説明

印刷構造及び方法

【課題】高品質のイメージ作成を容易とする印刷構造を提供する。
【解決手段】印刷構造10は、複数のアクチュエータの1ないし複数を選択的に作動して1ないしは複数のウェル16を印刷表面内に形成し、当該印刷表面上に所定パターンを作り出すパターン層26を含む。当該1ないし複数のウェルに材料が塗布され、その後に続いて、パターンを転写するために別の表面に転写される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムおよび方法に関する。より詳しくは、可変データ印刷のための粘稠な材料を使用する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、インクイメージが、ラバーブランケットに転写(オフセット)され、続いて印刷表面に転写される印刷技術である。オイルと水の反発を基礎とするリソグラフィックプロセスとともに使用される場合、オフセット技術は、一般に平坦な(平板印刷)イメージ担体を採用し、その上においては、印刷されることになるイメージがインクローラからインクを獲得するが、非印刷エリアは水の膜を誘引し、非印刷エリアをインクのない状態に維持する。別の例においては、グラビア印刷プロセスにおいて実施されているように、ブレードまたはスキージを用いてインクを塗布することができる。オフセット印刷用に使用されるインクは、一般に粘性の高いタール状の材料であり、優れた不透明度を有し、かつ紙繊維内への染み込みまたはブリードがほとんどない。結果として得られるイメージは、一般に比較的高いイメージ品質と関連付けされ(ラバーブランケットが印刷表面のテクスチャに従うことから凸版印刷よりシャープできれいなイメージを含む)種々の印刷支持層上に形成することができる(たとえば紙、木、布、金属、皮革、粗い紙等)。しかしながらオフセット印刷は、概してページ毎に一般に新しいマスタを必要とすることから柔軟でない。
【0003】
可変データ印刷は、テキスト、グラフィクス、およびイメージ等の要素を、1つの印刷物から次の印刷物へと、印刷を停止するか、もしくは速度を緩めることなく変更できるオン‐デマンド印刷の形式を言う。したがって可変データ印刷は、ドキュメントの大量カスタム化を可能にする。たとえば、単に同一の手紙を複数回にわたって印刷することとは対照的に、パーソナル化された手紙のセットを、それぞれの手紙ごとに異なる名前および住所を伴って印刷することができる。この技術は、コンピュータ・データベースおよびディジタル印刷を活用してフルカラー・ドキュメントを作り出すディジタル印刷の所産である。しかしながら従来の可変データ印刷のイメージ品質は、通常、オフセット印刷のそれに比べると劣る。これは、少なくとも一部には使用されるインクにおける差が原因する。オフセット印刷は、高度に粘稠であることから、一般にはインクジェットプリンタ等から射出できない。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,428,146号
【特許文献2】米国特許第6,435,840号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、可変データ印刷を伴う、より高い品質のイメージの作成を容易にするシステムおよび方法について解決されていないニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面においては、印刷構造が例示される。この印刷構造は、複数のアクチュエータの1ないし複数を選択的に作動して1ないしは複数のウェルを印刷表面内に形成し、当該印刷表面上に所定パターンを作り出すパターン層を含む。当該1ないし複数のウェルに材料が塗布され、その後に続いて、パターンを転写するために別の表面に転写される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高品質のイメージ作成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照すると、比較的粘稠な材料等の種々の材料を印刷するための印刷構造10が例示されている。印刷構造10は、材料を転写するための印刷表面14を伴う印刷層12を含む。印刷層12の1ないしは複数の部分は、印刷表面14内に1ないしは複数のウェル16を作り出すために選択的に変形させることができる。1ないしは複数のウェル16は、印刷表面14上に構造(たとえばイメージ)をパターン形成し、続いて18に例示されているとおり、材料によって埋められる。その後に続いて変形が解放され、それによってウェル16内の材料が、20に例示されているとおり、ウェル16から印刷表面14に移動される。この材料は、その後、24として例示されているとおり、印刷表面14か別のエンティティ22に転写することができる。
【0009】
印刷構造10のパターン層26が印刷層12の近傍にある。パターン層26は、印刷層12内にウェル16を選択的に形成することによって、印刷層12の表面14上におけるパターン形成を促進する。一例においては、パターン層26が、あらかじめ定義済みの特性を伴うエネルギ(たとえば、エネルギ、波長、周期性、位相、振幅等)にさらされていない限り、絶縁体として振る舞う半導体(図示せず)を含む。その種のエネルギにさらされた半導体の部分がアクティブ化されて印刷層12の隣接部分内におけるウェルの形成を促進する。
【0010】
一例においてはパターン層26が、光によって励起される光導電体(図示せず)を含むことができる。この場合、印刷層12の表面14上におけるウェルの形成に光学的アドレシングが使用される。たとえば適切な光を受光することによって、パターン層26が印刷層12に対して静電気的にパターンを形成することができる。この場合、電界が、印刷層12の1ないしは複数の部分に変形を生じさせ、それによって表面14内に1ないしは複数のウェル16が形成される。次に、材料を表面14に塗布してウェル16を埋めることができる。光源を取り除くと、光導電体が絶縁状態に復帰する。静電荷は保持され、変形が維持される。その後、たとえばドクタブレードプロセスを用いて、粘稠なインクによって選択的に凹部を満たすことができる。静電荷は、光導電体のブランケット露光を用いて解放することが可能であり、それに応答してウェル16が壊れ、それが材料を表面14に押し出す。材料は、その後に続いて印刷表面14からエンティティ22に転写され、それがエンティティ22上の表面14内にそのパターンを再生する。
【0011】
印刷構造10は、比較的粘稠度の低いインク(たとえば、射出印刷に使用されているインク)と比較して、紙等の印刷支持層への滲出(またはブリード)が少ない粘稠なインクを使用する可変データ印刷を可能にする。一般に粘稠なインクが、低粘稠度のインクより比較的短時間で乾燥し、高い飽和色を提供することから(より高い顔料含有率による)、印刷構造10は、印刷速度の加速および/または高い飽和色の印刷のために使用することができる。ここで認識する必要があるが、印刷構造10は、粘稠度の高いインク、より粘稠度の低いインク、金属、半導体、セラミクス等をはじめそのほかの材料を含有するペーストを、紙、セラミクス、プラスティック、膜等の種々の表面上に印刷するために使用することができる。
【0012】
図2は、印刷構造10の1つの構成の断面図を例示している。印刷構造10は、粘稠なインク等の材料を選択的に保持し、転写する表面14を伴った層12を含む。層12はシート26を伴い、シート26は、その1ないしは複数の孔30内に常駐するピストン28(または、たとえば類似のアクチュエータ)を伴う。一例においては、シート26が薄い箔であり、ピストン28が同時製造されるマイクロマシン加工されたピストン16のアレイとなる。図示されているとおり、ピストン28は、孔30の傾斜付きの壁を通る傾斜付きの壁を有することができる。この種の傾斜は、ピストン28のそれぞれの移動をシート26内に限るために使用することが可能であり、それよって、層12が印刷構造10に接続されていないとき、および/またはそこから外されたときにシート26からピストン28が脱落することを防止できる。
【0013】
ピストン28のそれぞれは、円形もしくは非円形の形状を有することができ、それらの形状は回転の緩和を促進する。ここで認識する必要があるが、ピストン28および/または孔30は、実質的に類似かつ/または異なる特性を提供するためにこのほかの種々の形状に関連付けすることが可能である。シート26と各ピストン28の間にはギャップ32が存在する。いくつかの例においては、シート26が電気的なグラウンドに保たれる。その種の場合には、直接的な表面対表面の接触、インク内に存在する導電体、導電性グリスのうちの少なくとも1つを通ることをはじめ、そのほかの技術を通じて、電荷が孔30を横切り、ピストン28へ流れることが可能である。また、導電性グリスもしくはインクをギャップ32内に使用することは、静摩擦を緩和する潤滑の提供も可能にする。
【0014】
ピストン28のそれぞれの内側表面34は、エラストマ層36の直近に常駐する。エラストマ層36は、柔軟な膜とすることが可能であり、それには、顕微鏡的人工筋肉デバイス用に使用される材料が含まれる。それに加えてエラストマ36は、束縛単分子層を形成する潤滑剤を保持することができる。その種の材料を使用すると、露出表面上に保護単分子層を形成することができる。一例においては、内側表面34がエラストマ層36と接触する。
【0015】
光導電体38が、エラストマ層36と支持層40の間に配置され、シート、円柱等としてその形成が可能である。光導電体38は、透明もしくは半透明とすることができる。いくつかの場合には、支持層40の、光導電体38に対向する表面42に、導電材料44がコーティングされ、それもまた透明もしくは半透明とすることができる。導電材料44は、通常、シート12に対して電気的にバイアスされる。たとえば導電材料44を、シート12に対して正または負の電位にバイアスすることができる。
【0016】
「オフ」状態においては、光導電体38が絶縁体として振る舞い、それによってエラストマ36を横切る電界を制限する。静電力によるエラストマ36内における任意のピストン28の変形は、制限された電界強度に起因して極小になる。「オン」状態においては、支持層40ならびに導電材料44を介して光導電体38が露光される。一例においては、ラスタ出力スキャナ(ROS)もしくはイメージ・バーが光源に使用される。その結果として、電荷が導電材料44から光導電体38を横切って移動し、エラストマ36に対して静電イメージが作られる。エラストマを横切る比較的より高い電界が、1ないしは複数のピストン28のエラストマ36内への引き込みを生じさせる。
【0017】
「オフ」状態においては、エラストマ36を横切る電界が次のような関数で表される。
=Vk/t+t
これにおいてVは印加される電圧、kおよびkは、それぞれ光導電体38およびエラストマ36の比誘電率、tおよびtは、それぞれ光導電体38およびエラストマ36の厚さである。光導電体38が実質的に放電されたときは、エラストマを横切る電界が次の関数によって表される。
=V/t
【0018】
エラストマ36に印加される電界について大きな切り替え比を持つために、光導電体38が、小さい比誘電率を伴って比較的厚くなるように形成される。ピストン28のそれぞれのたわみは、エラストマ層36を横切る電界に対して超線形依存性を有する。「オフ」状態においてこのたわみは、ミクロン未満になることが可能であり、「オン」状態においては、それが数ミクロンになることが可能である。光導電体38は、非常にコンパクトな形式の、適切なオン‐オフ比を伴う高電圧スイッチを提供する。
【0019】
図3は、「オン」状態の印刷構造10を例示している。図示されているとおり、光源46が、支持層40および導電材料44を通って伝達される。電荷48が、導電材料44から光導電体層38を通ってエラストマ層38に移動する。この例においては、電荷48が、シート12内の孔30M(Mは、1に等しいかそれより大きい整数である)を通るピストン28N(Nは、1に等しいかそれより大きい整数である)を引き込み、ウェル50を作り出す。
【0020】
一例においては、エラストマ36がたわむとき、明確に認識できるほどその体積が変化しない。その結果として、ピストン28が静電力によって引き込まれるときにそれが下方へ移動するために、エラストマ36は、収縮または隆起によってピストンの両側に体積を獲得しなければならない。いくつかの人工筋肉アクチュエータにおいては、これがエラストマにあらかじめ張力を与えておくことによって達成される。印刷表面にわたってエラストマ36を引っ張ることによって、本発明においても類似のアプローチを採用することができる。
【0021】
ピストン28Nがエラストマ36内に引き込まれた後は、ウェル50を含む表面14の上に粘稠なインク等の材料を(たとえば、スキージ、ローラ等を介して)塗布することが可能になる。材料の塗布に使用されるメカニズムは、インクをウェル50内に押し込む圧力を作用させる。いくつかの場合においては、したがってすべての場合ではないが、この圧力がほかのピストン28の1ないしは複数の移動を追加し、材料が満たされるウェル50をさらに作成する。これは、たとえばアプリケータが通過するとき、圧力が充分に高く、アプリケータが充分に変形可能であり、ピストン28を下方に押して、そこに材料を詰め込む場合に生じ得る。
【0022】
引き渡されるインクの体積は、エラストマ36を横切って印加される電圧の単調関数になる。上記の考察は、実質的に絶縁光導電体に関係する。しかしながら、部分的に導通する光導電体は、エラストマ36上に対する多様な電荷量の書き込みを可能にする。これは、エラストマ36上における所望の電圧レベルを達成するために、光強度を変化させることによって達成が可能になる。
【0023】
ピストン38のそれぞれの表面に印加される圧力は、次の関数になる。
P=‐ε
ここで、εは、自由空間の誘電率である。この式は、最大で約20%までのひずみに有効である。ひずみをエラストマ36の初期の厚さにおける変化として表現することによって、エラストマ36の厚さに関する式が次の関数になる。
‐te0+c=0
ここで、c=εe0/Yであり、te0は、印加電界がゼロの場合のエラストマ36の初期の厚さ、Yは、エラストマ36の弾性係数である。定数cは、エラストマの厚さにおける変化を防ぐ電界強化が可能でないときに予測されるひずみである。
【0024】
印刷表面14に材料が塗布され、電荷が取り除かれた後は、ピストン28が実質的にそれらの初期ポジションに戻り、その反動で、それらに関連付けされていた材料をそれらとともに押し上げる。この結果、ピストン28が作動されたエリアの上に材料を伴った表面がもたらされる。その後この材料を別の表面、支持層等に転写することができる。一例においては、汚れ、塵、インク等によってメカニズムが詰まることを防止するため、および/または印刷表面14のクリーニングを容易にするために柔軟なエラストマによって表面14を覆うことができる。この材料は、たとえば、金属表面に対して誘導溶接またはレーザ溶接を行うことができる。これらの方法においては、ピストンと支持グリッドの間のギャップをきれいに保つことができる。
【0025】
ここで認識する必要があるが、印刷構造10は一定の容量に適応することが可能である。一定容量の適応を容易にする印刷構造10のいくつかの特徴には、限定の意図ではないが、スリップ電極、ピストン28の周囲のギャップ32、および/またはピストン28のヘッドの形状が含まれる。たとえばドーム形状のピストン・ヘッド(図2および3に例示されているとおり)の使用は、ピストン28がエラストマ36内に引き込まれたときの電極の接触面積を増加することができる。これは、非線形作動を向上させることが可能であり、それをてこ入れして構造のオン‐オフ比を改善することができる。別の例においては、エラストマ36を、表面処理または潤滑剤コーティングを用いてスリップ能力が有効になる1ないしは複数の接着性ベースのアクリルから形成することが可能である。人工筋肉の作成に使用されるものに類似のカーボン・グリスもまたこの構造とともに使用することが可能である。その種のカーボン・グリスの使用および/またはそれに匹敵する導電性潤滑剤の使用は、シート12とピストン28の間の電気伝導度の維持を容易にする。それに加えて、あるいはそれに代えて、誘電体潤滑剤の薄い層を使用することが可能である。この薄い層は、比較的高い比誘電率と関連付けすることが可能であり、エラストマ36を横切って印加される全体的な電界に対するその影響は無視できる。
【0026】
光導電体‐エラストマ界面52においては、界面52にそのスリップを可能にするための誘電体潤滑剤を提供することによって容量保存を強化することができる。エラストマ36は、通常は支持層40に緊密に取り付けられる光導電体38に関してスリップするべく設計することが可能であるが、構造を全体として保持するために多様なメカニズムによって正しい位置に保持することができる。たとえば、一例においては、エラストマ36が引っ張られ、アクティブ・エリアの外側にクランプされるか、接着される。潤滑剤の混和は、引き張りを容易にすることができる。シート12および/またはピストン28は、接着した誘電体離隔および/またはそのほかのメカニズムによって取り付けることができる。この構造全体を、ピストン28を作動する圧縮マクセル応力を介して保持することもできる。シート12および/またはエラストマ36上の代表的な力は、ピストン28上に集中する力より小さいが、構造が切り替えられていない状態にあるとき、数PSI台になる。12インチ×12インチの面積を伴う印刷デバイスについて、合計が約300ポンド台の力が、通常、エラストマ36および/または光導電体38に対してシート12および/またはピストン28を保持する。別の技術は、電圧を印加してシート12を保持し、その後に続いてシート12の縁をともにスポット溶接して正しい位置に保持する。
【0027】
ピストン28の周囲のギャップは、ピストン28の下の厚さが減少したときにエラストマ36の逃げを提供する。一例においてはエラストマ36にあらかじめ張力が与えられ、電極周囲の体積の適応が容易になる。たとえば、構造にエラストマ36を組み込む前に、それを引っ張り、その縁をクランプすることができる。またこれは、構造に適切な厚さを設定することも補助する。一例においては、エラストマ36の厚さが約0.5〜1.0mmであり、xおよびy方向に約4倍に引き延ばされ、その結果として、約30〜60μmの厚さを得ることが可能になる。エラストマ36は、モールディング技術を使用して、たとえばシリコンまたはアクリル材料から作成してもよい。モールディングを使用するときには、ピストンと対向するエラストマ36の表面にギャップを伴ったパターンを形成して、ピラーがエラストマ36内に引き込まれるときのエラストマ36の横方向の拡張を可能にすることができる。
【0028】
ここでは、光学アドレッシングが述べられている。しかしながら高電圧薄膜トランジスタのアクティブマトリクスバックプレーン等といったこのほかのアドレススキームを、ここで述べているエラストマ作動ピストンのアドレシングのために使用することもできる。
【0029】
図4は、印刷構造10を用いた印刷のための方法を例示している。参照番号54において、表面14の部分が変形されて1ないしは複数のウェル50が作られ、それらが表面14上にパターンを形成する。これは、電荷もしくはそのほかのメカニズムを介して達成することができる。たとえば、支持層40および導電材料44を介して光導電体38に光を指向することが可能である。この光は、ラスタ出力スキャナ(ROS)またはイメージ・バーを光源とすることができる。この光は、導電材料44に関連付けされた電荷を、光導電体38を横切って移動させ、エラストマ層36に対して静電イメージを形成し、それがピストン28の1ないしは複数をエラストマ層36内に引き込む電界を作る。
【0030】
56においては、表面12およびウェル50の上から(たとえば、スキージ、ローラ等を介して)粘稠なインク等の材料が塗布される。材料の塗布に使用されるメカニズムは、圧力を作用させ、それが材料をウェル50内に押し込む。これらのピストン28は、概略でそれらの初期ポジションに戻り、その反動で、それらに関連付けされていた材料をそれらとともに押し上げる。異物もしくは過剰な材料があれば、表面14の上でクリーニング・ブレードもしくはそれに類似のものを走らせることによってそれらを除去することができる。参照番号58においては、印加された電圧が放電され、すべてのピストン28が概略でそれらの初期ポジションに戻ることが可能になる。この結果、ピストン28が作動されたエリア内にインクが施された表面が得られる。60においては、この材料を別の表面に転写することができる。
【0031】
図5は、大きなインク体積オン‐オフ比を伴う印刷構造10の部分を例示している。たとえば、この印刷構造10は、約1000ドット毎インチ(DPI)で配列された複数のピストン28を有する。ピストン28は、62に例示されているとおり、長さ25ミクロンにわたって約5度の傾斜を有する。表面14上においてピストン28は、約10ミクロンの直径を有し、エラストマ層36の近傍に位置する反対側の表面上においては、64に例示されているとおり、ピストン28は、約5ミクロンの直径を有する。ピストン28のそれぞれとシート12の間のギャップ32は、約0.25ミクロンである。これは、約3ミクロンの垂直方向の融通性を提供する。
【0032】
ピストン28のそれぞれによって、その移動範囲にわたって置換される体積は、約200立方ミクロン(0.2ピコリットル)である。ピストン28のそれぞれの融通性は、オプションとして、ピストン28のそれぞれが印刷動作の間に常に到達する動きの範囲より大きく設計することも可能である。ピストン28のそれぞれにおける抵抗は、ギャップ32に逆比例する。オプションのパターン形成された誘電体スペーサ層66が、シート12とエラストマ層36の間に配置される。パターン形成された誘電体スペーサ層66は、隣接ピストン28の間の相互作用を最小化する。これは、電荷を用いて広いエリアの書き込みが行われたときに、作動されたピストン28によってシート12の部分がエラストマ層36内へ引き込みまれることを緩和する補助になる。ピクセル単位の支持構造によって、この構造が、静電イメージの低空間周波数のコンテントを忠実に再生することが可能になる。
【0033】
電気鋳造ニッケルまたはパーマロイからピストン28が作られている場合には、ピストン28の膨張率が一般に約7から13.4ppm/℃の範囲になる。幅12インチのドラムにわたる10℃の温度変化は、支持層40を横切るピストン16のアレイのサイズに約30μmの変化を導く。支持層40の本体が、約10ppm/℃の膨張率を伴うガラスから形成される場合には、支持層40の本体とピストン28の間におけるずれが、12インチにわたっても数ミクロンにしかならない。ピストン28と支持層40の間における相対的なずれは、通常、エラストマ層36が適応できる量である。適切な材料を選択することによって、ほぼ正確な熱膨張整合を達成することが可能になる。パターン形成された要素(たとえば、埋め込まれたピストン28を伴うシート12)だけが使用される場合においては、温度変化に起因する微細特徴の整列誤りがない。
【0034】
ここで述べている印刷構造は、高解像度のイメージを生成するために数千万(たとえば1億超)の機能ピストン28を含むことがある。一例においては印刷構造のシート12およびピストン28の作成に電気鋳造技術を使用することができる。図6は、埋め込みピストン28を伴うシート12を作成するための電気鋳造技術の例を示している。
【0035】
参照番号68において、電気メッキ・シード層を伴って金属化された滑らかな支持層の上にポストのアレイが作成される。これらのポストは、フォトレジスト層もしくはそれに類似のものから構成可能であり、それにおいてはフォトレジスト層が、ポストの後ろを残した部分を完全に現像する照射線量を用いて露光されるが、ポストは支持層から離れる端が比較的狭くなるようにすることができる。シード層は、金もしくはそのほかの薄いクラッディングを伴う薄いチタン層から形成することができる。
【0036】
70において、1ないしは複数の孔を伴う金属(たとえば、ニッケル、銅、パーマロイ等)のシートが支持層の上からメッキされる。これは、ポストの作成の前に支持層上のシード層に電気メッキを施し、電気メッキの間のカソードとしてこのシード層を使用することによって達成される。通常、ポストによってブロックされる場所を除くすべての場所の層を埋める空間内に金属が形成される。金属のシートが形成された後は、オプションとしてそれを、化学的機械研磨(CMP)技術によって平坦化することができる。誘電体スペーサ層は、ポリイミド等の誘電体のスピニングおよびパターン形成等の技術によって導入することができる。この誘電体スペーサ層には、箔全体がエラストマ内に引き込まれ、それによってピストンの作動が制限されることを防止する目的がある。その後ポストが、たとえばポストをレジスト・ストリッパに溶解させることによって除去される。
【0037】
参照番号72においては、マスクが適用されてピストンのヘッドを画定するパターンが導入される。一例においては、ネガ動作レジストが使用されて凹角の側壁がレジストに導入され、その結果、形成されるヘッドが支持層にもっとも近い端においてより広く、支持層からもっとも離れた端において最も狭くなる。この種の構造は、前述したとおり、エラストマの変形により良好に適応することができる。結果として得られる凹角の孔を有する構造は、等角犠牲層を伴ってコーティングされる。犠牲層を適用する適切な技術は電気メッキである。たとえば、露出された導電表面に金メッキすることができる。参照番号74においては、電気鋳造を使用して金属をメッキし、ピストンを画定することができる。第2のレジスト・マスクおよびリリース層が取り除かれ、シートからピストンを分離し、シートおよびピストンを支持層から分離する。
【0038】
次の表1は、種々の入力パラメータ、および使用される材料について既知の値ならびにエラストマ36および/または光導電体38についての合理的な寸法を基礎として設計上の計算で予測される結果(たとえば、ひずみ、厚さ、たわみ等)を例示している。この場合においては、光導電体38を多層アクティブ・マトリクス(AMAT)タイプとすることができる。代表的な例は、ベンゾイミダゾール・ペリレン(BZP)等のジェネレータ層、およびトリフェニル・ジアミン派生物(TPD)等の厚いホール・トランスポート層の組み合わせである。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から光導電体38の比誘電率は2.9台にできる。5ミクロン台のピストン28の垂直変位が、約2000ボルトの印加電圧によって達成できる。直径が約5ミクロンのピストン28の場合には、このことが約100μm3、すなわち約0.1ピコリットルに等しいインク体積を表す。インク・ジェット引き渡しシステムは、一般にそれより大きな滴サイズを有する。したがって印刷構造10は、より高い解像度において、現在のインク・プリンタおよびレーザ・プリンタより高い品質のインクを用いる可変データ印刷を提供することができる。ピストンの長さは、オフ状態においてゼロ体積のウェルを提供するために、シート12の厚さよりわずかに長くなるように設計することが可能である。
【0041】
ここで認識する必要があるが、ここで述べた印刷構造10は、オフセット印刷に適合させることが可能であり、それにおいてはプレートからインクが載せられた版が最初にラバー‐ブランケット付きの胴から作られ、続いて印刷される紙に転写される。オフセット印刷技術は、ピストン28に紙の繊維が望ましくない影響を有する場合にてこ入れすることが可能である。その種の場合には、中間ラバー胴がピストン28のサービス寿命を延長することができる。
【0042】
図4および6において説明した方法は、一連の動作として例示されている;しかしながら、様々な場合においては、これらの例示されている動作が異なる順序で生じ得ることを理解する必要がある。それに加えて、いくつかの場合においては、それらの動作の1ないしは複数が、別の動作の1ないしは複数と同時に生じる可能性もある。さらに、いくつかの場合においては、それより多くの、あるいは少ない動作を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】材料を印刷するための一例の印刷構造を例示した説明図である。
【図2】例示の印刷構造の断面図である。
【図3】「オン」状態にある例示の印刷構造を示した説明図である。
【図4】例示の印刷構造を用いて印刷するための方法を示したフローチャートである。
【図5】大きなインク体積のオン‐オフ比を伴う一例の印刷構造を示した部分図である。
【図6】シート内に複数のピストンが埋め込まれた印刷層を作るための一例の技術を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
10 印刷構造、12 印刷層;シート;層、14 印刷表面;表面、16 ウェル、22 エンティティ、26 パターン層;シート、28 ピストン、30 孔、32 ギャップ、34 内側表面、36 エラストマ層;エラストマ、38 光導電体、40 支持層、42 表面、44 導電材料、46 光源、48 電荷、50 ウェル、52 光導電体‐エラストマ界面、66 誘電体スペーサ層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、
前記表面内に埋め込まれた複数のアクチュエータと、
前記複数のアクチュエータの1ないし複数を選択的に作動して1ないし複数のウェルを前記表面内に選択的に形成するパターン層であって、前記表面に材料が塗布され、続いて別の表面に転写されるパターン層と、
を有する印刷構造。
【請求項2】
前記パターン層は、前記複数のアクチュエータに隣接して形成されるエラストマ層を含み、前記アクチュエータが静電気的に前記エラストマ内に引き込まれて前記1ないし複数のウェルを前記表面に形成する請求項1記載の印刷構造。
【請求項3】
前記パターン層は、前記エラストマ層に隣接して形成される半導体層を含み、前記半導体層は、励起信号を用いて励起されると、電荷を前記エラストマ層に伝達して前記複数のアクチュエータの1ないし複数を前記エラストマ内に選択的に引き込み、前記1ないし複数のウェルを前記表面に形成する静電界を作り出す請求項2記載の印刷構造。
【請求項4】
粘性材料を印刷するための方法であって、
印刷表面内に1ないし複数のウェルを作るために静電界を用いて前記印刷表面の部分を変形させるステップと、
前記表面に粘性材料を塗布するステップと、
圧力を使用して前記粘性材料を前記ウェル内に押し込むステップと、
前記材料を別の表面に転写するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−160935(P2007−160935A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333167(P2006−333167)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】