印刷方法および被印刷体
【課題】複雑形状である被印刷体に印刷することができる印刷方法を提供する。
【解決手段】被印刷体100の被印刷面10を複数の小被印刷面1a、1b・・・に分割して(以下、「a、b・・・」を省略する)、被印刷面10に印刷される絵柄20を小被印刷面1のそれぞれに印刷される小絵柄2に分割する工程と、小絵柄2を平面に展開した小展開絵柄3を作成する工程と、被印刷面1のそれぞれに対応した小印刷原版30に小展開絵柄2に沿ってインキを載せる工程と、小被印刷面1のそれぞれに対応した小印刷用ブランケット40を小印刷原版30に押し付けて前記インキを転写する工程と、上下方向に昇降する昇降手段に把持された小印刷用ブランケット30を小被印刷面1に押し付けて小絵柄2を印刷することによって、被印刷面1に絵柄20を印刷する工程と、を有する。
【解決手段】被印刷体100の被印刷面10を複数の小被印刷面1a、1b・・・に分割して(以下、「a、b・・・」を省略する)、被印刷面10に印刷される絵柄20を小被印刷面1のそれぞれに印刷される小絵柄2に分割する工程と、小絵柄2を平面に展開した小展開絵柄3を作成する工程と、被印刷面1のそれぞれに対応した小印刷原版30に小展開絵柄2に沿ってインキを載せる工程と、小被印刷面1のそれぞれに対応した小印刷用ブランケット40を小印刷原版30に押し付けて前記インキを転写する工程と、上下方向に昇降する昇降手段に把持された小印刷用ブランケット30を小被印刷面1に押し付けて小絵柄2を印刷することによって、被印刷面1に絵柄20を印刷する工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷方法および被印刷体、特に、被印刷面を複数の領域に分けて印刷する印刷方法、および該印刷方法によって印刷された被印刷体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等において、印刷制度を向上する工夫がなされてきた。たとえば、本発明の発明者は、印刷パッドに凸版印刷原版を組み合わせて、印刷精度を向上し、多色刷りのカラー印刷を可能にする発明を開示している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−239972号公報(第8−9頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、平面や曲面を1回で印刷する場合には顕著な効果を奏する。
しかしながら、たとえば、被印刷体の形状が複雑である場合、たとえば、被印刷体に陥入した凹部が形成された場合、凹部に印刷することが困難であるという問題があった。
また、複数回に分けて印刷する場合、たとえば、球体の北半球と南半球とを別個に印刷する場合や、直方体の側面をそれぞれ別個に印刷する場合等には、印刷領域の端(球体の赤道部や直方体の稜線部)に印刷の重なり範囲が生じ、その重なり範囲の色調が濃くなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題を解決するものであって、第1の目的は、複雑形状(たとえば、凹部を有する等)である被印刷体に印刷することができる印刷方法を提供することにある。
また、第2の目的は、複数の印刷領域に分けて印刷する場合に、印刷領域の端に印刷の重なり範囲が生じても、その重なり範囲の色調が濃くならないようにする印刷方法を提供することにある。さらに、第3の目的は、前記印刷方法によって印刷された被印刷体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る印刷方法は、被印刷体の被印刷面を複数の小被印刷面に分割して、前記被印刷面に印刷される絵柄を前記小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程と、
該小絵柄を平面に展開した小展開絵柄を作成する工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における前記小展開絵柄に沿ってインキを載せる工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程と、
前記複数の小印刷用ブランケットを、それぞれが対応する小被印刷面に押し付けて、該小被印刷面に前記小絵柄を印刷することによって、前記被印刷面に前記絵柄を印刷する工程と、を有すことを特徴とする。
【0007】
(2)また、本発明に係る印刷方法は、被印刷体の被印刷面を、それぞれの境界が所定の幅で重なるように複数の小被印刷面に分割して、前記被印刷面に印刷される絵柄を前記小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程と、
該小絵柄を平面に展開した小展開絵柄を作成する工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における前記小展開絵柄に沿って、前記境界の所定の幅におけるインキの量が、前記境界の所定の幅を除く範囲におけるインキの量より少なくなるように、インキを載せる工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程と、
前記複数の小印刷用ブランケットを、それぞれが対応する小被印刷面に押し付けて、該小被印刷面に前記小絵柄を印刷することによって、前記被印刷面に前記絵柄を印刷する工程と、を有すことを特徴とする。
【0008】
(3)前記(1)または(2)において、前記絵柄を印刷する工程が、前記被印刷体が載置される基板に対して昇降する昇降装置を用いるものであって、
該昇降装置が、前記複数の小被印刷面に対応した前記小印刷用ブランケットを把持し、該小印刷用ブランケットを、これが対応した前記小被印刷面に押し付けることを特徴とする。
【0009】
(4)前記(1)または(2)において、前記絵柄を印刷する工程が、前記被印刷体が載置される基板に対して昇降する昇降装置を用いるものであって、
前記被印刷体の側面に位置する小被印刷面に前記絵柄の一部を印刷する際、前記昇降装置は、前記小被印刷面に対応した前記小印刷用ブランケットを把持し、該小印刷用ブランケットの前記インキが転写されていない部分を前記基板に押し付けることによって、前記小印刷用ブランケットの前記インキが転写された部分を、これが対応した前記小被印刷面に押し付けることを特徴とする。
【0010】
(5)前記(4)において、前記小印刷用ブランケットの前記インキが転写されていない部分が押し付けられる前記基板の範囲は、前記被印刷体が載置されている前記基板の範囲に対し、前記昇降装置の昇降方向で下降側に位置していることを特徴とする。
【0011】
(6)本発明に係る被印刷体は、前記(1)乃至(5)の何れかに記載の印刷方法によって印刷された被印刷面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(i)本発明に係る印刷方法は、絵柄を分割した小絵柄に対応した小印刷用ブランケットを用いて、被印刷面に絵柄を印刷するから、複雑形状の被印刷体への印刷が可能になる。
そして、複数の小印刷用ブランケットの押し付け方向を、それぞれ互いに平行にすれば、当該押し付け作業が単純になり、当該押し付けに用いる装置を簡素にすることができる。このとき、複数の小印刷用ブランケット(個々に形状が相違する)を、それぞれ別個に1個づつ押し付けてもよいし、複数の小印刷用ブランケット(個々に形状が相違する)の幾つかを同時に、複数箇所に押し付けてもよい。
【0013】
(ii)また、それぞれの境界が所定の幅で重なるように分割した小絵柄に対応した小印刷用ブランケットを用いて、重なった所定の幅のインキ量を少なくして、被印刷面に絵柄を印刷するから、複雑形状の被印刷体への印刷が可能になると共に、小絵柄同士の境界が濃くなったり、あるいは境界に絵柄の無い範囲(被印刷体の地肌が見える筋)が生じたりすることがない。
なお、インキの量に差を設ける方法は限定されるものではなく、網点の数、網点の大きさ、単位面積当たりのインキ量、等に差をつければよい。
【0014】
(iii)また、絵柄を印刷する工程が、被印刷体が載置される基板に対して昇降(上下方向に移動)する昇降装置を用いるものであるから、作業のための装置が簡素になる。
このとき、複数の小印刷用ブランケット(個々に形状が相違する)を、それぞれ別個に1個づつ昇降装置に取り付けてもよいし、複数の小印刷用ブランケット(個々に形状が相違する)の幾つかを昇降装置の複数箇所に取り付けてもよい。
そして、被印刷体と昇降装置(Z方向に移動する)との水平方向の位置合わせのため、基板または昇降装置に水平方向移動手段(X方向およびY方向に移動する)が設けられることになる。したがって、水平方向移動手段によって被印刷体と昇降装置との水平方向の位置合わせが終了した後、昇降手段が下降することになる。また、昇降手段の下降に同期して、基板と昇降装置との水平方向の相対位置が変動するようにしてもよい。このとき、被印刷体を水平方向(X方向およびY方向)に移動させても、昇降装置を水平方向(X方向およびY方向)に移動させても、あるいは両者を水平方向(X方向およびY方向)に移動させてもよい。
【0015】
(iv)また、被印刷体の側面に位置する小被印刷面に絵柄の一部を印刷する際、昇降装置は、小印刷用ブランケットのインキが転写されていない部分を基板に押し付けることによって、小印刷用ブランケットのインキが転写された部分を、これが対応した小被印刷面に押し付けるから、たとえば、基板に対して略垂直な側面や、基板から離れる程、被印刷体の外側に位置する側面(所謂、オーバーハングの状態にある側面)等に印刷することができる。
なお、被印刷体と昇降装置(Z方向に移動する)との水平方向の位置合わせのために、基板または昇降装置に設置される水平方向移動手段(X方向およびY方向に移動する)を用いて、昇降手段が所定の上下方向位置にまで下降した時点(小印刷用ブランケットを基板に所定の量だけ押し付けている時点を含む)において、昇降装置を被印刷体に近づけてもよい(押し付けてもよい)。さらに、昇降手段の下降動作と同期して、水平方向移動手段が昇降装置を水平方向で被印刷体に近づけてもよい(押し付けてもよい)。
【0016】
(v)また、小印刷用ブランケットのインキが転写されていない部分が押し付けられる基板の範囲は、被印刷体が載置されている基板の範囲に対し、昇降装置の昇降方向で一段下がっているため、小印刷用ブランケットがかかる一段下がった範囲に押し付けられた際、小印刷用ブランケットのインキが転写された部分の表面は、基板の面により平行な方向に変形(膨張)しようとするから、小被印刷面(側面)への印刷精度が向上する。
【0017】
(vi)本発明に係る被印刷体は、前記(i)乃至(v)の何れかの効果を奏する印刷方法によって印刷された被印刷面を有するから、複雑形状であって、表面の全部または一部に正確な絵柄が印刷されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る印刷方法を説明するフローチャート。
【図2】図1に示す印刷方法を説明する印刷工程毎に示す断面図。
【図3】図1に示す印刷方法を説明する印刷工程毎に示す断面図。
【図4】図1に示す印刷方法を説明する印刷工程毎に示す断面図。
【図5】図1に示す印刷方法を説明する印刷工程毎に示す断面図。
【図6】図4に示す印刷方法のバリエーションを説明する断面図。
【図7】図5に示す印刷方法のバリエーションを説明する断面図。
【図8】図5に示す印刷方法のバリエーションを説明する断面図。
【図9】実施の形態2に係る被印刷体を模式的に示す断面図。
【図10】本発明の実施の形態3に係る印刷方法における絵柄を分割する要領を模式的に示す平面図。
【図11】本発明の実施の形態3に係る印刷方法における小展開絵柄における網点の配置の一例を拡大して模式的に示す平面図。
【図12】本発明の実施の形態3に係る印刷方法における印刷の重なり範囲を拡大して模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態1]
図1〜図8は本発明の実施の形態1に係る印刷方法を説明するものであって、図1はフローチャート、図2〜図5は印刷工程毎に示す断面図、図6〜図8は印刷方法のバリエーションを示す断面図である。なお、図2〜図8は、模式的に一部を誇張して示すものであって、本発明は、印刷体の形状や絵柄(インキ)の形態(形状、分布等)を図示するものに限定するものではない。
【0020】
図1において、印刷方法1000は、被印刷体100の被印刷面10を複数の小被印刷面に分割する工程(S1)と、
被印刷面に印刷しようとする絵柄を小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程(S2)と、
小絵柄のそれぞれを平面に展開した小展開絵柄を作成する工程(S3)と、
小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における小展開絵柄に沿ってインキを載せる工程(S4)と、
小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程(S5)と、
小印刷用ブランケットを、これが対応する小被印刷面に、昇降手段を用いて押し付けて、そこに小絵柄を印刷する工程(S6)とを、有している。
【0021】
次に、図2〜図5に模式的に断面を示す被印刷体100を例に、印刷方法1000を説明する。
図2において、被印刷体100の被印刷面10(位置11〜位置16)を複数の小被印刷面1a、1b1、1b2、1c、1d(以下、それぞれを「小被印刷面1」と称す場合がある)に分割して(図1に示すS1)、被印刷面10に印刷しようとする絵柄20(図示しない)を小被印刷面1のそれぞれに印刷される小絵柄2a、2b1、2b2、2c、2d(以下、それぞれを「小絵柄2」と称す場合がある)に分割する(図1に示すS2)。そして、小絵柄2のそれぞれを平面に展開した小展開絵柄3a、3b1、3b2、3c、3d(以下、それぞれを「小展開絵柄3」と称す場合がある)を作成する(図1に示すS3)。
【0022】
次に、小被印刷面1のそれぞれに対応した小印刷原版30a、30b、30c、30d(以下、それぞれを「小印刷原版30」と称す場合がある)に、それぞれが対応する小被印刷面1における小展開絵柄3に沿ってインキ4を載せる(図1に示すS4)。なお、インキを載せる方法は限定されるものではなく、小展開絵柄3が形成された凸版の凸部あるいは凹版の凹部にインキを載せても、あるいは、平板に印刷(インクジェットプリンター、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等)によってインキを載せてもよい。
そして、小被印刷面1のそれぞれに対応した小印刷用ブランケット40a、40b、40c、40d(以下、それぞれを「小印刷用ブランケット40」と称す場合がある)を、それそれが対応する小印刷原版30に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケット40にインキ4を転写する(図1に示すS5)。
さらに、小印刷用ブランケット40、これが対応する小被印刷面1に押し付けて、そこに小絵柄2を印刷する(図1に示すS6)。以下、小被印刷面1のそれぞれについて詳細に説明する。
【0023】
図3の(a)において、小被印刷面1cに対応した小印刷原版30cに、小展開絵柄3cに沿ってインキ4cを載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット40cを小印刷原版30cに押し付けている(図1に示すS5)。すなわち、小印刷用ブランケット40cは平面状に変形した状態で、その表面にインキ4cが転写されている。このとき、小印刷用ブランケット40cは、前記押し付けない状態では、凹部である小被印刷面1cの形状に対応した断面略紡錘状(略円弧状ないし略放物線状)であって、その最下点が小展開絵柄3cの略中央に一致している。
図3の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。そして、小印刷用ブランケット40cを、これが対応する小被印刷面1cの直上に配置して、載置面91の法線方向(図3において上下方向)に沿って、押し下げている。
【0024】
図3の(c)において、小印刷用ブランケット40cを下方に押し付けている。このため、小印刷用ブランケット40cは、小被印刷面1cの表面に向かって膨張するように変形するから、該表面にインキ4cが転写され、小絵柄2cが印刷される(図1に示すS6)。
なお、本発明は、前記押し下げる(押し付ける)装置を限定するものではなく、小被印刷面1cと水平方向に位置合わせをすることができ、小印刷用ブランケット40cを把持して上下方向に昇降自在なものであればよい。
【0025】
図4の(a)において、小被印刷面1b1および小被印刷面1b2に対応した小印刷原版30bに、小展開絵柄3b1および小展開絵柄3b2に沿ってインキ4b1およびインキ4b2を載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット40bを小印刷原版30bに押し付けている(図1に示すS5)。すなわち、小印刷用ブランケット40bは平面状に変形した状態で、その表面にインキ4b1、4b2が転写されている。このとき、前記押し付けない状態では、小印刷用ブランケット40bは、断面略円弧状(円柱を半分にした形態)であって、その最下点が小展開絵柄3b1と小展開絵柄3b2との中間点に略一致している。
【0026】
図4の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。そして、小印刷用ブランケット40bを、これが対応する小被印刷面1b1および小被印刷面1b2の直上に配置して、載置面91の法線方向(図4において上下方向)に沿って、押し下げている。
図4の(c)において、小印刷用ブランケット40bを下方に押し付けている。このため、小印刷用ブランケット40bは、小被印刷面1b1および小被印刷面1b2になじむよう変形し、該表面にインキ4b1およびインキ4b2が転写され、小絵柄2b1および小絵柄2b2が印刷される(図1に示すS6)。
なお、図3と同様に、前記押し下げる(押し付ける)装置を限定するものではない。
【0027】
図5の(a)において、小被印刷面1aに対応した小印刷原版30aに、小展開絵柄3aに沿ってインキ4aを載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット40aを小印刷原版30aに押し付けている(図1に示すS5)。すなわち、小印刷用ブランケット40cは平面状に変形した状態で、その表面にインキ4cが転写されている。このとき、前記押し付けない状態では、小印刷用ブランケット40aは、断面略放物線状であって、その頂点(最下点)41aが小展開絵柄3aから離れた位置にある(ずれている)。
図5の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。なお、載置面91はその周囲の当接面92よりも一段高くなっている。そして、小印刷用ブランケット40aの頂点41aを、これが対応する小被印刷面1aから水平方向で離れた位置に配置して、載置面91の法線方向(図5において上下方向)に沿って、押し下げている。
【0028】
図5の(c)において、小印刷用ブランケット40aを当接面92に押し付けている。このため、小印刷用ブランケット40cは、頂点41aから離れた面が略水平方向に膨張するように変形するから、小印刷用ブランケット40cは小被印刷面1aに押し付けられる。すなわち、小印刷用ブランケット40cに転写されていたインキ4aは小被印刷面1aに転写され、小絵柄2aが印刷される(図1に示すS6)。
このとき、当接面92は載置面91に対して一段低くなっているため、小印刷用ブランケット40cのインキ4aが転写された面は、小被印刷面1aの法線方向により平行に膨張して小被印刷面1aに押し付けられる。したがって、小絵柄2aの印刷精度が向上している。また、以上は、当接面92と載置面91とが平行で段差を有するものであるが、当接面92を載置面91(段差部)に近づける程、低くなるように傾斜させてもよい。
【0029】
なお、小被印刷面1dは、上側が張り出した「オーバーハング」状態であるが、小被印刷面1aと同様の要領によって小絵柄2dが印刷されている(前記、符号に付した「a」を「d」に読み替えたものに同じ)。このとき、当接面92の小印刷用ブランケット40dが当接する範囲を載置面91(段差部)に近づける程、低くなるように傾斜させ、小印刷用ブランケット40dのインキ4dが転写された面が、小被印刷面1dの法線方向により平行に膨張するようにしてもよい。
【0030】
(バリエーション1)
図6は、図4に示す小絵柄2b1および小絵柄2b2の印刷方法のバリエーションを示している。
図6の(a)において、小被印刷面1b1および小被印刷面1b2に対応した小印刷原版30bに、小展開絵柄3b1および小展開絵柄3b2に沿ってインキ4b1およびインキ4b2を載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット41bを小展開絵柄3b1に、小印刷用ブランケット42bを小展開絵柄3b2に、それぞれ押し付けている(図1に示すS5)。
すなわち、小印刷用ブランケット41b、42bは平面状に変形した状態で、その表面にそれぞれインキ4b1、4b2が転写されている。このとき、前記押し付けない状態では、小印刷用ブランケット41bは、断面略円弧状(円柱を半分にした形態)であって、その最下点が小展開絵柄3b1の中心に一致し、小印刷用ブランケット42bは、断面略円弧状(円柱を半分にした形態)であって、その最下点が小展開絵柄3b2の中心に一致している。
【0031】
図6の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。そして、小印刷用ブランケット41bおよび小印刷用ブランケット42bを、それぞれこれが対応する小被印刷面1b1および小被印刷面1b2の直上になるように、共通の昇降装置(図示しない)に取り付けて、載置面91の法線方向(図6において上下方向)に沿って、押し下げている。
図6の(c)において、小印刷用ブランケット41b、42bを下方に押し付けている。このため、小印刷用ブランケット41bおよび小印刷用ブランケット42bは、それぞれ小被印刷面1b1および小被印刷面1b2になじむよう変形し、該表面にインキ4b1およびインキ4b2が転写され、小絵柄2b1および小絵柄2b2が印刷される(図1に示すS6)。
【0032】
なお、図3と同様に、前記押し下げる(押し付ける)装置を限定するものではない。また、以上は、小印刷原版30bにインキ4b1およびインキ4b2を載せているが、本願発明はこれに限定するものではなく、インキ4b1およびインキ4b2をそれぞれ別個の小印刷原版30bに載せてもよい。さらに、小印刷用ブランケット41bおよび小印刷用ブランケット42bを、共通の昇降装置に取り付けて、被印刷体100に同時に押し付けているが、本願発明はこれに限定するものではなく、小印刷用ブランケット41bおよび小印刷用ブランケット42bを別個に取り付けて、一方を先に押し付けるようにしてもよい。
【0033】
(バリエーション2)
図7は、小被印刷面1dに小絵柄2dを印刷するバリエーションを示している。
図7の(a)において、小被印刷面1dに対応した小印刷原版30ad、小展開絵柄3dに沿ってインキ4dを載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット40dを小印刷原版30dに押し付けている(図1に示すS5)。すなわち、小印刷用ブランケット40cは平面状に変形した状態で、その表面にインキ4cが転写されている。
図7の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。なお、載置面91はその周囲の当接面92よりも一段高くなっている。そして、小印刷用ブランケット40dの頂点41dを、これが対応する小被印刷面1dから水平方向で離れた位置に配置して、載置面91の法線方向(上下方向)に沿って、押し下げている。
【0034】
図7の(c)において、小印刷用ブランケット40dを当接面92に上下方向に押し付けると共に、小被印刷面1dに向かって水平方向に移動させている。このため、小印刷用ブランケット40dは、頂点41dから離れた面が略水平方向に膨張した状態で、小被印刷面1dに向かって水平方向に押し付けられる。よって、小印刷用ブランケット40dのインキ4dが転写された面は、小被印刷面1dの法線方向により近い方向から小被印刷面1aに押し付けられるから、小絵柄2dの印刷精度が向上している。
なお、かかる水平方向に移動させる手段は限定するものではなく、被印刷体100を水平方向(X方向およびY方向)に移動させても、小印刷用ブランケット40d(昇降装置に同じ)を水平方向(X方向およびY方向)に移動させても、あるいは両者を水平方向(X方向およびY方向)に移動させてもよい。
【0035】
(バリエーション3)
図8は、小被印刷面1dに小絵柄2dを印刷するバリエーションを示している。
図8の(a)は、バリエーション2に示す図7の(a)に同じである。
図8の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。このとき、載置面91の周囲に一段低くなった当接面92と、被印刷体100の小被印刷面1dに対向した傾斜壁93が設けられている。傾斜壁93は小被印刷面1dから所定の距離だけ離れているから、小印刷用ブランケット40dは傾斜壁93および小被印刷面1dに触れることなく下降し、やがて、小印刷用ブランケット40dの頂点41dが、これが対応する小被印刷面1dから水平方向で離れた位置で、当接面92に当接する。
【0036】
図8の(c)において、小印刷用ブランケット40dを当接面92に上下方向に押し付けると、小印刷用ブランケット40dは膨張する。このとき、小印刷用ブランケット40dの一方の面が傾斜面93に当接して変形が拘束されるため、他方の面(小被印刷面1d側の面)は、小被印刷面1dの法線方向により近い方向から押し付けられる。よって、印刷が容易になると共に、小印刷用ブランケット40dのインキ4dが転写された面は、小絵柄2dの印刷精度が向上している。
なお、傾斜壁93の形状は限定するものではなく、また、昇降に加えて、被印刷体100と小印刷用ブランケット40d(昇降装置に同じ)とを相対的に水平方向(X方向およびY方向)に移動させてもよい。
また、このような傾斜壁93に準じた傾斜壁を、小被印刷面1aへの小絵柄2aの印刷(小印刷用ブランケット40aの昇降)の際に使用してもよい。
【0037】
[実施の形態2]
図9は本発明の実施の形態2に係る被印刷体を模式的に示す断面図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。すなわち、被印刷体200は実施の形態1に説明したように、上下方向に昇降する昇降手段によって絵柄20が印刷されるから、簡便な装置によって安価に提供される。
【0038】
[実施の形態3]
図10〜図12は本発明の実施の形態3に係る印刷方法を説明するものであって、図10は絵柄を分割する要領を模式的に示す平面図、図10は小展開絵柄における網点の配置の一例を拡大して模式的に示す平面図、図12は印刷の重なり範囲を拡大して模式的に示す平面図である。なお、図11〜図12は、模式的に示すものであって、本発明は、被印刷体の形状や網点の形態(形状、分布等)を図示するものに限定するものではない。また、実施の形態1と同じ部分または相等する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0039】
図10〜図12において、被印刷体100の被印刷面10を、それぞれの境界が所定の幅で重なるように複数の小被印刷面・・・1f、1g、1h・・・に分割して(図1に示すS1に準じる)、被印刷面10に印刷しようとする絵柄20(図示しない)を小被印刷面1のそれぞれに印刷される小絵柄・・・2f、2g、2h・・・に分割する(図1に示すS2に準じる)。
そして、小絵柄・・・2f、2g、2h・・・のそれぞれを平面に展開した小展開絵柄・・・3f、3g、3h・・・を作成する(図1に示すS3に準じる)。
そして、小被印刷面・・・1f、1g、1h・・・のそれぞれに対応した小印刷原版・・・30f、30g、30h・・・に、それぞれが対応する小展開絵柄・・・3f、3g、3h・・・に沿ってインキを載せる(図1に示すS4に準じる)。
【0040】
このとき、たとえば、小印刷原版30fには、小展開絵柄3fに相等する範囲に、小展開絵柄3gの小展開絵柄3fに接する所定幅に相等する境界範囲3gfを加えた拡大小展開絵柄3efgに沿ってインキが載せられる。
小展開絵柄3fの小展開絵柄3gに接する所定幅に相等する境界範囲3fgと、小展開絵柄3gの小展開絵柄3fに接する所定幅に相等する境界範囲3gfとを併せた重なり範囲5fgに載せられるインキの量は、拡大小展開絵柄3efgに相等する範囲から重なり範囲5fgを除いた内側範囲3ffに載せられるインキの量より少なくなっている(図10の(a)参照)。
【0041】
同様に、たとえば、小印刷原版30gには、小展開絵柄3gに相等する範囲に、小展開絵柄3fの小展開絵柄3gに接する所定幅に相等する境界範囲3fgと、小展開絵柄3hの小展開絵柄3gに接する所定幅に相等する境界範囲3hgと、を加えた拡大小展開絵柄3fghに相等する範囲に沿ってインキが載せられる。
そして、重なり範囲5fgに載せられるインキの量と、小展開絵柄3gの小展開絵柄3hに接する所定幅に相等する境界範囲3ghと、小展開絵柄3hの小展開絵柄3gに接する所定幅に相等する境界範囲3hgとを併せた重なり範囲5ghに載せられるインキの量は、拡大小展開絵柄3fghに相等する範囲から重なり範囲5fgおよび重なり範囲5ghを除いた内側範囲3ggに載せられるインキの量より少なくなっている。
【0042】
すなわち、たとえば、重なり範囲5fgにおける網点の数が、内側範囲3ffや内側範囲3ggにおける網点の数より少なくなっている。あるいは、重なり範囲5fgにおける網点の分布(単位面積当たりの密度)が、内側範囲3ffや内側範囲3ggから離れる程除々に減少している。
あるいは、重なり範囲5fgにおける網点の大きさが内側範囲3ffや内側範囲3ggにおける網点の大きさより少なくなっている。あるいは、重なり範囲5fgにおける網点の大きさが、内側範囲3ffや内側範囲3ggから離れる程除々に縮小している。なお、インキを載せる方法は限定されるものではないことは実施の形態1に同じである。
【0043】
さらに、実施の形態1と同様に、小印刷用ブランケット・・・40f、40g、40h・・・に前記インキを転写して、それぞれに小印刷用ブランケット絵柄・・・4f、4g、4h・・・に沿ったインキを付着させる(図1に示すS5に準じる)。
次に、小印刷用ブランケット・・・40f、40g、40h・・・を、これが対応する小被印刷面・・・1f、1g・、1h・・に押し付けて、そこに小絵柄・・・2f、2g、2h・・・を印刷している(図1に示すS6に準じる)。
【0044】
そうすると、たとえば、小絵柄2fと小絵柄2gとの境界の所定幅が互いに重なり、小絵柄2gと小絵柄2hとの境界の所定幅が互いに重なり、かかる重なり範囲のインキの量が、重なり範囲を除く内側範囲のインキの量より少ないから、重なり範囲の絵柄が濃くなることがない(図10参照)。
このとき、たとえば、小印刷原版30fにおいて、小展開絵柄3gとの重なり範囲5fgに相等する範囲に載せられるインキの量を「α」%に減らし、一方、小印刷原版30gにおいて、小展開絵柄3fとの重なり範囲5fgに相等する範囲に載せられるインキの量を「100−α」%に減らしておけば、両者の重なり範囲5fgにおける絵柄は濃くなることも、薄くなることもなく、美観を損ねることがない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、複雑形状である被印刷体に、昇降装置を用いて印刷することが可能になるから、たとえば、複雑な曲面を有する被印刷体への印刷方法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 小被印刷面
2 小絵柄
3 小展開絵柄
4 インキ
10 被印刷面
20 絵柄
30 小印刷原版
40 小印刷用ブランケット
90 基板
91 載置面
92 当接面
93 傾斜面
100 被印刷体
200 被印刷体
1000 印刷方法
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷方法および被印刷体、特に、被印刷面を複数の領域に分けて印刷する印刷方法、および該印刷方法によって印刷された被印刷体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等において、印刷制度を向上する工夫がなされてきた。たとえば、本発明の発明者は、印刷パッドに凸版印刷原版を組み合わせて、印刷精度を向上し、多色刷りのカラー印刷を可能にする発明を開示している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−239972号公報(第8−9頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、平面や曲面を1回で印刷する場合には顕著な効果を奏する。
しかしながら、たとえば、被印刷体の形状が複雑である場合、たとえば、被印刷体に陥入した凹部が形成された場合、凹部に印刷することが困難であるという問題があった。
また、複数回に分けて印刷する場合、たとえば、球体の北半球と南半球とを別個に印刷する場合や、直方体の側面をそれぞれ別個に印刷する場合等には、印刷領域の端(球体の赤道部や直方体の稜線部)に印刷の重なり範囲が生じ、その重なり範囲の色調が濃くなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題を解決するものであって、第1の目的は、複雑形状(たとえば、凹部を有する等)である被印刷体に印刷することができる印刷方法を提供することにある。
また、第2の目的は、複数の印刷領域に分けて印刷する場合に、印刷領域の端に印刷の重なり範囲が生じても、その重なり範囲の色調が濃くならないようにする印刷方法を提供することにある。さらに、第3の目的は、前記印刷方法によって印刷された被印刷体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る印刷方法は、被印刷体の被印刷面を複数の小被印刷面に分割して、前記被印刷面に印刷される絵柄を前記小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程と、
該小絵柄を平面に展開した小展開絵柄を作成する工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における前記小展開絵柄に沿ってインキを載せる工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程と、
前記複数の小印刷用ブランケットを、それぞれが対応する小被印刷面に押し付けて、該小被印刷面に前記小絵柄を印刷することによって、前記被印刷面に前記絵柄を印刷する工程と、を有すことを特徴とする。
【0007】
(2)また、本発明に係る印刷方法は、被印刷体の被印刷面を、それぞれの境界が所定の幅で重なるように複数の小被印刷面に分割して、前記被印刷面に印刷される絵柄を前記小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程と、
該小絵柄を平面に展開した小展開絵柄を作成する工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における前記小展開絵柄に沿って、前記境界の所定の幅におけるインキの量が、前記境界の所定の幅を除く範囲におけるインキの量より少なくなるように、インキを載せる工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程と、
前記複数の小印刷用ブランケットを、それぞれが対応する小被印刷面に押し付けて、該小被印刷面に前記小絵柄を印刷することによって、前記被印刷面に前記絵柄を印刷する工程と、を有すことを特徴とする。
【0008】
(3)前記(1)または(2)において、前記絵柄を印刷する工程が、前記被印刷体が載置される基板に対して昇降する昇降装置を用いるものであって、
該昇降装置が、前記複数の小被印刷面に対応した前記小印刷用ブランケットを把持し、該小印刷用ブランケットを、これが対応した前記小被印刷面に押し付けることを特徴とする。
【0009】
(4)前記(1)または(2)において、前記絵柄を印刷する工程が、前記被印刷体が載置される基板に対して昇降する昇降装置を用いるものであって、
前記被印刷体の側面に位置する小被印刷面に前記絵柄の一部を印刷する際、前記昇降装置は、前記小被印刷面に対応した前記小印刷用ブランケットを把持し、該小印刷用ブランケットの前記インキが転写されていない部分を前記基板に押し付けることによって、前記小印刷用ブランケットの前記インキが転写された部分を、これが対応した前記小被印刷面に押し付けることを特徴とする。
【0010】
(5)前記(4)において、前記小印刷用ブランケットの前記インキが転写されていない部分が押し付けられる前記基板の範囲は、前記被印刷体が載置されている前記基板の範囲に対し、前記昇降装置の昇降方向で下降側に位置していることを特徴とする。
【0011】
(6)本発明に係る被印刷体は、前記(1)乃至(5)の何れかに記載の印刷方法によって印刷された被印刷面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(i)本発明に係る印刷方法は、絵柄を分割した小絵柄に対応した小印刷用ブランケットを用いて、被印刷面に絵柄を印刷するから、複雑形状の被印刷体への印刷が可能になる。
そして、複数の小印刷用ブランケットの押し付け方向を、それぞれ互いに平行にすれば、当該押し付け作業が単純になり、当該押し付けに用いる装置を簡素にすることができる。このとき、複数の小印刷用ブランケット(個々に形状が相違する)を、それぞれ別個に1個づつ押し付けてもよいし、複数の小印刷用ブランケット(個々に形状が相違する)の幾つかを同時に、複数箇所に押し付けてもよい。
【0013】
(ii)また、それぞれの境界が所定の幅で重なるように分割した小絵柄に対応した小印刷用ブランケットを用いて、重なった所定の幅のインキ量を少なくして、被印刷面に絵柄を印刷するから、複雑形状の被印刷体への印刷が可能になると共に、小絵柄同士の境界が濃くなったり、あるいは境界に絵柄の無い範囲(被印刷体の地肌が見える筋)が生じたりすることがない。
なお、インキの量に差を設ける方法は限定されるものではなく、網点の数、網点の大きさ、単位面積当たりのインキ量、等に差をつければよい。
【0014】
(iii)また、絵柄を印刷する工程が、被印刷体が載置される基板に対して昇降(上下方向に移動)する昇降装置を用いるものであるから、作業のための装置が簡素になる。
このとき、複数の小印刷用ブランケット(個々に形状が相違する)を、それぞれ別個に1個づつ昇降装置に取り付けてもよいし、複数の小印刷用ブランケット(個々に形状が相違する)の幾つかを昇降装置の複数箇所に取り付けてもよい。
そして、被印刷体と昇降装置(Z方向に移動する)との水平方向の位置合わせのため、基板または昇降装置に水平方向移動手段(X方向およびY方向に移動する)が設けられることになる。したがって、水平方向移動手段によって被印刷体と昇降装置との水平方向の位置合わせが終了した後、昇降手段が下降することになる。また、昇降手段の下降に同期して、基板と昇降装置との水平方向の相対位置が変動するようにしてもよい。このとき、被印刷体を水平方向(X方向およびY方向)に移動させても、昇降装置を水平方向(X方向およびY方向)に移動させても、あるいは両者を水平方向(X方向およびY方向)に移動させてもよい。
【0015】
(iv)また、被印刷体の側面に位置する小被印刷面に絵柄の一部を印刷する際、昇降装置は、小印刷用ブランケットのインキが転写されていない部分を基板に押し付けることによって、小印刷用ブランケットのインキが転写された部分を、これが対応した小被印刷面に押し付けるから、たとえば、基板に対して略垂直な側面や、基板から離れる程、被印刷体の外側に位置する側面(所謂、オーバーハングの状態にある側面)等に印刷することができる。
なお、被印刷体と昇降装置(Z方向に移動する)との水平方向の位置合わせのために、基板または昇降装置に設置される水平方向移動手段(X方向およびY方向に移動する)を用いて、昇降手段が所定の上下方向位置にまで下降した時点(小印刷用ブランケットを基板に所定の量だけ押し付けている時点を含む)において、昇降装置を被印刷体に近づけてもよい(押し付けてもよい)。さらに、昇降手段の下降動作と同期して、水平方向移動手段が昇降装置を水平方向で被印刷体に近づけてもよい(押し付けてもよい)。
【0016】
(v)また、小印刷用ブランケットのインキが転写されていない部分が押し付けられる基板の範囲は、被印刷体が載置されている基板の範囲に対し、昇降装置の昇降方向で一段下がっているため、小印刷用ブランケットがかかる一段下がった範囲に押し付けられた際、小印刷用ブランケットのインキが転写された部分の表面は、基板の面により平行な方向に変形(膨張)しようとするから、小被印刷面(側面)への印刷精度が向上する。
【0017】
(vi)本発明に係る被印刷体は、前記(i)乃至(v)の何れかの効果を奏する印刷方法によって印刷された被印刷面を有するから、複雑形状であって、表面の全部または一部に正確な絵柄が印刷されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る印刷方法を説明するフローチャート。
【図2】図1に示す印刷方法を説明する印刷工程毎に示す断面図。
【図3】図1に示す印刷方法を説明する印刷工程毎に示す断面図。
【図4】図1に示す印刷方法を説明する印刷工程毎に示す断面図。
【図5】図1に示す印刷方法を説明する印刷工程毎に示す断面図。
【図6】図4に示す印刷方法のバリエーションを説明する断面図。
【図7】図5に示す印刷方法のバリエーションを説明する断面図。
【図8】図5に示す印刷方法のバリエーションを説明する断面図。
【図9】実施の形態2に係る被印刷体を模式的に示す断面図。
【図10】本発明の実施の形態3に係る印刷方法における絵柄を分割する要領を模式的に示す平面図。
【図11】本発明の実施の形態3に係る印刷方法における小展開絵柄における網点の配置の一例を拡大して模式的に示す平面図。
【図12】本発明の実施の形態3に係る印刷方法における印刷の重なり範囲を拡大して模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態1]
図1〜図8は本発明の実施の形態1に係る印刷方法を説明するものであって、図1はフローチャート、図2〜図5は印刷工程毎に示す断面図、図6〜図8は印刷方法のバリエーションを示す断面図である。なお、図2〜図8は、模式的に一部を誇張して示すものであって、本発明は、印刷体の形状や絵柄(インキ)の形態(形状、分布等)を図示するものに限定するものではない。
【0020】
図1において、印刷方法1000は、被印刷体100の被印刷面10を複数の小被印刷面に分割する工程(S1)と、
被印刷面に印刷しようとする絵柄を小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程(S2)と、
小絵柄のそれぞれを平面に展開した小展開絵柄を作成する工程(S3)と、
小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における小展開絵柄に沿ってインキを載せる工程(S4)と、
小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程(S5)と、
小印刷用ブランケットを、これが対応する小被印刷面に、昇降手段を用いて押し付けて、そこに小絵柄を印刷する工程(S6)とを、有している。
【0021】
次に、図2〜図5に模式的に断面を示す被印刷体100を例に、印刷方法1000を説明する。
図2において、被印刷体100の被印刷面10(位置11〜位置16)を複数の小被印刷面1a、1b1、1b2、1c、1d(以下、それぞれを「小被印刷面1」と称す場合がある)に分割して(図1に示すS1)、被印刷面10に印刷しようとする絵柄20(図示しない)を小被印刷面1のそれぞれに印刷される小絵柄2a、2b1、2b2、2c、2d(以下、それぞれを「小絵柄2」と称す場合がある)に分割する(図1に示すS2)。そして、小絵柄2のそれぞれを平面に展開した小展開絵柄3a、3b1、3b2、3c、3d(以下、それぞれを「小展開絵柄3」と称す場合がある)を作成する(図1に示すS3)。
【0022】
次に、小被印刷面1のそれぞれに対応した小印刷原版30a、30b、30c、30d(以下、それぞれを「小印刷原版30」と称す場合がある)に、それぞれが対応する小被印刷面1における小展開絵柄3に沿ってインキ4を載せる(図1に示すS4)。なお、インキを載せる方法は限定されるものではなく、小展開絵柄3が形成された凸版の凸部あるいは凹版の凹部にインキを載せても、あるいは、平板に印刷(インクジェットプリンター、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等)によってインキを載せてもよい。
そして、小被印刷面1のそれぞれに対応した小印刷用ブランケット40a、40b、40c、40d(以下、それぞれを「小印刷用ブランケット40」と称す場合がある)を、それそれが対応する小印刷原版30に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケット40にインキ4を転写する(図1に示すS5)。
さらに、小印刷用ブランケット40、これが対応する小被印刷面1に押し付けて、そこに小絵柄2を印刷する(図1に示すS6)。以下、小被印刷面1のそれぞれについて詳細に説明する。
【0023】
図3の(a)において、小被印刷面1cに対応した小印刷原版30cに、小展開絵柄3cに沿ってインキ4cを載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット40cを小印刷原版30cに押し付けている(図1に示すS5)。すなわち、小印刷用ブランケット40cは平面状に変形した状態で、その表面にインキ4cが転写されている。このとき、小印刷用ブランケット40cは、前記押し付けない状態では、凹部である小被印刷面1cの形状に対応した断面略紡錘状(略円弧状ないし略放物線状)であって、その最下点が小展開絵柄3cの略中央に一致している。
図3の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。そして、小印刷用ブランケット40cを、これが対応する小被印刷面1cの直上に配置して、載置面91の法線方向(図3において上下方向)に沿って、押し下げている。
【0024】
図3の(c)において、小印刷用ブランケット40cを下方に押し付けている。このため、小印刷用ブランケット40cは、小被印刷面1cの表面に向かって膨張するように変形するから、該表面にインキ4cが転写され、小絵柄2cが印刷される(図1に示すS6)。
なお、本発明は、前記押し下げる(押し付ける)装置を限定するものではなく、小被印刷面1cと水平方向に位置合わせをすることができ、小印刷用ブランケット40cを把持して上下方向に昇降自在なものであればよい。
【0025】
図4の(a)において、小被印刷面1b1および小被印刷面1b2に対応した小印刷原版30bに、小展開絵柄3b1および小展開絵柄3b2に沿ってインキ4b1およびインキ4b2を載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット40bを小印刷原版30bに押し付けている(図1に示すS5)。すなわち、小印刷用ブランケット40bは平面状に変形した状態で、その表面にインキ4b1、4b2が転写されている。このとき、前記押し付けない状態では、小印刷用ブランケット40bは、断面略円弧状(円柱を半分にした形態)であって、その最下点が小展開絵柄3b1と小展開絵柄3b2との中間点に略一致している。
【0026】
図4の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。そして、小印刷用ブランケット40bを、これが対応する小被印刷面1b1および小被印刷面1b2の直上に配置して、載置面91の法線方向(図4において上下方向)に沿って、押し下げている。
図4の(c)において、小印刷用ブランケット40bを下方に押し付けている。このため、小印刷用ブランケット40bは、小被印刷面1b1および小被印刷面1b2になじむよう変形し、該表面にインキ4b1およびインキ4b2が転写され、小絵柄2b1および小絵柄2b2が印刷される(図1に示すS6)。
なお、図3と同様に、前記押し下げる(押し付ける)装置を限定するものではない。
【0027】
図5の(a)において、小被印刷面1aに対応した小印刷原版30aに、小展開絵柄3aに沿ってインキ4aを載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット40aを小印刷原版30aに押し付けている(図1に示すS5)。すなわち、小印刷用ブランケット40cは平面状に変形した状態で、その表面にインキ4cが転写されている。このとき、前記押し付けない状態では、小印刷用ブランケット40aは、断面略放物線状であって、その頂点(最下点)41aが小展開絵柄3aから離れた位置にある(ずれている)。
図5の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。なお、載置面91はその周囲の当接面92よりも一段高くなっている。そして、小印刷用ブランケット40aの頂点41aを、これが対応する小被印刷面1aから水平方向で離れた位置に配置して、載置面91の法線方向(図5において上下方向)に沿って、押し下げている。
【0028】
図5の(c)において、小印刷用ブランケット40aを当接面92に押し付けている。このため、小印刷用ブランケット40cは、頂点41aから離れた面が略水平方向に膨張するように変形するから、小印刷用ブランケット40cは小被印刷面1aに押し付けられる。すなわち、小印刷用ブランケット40cに転写されていたインキ4aは小被印刷面1aに転写され、小絵柄2aが印刷される(図1に示すS6)。
このとき、当接面92は載置面91に対して一段低くなっているため、小印刷用ブランケット40cのインキ4aが転写された面は、小被印刷面1aの法線方向により平行に膨張して小被印刷面1aに押し付けられる。したがって、小絵柄2aの印刷精度が向上している。また、以上は、当接面92と載置面91とが平行で段差を有するものであるが、当接面92を載置面91(段差部)に近づける程、低くなるように傾斜させてもよい。
【0029】
なお、小被印刷面1dは、上側が張り出した「オーバーハング」状態であるが、小被印刷面1aと同様の要領によって小絵柄2dが印刷されている(前記、符号に付した「a」を「d」に読み替えたものに同じ)。このとき、当接面92の小印刷用ブランケット40dが当接する範囲を載置面91(段差部)に近づける程、低くなるように傾斜させ、小印刷用ブランケット40dのインキ4dが転写された面が、小被印刷面1dの法線方向により平行に膨張するようにしてもよい。
【0030】
(バリエーション1)
図6は、図4に示す小絵柄2b1および小絵柄2b2の印刷方法のバリエーションを示している。
図6の(a)において、小被印刷面1b1および小被印刷面1b2に対応した小印刷原版30bに、小展開絵柄3b1および小展開絵柄3b2に沿ってインキ4b1およびインキ4b2を載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット41bを小展開絵柄3b1に、小印刷用ブランケット42bを小展開絵柄3b2に、それぞれ押し付けている(図1に示すS5)。
すなわち、小印刷用ブランケット41b、42bは平面状に変形した状態で、その表面にそれぞれインキ4b1、4b2が転写されている。このとき、前記押し付けない状態では、小印刷用ブランケット41bは、断面略円弧状(円柱を半分にした形態)であって、その最下点が小展開絵柄3b1の中心に一致し、小印刷用ブランケット42bは、断面略円弧状(円柱を半分にした形態)であって、その最下点が小展開絵柄3b2の中心に一致している。
【0031】
図6の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。そして、小印刷用ブランケット41bおよび小印刷用ブランケット42bを、それぞれこれが対応する小被印刷面1b1および小被印刷面1b2の直上になるように、共通の昇降装置(図示しない)に取り付けて、載置面91の法線方向(図6において上下方向)に沿って、押し下げている。
図6の(c)において、小印刷用ブランケット41b、42bを下方に押し付けている。このため、小印刷用ブランケット41bおよび小印刷用ブランケット42bは、それぞれ小被印刷面1b1および小被印刷面1b2になじむよう変形し、該表面にインキ4b1およびインキ4b2が転写され、小絵柄2b1および小絵柄2b2が印刷される(図1に示すS6)。
【0032】
なお、図3と同様に、前記押し下げる(押し付ける)装置を限定するものではない。また、以上は、小印刷原版30bにインキ4b1およびインキ4b2を載せているが、本願発明はこれに限定するものではなく、インキ4b1およびインキ4b2をそれぞれ別個の小印刷原版30bに載せてもよい。さらに、小印刷用ブランケット41bおよび小印刷用ブランケット42bを、共通の昇降装置に取り付けて、被印刷体100に同時に押し付けているが、本願発明はこれに限定するものではなく、小印刷用ブランケット41bおよび小印刷用ブランケット42bを別個に取り付けて、一方を先に押し付けるようにしてもよい。
【0033】
(バリエーション2)
図7は、小被印刷面1dに小絵柄2dを印刷するバリエーションを示している。
図7の(a)において、小被印刷面1dに対応した小印刷原版30ad、小展開絵柄3dに沿ってインキ4dを載せ(図1に示すS4)、小印刷用ブランケット40dを小印刷原版30dに押し付けている(図1に示すS5)。すなわち、小印刷用ブランケット40cは平面状に変形した状態で、その表面にインキ4cが転写されている。
図7の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。なお、載置面91はその周囲の当接面92よりも一段高くなっている。そして、小印刷用ブランケット40dの頂点41dを、これが対応する小被印刷面1dから水平方向で離れた位置に配置して、載置面91の法線方向(上下方向)に沿って、押し下げている。
【0034】
図7の(c)において、小印刷用ブランケット40dを当接面92に上下方向に押し付けると共に、小被印刷面1dに向かって水平方向に移動させている。このため、小印刷用ブランケット40dは、頂点41dから離れた面が略水平方向に膨張した状態で、小被印刷面1dに向かって水平方向に押し付けられる。よって、小印刷用ブランケット40dのインキ4dが転写された面は、小被印刷面1dの法線方向により近い方向から小被印刷面1aに押し付けられるから、小絵柄2dの印刷精度が向上している。
なお、かかる水平方向に移動させる手段は限定するものではなく、被印刷体100を水平方向(X方向およびY方向)に移動させても、小印刷用ブランケット40d(昇降装置に同じ)を水平方向(X方向およびY方向)に移動させても、あるいは両者を水平方向(X方向およびY方向)に移動させてもよい。
【0035】
(バリエーション3)
図8は、小被印刷面1dに小絵柄2dを印刷するバリエーションを示している。
図8の(a)は、バリエーション2に示す図7の(a)に同じである。
図8の(b)において、被印刷体100は基板90の載置面91に載置されている。このとき、載置面91の周囲に一段低くなった当接面92と、被印刷体100の小被印刷面1dに対向した傾斜壁93が設けられている。傾斜壁93は小被印刷面1dから所定の距離だけ離れているから、小印刷用ブランケット40dは傾斜壁93および小被印刷面1dに触れることなく下降し、やがて、小印刷用ブランケット40dの頂点41dが、これが対応する小被印刷面1dから水平方向で離れた位置で、当接面92に当接する。
【0036】
図8の(c)において、小印刷用ブランケット40dを当接面92に上下方向に押し付けると、小印刷用ブランケット40dは膨張する。このとき、小印刷用ブランケット40dの一方の面が傾斜面93に当接して変形が拘束されるため、他方の面(小被印刷面1d側の面)は、小被印刷面1dの法線方向により近い方向から押し付けられる。よって、印刷が容易になると共に、小印刷用ブランケット40dのインキ4dが転写された面は、小絵柄2dの印刷精度が向上している。
なお、傾斜壁93の形状は限定するものではなく、また、昇降に加えて、被印刷体100と小印刷用ブランケット40d(昇降装置に同じ)とを相対的に水平方向(X方向およびY方向)に移動させてもよい。
また、このような傾斜壁93に準じた傾斜壁を、小被印刷面1aへの小絵柄2aの印刷(小印刷用ブランケット40aの昇降)の際に使用してもよい。
【0037】
[実施の形態2]
図9は本発明の実施の形態2に係る被印刷体を模式的に示す断面図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。すなわち、被印刷体200は実施の形態1に説明したように、上下方向に昇降する昇降手段によって絵柄20が印刷されるから、簡便な装置によって安価に提供される。
【0038】
[実施の形態3]
図10〜図12は本発明の実施の形態3に係る印刷方法を説明するものであって、図10は絵柄を分割する要領を模式的に示す平面図、図10は小展開絵柄における網点の配置の一例を拡大して模式的に示す平面図、図12は印刷の重なり範囲を拡大して模式的に示す平面図である。なお、図11〜図12は、模式的に示すものであって、本発明は、被印刷体の形状や網点の形態(形状、分布等)を図示するものに限定するものではない。また、実施の形態1と同じ部分または相等する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0039】
図10〜図12において、被印刷体100の被印刷面10を、それぞれの境界が所定の幅で重なるように複数の小被印刷面・・・1f、1g、1h・・・に分割して(図1に示すS1に準じる)、被印刷面10に印刷しようとする絵柄20(図示しない)を小被印刷面1のそれぞれに印刷される小絵柄・・・2f、2g、2h・・・に分割する(図1に示すS2に準じる)。
そして、小絵柄・・・2f、2g、2h・・・のそれぞれを平面に展開した小展開絵柄・・・3f、3g、3h・・・を作成する(図1に示すS3に準じる)。
そして、小被印刷面・・・1f、1g、1h・・・のそれぞれに対応した小印刷原版・・・30f、30g、30h・・・に、それぞれが対応する小展開絵柄・・・3f、3g、3h・・・に沿ってインキを載せる(図1に示すS4に準じる)。
【0040】
このとき、たとえば、小印刷原版30fには、小展開絵柄3fに相等する範囲に、小展開絵柄3gの小展開絵柄3fに接する所定幅に相等する境界範囲3gfを加えた拡大小展開絵柄3efgに沿ってインキが載せられる。
小展開絵柄3fの小展開絵柄3gに接する所定幅に相等する境界範囲3fgと、小展開絵柄3gの小展開絵柄3fに接する所定幅に相等する境界範囲3gfとを併せた重なり範囲5fgに載せられるインキの量は、拡大小展開絵柄3efgに相等する範囲から重なり範囲5fgを除いた内側範囲3ffに載せられるインキの量より少なくなっている(図10の(a)参照)。
【0041】
同様に、たとえば、小印刷原版30gには、小展開絵柄3gに相等する範囲に、小展開絵柄3fの小展開絵柄3gに接する所定幅に相等する境界範囲3fgと、小展開絵柄3hの小展開絵柄3gに接する所定幅に相等する境界範囲3hgと、を加えた拡大小展開絵柄3fghに相等する範囲に沿ってインキが載せられる。
そして、重なり範囲5fgに載せられるインキの量と、小展開絵柄3gの小展開絵柄3hに接する所定幅に相等する境界範囲3ghと、小展開絵柄3hの小展開絵柄3gに接する所定幅に相等する境界範囲3hgとを併せた重なり範囲5ghに載せられるインキの量は、拡大小展開絵柄3fghに相等する範囲から重なり範囲5fgおよび重なり範囲5ghを除いた内側範囲3ggに載せられるインキの量より少なくなっている。
【0042】
すなわち、たとえば、重なり範囲5fgにおける網点の数が、内側範囲3ffや内側範囲3ggにおける網点の数より少なくなっている。あるいは、重なり範囲5fgにおける網点の分布(単位面積当たりの密度)が、内側範囲3ffや内側範囲3ggから離れる程除々に減少している。
あるいは、重なり範囲5fgにおける網点の大きさが内側範囲3ffや内側範囲3ggにおける網点の大きさより少なくなっている。あるいは、重なり範囲5fgにおける網点の大きさが、内側範囲3ffや内側範囲3ggから離れる程除々に縮小している。なお、インキを載せる方法は限定されるものではないことは実施の形態1に同じである。
【0043】
さらに、実施の形態1と同様に、小印刷用ブランケット・・・40f、40g、40h・・・に前記インキを転写して、それぞれに小印刷用ブランケット絵柄・・・4f、4g、4h・・・に沿ったインキを付着させる(図1に示すS5に準じる)。
次に、小印刷用ブランケット・・・40f、40g、40h・・・を、これが対応する小被印刷面・・・1f、1g・、1h・・に押し付けて、そこに小絵柄・・・2f、2g、2h・・・を印刷している(図1に示すS6に準じる)。
【0044】
そうすると、たとえば、小絵柄2fと小絵柄2gとの境界の所定幅が互いに重なり、小絵柄2gと小絵柄2hとの境界の所定幅が互いに重なり、かかる重なり範囲のインキの量が、重なり範囲を除く内側範囲のインキの量より少ないから、重なり範囲の絵柄が濃くなることがない(図10参照)。
このとき、たとえば、小印刷原版30fにおいて、小展開絵柄3gとの重なり範囲5fgに相等する範囲に載せられるインキの量を「α」%に減らし、一方、小印刷原版30gにおいて、小展開絵柄3fとの重なり範囲5fgに相等する範囲に載せられるインキの量を「100−α」%に減らしておけば、両者の重なり範囲5fgにおける絵柄は濃くなることも、薄くなることもなく、美観を損ねることがない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、複雑形状である被印刷体に、昇降装置を用いて印刷することが可能になるから、たとえば、複雑な曲面を有する被印刷体への印刷方法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 小被印刷面
2 小絵柄
3 小展開絵柄
4 インキ
10 被印刷面
20 絵柄
30 小印刷原版
40 小印刷用ブランケット
90 基板
91 載置面
92 当接面
93 傾斜面
100 被印刷体
200 被印刷体
1000 印刷方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体の被印刷面を複数の小被印刷面に分割して、前記被印刷面に印刷される絵柄を前記小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程と、
該小絵柄を平面に展開した小展開絵柄を作成する工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における前記小展開絵柄に沿ってインキを載せる工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程と、
前記複数の小印刷用ブランケットを、それぞれが対応する小被印刷面に押し付けて、該小被印刷面に前記小絵柄を印刷することによって、前記被印刷面に前記絵柄を印刷する工程と、を有すことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
被印刷体の被印刷面を、それぞれの境界が所定の幅で重なるように複数の小被印刷面に分割して、前記被印刷面に印刷される絵柄を前記小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程と、
該小絵柄を平面に展開した小展開絵柄を作成する工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における前記小展開絵柄に沿って、前記境界の所定の幅におけるインキの量が、前記境界の所定の幅を除く範囲におけるインキの量より少なくなるように、インキを載せる工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程と、
前記複数の小印刷用ブランケットを、それぞれが対応する小被印刷面に押し付けて、該小被印刷面に前記小絵柄を印刷することによって、前記被印刷面に前記絵柄を印刷する工程と、を有すことを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
前記絵柄を印刷する工程が、前記被印刷体が載置される基板に対して昇降する昇降装置を用いるものであって、
該昇降装置が、前記複数の小被印刷面に対応した前記小印刷用ブランケットを把持し、該小印刷用ブランケットを、これが対応した前記小被印刷面に押し付けることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記絵柄を印刷する工程が、前記被印刷体が載置される基板に対して昇降する昇降装置を用いるものであって、
前記被印刷体の側面に位置する小被印刷面に前記絵柄の一部を印刷する際、前記昇降装置は、前記小被印刷面に対応した前記小印刷用ブランケットを把持し、該小印刷用ブランケットの前記インキが転写されていない部分を前記基板に押し付けることによって、前記小印刷用ブランケットの前記インキが転写された部分を、これが対応した前記小被印刷面に押し付けることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記小印刷用ブランケットの前記インキが転写されていない部分が押し付けられる前記基板の範囲は、前記被印刷体が載置されている前記基板の範囲に対し、前記昇降装置の昇降方向で下降側に位置していることを特徴とする請求項4に記載の印刷方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の印刷方法によって印刷された被印刷面を有することを特徴とする被印刷体。
【請求項1】
被印刷体の被印刷面を複数の小被印刷面に分割して、前記被印刷面に印刷される絵柄を前記小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程と、
該小絵柄を平面に展開した小展開絵柄を作成する工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における前記小展開絵柄に沿ってインキを載せる工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程と、
前記複数の小印刷用ブランケットを、それぞれが対応する小被印刷面に押し付けて、該小被印刷面に前記小絵柄を印刷することによって、前記被印刷面に前記絵柄を印刷する工程と、を有すことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
被印刷体の被印刷面を、それぞれの境界が所定の幅で重なるように複数の小被印刷面に分割して、前記被印刷面に印刷される絵柄を前記小被印刷面のそれぞれに印刷される小絵柄に分割する工程と、
該小絵柄を平面に展開した小展開絵柄を作成する工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷原版に、それぞれが対応する小被印刷面における前記小展開絵柄に沿って、前記境界の所定の幅におけるインキの量が、前記境界の所定の幅を除く範囲におけるインキの量より少なくなるように、インキを載せる工程と、
前記複数の小被印刷面のそれぞれに対応した小印刷用ブランケットを、それそれが対応する小印刷原版に押し付けて、それぞれの小印刷用ブランケットに前記インキを転写する工程と、
前記複数の小印刷用ブランケットを、それぞれが対応する小被印刷面に押し付けて、該小被印刷面に前記小絵柄を印刷することによって、前記被印刷面に前記絵柄を印刷する工程と、を有すことを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
前記絵柄を印刷する工程が、前記被印刷体が載置される基板に対して昇降する昇降装置を用いるものであって、
該昇降装置が、前記複数の小被印刷面に対応した前記小印刷用ブランケットを把持し、該小印刷用ブランケットを、これが対応した前記小被印刷面に押し付けることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記絵柄を印刷する工程が、前記被印刷体が載置される基板に対して昇降する昇降装置を用いるものであって、
前記被印刷体の側面に位置する小被印刷面に前記絵柄の一部を印刷する際、前記昇降装置は、前記小被印刷面に対応した前記小印刷用ブランケットを把持し、該小印刷用ブランケットの前記インキが転写されていない部分を前記基板に押し付けることによって、前記小印刷用ブランケットの前記インキが転写された部分を、これが対応した前記小被印刷面に押し付けることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記小印刷用ブランケットの前記インキが転写されていない部分が押し付けられる前記基板の範囲は、前記被印刷体が載置されている前記基板の範囲に対し、前記昇降装置の昇降方向で下降側に位置していることを特徴とする請求項4に記載の印刷方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の印刷方法によって印刷された被印刷面を有することを特徴とする被印刷体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−736(P2011−736A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143480(P2009−143480)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000145378)株式会社秀峰 (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000145378)株式会社秀峰 (32)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]