説明

印刷機のロール交換装置における作業員保護装置

【課題】本発明は、作業員保護装置を備えた、印刷機のロール交換装置に関する。その課題は、できるだけ高い信頼性及び低コストで、装着サイドの領域において、臨界印刷の工程時間、すなわち作業員に危険がおよぶ印刷工程時間のみに作業員を保護する印刷機用保護装置付ロール交換装置を提供することにある。
【解決手段】本発明によるロール交換装置においては、例えば、保護ネット(3)の形態の保護装置がロール交換装置の装着サイドに設けられ、該保護装置により、残留紙ロール(6)が臨界直径、すなわち破裂の危険がある直径寸法に近づくと、必ず装着サイド(12)は保護された空間(7)になることを特徴とする構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業員保護装置を備えた、印刷機のロール交換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロール交換装置は従来の技術として知られ、例えば特許文献1又は特許文献2に詳細に記述されている。ロール交換装置には、紙ロールの加工を連続して行えるように、複数のアームを持つ巻取ロールホルダが備わっている。巻取ロールホルダの第1アーム上の紙ロールが消費されると、この巻取ロールホルダの他のアーム上に準備されていた紙ロールが旋回し、この新しい紙ロールのウェブが、ほぼ消費された紙ロールのウェブに接着されるという一定の移行処理が行われた後、新しい紙ロールが製造工程で使用される。
【0003】
消費された紙ロールのために、やはり従来技術として知られている移動台に載せられた新しい紙ロールが、ロールスタンドそして巻取ロールホルダに向かって移動する。以下、近づいてくる移動台とロールスタンドとの間の領域を、装着サイドと呼ぶ。
【0004】
この装着サイド内の領域に入った作業員には、ロール幅が広い場合、完全に消費された、又はほぼ消費された紙ロールのスリーブが、固有振動回転数に到達してバーストすることによる危険が及ぶ。以下、完全に消費された、又はほぼ消費された紙ロールの直径を臨界直径と呼ぶ。紙ロールそしてこの残留スリーブが高い回転速度に到達した場合のスリーブの破損は爆発的であり、大小の多数のスリーブ破片が高速で空中にまき散らされる。
【0005】
したがって、従来技術においては装着サイドの領域に光センサが配置されている。さらに従来技術においては、作業員保護用にロールシャッターが設けられており、装着サイドにおける保護のためにこのロールシャッターは閉めることができる。このロールシャッターは、紙ロールが臨界直径に到達した場合のみに操作できるよう電子制御にするか、又はこのロールシャッターを永久的に閉じておき、専門作業員が装着サイドの領域内で作業をする場合のみ、その都度取り外すかのいずれかにする必要がある。
【特許文献1】欧州特許第0436825号明細書
【特許文献2】欧州特許第1223134号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の従来の技術を鑑みて、本発明の課題は、印刷機用保護装置付ロール交換装置を提供することであり、この保護装置は、できるだけ高い信頼性及び低コストで、装着サイドの領域において、臨界印刷の工程時間、つまり作業員に危険がおよぶ印刷工程時間のみに作業員を保護する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明の独立請求項1により解決できる。その他の従属請求項には、本発明の好適な実施形態が示されている。
【0008】
本発明の基本構成では、印刷機用ロール交換装置はロールスタンドを備え、このロールスタンドの巻取ロールホルダには、加工対象の紙ロールが載置されている。新しい紙ロールの供給は、ロールスタンド前において、床に配置された移動台により行われる。移動台とホルダ装置との間に保護装置が設けられているが、このホルダ装置は、装着サイドにおいてロール交換装置の反対側に設けられている。前記保護装置の面積は可変である。
【0009】
例えば、保護ネットなどの保護装置は少なくとも2点で支持されている。一の支持点は、新しい紙ロールがロールスタンドに搬送されるときにロールスタンドに向かって移動する移動台に設けられている。他の支持点は、固定点、すなわち装着サイド上でロールスタンドに向かい合っているホルダ装置に設けられている。新しいロール供給の際に、移動台は装着サイドから離れていく。例えば、保護装置が保護ネットである場合、移動台がロールスタンドに近づくときに、この保護ネットができるだけ平らな面を構成するように、この保護ネットは垂直の支柱に取り付けられる。
【0010】
ロールスタンド上の紙ロールが終了間近になったときのみに、新しい紙ロールを載せた移動台がロールスタンドに向かって移動する。また、例えば、紙ロールが臨界直径になったとき、つまり、破裂の危険がある状態になったときのみに、保護ネットなどの保護装置が張られる。その他の時間においては、移動台はホルダ装置近くの位置にとどまっていて、ロールスタンドからは離れている。また、保護装置はロール交換装置の前に張られていない。
【0011】
その結果、ロール交換装置付近にいる作業員を、破裂するスリーブの破片から保護することができ、しかも、残留紙ロールの直径に基づいて保護装置を必要とする場合には、常に保護することができる。その他の時間においては、ロール交換装置の装着サイドの領域に自由に立ち入ることができるため、印刷機での作業が行いやすい。この保護装置には補助的なエレクトロニクスやアクチュエータは必要ないため、コンポーネント数が少なくて済み、システムの信頼性も高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態によると、保護装置は移動台の両側に設けられている。すなわち、移動台がロールスタンドの方向に移動する際に、移動台の移動方向に対して平行とされる該移動台の両側は保護される。本発明においては、作業員がこの両側に自由に入れる間は、ロール交換装置の装着サイドにおいて移動台の両側が保護されていることが望ましい。作業員がロールスタンドの両側に自由に入れない間は、保護装置もロールスタンドの両側には必要ではない。
【0013】
本発明のもう一つの好適な実施形態によると、該保護装置、例えば、上述の保護ネットは、一方では、破裂した紙ロールスリーブの破片をこの保護装置により捕捉するために、またもう一方では、印刷機の領域にいる作業員に対してロール交換装置の装着サイドの領域を明確に区切るバリアを提供するように構成されている。つまり、この保護装置は、一方では、連続した平面であるか、又は、飛散する小さな破片も捕捉できるように非常に目の細かいものである必要がある。もう一方では、例えば、典型的な警告カラー及び堅牢な材料を用いて、ロール交換装置の装着サイドの領域にいる専門作業員に対して明確な警告を与え、この専門作業員が短い時間だけこのバリアを除去するのを不可能にする必要がある。バリアの堅牢な特徴を強化するために、さらに、専門作業員が機械を用いず人の手によってこの保護装置を除去できないようにすることも、又は専門作業員がこの保護装置を除去した場合には、少なくとも一つのよく目立つ警告ランプ及び/若しくはよく響く警告サイレンが発生するようにすることもできる。
【0014】
本発明のもう一つの実施形態によると、作業員が保護装置とロールスタンドとの間に挟まれないように、保護装置に挟み込み防止装置が設けられている。この挟み込み防止装置はまた、保護装置とホルダ装置との間に作業員が挟まれないようにする役割がある。例えば、この挟み込み防止装置は保護ネットに取り付けられたスプリング付きバーの形で提供され、移動台からロールスタンドの方向に移動する。このスプリング付きバーは、保護装置として利用される保護ネットが取り付けられたフレームの構成部材とすることもできる。その場合、該フレームのエンドピースは移動台に取り付けられる。
【0015】
フレームのもう一つの構成部材として、ホルダ装置とロールスタンドとの間に配置されたスライドレールが挙げられる。このときホルダ装置として、例えば、パーティションが用いられる。このとき、該スライドレールはロールスタンド及びホルダ装置に固定できる。この実施形態においては、スライドレールをなるべく高い位置に設置して、保護装置を除去した状態で専門作業員がスライドレールの下を通過できるようにしておくことに留意すべきである。
【0016】
図1(a)は、第1配置状態、すなわち、移動台2がロールスタンド10に直接接している配置状態におけるロール交換装置1を示している。この状態においては、本発明のこの第1の実施形態によると、装着サイドにおいて、保護ネット3はこのロールスタンドの前に張られている。そのために、保護ネット3は、本発明のホルダ装置として機能するパーティション5及び移動台2に取り付けられている。保護ネットの移動は、パーティション5とロールスタンド10との間に固定されているスライドレール4によりガイドされる。移動台のこの第1配置状態においては、臨界直径を持つ残留ロール6はロールスタンド10内にある。
【0017】
図1(b)は、本発明のロール交換装置1の第2配置状態を示している。この配置状態において、移動台2はパーティション5に接しているため、保護ネット3はカーテンのように畳まれ、装着サイド12まで自由に往復可能とされる。
【0018】
図2(a)は、第1の実施形態のロール交換装置の第1配置状態における上面図である。この上面図から、保護ネット3は、ロールスタンド10の両側、及び移動台2の上の領域(すなわち、スライドレール4の間)にも広げられていることが分かる。つまり、2本のスライドレール4及び3本のスプリング付きバー8からなる一つのフレーム14は、ロールスタンド10とパーティション5との間に配置されているため、保護空間7が生まれる。
【0019】
図2(b)は、移動台がパーティション5に接しているときのロール交換装置の上面図である。この第2配置状態(すなわち、装着サイドが保護ネットにより保護されていない状態)のときにも、潜在的に危険な領域にいる作業員に対して危険な状態への注意を喚起し、光センサ9による領域保護を設けることは有位である。光センサから発せられた信号に基づいて、ロール交換装置の領域内にいる作業員に対して視覚的又は聴覚的なサインを出すことができる。
【0020】
図3(a)は、本発明によるもう一つの実施形態を示している。図3(a)には、本発明による移動台2及びこの上にあって第1配置状態、すなわち保護装置が閉じた配置状態にある格子部材15のみが示されている。この実施形態においては、保護ネットではなく格子が使われている。この格子の面積を可変に保つために、この格子は複数の格子部材から構成されている。これら格子部材は互いにスライド可能で、互いに接続されているため、移動台に取り付けられている第1格子部材は、その他の格子部材を引き連れて移動する。最後の格子部材をその位置にとどめるための保持装置として、第1実施形態のパーティション5ではなく、フロアアンカー11を選ぶこともできる。図3(b)は、本発明の第2実施形態において、第2配置状態、すなわち装着サイドが保護装置により保護されていない配置状態を示している。この実施形態における保護装置のための適切な挟み込み防止装置を設けるために、例えば、図3(c)に示すようなクランピングスプリング13が用いられる。移動台に取り付けられている第1格子部材15は、レールにつながるクランピングスプリングのみに取り付けられている。図3(a)に示すように、力Fが第1格子部材に対して作用する場合には、第1格子部材のアンカーは図3(c)のスプリングの丸い取り付け部から外れて、移動台2に取り付けられているレールに嵌る。ロールスタンドと移動台との間に作業員がいる場合であっても、該作業員が格子部材15に挟まれることはない。
【0021】
図4は、本発明の第3の実施形態を示す。該実施形態においても、本発明の第2実施形態と同様に保護装置は格子部材15から構成されるが、この格子部材15は互いに平行にスライドするのではなく、アコーディオンの蛇腹のように互いに折り畳まれたり離れたりする。また、この実施形態は、アコーディオンの蛇腹のように面積を変えられるフレキシブルな材料から作られたベローズにより実現することもできる。この実施形態においても、図3(c)に示す挟み込み防止装置13が設けられている。
【0022】
図5(a)及び図5(b)は、本発明の第4の実施形態を示す。図5(a)及び図5(b)には、図2(a)及び図2(b)に示したようなロール交換装置の2つの運転状態の上面図が示されている。この実施形態は、保護装置としてロールシャッター16が用いられている点が他の実施形態とは異なる。このロールシャッター16は移動台の各サイドに設けられていることが望ましい。折り畳まれた状態、すなわち装着サイドに自由に行き来できる場合においては、図5(b)に示すようにロールシャッター16の各部分は互いに折り畳まれている。しかし、ロールシャッター16を巻上げるなど、従来技術として知られているスペースを節約するその他の技術も考慮できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)本発明のロール交換装置の側面図であり、保護ネットは閉じている状態と、(b)本発明のロール交換装置の側面図であり、保護ネットは開いている状態を表わす。
【図2】(a)本発明のロール交換装置の上面図であり、保護ネットは閉じている状態と、(b)本発明のロール交換装置の上面図であり、保護ネットは開いている状態を表わす。
【図3】(a)本発明の一つの実施例による移動台の側面図と、(b)格子部材が折り畳まれた状態における移動台の側面図と、(c)本発明のある実施形態のための挟み込み防止装置を表わす。
【図4】本発明の保護装置のもう一つの実施形態である。
【図5】(a)ロール交換装置の上面図であり、ロールシャッターは閉じている状態と、(b)ロール交換装置の上面図であり、ロールシャッターは開いている状態を表わす。
【符号の説明】
【0024】
1 ロール交換装置
2 移動台
3 保護ネット
4 スライドレール
5 パーティション
6 臨界直径を持つ残留ロール
7 保護空間
8 スプリング付きバー
9 光センサによる領域保護
10 ロールスタンド
11 フロアアンカー
12 装着サイド
13 挟み込み防止装置
14 フレーム
15 格子部材
16 ロールシャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
加工対象のロールを載せるロールスタンド(10)及び、加工対象のロールを装着サイド(12)からロールスタンド(10)に供給する移動台(2)を備え、
装着サイド(12)上においてホルダ装置(5、11)と移動台との間の領域を保護するために、移動台(2)及びホルダ装置(5、11)に取り付けられた、面積が可変の保護装置(3)を特徴とするロール交換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
保護装置(3)が、移動台(2)の両サイド及び/又は移動台(2)の上方に設けられていることを特徴とするロール交換装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のいずれか一つに記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
保護装置(3)は、破裂する紙ロールスリーブの破片に対して保護するために構成されていることを特徴とするロール交換装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
保護装置(3)が、装着サイド(12)上の領域のためのよく目立つバリアとして構成されていることを特徴とするロール交換装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
作業員が、保護装置(3)とロールスタンド(10)及び/又はホルダ装置(5、11)との間に挟みこまれるのを防ぐために、保護装置(3)に挟み込み防止装置(13)が設けられていることを特徴とするロール交換装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
装着サイド上の領域を保護するために、少なくとも一つの光センサが設けられていることを特徴とするロール交換装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
保護装置(3)が、移動台(2)の上方でスライドレール(4)によりロールスタンド(10)とホルダ装置との間をガイドされることを特徴とするロール交換装置。
【請求項8】
請求項7に記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
スライドレール(4)が、テレスコープのように引き出せる部材から構成されており、移動台(2)に取り付けられているか又はロールスタンド(10)に取り付けられていることを特徴とするロール交換装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
複数のスライドレール(4)が一つのフレーム(14)に接続されており、これらスライドレール(4)はスプリング付きバー(8)に接続されていることを特徴とするロール交換装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一つに記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
面積が可変の保護装置(3)が、保護ネット、特にプラスチック製の保護ネットであることを特徴とするロール交換装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一つに記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
面積が可変の保護装置(3)が、互いにスライドできる硬い格子部材(15)であることを特徴とするロール交換装置。
【請求項12】
請求項1から請求項10までのいずれか一つに記載の、印刷機のためのロール交換装置(1)であって、
面積が可変の保護装置(3)がロールシャッター(16)又はベローズであることを特徴とするロール交換装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−99520(P2007−99520A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272135(P2006−272135)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(599011584)エム・アー・エヌ・ローラント・ドルックマシーネン・アクチエンゲゼルシャフト (257)
【Fターム(参考)】