説明

印刷機

【課題】 枚葉紙に印刷されたインキの乾燥を促進するとともに、メンテナンスを容易にすることができる印刷機を提供する。
【解決手段】 印刷用紙Pを搬送している間に、インキが印刷用紙Pに転写される圧胴17と、インキが転写された印刷用紙Pを搬送する中間胴18と、印刷用紙Pに転写されたインキを乾燥させる乾燥部51と、圧胴18の回転軸に沿って延びる回動軸線周りに乾燥部51を回動可能に支持することにより、乾燥部51を圧胴17に対して接近離間させる支持部53と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機、特に枚葉紙を印刷する枚葉印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来に、枚葉印刷機においては、印刷された枚葉紙は一晩かけて印刷されたインキを乾燥させていた。乾燥された枚葉紙は、後工程に流され、裁断等されていた。
しかしながら、近年においては、枚葉紙に印刷した後、裁断等を行ないたいという要求があり、枚葉印刷機においても、印刷されたインキを乾燥させる乾燥機を備える必要性が高まっていた。
そこで、上記の要求を満たすために、インキを乾燥させる乾燥機を搭載した枚葉印刷機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−125739号公報 (第3頁、第1図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1においては、胴に合った凹状輪郭を有する風案内部と、モジュール式の送風部と、を有する乾燥機を備えた枚葉印刷機の構成が開示されている。
上述の構成においては、熱風と赤外線とを組み合わせた乾燥機を用いることにより、紙に印刷されたインキを乾燥させることができると記載されている。送風部から送風された熱風は風案内部に流入して、風案内部が上記胴の直前まで熱風を導いている。そのため、送風部から吹き出した熱風を、上記胴の上の印刷された紙に吹き付けることができると記載されている。
また、上述の乾燥機は、送風部を上記胴の回転軸方向にスライド移動させるとともに、風案内部を回転ジョイント周りに回動させることができる。このようにすることにより、上記胴のメンテナンスを容易に行うことができると記載されている。
しかしながら、上記枚葉印刷機の乾燥機においては、送風部と風案内部との間に隙間が形成されている。そのため、送風部から送風された熱風の一部は、上記隙間から流出し、インキの乾燥に用いられていなかったという問題があった。また、送風部と上記胴との間隔が離れているため、送風部から吹き出された熱風の温度が、上記胴の上の紙に吹き付けられたときには低下するため、乾燥を促進させることが難しいという問題があった。
また、送風部と上記胴との間に風案内部が配置され、間隔が離れていた。そのため、送風部から上記胴の上に照射される赤外線の強度が低下し、インキの乾燥を促進させることが難しいという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、送風部を上記胴に接近させ、風案内部を廃止する方法も考えられる。
しかしながら、この構成においては、上記胴のメンテナンスを行うことが困難になるという問題があった。つまり、枚葉印刷機において、上記胴の側部には、種々の機構が配置されている。そのため、上記胴に接近配置された送風部は、上記種々の機構と干渉するため、上記胴の回転軸方向にスライド移動させることができない。その結果、上記胴は、送風部に覆われた状態のままとなるため、上記胴のメンテナンスが困難であるという問題があった。また、送風部を取り出すことができないため、送風部のメンテナンスも困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、枚葉紙に印刷されたインキの乾燥を促進するとともに、メンテナンスを容易にすることができる印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の印刷機は、印刷用紙を搬送している間に、インキが前記印刷用紙に転写される圧胴と、インキが転写された前記印刷用紙を搬送する中間胴と、前記印刷用紙に転写されたインキを乾燥させる乾燥部と、前記圧胴の回転軸に沿って延びる回動軸線周りに前記乾燥部を回動可能に支持することにより、前記乾燥部を前記圧胴に対して接近離間させる支持部と、を備えることを特徴とする印刷機。
【0007】
本発明によれば、乾燥部を圧胴に対して接近離間可能に支持する支持部を備えるため、印刷用紙に印刷されたインキの乾燥を促進するとともに、圧胴および乾燥部のメンテナンスを容易にすることができる。
支持部は、圧胴の回転軸線に沿って延びる回転軸周りに乾燥部を回動可能に支持するため、乾燥部を圧胴に接近させたときには、圧胴の近傍領域にまで接近させることができる。そのため、乾燥部をインキが転写された印刷用紙の近傍にまで接近させることができ、インキの乾燥を促進させることができる。
一方、乾燥部を圧胴から離間させたときには、乾燥部を圧胴から離れた位置にまで移動させることができるため、例えば、乾燥部を圧胴から離れた位置において、圧胴の回転軸線方向へスライド移動させることができる。そのため、乾燥部のメンテナンスを容易に行うことができる。乾燥部をスライド移動させることにより、圧胴と乾燥部との間に外部と繋がる空間を形成でき、圧胴へのアクセスを容易にすることができる。
乾燥部が、圧胴の回転軸に対して略垂直な面内で移動するため、例えば、圧胴や中間胴の側部に種々の機構が配置されていても乾燥部を移動させることができ、乾燥部のメンテナンスを容易にすることができる。
【0008】
上記発明においては、前記支持部を前記圧胴または前記中間胴から離れる方向に押し上げる押し上げ部を備えることが望ましい。
【0009】
本発明によれば、押し上げ部を備えることにより、圧胴および乾燥部のメンテナンスを容易にすることができる。
押し上げ部材は、支持部を圧胴から離れる方向に押し上げることにより、支持部に支持されている乾燥部を圧胴から離れる方向に押し上げている。例えば、作業者が圧胴または乾燥部のメンテナンスを行う場合、押し上げ部の押し上げ力により支持部および乾燥部を圧胴から離間させることができる。そのため、作業者の力により支持部および乾燥部を圧胴から離間させる必要がなくなり、圧胴または乾燥部のメンテナンスを容易にすることができる。
【0010】
上記発明においては、前記乾燥部が、前記支持部の上で前記圧胴から離れる方向に回動可能に支持されていることが望ましい。
【0011】
本発明によれば、乾燥部が、支持部の上で圧胴から離れる方向に回動するため、圧胴のメンテナンスを容易にすることができる。
乾燥部を支持部の上で圧胴から離れる方向に回動させることにより、圧胴に接近して配置された乾燥部を、圧胴から離間させて外部と繋がる空間を形成することができる。この空間を通じて外部から圧胴にアクセスすることができ、圧胴のメンテナンスを容易にすることができる。
支持部を回動させることなく圧胴のメンテナンスを行うことができるため、支持部を回動させる方法と比較して、圧胴のメンテナンスを容易にすることができる。
【0012】
上記発明においては、前記支持部が、前記乾燥部を前記圧胴の回転軸線方向に移動可能に支持する移動支持部を備えることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、支持部が、乾燥部を圧胴の回転軸線方向に移動可能に支持する移動支持部を備えるため、乾燥部のメンテナンスを容易にすることができる。
移動支持部により乾燥部が圧胴の回転軸線方向に移動されるため、乾燥部を圧胴から更に離間させて外部と繋がるより大きな空間を形成することができる。そのため、圧胴をメンテナンスする際に、乾燥部が邪魔にならず、メンテナンスをより容易にすることができる。
乾燥部は、移動支持部により圧胴の回転軸線方向に移動されるため、乾燥部をより広い空間へ移動させることができる。そのため、乾燥部のメンテナンスをより容易にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の印刷機によれば、乾燥部を圧胴に対して接近離間可能に支持する支持部を備えるため、印刷用紙に印刷されたインキの乾燥を促進するとともに、圧胴および乾燥部のメンテナンスを容易にすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る枚葉印刷機について図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る枚葉印刷機の構成を説明する断面図である。
本実施例における枚葉印刷機(以下、単に「印刷機」という。)1は、被印刷物である枚葉紙(印刷用紙)Pの表面および裏面を印刷する両面印刷機である。印刷機1は、被印刷物である枚葉紙Pが供給される上流側から下流側に向けて、給紙装置3と、枚葉紙の表面を印刷する複数の印刷ユニット5aと、枚葉紙の表裏を反転させる反転ユニット21と、枚葉紙の裏面を印刷する複数の印刷ユニット5bと、排紙装置7とを備えている。
給紙装置3は、積層されたシート状の被印刷物を一枚ずつ供給する装置である。
【0016】
排紙装置7は、印刷後の被印刷物を回収して積層する装置である。排紙装置7には、印刷物の印刷状態を把握するための撮像装置(図示せず)が設けられている。
排紙装置7には、印刷後の枚葉紙Pにマーキング等を施す排紙識別装置(図示せず)が設けられている。排紙識別装置としては、例えば、所定の枚葉紙Pに対して付箋を付すテープインサータや、所定の枚葉紙Pを他の枚葉紙Pから分けて積層する二連デリベリ等が用いられる。
【0017】
印刷ユニット5a,5bは、図1に示すように、複数設けられている。本実施形態においては枚葉紙Pの表面を4つの印刷ユニット5aで印刷し、その後、枚葉紙Pの裏面を4つの印刷ユニット5bで印刷する印刷機1に適用して説明する。
【0018】
各印刷ユニット5a,5bは、インキを供給するインキ装置9と、インキ装置9に対向配置される版胴13と、この版胴13に対向配置されたゴム胴(ブランケット胴)15と、このゴム胴15に対向配置された圧胴17と、各印刷ユニット5a,5bの圧胴17間に配置される中間胴18とを備えている。
【0019】
各印刷ユニット5a,5bは、図1に示すように、インキを供給するインキ装置9と、湿し水を供給する湿し装置11と、これらインキ装置9と湿し装置11に対向配置される版胴13と、この版胴13に対向配置されたゴム胴15と、このゴム胴15に対向配置された圧胴17と、各印刷ユニット5a,5bの圧胴17間に配置される中間胴18とを備えている。
【0020】
インキ装置9は、複数のインキローラを備えており、インキが貯留されたインキ壺から順次インキを版胴13側へと供給するようになっている。インキ装置9は、印刷時に版胴13に対して接触する4本のインキ着けローラを備えている。
【0021】
湿し装置11は、複数のローラを備えており、水舟に貯留された湿し水を版胴13側へ供給するようになっている。湿し装置11は、印刷時に版胴に対して接触する1本の湿しローラを備えている。
【0022】
版胴13は、印刷用画像が形成された刷版が外周に巻回された円筒状とされている。刷版は、印刷すべき画像毎に作成され、交換される。版胴13は、外周の一部の角度範囲が軸線方向に切り欠かれた状態となっており、このギャップに、刷版の上流端である版頭および刷版の下流端である版尻を掴んで固定する版締め装置(図示せず)が設けられている。
【0023】
ゴム胴15の外周には、ゴムなどから形成されたブランケットが巻回されている。ゴム胴15は、外周の一部の角度範囲が軸線方向に切り欠かれた状態となっており、このギャップに、ゴムの上流端および下流端を掴んで固定するゴム締め装置(図示せず)が設けられている。
ゴム胴15は、印刷を行わない非印刷時等には、版胴13から離間させる(胴抜き)ことができるようになっている。
【0024】
圧胴17は、ゴム胴15に対向配置され、円筒状とされている。圧胴17は、印刷時にゴム胴15に接触し、ゴム胴15との間に供給される被印刷物を所望の圧力で押圧する。
【0025】
中間胴18は、各印刷ユニット5の圧胴17間に設けられ、円筒状とされている。中間胴18によって、上流側の圧胴17から下流側の圧胴17へと被印刷物である枚葉紙Pが送られる。
【0026】
上述の版胴13、ゴム胴15及び圧胴17,中間胴18は、印刷機1に設けられた一つのメインモータ(図示せず)によって回転させられる。つまり、メインモータからの回転力がギアを介して圧胴17、中間胴18及びゴム胴15、版胴13に伝達されるようになっている。
【0027】
図2は、図1における印刷ユニットの構成を説明する部分断面図である。
各印刷ユニット5a,5bは、図2に示すように、枚葉紙Pに印刷されたインキを乾燥させる乾燥装置(乾燥部)51と、乾燥装置51を圧胴17に対して接近離間可能に支持する支持部53と、をさらに備えている。
また、印刷ユニット5a,5bの筐体であるフレーム55には、図1に示すように、インキ装置9、湿し装置11などが内部に配置される凸部57が形成されている。図2に示すように、隣り合う印刷ユニット5a,5aにおける凸部57,57間、または、印刷ユニット5b,5bにおける凸部57,57の間には、作業者が通行できる空間59が形成されている。空間59の底面にあたるフレーム55には、作業者の踏み板となるユニット間ステップ61が配置され、ユニット間ステップ61の下方(図2の下方)には、凹状の切り欠き部63が形成されている。つまり、ユニット間ステップ61は切り欠き部63を覆うように配置されている。
切り欠き部63には、乾燥装置51に電力を供給する配線を配置してもよいし、通気ダクトとして用いてもよい。
ユニット間ステップ61は、枚葉紙Pの流れ方向に対して下流側の印刷ユニット5aまたは印刷ユニット5bに対して回動可能に固定されている。
【0028】
乾燥装置51は、枚葉紙Pに印刷されたインキを乾燥させるものであって、例えば、紫外線(以後、UVと表記する。)を照射するUV照射型乾燥装置である。なお、乾燥装置51としては、上記のUV照射型乾燥装置であってもよいし、赤外線を照射する乾燥装置であってもよいし、熱風を吹き付ける乾燥装置であってもよく、インキの乾燥特性に合わせて使用すればよく、特に限定するものではない。
【0029】
図3は、図2の乾燥装置51および支持部53が圧胴17から離間した状態を説明する部分断面図である。
支持部53は、乾燥装置51を支持するものであり、回動軸67周りに回動して、乾燥装置51を圧胴17に対して接近離間させるものである。
具体的には、支持部53は、図2に示すように、乾燥装置51を下方に回動させたときには、乾燥装置51が圧胴17の近傍にまで接近させることができる。
一方、乾燥装置51を上方に回動させたときには、図3に示すように、乾燥装置51を圧胴17の回転軸線方向にスライド移動させることができる位置にまで離間させることができる。乾燥装置51をスライド移動させたことにより、空間59から圧胴17にアクセスすることができる。
【0030】
支持部53は、図2に示すように、一対の回動部材65と、回動部材65の一方の端部に設けられた回動軸67と、一対の回動部材65にわたって設けられた2本のレール(移動支持部)69と、支持部53を圧胴17から離間する方向に付勢するバネ部(押し上げ部)71とを備えている。
【0031】
回動部材65は、略L字状に折り曲げられた棒状の部材であり、それぞれ印刷ユニット5a,5bにおける操作側のフレーム(例えば、図2の紙面に対して手前側のフレーム)および駆動側のフレーム(例えば、図2の紙面に対して奥側のフレーム)に配置されたものである。回動部材65は、略平行に並んで配置され、印刷装置1における操作側(例えば、図2の紙面に対して手前側)に配置された回動部材65は、作業者がつかめるように(レバーとして)構成されている。作業者は、操作側に配置された回動部材65をつかみ支持部53および乾燥装置51を圧胴17に対して接近離間するように回動させることができる。
【0032】
回動軸67は、回動部材65をフレーム55に対して回動可能に支持するものであり、圧胴17の上方、かつ、空間59の底面の近傍に配置されている。また、回動軸67は、圧胴17の回転軸線に沿って延びる回動軸線を有するものである。
レール69は、乾燥装置51を圧胴17の回転軸線方向に移動可能に支持するものである。2本のレール69は、圧胴17の回転軸線方向に延びるように並んで配置され、一対の回動部材65を繋ぐように配置されている。
バネ部71は、一方の端部が回動部材65に固定され、他方の端部がフレーム55に固定された部材である。バネ部71は、乾燥装置51が圧胴17に接近配置された状態では圧縮され、乾燥装置51および支持部53を圧胴17から離間させる方向に付勢するものである。なお、バネ部71としては、コイルバネなどの公知のバネを用いることができる。また、上述のように支持部53を付勢する手段としてバネ部71を用いてもよいし、その他の付勢手段を用いてもよく、特に限定するものではない。
【0033】
次に、上記の構成からなる印刷機1における働きについて説明する。
まず、図1に示すように、給紙装置3から枚葉紙Pが1枚ずつ送り出される。枚葉紙Pは、最初の4つの印刷ユニット5aを通過する際に、表面の印刷が施される。その後、枚葉紙Pは反転ユニット21により表裏を反転される。
裏面に反転された枚葉紙Pは、下流側に位置する4つの印刷ユニット5bを通過する際に、裏面に印刷が施される。このように両面印刷が施された枚葉紙Pは、排紙装置7へと送られる。
【0034】
次に、本実施形態の特徴である乾燥装置の働きについて説明する。
印刷ユニット5a,5bにおいて所定のインキが印刷された枚葉紙は、図2に示すように、圧胴17により中間胴18に向けて搬送される。インキが印刷された枚葉紙には、乾燥装置51と対向する領域において、乾燥装置51から出射される紫外線が照射され、枚葉紙上のインキは乾燥する。インキが乾燥した枚葉紙は、圧胴17から中間胴18へ搬送され、中間胴18から次の印刷ユニット5a,5bの圧胴17へ搬送される。
上述の工程が繰り返されることにより、各印刷ユニット5a,5bにおいて印刷および乾燥の両工程が行われる。
【0035】
次に、本実施形態の特徴である圧胴17または乾燥装置51のメンテナンス方法について説明する。
圧胴17または乾燥装置51のメンテナンスを行う場合には、まず、図3に示すように、ユニット間ステップ61を上方に回動させ、切り欠き部63内に配置された乾燥装置51を外部に露出させる。そして、回動部材65をつかみ、乾燥装置51および支持部53を圧胴17から離間する方向に回動させる。このとき、バネ部71の付勢力が働くため、乾燥装置51および支持部53を回動させる力は小さくて済む。あるいは、バネ部71の付勢力のみで、乾燥装置51および支持部53が圧胴17から離間する方向に回動する。
【0036】
乾燥装置51を切り欠き部63にまで回動すると、つぎに、乾燥装置51をレール69に沿って圧胴17の回転中心軸線に沿ってスライド移動させる。例えば、印刷ユニット5a,5bの操作側(図3の手前側)に乾燥装置51をスライド移動させる。
乾燥装置51が移動すると、空間59と圧胴17との間には、支持部53のみが配置された状態となる。支持部53は回動部材65とレール69との組み合わせのため、空間59と圧胴17との間に圧胴17へアクセス可能な空間が形成される。作業者は、この空間を通じて圧胴17のメンテナンスを行う。
一方、乾燥装置51は、レール69をスライド移動された状態でメンテナンスされる。
【0037】
上記の構成によれば、乾燥装置51を圧胴17に対して接近離間可能に支持する支持部53を備えるため、枚葉紙に印刷されたインキの乾燥を促進するとともに、圧胴17および乾燥装置51のメンテナンスを容易にすることができる。
支持部53は、圧胴17の回転軸線に沿って延びる回転軸線周りに乾燥装置51を回動可能に支持するため、乾燥装置51を圧胴17に接近させたときには、圧胴17の近傍領域にまで接近させることができる。そのため、乾燥装置51をインキが転写された枚葉紙の近傍にまで接近させることができ、インキの乾燥を促進させることができる。
一方、乾燥装置51を圧胴17から離間させたときには、乾燥装置51を圧胴17から離れた位置にまで移動させることができるため、例えば、乾燥装置51を圧胴17から離れた位置において、圧胴17の回転軸線方向へスライド移動させることができる。そのため、乾燥装置51のメンテナンスを容易に行うことができる。また、乾燥装置51をスライド移動させることにより、圧胴17と乾燥装置51との間に外部と繋がる空間を形成でき、圧胴17へのアクセスを容易にすることができる。
乾燥装置51が、圧胴17の回転軸線に対して略垂直な面内で移動するため、例えば、圧胴17や中間胴18の側面側に種々の機構が配置されていても乾燥装置51をスライド移動させることができ、乾燥装置51のメンテナンスを容易にすることができる。
【0038】
バネ部71を備えることにより、圧胴17および乾燥装置51のメンテナンスを容易にすることができる。
バネ部71は、支持部53を圧胴17から離れる方向に押し上げることにより、支持部53に支持されている乾燥装置51を圧胴17から離れる方向に押し上げている。例えば、作業者が圧胴17または乾燥装置51のメンテナンスを行う場合、バネ部71の押し上げ力により支持部53および乾燥装置51を圧胴17から離間させることができる。そのため、作業者の力により支持部53および乾燥装置51を圧胴17から離間させる必要がなくなり、圧胴17または乾燥装置51のメンテナンスを容易にすることができる。
【0039】
支持部53が、乾燥装置51を圧胴17の回転軸線方向にスライド移動可能に支持するレール69を備えるため、乾燥装置51のメンテナンスを容易にすることができる。
レール69により乾燥装置51が圧胴17の回転軸線方向に移動されるため、乾燥装置51を圧胴17から更に離間させて外部と繋がるより大きな空間を形成することができる。そのため、圧胴17をメンテナンスする際に、乾燥装置51が邪魔にならず、メンテナンスをより容易にすることができる。
乾燥装置51は、レール69により圧胴17の回転軸線方向に移動されるため、乾燥装置51をより広い空間へ移動させることができる。そのため、乾燥装置51のメンテナンスをより容易にすることができる。
【0040】
各印刷ユニット5a,5bに乾燥装置51を備えるため、印刷装置1における反転ユニット21の上流側にインキを乾燥させる乾燥用のユニットを配置する必要がない。同時に、インキを乾燥させる複数の乾燥装置を備えたロングデリベリなどの排紙装置7を用いる必要がない。
【0041】
図4は、図1に示す印刷機の別の実施例を説明する図である。
なお、上述のように、印刷機1は枚葉紙の表面および裏面の印刷ができる枚葉両面印刷機であっても良いし、図4に示すように、枚葉紙の表面の印刷のみができる枚葉印刷機であってもよく、特に限定するものではない。
【0042】
〔第1の実施形態の変形例〕
次に、本発明の第の実施形態の変形例について図5を参照して説明する。
本変形例の印刷機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、支持部の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図5を用いて支持部周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図5は、本変形例に係る印刷装置における支持部の構成を説明する部分断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略している。
【0043】
印刷機101の各印刷ユニット5a,5bは、図5に示すように、枚葉紙Pに印刷されたインキを乾燥させる乾燥装置51と、乾燥装置51を圧胴17に対して接近離間可能に支持する支持部153と、を備えている。
【0044】
支持部153は、図2に示すように、乾燥装置51を支持するものであり、回動軸67周りに回動して、乾燥装置51を圧胴17に対して接近離間させるものである。
支持部153は、一対の回動部材65と、回動部材65の一方の端部に設けられた回動軸67と、支持部53を圧胴17から離間する方向に付勢するバネ部71と、乾燥装置51を回動部材65上で回動可能に支持する回動支持部155と、乾燥装置51における回動支持部155周りの回動を規制するストッパ157とを備えている。
【0045】
回動支持部155は、回動部材65の一方の端部(図5の左側の端部)に配置され、回動部材65の一方の端部を中心に乾燥装置51を回動可能に接続するものである。
ストッパ157は、回動部材65に設けられ、乾燥装置51が圧胴17方向に回動した際に、乾燥装置51の回動範囲を規制するものである。具体的には、乾燥装置51におけるUV照射面が圧胴17に対向するように乾燥装置51の姿勢を規制するものである。
【0046】
次に、上記の構成からなる印刷機101における働き、および、乾燥装置51の働きについて説明する。
本変形例における印刷機101および乾燥装置51における働きは、第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0047】
次に、本変形例の特徴である圧胴17または乾燥装置51のメンテナンス方法について説明する。
本変形例における印刷機101において圧胴17のメンテナンスを行う場合には、第1の実施形態と同様にユニット間ステップ61を上方に回動させ、切り欠き部63内に配置された乾燥装置51を外部に露出させる。そして、図5における二点鎖線で示すように、乾燥装置51を回動支持部155により回動させる。
乾燥装置51を回動させると、切り欠き部63と圧胴17との間に圧胴17へアクセス可能な空間が形成される。作業者は、この空間を通じて圧胴17のメンテナンスを行う。
なお、支持部153全体を圧胴17から離間する方向に回動させて、圧胴17および乾燥装置51をメンテナンスする方法は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0048】
上記の構成によれば、乾燥装置51が、支持部153の上で圧胴17から離れる方向に回動するため、圧胴17のメンテナンスを容易にすることができる。
乾燥装置51と回動部材65とを回動支持部155により接続することで、乾燥装置51を支持部153の上で圧胴17から離間する方向に回動させることができる。
乾燥装置51を圧胴17から離間する方向に回動させることにより、圧胴17に接近して配置された乾燥装置51を、圧胴17から離間させて外部と繋がる空間を形成することができる。この空間を通じて外部から圧胴17にアクセスすることができ、圧胴17のメンテナンスを容易にすることができる。
支持部153全体を回動させることなく圧胴17のメンテナンスを行うことができるため、支持部153全体を回動させる方法と比較して、圧胴17のメンテナンスを容易にすることができる。
【0049】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図6を参照して説明する。
本実施形態の印刷機の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、支持部の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図6を用いて支持部周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図6は、本実施形態に係る印刷装置における支持部の構成を説明する部分断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略している。
【0050】
印刷機201の各印刷ユニット5a,5bは、図6に示すように、枚葉紙Pに印刷されたインキを乾燥させる乾燥装置51と、乾燥装置51を圧胴17に対して接近離間可能に支持する支持部253と、を備えている。
【0051】
支持部253は、乾燥装置51を支持するものであり、回動軸267周りに回動して、乾燥装置251を圧胴17に対して接近離間させるものである。
具体的には、支持部253は、図6の実線で示すように、乾燥装置51を下方に回動させたときには、乾燥装置51が圧胴17の近傍にまで接近させることができる。
一方、乾燥装置51を上方に回動させたときには、図6の二点鎖線で示すように、乾燥装置51を圧胴17の回転軸線方向にスライド移動させることができる位置にまで離間させることができる。乾燥装置51をスライド移動させたことにより、切り欠き部63から圧胴17にアクセスすることができる。
【0052】
支持部253は、図6に示すように、一対の回動部材265と、回動部材265の一方の端部に設けられた回動軸267と、一対の回動部材265にわたって設けられた2本のレール69とを備えている。
【0053】
回動部材265は、略L字状に折り曲げられた棒状の部材であり、それぞれ印刷ユニット5a,5bにおける操作側のフレーム(例えば、図6の紙面に対して手前側のフレーム)および駆動側のフレーム(例えば、図6の紙面に対して奥側のフレーム)に配置されたものである。回動部材265は、略平行に並んで配置され、印刷装置201における操作側(例えば、図6の紙面に対して手前側)に配置された回動部材265は、作業者がつかめるように(レバーとして)構成されている。作業者は、操作側に配置された回動部材265をつかみ支持部253および乾燥装置51を圧胴17に対して接近離間するように回動させることができる。
【0054】
回動軸267は、回動部材265をフレーム55に対して回動可能に支持するものであり、中間胴18の近傍に配置されている。また、回動軸267は、中間胴18の回転軸線に沿って延びる回動軸線を有するものである。
【0055】
次に、上記の構成からなる印刷機201における働き、および、乾燥装置51の働きについて説明する。
本変形例における印刷機201および乾燥装置51における働きは、第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0056】
次に、本実施形態の特徴である圧胴17または乾燥装置51のメンテナンス方法について説明する。
圧胴17または乾燥装置51のメンテナンスを行う場合には、まず、図6に示すように、ユニット間ステップ61を上方に回動させ、切り欠き部63内に配置された乾燥装置51を外部に露出させる。そして、回動部材265をつかみ、図6の二点鎖線で示すように、乾燥装置51および支持部253を圧胴17から離間する方向に回動させる。
【0057】
乾燥装置51を切り欠き部63にまで回動すると、つぎに、乾燥装置51をレール69に沿って中間胴18の回転中心軸線に沿ってスライド移動させる。例えば、印刷ユニット5a,5bの操作側(図6の手前側)に乾燥装置51をスライド移動させる。
乾燥装置51が移動すると、切り欠き部63と圧胴17との間には、圧胴17へアクセス可能な空間が形成される。作業者は、この空間を通じて圧胴17のメンテナンスを行う。
一方、乾燥装置51は、レール69をスライド移動された状態でメンテナンスされる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る枚葉印刷機の構成を説明する断面図である。
【図2】図1における印刷ユニットの構成を説明する部分断面図である。
【図3】図2の印刷装置および支持部が圧胴から離間した状態を説明する部分断面図である。
【図4】図1に示す印刷機の別の実施例を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の変形例に係る印刷装置における支持部の構成を説明する部分断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置における支持部の構成を説明する部分断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1,101,201 印刷機
17 圧胴
18 中間胴
51 乾燥装置(乾燥部)
53,153,253 支持部
69 レール(移動支持部)
71 バネ部(押し上げ部)
P 枚葉紙(印刷用紙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙を搬送している間に、インキが前記印刷用紙に転写される圧胴と、
インキが転写された前記印刷用紙を搬送する中間胴と、
前記印刷用紙に転写されたインキを乾燥させる乾燥部と、
前記圧胴の回転軸に沿って延びる回動軸線周りに前記乾燥部を回動可能に支持することにより、前記乾燥部を前記圧胴に対して接近離間させる支持部と、を備えることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記支持部を前記圧胴または前記中間胴から離れる方向に押し上げる押し上げ部を備えることを特徴とする請求項1記載の印刷機。
【請求項3】
前記乾燥部が、前記支持部の上で前記圧胴から離れる方向に回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記支持部が、前記乾燥部を前記圧胴の回転軸線方向に移動可能に支持する移動支持部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−223066(P2007−223066A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43806(P2006−43806)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】