印刷機、印刷装置および印刷方法
【課題】複雑な形状の被印刷物への印刷に適した印刷機を提供する。
【解決手段】 本発明による印刷機(100)は、回転可能な版ロール(12)と、回転可能な転写ロール(14)であって、版ロール(12)から転写されたインク(K)を被印刷物(S)に転写させる転写ロール(14)とを備え、転写ロール(14)は回転した状態で移動する。例えば、転写ロール(14)の移動は、インク(K)が転写ロール(14)から被印刷物(S)に転写する前、インク(K)が転写ロール(14)から被印刷物(S)に転写した後、および、インク(K)が転写ロール(14)および被印刷物(S)の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる。
【解決手段】 本発明による印刷機(100)は、回転可能な版ロール(12)と、回転可能な転写ロール(14)であって、版ロール(12)から転写されたインク(K)を被印刷物(S)に転写させる転写ロール(14)とを備え、転写ロール(14)は回転した状態で移動する。例えば、転写ロール(14)の移動は、インク(K)が転写ロール(14)から被印刷物(S)に転写する前、インク(K)が転写ロール(14)から被印刷物(S)に転写した後、および、インク(K)が転写ロール(14)および被印刷物(S)の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷機、印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷技術の1つとしてオフセット印刷が知られている。オフセット印刷では、インクは、版から転写ロールに転写した後、転写ロールから被印刷物に転写する。このようなオフセット印刷は平板印刷とも呼ばれる。
【0003】
転写ロールだけでなく版もロール形状に形成されているオフセット印刷機は大量印刷に好適に用いられる(特許文献1参照)。特許文献1の印刷機では、版ロールから転写ロールへのインクの転写を高速に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−111822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の印刷機では、複雑な形状の被印刷物に対して印刷を適切に行うことができない。例えば、被印刷物の印刷面側に突起部がある場合、転写ロールが被印刷物の突起部と衝突してしまうことがある。また、被印刷物が凹凸形状を有する場合、被印刷物に対する転写ロールの印圧が一定にならず、適切に印刷を行うことができないことがある。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされものであり、その目的は、複雑な形状の被印刷物に対して印刷を適切に行うことが可能な印刷機、印刷装置および印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による印刷機は、回転可能な版ロールと、回転可能な転写ロールであって、前記版ロールから転写されたインクを被印刷物に転写させる転写ロールとを備える、印刷機であって、前記転写ロールは回転した状態で移動する。
【0008】
ある実施形態において、前記転写ロールの移動は、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写した後、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写する前、および、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる。
【0009】
ある実施形態において、前記転写ロールは、被印刷物を被加圧面に加圧して前記インクを前記被印刷物に転写させ、前記転写ロールは、前記被加圧面からの距離が変化するように移動する。
【0010】
ある実施形態において、前記版ロールは前記転写ロールとともに移動する。
【0011】
ある実施形態において、前記転写ロールは、前記転写ロールの下端部以外の箇所が前記被印刷物と衝突しないように移動する。
【0012】
ある実施形態において、前記転写ロールは、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間において前記被印刷物に対する前記転写ロールの印圧がほぼ一定になるように移動する。
【0013】
ある実施形態において、前記印刷機は、前記版ロールおよび前記転写ロールを支持する支持部材と、固定部材と、前記固定部材に対する前記支持部材の位置を変化させる変位部材とをさらに備える。
【0014】
ある実施形態において、前記変位部材は、ボールねじ、シリンダ、カム、および、ギアの少なくとも1つを有する。
【0015】
本発明の印刷装置は、上記に記載の印刷機と、前記被印刷物を前記印刷機に対して相対的に搬送する搬送部とを備える。
【0016】
ある実施形態において、前記転写ロールは、前記搬送部によって搬送される前記被印刷物の形状および搬送速度に応じて移動する。
【0017】
本発明による印刷方法は、インクが、回転する版ロールから回転する転写ロールに転写する工程と、前記インクが、前記回転する転写ロールから被印刷物に転写する工程と、前記回転する転写ロールの移動を行う工程とを包含する。
【0018】
ある実施形態では、前記転写ロールの移動を行う工程において、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写した後、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写する前、および、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複雑な形状の被印刷物に対して印刷を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図2】(a)〜(c)は、本実施形態の印刷方法の模式図を示す。
【図3】(a)〜(c)は、本実施形態の印刷方法の模式図を示す。
【図4】(a)〜(c)は、本実施形態の印刷方法の模式図を示す。
【図5】(a)〜(c)は、本実施形態の印刷方法の模式図を示す。
【図6】本発明による印刷装置の実施形態の模式図を示す。
【図7】本発明による印刷装置の実施形態の模式図を示す。
【図8】本発明による印刷機の実施形態の模式的な側面図を示す。
【図9】本発明による印刷機の実施形態の模式的な上面図を示す。
【図10】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図11】図10に示した印刷機におけるボールねじおよびその近傍の模式図を示す。
【図12】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図13】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図14】(a)は図13に示した印刷機における変位部材の変形例の模式図を示し、(b)は(a)の14b−14b’線に沿った断面図を示す。
【図15】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図16】本実施形態の印刷装置の模式図を示す。
【図17】本実施形態の印刷装置の模式図を示す。
【図18】本実施形態の印刷装置の模式図を示す。
【図19】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明による印刷機の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0022】
図1に、本発明による印刷機10の実施形態の模式図を示す。本実施形態の印刷機10は、版ロール12および転写ロール14を備える。版ロール12および転写ロール14はそれぞれ回転可能である。ここでは、版ロール12および転写ロール14の直径はほぼ等しい。
【0023】
版ロール12の表面は金属メッキで処理されている。典型的には、版ロール12には、所定のパターンに凹溝が形成されている。このパターンは、被印刷物Sに印刷される線・図形・模様その他に対応する。転写ロール14の表面にはブランケットが設けられる。典型的には、ブランケットはゴムから形成される。例えば、ブランケットは、シリコーンのゴムから形成される。
【0024】
印刷機10は、版ロール12および転写ロール14はいずれも回転した状態で印刷を行う。回転する版ロール12から転写ロール14に転写されたインクKは、転写ロール14の回転とともに転写ロール14の下端部に移動する。転写ロール14の下端部において転写ロール14が被印刷物Sと接触すると、インクKは転写ロール14から被印刷物Sに転写する。このようにしてインクKの印刷が行われる。
【0025】
なお、ここでは、版ロール12および転写ロール14の直径はほぼ等しかったが、本発明はこれに限定さない。版ロール12および転写ロール14の直径は異なってもよい。ただし、版ロール12および転写ロール14のうちの一方の直径は他方の直径の整数倍であることが好ましい。
【0026】
インクKは、導電性材料を含んでもよい。例えば、インクKは、粒子状の導電性材料およびビヒクルを有しており、ビヒクルは樹脂および溶剤を含む。また、インクKは、顔料を含んでもよい。あるいは、インクKはコーティング剤を含んでいてもよい。この場合、印刷機10がインクKを印刷することにより、被印刷物Sの表面処理を行うことができる。
【0027】
版ロール12へのインクKの供給は任意の方法で行われる。例えば、インクKは版ロール12の上部から垂らされてもよく、または、インクKはインク貯め(図示せず)から供給されてもよい。あるいは、インクKはノズル(図示せず)から版ロール12に向かって噴出されてもよい。また、ここでは図示していないが、版ロール12にスクレーパが取り付けられており、版ロール12とスクレーパとの界面近傍に溜まったインク量をセンサで検出することによって版ロール12へのインクKの供給を制御してもよい。
【0028】
本実施形態の印刷機10において、転写ロール14は回転時に移動する。例えば、転写ロール14は上下方向(Z方向)に移動する。詳細は後述するが、転写ロール14が回転時に移動することにより、被印刷物Sの形状が複雑であっても印刷を適切に行うことができる。転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写する前、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写した後、および、インクKが転写ロール14および被印刷物Sの両方と接触している期間のうちのいずれかに行われてもよい。
【0029】
例えば、転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写する前に行われる。以下、図2を参照して、本実施形態の印刷方法を説明する。
【0030】
図2(a)に示すように、インクKは、回転する版ロール12から回転する転写ロール14に転写する。被印刷物SはX方向に搬送されている。ここでは、印刷機10のX方向の位置は固定されており、被印刷物Sが−X方向から+X方向に搬送される。なお、被印刷物SのX方向の位置が固定され、印刷機10が−X方向に搬送されてもよい。このように、被印刷物Sは印刷機10に対して相対的に搬送されればよい。
【0031】
また、ここでは、被印刷物Sは、高さほぼ一定の平坦部と、平坦部よりも高い突起部とを有している。突起部は−X方向側に設けられており、被印刷物Sの突起部は、平坦部よりも後に、印刷機10の下に到達する。
【0032】
図2(b)に示すように、インクKは、転写ロール14から被印刷物Sに転写する。被印刷物Sは、転写ロール14の下端部と被印刷物Sの下方に位置する被加圧面とによって所定の圧力が付与され、インクKが被印刷物Sに転写する。ここでは、インクKは、被印刷物Sの平坦部に転写する。
【0033】
その後、図2(c)に示すように、転写ロール14は回転した状態で移動する。具体的には、転写ロール14は被加圧面から離れるように上方(+Z方向)に移動する。これにより、転写ロール14が被印刷物Sの突起部と衝突することを避けることができ、複雑な形状の被印刷物への印刷を適切に行うことができる。なお、ここでは、転写ロール14の移動時に版ロール12も併せて移動している。
【0034】
その後、必要に応じて、転写ロール14は元の印刷位置に戻ってもよい。例えば、次に、図2(a)に示したのと同様の形状を有する被印刷物Sが搬送される場合、上方に移動した転写ロール14は元の印刷位置に戻ることが好ましい。
【0035】
図2では、転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写した後に行われたが、本発明はこれに限定されない。転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写する前に行われてもよい。以下、図3を参照して、本実施形態の印刷方法を説明する。
【0036】
図3(a)に示すように、インクKは、回転する版ロール12から回転する転写ロール14に転写する。被印刷物SはX方向に搬送されるが、上述したように、被印刷物Sは印刷機10に対して相対的に搬送されていればよい。
【0037】
被印刷物Sは、高さほぼ一定の平坦部と、平坦部よりも高い突起部とを有している。ここでは、被印刷物Sの突起部は+X方向側に設けられており、被印刷物Sの突起部は、平坦部よりも前に、印刷機10の下に到達する。ここでは、版ロール12および転写ロール14は上方に位置しており、この位置では、被印刷物Sがこのまま搬送されたとしても被印刷物Sの突起部は版ロール12および転写ロール14のいずれとも接触しない。
【0038】
図3(b)に示すように、転写ロール14は回転した状態で移動する。具体的には、被印刷物Sの突起部が転写ロール14の下方を通過した後、転写ロール14はその下端部が被印刷物Sの突起部よりも低くなるように−Z方向に移動する。被印刷物Sの突起部が転写ロール14と衝突しなければ、転写ロール14の移動はいつ開始されてもよい。
【0039】
その後、図3(c)に示すように、インクKは、回転する転写ロール14から被印刷物Sに転写する。被印刷物Sには、転写ロール14の下端部と被印刷物Sの下方に位置する被加圧面とによって所定の圧力が付与され、インクKの転写が行われる。ここでは、インクKは被印刷物Sの平坦部に転写する。
【0040】
このように、転写ロール14を移動させることにより、転写ロール14が被印刷物Sの突起部と衝突することを避けることができ、複雑な形状の被印刷物への印刷を適切に行うことができる。なお、必要に応じて、転写ロール14は非印刷位置に戻ってもよい。例えば、次に、図3(a)に示したのと同様の形状を有する被印刷物Sが搬送される場合、上方に移動した転写ロール14は非印刷位置に戻ることが好ましい。
【0041】
図2および図3では、転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写した後および転写する前にそれぞれ行われたが、本発明はこれに限定されない。転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写する前および被印刷物Sに転写した後の両方で行われてもよい。以下、図4を参照して、本実施形態の印刷方法を説明する。
【0042】
図4(a)に示すように、インクKは、回転する版ロール12から回転する転写ロール14に転写する。被印刷物Sは印刷機10に対して+X方向に相対的に搬送される。また、ここでは、被印刷物Sは、高さほぼ一定の平坦部と、平坦部よりも高い突起部とを有している。突起部は+X方向側および−X方向側の両方に設けられており、被印刷物Sは凹面形状を有している。以下の説明において、+X方向側の突起部を前方突起部と呼び、−X方向側の突起部を後方突起部と呼ぶ。被印刷物Sの前方突起部が転写ロール14の下方に到達する前には、版ロール12および転写ロール14は、被印刷物Sがこのまま搬送されたとしても被印刷物Sの前方突起部と接触しないように位置にしている。
【0043】
図4(b)に示すように、転写ロール14は回転した状態で移動する。具体的には、被印刷物Sの前方突起部が転写ロール14の下方を通過した後、転写ロール14はその下端部が被印刷物Sの前方突起部よりも低くなるように−Z方向に移動し、インクKは転写ロール14から被印刷物Sに転写する。被印刷物Sの前方突起部が転写ロール14と衝突しなければ、転写ロール14の移動はいつ開始されてもよい。
【0044】
その後、図4(c)に示すように、転写ロール14は回転した状態で移動する。具体的には、転写ロール14は被加圧面から離れるように上方(+Z方向)に移動する。被印刷物Sの後方突起部が転写ロール14と衝突しなければ、転写ロール14の移動はいつ開始されてもよい。これにより、転写ロール14が被印刷物Sの後方突起部と衝突することを避けることができる。以上のようにして、複雑な形状の被印刷物への印刷を適切に行うことができる。このような印刷機10および印刷方法は、車両のリアウィンドウへの印刷に好適に用いられる。
【0045】
例えば、リアウィンドウは、透明な樹脂から形成されている。強度の観点から、例えば、リアウィンドウは、ポリカーボネイト樹脂から形成される。印刷機10は、リアウィンドウの表面に、透明導電性材料から形成された細線を印刷することができる。例えば、この細線を熱線として用いることにより、曇りの除去を行うことができる。透明導電性材料は、例えば、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)である。
【0046】
なお、上述した説明では、転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14および被印刷物Sの一方にある期間に行われたが、本発明はこれに限定されない。転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14および被印刷物Sの両方と接触している期間に行われてもよい。以下、図5を参照して、本実施形態の印刷方法を説明する。
【0047】
図5(a)に示すように、インクKは、回転する版ロール12から回転する転写ロール14に転写する。上述したように、被印刷物Sは印刷機10に対して+X方向に相対的に搬送されている。ここでは、被印刷物Sの印刷面は曲面形状を有している。
【0048】
図5(b)に示すように、インクKは、回転する転写ロール14から被印刷物Sに転写する。被印刷物Sは、転写ロール14の下端部と被印刷物Sの下方に位置する被加圧面とによって所定の圧力が付与され、インクKの転写が行われる。なお、ここでは、インクKは、被印刷物Sの曲面に転写する。このとき、転写ロール14は回転した状態で移動する。転写ロール14は被印刷物Sの曲面形状と整合して転写ロール14の被印刷物Sに対する印圧がほぼ一定となるように上下方向に移動する。
【0049】
その後、図5(c)に示すように、転写ロール14による被印刷物SへのインクKの転写は完了し、被印刷物Sは+X方向に搬送される。このように、被印刷物Sの印刷面が曲面であっても印刷を適切に行うことができる。このような印刷は倣い印刷とも呼ばれる。なお、図1〜図5では、図面が過度に複雑になることを避けるために、インクKを一体的に連続に示したが、インクKは所定のパターンとなるように複数に分離されていてよい。
【0050】
図6に、印刷機10を備える印刷装置100の模式図を示す。印刷装置100は、印刷機10と、印刷機10に対して被印刷物Sを相対的に搬送する搬送部110とを備えている。ここでは、搬送部110はコンベアであり、コンベア110は、X方向に沿って固定された印刷機10に対して被印刷物Sを搬送する。印刷装置100は、インクKを乾燥させる乾燥装置120をさらに備えてもよい。
【0051】
印刷装置100において、転写ロール14の移動速度は、被印刷物Sの搬送速度に応じて設定される。例えば、転写ロール14をZ方向に100mm移動させる場合、1秒当たりの転写ロール14のZ方向の移動可能速度が10mm/秒であると、この移動には10秒の時間が必要である。このため、コンベア110の搬送速度は、被印刷物Sが10秒搬送しても問題が生じないように設定される。
【0052】
また、図6では、搬送部110は被印刷物Sを搬送したが、本発明はこれに限定されない。搬送部110は印刷機10を搬送してもよい。
【0053】
図7に、印刷機10を備える印刷装置100の模式図を示す。印刷装置100は、印刷機10と、印刷機10を搬送する搬送部110とを備えている。ここでは、搬送部110はコンベアであり、コンベア110は、X方向に沿って固定して配置された被印刷物Sに対して印刷機10を搬送する。
【0054】
なお、図6および図7では、搬送部110は、被印刷物Sおよび印刷機10のいずれかを搬送したが、本発明はこれに限定されない。被印刷物Sおよび印刷機10のそれぞれが異なる搬送部110によって搬送され、被印刷物Sは、印刷機10に対して相対的に搬送されてもよい。
【0055】
また、図6および図7を参照して上述した説明では、印刷装置100の印刷機10は1つであったが、本発明はこれに限定されない。印刷装置100は複数の印刷機10を備えており、被印刷物Sに積層構造のインクKが印刷されてもよい。また、図6および図7を参照して上述した説明では、印刷機10の版ロール12は1つであったが、本発明はこれに限定されない。印刷機10は複数の版ロール12を備えており、被印刷物Sに積層構造のインクKが印刷されてもよい。
【0056】
上述したように、版ロール12は転写ロール14とともに移動することが好ましい。以下、図8および図9を参照して本実施形態の印刷機10を説明する。
【0057】
図8に、印刷機10の模式的な側面図を示し、図9に、印刷機10の模式的な上面図を示す。印刷機10は、版ロール12および転写ロール14に加えて、版ロール12および転写ロール14を支持する支持部材16と、固定部材18と、固定部材18に対する支持部材16の位置を変化させる変位部材20とを備える。例えば、変位部材20は、ボールねじ、シリンダ(エアシリンダおよび油圧シリンダ)、カム(例えば、偏心カム)およびギアの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0058】
支持部材16は、上面および側面を有しており、支持部材16の下方は開口されている。版ロール12および転写ロール14は支持部材16の上面および/または側面に支持されており、転写ロール14は、その下端部が支持部材16の下端部よりも低くなるように取り付けられている。
【0059】
支持部材16は、変位部材20を介して固定部材18に取り付けられている。変位部材20が変化しない場合、支持部材16は移動しないが、変位部材20の変化により、支持部材16は固定部材18に対して移動する。例えば、変位部材20の変化により、支持部材16は地面に対して垂直方向(Z方向)に往復に移動する。支持部材16の移動方向は、固定部材18に設けられた方向規制部材30によって規定されてもよい。方向規制部材30は、例えば、LMガイド(Linear Motion Guide)である。
【0060】
印刷機10では、変位部材20により、版ロール12および転写ロール14を支持する支持部材16の位置を変化させている。このため、被印刷物Sが複雑な形状であっても、印刷を適切に行うことができる。例えば、被印刷物Sが凹面形状を有していても、転写ロール14が被印刷物Sの印刷すべきでない面と衝突することを避けることができる。また、変位部材20によって支持部材16を適切に移動させることにより、被印刷物が複雑な形状であっても、転写ロール14がインクKを被印刷物Sに印刷する際の印圧の変化を抑制することができる。
【0061】
例えば、変位部材20は以下のような構成を有している。図10において、変位部材20はボールねじ22を備えている。ボールねじ22は、ねじ軸22aおよびナット22bを有している。ねじ軸22aは、ナット22bの回転に伴って移動する。ナット22bは固定部材18に取り付けられており、ねじ軸22aの先端は支持部材16に取り付けられている。支持部材16は、ナット22bとともに移動する。
【0062】
図11に、図10に示しボールねじ22およびその近傍の模式的な拡大図を示す。ここでは、固定部材18の上方に、ウォーム23aおよびウォームホイール23bが設けられており、ウォームホイール23bはねじ23sによってナット22bに取り付けられている。ウォーム23aの回転により、ウォームホイール23bとともにナット22bが回転し、これに伴い、ねじ軸22aが回転し、ねじ軸22aに取り付けられた支持部材16が移動する。ウォーム23aの駆動はモータ(図示せず)を用いて行われる。モータとしてサーボモータを用いることにより、支持部材16を所定のタイミングで所定の距離だけ移動させることができる。
【0063】
サーボモータは、例えば、1分間に3万回転可能である。仮に、ウォーム23aを駆動するモータが1分間に2万回転し、ウォーム23aとウォームホイール23bとのギア比が40:1であり、ねじ軸22aの送りピッチが5mmであると、1分間に2500mm(1秒に約40mm)の移動を行うことができる。例えば、転写ロール14をZ方向に160mm移動させる場合、約4秒で転写ロール14の移動を完了させることができる。なお、例えば、ねじ軸22aの送りピッチを倍にすると、移動時間を半分にすることができる。
【0064】
支持部材16の移動は、例えば、シリンダを用いて行われてもよい。図12において、変位部材20はシリンダ24を備えている。シリンダ24は、エアシリンダまたは油圧シリンダである。振動を抑制するために、シリンダ24はエアクッションを備えてもよい。変位部材20として油圧シリンダを用いることにより、支持部材16の移動をさらに速やかに行うことができる。
【0065】
また、支持部材16の移動は、例えばカム(偏心カム)を用いて行ってもよい。図13において、変位部材20はカム26aおよびローラ26bを備えている。ローラ26bの下端部には支持部材16が取り付けられている。ローラ26bには+Z方向に付勢力が付与される。付勢力は、スプリングまたはエアシリンダ等を用いて付与される。カム26aの回転によってローラ26bの位置が変化することにより、支持部材16の位置が変化する。
【0066】
なお、図13では、カム26aおよびローラ26bは別個に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。図14(a)および図14(b)に示すように、ローラ26bは、カム26aによって形成された経路を通過可能に構成されており、カム26aおよびローラ26bは一体的に設けられていてもよい。
【0067】
あるいは、支持部材16の移動は、例えば、ギアを用いて行われてもよい。図15において、変位部材20はラックギア28aおよびピニオンギア28bを備えている。ピニオンギア28bの回転に伴いラックギア28aが移動することによって支持部材16を移動させることができる。なお、倣い印刷を行う場合、支持部材16の移動は、ボールねじ、または、カムを用いて行うことが好ましい。
【0068】
転写ロール14は、円筒形状の2つの底面(平面)のそれぞれから延びるシャフト(図示せず)を有しており、転写ロール14は両端で保持されたシャフトとともに回転してもよい。または、転写ロール14は円筒形状を有しており、転写ロール14は、内周面にシャフトの設けられたコア(図示せず)を挿入した状態で回転してもよい。また、版ロール12も転写ロール14と同様の形状を有していてもよい。なお、版ロール12および転写ロール14がそれぞれシャフトを有する場合、版ロール12および転写ロール14とともにシャフトも移動することが好ましい。以下、図16および図17を参照して印刷装置100を説明する。
【0069】
印刷装置100において、版ロール12はシャフト12aを回転中心として回転し、版ロール14はシャフト14aを回転中心として回転する。ここでは、シャフト14aは、シャフト12aの回転に伴って回転する。このように、版ロール12および転写ロール14の駆動源が同一であることにより、版ロール12および転写ロール14の回転速度を一定にすることができ、高精度の駆動を行うことができる。なお、ここでは、シャフト14aは、シャフト12aの回転に基づいて回転したが、シャフト12aが、シャフト14aの回転に基づいて回転してもよい。このように、版ロール12および転写ロール14の一方のシャフトから他方のシャフトに回転が伝達されてもよい。
【0070】
また、印刷装置100において、印刷機10は、平歯車40、42をさらに備える。平歯車40、42は、いずれもZ軸に平行な回転軸を中心に回転する。平歯車42は支持部材16に取り付けられており、平歯車42は支持部材16とともにZ方向に移動可能である。平歯車40は、シャフトHxの回転をべベルギアBgで変換することによって回転し、この回転に伴って、平歯車40、版ロール12および転写ロール14が回転する。
【0071】
上述した印刷機10では、部材の連結はギアを用いて行われたが、ギアに代えてユニバーサルジョイントを用いてもよい。ただし、ギアを用いることにより、位置合わせを高精度に行うことができる。
【0072】
なお、上述したシャフトHxはコンベア110とともに駆動されてもよい。以下、図18を参照して印刷装置100の一例を説明する。コンベア110は、歯付ベルト110aおよびスプロケット110bを有している。歯付ベルト110aはコグドベルトとも呼ばれる。
【0073】
ここでは、シャフトHaはモータMに連結されており、モータMの回転はシャフトHaに伝達される。シャフトHaはべベルギアBgを介してシャフトHbと連結されており、シャフトHbはべベルギアBgを介してシャフトHxと連結されている。このため、シャフトHa、Hb、HxはそれぞれモータMの回転に伴って回転している。シャフトHbはアイドルシャフトとも呼ばれ、シャフトHxはコンベアシャフトとも呼ばれる。ここでは、モータMによって、印刷機10の印刷およびコンベア110の搬送が駆動される。
【0074】
上述したように、版ロール12および転写ロール14はシャフトHxからべベルギアBgを介して連結された軸とともに回転する。このため、印刷装置100の印刷および搬送は同期している。また、コンベア110のスプロケットはシャフトHbとともに回転する。
【0075】
例えば、スプロケットの直径と版ロール12の直径の比を整数にすることにより、基板の搬送と印刷の同期を簡便に行うことができる。例えば、スプロケットの直径と版ロール12の直径の比は2:1である。あるいは、この比は1:1であってもよい。
【0076】
このように、搬送および印刷の同期を機械的に行う場合、搬送および印刷の同期を簡便に行うことができる。なお、被印刷物Sの搬送速度および印刷周期はモータMの回転を変化させることによって調整可能である。
【0077】
図18を参照した印刷装置100では、印刷および搬送は機械的に同期されたが、本発明はこれに限定されない。印刷および搬送はサーボシステムを用いて同期してもよい。
【0078】
なお、上述した説明では、コンベア110は一定の速度で被印刷物Sを搬送したが、本発明はこれに限定されない。コンベア110が被印刷物Sを搬送する速度は時間ごとに変化してもよい。例えば、コンベア110は被印刷物Sを印刷機10の下に搬送した後、印刷機10が被印刷物Sへの印刷を完了するまでコンベア110は搬送を停止し、印刷機10が被印刷物Sへの印刷を完了した後、コンベア110は搬送を開始してもよい。このように、コンベア110は間欠的に被印刷物Sを搬送してもよい。ただし、印刷処理時間を短縮するために、コンベア110は、一定の速度で被印刷物Sを搬送することが好ましい。
【0079】
また、上述したように、印刷装置100は、ギアの噛み合わせによって駆動する場合、コンベア110の搬送が一定の速度で行われると、ギアが互いに同じ部分で噛み合うため、一定の負荷の下で搬送を行うことができる。しかしながら、コンベア110の搬送速度を変化させたり、コンベア110の搬送を停止する場合、ギアの荷重および接触面が一定とはならないため、あそびを比較的多くとる必要があり、高精度な印刷を行うことができない場合がある。このため、この観点からも、コンベア110の搬送は一定の速度で行われることが好ましい。
【0080】
なお、上述した説明では、シャフト12a、14aの回転の伝達は直接的に行われたが、本発明はこれに限定されない。図19に示すように、シャフト12a、14aの回転の伝達は、例えば、アイドルギア13a、13bを介して行われてもよい。
【0081】
また、上述した説明では、版ロール12を転写ロール14とともに移動させたが、本発明はこれに限定されない。版ロール12を移動させることなく転写ロール14のみを移動させて、転写ロール14が版ロール12から分離されてもよい。転写ロール14の移動は、転写ロール14が版ロール12と衝突しないように垂直またはななめに行われる。例えば、インクKが版ロール12から転写ロール14に転写する際に直径のほぼ等しい版ロール12と転写ロール14をほぼ等しい高さに配置する場合、移動時に、転写ロール14は、X方向およびY方向にほとんど移動させることなくZ方向に移動させることができる。あるいは、転写ロール14は、スイングアームによって移動してもよい。
【0082】
なお、図17に示したように、版ロール12および転写ロール14がギアによって駆動される場合、転写ロール14の移動時に版ロール12と転写ロール14とを切り離すと、ギアの噛み合わせが切り離れることになる。その後、印刷の開始時に、転写ロール14が版ロール12に近接するように移動させてギアを再び噛み合わせることが必要となるが、このとき、ギアが適切に噛み合わないことがある。このため、転写ロール14は版ロール12とともに移動することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、複雑な形状の被印刷物への印刷を好適に行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
10 印刷機
12 版ロール
14 転写ロール
16 支持部材
18 固定部材
20 変位部材
100 印刷装置
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷機、印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷技術の1つとしてオフセット印刷が知られている。オフセット印刷では、インクは、版から転写ロールに転写した後、転写ロールから被印刷物に転写する。このようなオフセット印刷は平板印刷とも呼ばれる。
【0003】
転写ロールだけでなく版もロール形状に形成されているオフセット印刷機は大量印刷に好適に用いられる(特許文献1参照)。特許文献1の印刷機では、版ロールから転写ロールへのインクの転写を高速に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−111822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の印刷機では、複雑な形状の被印刷物に対して印刷を適切に行うことができない。例えば、被印刷物の印刷面側に突起部がある場合、転写ロールが被印刷物の突起部と衝突してしまうことがある。また、被印刷物が凹凸形状を有する場合、被印刷物に対する転写ロールの印圧が一定にならず、適切に印刷を行うことができないことがある。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされものであり、その目的は、複雑な形状の被印刷物に対して印刷を適切に行うことが可能な印刷機、印刷装置および印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による印刷機は、回転可能な版ロールと、回転可能な転写ロールであって、前記版ロールから転写されたインクを被印刷物に転写させる転写ロールとを備える、印刷機であって、前記転写ロールは回転した状態で移動する。
【0008】
ある実施形態において、前記転写ロールの移動は、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写した後、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写する前、および、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる。
【0009】
ある実施形態において、前記転写ロールは、被印刷物を被加圧面に加圧して前記インクを前記被印刷物に転写させ、前記転写ロールは、前記被加圧面からの距離が変化するように移動する。
【0010】
ある実施形態において、前記版ロールは前記転写ロールとともに移動する。
【0011】
ある実施形態において、前記転写ロールは、前記転写ロールの下端部以外の箇所が前記被印刷物と衝突しないように移動する。
【0012】
ある実施形態において、前記転写ロールは、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間において前記被印刷物に対する前記転写ロールの印圧がほぼ一定になるように移動する。
【0013】
ある実施形態において、前記印刷機は、前記版ロールおよび前記転写ロールを支持する支持部材と、固定部材と、前記固定部材に対する前記支持部材の位置を変化させる変位部材とをさらに備える。
【0014】
ある実施形態において、前記変位部材は、ボールねじ、シリンダ、カム、および、ギアの少なくとも1つを有する。
【0015】
本発明の印刷装置は、上記に記載の印刷機と、前記被印刷物を前記印刷機に対して相対的に搬送する搬送部とを備える。
【0016】
ある実施形態において、前記転写ロールは、前記搬送部によって搬送される前記被印刷物の形状および搬送速度に応じて移動する。
【0017】
本発明による印刷方法は、インクが、回転する版ロールから回転する転写ロールに転写する工程と、前記インクが、前記回転する転写ロールから被印刷物に転写する工程と、前記回転する転写ロールの移動を行う工程とを包含する。
【0018】
ある実施形態では、前記転写ロールの移動を行う工程において、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写した後、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写する前、および、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複雑な形状の被印刷物に対して印刷を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図2】(a)〜(c)は、本実施形態の印刷方法の模式図を示す。
【図3】(a)〜(c)は、本実施形態の印刷方法の模式図を示す。
【図4】(a)〜(c)は、本実施形態の印刷方法の模式図を示す。
【図5】(a)〜(c)は、本実施形態の印刷方法の模式図を示す。
【図6】本発明による印刷装置の実施形態の模式図を示す。
【図7】本発明による印刷装置の実施形態の模式図を示す。
【図8】本発明による印刷機の実施形態の模式的な側面図を示す。
【図9】本発明による印刷機の実施形態の模式的な上面図を示す。
【図10】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図11】図10に示した印刷機におけるボールねじおよびその近傍の模式図を示す。
【図12】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図13】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図14】(a)は図13に示した印刷機における変位部材の変形例の模式図を示し、(b)は(a)の14b−14b’線に沿った断面図を示す。
【図15】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【図16】本実施形態の印刷装置の模式図を示す。
【図17】本実施形態の印刷装置の模式図を示す。
【図18】本実施形態の印刷装置の模式図を示す。
【図19】本発明による印刷機の実施形態の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明による印刷機の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0022】
図1に、本発明による印刷機10の実施形態の模式図を示す。本実施形態の印刷機10は、版ロール12および転写ロール14を備える。版ロール12および転写ロール14はそれぞれ回転可能である。ここでは、版ロール12および転写ロール14の直径はほぼ等しい。
【0023】
版ロール12の表面は金属メッキで処理されている。典型的には、版ロール12には、所定のパターンに凹溝が形成されている。このパターンは、被印刷物Sに印刷される線・図形・模様その他に対応する。転写ロール14の表面にはブランケットが設けられる。典型的には、ブランケットはゴムから形成される。例えば、ブランケットは、シリコーンのゴムから形成される。
【0024】
印刷機10は、版ロール12および転写ロール14はいずれも回転した状態で印刷を行う。回転する版ロール12から転写ロール14に転写されたインクKは、転写ロール14の回転とともに転写ロール14の下端部に移動する。転写ロール14の下端部において転写ロール14が被印刷物Sと接触すると、インクKは転写ロール14から被印刷物Sに転写する。このようにしてインクKの印刷が行われる。
【0025】
なお、ここでは、版ロール12および転写ロール14の直径はほぼ等しかったが、本発明はこれに限定さない。版ロール12および転写ロール14の直径は異なってもよい。ただし、版ロール12および転写ロール14のうちの一方の直径は他方の直径の整数倍であることが好ましい。
【0026】
インクKは、導電性材料を含んでもよい。例えば、インクKは、粒子状の導電性材料およびビヒクルを有しており、ビヒクルは樹脂および溶剤を含む。また、インクKは、顔料を含んでもよい。あるいは、インクKはコーティング剤を含んでいてもよい。この場合、印刷機10がインクKを印刷することにより、被印刷物Sの表面処理を行うことができる。
【0027】
版ロール12へのインクKの供給は任意の方法で行われる。例えば、インクKは版ロール12の上部から垂らされてもよく、または、インクKはインク貯め(図示せず)から供給されてもよい。あるいは、インクKはノズル(図示せず)から版ロール12に向かって噴出されてもよい。また、ここでは図示していないが、版ロール12にスクレーパが取り付けられており、版ロール12とスクレーパとの界面近傍に溜まったインク量をセンサで検出することによって版ロール12へのインクKの供給を制御してもよい。
【0028】
本実施形態の印刷機10において、転写ロール14は回転時に移動する。例えば、転写ロール14は上下方向(Z方向)に移動する。詳細は後述するが、転写ロール14が回転時に移動することにより、被印刷物Sの形状が複雑であっても印刷を適切に行うことができる。転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写する前、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写した後、および、インクKが転写ロール14および被印刷物Sの両方と接触している期間のうちのいずれかに行われてもよい。
【0029】
例えば、転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写する前に行われる。以下、図2を参照して、本実施形態の印刷方法を説明する。
【0030】
図2(a)に示すように、インクKは、回転する版ロール12から回転する転写ロール14に転写する。被印刷物SはX方向に搬送されている。ここでは、印刷機10のX方向の位置は固定されており、被印刷物Sが−X方向から+X方向に搬送される。なお、被印刷物SのX方向の位置が固定され、印刷機10が−X方向に搬送されてもよい。このように、被印刷物Sは印刷機10に対して相対的に搬送されればよい。
【0031】
また、ここでは、被印刷物Sは、高さほぼ一定の平坦部と、平坦部よりも高い突起部とを有している。突起部は−X方向側に設けられており、被印刷物Sの突起部は、平坦部よりも後に、印刷機10の下に到達する。
【0032】
図2(b)に示すように、インクKは、転写ロール14から被印刷物Sに転写する。被印刷物Sは、転写ロール14の下端部と被印刷物Sの下方に位置する被加圧面とによって所定の圧力が付与され、インクKが被印刷物Sに転写する。ここでは、インクKは、被印刷物Sの平坦部に転写する。
【0033】
その後、図2(c)に示すように、転写ロール14は回転した状態で移動する。具体的には、転写ロール14は被加圧面から離れるように上方(+Z方向)に移動する。これにより、転写ロール14が被印刷物Sの突起部と衝突することを避けることができ、複雑な形状の被印刷物への印刷を適切に行うことができる。なお、ここでは、転写ロール14の移動時に版ロール12も併せて移動している。
【0034】
その後、必要に応じて、転写ロール14は元の印刷位置に戻ってもよい。例えば、次に、図2(a)に示したのと同様の形状を有する被印刷物Sが搬送される場合、上方に移動した転写ロール14は元の印刷位置に戻ることが好ましい。
【0035】
図2では、転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写した後に行われたが、本発明はこれに限定されない。転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写する前に行われてもよい。以下、図3を参照して、本実施形態の印刷方法を説明する。
【0036】
図3(a)に示すように、インクKは、回転する版ロール12から回転する転写ロール14に転写する。被印刷物SはX方向に搬送されるが、上述したように、被印刷物Sは印刷機10に対して相対的に搬送されていればよい。
【0037】
被印刷物Sは、高さほぼ一定の平坦部と、平坦部よりも高い突起部とを有している。ここでは、被印刷物Sの突起部は+X方向側に設けられており、被印刷物Sの突起部は、平坦部よりも前に、印刷機10の下に到達する。ここでは、版ロール12および転写ロール14は上方に位置しており、この位置では、被印刷物Sがこのまま搬送されたとしても被印刷物Sの突起部は版ロール12および転写ロール14のいずれとも接触しない。
【0038】
図3(b)に示すように、転写ロール14は回転した状態で移動する。具体的には、被印刷物Sの突起部が転写ロール14の下方を通過した後、転写ロール14はその下端部が被印刷物Sの突起部よりも低くなるように−Z方向に移動する。被印刷物Sの突起部が転写ロール14と衝突しなければ、転写ロール14の移動はいつ開始されてもよい。
【0039】
その後、図3(c)に示すように、インクKは、回転する転写ロール14から被印刷物Sに転写する。被印刷物Sには、転写ロール14の下端部と被印刷物Sの下方に位置する被加圧面とによって所定の圧力が付与され、インクKの転写が行われる。ここでは、インクKは被印刷物Sの平坦部に転写する。
【0040】
このように、転写ロール14を移動させることにより、転写ロール14が被印刷物Sの突起部と衝突することを避けることができ、複雑な形状の被印刷物への印刷を適切に行うことができる。なお、必要に応じて、転写ロール14は非印刷位置に戻ってもよい。例えば、次に、図3(a)に示したのと同様の形状を有する被印刷物Sが搬送される場合、上方に移動した転写ロール14は非印刷位置に戻ることが好ましい。
【0041】
図2および図3では、転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写した後および転写する前にそれぞれ行われたが、本発明はこれに限定されない。転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14から被印刷物Sに転写する前および被印刷物Sに転写した後の両方で行われてもよい。以下、図4を参照して、本実施形態の印刷方法を説明する。
【0042】
図4(a)に示すように、インクKは、回転する版ロール12から回転する転写ロール14に転写する。被印刷物Sは印刷機10に対して+X方向に相対的に搬送される。また、ここでは、被印刷物Sは、高さほぼ一定の平坦部と、平坦部よりも高い突起部とを有している。突起部は+X方向側および−X方向側の両方に設けられており、被印刷物Sは凹面形状を有している。以下の説明において、+X方向側の突起部を前方突起部と呼び、−X方向側の突起部を後方突起部と呼ぶ。被印刷物Sの前方突起部が転写ロール14の下方に到達する前には、版ロール12および転写ロール14は、被印刷物Sがこのまま搬送されたとしても被印刷物Sの前方突起部と接触しないように位置にしている。
【0043】
図4(b)に示すように、転写ロール14は回転した状態で移動する。具体的には、被印刷物Sの前方突起部が転写ロール14の下方を通過した後、転写ロール14はその下端部が被印刷物Sの前方突起部よりも低くなるように−Z方向に移動し、インクKは転写ロール14から被印刷物Sに転写する。被印刷物Sの前方突起部が転写ロール14と衝突しなければ、転写ロール14の移動はいつ開始されてもよい。
【0044】
その後、図4(c)に示すように、転写ロール14は回転した状態で移動する。具体的には、転写ロール14は被加圧面から離れるように上方(+Z方向)に移動する。被印刷物Sの後方突起部が転写ロール14と衝突しなければ、転写ロール14の移動はいつ開始されてもよい。これにより、転写ロール14が被印刷物Sの後方突起部と衝突することを避けることができる。以上のようにして、複雑な形状の被印刷物への印刷を適切に行うことができる。このような印刷機10および印刷方法は、車両のリアウィンドウへの印刷に好適に用いられる。
【0045】
例えば、リアウィンドウは、透明な樹脂から形成されている。強度の観点から、例えば、リアウィンドウは、ポリカーボネイト樹脂から形成される。印刷機10は、リアウィンドウの表面に、透明導電性材料から形成された細線を印刷することができる。例えば、この細線を熱線として用いることにより、曇りの除去を行うことができる。透明導電性材料は、例えば、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)である。
【0046】
なお、上述した説明では、転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14および被印刷物Sの一方にある期間に行われたが、本発明はこれに限定されない。転写ロール14の移動は、インクKが転写ロール14および被印刷物Sの両方と接触している期間に行われてもよい。以下、図5を参照して、本実施形態の印刷方法を説明する。
【0047】
図5(a)に示すように、インクKは、回転する版ロール12から回転する転写ロール14に転写する。上述したように、被印刷物Sは印刷機10に対して+X方向に相対的に搬送されている。ここでは、被印刷物Sの印刷面は曲面形状を有している。
【0048】
図5(b)に示すように、インクKは、回転する転写ロール14から被印刷物Sに転写する。被印刷物Sは、転写ロール14の下端部と被印刷物Sの下方に位置する被加圧面とによって所定の圧力が付与され、インクKの転写が行われる。なお、ここでは、インクKは、被印刷物Sの曲面に転写する。このとき、転写ロール14は回転した状態で移動する。転写ロール14は被印刷物Sの曲面形状と整合して転写ロール14の被印刷物Sに対する印圧がほぼ一定となるように上下方向に移動する。
【0049】
その後、図5(c)に示すように、転写ロール14による被印刷物SへのインクKの転写は完了し、被印刷物Sは+X方向に搬送される。このように、被印刷物Sの印刷面が曲面であっても印刷を適切に行うことができる。このような印刷は倣い印刷とも呼ばれる。なお、図1〜図5では、図面が過度に複雑になることを避けるために、インクKを一体的に連続に示したが、インクKは所定のパターンとなるように複数に分離されていてよい。
【0050】
図6に、印刷機10を備える印刷装置100の模式図を示す。印刷装置100は、印刷機10と、印刷機10に対して被印刷物Sを相対的に搬送する搬送部110とを備えている。ここでは、搬送部110はコンベアであり、コンベア110は、X方向に沿って固定された印刷機10に対して被印刷物Sを搬送する。印刷装置100は、インクKを乾燥させる乾燥装置120をさらに備えてもよい。
【0051】
印刷装置100において、転写ロール14の移動速度は、被印刷物Sの搬送速度に応じて設定される。例えば、転写ロール14をZ方向に100mm移動させる場合、1秒当たりの転写ロール14のZ方向の移動可能速度が10mm/秒であると、この移動には10秒の時間が必要である。このため、コンベア110の搬送速度は、被印刷物Sが10秒搬送しても問題が生じないように設定される。
【0052】
また、図6では、搬送部110は被印刷物Sを搬送したが、本発明はこれに限定されない。搬送部110は印刷機10を搬送してもよい。
【0053】
図7に、印刷機10を備える印刷装置100の模式図を示す。印刷装置100は、印刷機10と、印刷機10を搬送する搬送部110とを備えている。ここでは、搬送部110はコンベアであり、コンベア110は、X方向に沿って固定して配置された被印刷物Sに対して印刷機10を搬送する。
【0054】
なお、図6および図7では、搬送部110は、被印刷物Sおよび印刷機10のいずれかを搬送したが、本発明はこれに限定されない。被印刷物Sおよび印刷機10のそれぞれが異なる搬送部110によって搬送され、被印刷物Sは、印刷機10に対して相対的に搬送されてもよい。
【0055】
また、図6および図7を参照して上述した説明では、印刷装置100の印刷機10は1つであったが、本発明はこれに限定されない。印刷装置100は複数の印刷機10を備えており、被印刷物Sに積層構造のインクKが印刷されてもよい。また、図6および図7を参照して上述した説明では、印刷機10の版ロール12は1つであったが、本発明はこれに限定されない。印刷機10は複数の版ロール12を備えており、被印刷物Sに積層構造のインクKが印刷されてもよい。
【0056】
上述したように、版ロール12は転写ロール14とともに移動することが好ましい。以下、図8および図9を参照して本実施形態の印刷機10を説明する。
【0057】
図8に、印刷機10の模式的な側面図を示し、図9に、印刷機10の模式的な上面図を示す。印刷機10は、版ロール12および転写ロール14に加えて、版ロール12および転写ロール14を支持する支持部材16と、固定部材18と、固定部材18に対する支持部材16の位置を変化させる変位部材20とを備える。例えば、変位部材20は、ボールねじ、シリンダ(エアシリンダおよび油圧シリンダ)、カム(例えば、偏心カム)およびギアの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0058】
支持部材16は、上面および側面を有しており、支持部材16の下方は開口されている。版ロール12および転写ロール14は支持部材16の上面および/または側面に支持されており、転写ロール14は、その下端部が支持部材16の下端部よりも低くなるように取り付けられている。
【0059】
支持部材16は、変位部材20を介して固定部材18に取り付けられている。変位部材20が変化しない場合、支持部材16は移動しないが、変位部材20の変化により、支持部材16は固定部材18に対して移動する。例えば、変位部材20の変化により、支持部材16は地面に対して垂直方向(Z方向)に往復に移動する。支持部材16の移動方向は、固定部材18に設けられた方向規制部材30によって規定されてもよい。方向規制部材30は、例えば、LMガイド(Linear Motion Guide)である。
【0060】
印刷機10では、変位部材20により、版ロール12および転写ロール14を支持する支持部材16の位置を変化させている。このため、被印刷物Sが複雑な形状であっても、印刷を適切に行うことができる。例えば、被印刷物Sが凹面形状を有していても、転写ロール14が被印刷物Sの印刷すべきでない面と衝突することを避けることができる。また、変位部材20によって支持部材16を適切に移動させることにより、被印刷物が複雑な形状であっても、転写ロール14がインクKを被印刷物Sに印刷する際の印圧の変化を抑制することができる。
【0061】
例えば、変位部材20は以下のような構成を有している。図10において、変位部材20はボールねじ22を備えている。ボールねじ22は、ねじ軸22aおよびナット22bを有している。ねじ軸22aは、ナット22bの回転に伴って移動する。ナット22bは固定部材18に取り付けられており、ねじ軸22aの先端は支持部材16に取り付けられている。支持部材16は、ナット22bとともに移動する。
【0062】
図11に、図10に示しボールねじ22およびその近傍の模式的な拡大図を示す。ここでは、固定部材18の上方に、ウォーム23aおよびウォームホイール23bが設けられており、ウォームホイール23bはねじ23sによってナット22bに取り付けられている。ウォーム23aの回転により、ウォームホイール23bとともにナット22bが回転し、これに伴い、ねじ軸22aが回転し、ねじ軸22aに取り付けられた支持部材16が移動する。ウォーム23aの駆動はモータ(図示せず)を用いて行われる。モータとしてサーボモータを用いることにより、支持部材16を所定のタイミングで所定の距離だけ移動させることができる。
【0063】
サーボモータは、例えば、1分間に3万回転可能である。仮に、ウォーム23aを駆動するモータが1分間に2万回転し、ウォーム23aとウォームホイール23bとのギア比が40:1であり、ねじ軸22aの送りピッチが5mmであると、1分間に2500mm(1秒に約40mm)の移動を行うことができる。例えば、転写ロール14をZ方向に160mm移動させる場合、約4秒で転写ロール14の移動を完了させることができる。なお、例えば、ねじ軸22aの送りピッチを倍にすると、移動時間を半分にすることができる。
【0064】
支持部材16の移動は、例えば、シリンダを用いて行われてもよい。図12において、変位部材20はシリンダ24を備えている。シリンダ24は、エアシリンダまたは油圧シリンダである。振動を抑制するために、シリンダ24はエアクッションを備えてもよい。変位部材20として油圧シリンダを用いることにより、支持部材16の移動をさらに速やかに行うことができる。
【0065】
また、支持部材16の移動は、例えばカム(偏心カム)を用いて行ってもよい。図13において、変位部材20はカム26aおよびローラ26bを備えている。ローラ26bの下端部には支持部材16が取り付けられている。ローラ26bには+Z方向に付勢力が付与される。付勢力は、スプリングまたはエアシリンダ等を用いて付与される。カム26aの回転によってローラ26bの位置が変化することにより、支持部材16の位置が変化する。
【0066】
なお、図13では、カム26aおよびローラ26bは別個に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。図14(a)および図14(b)に示すように、ローラ26bは、カム26aによって形成された経路を通過可能に構成されており、カム26aおよびローラ26bは一体的に設けられていてもよい。
【0067】
あるいは、支持部材16の移動は、例えば、ギアを用いて行われてもよい。図15において、変位部材20はラックギア28aおよびピニオンギア28bを備えている。ピニオンギア28bの回転に伴いラックギア28aが移動することによって支持部材16を移動させることができる。なお、倣い印刷を行う場合、支持部材16の移動は、ボールねじ、または、カムを用いて行うことが好ましい。
【0068】
転写ロール14は、円筒形状の2つの底面(平面)のそれぞれから延びるシャフト(図示せず)を有しており、転写ロール14は両端で保持されたシャフトとともに回転してもよい。または、転写ロール14は円筒形状を有しており、転写ロール14は、内周面にシャフトの設けられたコア(図示せず)を挿入した状態で回転してもよい。また、版ロール12も転写ロール14と同様の形状を有していてもよい。なお、版ロール12および転写ロール14がそれぞれシャフトを有する場合、版ロール12および転写ロール14とともにシャフトも移動することが好ましい。以下、図16および図17を参照して印刷装置100を説明する。
【0069】
印刷装置100において、版ロール12はシャフト12aを回転中心として回転し、版ロール14はシャフト14aを回転中心として回転する。ここでは、シャフト14aは、シャフト12aの回転に伴って回転する。このように、版ロール12および転写ロール14の駆動源が同一であることにより、版ロール12および転写ロール14の回転速度を一定にすることができ、高精度の駆動を行うことができる。なお、ここでは、シャフト14aは、シャフト12aの回転に基づいて回転したが、シャフト12aが、シャフト14aの回転に基づいて回転してもよい。このように、版ロール12および転写ロール14の一方のシャフトから他方のシャフトに回転が伝達されてもよい。
【0070】
また、印刷装置100において、印刷機10は、平歯車40、42をさらに備える。平歯車40、42は、いずれもZ軸に平行な回転軸を中心に回転する。平歯車42は支持部材16に取り付けられており、平歯車42は支持部材16とともにZ方向に移動可能である。平歯車40は、シャフトHxの回転をべベルギアBgで変換することによって回転し、この回転に伴って、平歯車40、版ロール12および転写ロール14が回転する。
【0071】
上述した印刷機10では、部材の連結はギアを用いて行われたが、ギアに代えてユニバーサルジョイントを用いてもよい。ただし、ギアを用いることにより、位置合わせを高精度に行うことができる。
【0072】
なお、上述したシャフトHxはコンベア110とともに駆動されてもよい。以下、図18を参照して印刷装置100の一例を説明する。コンベア110は、歯付ベルト110aおよびスプロケット110bを有している。歯付ベルト110aはコグドベルトとも呼ばれる。
【0073】
ここでは、シャフトHaはモータMに連結されており、モータMの回転はシャフトHaに伝達される。シャフトHaはべベルギアBgを介してシャフトHbと連結されており、シャフトHbはべベルギアBgを介してシャフトHxと連結されている。このため、シャフトHa、Hb、HxはそれぞれモータMの回転に伴って回転している。シャフトHbはアイドルシャフトとも呼ばれ、シャフトHxはコンベアシャフトとも呼ばれる。ここでは、モータMによって、印刷機10の印刷およびコンベア110の搬送が駆動される。
【0074】
上述したように、版ロール12および転写ロール14はシャフトHxからべベルギアBgを介して連結された軸とともに回転する。このため、印刷装置100の印刷および搬送は同期している。また、コンベア110のスプロケットはシャフトHbとともに回転する。
【0075】
例えば、スプロケットの直径と版ロール12の直径の比を整数にすることにより、基板の搬送と印刷の同期を簡便に行うことができる。例えば、スプロケットの直径と版ロール12の直径の比は2:1である。あるいは、この比は1:1であってもよい。
【0076】
このように、搬送および印刷の同期を機械的に行う場合、搬送および印刷の同期を簡便に行うことができる。なお、被印刷物Sの搬送速度および印刷周期はモータMの回転を変化させることによって調整可能である。
【0077】
図18を参照した印刷装置100では、印刷および搬送は機械的に同期されたが、本発明はこれに限定されない。印刷および搬送はサーボシステムを用いて同期してもよい。
【0078】
なお、上述した説明では、コンベア110は一定の速度で被印刷物Sを搬送したが、本発明はこれに限定されない。コンベア110が被印刷物Sを搬送する速度は時間ごとに変化してもよい。例えば、コンベア110は被印刷物Sを印刷機10の下に搬送した後、印刷機10が被印刷物Sへの印刷を完了するまでコンベア110は搬送を停止し、印刷機10が被印刷物Sへの印刷を完了した後、コンベア110は搬送を開始してもよい。このように、コンベア110は間欠的に被印刷物Sを搬送してもよい。ただし、印刷処理時間を短縮するために、コンベア110は、一定の速度で被印刷物Sを搬送することが好ましい。
【0079】
また、上述したように、印刷装置100は、ギアの噛み合わせによって駆動する場合、コンベア110の搬送が一定の速度で行われると、ギアが互いに同じ部分で噛み合うため、一定の負荷の下で搬送を行うことができる。しかしながら、コンベア110の搬送速度を変化させたり、コンベア110の搬送を停止する場合、ギアの荷重および接触面が一定とはならないため、あそびを比較的多くとる必要があり、高精度な印刷を行うことができない場合がある。このため、この観点からも、コンベア110の搬送は一定の速度で行われることが好ましい。
【0080】
なお、上述した説明では、シャフト12a、14aの回転の伝達は直接的に行われたが、本発明はこれに限定されない。図19に示すように、シャフト12a、14aの回転の伝達は、例えば、アイドルギア13a、13bを介して行われてもよい。
【0081】
また、上述した説明では、版ロール12を転写ロール14とともに移動させたが、本発明はこれに限定されない。版ロール12を移動させることなく転写ロール14のみを移動させて、転写ロール14が版ロール12から分離されてもよい。転写ロール14の移動は、転写ロール14が版ロール12と衝突しないように垂直またはななめに行われる。例えば、インクKが版ロール12から転写ロール14に転写する際に直径のほぼ等しい版ロール12と転写ロール14をほぼ等しい高さに配置する場合、移動時に、転写ロール14は、X方向およびY方向にほとんど移動させることなくZ方向に移動させることができる。あるいは、転写ロール14は、スイングアームによって移動してもよい。
【0082】
なお、図17に示したように、版ロール12および転写ロール14がギアによって駆動される場合、転写ロール14の移動時に版ロール12と転写ロール14とを切り離すと、ギアの噛み合わせが切り離れることになる。その後、印刷の開始時に、転写ロール14が版ロール12に近接するように移動させてギアを再び噛み合わせることが必要となるが、このとき、ギアが適切に噛み合わないことがある。このため、転写ロール14は版ロール12とともに移動することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、複雑な形状の被印刷物への印刷を好適に行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
10 印刷機
12 版ロール
14 転写ロール
16 支持部材
18 固定部材
20 変位部材
100 印刷装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な版ロールと、
回転可能な転写ロールであって、前記版ロールから転写されたインクを被印刷物に転写させる転写ロールと
を備える、印刷機であって、
前記転写ロールは回転した状態で移動する、印刷機。
【請求項2】
前記転写ロールの移動は、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写した後、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写する前、および、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる、請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記転写ロールは、被印刷物を被加圧面に加圧して前記インクを前記被印刷物に転写させ、
前記転写ロールは、前記被加圧面からの距離が変化するように移動する、請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記版ロールは前記転写ロールとともに移動する、請求項1から3のいずれかに記載の印刷機。
【請求項5】
前記転写ロールは、前記転写ロールの下端部以外の箇所が前記被印刷物と衝突しないように移動する、請求項1から4のいずれかに記載の印刷機。
【請求項6】
前記転写ロールは、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間において前記被印刷物に対する前記転写ロールの印圧がほぼ一定になるように移動する、請求項1から5のいずれかに記載の印刷機。
【請求項7】
前記版ロールおよび前記転写ロールを支持する支持部材と、
固定部材と、
前記固定部材に対する前記支持部材の位置を変化させる変位部材と
をさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の印刷機。
【請求項8】
前記変位部材は、ボールねじ、シリンダ、カム、および、ギアの少なくとも1つを有する、請求項7に記載の印刷機。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の印刷機と、
前記被印刷物を前記印刷機に対して相対的に搬送する搬送部と
を備える、印刷装置。
【請求項10】
前記転写ロールは、前記搬送部によって搬送される前記被印刷物の形状および搬送速度に応じて移動する、請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
インクが、回転する版ロールから回転する転写ロールに転写する工程と、
前記インクが、前記回転する転写ロールから被印刷物に転写する工程と、
前記回転する転写ロールの移動を行う工程と
を包含する、印刷方法。
【請求項12】
前記転写ロールの移動を行う工程において、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写した後、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写する前、および、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる、請求項11に記載の印刷方法。
【請求項1】
回転可能な版ロールと、
回転可能な転写ロールであって、前記版ロールから転写されたインクを被印刷物に転写させる転写ロールと
を備える、印刷機であって、
前記転写ロールは回転した状態で移動する、印刷機。
【請求項2】
前記転写ロールの移動は、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写した後、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写する前、および、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる、請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記転写ロールは、被印刷物を被加圧面に加圧して前記インクを前記被印刷物に転写させ、
前記転写ロールは、前記被加圧面からの距離が変化するように移動する、請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記版ロールは前記転写ロールとともに移動する、請求項1から3のいずれかに記載の印刷機。
【請求項5】
前記転写ロールは、前記転写ロールの下端部以外の箇所が前記被印刷物と衝突しないように移動する、請求項1から4のいずれかに記載の印刷機。
【請求項6】
前記転写ロールは、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間において前記被印刷物に対する前記転写ロールの印圧がほぼ一定になるように移動する、請求項1から5のいずれかに記載の印刷機。
【請求項7】
前記版ロールおよび前記転写ロールを支持する支持部材と、
固定部材と、
前記固定部材に対する前記支持部材の位置を変化させる変位部材と
をさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の印刷機。
【請求項8】
前記変位部材は、ボールねじ、シリンダ、カム、および、ギアの少なくとも1つを有する、請求項7に記載の印刷機。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の印刷機と、
前記被印刷物を前記印刷機に対して相対的に搬送する搬送部と
を備える、印刷装置。
【請求項10】
前記転写ロールは、前記搬送部によって搬送される前記被印刷物の形状および搬送速度に応じて移動する、請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
インクが、回転する版ロールから回転する転写ロールに転写する工程と、
前記インクが、前記回転する転写ロールから被印刷物に転写する工程と、
前記回転する転写ロールの移動を行う工程と
を包含する、印刷方法。
【請求項12】
前記転写ロールの移動を行う工程において、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写した後、前記インクが前記転写ロールから前記被印刷物に転写する前、および、前記インクが前記転写ロールおよび前記被印刷物の両方と接触している期間のうちのいずれかに行われる、請求項11に記載の印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−176585(P2012−176585A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41679(P2011−41679)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(511039500)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(511039500)
【Fターム(参考)】
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