説明

印刷技術機械の電力消費部へ電力を出力する方法

【課題】印刷技術機械の電力消費部へ電力を出力する方法を発展させ、僅かなアイドリング損失で、機械の使用性を向上させること。
【解決手段】 本発明によれば、それぞれ異なる電流回路に配置された、種々の立ち上がり時間を有する印刷技術機械の電力消費部のグループに、電流が供給される。電力消費部の各グループには、それぞれ1つの非活動期間が対応付けられる。作業運転において機械動作が実施完了した後に、機械が非活動状態である場合には、最も短い立ち上がり時間を有するグループから順に、当該グループへの電力出力を停止し、順次、より長い立ち上がり時間を有するさらなるグループへの電力出力を、それぞれ非活動状態である場合には、各非活動期間の経過後に停止していく。電力消費部の最後のグループへの電力出力を停止した後、作業運転時に機械を制御するコンピュータへの電力出力は維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷技術機械の電力消費部へ電力を出力する方法に関し、この方法では、印刷技術機械のスタンバイ運転と作業運転との間で電力出力が切り換えられる。
【0002】
例えば印刷機械、穴開け機、紙加工機、または製本機等のような印刷技術機械を運転させるために、例えば電気モータ、電気機械式アクチュエータ、加熱・冷却機器、測定・制御・調整装置等のような電力消費部に、電流が供給される。電力消費部への電力出力は、機械の作業運転のために必要な全ての運転プロセスが確実に進行できるように定められている。機械の運転中には、電力出力は、電力消費部の電力需要と個数とに応じて変動する。
【背景技術】
【0003】
作業運転中に必要とされない電力消費部への電力供給を一時的にオフすることが公知である。このオフは、複数の電力消費部がそれぞれ異なる電流回路に配置されており、各電流回路に1つのスイッチング要素が割り当てられている場合に可能である。エネルギコストを低減するために、比較的長い間使用されない場合に機械をスタンバイ運転に移行させることが公知である。
【0004】
スタンバイ運転中には、機械の電力消費量は、該機械がいつでも迅速に再び作業運転へと移行できる程度に低減されている。スタンバイ運転中には一連の電力消費部にまだ電流が供給され、この電流がいわゆるアイドリング損失をもたらす。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許公開公報第4437735号には、エネルギ節約機能を備えた印刷機械が記載されており、ここでは、所定の期間が経過した後に自動的に第1エネルギ節約運転モードがトリガされ、操作者入力に基づいて第2エネルギ節約運転モードがトリガされる。第1エネルギ節約運転モードにおいては、とりわけ、電力消費量の大きい電力消費部への電流供給がオフされる。第2エネルギ節約運転モードにおいては、付加的に電力消費量の小さい電力消費部への電流供給がオフされ、これにより操作者入力によってエネルギコストを低減することができる。この印刷機械は、エネルギ使用の点から最適化されたものであり、立ち上がり時間が長くなるのは容認され、したがって印刷機械の使用性は低減されている。
【0006】
米国特許公報第8026681号からは、印刷機械の主駆動装置を制動するための冗長的に構成された電気ブレーキを使用する装置が公知であり、ここでは、ブレーキが発電機として駆動する場合に、有利には電気エネルギが蓄えられ、別の負荷によって使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開公報第4437735号
【特許文献2】米国特許公報第8026681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、印刷技術機械の電力消費部へ電力を出力する方法を発展させ、僅かなアイドリング損失で、機械の使用性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は請求項1の特徴を有する方法によって解決され、本発明の有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明によれば、それぞれ異なる電流回路に配置された、種々の立ち上がり時間を有する印刷技術機械の電力消費部のグループに、電流が供給される。電力消費部の各グループには、それぞれ1つの非活動期間が対応付けられる。作業運転において機械動作が実施完了した後に、機械が非活動状態である場合には、最も短い立ち上がり時間を有するグループへの電力出力を最初に停止し、グループの立ち上がり時間が長くなっていく順に、さらなるグループへの電力出力を、それぞれ非活動状態である場合には、各非活動期間の経過後に停止していく。電力消費部の最後のグループへの電力出力を停止した後、作業運転時に機械を制御するコンピュータへの電力出力は維持される。
【0011】
本発明によれば、インテリジェントなスタンバイないし準備運転が可能となるので、エネルギコストを節約し、機器の高い使用性を獲得することができる。電力消費部の非活性化を、該電力消費部の電力消費量のみに従って行うわけではなく、種々異なる立ち上がり時間を考慮することにより、使用性が改善される。例えば、空気圧システムにおいて圧力上昇を生じさせる電力消費部、または、表面処理用のシステムにおいて冷却または加熱を行う電力消費部の立ち上がり時間を考慮すると、機器をスタンバイ運転から作業運転へと迅速に移行させることができる。
【0012】
本発明を以下、実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、印刷機械の電流供給図である。
【図2】図2は、印刷機械の電力消費量の時間推移を示す線図である。
【実施例】
【0014】
図1は、4つの印刷機構1〜4と、給紙装置5、排紙装置6とを備える印刷機械を図示している。印刷機構1〜4のドラム7およびシリンダ8は、ギアトレーン9を介して互いに結合されている。ドラム7およびシリンダ8を駆動するために、電気モータ10が使用される。給紙装置5および排紙装置6内の、ドラムおよび枚葉紙パイルエレベータは、別個の電気モータ11,12によって駆動される。印刷機構1〜4内には、例えば補助モータ13〜16および電気機械式アクチュエータ17〜20等のような多数の電力消費部が存在している。排紙装置内には、加熱コイル22を備えた乾燥機21が配置されている。
【0015】
印刷機械の電力消費部はグループ分けされており、種々の電流回路を介して給電される。電気モータ10,12は、第1回路23内にある電力消費部の第1グループを形成しており、第1回路23は、第1スイッチングエレメント24によって給電ユニット25から分離することができる。モータ11は、回路26内に配置された電力消費部の第2グループに属しており、この電力消費部は、第2スイッチングエレメント27によって給電ユニット25から分離することができる。補助モータ13〜16は、回路28内にて配線されており、第3スイッチングエレメント29によって給電ユニット25から分離することができる。電気機械式アクチュエータ17〜20は、電力消費部の別グループを形成しており、回路30内に配置されており、第4スイッチングエレメント31によって給電ユニット25から分離することができる。コイル22を備える乾燥機21は、回路32内の電力消費部の別のグループに属しており、この乾燥機21は、第5スイッチングエレメント33によって給電ユニット25から分離することができる。スイッチングエレメント24,27,29,31,33は、リモート制御可能であり、それぞれとりわけコンピュータ35を含む制御ユニット34と接続されている。制御装置34には、操作者入力のための入力装置36が接続されている。給電ユニット25は、交流電流網37に接続されている。給電ユニット25において、ネットワーク交流電圧Uが、回路23,26,28,30,32のための供給電圧U〜Uに変換される。電力消費部のグループは、立ち上がり特性に従って構成されている。
【0016】
以下、図1および2に基づき、方法の実施について説明する。作業運転中、つまり印刷タスクの作業中には、印刷機械は平均的な電力消費量Pを有する。時点tでは印刷タスクが作業完了しており、印刷機械は作業運転からスタンバイ運転へと移行する。この時点tに、電力消費部のうちのいくつかがオフされる。例えば紙の輸送は必要ないので、スイッチングエレメント24,26によってモータ10〜12が運転停止される。この電力消費部のオフによって、電力消費量はPからPへと低下する。なお、Pは、印刷モードをすぐに再び始動できるために必要とされる平均的な電力である。
【0017】
所定の期間(t−t)が経過しても機械が再び印刷モードに移行しない場合には、時点tに、エネルギコスト節約の第1ステップが開始する。この第1ステップによって、例えばユニット、制御コンポーネント、ディスプレイ等のようなさらなる別の電力消費部がオフされる。
【0018】
これは、例えば1分未満の短い立ち上がり時間tH1を有する電力消費部のグループである。このグループの電力消費部をオフすることによって、電力消費量はPからPへと低下する。
【0019】
さらなる所定の期間(t−t)が経過しても機械が操作されない場合には、時点tに、エネルギコスト節約の第2ステップが開始する。この第2ステップによって、例えばユニット、制御コンポーネント等のようなさらなる別の電力消費部がオフされる。これは、例えば2分より長い立ち上がり時間tH2(但し、tH2>tH1)を有する電力消費部のグループである。このグループの電力消費部をオフすることによって、電力消費量はPからPへと低下する。
【0020】
さらなる所定の期間(t−t)が経過しても機械が操作されない場合には、時点tに、エネルギコスト節約の第3ステップが開始する。コンピュータ35の中央ユニットを除いて、全ての電力消費部がオフされる。電力消費量P<Pは、最小値である。
【0021】
時点tに、印刷機械が時間制御されて再び作動されるか、または、印刷機械が操作者入力によって再び作動されると、時点tとtの間ではまだ運転していた電力消費部が全て通電される。電力消費部のグループの立ち上がり時間tHnが種々異なることによって、平均的な開始電力Pに再び到達するまで比較的長い時間がかかる。
【0022】
期間(t−t)、(t−t)、(t−t)は、機械の操作者によって自由に設定可能であるか、またはオフ可能である。さらには操作者が、入力装置36にて直接入力することによって所期のエネルギ節約モードを選択することも可能である。どのくらいの期間機械を使用しないかが既知である場合には、所期のエネルギ節約モードを選択することができる。このプロセスは、メインスイッチの操作の代わりとなり得る。
【符号の説明】
【0023】
1〜4 印刷機構
5 給紙装置
6 排紙装置
7 ドラム
8 シリンダ
9 ギアトレーン
10〜12 電気モータ
13〜16 補助モータ
17〜20 アクチュエータ
21 乾燥機
22 加熱コイル
23 電流回路
24 スイッチングエレメント
25 給電ユニット
26 電流回路
27 スイッチングエレメント
28 電流回路
29 スイッチングエレメント
30 電流回路
31 スイッチングエレメント
32 電流回路
33 スイッチングエレメント
34 制御装置
35 コンピュータ
36 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷技術機械の電力消費部に電力を出力する方法において、
種々の電流回路(23,26,28,30,32)において動作する電力消費部(10−12,13−20,22)の複数のグループに電流供給するための回路装置(24,27,29,31,33)に、時間推移に依存した調整信号を出力することによって、作業運転とスタンバイ運転との間で電力出力を切り換え、
ただし、複数の前記グループは、前記スタンバイ運転後に前記作業運転に達するまでの立ち上がり時間が種々異なっており、前記グループにはそれぞれ1つの非活動期間(t−t,t−t,t−t)が対応付けられ、
前記作業運転において機械動作が実施完了した後に、該機械が非活動状態である場合には、最も短い立ち上がり時間を有するグループへの電力出力を最初に停止し、グループの立ち上がり時間が長くなっていく順に、さらなるグループへの電力出力を、それぞれ非活動状態である場合には、各非活動期間の経過後に停止していき、
前記電力消費部(10−12,13−20,22)の最後のグループへの電力出力を停止した後、前記作業運転時に機械を制御するコンピュータ(35)への電力出力は維持しておく、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記最も短い立ち上がり時間を有するグループの電力消費部(10−12,13−20,22)は、1分未満のうちに、前記スタンバイ運転から前記作業運転へと移行する、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記さらなるグループの電力消費部(10−12,13−20,22)は、2分より長い立ち上がり時間で、前記スタンバイ運転から前記作業運転へと移行する、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記電力消費部(10−12,13−20,22)の全てのグループへの電力出力を、所定の時点(t)に自動的に開始させる、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記所定の時点(t,t)に供給する電力(P)を、操作者入力に基づいて前記機械が機械動作を実施するために作業運転に切り換わることができる程度の大きさに定める、
ことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記非活動期間(t−t,t−t,t−t)のうちの少なくとも1つは、前記機械の操作者によって自由に設定可能に調整される、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−106518(P2013−106518A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−249264(P2012−249264)
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, D−69115 Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】