説明

印刷制御装置および印刷制御方法

【課題】処理負担の軽減と印刷結果のばらつき抑制とを両立する。
【解決手段】画像データに対する処理として用意された共通の画像処理を、印刷対象の画像データに施すことにより、画素毎のドットの発生、非発生を規定した印刷データを生成する印刷データ生成部と、指定された印刷装置の固有の出力特性を表した特性情報を、当該印刷装置から取得する取得部と、上記取得された特性情報に基づいて上記印刷データが規定するドットの発生量を補正することにより印刷データを再生成する再生成部と、上記再生成された印刷データを上記指定された印刷装置に提供する提供部とを備える印刷制御装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置および印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホストとして機能するコンピューターとプリンターとを接続し、ホストが印刷データを生成してプリンターに送信し、印刷データに基づいてプリンターに印刷を実行させる。プリンターは、その出力特性が設計基準に合致していることが理想であるが、現実にはプリンター1台毎に固有の出力特性を有している。具体的には、プリンターそれぞれに、吐出する一滴あたりのインク量が微妙に違っていたりする。このような出力特性のばらつきは、プリンター毎の印刷結果にばらつきを生じさせる。そこで従来、ホストはプリンターに対して提供する印刷データを生成する際、印刷データの提供先となるプリンターの出力特性を反映した印刷データ(提供先のプリンターに特化した印刷データ)を生成することで、プリンター毎の印刷結果のばらつきを抑制していた。
【0003】
また、ホストコンピュータから受信した印刷データを対象とした編集(解像度の変換、レイアウトや印刷方向の編集)を実行するプリンタが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6‐91982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホストは上記のようにデータ提供先のプリンターに特化した印刷データを生成する場合、印刷データを生成する過程で使用する各種変換用テーブルを当該提供先のプリンターの出力特性に応じて作り変え、この作り変えた変換用テーブルを用いて印刷データを生成していた。このように、テータ提供先のプリンター毎に異なる変換用テーブルを生成し、それによりデータ提供先のプリンターに特化した印刷データを生成することは、ホストにとって大きな負担であった。特に、ホストが印刷データを複数のプリンターに送信して複数のプリンターに印刷をさせる分散印刷を実現する場合には、プリンター毎に異なる変換用テーブルを生成して1台のプリンターに特化した印刷データを生成することを繰り返す必要があり、処理負担が非常に大きかった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、印刷装置を動作させるために必要な処理を効率化しつつ、印刷装置に質の高い印刷結果を出力させることが可能な印刷制御装置および印刷制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、印刷制御装置は、画像データに対する処理として用意された共通の画像処理を、印刷対象の画像データに施すことにより、画素毎のドットの発生、非発生を規定した印刷データを生成する印刷データ生成部と、指定された印刷装置の固有の出力特性を表した特性情報を、当該印刷装置から取得する取得部と、上記取得された特性情報に基づいて上記印刷データが規定するドットの発生量を補正することにより印刷データを再生成する再生成部と、上記再生成された印刷データを上記指定された印刷装置に提供する提供部とを備える構成としてある。本発明によれば、ある画像データから画素毎のドットの発生、非発生を規定した印刷データが生成されるまでの画像処理は印刷装置にかかわらず共通であり、この生成された印刷データに対して、印刷装置毎の特性情報に応じたドット発生量の補正が実行され印刷データが再生成される。つまり、従来のように画像データから印刷データを生成する過程で始めから印刷装置毎に特化した印刷データを生成するという構成ではないため、印刷データを最終的に印刷装置に提供するまでの処理量が低減される。かつ、再生成された印刷データが上記指定された印刷装置に提供され、印刷装置で印刷処理が実行されることで、印刷装置毎のばらつきが抑制された質の高い印刷結果が得られる。
【0008】
上記特性情報とドットの発生量の補正度合いを規定した補正テーブルとの対応関係を複数の特性情報に関して記憶した記憶部を備え、上記再生成部は、上記取得された特性情報に対応する補正テーブルを上記記憶部を参照して取得し、当該取得した補正テーブルを用いてドットの発生量を補正するとしてもよい。当該構成によれば、上記指定された印刷装置の特性情報に応じたドット発生量の補正を容易かつ正確に実現することができる。
【0009】
上記共通の画像処理は、画像データの表色系を印刷装置が使用する色材の表色系に変換するための色変換テーブルであって共通の色変換テーブルを用いて画像データを色変換する処理を含む構成としてもよい。色変換テーブルは、上記各種変換用テーブルの一例である。当該構成によれば、少なくとも色変換処理について印刷装置毎に繰り返す必要がない。そのため、従来のように例えば印刷装置毎に異なる色変換テーブルを用いて印刷装置毎に対応する色変換を行なって印刷データを生成していた場合と比較して、処理量を大幅に減らすことができる。
【0010】
上記共通の画像処理は、上記色変換後の画像データの画素毎に階調値をサイズの異なる複数のドットの発生率に変換するためのドット発生率テーブルであって共通のドット発生率テーブルを用いて上記色変換後の画像データを変換する処理を含む構成としてもよい。ドット発生率テーブルは、上記各種変換用テーブルの一例である。当該構成によれば、少なくとも色変換後の画像データを画素毎にサイズの異なる複数のドットの発生率に変換する処理を印刷装置毎に繰り返す必要がない。そのため、従来のように例えば印刷装置毎に異なるドット発生率テーブルを用いて印刷装置毎に対応する変換を行なって印刷データを生成していた場合と比較して、処理量を大幅に減らすことができる。
【0011】
本発明の技術的思想は、印刷制御装置以外によっても実現可能である。例えば、上述した印刷制御装置が備える各部に対応する各工程を有する印刷制御方法や、上述した印刷制御装置が備える各部に対応する各機能をコンピューターに実行させるプログラムの発明も把握可能である。また、印刷制御方法や印刷制御装置は、単一の装置によって実現されるだけでなく、複数の装置(例えば、コンピューターと複数の印刷装置)が協同して実現されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】印刷制御方法を実現するための装置を概略的に示す図である。
【図2】印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図3】IDと補正テーブルとの関係等を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.本実施形態の概略構成
図1は、本実施形態にかかる印刷制御方法を実現するための装置を概略的に示している。ここでは、分散印刷に使用可能な複数のプリンター20と、プリンター20に対するホストとして機能するコンピューター10とを示している。コンピューター10は、有線あるいは無線のネットワークNを介してプリンター20と接続し、プリンター20を制御してプリンター20に印刷を実行させることができる。分散印刷には、例えば、同じ画像を複数のプリンター20に印刷させたり、複数ページにわたるファイルの各ページを複数のプリンター20に振り分けて各プリンター20に印刷させたりする等、様々な態様が含まれる。
【0014】
印刷制御方法は、実体的にはコンピューター10の機能により実現される。コンピューター10が備えるCPU12が、ハードディスクドライブ(HDD)11等のメモリーに記憶されたプログラムを読み込み、プログラムをRAM13に展開しながらプログラムに従った演算を実行する。CPU12は、OS上でプログラム(例えば、プリンタードライバーPD)に従った演算を実行し、プリンター20をネットワークインターフェイス(I/F14)やネットワークNを介して制御する。従って、コンピューター10を印刷制御装置と捉えることができる。また、コンピューター10とプリンター20とを含むシステムを印刷制御装置と捉えることもできる。コンピューター10は、ビデオインターフェイス(I/F15)を介してディスプレー40と接続されており、入力インターフェイス(I/F16)を介してキーボードやマウス等の操作部30と接続されている。
【0015】
プリンタードライバーPDは、画像データに対する処理として用意された共通の画像処理を印刷対象の画像データに施すことにより、画素毎のドットの発生、非発生を規定した印刷データPRNを生成する印刷データ生成部PD1、指定されたプリンター20固有の出力特性を表した特性情報を当該プリンター20から取得する取得部PD2、取得された特性情報に基づいて印刷データPRNが規定するドットの発生量を補正することにより印刷データを再生成する再生成部PD3、再生成された印刷データPRN´を上記指定されたプリンター20に提供する提供部PD4、等の各機能を実現する。
【0016】
2.ドット発生量の補正を伴う印刷制御処理
図2は、コンピューター10がプリンタードライバーPDに従って実行する印刷制御処理をフローチャートにより示している。また図2では、フローチャートの各ステップと併せ、各ステップで生成されたり処理されたりするデータの構造を模式的に例示している。
ステップS100では、コンピューター10は印刷データ生成部PD1の機能により、印刷データPRNを生成する。ステップS100を実行する時点で、コンピューター10は、印刷対象画像を表す画像データの選択や印刷に使用するプリンター20の指定などをユーザーによる操作部30の操作を介して受け付けているものとする。ユーザーは、プリンター20を複数台指定することも可能である。
【0017】
ステップS100では、まずコンピューター10は、印刷対象画像として選択された画像データをHDD11等から取得する。画像データは、例えば、画像を構成する各画素がレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の表色系で表されたデータである。次にコンピューター10は、HDD11から色変換ルックアップテーブル(色変換LUT)11aを読み出す。色変換LUT11aは、画像データをプリンター20が使用する色材(インクやトナー)の表色系(例えば、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、ライトシアン(Lc)、ライトマゼンダ(Lm)表色系)で表されたデータに変換するために参照されるテーブルであり、入力側の表色系(RGB)の色毎の階調値と、出力側の表色系(CMYKLcLm)の色毎の階調値とを対応付けている。色変換LUT11aは、印刷を実行するプリンター20が設計基準のプリンターであることを前提に生成されており、HDD11に予め保存されている。コンピューター10は、色変換LUT11aを用いることにより、上記選択された画像データを画素毎にCMYKLcLmの階調値を有する画像データに色変換する。
【0018】
次にコンピューター10は、色変換後の画像データを対象としてハーフトーン処理を実行する。この場合、HDD11からドット発生率テーブル11bを読み出す。ドット発生率テーブル11bは、当該テーブルに入力された一つの階調値を、サイズが異なる複数のドット(例えば、大ドット、中ドット、小ドット)それぞれの発生率(例えば、0〜100%)に変換するためのテーブルであり、HDD11に予め保存されている。ドット発生率は、所定の単位面積あたりのドット(インク滴)による被覆率である。コンピューター10は、色変換後の画像データの画素毎の階調値についてドット発生率テーブル11bによる変換を行い、サイズが異なる複数のドット毎の発生率に変換する。そして、画素毎の複数のドット毎の発生率を対象として公知のハーフトーン処理(例えばディザマスクを用いたハーフトーン処理)を実行することで、画素毎に大ドット、中ドット、小ドットのいずれか一つの発生(オン)あるいはドット非発生(オフ)を規定したハーフトーンデータを生成する。このようなドット発生率への変換およびハーフトーン処理は上記CMYKLcLmの色毎に行なう。
【0019】
そしてコンピューター10は、このように画素毎にドットのオン/オフを規定した(画素毎かつ色毎に、いずれか一つのサイズのドットオンあるいはドットオフを規定した)ハーフトーンデータを、プリンター20が直接解釈可能なコマンド形式のファイルに変換する。このファイルが印刷データPRNに該当する。図2に例示するように、印刷データPRNは、ラスターデータRとヘッダーH、フッターFとを含んでいる。ラスターデータRは画像を構成する各画素のドットのオン/オフを規定したデータ部分であり、ヘッダーHは、ドットのオン/オフ以外にプリンター20に通知する必要のある各種情報(例えば、印刷時間の設定値、印刷用紙のサイズ、インクの種類、ドットのサイズ、画素数など)を記述している。プリンター20は、印刷データPRNをコンピューター10から受取り、印刷データPRNを解釈することにより、印刷データPRNに基づいて上記印刷対象画像の印刷を行なうことができる。
【0020】
ただし、ステップS100で生成される印刷データPRNは上記ユーザーによって指定されたプリンター20の出力特性を全く考慮せずに生成されたデータである。言い換えると、ステップS100では、指定されたプリンター20にかかわらず、上記印刷対象画像を表すものとしては同じ印刷データPRNが生成される。つまりステップS100では、印刷データPRNを生成する過程において同じ色変換LUT11a、同じドット発生率テーブル11bを用いる点で、用意された共通の画像処理を画像データに施すことにより印刷データPRNを生成していると言える。
【0021】
ステップ110では、コンピューター10は、上記指定にかかるプリンター20とネットワークN上で通信し、取得部PD2の機能により、上記指定にかかるプリンター20が保持するIDを取得する。IDは上記特性情報の一種である。IDは、例えば、プリンター20による所定画像の印刷結果の測色値(色彩値)と、設計基準となるプリンターに印刷させた当該所定画像の印刷結果の測色値(基準色彩値)との差異の程度を表わした数値(ID)であり、プリンター20毎に予め生成され、各プリンター20内の所定のメモリーに予め記録されている。例えばプリンター20がインクジェットプリンターである場合、プリンター20が備える印刷ヘッドによるインク吐出量(例えば、印刷ヘッドから吐出される所定サイズのドット一つあたりのインク重量)は、設計基準のプリンターの印刷ヘッドによるインク吐出量と微妙に異なる。そのため、このようなインク吐出量の基準(理想)との違いが上記測色値の差異を生み、結果的に各プリンター20は異なるIDを有することとなる。
【0022】
ただし、コンピューター10がプリンター20から取得するプリンター毎の特性情報は上記のような測色値の差異に応じたIDに限られず、プリンター20毎に固有の特性を表した情報であれば様々なものが考えられる。例えば、コンピューター10はステップS110において、プリンター20が保持するインク重量IDを取得してもよい。インク重量IDも上記特性情報の一種である。かかるIDは、プリンター20が備える印刷ヘッドによるインク吐出量(上記インク重量)の、基準重量とのずれを表した数値である。かかるIDは、予め印刷ヘッドの製造時に取得され、印刷ヘッドを搭載するプリンター20内の所定のメモリー(あるいは印刷ヘッドに搭載されたメモリー)に記録されている。
【0023】
コンピューター10は、IDの取得要求を上記指定にかかるプリンター20へ送信する。すると、当該取得要求を受信したプリンター20は、当該取得要求に応じ、自機内に記録されているIDを読み出し、当該読み出したIDをコンピューター10に送信する。この結果、コンピューター10は上記指定にかかるプリンター20のIDを取得する。
ステップS120では、コンピューター10は再生成部PD3の機能により、上記取得されたIDに対応する補正テーブル11cをHDD11を参照して取得するとともに、当該取得した補正テーブル11cを用いて、上記印刷データPRNが規定するドットの発生量を補正する。
【0024】
ここではステップS120の説明をする前に、図3を用いてIDと補正テーブル11cとの関係を簡単に説明する。
図3Aでは、IDの値が異なる第1〜第3のプリンター20にそれぞれ印刷させた3つのグレースケールパターンPT1〜PT3を例示している。以下では説明の便宜上、グレースケールパターンPT1を印刷した第1のプリンター20のIDをID1、グレースケールパターンPT2を印刷した第2のプリンター20のIDをID2、グレースケールパターンPT3を印刷した第3のプリンター20のIDをID3と表現する。第1のプリンター20は設計基準のプリンターよりもインク吐出量が所定程度少ないプリンターであり、第2のプリンター20は設計基準のプリンターであり、第3のプリンター20は設計基準のプリンターよりもインク吐出量が所定程度多いプリンターであるとする。
【0025】
グレースケールパターンPT1〜PT3はいずれも全く同じ印刷データに基づいて印刷されており、単位面積あたりのドット(Kドット)数pが最少(0)である領域(白)から当該ドット数pが最多である領域(黒)へ徐々に濃度が変化するグラテーションパターンである。図3Bでは、ドット数p(ドット数pは単位面積を構成する画素数PN(定数)に対する数であり、p≦PNとする。)とグレースケールパターンPT1〜PT3の濃度(測色結果)との関係をグラフG1〜G3により例示している。グラフG1〜G3によれば、グレースケールパターンPT1〜PT3はいずれもドット数pの増加に応じて濃度が上昇しているが、グレースケールパターンPT1の濃度(グラフG1参照)はインク吐出量が少ない第1のプリンター20で印刷されているため理想的なグレースケールパターンPT2(グラフG2参照)よりも全体的に薄く、グレースケールパターンPT3の濃度(グラフG3参照)はインク吐出量が多い第3のプリンター20で印刷されているため理想的なグレースケールパターンPT2よりも全体的に濃い結果となっている。
【0026】
図3Cでは、各グラフG1〜G3に基づいて生成された補正テーブル11cであって、ID1〜ID3に一対一で対応した各補正テーブル11c1,11c2,11c3を例示している。グラフG1,G2によると、設計基準のプリンター(第2のプリンター20)で所定濃度Dを実現するために必要なドット数pはp1(グラフG2参照)であるが、同じ濃度Dを第1のプリンター20で実現するために必要なドット数pはp2(グラフG1参照)である。従って、ドット数p1からドット数p2への変換関係が得られる。このようにグラフG1,G2に基づいて各ドット数についての変換関係を取得し、そのように取得した各変換関係を規定したものが、第1のプリンター20すなわちID1に対応する補正テーブル11c1となる(図3C参照)。同様に、グラフG3,G2に基づいて得られた各ドット数の変換関係を規定したものが、第3のプリンター20(ID3)に対応する補正テーブル11c3となる(図3C参照)。第2のプリンター20(ID2)に対応する補正テーブル11c2は、入力ドット数=出力ドット数となる(図3C参照)。本実施形態では、このようなIDと補正テーブル11cとの対応関係が複数のIDに関して予め求められており、HDD11に各IDと各IDに対応する補正テーブル11cとが記憶されている。よって、HDD11は記憶部に該当する。
【0027】
このような状況下で、当該ステップS120では、コンピューター10は、上記取得されたIDと一致するIDがHDD11に記憶されている場合には、当該一致するIDに対応してHDD11に記憶されている補正テーブル11cを取得する。また、上記取得されたIDと一致するIDがHDD11に記憶されていない場合は、上記取得されたIDと近似する複数のIDに対応して記憶されている複数の補正テーブル11cに基づいた補間を実行して上記取得されたIDに対応する補正テーブル11cを生成することにより、必要な補正テーブル11cを取得する。取得した補正テーブル11cを用いて上記印刷データPRNが規定するドットの発生量を補正する場合、コンピューター10は、例えば画像内の一定領域毎にドット数を変更する。
【0028】
この場合、コンピューター10は、コマンド形式となっている印刷データPRNにおけるラスターデータRを展開し、ラスターデータR内の一定面積の領域Aを指定する。ここでは、領域Aは上記画素数PNで構成された矩形領域であるとする。コンピューター10は、当該領域A内でオンにされている画素数(ドット数)を計測し、計測したドット数を上記取得した補正テーブル11cに入力して変換する。そして、ラスターデータRが当該領域A内に規定するドット数を、当該変換後のドット数となるように変更する(ドットを間引く或いはドットを増やす。図2参照。)。ドットの間引き方或いは増やし方は特に限定されないが、基本的には、ドットを間引く画素位置あるいは追加する画素位置が領域A内において偏らないように間引いたり増やしたりする。コンピューター10は、ラスターデータR内の全領域を領域Aとして一度ずつ指定していき、指定した領域A毎にこのようなドット数の変更を実行する。
【0029】
なお上記のようにドットが複数サイズあり且つインク色毎にドットのオン/オフが規定されている場合には、ドットサイズ毎かつインク色毎に、一定領域内のドット数を補正テーブル11cにより変更する。むろん、プリンター20がインク色毎のIDを有している場合には、コンピューター10は、プリンター20からインク色毎のIDを取得し、インク色毎のIDに対応したインク色毎の補正テーブル11cを用いて各インク色のドット数を変更するとしてもよい。さらに、プリンター20がドットのサイズ毎のIDを有している場合には、コンピューター10は、プリンター20からドットのサイズ毎のIDを取得し、かかるサイズ毎のIDに対応したサイズ毎の補正テーブル11cを用いてサイズ毎のドット数を変更するとしてもよい。
【0030】
ステップS130では、コンピューター10は再生成部PD3の機能により、上記ドット数が変更された後のラスターデータRを含む印刷データPRN´を生成する(印刷データの再生成)。上記ステップS100で生成された印刷データPRNと、ステップS130で再生成された印刷データPRN´とでは、基本的にヘッダーHおよびフッターFは同じであり、ラスターデータRが規定するドット数が異なる(ただし、指定されたプリンター20のIDが設計基準のプリンターを示すものである場合を除く)。従って、ラスターデータRだけが再生成の対象となり、ヘッダーHおよびフッターFは印刷データPRNのものがそのまま使用される。
【0031】
ステップS140では、コンピューター10は提供部PD4の機能により、印刷データPRN´を上記指定されたプリンター20にネットワークNを介して提供(送信)する。プリンター20は、印刷データPRN´をコンピューター10から受信し、印刷データPRN´を解釈することにより、印刷データPRN´に基づいて上記印刷対象画像の印刷を行なう。このような印刷データPRN´は、印刷データPRN´を受信するプリンター20固有の出力特性のばらつき(インク吐出量の過不足)による印刷結果のばらつきを抑制するようにドット発生量(ドット数)が補正されたデータである。なお、ユーザーによって複数のプリンター20が指定されている場合には、コンピューター10は、指定にかかる複数のプリンター20各々からIDを取得し(ステップS110)、取得した各IDに対応する各補正テーブル11cで印刷データPRNのドット発生量を補正して当該指定にかかる複数のプリンター20それぞれに提供するための印刷データPRN´を再生成し(ステップS120,S130)、再生成した各印刷データPRN´を、各印刷データPRN´が対応する指定の各プリンター20へ提供する(ステップS140)。
【0032】
3.まとめ
このように本実施形態によれば、コンピューター10はまず、ユーザーが指定したプリンター20にかかわらず、予め用意された共通の色変換LUT11aやドット発生率テーブル11bを用いた画像データに対する各種変換処理を経て、上記指定にかかるプリンター20の出力特性を反映していない印刷データPRNを生成する。そして、当該印刷データPRNが規定するドット発生量を、上記指定にかかるプリンター20のIDに対応する補正テーブル11cで補正することにより印刷データPRN´を生成し、当該印刷データPRN´を上記指定にかかるプリンター20に提供するとした。従って、プリンター20により印刷データPRN´に基づく印刷が実行されることで、そのプリンター20の出力特性の設計基準からのばらつきによる印刷結果のばらつきが抑制された、質の高い印刷結果が得られる。
【0033】
上記のように印刷データPRNを生成する過程では、従来のような指定先のプリンター20の出力特性に応じた補正処理(色変換LUT11a或いはドット発生率テーブル11bの補正処理)は一切行なわない。つまり、従来は指定先の各プリンター20へ印刷データを提供する際に、色変換LUT或いはドット発生率テーブルの補正、補正された色変換LUTやドット発生率テーブルを用いた画像データに対する変換処理を、提供先のプリンター20の数に応じて繰り返し実行していた。しかし本実施形態によれば、このような繰り返しが不要となるため、提供先のプリンター20へ印刷データを提供するまでに必要な処理が大幅に効率化される。本実施形態によれば、印刷対象画像を表す印刷データPRNは共用できるため、本実施形態による処理量の低減効果は複数のプリンター20に印刷対象画像を印刷させる分散印刷を実行する際に特に発揮される。
【符号の説明】
【0034】
10…コンピューター、11…HDD、11a…色変換LUT、11b…ドット発生率テーブル、11c,11c1,11c2,11c3…補正テーブル、12…CPU、13…RAM、20…プリンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対する処理として用意された共通の画像処理を、印刷対象の画像データに施すことにより、画素毎のドットの発生、非発生を規定した印刷データを生成する印刷データ生成部と、
指定された印刷装置の固有の出力特性を表した特性情報を、当該印刷装置から取得する取得部と、
上記取得された特性情報に基づいて上記印刷データが規定するドットの発生量を補正することにより印刷データを再生成する再生成部と、
上記再生成された印刷データを上記指定された印刷装置に提供する提供部と、
を備えることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
上記特性情報とドットの発生量の補正度合いを規定した補正テーブルとの対応関係を複数の特性情報に関して記憶した記憶部を備え、
上記再生成部は、上記取得された特性情報に対応する補正テーブルを上記記憶部を参照して取得し、当該取得した補正テーブルを用いてドットの発生量を補正することを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
上記共通の画像処理は、画像データの表色系を印刷装置が使用する色材の表色系に変換するための色変換テーブルであって共通の色変換テーブルを用いて画像データを色変換する処理を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
上記共通の画像処理は、上記色変換後の画像データの画素毎に階調値をサイズの異なる複数のドットの発生率に変換するためのドット発生率テーブルであって共通のドット発生率テーブルを用いて上記色変換後の画像データを変換する処理を含むことを特徴とする請求項3に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
画像データに対する処理として用意された共通の画像処理を、印刷対象の画像データに施すことにより、画素毎のドットの発生、非発生を規定した印刷データを生成する印刷データ生成工程と、
指定された印刷装置の固有の出力特性を表した特性情報を、当該印刷装置から取得する取得工程と、
上記取得された特性情報に基づいて上記印刷データが規定するドットの発生量を補正することにより印刷データを再生成する再生成工程と、
上記再生成された印刷データを上記指定された印刷装置に提供する提供工程と、
を備えることを特徴とする印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−18498(P2012−18498A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154532(P2010−154532)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】