程が全て滞ってしまう。また、印刷媒体の相違により後工程機器に対する設定変更作業も発生しうる。そのため、上述のように印刷ジョブを並べ換えることによって印刷媒体の交換がなるべく発生しないようにすることにより、このような商用印刷の工程の稼働率を向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明のように、同時に一種類のみの印刷媒体を装填可能な一台の印刷装置に対し、印刷設定情報において指定されている印刷媒体の種類と前記印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブが、一致しない印刷ジョブより先に印刷されるように、印刷ジョブの順序を並べ換えて、印刷を実行させる手法は、このプログラムを実行する装置や方法の発明としても適用可能である。また、以上のようなプログラムや装置や方法は、単独の装置によって実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、以上のようなプログラムを記録する記録媒体としても発明は成立する。むろん、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)印刷制御装置の構成:
(2)印刷制御処理:
(3)他の実施形態:
【0021】
(1)印刷制御装置の構成:
図1は、本発明にかかる印刷制御装置としてのコントロールPC10の概略構成を示すブロック図である。コントロールPC10は、RAM,ROM,CPU等を備える制御部20とHDD(Hard Disk Device)30とを備えており、ROMやHDD30などに記録されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態では、このプログラムの一つとして印刷制御プログラム21を実行可能である。コントロールPC10には、マウスやキーボード等の入力装置41と、ディスプレイ42とが接続されている。また、コントロールPC10には図示しないインタフェースを介して複数のクライアントPC40と、一台のプリンタ(印刷装置)43が接続されている。コントロールPC10はクライアントPC40から取得した印刷ジョブに基づいてプリンタ43に印刷を実行させることができる。
【0022】
プリンタ43は、所謂商用の印刷装置であり、一般消費者向けやオフィス向けのプリンタと異なり、印刷の後工程を担当する機器(例えば本実施形態では紙折り機44)に対して印刷物を連続的に搬送するための搬送装置43aを備えている。さらにプリンタ43は、同時に一種類のみの印刷媒体を装填することが可能な商用印刷装置である。また、プリンタ43は、コントロールPC10からの情報取得要求に応じてプリンタ43の各部のステータスを取得しコントロールPC10に送信することができる。具体的には例えば、オペレータによって印刷媒体装填時に設定された印刷媒体の種類を取得しコントロールPC10に送信することができる。また例えば、装填されている状態のカット紙全体の厚みを取得し、この全体の厚みとこのカット紙一枚あたりの厚みから、プリンタ43に現在装填されているカット紙の枚数を取得することができる。また例えば、コントロールPC10からの情報取得要求に応じて、プリンタ43のスループット(処理能力)を送信することが可能である。さらに、プリンタ43は、コントロールPC10からの印刷指示に応じてコントロールPC10から送信されたデータに基づく印刷を実行することができる。
【0023】
コントロールPC10の制御部20で実行される印刷制御プログラム21は、その機能の一つとして、スプールした複数の印刷ジョブの実行順序をプリンタ43に装填されている印刷媒体に応じて並べ換える機能を備えている。印刷制御プログラム21はこの機能を実現するため、印刷ジョブ取得部21aと印刷設定情報解析部21bと印刷装置情報取得部21cと印刷ジョブ並べ換え部21dと案内部21eと印刷指示部21fとを備えている。またHDD30にはクライアントPC40に公開された共有フォルダ30aが準備されており、複数のクライアントPC40を使用するユーザはこの共有フォルダ30aに印刷ジョブを投入することができる。
【0024】
印刷ジョブ取得部21aは、共有フォルダ30a内にスプールされている複数の印刷ジョブ30bを取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。印刷ジョブには、画像データや文書データなどの印刷データと、当該印刷データに対応する印刷設定情報とが含まれている。印刷設定情報には、印刷媒体の種類、ページ数、印刷媒体の枚数、部数、印刷品質(印刷解像度等)などが含まれている。さらに、取得した印刷データをプリンタ43への出力形式に変換するためのパラメータが含まれていてもよい。
【0025】
印刷設定情報解析部21bは、印刷設定情報を解析し、印刷設定情報にて指定されている印刷媒体の種類や、前述したようなその他の情報を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。印刷設定情報には印刷媒体の種類として、例えば印刷媒体のサイズ、紙質、厚み、印刷媒体の形などが指定されている。他にも例えば、印刷媒体メーカーと型番で指定されていてもよく、その場合、メーカーや型番により、印刷媒体のサイズや材質や厚みや形などが特定される。
【0026】
印刷装置情報取得部21cは、プリンタ43に情報取得要求を送信し、プリンタ43の現在の状態を示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態では、プリンタ43に装填されている印刷媒体の種類や、印刷媒体の残量、プリンタ43のスループットを示す情報を取得する。スループットは、印刷装置の処理能力を表すことができればよく、例えば、一枚の印刷媒体の印刷を開始してから次の一枚の印刷を開始するまでに要する時間で表されるものであってもよい。また例えば、単位時間の間に印刷できる枚数(ページ数でもよい)で表されるものであってもよい。もちろん、このように表されるスループットは、印刷品質や印刷媒体のサイズや紙質等の様々な条件に応じて異なりうる。
【0027】
印刷ジョブ並べ換え部21dは、印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類と、印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブを、一致しない印刷ジョブよりも先に印刷が実行されるように、印刷ジョブの実行順序を並べ換える機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。
【0028】
案内部21eは、並べ換え後の複数の印刷ジョブに基づいて印刷を実行させると仮定したとき、印刷媒体の必要量と印刷媒体の残量とに基づいて、印刷媒体の再装填の要否に関する情報をオペレータに案内する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態では、印刷媒体の不足が発生する予想時刻や、現在装填されている印刷媒体とは異なる印刷媒体を指定する印刷ジョブに移行する予想時刻や、印刷ジョブが終了する予想時刻を算出し、これらの時刻をディスプレイ42に表示することによってオペレータに案内する。なお、案内部21eがこれらの予想時刻の元にする現在時刻を取得するために、コントロールPC10は図示しないRTC(Real Time Clock)を備えている。
【0029】
印刷指示部21fは、印刷ジョブ並べ換え部21dの処理によって実行順序が並べ換えられた複数の印刷ジョブに基づいて、プリンタ43に印刷を実行させる機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。個々の印刷ジョブに関しては、その印刷ジョブに含まれる印刷設定情報に基づいて印刷データをプリンタ43への出力形式に変換し、変換したデータを印刷装置に受け渡す機能を有している。プリンタ43への出力形式への変換は、取得した印刷データの形式や印刷装置に出力するデータの形式によるが、例えば、レンダリング、解像度変換、色変換、ハーフトーニング、並べ替えなどの全てあるいは一部である。
【0030】
(2)印刷制御処理:
次に、上述の構成における印刷制御処理の流れを、図2のフローチャートを用いて説明する。はじめに、制御部20は印刷ジョブ取得部21aの処理により、共有フォルダ30aにスプールされている複数の印刷ジョブ30bを取得する(ステップS100)。複数の印刷ジョブを取得してステップS105以降の処理に進む条件としては例えば、共有フォルダ30aに所定個数以上の印刷ジョブがスプールされたとき、あるいは、所定時間が経過したとき、あるいは、共有フォルダ30aにスプールされた複数の印刷ジョブのサイズが所定以上になったとき、などが考えられる。
【0031】
続いて制御部20は、印刷装置情報取得部21cの処理によりプリンタ43から、現在装填されている印刷媒体の種類や、印刷媒体の残量、プリンタ43のスループットを取得する(ステップS105)。続いて制御部20は、取得した複数の印刷ジョブに含まれる印刷設定情報の解析が終了したか否かを判定し(ステップS110)、終了していない場合は、一つずつ順に印刷設定情報を解析し、印刷ジョブ並べ換え部21dの処理により印刷ジョブの実行順序を並べ換える。すなわち、制御部20は、印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類を取得し当該印刷媒体の種類と、現在プリンタ43に装填されている印刷媒体の種類とが同じであるか否かを判定し(ステップS115)、同じである場合、この印刷ジョブを、指定されている印刷媒体が異なる他の印刷ジョブより、実行順序を先にする(ステップS120)。続いて制御部20は印刷設定情報解析部21bの処理により、印刷設定情報から印刷ページ数と部数を取得する(ステップS125)。ステップS115で同じでないと判定される場合は、ステップS125に進む。
【0032】
ステップS110〜ステップS125の処理の具体例を、図3を用いて説明する。仮に、現在プリンタ43に装填済みの印刷媒体の種類が「MM#XXX」であるとする。また、図3の左側の列のジョブの並びで示すように、共有フォルダ30aにスプールされた順序(並べ換え前の順序)がジョブA,B,C,D,E,Fの順番であるとする。まず、ステップS115の判定で、1番最初に共有フォルダ30aにスプールされたジョブAの印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類が「MM#XXX」と異なると判定されるため、ステップS125に進みジョブAで指定されているページ数と部数とを取得する。
【0033】
次に、ステップS115では2番目にスプールされたジョブBで指定されている印刷媒体の種類が「MM#XXX」と同じと判定されるため、ジョブAよりもジョブBの実行順序を上げる。すなわち、図3の中央の列のジョブの並びに示すようにジョブAとジョブBの順序を入れ替え、ジョブBのページ数と部数を取得する。以降、同様にして、印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類が「MM#XXX」である印刷ジョブを、既に解析済みの印刷ジョブであって当該ジョブの印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類が「MM#XXX」である印刷ジョブ群の最後尾につける。その結果、最終的に、図3の右側の列のジョブの並びしめす順序に印刷ジョブの順序が入れ替わる。
【0034】
ステップS110で、全ての印刷ジョブに対応する印刷設定情報の解析が終了したと判定されると、制御部20は案内部21eの処理により、印刷媒体の再装填は必要か否かを判定し(ステップS130)、再装填が必要でない場合は再装填作業が発生する予想時刻を算出し(ステップS135)、再装填が必要でない場合は印刷終了予想時刻を算出する(ステップS145)。そして、制御部20は案内部21eの処理により、印刷媒体の再装填の要否とともに、ステップS135またはステップS140で算出した時刻を、ディスプレイ42に表示してオペレータに案内する(ステップS145)。
【0035】
ステップS130において、印刷媒体の再装填の要否は、例えば次のようにして判定される。制御部20は、ステップS105で取得したプリンタ43に装填されている印刷媒体の残量と、並べ換え後の印刷ジョブを順番に実行すると仮定したときの印刷媒体の必要量とを比較する。図4は、図3で示した印刷ジョブについて、並べ換え後の順序でそれぞれのジョブで指定されているページ数や部数を示した図である。この場合、ジョブB,D,F,A,C,Eの印刷に必要な印刷媒体の必要量は、「MM#XXX」が3050枚、「RR#YYY」が90枚、「NN#ZZZ」が1000枚である。なお、ここでは片面印刷を想定している。例えば、プリンタ43に装填されている印刷媒体の残量が、「MM#XXX」が1000枚である場合、印刷媒体の種類が同じである1〜3番目の印刷ジョブ(B,D,E)の印刷の必要量が1000枚を上回るので(印刷媒体の必要量>印刷媒体の残量)、再装填が必要であると判定される(ケース1)。
【0036】
なお、例えば、印刷媒体の残量が、1〜3番目の印刷ジョブ(B,D,E)の印刷の必要量である3050枚よりも多い場合であっても、4番目の印刷ジョブAの印刷を実行するにあたり、印刷媒体を「MM#XXX」から「RRR#YYY」に交換しなければならない(印刷媒体の必要量>印刷媒体の残量)ので、再装填が必要であると判定される。すなわち、図3で示した例のように、共有フォルダ30aにスプールされている印刷ジョブに、プリンタ43に現在装填されている印刷媒体の種類と異なる印刷媒体が指定されているジョブがある場合、ステップS130では印刷媒体の再装填の必要があると判定される(ケース2)。
【0037】
スプールされている全ての印刷ジョブで指定されている印刷媒体の種類と、プリンタ43に装填されている印刷媒体の種類が同じであって、印刷媒体の必要量が印刷媒体の残量以下であれば(印刷媒体の必要量≦印刷媒体の残量)、ステップS130では再装填の必要なしと判定される(ケース3)。
【0038】
ステップS135において再装填作業が発生する予想時刻は、例えば次のように算出される。ケース1のように、印刷媒体の不足が発生して同じ種類の印刷媒体を補充する必要がある場合は、制御部20は、ステップS105で取得したプリンタ43のスループットと印刷媒体の残量とから、残量分の印刷に要する時間を算出し、RTCから取得した現在時刻に加算して、予想時刻を求める。
【0039】
ケース2のように、印刷媒体が異なる印刷ジョブに移行するタイミングでの印刷媒体の再装填の場合は、制御部20は、移行する前までの印刷ジョブにおける印刷媒体の必要量を求め、当該必要量とプリンタ43のスループットから切り替わる前までの印刷ジョブの印刷に要する時間を算出し、現在時刻に加算して、予想時刻を求める。
【0040】
ステップS140において、印刷終了予想時刻は例えば次のようにして算出される。すなわちステップS140は前述のケース3の状況であるので、制御部20は、全ての印刷ジョブの印刷に必要な印刷媒体の必要量とスループットから所要時間を算出し、現在時刻に加算して、予想時刻を求める。なお、ステップS135およびステップS140においては、再装填のタイミングや印刷終了のタイミングは予想時刻として案内する他にも、単に再装填までの時間や、印刷終了までの所要時間として案内してもよい。
【0041】
続いて制御部20は、順序が並べ換えられた印刷ジョブにかかる印刷の実行をプリンタ43に開始させる(ステップS150)。印刷の実行が開始されると、制御部20は並べ換えられた順序に従い、一つずつ印刷ジョブにかかる印刷を実行させる。個々の印刷ジョブに関しては、印刷データに対してページ単位に、上述したような色変換やハーフトーニング、並べ換えなどの処理を施し、処理後のデータをプリンタ43に出力する。以上を繰り返すことにより、ケース1,2,3の状況やその他のエラーが発生するまで連続して印刷が実行される。印刷済みの印刷媒体は搬送装置43aによって後工程を担当する紙折り機44に搬送され、紙折り機44による後工程が連続して実行される。
【0042】
同時に一種類の印刷媒体のみを装填可能な商用印刷装置であるプリンタ43は、印刷の後工程を担当する紙折り機44と連動するため、印刷媒体の交換作業の発生によって、この連続工程が滞ることをなるべく抑えられることが望ましい。上述のように印刷ジョブを並べ換えることによって印刷媒体の交換がなるべく発生しないようにすることができる。また、印刷媒体の再装填のタイミングや、印刷が終了するタイミングを算出しオペレータに案内することができるので、オペレータは常時プリンタ43を監視する必要がなくなる。また印刷媒体の再装填や印刷の終了のタイミングが予め分かるので、オペレータはそのタイミングに合わせて、印刷媒体の補充や交換作業を行ったり、終了した印刷物の搬出などの作業に移行したりすることができる。その結果、プリンタ43を含む商用印刷システムにおける稼働率を向上させることができる。
【0043】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、スプールされている複数の印刷ジョブを取得し、印刷ジョブに含まれる印刷設定情報から、印刷データを印刷する印刷媒体の種類を指定する情報を取得し、同時に一種類のみの印刷媒体を装填可能な一台の印刷装置に装填されている印刷媒体の種類を示す情報を取得し、前記印刷設定情報において指定されている印刷媒体の種類と前記印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブが、一致しない印刷ジョブより先に印刷が実行されるように、印刷ジョブの実行順序を並べ換え、実行順序が並べ換えられた複数の前記印刷ジョブに基づいて、前記印刷装置に印刷を実行させる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。
【0044】
例えば、図4に示すように印刷ジョブが並べ換えられた後、印刷が開始され、いくつかの印刷ジョブが終了した時点で、新たに共有フォルダ30aに投入された複数の印刷ジョブを取得し、ステップS100以降の処理を実行してもよい。このように複数の印刷ジョブの取得と、取得し並べ換えた印刷ジョブの印刷の実行とを、並列的に行うことによって、ある一定時間順序が回ってこずに印刷が実行されないジョブの優先順位を上げるように並べ換えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】印刷制御装置の構成を示すブロック図。
【図2】印刷制御処理を示すフローチャート。
【図3】印刷ジョブの並べ換えを説明するための図。
【図4】並べ換え後の印刷ジョブを示す図。
【符号の説明】
【0046】
10:コントロールPC(印刷制御装置)、20:制御部、21:印刷制御プログラム、21a:印刷ジョブ取得部、21b:印刷設定情報解析部、21c:印刷装置情報取得部、21d:印刷ジョブ並べ換え部、21e:案内部、21f:印刷指示部、30:HDD、30a:共有フォルダ、30b:印刷ジョブ、41:入力装置、42:ディスプレイ、43:プリンタ、43a:搬送装置、44:折り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データと当該印刷データに対応する印刷設定情報とを含む印刷ジョブであって、スプールされた複数の前記印刷ジョブを取得する印刷ジョブ取得機能と、
前記印刷設定情報から、前記印刷データを印刷する印刷媒体の種類を指定する情報を取得する印刷設定情報解析機能と、
同時に一種類のみの印刷媒体を装填可能な一台の印刷装置に装填されている印刷媒体の種類を示す情報を取得する印刷装置情報取得機能と、
前記印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類と、前記印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブが、一致しない印刷ジョブより先に印刷されるように、前記スプールされている印刷ジョブの実行順序を並べ換える印刷ジョブ並べ換え機能と、
実行順序が並べ換えられた複数の前記印刷ジョブに基づいて、前記印刷装置に印刷を実行させる印刷指示機能と、
をコンピュータに実現させる印刷制御プログラム。
【請求項2】
前記印刷設定情報解析機能は、前記印刷設定情報から前記印刷データの印刷に要する印刷媒体の必要量を取得する機能を有し、
前記印刷装置情報取得機能は、前記印刷装置に装填されている前記印刷媒体の残量を取得する機能を有し、
並べ換え後の複数の前記印刷ジョブに基づいて印刷を実行させると仮定したとき、前記印刷媒体の必要量と前記印刷媒体の残量とに基づいて、前記印刷媒体の再装填の要否に関する情報をオペレータに案内する案内機能を備える、
請求項1に記載の印刷制御プログラム。
【請求項3】
前記印刷装置情報取得機能は、前記印刷装置で前記印刷設定情報に基づいて前記印刷データを印刷する場合のスループットを取得する機能を有し、
前記案内機能は、前記印刷媒体の必要量が前記印刷媒体の残量を上回る場合、前記印刷媒体の残量と前記スループットとに基づいて、前記印刷媒体を再装填するタイミングを示す情報を案内する機能を有する、
請求項2に記載の印刷制御プログラム。
【請求項4】
前記案内機能は、並べ換え後の複数の前記印刷ジョブに基づいて印刷を実行させると仮定し、前記印刷媒体の必要量が前記印刷媒体の残量以下である場合、前記印刷媒体の必要量と前記スループットとに基づいて、前記スプールされている複数の前記印刷ジョブに対応する印刷が完了するタイミングを示す情報を案内する機能を有する、
請求項3に記載の印刷制御プログラム。
【請求項5】
前記印刷装置は、前記印刷の後工程を実行する機器に対して、前記印刷後の前記印刷媒体を連続的に搬送する搬送装置を備える、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷制御プログラム。
【請求項6】
印刷データと当該印刷データに対応する印刷設定情報とを含む印刷ジョブであって、スプールされた複数の前記印刷ジョブを取得する印刷ジョブ取得手段と、
前記印刷設定情報から、前記印刷データを印刷する印刷媒体の種類を指定する情報を取得する印刷設定情報解析手段と、
同時に一種類のみの印刷媒体を装填可能な一台の印刷装置に装填されている印刷媒体の種類を示す情報を取得する印刷装置情報取得手段と、
前記印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類と、前記印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブが、一致しない印刷ジョブより先に印刷されるように、前記スプールされている印刷ジョブの実行順序を並べ換える印刷ジョブ並べ換え手段と、
実行順序が並べ換えられた複数の前記印刷ジョブに基づいて、前記印刷装置に印刷を実行させる印刷指示手段と、
を備える印刷制御装置。
【請求項7】
印刷データと当該印刷データに対応する印刷設定情報とを含む印刷ジョブであって、スプールされた複数の前記印刷ジョブを取得する印刷ジョブ取得工程と、
前記印刷設定情報から、前記印刷データを印刷する印刷媒体の種類を指定する情報を取得する印刷設定情報解析工程と、
同時に一種類のみの印刷媒体を装填可能な一台の印刷装置に装填されている印刷媒体の種類を示す情報を取得する印刷装置情報取得工程と、
前記印刷設定情報で指定されている印刷媒体の種類と、前記印刷装置に装填されている印刷媒体の種類とが一致する印刷ジョブが、一致しない印刷ジョブより先に印刷されるように、前記スプールされている印刷ジョブの実行順序を並べ換える印刷ジョブ並べ換え工程と、
実行順序が並べ換えられた複数の前記印刷ジョブに基づいて、前記印刷装置に印刷を実行させる印刷指示工程と、
を含む印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−128848(P2010−128848A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303770(P2008−303770)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】