説明

印刷機の電子機器用中継箱

【課題】ケーブルの断線を防止し、機械の稼働率を高くする。
【解決手段】移動部材30に固定された第2の電子機器用中継箱10から引き出された第1のケーブル5は移動部材30に固定されたセンサ31,32に電気的に接続されている。ケーブル36を介して制御装置に接続され固定部材に固定された第1の電子機用中継箱10と第2の電子機器用中継箱10とを電気的に接続する第2のケーブル7は可撓性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動部材に固定された電子機器から引き出されたケーブルを中継する印刷機の電子機器用中継箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、印刷機に装備された安全カバーや版交換用のローダ等の移動に使用されるエアシリンダのアクチュエータとしてのピストンには、センサ等の電子機器が固定されており、この電子機器から引き出されたケーブルは、エアシリンダの近傍に固定された電子機器用中継箱に中継されてから制御装置に電気的に接続されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような従来の印刷機の電子機器用中継箱においては、電子機器から引き出されたケーブルが直接電子機器用中継箱に接続された構造であるため、ピストンが移動する度にケーブルも移動するため、ケーブルに引張りや屈曲あるいはねじれが発生する。これら引張りや屈曲あるいはねじれが繰り返されると、ケーブルが短期間で断線することがあり、その修理に時間がかかるため機械の稼働率が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ケーブルの断線を防止し、機械の稼働率を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、移動部材と、前記移動部材に固定された電子機器と、固定部材に固定された第1の電子機器用中継箱とを備えた印刷機の電子機器用中継箱において、前記電子機器から引き出される第1のケーブルが電気的に接続される第1のコネクタと、前記第1の電子機器用中継箱から引き出される第2のケーブルが電気的に接続される第2のコネクタと、互いに電気的に接続された前記第1および第2のコネクタを支持し、前記移動部材に固定された第2の電子機器用中継箱とを備え、前記第2のケーブルが可撓性を有するものである。
【0006】
本発明は、前記発明において、前記第2の電子機器用中継箱を開閉自在で一面が開口された二つのケースによって形成し、これら二つのケースのそれぞれに前記第1および第2のコネクタを弾持する弾性変形可能なホルダーを収容したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子機器から引き出される第1のケーブルは、移動部材と一体的に移動するため、移動部材の移動によっても断線するようなことがない。一方、移動部材と第1の電子機器用中継箱との間に配線された第2のケーブルが可撓性を有するので、移動部材の移動によって、第2のケーブルに引張りや屈曲あるいはねじれが発生しても、第2のケーブルが断線しずらいため、その修理の間隔を長くすることができるから機械の稼働率を高くすることができる。
【0008】
前記発明のうちの一つの発明によれば、二つのケースを開き、二つのホルダー間にコネクタを収容し、二つのケースを閉じれば、コネクタがケース内に固定できるため、コネクタの固定作業が容易になる。固定されたコネクタは、弾性変形可能なホルダーによって弾持されるため、コネクタやコネクタから引き出されるケーブルにストレスを与えることがないばかりかコネクタやケーブルを外力から保護することができる。また、二つのケース内に弾性変形可能なホルダーを収容したことにより、ケースの密閉性が向上するので、ケース内への粉塵の侵入を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る印刷機の電子機器用中継箱を開いた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る印刷機の電子機器用中継箱にコネクタを収容した状態を示す平面図である。
【図3】本発明に係る印刷機の電子機器用中継箱の背面図である。
【図4】本発明に係る印刷機の電子機器用中継箱に収容するコネクタの斜視図である。
【図5】本発明に係る印刷機の電子機器用中継箱を使用している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
【0011】
図4に全体を符号1で示すものは、従来から広く知られているコネクタであって、第1のコネクタとしてのプラグ2と、このプラグ2が着脱自在に嵌合される凹部3が設けられ、プラグ2が嵌合されることにより互いに導通する第2のコネクタとしてのレセプタクル4とによって構成されている。プラグ2に電気的に接続される第1のケーブル5は、後述する電子機器としてのセンサから引き出される。
【0012】
レセプタクル4の外周部には鍔6が全周にわたって突設されており、このレセプタクル4から導出される複数本の第2のケーブル7はチューブ8によって束ねられている。この第2のケーブル7およびチューブ8は共に可撓性を有する材料によって形成されている。プラグ2をレセプタクル4の凹部3に嵌合することにより、これらプラグ2およびレセプタクル4を介して第1および第2のケーブル5,7が電気的に接続される。
【0013】
図1に全体を符号10で示すものは、本発明の特徴である第2の電子機器用中継箱であって、上ケース11および下ケース12と、これら上・下ケース11,12内に収容されるホルダー13,14とによって構成されている。上ケース11は、上面部15と背面部16とのそれぞれに開口された箱状を呈しており、一方の側面部に起伏自在に支持され先端部に爪17aを有する係合片17が一体に突設されている。
【0014】
下ケース12は、上ケース11と同じ形状に形成され、上面部18と背面部19とのそれぞれに開口された箱状を呈しており、一方の側面部に上記した係合片17の爪17aが係合する凸条体20が一体に突設されている。これら上・下ケース11,12は、上・下ケース11,12が開閉自在となるように互いに隣接する側面部間が可撓性を有するヒンジ22によって連結されている。すなわち、互いの上面部15,18を対向させるようにヒンジ22を折り曲げることにより、係合片17の爪17aが凸条体20に係合され、背面部16,19のみが開口されたケース23が形成される。
【0015】
ホルダー13,14は共に同じ形状を有しており、全体が弾性変形可能な材料であるスポンジによって偏平な直方体に形成され、中央部に直方体状の凹部13a,14aが設けられている。ホルダー13,14の高さH2は、上ケース11および下ケース12の高さH1よりもやや大きく形成されている。これらホルダー13,14は、上ケース11と下ケース12とのそれぞれに嵌合され収容される。
【0016】
このような構成において、図4に示すように、第1のケーブル5の一端部が電気的に接続されたプラグ2をレセプタクル4の凹部3に嵌合することにより、第1および第2のケーブル5,7が電気的に接続されたコネクタ1を、図2に示すように、下ケース12のホルダー14の凹部14aに収容する。収容されたコネクタ1は鍔6がホルダー14に弾持されることにより下ケース12に固定され、第1のケーブル5は凹部14a内で折り返され第2のケーブル7とともに下ケース12の背面部19から引き出される。
【0017】
次いで、上ケース11の上面部15を下ケース12の上面部18に対向させるようにヒンジ22を折り曲げ、係合片17の爪17aを凸条体20に係合させることにより、背面部16,19のみが開口されたケース23を形成する。この状態で、第1および第2のケーブル5,7は、図3に示すように二つのホルダー13,14の互いの対接面の間から上・下ケース11,12の背面側に引き出される。
【0018】
このとき、ホルダー13,14の高さH2が上ケース11および下ケース12の高さH1よりもやや大きく形成されていることにより、ホルダー13,14が弾性変形した状態で互いに対接するため、上・下ケース11,12の密閉性がよくなり、塵埃の侵入を規制することができる。
【0019】
このように、二つの上・下ケース11,12を開き、二つのホルダー13,14間にコネクタ1を収容し、二つの上・下ケース11,12を閉じれば、コネクタ1がケース23内に固定できるため、コネクタ1の固定作業が容易になる。固定されたコネクタ1は、弾性変形可能なホルダー13,14によって弾持されるため、コネクタ1やコネクタ1から引き出される第1および第2のケーブル5,7にストレスを与えることがないばかりかコネクタ1や第1および第2のケーブル5,7を外力から保護することができる。
【0020】
第1および第2のケーブル5,7が上・下ケース11,12の背面側に引き出された第2の電子機器用中継箱10を、図5に示すように矢印A−B方向に移動する移動部材30の上面に固定する。第2の電子機器用中継箱10から引き出された第1のケーブル5の他端部は、移動部材30の側面に固定された電子機器としてのセンサ31,32に電気的に接続されている。なお、図5においては、第2の電子機器用中継箱10から引き出された多数本の第1のケーブル5のうち、二本のみを図示し、他の第1のケーブル5は説明の便宜上図示を省略している。一方、第2のケーブル7は、移動部材30の近傍にブラケット34を介して印刷機の固定部材(図示せず)に固定され、ケーブル36を介して制御装置(図示せず)に接続された第1の電子機器用中継箱33に導入される。
【0021】
このように、センサ31,32から引き出された第1のケーブル5は、移動部材30と一体的に移動するため、移動部材30の移動によっても断線するようなことがない。一方、移動部材30と第1の電子機器用中継箱33との間に配線された第2のケーブル7は可撓性を有しているので、移動部材30の移動によって、第2のケーブル7に引張りや屈曲あるいはねじれが発生しても、第2のケーブル7が断線しずらいため、仮に断線したとしても修理の間隔を長くすることができるから機械の稼働率を高くすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1…コネクタ、2…プラグ(第1のコネクタ)、4…レセプタクル(第2のコネクタ)、5…第1のケーブル、7…第2のケーブル、10…第2の電子機器用中継箱、11…上ケース、12…下ケース、13,14…ホルダー、17…係合片、20…凸条体、30…移動部材、33…第1の電子機器用中継箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部材と、
前記移動部材に固定された電子機器と、
固定部材に固定された第1の電子機器用中継箱とを備えた印刷機の電子機器用中継箱において、
前記電子機器から引き出される第1のケーブルが電気的に接続される第1のコネクタと、
前記第1の電子機器用中継箱から引き出される第2のケーブルが電気的に接続される第2のコネクタと、
互いに電気的に接続された前記第1および第2のコネクタを支持し、前記移動部材に固定された第2の電子機器用中継箱とを備え、
前記第2のケーブルが可撓性を有することを特徴とする印刷機の電子機器用中継箱。
【請求項2】
前記第2の電子機器用中継箱を開閉自在で一面が開口された二つのケースによって形成し、これら二つのケースのそれぞれに前記第1および第2のコネクタを弾持する弾性変形可能なホルダーを収容したことを特徴とする請求項1記載の印刷機の電子機器用中継箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−106425(P2012−106425A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257499(P2010−257499)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】