説明

印刷物、印刷物の製造方法、および印刷物の製造装置

【課題】印刷物にデザインの変更が生じても、コストが安く少量多品種製造が可能となる印刷物、印刷物の製造方法、および印刷物の製造装置を提供する。
【解決手段】印刷物の製造方法は、エネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料10Bを支持体18上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、絶縁性の第1の基板層10を支持体18上に形成する。エネルギーを付与すると硬化する液体状の機能性材料(液体状の文字層材料14Bおよび液体状の磁性体層材料16B)を第1の基板層10上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、機能層(文字層14および磁性体層16)を第1の基板層10上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物、印刷物の製造方法、および印刷物の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物(IDカード、回路基板など)は基材を用意し、その上に文字や磁気テープ、配線を印刷して製造していた。具体的には、セラミック材のグリーンシートなどのフレキシブルな基板材に多層配線を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2−228095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、印刷物は多種多様であり、デザインの変更が生じると、そのたびに原版を作り直さなければならない問題があった。また、工程の途中でスルーホールを空けたり、切断したりしなければならず、材料が無駄になり、工程が増加していた。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、印刷物にデザインの変更が生じても、コストが安く少量多品種製造が可能となる印刷物、印刷物の製造方法、および印刷物の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る印刷物の製造方法は、エネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料を支持体上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、絶縁性の第1の基板層を前記支持体上に形成する工程と、エネルギーを付与すると硬化する液体状の機能層材料を前記第1の基板層上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、機能層を前記第1の基板層上に形成する工程と、及び、前記機能層が形成された前記第1の基板層を前記支持体から剥離する工程と、を含む。本発明によれば、第1の基板層を設けることで、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる印刷物の製造方法を提供する。
【0007】
(2)本発明に係る印刷物の製造方法は、エネルギーを付与すると硬化する液体状の機能層材料を支持体上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、機能層を前記支持体上に形成する工程と、エネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料を前記機能層上の少なくとも一部を覆うように前記支持体上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、絶縁性の第1の基板層を前記機能層上の少なくとも一部を覆うように前記支持体上に形成する工程と、前記機能層および前記第1の基板層を前記支持体から剥離する工程と、を含む。本発明によれば、第1の基板層を設けることで、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる印刷物の製造方法を提供する。
【0008】
(3)この印刷物の製造方法は、前記液体状の基板層材料を前記機能層上の少なくとも一部を覆うように前記第1の基板層上に対して吐出して硬化させて、絶縁性の第2の基板層を前記機能層上の少なくとも一部を覆うように前記第1の基板層上に形成する工程を、さらに含んでもよい。
【0009】
(4)この印刷物の製造方法は、前記液体状の基板層材料は基板層前駆体を含んでもよい。
【0010】
(5)この印刷物の製造方法は、前記基板層前駆体は、紫外線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂の前駆体でもよい。
【0011】
(6)この印刷物の製造方法は、前記液体状の機能層材料は機能層前駆体を含んでもよい。
【0012】
(7)この印刷物の製造方法は、前記機能層前駆体は、紫外線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂の前駆体でもよい。
【0013】
(8)この印刷物の製造方法は、前記機能層前駆体は、溶媒に機能粒子を分散させた液でもよい。
【0014】
(9)この印刷物の製造方法は、エネルギーを付与して前記溶媒を蒸発させて除去することにより、前記機能層を形成してもよい。
【0015】
(10)この印刷物の製造方法は、前記液体状の基板材料の吐出ならびに前記液体状の機能層材料の少なくとも一方がインクジェット法によって行われてもよい。
【0016】
(11)本発明に係る印刷物の製造装置は、基板層と機能層とを含む積層構造体からなる薄い印刷物を保持する移動可能な支持体と、エネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料を吐出する第1のインクジェットヘッドと、エネルギーを付与すると硬化する液体状の機能層材料を吐出する第2のインクジェットヘッドと、前記液体状の基板層材料からなる基板層前駆体を硬化させて前記基板層を形成するためにエネルギーを付与する第1のエネルギー付与手段と、前記液体状の機能層材料からなる機能層前駆体を硬化させて前記機能層を形成するためにエネルギーを付与する第2のエネルギー付与手段と、前記印刷物を前記支持体から剥ぎ取る剥離手段と、を含む。本発明によれば、絶縁層を設けることで、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる印刷物の製造装置を提供する。
【0017】
(12)この印刷物の製造装置は、前記第1のインクジェットヘッドが前記支持体上の所定の領域に対して前記液体状の基板層材料を吐出して、前記支持体上に前記基板層前駆体が形成され、前記第1のエネルギー付与手段が前記基板層前駆体にエネルギーを付与することにより前記基板層前駆体が硬化して、前記基板層が前記支持体上に形成され、前記第2のインクジェットヘッドが前記基板層上の所定の領域に対して前記液体状の機能層材料を吐出して、前記基板層上に前記機能層前駆体が形成され、前記第2のエネルギー付与手段が前記機能層前駆体にエネルギーを付与することにより前記機能層前駆体が硬化して、前記機能層が前記基板層上に形成されていてもよい。
【0018】
(13)本発明に係る印刷物は、上記印刷物の製造方法により製造されてなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
(印刷物)
本実施の形態は、本発明に係る印刷物の製造方法をIDカードの製造方法に適用した例である。製造方法の理解を容易にするため、先に、完成品としてのIDカードを説明する。図1(A)〜図3(B)はそれぞれ、本発明の実施の形態に係るIDカードの製造方法を模式的に示す断面図である。図4は、図3(B)に示すIDカードを模式的に示す平面図である。なお、図3(B)は図4のIII−III線における断面を示す図であり、図1(A)〜図3(A)に示す断面は図3(B)に示す断面に対応している。
【0020】
本実施の形態に係るIDカード2(図3(B)および図4参照)は、図1(A)〜図3(A)に示す製造方法によって得られたものである。IDカード2は、第1の基板層10と第2の基板層12と機能層としての文字層14および磁性体層16とを含む。
【0021】
第1および第2の基板層10,12は液体状の基板層材料10Bを硬化させて得られる。すなわち、この液体状の基板層材料10Bは、第1および第2の基板層10,12を形成するための原料を含む液体状物であり、例えば熱や光等のエネルギーを付与することにより硬化可能である。より具体的には、この液体状の基板層材料10Bは基板層前駆体10Aを含む。
【0022】
基板層前駆体10Aとしては、例えばPET樹脂、ポリイミド樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリエステル樹脂系、フェノール樹脂系、フッ素樹脂系、可視光硬化樹脂などの前駆体が挙げられる。さらに、基板層前駆体10Aとしては、例えば紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂の前駆体が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型のアクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂が挙げられる。また、熱硬化型樹脂としては、熱硬化型のポリイミド系樹脂が例示できる。なかでも、熱硬化性樹脂を用いて第1および第2の基板層10,12を形成する場合、耐熱性に優れたIDカード2を得ることができる。特に、IDカード2は例えば400℃程度の高熱条件に曝されるため、IDカード2は耐熱性に優れていることが望ましい。また、紫外線硬化型樹脂を用いて第1および第2の基板層10,12を形成する場合、硬化の際に熱工程が不要であるため、IDカード2以外の部分に対して加わるダメージが小さい点で好ましい。
【0023】
機能層としての文字層14は、第1の基板層10上に形成される。文字層14は液体状の機能性材料としての液体状の文字層材料14Bを硬化させて得られる。すなわち、液体状の文字層材料14Bは、文字層14を形成するための原料を含む液体状物であり、例えば熱(減圧を含む)や光等のエネルギーを付与することにより硬化可能である。より具体的には、この液体状の文字層材料14Bは機能層前駆体としての文字層前駆体14Aを含む。
【0024】
文字層前駆体14Aとしては、例えば紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂の前駆体が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型のアクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂が挙げられる。また、熱硬化型樹脂としては、熱硬化型のポリイミド系樹脂が例示できる。なかでも、熱硬化性樹脂を用いて文字層14を形成する場合、耐熱性に優れたIDカード2を得ることができる。特に、IDカード2は例えば400℃程度の高熱条件に曝されるため、IDカード2は耐熱性に優れていることが望ましい。また、紫外線硬化型樹脂を用いて文字層14を形成する場合、硬化の際に熱工程が不要であるため、IDカード2以外の部分に対して加わるダメージが小さい点で好ましい。
【0025】
機能層としての磁性体層16は、第1の基板層10上に形成される。磁性体層16は液体状の機能性材料としての液体状の磁性体層材料16Bを硬化させて得られる。すなわち、液体状の磁性体層材料16Bは、磁性体層16を形成するための原料を含む液体状物であり、例えば熱(減圧を含む)や光等のエネルギーを付加することにより硬化可能である。より具体的には、この液体状の磁性体層材料16Bは機能層前駆体としての磁性体層前駆体16Aを含む。
【0026】
磁性体層前駆体16Aとしては、例えば溶媒に機能粒子を分散させた液体を用いることができる。溶媒に機能粒子を分散させた液体を用いて磁性体層16を形成する場合、例えば熱等のエネルギーを付与することにより溶媒を蒸発させて除去できるため、均一な膜厚の薄膜からなる磁性体層16を形成することができる。機能粒子は特に限定されるわけではないが、磁性体層16としては、磁性体層前駆体16Aは、鉄、フェライト等の微粒子を溶媒に分散させたものを用いることにより、磁性体層16を形成することができる。
【0027】
本実施の形態に係るIDカードによれば、第1の基板層を設けるので、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる。
(IDカードの製造方法)
次に、図3(B)および図4に示すIDカード2の製造方法について、図1(A)〜図3(A)を参照して説明する。まず、支持体18上に第1の基板層10を形成する(図1(A)〜図1(C)参照)。具体的には、液滴10Bを支持体18上の所定の領域に対して吐出して、基板層前駆体10Aを形成する(図1(A)および図1(B)参照)。この基板層前駆体10Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料10Bからなる。
【0028】
液滴10Bを吐出する方法としては、例えばディスペンサ法またはインクジェット法が挙げられる。ディスペンサ法は、液滴を吐出する方法として一般的な方法であり、比較的広い領域に液滴10Bを吐出する場合に有効である。また、インクジェット法は、インクジェットヘッドを用いて液滴を吐出する方法であり、液滴を吐出する位置についてμmオーダーの単位で制御が可能である。また、吐出する液滴の量を、ピコリットルオーダーの単位で制御することができる。これにより、本工程においてインクジェット法を用いて液滴10Bを吐出することにより、第1の基板層10の大きさを厳密に制御することができる。図1(A)には、第1のインクジェットヘッド20のノズルから支持体18に対して液滴10Bを吐出する工程が示されている。
【0029】
次に、基板層前駆体10Aを硬化させて、絶縁性の第1の基板層10を形成する(図1(B)および図1(C)参照)。具体的には、例えば基板層前駆体10Aに対して、第1のエネルギー付与手段22としてのマイクロ波加熱装置22Aよりマイクロ波エネルギーを付与する。これにより第1の基板層10が得られる。
【0030】
なお、基板層前駆体10Aを硬化する際は、液体状の基板層材料10Bの種類により適切な方法を用いる。例えば電熱器等による熱エネルギーの付与、紫外線あるいは赤外線発生装置等による紫外線あるいは赤外線エネルギーの付与、あるいはマイクロ波加熱装置等による電磁エネルギーの付与、あるいはレーザ光エネルギーの付与が挙げられる。
【0031】
次いで、第1の基板層10上に機能層としての文字層14および磁性体層16を形成する(図1(C)〜図2(B)参照)。
【0032】
文字層14の具体的な形成方法は、液滴14Bを第1の基板層10上の所定の領域に対して吐出して、文字層前駆体14Aを形成する(図1(C)および図2(A)参照)。この文字層前駆体14Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の文字層材料14Bからなる。
【0033】
液滴14Bを吐出する方法としては、前述した液滴10Bを吐出する方法として例示した方法を用いることができる。例えばインクジェット法により液滴14Bを吐出することにより、文字層14の膜厚を厳密に制御することができる。図1(C)には、第2のインクジェットヘッド24としての文字層インクジェットヘッド24Aのノズルから第1の基板層10上に対して液滴14Bを吐出する工程が示されている。
【0034】
磁性体層16の具体的な形成方法は、液滴16Bを第1の基板層10上の所定の領域に対して吐出して、磁性体層前駆体16Aを形成する(図1(C)および図2(A)参照)。この磁性体層前駆体16Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の磁性体層材料16Bからなる。
【0035】
液滴16Bを吐出する方法としては、前述した液滴10Bを吐出する方法として例示した方法を用いることができる。例えばインクジェット法により液滴16Bを吐出することにより、磁性体層16の膜厚を厳密に制御することができる。図1(C)には、第2のインクジェットヘッド24としての磁性体層インクジェットヘッド24Bのノズルから第1の基板層10上に対して液滴16Bを吐出する工程が示されている。
【0036】
次に、文字層前駆体14Aを硬化させて、第1の基板層10上に文字層14を形成する(図2(A)および図2(B)参照)。具体的には、例えば文字層前駆体14Aに対して、第2のエネルギー付与手段26としての加熱装置26Aより熱エネルギーを付与する。これにより文字層14が得られる。なお、文字層前駆体14Aを硬化する際は、液体状の文字層材料14Bの種類により適切な方法を用いる。例えば前述した基板層前駆体10Aを硬化する方法として例示した方法を用いることができる。
【0037】
さらに、磁性体層前駆体16Aを硬化させて、第1の基板層10上に磁性体層16を形成する(図2(A)および図2(B)参照)。具体的には、例えば磁性体層前駆体16Aに対して、第2のエネルギー付与手段26としての加熱装置26Aより熱エネルギーを付与する。これにより磁性体層16が得られる。なお、磁性体層前駆体16Aを硬化する際は、液体状の磁性体層材料16Bの種類により適切な方法を用いる。例えば前述した基板層前駆体10Aを硬化する方法として例示した方法を用いることができる。
【0038】
次に、機能層としての文字層14上および磁性体層16上の少なくとも一部を覆うように第1の基板層10上に第2の基板層12を形成する(図2(B)〜図3(A)参照)。具体的には、液滴10Bを文字層14上および磁性体層16上の少なくとも一部を覆うように第1の基板層10上に対して吐出して、基板層前駆体10Aを形成する。この基板層前駆体10Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料10Bからなる。
【0039】
次に、基板層前駆体10Aを硬化させて、絶縁性の第2の基板層12を形成する(図20(C)および図3(A)参照)。具体的には、例えば基板層前駆体10Aに対して、第1のエネルギー付与手段22としての紫外線・赤外線発生装置22Bより光および熱エネルギーを付与する。これにより第2の基板層12が得られる。
【0040】
次に、図3(A)に示すように、文字層14および磁性体層16が形成された第1の基板層10を支持体18から剥離し、図3(B)および図4に示すIDカード2を得る。
【0041】
なお、液滴10Bが吐出可能であれば、液滴10Bは溶媒を含まないものでもよい。この場合、液体状のときの形状(基板層前駆体10Aのときの形状)がほぼ保持された第1の基板層10を得ることができる。液滴14Bが吐出可能であれば、液滴14Bは溶媒を含まないものでもよい。この場合、液体状のときの形状(文字層前駆体14Aのときの形状)がほぼ保持された文字層14を得ることができる。液滴16Bが吐出可能であれば、液滴16Bは溶媒を含まないものでもよい。この場合、液体状のときの形状(磁性体層前駆体16Aのときの形状)がほぼ保持された磁性体層16を得ることができる。
【0042】
また、図6に示すように、支持体18上に第1の基板層10を形成する前に、第1の基板層10を形成する領域の周辺に縁部42を形成してもよい。縁部42は例えば液滴10Bを支持体18に対して吐出して形成されてもよい。縁部42を設けることによりその後の各工程での液滴の流動性を防ぐことができる。
【0043】
本実施の形態に係るIDカードの製造方法によれば、第1の基板層を設けるので、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる。
(印刷物の製造装置)
図5は、本発明の実施の形態に係る印刷物の製造装置6を模式的に示す概略図である。この印刷物の製造装置6を用いて、本発明を適用したIDカード2を形成することができる。本実施の形態においては、印刷物の製造装置6が本実施の形態に係るIDカード2(図3(B)および図4参照)を製造する場合を例にとり説明する。本実施の形態に係る印刷物の製造装置6は、移動可能な支持体18と、第1のインクジェットヘッド20と、第2のインクジェットヘッド24と、第1のエネルギー付与手段22と、第2のエネルギー付与手段26と、剥離手段としてのくさび28Aあるいは吸盤28Bを含む。
【0044】
支持体18は、基板層としての第1の基板層10および第2の基板層12と機能層としての文字層14および磁性体層16とを含む積層構造体からなる薄いIDカード2を保持する。
【0045】
第1のインクジェットヘッド20は第1の導液手段30を介して第1の貯液槽32と連結されている。第1の貯液槽32には液体状の基板層材料10Bが貯蔵されており、第1の導液手段30を介して第1のインクジェットヘッド20へと液体状の基板層材料10Bが供給される。第1のインクジェットヘッド20は、液滴10B(図1(A)参照:第1の基板層10および第2の基板層12を形成するための液体状の基板層材料)をノズルから吐出する。第1のインクジェットヘッド20は、支持体18上の所定の領域に対して液体状の基板層材料10Bを吐出して、支持体18上に基板層前駆体10Aを形成する。
【0046】
第2のインクジェットヘッド24は第2の導液手段34を介して第2の貯液槽36と連結されている。第2の貯液槽36には液体状の機能層材料としての液体状の文字層材料14Bが貯蔵されており、第2の導液手段34を介して第2のインクジェットヘッド24へと液体状の文字層材料14Bが供給される。第2のインクジェットヘッド24は、液滴14B(図1(C)参照:機能層としての文字層14を形成するための液体状の文字層材料)をノズルから吐出する。第2のインクジェットヘッド24は、第1の基板層10上の所定の領域に対して液体状の文字層材料14Bを吐出して、第1の基板層10上に文字層前駆体14Aを形成する。
【0047】
あるいは、第2の貯液槽36には液体状の機能層材料としての液体状の磁性体層材料16Bが貯蔵されており、第2の導液手段34を介して第2のインクジェットヘッド24へと液体状の磁性体層材料16Bが供給される。第2のインクジェットヘッド24は、液滴16B(図1(C)参照:機能層としての磁性体層16を形成するための液体状の磁性体層材料)をノズルから吐出する。第2のインクジェットヘッド24は、第1の基板層10上の所定の領域に対して液体状の磁性体層材料16Bを吐出して、第1の基板層10上に磁性体層前駆体16Aを形成する。第1および第2の導液手段30,34は例えばテフロン(登録商標)チューブからなる。
【0048】
第1のエネルギー付与手段22は、液滴10Bからなる基板層前駆体10Aを硬化させるためのエネルギーを付与する機能を有する。第1のエネルギー付与手段22は、基板層前駆体10Aにエネルギーを付与することにより基板層前駆体10Aを硬化して、第1の基板層10を支持体18上に、第2の基板層12を機能層としての文字層14上および磁性体層16上の少なくとも一部を覆うように第1の基板層10上にそれぞれ形成する。
【0049】
第2のエネルギー付与手段26は、液滴14Bからなる文字層前駆体14Aあるいは液滴16Bからなる磁性体層前駆体16Aを硬化させるためのエネルギーを付与する機能を有する。第2のエネルギー付与手段26は、文字層前駆体14Aにエネルギーを付与することにより文字層前駆体14Aを硬化して、文字層14を第1の基板層10上に形成する。第2のエネルギー付与手段26は、磁性体層前駆体16Aにエネルギーを付与することにより磁性体層前駆体16Aを硬化して、磁性体層16を第1の基板層10上に形成する。第1および第2のエネルギー付与手段22,26は、液滴10B,14B,16Bの種類によって適宜選択することができる。例えば電熱器等による熱エネルギーの付与、紫外線あるいは赤外線発生装置等による紫外線あるいは赤外線エネルギーの付与、あるいはマイクロ波加熱装置等による電磁エネルギーの付与、あるいはレーザ光エネルギーの付与が挙げられる。
【0050】
剥離手段はIDカード2を支持体18から剥ぎ取る。剥離手段は、例えばくさび28A、吸盤28B等である。
【0051】
なお、基板層前駆体10A、文字層前駆体14Aおよび磁性体層前駆体16Aに付与するエネルギーが同じである場合、第1および第2のエネルギー付与手段22,26は1つのエネルギー付与機構でもよい。
【0052】
また、本実施の形態に係る印刷物の製造装置6では、第1および第2のエネルギー付与手段22,26がともに支持体18で移動可能な別の位置に設置されている。しかし、第1および第2のエネルギー付与手段22,26の設置位置はこの場所に限定されず、例えば支持体18そのものに第1および第2のエネルギー付与手段22,26を設置してもよいし、第1および第2のインクジェットヘッド20,24に隣接して設置されていてもよい。
【0053】
また、支持体18の動作、第1および第2のインクジェットヘッド20,24の動作は、例えば図示しない制御装置にて制御することができる。さらに、第1の貯液槽32から第1のインクジェットヘッド20への液体状の基板層材料10Bの供給、ならびに第1のエネルギー付与手段22の制御は、例えば図示しない制御装置にて制御することができる。また、第2の貯液槽36から第2のインクジェットヘッド24への液体状の文字層材料14Bあるいは液体状の磁性体層材料16Bの供給、ならびに第1および第2のエネルギー付与手段22,26の制御は、例えば図示しない制御装置にて制御することができる。例えばコンピュータ上でソフトウエアを用いて上記の動作を処理することができる。
【0054】
なお、図7に示すように、支持体18A上の第1の基板層10を形成する領域の周辺に縁部44が設けられていてもよい。支持体18A上に縁部44が設けられていることにより各液滴の流動性を防ぐことができる。この場合、IDカード2を支持体18から剥ぎ取る剥離手段は、例えば吸盤28B等である。
【0055】
次に、本実施の形態に係る印刷物の製造装置6の動作について、図5および図1(A)〜図3(A)を参照して説明する。まず、第1のインクジェットヘッド20がノズルから液滴10Bを吐出して基板層前駆体10Aが形成された後(図1(A)および図1(B)参照)、第1のエネルギー付与手段22がエネルギーを液滴10Bに付与して基板層前駆体10Aが硬化し、絶縁性の第1の基板層10が形成される(図1(B)および図1(C)参照)。
【0056】
次に、第2のインクジェットヘッド24(文字層インクジェットヘッド24A)がノズルから液滴14Bを吐出して文字層前駆体14Aを形成する(図1(C)および図2(A)参照)。その後、第2のエネルギー付与手段26(加熱装置26A)がエネルギーを液滴14Bに付与して文字層前駆体14Aが硬化し文字層14が形成される(図2(A)および図2(B)参照)。
【0057】
さらに、第2のインクジェットヘッド24(磁性体層インクジェットヘッド24B)がノズルから液滴16Bを吐出して磁性体層前駆体16Aを形成する(図1(C)および図2(A)参照)。その後、第2のエネルギー付与手段26(加熱装置26A)がエネルギーを液滴16Bに付与して磁性体層前駆体16Aが硬化し磁性体層16が形成される(図2(A)および図2(B)参照)。
【0058】
なお、上記工程において、第1のインクジェットヘッド20がノズルから液滴10Bを吐出しながら、第1のエネルギー付与手段22がエネルギーを着弾した液滴10Bに付与してもよい。また、上記工程において、第2のインクジェットヘッド24がノズルから液滴14Bを吐出しながら、第2のエネルギー付与手段26がエネルギーを着弾した液滴14Bに付与してもよい。さらに、上記工程において、第2のインクジェットヘッド24がノズルから液滴16Bを吐出しながら、第2のエネルギー付与手段26がエネルギーを着弾した液滴16Bに付与してもよい。
【0059】
次に、図3(A)に示すように、第1の基板層10を支持体18から剥離し、図4に示すIDカード2を得る。
【0060】
本実施の形態に係る印刷物の製造装置6によれば、液滴10B,14B,16Bの吐出ならびに基板層前駆体10A、文字層前駆体14Aおよび磁性体層前駆体16Aの硬化を同一の支持体18上で行なうことができるため、製造工程の簡易化および装置の簡略化を図ることができる。
【0061】
本実施の形態に係る印刷物の製造装置によれば、第1の基板層を設けるので、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる。
【0062】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。
(IDカードの製造方法)
本実施の形態は、本発明に係る印刷物の製造方法をIDカードの製造方法に適用した例である。図8(A)〜図10(B)はそれぞれ、本発明の第2の実施の形態に係るIDカードの製造方法を模式的に示す断面図である。
【0063】
図4に示すIDカード2の製造方法について、図8(A)〜図10(B)を参照して説明する。まず、支持体18上に機能層としての文字層14および磁性体層16を形成する(図8(A)〜図8(C)参照)。
【0064】
文字層14の具体的な形成方法は、液滴14Bを支持体18上の所定の領域に対して吐出して、文字層前駆体14Aを形成する(図8(A)および図8(B)参照)。この文字層前駆体14Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の文字層材料14Bからなる。
【0065】
液滴14Bを吐出する方法としては、前述した液滴10Bを吐出する方法として例示した方法を用いることができる。例えばインクジェット法により液滴14Bを吐出することにより、文字層14の膜厚を厳密に制御することができる。図8(A)には、第2のインクジェットヘッド24としての文字層インクジェットヘッド24Aのノズルから支持体18上に対して液滴14Bを吐出する工程が示されている。
【0066】
磁性体層16の具体的な形成方法は、液滴16Bを支持体18上の所定の領域に対して吐出して、磁性体層前駆体16Aを形成する(図8(A)および図8(B)参照)。この磁性体層前駆体16Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の磁性体層材料16Bからなる。
【0067】
液滴16Bを吐出する方法としては、前述した液滴10Bを吐出する方法として例示した方法を用いることができる。例えばインクジェット法により液滴16Bを吐出することにより、磁性体層16の膜厚を厳密に制御することができる。 図8(A)には、第2のインクジェットヘッド24としての磁性体層インクジェットヘッド24Bのノズルから支持体18上に対して液滴16Bを吐出する工程が示されている。
【0068】
次に、文字層前駆体14Aを硬化させて、支持体18上に文字層14を形成する(図8(B)および図8(C)参照)。具体的には、例えば文字層前駆体14Aに対して、第2のエネルギー付与手段26としての加熱装置26Aより熱エネルギーを付与する。これにより文字層14が得られる。
【0069】
さらに、磁性体層前駆体16Aを硬化させて、支持体18上に磁性体層16を形成する(図8(B)および図8(C)参照)。具体的には、例えば磁性体層前駆体16Aに対して、第2のエネルギー付与手段26としての加熱装置26Aより熱エネルギーを付与する。これにより磁性体層16が得られる。
【0070】
次いで、機能層としての文字層14上および磁性体層16上の少なくとも一部を覆うように支持体18上に第1の基板層10を形成する(図8(C)〜図9(B)参照)。
【0071】
具体的には、液滴10Bを機能層としての文字層14上および磁性体層16上の少なくとも一部を覆うように支持体18上の所定の領域に対して吐出して、基板層前駆体10Aを形成する(図8(C)および図9(A)参照)。この基板層前駆体10Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料10Bからなる。
【0072】
液滴10Bを吐出する方法としては、前述した液滴10Bを吐出する方法として例示した方法を用いることができる。例えばインクジェット法により液滴10Bを吐出することにより、第1の基板層10の膜厚を厳密に制御することができる。図8(C)には、第1のインクジェットヘッド20のノズルから機能層としての文字層14上および磁性体層16上の少なくとも一部を覆うように支持体18に対して液滴10Bを吐出する工程が示されている。
【0073】
次に、基板層前駆体10Aを硬化させて、絶縁性の第1の基板層10を形成する(図9(A)および図9(B)参照)。具体的には、例えば基板層前駆体10Aに対して、第1のエネルギー付与手段22としてのマイクロ波加熱装置22Aよりマイクロ波エネルギーを付与する。これにより第1の基板層10が得られる。
【0074】
次に、図9(B)および図9(C)に示すように、文字層14、磁性体層16および第1の基板層10を支持体18から剥離し、文字層14および磁性体層16が表(図9において上方)になるように文字層14、磁性体層16および第1の基板層10の位置関係を逆転させる。
【0075】
次に、機能層としての文字層14上および磁性体層16上の少なくとも一部を覆うように第1の基板層10上に第2の基板層12を形成する(図9(C)〜図10(B)参照)。
【0076】
次に、基板層前駆体10Aを硬化させて、絶縁性の第2の基板層12を形成する(図10(A)および図10(B)参照)。具体的には、例えば基板層前駆体10Aに対して、第1のエネルギー付与手段22としての紫外線・赤外線発生装置22Bより光および熱エネルギーを付与する。これにより第2の基板層12が得られる。
【0077】
次に、図10(B)に示すように、文字層14および磁性体層16が形成された第1の基板層10を支持体18から剥離し、図4に示すIDカード2を得る。その他の製造方法および構成については、第1の実施の形態で説明した内容を適用することができる。
【0078】
本実施の形態に係るIDカードの製造方法によれば、第1の基板層を設けることで、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる。
【0079】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。
(印刷物)
本実施の形態は、本発明に係る印刷物の製造方法をフレキシブル電子回路装置の製造方法に適用した例である。図11(A)〜図13(C)はそれぞれ、本発明の本実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法を模式的に示す断面図である。製造方法の理解を容易にするため、先に、完成品としてのフレキシブル電子回路装置を説明する。
【0080】
本実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置4(図13(C)参照)は、図11(A)〜図13(B)に示す製造方法によって得られたものである。フレキシブル電子回路装置4は、第1の基板層10と第2の基板層12と機能層としての素子層38および配線層40とを含む。
【0081】
機能層としての素子層38は、第1の基板層10上に形成される。素子層38は液体状の機能性材料としての液体状の素子層材料38Bを硬化させて得られる。すなわち、液体状の素子層材料38Bは、素子層38を形成するための原料を含む液体状物であり、例えば熱(減圧を含む)や光等のエネルギーを付加することにより硬化可能である。より具体的には、この液体状の素子層材料38Bは機能層前駆体としての素子層前駆体38Aを含む。
【0082】
素子層前駆体38Aとしては、例えば溶媒に機能粒子を分散させた液体を用いることができる。溶媒に機能粒子を分散させた液体を用いて素子層38を形成する場合、例えば熱等のエネルギーを付与することにより溶媒を蒸発させて除去できるため、均一な膜厚の薄膜からなる素子層38を形成することができる。
【0083】
素子層前駆体38Aは、例えば素子層38(能動素子(ダイオード、トランジスタ、FETなど))の形成としては、液体シリコンを用いることにより、能動素子を形成することができる。そのほかに絶縁材としては、硬化後にSiO2,SiN,Si3N4となる液体状材料を用いることにより、絶縁材を形成することができる。インダクタ(コイル)をつくる磁性体としては、鉄、フェライト等の微粒子を溶媒に分散させたものを用いることにより、磁性体を形成することができる。キャパシタを作る誘電体としては、Pb(ZrまたはTi)O3、((PbまたはLa)または(ZrまたはTi))O3、Bi4Ti3O12、SrBi2(NbまたはTa)2O3などの強誘電体材料の微粒子を溶媒に分散させたものを用いることにより、誘電体を形成することができる。
【0084】
機能層としての配線層40は、第1の基板層10上に形成される。配線層40は液体状の機能性材料としての液体状の配線層材料40Bを硬化させて得られる。すなわち、液体状の配線層材料40Bは、配線層40を形成するための原料を含む液体状物であり、例えば熱(減圧を含む)や光等のエネルギーを付加することにより硬化可能である。より具体的には、この液体状の配線層材料40Bは機能層前駆体としての配線層前駆体40Aを含む。
【0085】
配線層前駆体40Aとしては、例えば溶媒に機能粒子を分散させた液体を用いることができる。溶媒に機能粒子を分散させた液体を用いて配線層40を形成する場合、例えば熱等のエネルギーを付与することにより溶媒を蒸発させて除去できるため、均一な膜厚の薄膜からなる配線層40を形成することができる。
【0086】
配線層前駆体40Aは、例えば配線層40としては、金属粒子(金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、マンガン、インジウム、スズ、アンチモン、ニッケルなど)を溶媒に分散させたものやこれらの金属の合金からなる。これらの金属粒子を単独であるいは組み合わせて用いることにより、配線層40を形成することができる。
【0087】
本実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置によれば、第1の基板層を設けるので、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる。
(フレキシブル電子回路装置の製造方法)
次に、図13(C)に示すフレキシブル電子回路装置4の製造方法について、図11(A)〜図13(B)を参照して説明する。まず、支持体18上に第1の基板層10を形成する(図11(A)〜図11(C)参照)。具体的には、例えば基板層前駆体10Aに対して、第1のエネルギー付与手段22としてのマイクロ波加熱装置22Aより光および熱エネルギーを付与する。これにより第1の基板層10が得られる。
【0088】
次に、基板層前駆体10Aを硬化させて、絶縁性の第1の基板層10を形成する(図11(B)および図11(C)参照)。
【0089】
次いで、第1の基板層10上に機能層としての素子層38および配線層40を形成する(図11(C)および図12(A)参照)。
【0090】
素子層38の具体的な形成方法は、液滴38Bを第1の基板層10上に対して吐出して、素子層前駆体38Aを形成する(図11(C)および図12(A)参照)。この素子層前駆体38Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の素子層材料38Bからなる。
【0091】
液滴38Bを吐出する方法としては、前述した液滴10Bを吐出する方法として例示した方法を用いることができる。例えばインクジェット法により液滴38Bを吐出することにより、素子層38の膜厚を厳密に制御することができる。図11(C)には、素子層用インクジェットヘッド24Cのノズルから第1の基板層10上に対して液滴38Bを吐出する工程が示されている。
【0092】
配線層40の具体的な形成方法は、液滴40Bを第1の基板層10上に対して吐出して、配線層前駆体40Aを形成する(図11(C)および図12(A)参照)。この配線層前駆体40Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の配線層材料40Bからなる。
【0093】
液滴40Bを吐出する方法としては、前述した液滴10Bを吐出する方法として例示した方法を用いることができる。例えばインクジェット法により液滴40Bを吐出することにより、配線層40の膜厚を厳密に制御することができる。図11(C)には、配線層用インクジェットヘッド24Dのノズルから第1の基板層10上に対して液滴40Bを吐出する工程が示されている。なお、多層にする場合は、前述までの工程を繰り返し行ってもよい。
【0094】
次に、素子層前駆体38Aを硬化させて、第1の基板層10上に素子層38を形成する(図12(A)および図12(B)参照)。具体的には、例えば素子層前駆体38Aに対して、第2のエネルギー付与手段26としての加熱装置26Aより熱エネルギーを付与する。これにより、素子層38が得られる。なお、素子層前駆体38Aを硬化する際は、液体状の素子層材料38Bの種類により適切な方法を用いる。例えば前述した基板層前駆体10Aを硬化する方法として例示した方法を用いることができる。
【0095】
さらに、配線層前駆体40Aを硬化させて、第1の基板層10上に配線層40を形成する(図12(A)および図12(B)参照)。具体的には、例えば配線層前駆体40Aに対して、第2のエネルギー付与手段26としての加熱装置26Aより熱エネルギーを付与する。これにより、配線層40が得られる。なお、配線層前駆体40Aを硬化する際は、液体状の配線層材料40Bの種類により適切な方法を用いる。例えば前述した基板層前駆体10Aを硬化する方法として例示した方法を用いることができる。
【0096】
次に、機能層としての素子層38上および配線層40上の少なくとも一部を覆うように第1の基板層10上に第2の基板層12を形成する(図12(B)および図13(B)参照)。具体的には、液滴10Bを機能層としての素子層38上および配線層40上の少なくとも一部を覆うように第1の基板層10上に対して吐出して、基板層前駆体10Aを形成する。この基板層前駆体10Aはエネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料10Bからなる。
【0097】
次に、基板層前駆体10Aを硬化させて、絶縁性の第2の基板層12を形成する(図13(A)および図13(B)参照)。具体的には、例えば基板層前駆体10Aに対して、第1のエネルギー付与手段22としてのマイクロ波加熱装置22Aよりマイクロ波エネルギーを付与する。これにより第2の基板層12が得られる。なお、基板層前駆体10Aを硬化する際は、液体状の基板層材料10Bの種類により適切な方法を用いる。例えば前述した基板層前駆体10Aを硬化する方法として例示した方法を用いることができる。
【0098】
次に、図13(B)に示すように、第1の基板層10を支持体18から剥離し、図13(C)に示すフレキシブル電子回路装置4を得る。
【0099】
本実施によれば、第1の基板層を設けるので、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる。
【0100】
なお、図14に示すように、第1の基板層10上に配線層40を形成する前に、配線層40を形成する領域の周辺に縁部46を形成してもよい。縁部46は例えば液滴10Bを第1の基板層10に対して吐出して形成されてもよい。縁部46を設けることにより液滴40Bの流動性を防ぐことができる。また、支持体18上に配線層40を形成する前に、配線層40を形成する領域の周辺に縁部46を形成してもよい。縁部46は例えば液滴10Bを支持体18に対して吐出して形成されてもよい。
【0101】
また、液滴38Bが吐出可能であれば、液滴38Bは溶媒を含まないものでもよい。この場合、液体状のときの形状(素子層前駆体38Aのときの形状)がほぼ保持された素子層38を得ることができる。液滴40Bが吐出可能であれば、液滴40Bは溶媒を含まないものでもよい。この場合、液体状のときの形状(配線層前駆体40Aのときの形状)がほぼ保持された配線層40を得ることができる。その他の製造方法および構成については、第1の実施の形態で説明した内容を適用することができる。
【0102】
本実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法によれば、第1の基板層を設けるので、印刷物にデザインの変更が生じても原版を作り直す必要がないので、コストが安く少量多品種製造が可能となる。
【0103】
なお、フレキシブル電子回路装置4を電子機器に適用してもよい。電子機器としては、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ディジタルスチルカメラ、電子ペーパー、電子ノート、電子ブックが挙げられる。他にも、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器は上述したフレキシブル電子回路装置が適用可能なのは言うまでもない。
【0104】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。さらに、本発明は、実施の形態で説明した技術的事項のいずれかを限定的に除外した内容を含む。あるいは、本発明は、上述した実施の形態から公知技術を限定的に除外した内容を含む。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るIDカードの製造方法を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るIDカードの製造方法を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るIDカードの製造方法を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るIDカードを模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る印刷物の製造装置を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る印刷物の製造装置を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る印刷物の製造装置を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係るフレキシブル電子回路装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0106】
2…IDカード 4…フレキシブル電子回路装置 6…印刷物の製造装置 10…第1の基板層(第1の基板) 10A…基板層前駆体 10B…液滴(液体状の基板層材料) 12…第2の基板層(第2の基板) 14…文字層(文字部) 14A…文字層前駆体 14B…液滴(液体状の文字層材料) 16…磁性体層(磁性体部) 16A…磁性体層前駆体 16B…液滴(液体状の磁性体層材料) 18,18A…支持体 20…第1のインクジェットヘッド 22…第1のエネルギー付与手段 22A…マイクロ波加熱装置 22B…紫外線・赤外線発生装置 24…第2のインクジェットヘッド 24A…文字層インクジェットヘッド 24B…磁性体層インクジェットヘッド 24C…素子層用インクジェットヘッド 24D…配線層用インクジェットヘッド 26…第2のエネルギー付与手段 26A…加熱装置 28A…くさび 28B…吸盤 30…第1の導液手段 32…第1の貯液槽 34…第2の導液手段 36…第2の貯液槽 38…素子層 38A…素子層前駆体 38B…液滴(液体状の素子層材料) 40…配線層 40A…配線層前駆体 40B…液滴(液体状の配線層材料) 42,44,46…縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料を支持体上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、絶縁性の第1の基板層を前記支持体上に形成する工程と、
エネルギーを付与すると硬化する液体状の機能層材料を前記第1の基板層上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、機能層を前記第1の基板層上に形成する工程と、及び、
前記機能層が形成された前記第1の基板層を前記支持体から剥離する工程と、
を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
エネルギーを付与すると硬化する液体状の機能層材料を支持体上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、機能層を前記支持体上に形成する工程と、
エネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料を前記機能層上の少なくとも一部を覆うように前記支持体上の所定の領域に対して吐出して硬化させて、絶縁性の第1の基板層を前記機能層上の少なくとも一部を覆うように前記支持体上に形成する工程と、
前記機能層および前記第1の基板層を前記支持体から剥離する工程と、
を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷物の製造方法において、
前記液体状の基板層材料を前記機能層上の少なくとも一部を覆うように前記第1の基板層上に対して吐出して硬化させて、絶縁性の第2の基板層を前記機能層上の少なくとも一部を覆うように前記第1の基板層上に形成する工程を、さらに含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法において、
前記液体状の基板層材料は基板層前駆体を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の印刷物の製造方法において、
前記基板層前駆体は、紫外線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂の前駆体であることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法において、
前記液体状の機能層材料は機能層前駆体を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の印刷物の製造方法において、
前記機能層前駆体は、紫外線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂の前駆体であることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の印刷物の製造方法において、
前記機能層前駆体は、溶媒に機能粒子を分散させた液であることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の印刷物の製造方法において、
エネルギーを付与して前記溶媒を蒸発させて除去することにより、前記機能層を形成することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法において、
前記液体状の基板材料の吐出ならびに前記液体状の機能層材料の少なくとも一方がインクジェット法によって行われることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項11】
基板層と機能層とを含む積層構造体からなる薄い印刷物を保持する移動可能な支持体と、
エネルギーを付与すると硬化する液体状の基板層材料を吐出する第1のインクジェットヘッドと、
エネルギーを付与すると硬化する液体状の機能層材料を吐出する第2のインクジェットヘッドと、
前記液体状の基板層材料からなる基板層前駆体を硬化させて前記基板層を形成するためにエネルギーを付与する第1のエネルギー付与手段と、
前記液体状の機能層材料からなる機能層前駆体を硬化させて前記機能層を形成するためにエネルギーを付与する第2のエネルギー付与手段と、
前記印刷物を前記支持体から剥ぎ取る剥離手段と、
を含むことを特徴とする印刷物の製造装置。
【請求項12】
請求項11記載の印刷物の製造装置において、
前記第1のインクジェットヘッドが前記支持体上の所定の領域に対して前記液体状の基板層材料を吐出して、前記支持体上に前記基板層前駆体が形成され、
前記第1のエネルギー付与手段が前記基板層前駆体にエネルギーを付与することにより前記基板層前駆体が硬化して、前記基板層が前記支持体上に形成され、
前記第2のインクジェットヘッドが前記基板層上の所定の領域に対して前記液体状の機能層材料を吐出して、前記基板層上に前記機能層前駆体が形成され、
前記第2のエネルギー付与手段が前記機能層前駆体にエネルギーを付与することにより前記機能層前駆体が硬化して、前記機能層が前記基板層上に形成されることを特徴とする印刷物の製造装置。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法により製造されていることを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−296770(P2007−296770A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127415(P2006−127415)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】