説明

印刷物編集用プログラム、印刷物編集装置、及び、印刷物編集方法

【課題】柔軟な印刷データの編集を既存アプリケーションのプログラムを変更することなく実行することのできる印刷物編集用プログラム等を提供する。
【解決手段】印刷物構成情報に基づいてアプリケーションから出力される印刷データによる印刷物を判別し、編集情報に基づいて印刷データを編集して通信ポートに出力するコンピューターに、印刷物構成情報と編集情報を生成する処理を実行されるプログラムが、印刷データを印刷内容の一塊を表すオブジェクトに分割して当該オブジェクトの構成情報を生成し、当該構成情報を印刷データによる印刷物の印刷物構成情報として記憶する工程と、オブジェクトの構成情報を表示しユーザーの編集指示を受信する工程と、受信した編集指示の内容を編集内容とした編集情報を生成し、印刷データによる印刷物と対応付けて記憶する工程を前記コンピューターに実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存アプリケーションから出力される印刷データを編集するための印刷物編集用プログラム等に関し、特に、ユーザーの意思を反映した柔軟な印刷データの編集を、既存アプリケーションのプログラムを変更することなく容易に実行することのできる印刷物編集用プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットなどの小売販売業においては販売管理システムであるPOSシステムが普及しており、当該システムでは、サーバーとネットワークで接続される複数の端末装置(レジ)が当該装置に備えられるアプリケーションに従って動作し各種の処理を実行する。また、通常、当該端末装置には、それぞれ、プリンターが設けられ、上記アプリケーションの指示によりレシートやクーポンの出力を実行する。また、このような出力を伴うPOSシステムと類似した構成のシステムとしては、病院で用いられるシステム、運送会社で用いられるシステムなどがある。
【0003】
このようなシステムにおいても、導入後の技術向上や業務改善要望に伴って、機能拡張、機能変更の必要が出てくるが、例えば、POS端末から出力するレシートのレイアウトの変更及びカラー化等が必要になる場合があるが、このようなシステムは一般に業務の中枢として常時利用されているものであり、また、他のシステムとも複雑に連携している場合も多いため、そのアプリケーションを改変することは通常容易ではない。
【0004】
かかる課題については、出力処理系の機能に関し、従来、以下のような提案がなされている。
【0005】
下記特許文献1では、すでに存在するアプリケーションプログラムを修正する必要なしに、従来のモデムに必要とされていたマイクロプロセッサおよびメモリを除去することが可能なパーソナルコンピュータ中でモデム機能を実行する装置について記載されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、アプリケーションを変更することなく、1つの通信ポートにアクセスすることにより、他の通信ポートに接続されているプリンターへも同時に印刷を実行させることができ、複製印刷を可能にする装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−69427号公報
【特許文献2】特開2006−338443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の内容では、モデム機能、複製印刷機能など出力系の限られた機能を実現するに留まり、他の多彩な要望を実現することはできない。また、上記特許文献2では、OSカーネル層での処理であるため、一般に機能構築(プログラム開発等)が容易ではなく機能も限られてしまうという課題がある。
【0009】
また、POSシステムにおいては、レシート等の出力物について、デザインを変更したい、時間帯や季節で出力内容を変更したいなどの要望がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、既存アプリケーションから出力される印刷データを編集するための印刷物編集用プログラムであって、ユーザーの意思を反映した柔軟な印刷データの編集を、既存アプリケーションのプログラムを変更することなく容易に実行することのできる印刷物編集用プログラム、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、印刷物の出力を指示するアプリケーションを備え、予め記憶された印刷物構成情報に基づいて当該アプリケーションから出力される印刷データによる印刷物を判別し、当該判別した印刷物に対して予め記憶される編集情報に基づいて当該印刷データを編集し、当該編集後の印刷データを通信ポートに出力するコンピューターに、前記印刷物構成情報と前記編集情報を生成する処理を実行される印刷物編集用プログラムが、前記印刷データを、予め記憶されたルールに基づいて、印刷内容の一塊を表すオブジェクトに分割し、当該オブジェクトの構成情報を生成し、当該構成情報を当該印刷データによる印刷物の前記印刷物構成情報として記憶する工程と、前記生成したオブジェクトの構成情報をユーザーに表示し、当該表示に対するユーザーの前記オブジェクト毎の編集指示を受信する工程と、前記受信した編集指示の内容を前記オブジェクト毎の編集内容とした前記編集情報を生成し、当該生成した編集情報を当該印刷データによる印刷物と対応付けて記憶する工程と、を前記コンピューターに実行させる、ことである。
【0012】
更に、上記の発明において、その好ましい態様は、前記オブジェクトは、前記印刷データによって印刷内容が変わるオブジェクトと印刷内容が変わらないオブジェクトを含む、ことを特徴とする。
【0013】
更に、上記の発明において、好ましい態様は、前記編集情報は、少なくとも、前記オブジェクトの印刷内容及び配置位置の情報を含む、ことを特徴とする。
【0014】
更にまた、上記の発明において、一つの態様は、前記印刷物構成情報に基づいた印刷物の判別は、前記印刷データの前記オブジェクトの構成と前記印刷物構成情報による前記オブジェクトの構成を比較することにより行われる、ことを特徴とする。
【0015】
また、上記の発明において、好ましい態様は、更に、前記オブジェクトの構成情報をユーザーに表示した際に、ユーザーによる当該構成情報の変更指示を受信して当該構成情報を変更し、当該変更指示に基づいて前記ルールを更新する工程を、前記コンピューターに実行させる、ことを特徴とする。
【0016】
更に、上記の発明において、その好ましい態様は、1の印刷物に対して複数の前記編集情報を記憶することが可能である、ことを特徴とする。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、印刷物の出力を指示するアプリケーションを備え、予め記憶された印刷物構成情報に基づいて当該アプリケーションから出力される印刷データによる印刷物を判別し、当該判別した印刷物に対して予め記憶される編集情報に基づいて当該印刷データを編集し、当該編集後の印刷データを通信ポートに出力する印刷物編集装置が、前記印刷データを、予め記憶されたルールに基づいて、印刷内容の一塊を表すオブジェクトに分割し、当該オブジェクトの構成情報を生成し、当該構成情報を当該印刷データによる印刷物の前記印刷物構成情報として記憶し、前記生成したオブジェクトの構成情報をユーザーに表示し、当該表示に対するユーザーの前記オブジェクト毎の編集指示を受信し、前記受信した編集指示の内容を前記オブジェクト毎の編集内容とした前記編集情報を生成し、当該生成した編集情報を当該印刷データによる印刷物と対応付けて記憶する、ことである。
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、印刷物の出力を指示するアプリケーションを備え、予め記憶された印刷物構成情報に基づいて当該アプリケーションから出力される印刷データによる印刷物を判別し、当該判別した印刷物に対して予め記憶される編集情報に基づいて当該印刷データを編集し、当該編集後の印刷データを通信ポートに出力する印刷物編集装置における、印刷物編集方法が、前記印刷物編集装置が、前記印刷データを、予め記憶されたルールに基づいて、印刷内容の一塊を表すオブジェクトに分割し、当該オブジェクトの構成情報を生成し、当該構成情報を当該印刷データによる印刷物の前記印刷物構成情報として記憶する工程と、前記印刷物編集装置が、前記生成したオブジェクトの構成情報をユーザーに表示し、当該表示に対するユーザーの前記オブジェクト毎の編集指示を受信する工程と、前記印刷物編集装置が、前記受信した編集指示の内容を前記オブジェクト毎の編集内容とした前記編集情報を生成し、当該生成した編集情報を当該印刷データによる印刷物と対応付けて記憶する工程と、を有する、ことである。
【0019】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用したPOS端末装置の実施の形態例に係る概略構成図である。
【図2】POS端末装置の概略機能構成図である。
【図3】編集処理に用いられるデータの構成を示す図である。
【図4】オブジェクト構造データ802及び編集ルール803の生成処理の手順を例示したフローチャートである。
【図5】編集前後のレシートを例示した図である。
【図6】ユーザーに表示されるオブジェクト構成と編集内容を示す図である。
【図7】編集ルール803の一例を示す概念図である。
【図8】編集処理の一例を示したフローチャートである。
【図9】POSシステムの改良を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0022】
図1は、本発明を適用したPOS端末装置の実施の形態例に係る概略構成図である。また、図2は、当該POS端末装置の概略機能構成図である。図1及び図2に示すPOS端末装置2(印刷物編集装置)が本発明を適用した装置であり、当該装置では、POSアプリケーション201から出力される印刷データ(例えば、レシートのデータ)を、通信ポート209に出力される前にOSカーネル層230の仮想ポート203で取得する。そして、取得したデータをアプリケーション層220のポートハンドラー204で受け取り、データ解析部205、データ加工部206等において、当該データに対して印刷内容を編集する処理などを実行する。その後、ポートハンドラー204から処理後のデータに対応した通信ポート209へ、処理後の印刷データを出力する。
【0023】
また、上記印刷内容の編集処理においては、各印刷物についての、オブジェクト構造を示すデータ(オブジェクト構造データ802、印刷物構成情報)及びどのように編集するかをオブジェクト毎に示すデータ(編集ルール803、編集情報)が参照されて使用される。これらオブジェクト構造データ802及び編集ルール803は、事前に生成されて当該POS端末装置に保持されているが、当該POS端末装置には、これらデータの生成機能が備えられる。
【0024】
当該生成機能によれば、各印刷物について、複数の印刷データを比較することにより、所定のオブジェクト抽出ルール801に基づいて、当該印刷物内のオブジェクトを抽出して上記オブジェクト構造データ802を生成する。その後、そのオブジェクト構造をユーザーに表示し、ユーザーの編集指示をオブジェクト毎に受け、当該指示に基づいて上記編集ルール803を生成する。
【0025】
本POS端末装置2では、かかる処理を実行することにより、ユーザーの意思を反映した柔軟な印刷データの編集を、既存アプリケーションのプログラムを変更することなく容易に実行する。
【0026】
本実施の形態例では、販売店舗などで用いられるPOSシステムを想定しており、図1に示すように、POSサーバー1にネットワーク4を介して複数のPOS端末装置2が接続される構成をしている。POSサーバー1は、コンピューターシステムで構成され、上記複数のPOS端末装置2の管理とそれらのPOS端末装置2から取得される各種データの集計、管理等の処理を実行する。
【0027】
POS端末装置2は各レジに設置され、それぞれ、プリンター3と接続される。プリンター3は、POS端末装置2から出力される印刷データに従って、レシート等を出力する。従って、POS端末装置2はプリンター3のホスト装置と位置づけられる。
【0028】
各POS端末装置2は、図1に示すように、POS端末本体21、ディスプレイ22、キーボード・マウス23、バーコードリーダー24、及びカードリーダー25等を備える。ディスプレイ22は、顧客に商品の金額等を表示し、キーボード・マウス23は、価格や商品コードなどの商品情報、性別、年代などの顧客情報をオペレーターが入力するために用いられる。また、バーコードリーダー24は、商品に付されたバーコードを読み取って商品情報を取得し、カードリーダー25は、各種カードに記憶された情報を読み取って、清算に必要な情報などを取得する。
【0029】
また、ディスプレイ22及びキーボード・マウス23は、後述する、ユーザーによる編集指示等にも用いられる。
【0030】
POS端末本体21は、上述したキーボード・マウス23、バーコードリーダー24、及びカードリーダー25から取得される情報に基づいて、レシートやクーポンに印刷する情報を生成して、プリンター3へ出力する。当該POS端末本体21は、コンピューターで構成され、図示していないが、CPU、RAM、ROM、HDDなどを備えている。後述するPOSアプリケーション201のプログラムや印刷物の編集処理のためのプログラム等は、ROMに記憶され、それらのプログラムに従ってCPUが動作することにより各処理が実行される。
【0031】
また、POS端末装置2は、図2に示すような機能構成となっている。POSアプリケーション201は、上述したレシート等に印刷する情報を生成して出力する処理を行うが、ここで生成されるデータは、上記編集処理を行う前の元データである。また、生成されるデータは、そのままプリンター3Aへ出力できる形式のデータ、あるいは、プリンター3A用ドライバー202に渡す形式のデータである。前者は、テキストだけの印刷など簡単な印刷データの場合に生成される。
【0032】
また、プリンター3A用ドライバー202は、プリンター3A用のプリンタードライバーであり、POSアプリケーション201から出力されたデータを、プリンター3Aの機種(デバイス)に依存したコマンドによる、プリンター3Aが受信して印刷可能な印刷デ
ータとして出力する。
【0033】
なお、POSアプリケーション201とプリンター3A用ドライバー202は、図2に示すように、コンピューターのオペレーティングシステム(OS)に基づきその上でプログラムが各処理を実行するアプリケーション層220に位置する。また、両者は、それぞれの処理内容を指示する上記ROMに格納されたプログラムと当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU等によって構成される。また、POSアプリケーション201とプリンター3A用ドライバー20は、本発明を適用する前の従来装置で用いられていたものがそのまま使用される。
【0034】
次に、仮想ポート203は、POSアプリケーション201又はプリンター3A用ドライバー202から出力された印刷データ(ここでは、元印刷データと呼ぶ)を、通信ポート209が受け取る前に上記オペレーティングシステムが位置するOSカーネル層230で受け取る部分である。そして、仮想ポート203は、取得した元印刷データをポートハンドラー204へ引き渡す。なお、ここでは、仮想ポート203が受け取る元印刷データは、テキストのオブジェクトで構成されているものとする。
【0035】
次に、ポートハンドラー204、データ解析部205、データ加工部206、コマンド変換部207、ルール設定部210、及びデータ格納部208は、元印刷データに対する編集処理等を行う部分であり、これら各部の処理により、上記POSアプリケーション201から出力された印刷物の編集を行うことが可能になる。
【0036】
ポートハンドラー204は、上記仮想ポート203から引き渡された元印刷データをデータ解析部205に転送すると共に、編集処理後の印刷データ(ここでは、処理後印刷データと呼ぶ)を受け取って、当該データに対応した通信ポート209へ、処理後印刷データを出力する処理を行う。
【0037】
データ解析部205は、元印刷データを解析して処理内容を決定すると共に、処理後印刷データを出力する通信ポート209を決定する部分である。データ解析部205は、当該処理を行うに当たり、適宜、データ格納部208に格納される情報(オブジェクト構造データ802等)を参照する。
【0038】
次に、データ加工部206は、データ解析部205が決定した処理内容に従って、元印刷データを加工する部分である。また、データ加工部206は、必要に応じて、処理後印刷データの出力先プリンター3に依存した処理(機種固有の処理)を実行する。なお、データ加工部206は、これらの処理を実行するに当たり、適宜、データ格納部208の情報(編集ルール803等)を参照する。
【0039】
また、コマンド変換部207は、元印刷データで指定されていた通信ポート209に接続されたプリンター3と、処理後印刷データが出力される通信ポート209に接続されたプリンター3とで使用コマンドが異なる場合に、コマンドを変更する処理を行う部分である。
【0040】
次に、ルール設定部210は、ユーザーの意思を反映した印刷物の編集内容を設定する部分であり、ここで、編集ルール803が生成されてデータ格納部208に保存される。また、ルール設定部210は、編集ルール803の生成に先立って、編集対象印刷物のオブジェクト構成を決定し、オブジェクト構造データ802を生成する。生成したオブジェクト構造データ802は、同様に、データ格納部208に保存される。また、編集内容についてユーザーからの指示を受けるために、ルール設定部210は、ディスプレイ22に表示するユーザーインターフェース画面を提供する。当該ルール設定部210が実行する
処理が本POS端末装置2の大きな特徴であり、その具体的な内容については後述する。
【0041】
なお、仮想ポート203、ポートハンドラー204、データ解析部205、データ加工部206、コマンド変換部207、及びルール設定部210は、それぞれ、各部が行う処理を指示するプログラムと当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU等によって構成される。また、ルール設定部210に係るプログラムが本発明の印刷物編集用プログラムに相当する。
【0042】
データ格納部208は、上記データ解析部205及びデータ加工部206が使用する各種情報を記憶する部分である。ここに格納される主要な情報は、オブジェクト抽出ルール801、オブジェクト構造データ802、編集ルール803、及び、編集処理に用いるロゴなどの画像データ等である。なお、当該データ格納部208は上記HDD等で構成される。
【0043】
図3は、編集処理に用いられるデータの構成を示す図である。オブジェクト抽出ルール801は、印刷物に印刷される画像の一塊を表すオブジェクトを、印刷データから抽出するためのルール情報である。当該ルール情報は、図3に示すように、各印刷物に対して共通に保持され、基本ルールと後からユーザーによって追加されるルールを有している。基本ルールは、印刷データがテキストの場合、例えば、スペースや改行コマンドをオブジェクトの区切として、これら区切間の画像を1オブジェクトとして抽出する、というものである。また、ユーザーによる追加ルールは、後述するオブジェクト構成の変更時に追加されるものであり、例えば、ハイフォンで繋がっている左右の画像をそれぞれ異なるオブジェクトとして抽出する、2行に亘る所定のテキストを1オブジェクトとして抽出する、などのルールである。このオブジェクト抽出ルール801に従って、ルール設定部210は、元印刷データに対するオブジェクト抽出処理を実行する。
【0044】
次に、オブジェクト構造データ802は、その印刷物に含まれる上記オブジェクトの構成を示す情報である。当該情報は、印刷物の種類によって異なるため、各印刷物毎に生成されて記憶される。図3に示す例では、印刷物A、B、Cに対して、それぞれ対応するオブジェクト構造データ802A、802B、802Cが存在する。当該オブジェクト構造データ802は、上記抽出されるオブジェクト毎に、印刷毎に印刷内容が異なる可変部であるか、あるいは、常に印刷内容が同じである固定部であるかの識別、固定部である場合にはその画像の内容、印刷物上での位置情報等を有する。当該オブジェクト構造データ802は、ルール設定部210が提供する上記ユーザーインターフェース画面に表示され、ユーザーによる変更が可能であり、また、確定後の表示されたオブジェクト構造データ802に対して、ユーザーによる印刷内容の編集指示がなされる。また、当該オブジェクト構造データ802は、実際に元印刷データに対する編集処理を実行する際に、元印刷データの識別及び当該データの含まれるオブジェクトの判別に用いられる。
【0045】
次に、編集ルール803は、各印刷物の編集内容を定めたルール情報であり、図3に示すように、各印刷物に対して複数生成して記憶しておくことができる。図3に示す例では、印刷物Aに対して3つの編集ルール803A(a)、803A(b)、803A(c)が存在する。印刷物B及びCに対しても、それぞれ、編集ルール803B及び編集ルール803C(a)、803C(b)が存在する。例えば、季節によってレシートのデザインを変更したい場合などには、1種類の元印刷データに対して、各季節用の編集内容を示す複数の編集ルール803が保存される。
【0046】
また、編集ルール803は、上記ユーザーによる編集指示の内容をルール情報としたものであり、上述したオブジェクト毎にその編集内容が収められる。記憶された編集ルール803は、実際に元印刷データに対する編集処理を実行する際に参照され、ここに収めら
れたルールに従った編集処理がなされる。
【0047】
次に、POS端末装置2には、物理層240に通信ポート209Aが備えられ、プリンター3Aに接続される。ここでは、一例として、プリンター3Aに、本発明を適用する前の従来システムにおけるプリンターがそのまま用いられる。なお、図2に点線で示されるように、二つ目の通信ポート209Bにプリンター3Bが接続され、プリンター3Aがモノクロプリンターであり、プリンター3Bがカラープリンターである、という構成にすることや、3台以上のプリンター3を接続する構成とすることもできる。また、プリンター3Aを上記従来システムで使用されていなかった新しいものにする構成も可能である。なお、通信ポート209は、シリアル通信のCOM通信ポートやUSB通信を行うUSB通信ポートなどである。
【0048】
以上説明したような構成を有する本POS端末装置2では、上述したオブジェクト構造データ802及び編集ルール803の生成処理、及び、それらの情報を用いた印刷物の編集処理に特徴があり、以下、その具体的な処理手順について説明する。まず、ルール設定部210によるオブジェクト構造データ802及び編集ルール803の生成処理について説明する。図4は、当該生成処理の手順を例示したフローチャートである。
【0049】
かかる生成処理は、事前にユーザーが編集内容をPOS端末装置2に設定するための処理であり、ユーザーの所望のタイミングで、ルール設定部210が起動される。具体的には、キーボード・マウス23によるユーザーの操作により、ルール設定部210が起動し、ユーザー操作で入力される印刷物の識別情報により、編集内容を設定する印刷物が決定される。
【0050】
なお、ここでは、レシートの印刷内容を編集するための設定を行う際を例にして説明する。図5は、その編集前後のレシートを例示した図である。図5の(a)は、編集前のレシートであり、元印刷データが示す印刷内容である。すなわち、元印刷データをそのまま印刷すれば、このようなレシートが出力される。一方、図5の(b)は、編集後のレシートであり、ユーザーが望む出力内容となっている。そして、当該生成処理によって生成される編集ルール803に基づく、元印刷データに対するデータ加工部206の処理によって、このようなレシートが出力されることになる。
【0051】
この例において、編集内容は、図5に示されるように、店名のロゴ化、配置位置の変更、表現の変更(ボールドの使用)、罫線など新オブジェクトの追加等である。
【0052】
図4に戻って、上述のように、ユーザーの指示を受けると(ステップS1)、ルール設定部210は、指示された印刷物について既にオブジェクト構造データ802がデータ格納部208に存在するか否かをチェックする(ステップS2)。図3に示した例では、指定された印刷物が印刷物Aであれば、オブジェクト構造データ802Aがあるか否かがチェックされる。
【0053】
当該印刷物に対して以前に編集ルール803の生成を行ったことがある場合には、オブジェクト構造データ802が存在するので、上記チェックの後、処理がステップS5に移行する(ステップS2のYes)。
【0054】
一方、当該印刷物に対して初めて編集ルール803の生成を行う場合には、オブジェクト構造データ802が存在しないので(ステップS2のNo)、上記チェックの後、ルール設定部210は、当該印刷物の複数の印刷データを受信し一時的に記憶(蓄積)する(ステップS3)。
【0055】
具体的には、ユーザーに対して上記指定された印刷物の印刷データをPOSアプリケーション201から出力するように指示し、より具体的には、その印刷物の異なる複数の印刷データを、例えば、5レシート分の印刷データを、出力するようにディスプレイ22に表示し、ユーザー操作によって出力される上記印刷データを適宜、上記HDD又は上記RAMに記憶する。
【0056】
その後、ルール設定部210は、これら蓄積した印刷データを用いて、当該印刷物の印刷内容を分析し、当該印刷物についての上記オブジェクト構造データ802を生成する(ステップS4)。
【0057】
当該処理は、具体的には一例として、以下のような手順で行われる。まず、ルール設定部210は、上記蓄積した複数の印刷データを相互に比較し、複数の印刷データにおいて印刷内容(ここでは、テキストデータ)が同一である固定部を抽出する。そして、レシート上の表記順に(左から右へ向かう方向に、且つ上から下へ向かう方向に)連続する上記固定部を1つのオブジェクトとする。
【0058】
同様に、上記印刷データの比較の結果、その印刷内容が印刷データ間で異なる部分を、すなわち、固定部でない部分を可変部として抽出し、上記表記順に連続する上記固定部を1つのオブジェクトとする。
【0059】
次に、ルール設定部210は、上記抽出した固定部及び可変部のオブジェクトを、上述したオブジェクト抽出ルール801に従って分割する。すなわち、上記抽出したオブジェクトの中に、スペースや改行のコマンドが含まれる場合には、それを区切としてオブジェクトを分割し、1つのオブジェクトから複数のオブジェクトを生成する。
【0060】
図6は、ユーザーに表示されるオブジェクト構成と編集内容を示す図である。図6の(a)は、後述するオブジェクト構成のユーザー表示時の表示内容であるが、ここで扱っている図5の(a)に示すレシートのオブジェクトが明示されている。当該レシートの印刷内容において、表記順に「(公序良俗違反につき、不掲載)松本南店」から「担当:」までは固定部であり連続しているので、上記処理において当初は1つのオブジェクトとして抽出されるが、その途中に改行が区切として含まれるので、上記オブジェクトの分割処理により、複数の(ここでは5つの)オブジェクトに分割される。図6の(a)に示す四角で囲われた各部分が分割後の1つのオブジェクトを表している。例えば、最初の固定部のオブジェクトは「(公序良俗違反につき、不掲載)松本南店」である。可変部についても同様に、オブジェクトの抽出と分割がなされる。
【0061】
以上のように分割後のオブジェクトが抽出されると、ルール設定部210は、抽出された各オブジェクトに識別情報を付して、その識別情報毎に、固定部であるか可変部であるかの識別子、固定部である場合にはその印刷内容、印刷物上(レシート上)での配置位置(表記順で印刷領域が変化する可変部以降については相対位置)等の情報を、上記蓄積した印刷データに基づいて生成し、当該印刷物のオブジェクト構造データ802とする。すなわち、図6の(a)に示すオブジェクト構成を表すための情報が生成される。
【0062】
このようにオブジェクト構造データ802が生成されると、あるいは、上述したように既にオブジェクト構造データ802が存在する場合には、ルール設定部210は、当該オブジェクト構造データ802に基づく当該印刷物のオブジェクト構成をユーザーに表示する(ステップS5)。そして、ここでは、図6の(a)に示すオブジェクト構成がディスプレイ22に、上述したユーザーインターフェース画面として表示される。なお、図6では、ユーザーインターフェース画面のオブジェクト構成を表示する部分のみを示しており、当該画面にはこの他にユーザー操作のための各種インターフェースが表示される。図6の(a)において、aで示されるオブジェクトは固定部オブジェクトの一例であり、bで
示されるオブジェクトは可変部オブジェクトの一例である。
【0063】
かかる表示がなされると、ユーザーは、表示されたオブジェクト構成のままで良いか否かを確認し(ステップS6)、オブジェクト構成を変更したい場合には、変更内容を指示する操作を上記画面のインターフェースを用いて行う(ステップS6のYes)。
【0064】
当該変更指示を受けたルール設定部210は、その指示に従ってオブジェクトの組み直しを行って、それに対応するようにオブジェクト構造データ802を変更する(ステップS7)。当該変更では、複数のオブジェクトを1つのオブジェクトに統合したり、逆に、1つのオブジェクトを複数のオブジェクトに分割したりすることが行われる。例えば、図6の(a)において、cで示される可変部のオブジェクトは、元々、スペースと改行によって6つに分割されたオブジェクトをユーザー指示により1つに統合したものである。また、図6の(a)において、dで示される2つの固定部のオブジェクトは、常に一緒に表記されるものであれば、変更操作によって1つのオブジェクトに統合することができる。
【0065】
その後、ルール設定部210は、変更した内容に基づくオブジェクト抽出のルールを生成し、上述したオブジェクト抽出ルール801に追加する(ステップS8)。例えば、電話番号及び住所と判断されるオブジェクトは途中に区切があっても1つのオブジェクトとして抽出するというルール、印刷物の表記順で上から所定位置までは1つのオブジェクトとして抽出するというルール、所定のテキスト列については連続していてもハイフンを区切としてオブジェクト分割をするというルールなどが追加される。そして、これ以降のデータ分析(S4)においては、この更新されたオブジェクト抽出ルール801が使用される。
【0066】
その後、ルール設定部210は、変更後のオブジェクト構成を、再度、同様に表示し(S5)、ユーザーによる変更がなければ、あるいは、最初からユーザー変更がない場合には(ステップS6のNo)、その時点のオブジェクト構造データ802を当該印刷物のオブジェクト構造データ802として、当該印刷物の識別情報を付してデータ格納部208に記憶する(ステップS9)。なお、ユーザーの変更がないとの判断は、ユーザーによる操作に基づいて行うことができる。また、再度変更がある場合には、上述したステップS7からの処理が繰り返される。
【0067】
次に、処理は編集内容の設定段階に移行し、ルール設定部210は、上記最新のオブジェクト構成の表示をそのままとし、ユーザーによる編集指示を受ける(ステップS10のYes)。ここでは、図5に示す前述したような編集内容の指示を受ける。
【0068】
図6に基づいて、その編集指示の具体例を説明する。図6の(a)において、aで示す店舗名はロゴに変更したいので、図6の(b)に示す「(公序良俗違反につき、不掲載)」の画像(イメージ)オブジェクトに置換する旨の指示がなされる。また、電話番号のオブジェクトについては、配置を右寄せとしたいのでその旨の位置変更の指示がなされる。また、「領収書」等のオブジェクトについては、フォント属性を「BOLD」に変更する指示がなされる。また、図6の(b)に示す罫線や日付のオブジェクトについては、新規に追加される指示がなされる。
【0069】
このような編集指示がなされる度に、ルール設定部210は、編集後の印刷物の状態をディスプレイ22に表示し(ステップS11)、編集操作が終了するまで、編集指示と当該表示が繰り返し実行される。当該編集後の表示では、例えば、図6の(b)に示すような表示が行われる。なお、ユーザーによる編集指示は、上述したユーザーインターフェース画面に備えられる各種ボタンやメニュー等を用いることにより、オブジェクト単位で行うことができる。
【0070】
その後、編集指示を終了した旨のユーザー操作を受けると(ステップS10のNo)、ルール設定部210は、編集後の印刷物についてテスト印刷を実行する(ステップS12)。具体的には、その時点で編集後印刷物として表示されている内容と出力する通信ポート209をデータ加工部206に通知する。データ加工部206では、通知された内容について、通知された通信ポート209に接続されるプリンター3用のコマンドで印刷データを生成し、当該印刷データがポートハンドラー204を介して上記通信ポート209から出力される。そして、当該通信ポート209に接続されるプリンター3から編集後の印刷物が出力される。
【0071】
ユーザーは、テスト印刷された印刷物を見てそれでよいか否かを判断し、更に変更(編集)をしたい場合には(ステップS13のNo)、編集指示を再度実行する。すなわち、ステップS10からの処理が繰り返される。
【0072】
一方、それで良いと判断した場合には、(ステップS13のYes)、その旨の指示を行い、当該指示を受け取ったルール設定部210は、編集ルール803の記憶を行う(ステップS14)。具体的には、その時点で表示している編集後印刷物の内容を、オブジェクト毎に記録する。
【0073】
図7は、編集ルール803の一例を示す概念図である。前述したようにオブジェクト構造データ802では、オブジェクトにその識別情報が付されているので、元印刷データに存在するオブジェクトについてはその識別情報がそのまま使用されて、編集ルール803では、その識別情報に対して印刷する画像の情報が付される。図7に示す「オブジェクト001」は、図6の(a)においてaで示されるオブジェクトの識別情報であり、図6に基づいて説明したように、このオブジェクトについては、編集によりロゴのイメージに変換されるので、図7に示すように、当該識別情報にその旨の画像情報が付されて編集ルールとして記憶される。
【0074】
また、編集によって新たに追加されたオブジェクトについては、その旨が判別できる識別情報が付され、同様に、その識別情報に対して編集後の画像情報が付される。図7では、識別情報に「N」のついた「オブジェクトN001」及び「オブジェクトN002」が、この新規オブジェクトの識別情報であり、これらはそれぞれ、図6の(b)に示す罫線及び日付情報に対応するものである。図7に示すように、これらの識別情報に対してもその画像情報が付加されて編集ルール803として記憶される。
【0075】
なお、可変部のオブジェクトについては、画像の内容が、実際の元印刷データを受信しないと確定しないため、受信した元印刷データの内容を印刷すべき旨が編集ルール803として記憶される。また、記憶する編集ルール803には、その識別情報と印刷物の識別情報が付される。
【0076】
かかる編集ルール803の記憶処理が終了すると、例えば、図3に示す編集ルール803A(a)のように、その印刷部について一つの編集ルールとしてデータ格納部208に格納される。
【0077】
次に、ルール設定部210は、編集ルール803を生成して記憶した当該印刷物について複数の編集ルール803が存在する場合には、それらの編集ルール803の使い方についてのルール(使用ルール)をデータ格納部208に設定する(ステップS15)。具体的には、ユーザー指定のものを常に使用する、ランダムに選択して使用する、所定の順番に使用する、などの選択肢をユーザーに示し、それに対するユーザー指示に基づいて使用法を決定し、当該印刷物の識別情報に対して決定された使用法を設定しておく。なお、当
該使用ルールの設定は、当該編集ルール803の生成処理時に行わずに他のタイミングで行うようにしてもよい。
【0078】
以上のようにして、事前にオブジェクト構造データ802及び編集ルール803が生成されて記憶される。
【0079】
なお、オブジェクト構成をユーザーに表示し、それを確定した段階で、その印刷物を判別可能なオブジェクトをユーザーが指定し、そのオブジェクト又はそれらのオブジェクトを、その印刷物の識別情報と共にデータ格納部208に設定しておくようにしてもよい。例えば、図6の(a)に示す例では、元印刷データにおいて、「領収書」のオブジェクトをその位置で検出した場合には、当該印刷物(当該レシート)の印刷データであると判断するように、設定される。
【0080】
また、上述の説明では、編集ルール803を、元印刷データのオブジェクト毎に、元印刷データとの対応関係を示して編集後の印刷内容を表現したが、編集後の印刷内容において、固定部については、上述したオブジェクトの識別情報を伴わずに、単にその印刷内容を表現したデータとして記憶してもよい。
【0081】
次に、上記記憶したオブジェクト構造データ802及び編集ルール803を使用して、元印刷データに対して実際に編集を実行して出力する処理について説明する。図8は、その処理手順の一例を示したフローチャートである。
【0082】
まず、前述の通り、POSアプリケーション201から直接、又は、プリンター3A用ドライバー202を介して、元印刷データが出力される(ステップS21)。ここでは、当該元印刷データは、プリンター3Aから出力するレシートの印刷データであり、従って、出力先の通信ポートには通信ポート209Aが指定され、プリンター3Aに依存したコマンドで表現されている。
【0083】
次に、出力された元印刷データは、指定された通信ポートに(ここでは、通信ポート209Aに)届く前に仮想ポート203によって受け取られる(ステップS22)。かかる処理は、いずれの通信ポート209へ向けたデータも、まず、仮想ポート203が受け取るように、レジストリーの(優先度の)設定を変更しておくことで実現され、かかる設定変更はOSの起動時に実行される。その後、受け取られた元印刷データは、仮想ポート203からアプリケーション層220のポートハンドラー204に送付される(ステップS22)。
【0084】
次に、ポートハンドラー204は、送付された元印刷データを、データ解析部205に転送する(ステップS23)。
【0085】
データ解析部205では、当該元印刷データの解析を行う(ステップS24)。具体的には、受信したデータがどの印刷物のものであるかを判別し、その印刷物に対して記憶されている編集ルール803を決定する。この印刷物の判別においては、受信した元印刷データを、記憶されているオブジェクト構造データ802と比較し、オブジェクト構成が一致すれば、そのオブジェクト構造データ802に付された識別情報の印刷物であると判別する。図3に示す例で、その時点で、3つのオブジェクト構造データ802A、802B、802Cが記憶されている場合には、それらと比較し、オブジェクト構造データ802Aと一致した場合には、印刷物Aであると判定する。なお、一致するオブジェクト構造データ802がない場合には、編集処理を行わないと判断する。
【0086】
また、上述のように、「領収書」のオブジェクトなど印刷物の判別情報が設定されてい
る場合には、その情報に基づいて設定されているオブジェクトが元印刷データ内に抽出されるか否かによって判別を行ってもよい。
【0087】
当該判別後の編集ルール803の決定では、その印刷物に対して記憶されている編集ルール803が1つであればその編集ルール803を使用すると決定し、記憶されている編集ルール803が複数であれば、上述した使用ルールに基づいて使用する1つの編集ルール803を決定する。
【0088】
また、データ解析部205は、編集後の印刷物に適したプリンター3を決定し、それに対応する出力先通信ポート209を、ポートハンドラー204に通知する。例えば、プリンター3Aがモノクロプリンターであり、プリンター3Bがカラープリンターである場合に、編集後の印刷物がモノクロ印刷であれば、または、編集しない場合には、通信ポート209Aが通知され、編集後の印刷物がカラー印刷であれば、通信ポート209Bが通知される。
【0089】
次に、上記決定された編集ルール803が、データ加工部206に通知され、データ加工部206による元印刷データに対する編集処理が実行される(ステップS25)。具体的には、上述した編集ルール803に示される情報に従って、元印刷データの各オブジェクト毎に処理を行い、また、新規オブジェクトについては追加の処理を行って、編集後の印刷データ(処理後印刷データ)を生成する。なお、元印刷データについては、上記データ解析部205によるオブジェクト構成の比較時に、一致したオブジェクト構造データ802と同様のオブジェクト分割及びオブジェクト識別情報の付加がなされており、その識別情報を用いて、上記編集ルール803に従ったオブジェクト毎の処理が実行される。
【0090】
かかる編集処理により、ユーザーによって指示された編集の内容、例えば、イメージへの置換、配置変更、新規内容の挿入等、が反映された編集後の印刷物の印刷データが生成されることになる。なお、編集を行わない場合には、データ加工部206による処理は実行されない。
【0091】
次に、データ加工部206で生成された上記処理後印刷データについてコマンドの変更を必要とする場合には、コマンド変換部207がコマンドの変換処理を実行する(ステップS26)。前述のとおり、印刷データは出力先のプリンター3に依存したコマンドで表現されているので、プリンター3が2以上接続されている場合に、元印刷データのコマンドと、上記決定された出力先のプリンター3のコマンドが異なる場合には、当該出力先に適したコマンドに変換する。処理後のデータはポートハンドラー204へ引き渡される。なお、コマンド変換を必要としない場合には、データ加工部206から転送された印刷データがポートハンドラー204へ引き渡される。なお、編集を行わない場合には、データ加工部206による処理は実行されない。
【0092】
次に、ポートハンドラー204は、引き渡された処理後印刷データを上記決定された通信ポート209へ出力する(ステップS27)。図2に示す2つのプリンター3A及び3Bが接続される例では、通信ポート209A及び/又は通信ポート209Bへ出力される。
【0093】
その後、印刷データが通信ポート209から接続されるプリンター3へ送信され、プリンター3において当該印刷データによる印刷が実行され、レシートなどの印刷物が所定の編集を受けて出力される(ステップS28)。
【0094】
以上のようにして、ユーザーが設定した編集内容を反映した印刷物の出力処理が終了する。
【0095】
なお、上記実施の形態例では、POSアプリケーション201から出力された印刷データに対する印刷内容の編集処理を行う機能について説明したが、本POS端末装置2では、元印刷データに対して他の処理を実行するようにすることもできる。例えば、レシートの印刷データに所定商品名が含まれている場合にはクーポン券を発行する、所定の印刷物である場合には複数毎印刷する、印刷物によって出力先プリンターを変更する、などの処理を実行することができる。
【0096】
これら他の処理を実行する場合にも、データ解析部205が元印刷データを解析して、印刷物を判別し、あるいは、そのデータに含まれる所定の情報を検出して、印刷物によって定められている、あるいは、その所定の情報に対して定められている処理を決定する。そして、決定された処理に印刷データの加工が必要な場合にはデータ加工部206によって印刷処理の加工が実行され、決定された処理に相応しい通信ポート209からプリンター3に対応したコマンドで出力がなされる。なお、この場合にも、印刷物と処理の内容、あるいは、上記所定の情報と処理の内容を関係付けて示す情報は、予めルール設定部210によってデータ格納部208に保存される。
【0097】
以上説明したように、本実施の形態例に係るPOS端末装置2では、POSアプリケーション201から出力された印刷データに編集を含む様々な価値を付加することができる。そして、当該価値付加を行わないPOS端末装置及びPOSシステムを、比較的容易な方法で本POS端末装置2及びそれを含むPOSシステムに改良することができる。
【0098】
図9は、当該改良を説明するための図である。当該図は、図2と同じ機能構成図であり、実線部分が上述した改良前のPOS端末装置及びPOSシステムを示している。すなわち、改良前のシステムは、POSアプリケーション201から直接又はプリンタードライバー202を介して出力された印刷データが通信ポート209Aで受け取られ、プリンター3Aから出力がなされる構成となっている。そして、このような構成のシステムに対して、点線で示される部分を追加することにより、本POS端末装置2及びそれを含むPOSシステムにすることが可能である。
【0099】
すなわち、既存のPOSアプリケーション201を変更することなく、点線で示される部分のプログラム、及び、データ格納部208のデータを追加することにより、既存のPOSシステムの機能拡張が可能となる。また、合わせて、一点鎖線で示す新たなプリンター3Bを追加してもよく、この場合の改良は、新たなプリンター3Bの設置と上記プログラムとデータを含む当該プリンタードライバーソフトウェアのインストールという作業で実行され得る。なお、プリンター3AやPOS端末装置2を構成するコンピューター自身も新しい装置に置き換えることが可能である。
【0100】
このように、本実施の形態例に係るPOS端末装置2を用いることにより、既存のPOSアプリケーションプログラムの変更を伴わない容易な方法で、印刷物の自在な編集が可能となる。また、その他の既存システムに対する機能拡張も、同様に、容易に実現できる。また、そのための主な処理は、コンピューターのアプリケーション層で行うように構成するので、多彩な処理を実行させるプログラムの開発を容易に行うことができる。
【0101】
また、ルール設定部210により、編集内容をユーザーが適宜決定できるので、ユーザー利便性を向上させることができる。
【0102】
また、オブジェクト抽出については、ユーザー指示の内容が随時ルールとして蓄積されて処理に反映されるので、ユーザーの意思に合った処理を、さらに自動化することができる。
【0103】
なお、本実施の形態例では、POSサーバー1が複数のPOS端末装置2と接続されるシステムであったが、本発明は、当該構成に限らず、POS端末装置とプリンターが接続される環境に対して適用することができる。
【0104】
また、本実施の形態例ではPOSシステムの例を示したが、本発明は、POSシステムに限らず、病院や運送会社で使用されるシステムなど、プリンターからの印刷物の出力を含む所定のアプリケーションを備えたシステムに適用可能であり、特に、既存のアプリケーションプログラムの改変が困難である場合に有効である。
【0105】
また、本実施の形態例では、POS端末装置2のプログラムがROMに記憶されている例を示したが、これらプログラムはROMに限らず、RAMやHDD等の記憶媒体に記憶されていてもよい。また、これらプログラムは別々の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0106】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0107】
1 POSサーバー、 2 POS端末装置、 3 プリンター、 4 ネットワーク、 21 POS端末本体、 22 ディスプレイ、 23 キーボード・マウス、 24 バーコードリーダー、 25 カードリーダー、 201 POSアプリケーション、 202 プリンター3A用ドライバー、 203 仮想ポート、 204 ポートハンドラー、 205 データ解析部、 206 データ加工部、 207 コマンド変換部、 208 データ格納部、 209 通信ポート、 210 ルール設定部、 220 アプリケーション層、 230 OSカーネル層、 240 物理層、 801 オブジェクト抽出ルール、 802 オブジェクト構造データ、 803 編集ルール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の出力を指示するアプリケーションを備え、予め記憶された印刷物構成情報に基づいて当該アプリケーションから出力される印刷データによる印刷物を判別し、当該判別した印刷物に対して予め記憶される編集情報に基づいて当該印刷データを編集し、当該編集後の印刷データを通信ポートに出力するコンピューターに、前記印刷物構成情報と前記編集情報を生成する処理を実行される印刷物編集用プログラムであって、
前記印刷データを、予め記憶されたルールに基づいて、印刷内容の一塊を表すオブジェクトに分割し、当該オブジェクトの構成情報を生成し、当該構成情報を当該印刷データによる印刷物の前記印刷物構成情報として記憶する工程と、
前記生成したオブジェクトの構成情報をユーザーに表示し、当該表示に対するユーザーの前記オブジェクト毎の編集指示を受信する工程と、
前記受信した編集指示の内容を前記オブジェクト毎の編集内容とした前記編集情報を生成し、当該生成した編集情報を当該印刷データによる印刷物と対応付けて記憶する工程と、を前記コンピューターに実行させる
ことを特徴とする印刷物編集用プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記オブジェクトは、前記印刷データによって印刷内容が変わるオブジェクトと印刷内容が変わらないオブジェクトを含む
ことを特徴とする印刷物編集用プログラム。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、
前記編集情報は、少なくとも、前記オブジェクトの印刷内容及び配置位置の情報を含む
ことを特徴とする印刷物編集用プログラム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記印刷物構成情報に基づいた印刷物の判別は、前記印刷データの前記オブジェクトの構成と前記印刷物構成情報による前記オブジェクトの構成を比較することにより行われる
ことを特徴とする印刷物編集用プログラム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、更に、
前記オブジェクトの構成情報をユーザーに表示した際に、ユーザーによる当該構成情報の変更指示を受信して当該構成情報を変更し、当該変更指示に基づいて前記ルールを更新する工程を、前記コンピューターに実行させる
ことを特徴とする印刷物編集用プログラム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
1の印刷物に対して複数の前記編集情報を記憶することが可能である
ことを特徴とする印刷物編集用プログラム。
【請求項7】
印刷物の出力を指示するアプリケーションを備え、予め記憶された印刷物構成情報に基づいて当該アプリケーションから出力される印刷データによる印刷物を判別し、当該判別した印刷物に対して予め記憶される編集情報に基づいて当該印刷データを編集し、当該編集後の印刷データを通信ポートに出力する印刷物編集装置であって、
前記印刷データを、予め記憶されたルールに基づいて、印刷内容の一塊を表すオブジェクトに分割し、当該オブジェクトの構成情報を生成し、当該構成情報を当該印刷データによる印刷物の前記印刷物構成情報として記憶し、
前記生成したオブジェクトの構成情報をユーザーに表示し、当該表示に対するユーザーの前記オブジェクト毎の編集指示を受信し、
前記受信した編集指示の内容を前記オブジェクト毎の編集内容とした前記編集情報を生成し、当該生成した編集情報を当該印刷データによる印刷物と対応付けて記憶する
ことを特徴とする印刷物編集装置。
【請求項8】
印刷物の出力を指示するアプリケーションを備え、予め記憶された印刷物構成情報に基づいて当該アプリケーションから出力される印刷データによる印刷物を判別し、当該判別した印刷物に対して予め記憶される編集情報に基づいて当該印刷データを編集し、当該編集後の印刷データを通信ポートに出力する印刷物編集装置における、印刷物編集方法であって、
前記印刷物編集装置が、前記印刷データを、予め記憶されたルールに基づいて、印刷内容の一塊を表すオブジェクトに分割し、当該オブジェクトの構成情報を生成し、当該構成情報を当該印刷データによる印刷物の前記印刷物構成情報として記憶する工程と、
前記印刷物編集装置が、前記生成したオブジェクトの構成情報をユーザーに表示し、当該表示に対するユーザーの前記オブジェクト毎の編集指示を受信する工程と、
前記印刷物編集装置が、前記受信した編集指示の内容を前記オブジェクト毎の編集内容とした前記編集情報を生成し、当該生成した編集情報を当該印刷データによる印刷物と対応付けて記憶する工程と、を有する
ことを特徴とする印刷物編集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−168758(P2012−168758A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29487(P2011−29487)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により明細書の一部または全部を不掲載とする。
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】