説明

印刷物、印刷物形成装置、印刷物形成方法、及びプログラム

【課題】質感の表現力を向上させる印刷物、印刷物形成装置、印刷物形成方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】領域毎に異なる凹凸が付された上面を有する下層と、前記下層の上に設けられて画像を形成し、入射した光の一部を前記下層に透過する画像層と、前記画像層の上に設けられ、領域毎に異なる凹凸が付された上面を有し、入射した光の一部を前記画像層に透過する表面層とを備える。これにより、様々な質感を表現することができ、質感を十分に表現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物、印刷物形成装置、印刷物形成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、液体組成物の付与方法を異ならせることにより、印刷画像表面の状態を制御して、複数段階の光沢感を表現する技術が知られている。
【特許文献1】特開2004−122496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
印刷画像の表面の鏡面反射率を変えるだけなので、印刷画像の質感を十分に表現できない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、印刷物であって、領域毎に異なる凹凸が付された上面を有する下層と、前記下層の上に設けられて画像を形成し、入射した光の一部を前記下層に透過する画像層と、前記画像層の上に設けられ、領域毎に異なる凹凸が付された上面を有し、入射した光の一部を前記画像層に透過する表面層とを備える。
【0005】
前記下層は、予め前記印刷物に照射される光の方向及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、照からせたい領域ほど、前記印刷物に照射される光の鏡面反射の反射方向が、該印刷物を観察する人の観察方向となる傾斜を有してよい。ここで、印刷物に照射される光の方向および観察する人の観察方向は以下のように例示できる。一例目として、高級絵画印刷物を観賞対象とする場合、印刷物は部屋の側壁の上または側壁に沿って展示される。この場合の印刷物の高さは、観察者の目の高さと略同一となり、観察者が立位している場合で1.3から1.8m程度が想定される。観察者の観察方向は、鑑賞対象となる印刷物の略法線方向となる。部屋の天井または壁に取り付けられたスポット照明により照明されることが想定されるので、印刷物の法線方向及び鉛直方向を含む平面での上方45度から70度程度で照明されることが多くなり、この角度が照明方向の代表値として想定される。但し、印刷物の法線方向及び鉛直方向を含む平面より印刷物のやや側方の上方から照明されることも想定される。二例目として、オフィス環境において机上で印刷物を鑑賞対象とする場合が上げられ、この代表的な照明環境は、窪田悟著、財団法人労働科学研究所出版部「液晶ディスプレイの生態学」の54頁の図22に例示される環境が代表される。机上の印刷物を鑑賞対象とする場合、観察方向は印刷物の法線方向が想定され、照明方向は印刷物の上方1.6mの天井全面に配置された蛍光灯の方位によって規定される。例えば、照明方向は印刷物の上方17度から90度、側方の広がりは角度にして±45度と想定される。実際には、そのオフィス環境に応じて、印刷物を照明できる蛍光灯から照明方向を考えればよい。
【0006】
前記下層は、予め前記印刷物に照射される光の方向及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、照からせたい前記領域ほど、該領域に含まれる複数の微小領域のうち、鏡面反射の反射方向が前記観察方向となる傾斜を有する微小領域の数の割合が大きくてよい。
【0007】
前記表面層は、予め前記印刷物に照射される光の方向及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、照からせたい領域ほど、前記印刷物に照射される光の鏡面反射の反射方向が、該印刷物を観察する人の観察方向となる傾斜を有してよい。
【0008】
前記表面層は、予め前記印刷物に照射される光の方向及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、照からせたい前記領域ほど、該領域に含まれる複数の微小領域のうち、鏡面反射の反射方向が前記観察方向となる傾斜を有する微小領域の数の割合が大きくてよい。
【0009】
前記下層の横方向に沿った複数の領域は、上面に異なる凹凸を有する。
【0010】
前記表面層の横方向に沿った複数の領域は、上面に異なる凹凸を有する。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様においては、印刷物形成装置であって、上面の領域毎に凹凸の付いた下層を形成する下層形成部と、前記下層の上に画像を印刷して画像層を形成する画像層形成部と、前記画像層の上に領域毎に異なる凹凸の付いた表面層を形成する表面層形成部とを備える。
【0012】
前記下層形成部は、前記領域毎に予め定められた鏡面反射の方向に基づいて、前記領域毎に傾斜を形成してよい。
【0013】
前記下層形成部は、予め印刷物に照射される光の入射方向と及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、前記領域毎に予め定められた光沢度合いに応じて、前記領域毎の傾斜を形成してよい。
【0014】
前記下層形成部は、前記領域毎に予め定められた光沢度合いに応じて、前記領域に含まれる複数の微小領域の傾斜を形成してよい。
【0015】
前記表面層形成部は、前記領域毎に予め定められた鏡面反射の方向に基づいて、前記領域毎に傾斜を形成してよい。
【0016】
前記表面層形成部は、予め印刷物に照射される光の入射方向と及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、前記領域毎に予め定められた光沢度合いに応じて、前記領域毎の傾斜を形成してよい。
【0017】
前記表面層形成部は、前記領域毎に予め定められた光沢度合いに応じて、前記領域に含まれる複数の微小領域の傾斜を形成してよい。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様においては、プログラムであって、コンピュータを、上面の領域毎に凹凸の付いた下層を形成する下層形成部、前記下層の上に画像を印刷して画像層を形成する画像層形成部、前記画像層の上面に領域毎に異なる凹凸の付いた表面層を形成する表面層形成部として機能させる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第3の態様においては、印刷物形成方法であって、上面の領域毎に凹凸の付いた下層を形成する工程と、前記下層の上に画像を印刷して画像層を形成する工程と、前記画像層の上面に領域毎に異なる凹凸の付いた表面層を形成する工程とを備える。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1、及び図2は、本実施の形態の印刷物100の一例を示す。印刷物100は、表面層101と、画像層102と、及び下層103を備える。下層103は、画像が印刷される下地となる。下層103の材質は紙であってよい。また、下層103の材質は、木であってもよく、プラスティックであってもよい。要は、下層103は、その上に画像が印刷できるものであればよい。また、下層103の上面には、印刷される画像の部分領域毎に異なる凹凸が付されている。また、下層103の上面に拡散性のインクが塗布されていてもよい。下層103の凹凸は、下地が有する凹凸と拡散性のインクによって形成されてもよい。
【0023】
画像層102は、下層の上に設けられて画像を形成する。つまり、下層103の上に印刷された画像が画像層となる。また、下層103の上に画像を印刷したときの顔料、塗料等のインクの層が画像層102となる。インクは透明又は半透明の有色インクであってもよい。また、画像層102は、入射した光の一部を下層103に透過する。表面層101は、画像層102の上に設けられる。表面層101は、表面光沢を調整する。表面層101は、透明トナー、透明インク等の無色透明の材料が好ましい。また、表面層101は、入射した光の一部を画像層102に透過する。表面層101は、印刷される画像の部分領域毎に異なる凹凸が付されている。
【0024】
図1は、表面層101を反射する光の様子の一例を示す。表面層101は、上面に、画像層102が形成する画像の部分領域毎に異なる凹凸を有する。この表面層101の凹凸は、表面層101の表面粗さとなる。つまり、凹凸の度合いが大きいほど、表面が粗い。図1を見ると、表面層101は、凹凸がない若しくは凹凸が殆どない領域110と、凹凸がある領域111及び領域112とを有する。領域111は、領域112に比べ凹凸の度合いが小さい。つまり、領域111は、領域112に比べ表面が粗くない。領域110は、凹凸度合いがかなり小さいので、光沢度合いが高くなる。また、領域111は、領域110より凹凸度合いが大きいので、光沢度合いは領域110より低い。また、領域112も、領域110より凹凸度合いが大きいので、光沢度合いは領域110より低い。また、領域112は、領域111よりも凹凸度合いが大きいので、光沢度合いは領域111より低くなる。表面が粗くなればなるほど、光沢感が表現されなくなるので、領域110が最も光沢感が高く、次に、領域111の光沢感が高くなり、領域112が最も光沢感が最も低くなる。また、表面層101の光沢度合いは、表面層101の上面の凹凸の法線方向の分布の広がり具合によって変わる。例えば、凹凸の法線方向の分布の広がりが狭い場合は、光沢感が高くなり、凹凸の法線方向の分布の広がり具合が広い場合は光沢感が低くなる。領域112は、領域111より凹凸の法線方向の分布の広がり具合が広いとする。凹凸度合いが高くなればなるほど、凹凸の法線方向の分布の広がり具合が広くなる。表面の粗さは、凹凸の法線方向の分布の広がり具合を示す。
【0025】
表面層101の凹凸によって、鏡面反射、ヘイズ反射、拡散反射の光の調整することができる。表面層101の凹凸の傾斜角度、つまり、表面角度調整によって、鏡面反射、ヘイズ反射、拡散反射の光を調整する。また、面積変調による表面角度調整を行ってもよい。面積変調とは 、1つの画素を、それより小さいドットの集合体として表現するときに、異なる色のインクドットの面積比で混合比を表現する。マクロ的にこの画素を見ると、あたかもその混合比でインクが混合されたように見える。インクの色毎に応じて、表面層101の表面角度調整を行っても良い。
【0026】
ここで、表面層101の領域毎に付される凹凸の度合いは、画像層102で形成された画像の内容に応じて定められる。それぞれの領域の被写体を表面層101で照からせたい度合いに応じて、表面層101の上面の凹凸度合いが形成されてよい。例えば、画像層102で形成された画像のうち、A領域に表面層101で光沢を持たせたい場合は、A領域に対応する表面層101の領域、つまり、A領域の上にある表面層101の領域の凹凸度合いを小さくする。また、画像層102で形成された画像のうち、B領域に表面層101で光沢を持たせたくない場合は、B領域の上にある表面層101の領域の凹凸度合いをA領域の凹凸度合いより大きくする。このように、画像層102で形成された画像のそれぞれの領域に持たせたい表面層101による光沢度合いに応じて、表面層101のそれぞれの領域の凹凸度合いを決める。また、表面層101は、画像層102で形成される画像の被写体領域毎に異なる凹凸が形成されてよい。また、異なる凹凸の境界は、画像層102が形成する画像から定められる。また、異なる凹凸の境界は、被写体の境界であってもよい。
【0027】
この表面層101のそれぞれの領域の凹凸度合いは、ユーザが指定したそれぞれの領域の光沢度合いに応じて決まるようにしてもよく、また画像層102が形成する画像の画像データに基づいて自動的に決定された光沢度合いに応じて決まるようにしてもよい。表面層101のそれぞれの領域は、予め定められた光沢度合いに応じて決められてよい。光沢度合いの自動決定は、画像データを解析することにより、被写体の種類毎に表面層101の光沢度合いを決定してよい。被写体の種類毎に光沢度合いを記録したテーブルによって光沢度合いを自動的に決定してよい。また、「心理学評論Vol.51.NO2」のページ235〜249に記載されているように、輝度ヒストグラムの歪みを評価することで光沢度合いを決定してもよい。また、被写体に写りこむ光源像の大きさ、光現像の強さに応じて光沢度合いを決定してもよい。また、表面層101のそれぞれの領域の凹凸度合いを、ユーザが指定してもよい。表面層101は、入射された光を反射するので、入射された光の色をそのまま反射する。例えば、蛍光灯などの光が入射されたされた場合は、反射される光は白色の光となる。また、表面層101の上面は、第1の方向に凹凸が形成されてよい。また、表面層101の上面は、第2の方向に凹凸が形成されなくてよい。第1の方向とは、画像層102が形成する画像の横方向であってよい。また、第2の方向とは、画像層102が形成する画像の縦方向であってよい。つまり、表面層101の上面は、画像の横方向に沿って異なる凹凸を有してよい。人は、印刷物に印刷された画像を見る場合において、縦方向より横方向に視線を動かしやすい。したがって、画像の横方向に沿って、凹凸を異ならせることで、人が視線を横方向に動かしたときに、表面層101の光沢度が変わるように見える。
【0028】
図2は、下層103を反射する光の様子の一例を示す。下層103は、上面に、画像層102が形成する画像の部分領域毎に異なる凹凸を有する。この下層103の凹凸は、下層103の表面粗さとなる。つまり、凹凸の度合いが大きいほど、表面が粗い。下層103は、凹凸がない若しくは凹凸が殆どない領域121と、凹凸がある領域122及び領域123とを有する。領域122は、領域123に比べ、凹凸の度合いが小さい。つまり、領域122は、領域123に比べ表面が粗くない。領域121は、凹凸度合いがかなり小さいので、光沢度合いが高くなる。また、領域122は、領域121より凹凸度合いが大きいので、光沢度合いは領域121より低い。また、領域123は、領域121より凹凸度合いが大きいので、光沢度合いは領域121より低い。また、領域123は、領域122よりも凹凸度合いが大きいので、領域123の光沢度合いは領域122より低くなる。また、表面が粗くなればなるほど、光沢感が表現されなくなるので、領域121が最も光沢感が高く、次に、領域122の光沢感が高くなり、領域123が最も光沢感が低くなる。また、下層103の光沢度合いは、下層103の上面の凹凸の法線方向の分布の広がり具合によって変わる。例えば、凹凸の法線方向の分布の広がりが狭い場合は、光沢感が高くなり、凹凸の法線方向の分布の広がりが広い場合は光沢感が低くなる。領域123は、領域122より凹凸の法線方向の分布の広がり具合が広いとする。凹凸度合いが高くなればなるほど、凹凸の法線方向の分布の広がり具合が広くなる。表面の粗さは、凹凸の法線方向の分布の広がり具合を示す。
【0029】
ここで、下層103は、表面層101及び画像層102の下にあるので、表面層101及び画像層102を透過した光が下層103に入射する。したがって、下層103には、画像層102の画像の色が付いた光が入射される。
【0030】
下層103の凹凸によって鏡面反射、ヘイズ反射、拡散反射の光を調整することができる。下層103の凹凸の傾斜角度、つまり、表面角度調整によって、鏡面反射、ヘイズ反射、拡散反射の光を調整する。また、面積変調による表面角度調整を行ってもよい。インクの色毎に応じて、下層103の表面角度調整を行っても良い。
【0031】
ここで、下層103の領域毎に付される凹凸の度合いは、画像層102で形成される画像の内容に応じて定められる。それぞれの領域の被写体を下層103で照からせたい度合いに応じて、下層103の上面の凹凸度合いが形成されてよい。また、例えば、画像層102で形成された画像のうち、C領域に下層103で光沢を持たせたい場合は、C領域に対応する下層103の領域、つまり、C領域の下にある下層103の領域の凹凸度合いを小さくする。また、画像層102で形成された画像のうち、D領域に下層103で光沢を持たせたくない場合は、D領域の下にある下層103の領域の凹凸度合いをC領域の凹凸度合いより大きくする。このように、画像層102で形成された画像のそれぞれの領域に持たせたい下層103による光沢度合いに応じて、下層103のそれぞれの領域の凹凸度合いを決める。また、下層103は、画像層102で形成される画像の被写体領域毎に異なる凹凸が形成されてよい。また、異なる凹凸の境界は、画像から定められる。また、異なる凹凸の境界は、被写体の境界であってもよい。
【0032】
この下層103のそれぞれの領域の凹凸度合いは、ユーザが指定したそれぞれの領域の光沢度合いに応じて決まるようにしてもよく、また画像層102が形成した画像の画像データに基づいて自動的に決定された光沢度合いに応じて決まるようにしてもよい。下層103のそれぞれの領域は、予め定められた光沢度合いに応じて決められてよい。光沢度合いの自動決定は、画像データを解析することにより、被写体の種類毎に下層103の光沢度合いを決定してもよい。例えば、光沢のある被写体は光沢度合いを高く決定してもよい。被写体の種類毎に光沢度合いを記録したテーブルによって光沢度合いを自動的に決定してよい。また、「心理学評論Vol.51.NO2」のページ235〜249に記載されているように、輝度ヒストグラムの歪みを評価することで光沢度合いを決定してもよい。また、被写体に写りこむ光源像の大きさ、光現像の強さに応じて光沢度合いを決定してもよい。また、下層103のそれぞれの領域の凹凸度合いを、ユーザが指定してもよい。下層103は、画像層102を透過した光を照射するので、画像層102の色が付いた光を反射する。また、下層103の上面は、第1の方向に凹凸が形成されてよい。また、下層103の上面は、第2の方向に凹凸が形成されなくてよい。第1の方向とは、画像層102が形成する画像の横方向であってよい。また、第2の方向とは、画像層102が形成する画像の縦方向であってよい。
【0033】
このように、表面層101及び下層103のそれぞれの領域に凹凸を設けることにより、より質感を十分に表現することができ、質感の表現力を向上させることができる。例えば、表面層101は、凹凸度合いに応じて光沢度合いが変わるので、それぞれの領域の照かり度合いを変えることができる。例えば、図1に示すように、凹凸度合いが最も小さい表面層101の領域110は、輝きのある質感を表現することができる。ここで、表面層101に入射される光は、画像層102及び下層103に入射される光よりも多いので、表面層101の凹凸度合いが小さい領域は光沢感のある質感を表現しやすい。しかし、表面層101の上面で反射される光は、入射光の色と同じ色なので、画像の色で光沢感を出せない。例えば、入射光が蛍光灯の光の場合、反射される光は白色となり、輝く領域の画像の色が赤色等の有色であっても、該輝く領域は白色に見えてしまう。したがって、画像の色の光沢感を表面層101では表現できない。しかし、下層103に入射される光は、画像の色が付いた光なので、下層103の上面の凹凸度合いを変えることにより、画像の色の光沢感を表現できる。例えば、図2に示すように、凹凸度合いが最も小さい領域121は、光沢度合いが最も高いので、画像の色の光沢感を表現できる。また、凹凸度合いが最も大きい領域123は、画像の色の光沢感を低く表現することができる。なお、領域123は、領域122より凹凸の法線方向の広がり具合が広いものとする。これにより、画像層102のある領域に対応する表面層101の凹凸度合いと下層103の凹凸度合いとを組み合わせることにより、様々な質感を表現することができる。
【0034】
図3は、表面層101、及び下層103に傾斜を設けたときの、表面層101を反射する光の様子の一例を示す。表面層101は、上面に、画像層102が形成する画像の部分領域毎に異なる傾斜を有する。図3を見ると、表面層101は、右下がりに傾斜している領域131と、傾斜のない領域132と、右上がりに傾斜している領域133とを有する。領域131は、右下がりに傾斜しているので、光が斜め左の方向から照射された場合、領域131に入射する光の鏡面反射の方向は、領域132に入射する光の鏡面反射の方向より低い。また、領域133は、右上がりに傾斜しているので、光が斜め左の方向から照射された場合は、領域133に入射する光の鏡面反射の方向は、領域132に入射する光の鏡面反射の方向より高い。鏡面反射とは、面に対して光の入射角と同じ角度の反射角で反射する光のことをいい、鏡面反射の方向とは、鏡面反射の光が進む方向のことをいう。このように、表面層101の領域に傾斜角度を設けることにより、表面層101を鏡面反射する方向を変えることができる。これにより、領域毎に輝いて見える方向を変えることができる。なお、表面層101を鏡面反射する光は、入射光と同じ色の光となる。また、表面層101の複数の領域は、横方向に沿って異なる傾斜を有してもよい。また、表面層101の領域毎に付される傾斜は、画像層102で形成される画像の内容に応じて定められる。また、表面層101の領域毎に付される傾斜は、画像層102で形成される画像の被写体領域毎に定めてもよい。また、表面層101の領域毎に付される傾斜を、ユーザが指定してよい。また、異なる傾斜の境界は、被写体の境界であってよい。また、表面層101の領域毎の傾斜は、領域毎に予め定められた鏡面反射の方向となるように付される。
【0035】
図4は、表面層101、及び下層103に傾斜を設けたときの、下層103を反射する光の様子の一例を示す。下層103は、上面に、画像層102が形成する画像の部分領域毎に異なる傾斜を有する。図4を見ると、下層103は、右上がりに傾斜している領域141と、右下がりに傾斜している領域142と、傾斜のない領域143とを有する。領域141は、右上がりに傾斜しているので、光が左斜めの方向から照射された場合は、領域141に入射する光の鏡面反射の方向は、領域143に入射する光の鏡面反射の方向より高い。また、領域142は、右下がりに傾斜しているので、光が斜め左方向から照射された場合は、領域143に入射する光の鏡面反射の方向より低い。このように、下層103の領域に傾斜角度を設けることにより、下層103を鏡面反射する方向を変えることができる。これにより、領域毎に明るく見える方向を変えることができる。なお、下層103を鏡面反射する光は、画像層102を透過した光となり、画像層102によって色が付いた光となる。また、下層103の領域毎に付される傾斜は、画像層102で形成される画像の内容に応じて定められる。また、下層103の領域毎に付される傾斜は、画像層102で形成される画像の被写体領域毎に定めてもよい。また、下層103の領域毎に付される傾斜を、ユーザが指定してよい。また、異なる傾斜の境界は、被写体の境界であってよい。また、下層103の領域毎の傾斜は、領域毎に予め定められた鏡面反射の方向となるように付される。
【0036】
なお、図4及び図5では、表面層101及び下層103に傾斜を付けることについて説明したが、傾斜をつけるとともに、傾斜の表面の粗さを変えるようにしてもよい。つまり、図3及び図4で説明した形態と、図1及び図2で説明した形態とを組み合わせた形態であってもよい。また、下層103の横方向に沿った複数の領域は異なる傾斜を有してもよい。
【0037】
図5は、印刷物100を看板、掲示板として利用したときの様子の一例を示す。印刷物100を看板等にする場合は、印刷物100の設置位置、印刷物100に照射する光源161の位置、印刷物100を観察する人の位置とから、光源161が照射した印刷物100のそれぞれの領域に対する光の入射方向と、観察者の目162が看板のそれぞれの領域を見る観察方向を予め求めることができる。設置された印刷物100に照射される光の入射方向及び観察方向に基づいて、印刷物100の表面層101の領域毎の傾斜角度を形成する。光の入射方向と、観察方向とがわかっている場合は、画像の内容によって画像層102が形成する画像の部分領域毎の傾斜を定めてよく、被写体領域毎に凹凸を定めてもよい。また、光の入射方向と、観察方向とがわかっている場合は、画像層102が形成する画像の部分領域毎の光沢度合いに応じて、表面層101の傾斜角度を決めてもよく、領域毎に凹凸を定めてもよい。
【0038】
例えば、キラキラと光沢を最も出したい領域は、光源161から照射された光の該領域における鏡面反射の方向が、該領域から目162がある方向、つまり、観察方向となるように、該領域に傾斜角度を付ければよい。また、光沢をある程度出したい領域は、光源161から照射された光の該領域における鏡面反射の方向が、観察方向とずれた方向となるように該領域に傾斜角度を付ければよい。この鏡面反射の方向と観察方向とのなす角が0度のときに鏡面反射の方向と観察方向は一致する。また、鏡面反射の方向と観察方向とのなす角が0度より大きい場合は、鏡面反射の方向と観察方向とのなす角がずれることになる。この鏡面反射の方向と、目162がある方向がずれればずれるほど、つまり、なす角が大きくなるほど、光沢度は下がることになり、光沢度合いに応じて傾斜を変えればよい。また、暗くしたい領域は、光源161から照射された光が該領域に入射しないように該領域に傾斜角度を付ければよい。鏡面反射の方向とは、光が入射した領域に対して鏡面反射する方向のことをいう。
【0039】
図5を見ると、領域151は、光源161から照射された光の鏡面反射の方向が、目162がある観察方向となる傾斜角度を有するので、領域151は観察者にとって最も光沢感のある質感となる。また、領域152、領域153、及び領域154は、光源161から照射された光の鏡面反射の方向が、目162がある観察方向以外の方向となるような傾斜角度を有するので、領域152、領域153、及び領域154は、観察者にとって、領域151より光沢の度合いが小さい質感となる。このとき、領域152、領域153、及び領域154のうち、光源161から照射された光の鏡面反射の方向と、観察方向と最もずれがある領域154が、観察者にとって、一番光沢感がない領域となる。また、領域155には、光源161からの照射された光が入射しないので、観察者にとって暗い質感となる。なお、表面層101のそれぞれの領域の傾斜について説明したが、同様に下層103のそれぞれの領域に傾斜を付けてよい。つまり、下層103のそれぞれの領域で、画像の色の光沢感を出したい領域ほど、光源から入射した光の鏡面反射の方向が観察方向となるように傾斜を付けてもよい。また、暗い質感を出したい下領域の場合は、光源から入射した光が入射しないように傾斜を付けてもよい。
【0040】
このように、光源からの光が入射する方向と、観察方向とがわかっている場合には、表面層101及び下層103のそれぞれの領域に傾斜を設けることにより、より質感を十分に表現することができる。例えば、表面層101のうち、照からせたい領域ほど、照射される光の鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を付けるので、様々な光沢感を表現することができる。また、下層103のうち、照からせたい領域ほど、照射される光の鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を付けるので、画像の色の光沢感を表現することができる。また、表面層101に領域毎に傾斜を付けるとともに、図1に示すように傾斜の表面の表面粗さを変えるようにしてもよい。また、下層103の領域毎に傾斜を付けるとともに、図2に示すような傾斜の表面の粗さを変えるようにしてもよい。なお、凹凸は傾斜も含むので、傾斜は凹凸の下位概念になる。つまり、表面の粗さも傾斜も凹凸の概念の中に入る。
【0041】
なお、単に、光沢感を出したい領域の鏡面反射の方向が観察方向となるように、該領域に傾斜を付け、光沢感を出したくない領域の鏡面反射の方向は観察方向とならないように、該領域に傾斜を付けるようにしてもよい。
【0042】
また、光沢度合いを高くしたい領域ほど、該領域に照射される光の鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を設けるようにしたが、光沢度合いを高くしたい領域ほど、該領域に含まれる複数の微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となる割合を高くしてよい。この場合は、それぞれの微小領域毎に傾斜を設ける。つまり、照からたい領域ほど、該領域に含まれる複数の微小領域のうち、鏡面反射の反射方向が、観察方向となる傾斜を有する微小領域の数の割合を大きくしてもよい。例えば、光沢度合いがレベル0からレベル10まである場合に、レベル10の光沢度合いを持たせたい領域の場合は、該領域に含まれる全ての微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となるように、全ての微小領域に傾斜を設けてよい。また、レベル5の光沢度合いを持たせたい領域の場合は、その中の5割の微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となるように、それぞれの微小領域に傾斜を設けてもよい。また、レベル1の光沢度合いを持たせたい領域の場合は、その中の1割の微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となるように、それぞれの微小領域に傾斜を設けてよい。このように、領域の光沢度合いに応じて、該領域の全体の傾斜を変えるのではなく、光沢度合いに応じて、該領域の複数の微小領域の傾斜をそれぞれ変えてもよい。微小領域とは、同一の法線成分と見做せるミクロな領域のことをいう。微小領域のサイズが小さければ肌理の細かい光沢感が得られる。また、微小領域が大きければ、肌理の粗い、ぎらつくような光沢感が得られる。一般的には肌理の細かい光沢感の方が好ましいが、表現によっては肌理の大きい光沢感で表現した方が好ましい場合もある。
【0043】
図6は、本実施の形態の印刷物100の形成する印刷物形成装置200の一例を示す。印刷物形成装置200は、光沢度取得部201、方向取得部202、傾斜算出部203、粗さ算出部204、下層形成部205、画像層形成部206、及び表面層形成部207を備える。
【0044】
光沢度取得部201は、印刷物100のそれぞれの領域の光沢度合いを取得する。光沢度取得部201は、下層形成部205が形成する下層103でのそれぞれの領域の光沢度合いを取得してもよい。また、光沢度取得部201は、表面層形成部207が形成する表面層101でのそれぞれの領域の光沢度合いを取得してもよい。表面層101及び下層103のそれぞれの領域は、画像層102が形成する画像の部分領域に対応する。この光沢度合いは、ユーザが指定してもよい。ユーザは、印刷する画像データのそれぞれの領域の表面層101での光沢度合い、下層103での光沢度合いを指定してもよい。また、光沢度取得部201は、印刷対象となる画像データを解析することにより、それぞれの領域の表面層101の光沢度合い、下層103の光沢度合いを自動的に決定してもよい。また、輝度ヒストグラムの歪みを評価することで光沢度合いを決定してもく、被写体に写りこむ光源像の大きさ、光現像の強さに応じて光沢度合いを決定してもよい。画像層102が形成する画像の部分領域毎の光沢度合いは、画像の内容によって定められる。また、画像層102が形成する画像の被写体領域毎に定められてもよい。
【0045】
また、光沢度取得部201は、被写体の種類毎に、表面層101の光沢度と下層103の光沢度合い記録したテーブルを有してよい。光沢度取得部201は、画像データを解析して被写体の種類を検出することにより、検出した種類に応じて、該検出した種類の被写体の領域の表面層101の光沢度と、下層103の光沢度とをテーブルを用いて自動的に決定してもよい。例えば、光沢度合いが10段階あり、被写体が鏡の場合は、表面層101の光沢度合いを10、下層103の光沢度合いを0とする。また、被写体がテレビの場合は、表面層101の光沢度合いを5、下層103の光沢度合いを5とする。また、被写体がシャツの場合は、表面層101の光沢度合いを0、下層103の光沢度合いを5とする。光沢度合いの段階は、10が最も光沢感有り、0が最も光沢感がないとする。光沢度取得部201は、取得した印刷物100のそれぞれの領域の光沢度合いを傾斜算出部203及び粗さ算出部204に出力する。また、光沢度取得部201は、取得した表面層101のそれぞれの領域の光沢度合いを傾斜算出部203及び粗さ算出部204に出力してもよい。また、光沢度取得部201は、取得した下層103のそれぞれの領域の光沢度合いを傾斜算出部203及び粗さ算出部204に出力してもよい。
【0046】
方向取得部202は、印刷物100からみた光源161の光の入射方向、観察方向を取得する。この光源161の光の入射方向、観察方向はユーザが指定してもよい。また、看板を設置する場所と、光源161の光の入射方向及び観察方向とを対応付けたテーブルを有しており、ユーザが印刷物100を設置する場所を指定することにより、光源161の光の入射方向及び観察方向をテーブルから取得するようにしてもよい。方向取得部202は、取得した光源161の光の入射方向、観察方向を傾斜算出部203と粗さ算出部204に出力する。なお、方向取得部202は、印刷物100のそれぞれの領域に対する光源161の光の入射方向及び観察方向を取得してよい。
【0047】
傾斜算出部203は、光沢度取得部201から送られてきた表面層101のそれぞれの領域の光沢度合い、及び、方向取得部202から送られてきた光源161の光の入射方向及び観察方向から、それぞれの領域の傾斜角度を算出する。つまり、光源161の方向から光が入射した場合に、それぞれの領域の鏡面反射の方向が、それぞれの領域の光沢度合いに対応する予め定められた方向となるような傾斜角度を算出する。ここで、それぞれの領域の光沢度合いに対応する方向とは、光沢度が小さくなるほど、鏡面反射の方向と観察方向とのなす角が大きくなる方向となる。鏡面反射の方向と観察方向とのなす角が大きくなればなるほど、観察者にとって光沢が少なく感じるからである。また、傾斜算出部203は、暗さを表現したい領域に対しては、光源161からの光が入射しない傾斜角度を算出してもよい。例えば、暗さを表現したい領域に対しては、該領域の面が光源161の光の入射方向と平行となるような傾斜角度を算出してもよい。この暗さを表現したい領域とは、例えば、光沢度が閾値以下の領域を、暗さを表現したい領域としてもよい。傾斜算出部203は、算出した表面層101のそれぞれの領域の傾斜角度を表面層形成部207に出力する。また、傾斜算出部203は、ユーザが指定した表面層101の領域毎に付される傾斜を表面層形成部207に出力してよい。なお、傾斜算出部203は、表面層101のそれぞれの領域の光沢度合い、及び、方向取得部202から送られてきた光源161の光の入射方向及び観察方向から、それぞれの領域に含まれる複数の微小領域の傾斜角度を算出してよい。
【0048】
また、傾斜算出部203は、光沢度取得部201から送られてきた下層103のそれぞれの領域の光沢度合い、及び、方向取得部202から送られてきた光源161の光の入射方向及び観察方向から、それぞれの領域の傾斜角度を算出する。つまり、光源161の方向から光が入射した場合に、それぞれの領域の鏡面反射の方向が、それぞれの領域の光沢度合いに対応する予め定められた方向となるような傾斜角度を算出する。また、傾斜算出部203は、暗さを表現した領域に対しては、光源161からの光が入射しない傾斜角度を算出してもよい。傾斜算出部203は、算出した下層103のそれぞれの領域の傾斜角度を下層形成部205に出力する。また、傾斜算出部203は、ユーザが指定した下層103の領域毎に付される傾斜を下層形成部205に出力してよい。なお、傾斜算出部203は、下層103のそれぞれの領域の光沢度合い、及び、方向取得部202から送られてきた光源161の光の入射方向及び観察方向から、それぞれの領域に含まれる複数の微小領域の傾斜角度を算出してよい。
【0049】
粗さ算出部204は、光沢度取得部201から送られてきた表面層101のそれぞれの領域の光沢度から、表面層101のそれぞれの領域の表面粗さを算出する。予め粗さ算出部204は、表面層101のそれぞれの光沢度合いに対応した表面粗さを記録したテーブルを有してよく、該テーブルから光沢度合いに応じた表面粗さを算出してもよい。粗さ算出部204は、算出した表面層101のそれぞれの表面粗さを表面層形成部207に出力する。また、粗さ算出部204は、光沢度取得部201から送られてきた下層103のそれぞれの領域の光沢度から、下層103のそれぞれの領域の表面粗さを算出する。また、下層103のそれぞれの光沢度合いに応じた表面粗さを記録したテーブルを有してよく、該テーブルから光沢度合いに応じた表面粗さを算出してもよい。また、粗さ算出部204は、算出した下層103のそれぞれの領域の表面粗さを下層形成部205に出力する。粗さ算出部204は、ユーザが指定した表面層101の領域毎に付される粗さを表面層形成部207に出力してもよい。また、粗さ算出部204は、ユーザが指定した下層103の領域毎に付される粗さを下層形成部205に出力してよい。
【0050】
下層形成部205は、上面の領域毎に凹凸の付いた下層103を形成する。下層形成部205は、粗さ算出部204が表面粗さを算出した場合は、下層103のそれぞれの領域の表面粗さに応じて、領域毎に凹凸の付いた下層103を形成する。下層形成部205は、傾斜算出部203が傾斜角度を算出した場合は、下層103のそれぞれの領域の傾斜角度に応じて、領域毎に下層103のそれぞれの上面に凹凸を付けて、つまり傾斜を付けて下層103を形成する。例えば、光沢度合いが10段階あり、光沢度合いが10の領域は、鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を設けてよい。また、光沢度合いが5の領域は、鏡面反射の方向が、観察方向とのなす角が45度と成るように傾斜を設けてよい。また、光沢度合いが10段階あり、光沢度合いが10の領域は、その中の全ての微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を設けてよい。また、光沢度合いが5の領域は、その中の5割の微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を設けてよい。つまり、光沢度合いが高い領域ほど、領域の複数の微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となる割合を大きくしてよい。
【0051】
下層形成部205は、傾斜算出部203及び粗さ算出部204が傾斜角度及び表面粗さをそれぞれ算出した場合は、それぞれの領域の傾斜角度及び表面粗さに基づいて、領域毎に凹凸を付けて下層103を形成する。下層形成部205、印刷紙などの紙の上面を削ることにより領域毎に凹凸を付けて下層を形成してもよい。また、平面状の木の上面を削ることにより下層を形成してもよい。また、下層形成部205は、印刷紙などの紙にインクを噴出することにより領域毎に凹凸を付けて下層を形成してもよい。また、印刷紙などの紙に発泡インクを付着させて、下層形成部205は、発泡インクを発泡させて凹凸を形成してもよい。さらに、拡散性のインクを塗布して表面粗さを形成してもよい。また、面積変調による表面角度調整も行ってよい。また、下層形成部205は、粗さ算出部204が算出した粗さのみに応じて下層103を形成してもよく、傾斜算出部203が算出した傾斜角度のみに応じて下層103を形成してもよい。
【0052】
画像層形成部206は、印刷対象となる画像データを取得する。画像層形成部206は、取得した画像データの画像を、下層形成部205が形成した下層103の上に印刷をすることにより、下層103の上に画像層102を形成する。また、画像層形成部206は、面積変調による色・濃度調整を行ってもよい。画像層形成部206は、インクジェット方式、ドットインパクト方式、乾式電子写真方式などにより印刷してもよい。また、画像層形成部206は、レーザープリンタ、インクジェットプリンタなどの印刷機器を有してよい。また、プログラムを読み込んだCPU等の情報処理装置がプ、印刷機器を画像層形成部206として機能してもよい。
【0053】
表面層形成部207は、画像層102の上に領域毎に異なる凹凸のついた表面層101を形成する。表面層形成部207は、粗さ算出部204から送られてきた表面層101のそれぞれの領域の表面粗さに応じて、領域毎に凹凸の付いた表面層101を形成する。表面層形成部207は、傾斜算出部203から送られてきた表面層101のそれぞれの領域の傾斜角度に応じて、傾斜毎に表面層101のそれぞれの上面に凹凸を付けて、つまり傾斜を付けて表面層101を形成する。例えば、光沢度合いが10段階あり、光沢度合いが10の領域は、鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を設けてよい。また、光沢度合いが5の領域は、鏡面反射の方向が、観察方向とのなす角が45度と成るように傾斜を設けてよい。また、光沢度合いが10段階あり、光沢度合いが10の領域は、その中の全ての微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を設けてよい。また、光沢度合いが5の領域は、その中の5割の微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となるように傾斜を設けてよい。つまり、光沢度合いが高い領域ほど、領域の複数の微小領域の鏡面反射の方向が、観察方向となる割合を大きくしてよい。
【0054】
表面層形成部207は、傾斜算出部203及び粗さ算出部204から送られてきた、それぞれの領域の傾斜角度及び粗さに基づいて、領域毎に凹凸を付けて表面層101を形成する。また、表面層形成部207は、画像層102の上に光沢フィルムを貼り付け、該光沢フィルムの上面を削ることにより領域毎に凹凸を付けて表面層を形成してもよい。表面層形成部207は、光沢インク又は透明インクを噴出することにより領域毎に凹凸を付けて下層を形成してもよい。また、表面層形成部207は、粗さ算出部204が算出した粗さのみに応じて表面層101を形成してもよく、傾斜算出部203が算出した傾斜角度のみに応じて表面層101を形成してもよい。この下層形成部205、画像層形成部206、表面層形成部207により形成された物が図1から図5に示した印刷物100となる。なお、下層形成部205及び表面層形成部207は、キャンパス風、和紙風といった予め定められた幾何学的な模様の形状を、下層103及び表面層101にそれぞれ施してもよい。これにより、質感をさらに表現することができる。
【0055】
光沢度取得部201、方向取得部202、傾斜算出部203、粗さ算出部204、下層形成部205、画像層形成部206、及び表面層形成部207のそれぞれは、コンピュータなどの情報処理装置を用いて実現してもよく、電子回路などを用いて実現してもよい。また、印刷物形成装置200を、所定のプログラムを読み込んだ情報処理装置によって実現してもよい。また、印刷物形成装置は、特定のプログラムを記録する記録媒体を備えるようにしてもよい。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0057】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態の印刷物100の一例、及び、表面層101を反射する光の様子の一例を示す。
【図2】本実施の形態の印刷物100の一例、及び、下層103を反射する光の様子の一例を示す。
【図3】表面層101、及び下層103に傾斜を設けたときの、表面層101を反射する光の様子の一例を示す。
【図4】表面層101、及び下層103に傾斜を設けたときの、下層103を反射する光の様子の一例を示す。
【図5】印刷物100を看板、掲示板などに代用したときの様子の一例を示す。
【図6】本実施の形態の印刷物100の印刷物形成装置200の一例を示す。
【符号の説明】
【0059】
100 印刷物、101 表面層、102 画像層、103 下層、110 領域、111 領域、112 領域、121 領域、122 領域、123 領域、131 領域、132 領域、133 領域、141 領域、142 領域、143 領域、151 領域、152 領域、153 領域、154 領域、155 領域、161 光源、162 目、200 印刷物形成装置、201 光沢度取得部、202 方向取得部、203 傾斜算出部、204 粗さ算出部、205 下層形成部、206 画像層形成部、207 表面層形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
領域毎に異なる凹凸が付された上面を有する下層と、
前記下層の上に設けられて画像を形成し、入射した光の一部を前記下層に透過する画像層と、
前記画像層の上に設けられ、領域毎に異なる凹凸が付された上面を有し、入射した光の一部を前記画像層に透過する表面層と
を備える印刷物。
【請求項2】
前記下層は、
予め前記印刷物に照射される光の方向及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、照からせたい前記領域ほど、前記印刷物に照射される光の鏡面反射の反射方向が、該印刷物を観察する人の観察方向となる傾斜を有している
請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記下層は、
予め前記印刷物に照射される光の方向及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、照からせたい前記領域ほど、該領域に含まれる複数の微小領域のうち、鏡面反射の反射方向が前記観察方向となる傾斜を有する微小領域の数の割合が大きい
請求項1に記載の印刷物。
【請求項4】
前記表面層は、
予め前記印刷物に照射される光の方向及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、照からせたい前記領域ほど、前記印刷物に照射される光の鏡面反射の反射方向が、該印刷物を観察する人の観察方向となる傾斜を有している
請求項1から3の何れかにに記載の印刷物。
【請求項5】
前記表面層は、
予め前記印刷物に照射される光の方向及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、照からせたい前記領域ほど、該領域に含まれる複数の微小領域のうち、鏡面反射の反射方向が前記観察方向となる傾斜を有する微小領域の数の割合が大きい
請求項1から3の何れかに記載の印刷物。
【請求項6】
前記下層の横方向に沿った複数の前記領域は、上面に異なる凹凸を有する
請求項1から5の何れかに記載の印刷物。
【請求項7】
前記表面層の横方向に沿った複数の前記領域は、上面に異なる凹凸を有する
請求項1から6の何れかに記載の印刷物。
【請求項8】
上面の領域毎に凹凸の付いた下層を形成する下層形成部と、
前記下層の上に画像を印刷して画像層を形成する画像層形成部と、
前記画像層の上に領域毎に異なる凹凸の付いた表面層を形成する表面層形成部と
を備える印刷物形成装置。
【請求項9】
前記下層形成部は、
前記領域毎に予め定められた鏡面反射の方向に基づいて、前記領域毎に傾斜を形成する
請求項8に記載の印刷物形成装置。
【請求項10】
前記下層形成部は、
予め印刷物に照射される光の入射方向と及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、前記領域毎に予め定められた光沢度合いに応じて、前記領域毎の傾斜を形成する
請求項9に記載の印刷物形成装置。
【請求項11】
前記下層形成部は、
前記領域毎に予め定められた光沢度合いに応じて、前記領域に含まれる複数の微小領域の傾斜を形成する
請求項10に記載の印刷物形成装置。
【請求項12】
前記表面層形成部は、
前記領域毎に予め定められた鏡面反射の方向に基づいて、前記領域毎に傾斜を形成する
請求項8から11の何れかに記載の印刷物形成装置。
【請求項13】
前記表面層形成部は、
予め印刷物に照射される光の入射方向と及び前記印刷物を観察する人の観察方向がわかっている場合に、前記領域毎に予め定められた光沢度合いに応じて、前記領域毎の傾斜を形成する
請求項12に記載の印刷物形成装置。
【請求項14】
前記表面層形成部は、
前記領域毎に予め定められた光沢度合いに応じて、前記領域に含まれる複数の微小領域の傾斜を形成する
請求項13に記載の印刷物形成装置。
【請求項15】
コンピュータを、
上面の領域毎に凹凸の付いた下層を形成する下層形成部、
前記下層の上に画像を印刷して画像層を形成する画像層形成部、
前記画像層の上面に領域毎に異なる凹凸の付いた表面層を形成する表面層形成部
として機能させるプログラム。
【請求項16】
上面の領域毎に凹凸の付いた下層を形成する工程と、
前記下層の上に画像を印刷して画像層を形成する工程と、
前記画像層の上面に領域毎に異なる凹凸の付いた表面層を形成する工程と
を備える印刷物形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−870(P2011−870A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148113(P2009−148113)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】