印刷物
【課題】本発明は、隠れた文字を擦ることにより発現させることのできる特殊印刷物に関し、硬貨で擦る前には隠し画像の認識が困難で、かつ硬貨で擦ると隠し画像が明りょうに判別できる印刷物を提供することを目的とする。
【解決手段】基材上に、背景部と隠し画像部を形成してなる印刷物であって、該隠し画像部が、金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなり、該背景部が、金属よりも硬度の大きい材料を含まないインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなることを特徴とする印刷物とする。
【解決手段】基材上に、背景部と隠し画像部を形成してなる印刷物であって、該隠し画像部が、金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなり、該背景部が、金属よりも硬度の大きい材料を含まないインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなることを特徴とする印刷物とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠れた文字を硬貨等で擦ることにより発現させることのできる特殊印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクラッチくじ等において、硬貨に用いられる金属より硬度の大きい材料を含んだインキを用いて、文字や絵柄などの隠し画像を印刷した技術が知られている(特許文献1参照)。このような印刷物は、金属製の硬貨で印刷物の隠し画像部分を擦ることにより硬貨の表面が削られ、削られた金属が隠し画像表面に付着し着色され、視認可能となる。
【0003】
このような技術を用いて隠し画像を形成する場合、硬貨で擦る前には、隠し画像部分とその他の部分の区別が困難でないといけない。しかし、周囲の背景画像と隠し画像はインキ成分が異なるため、よく見ると色味、光沢等の違いにより隠し画像部分がうっすらと認識できることがある。
【0004】
そのため、背景部分と隠し画像部分を均一な網点で設けた技術が知られている(特許文献2参照)。
また、基材上に設けた隠し画像の表面に、基材と隠し画像の色差をぼかすために低硬度な材料からなる模様層を設ける技術が知られている(特許文献3参照。
【0005】
しかし、背景部分と隠し画像部分を均一な網点で設けた技術では、背景画像部分と隠し画像部分の見当を完全に合せないと、インク組成の違いによる色味、光沢度の違いから硬貨で擦る前でも隠し画像が認識される。現実的には見当をあわせるのには限界があり、完全に隠し画像を隠蔽するのは困難である。さらに、表現できる文字、画像が均一な網点サイズに依存してしまう。
また隠し画像の表面に低硬度な材料からなる模様層を設ける技術では、高硬度の材料を含むインキで構成される隠し画像は、基材と同色でなければならず、隠し画像を形成した後に隠し画像が形成されたか否かの確認が困難であり、大量生産をする際の印刷ミス等のチェックが難しく高い品質保証ができない。さらに、模様が密に設けられていると硬貨で擦る前の隠し画像の隠蔽性が高いものの、硬貨で擦った後の隠し画像の視認性が悪くなる。模様が疎に設けられていると硬貨で擦る前の隠し画像の隠蔽性が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平06−078039号公報
【特許文献2】特許第3350806号
【特許文献3】特許第3767911号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、硬貨等で擦る前には隠し画像の認識が困難で、かつ硬貨で擦ると隠し画像が明りょうに判別できる印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材上に、背景部と隠し画像部を形成してなる印刷物であって、該隠し画像部が、金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなり、該背景部が、金属よりも硬度の大きい材料を含まないインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなることを特徴とする印刷物である。
【0009】
また、前記隠し画像部の網点と、背景部の網点の濃度が、それぞれ網点を構成する点の大きさにより調整されてなることを特徴とする印刷物である。
【0010】
また、前記隠し画像の網点を構成する点と、背景部の網点を構成する点の色差△が、0.7以内であることを特徴とする印刷物である。
【0011】
また、前記隠し画像部の濃度の異なる2種以上の網点のうち、一番低い濃度の網点に対しそれよりも高い濃度の網点が10〜80%存在することを特徴とする印刷物である。
【0012】
また、前記背景部の濃度の異なる2種以上の網点のうち、一番低い濃度の網点に対しそれよりも高い濃度の網点が30〜70%存在することを特徴とする印刷物である。
【0013】
また、前記隠し画像部に背景部と同組成のインキ組成物からなる網点が点在してなり、前記背景部に隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点が点在してなることを特徴とする印刷物である。
【0014】
また、前記隠し画像部の網点を構成する点と背景部の網点を構成する点が一部重なっていることを特徴とする印刷物である。
【0015】
また、前記基材上に地紋パターンが印刷されてなることを特徴とする印刷物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬貨等で擦る前には隠し画像が判別できず、硬貨等で擦った後は隠し画像が明りょうに確認できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
【図2】図1のXの部分を拡大した平面拡大図である。
【図3】本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
【図4】本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
【図5】本発明の印刷物の一例を説明した平面拡大図である。
【図6】本発明の印刷物の一例を説明した平面拡大図である。
【図7】図2のA−Aの部分の断面を示した断面図である。
【図8】図6のB−Bの部分の断面を示した断面図である。
【図9】本発明の網点の重なりを説明する説明図である。
【図10】本発明の印刷物の一例を示した平面図である。
【図11】本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。
図1は本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
図1において、隠し画像部2と背景部5を有する。隠し画像部2と背景部5はそれぞれ網点で形成されてなる。隠し画像2は、コイン、メダル、硬貨等の金属物品で擦ると顕像化される。具体的には、硬貨等の表面が削りとられ、隠し画像を形成する網点に付着し、画像を目視で確認できるようになる。
【0019】
隠し画像部2を形成する網点は、金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で形成される。金属よりも硬度の大きい材料としては酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化クロムなどの白色顔料があげられる。なお、これに限るものではなく、擦る際に用いる金属よりも硬度の高い材料であれば他の物質を用いることができる。
隠し画像の形成に用いるインキ組成物には、着色顔料、バインダー、溶剤等を含むことができる。
【0020】
背景部5を形成する網点は、金属よりも硬度の大きい材料を含まないインキ組成物で形成される。このようなものとしては、着色顔料、バインダー、溶剤等を含む組成物を用いることができる。
【0021】
なお、前述の隠し画像部2、背景部5を構成する網点は、インキ組成物として、例えば油性インキ用の組成物やUVインキ用の組成物を用いることができる。油性インキを用いる場合、ドライダウンによる印刷色の変化が発生することがあるが、UVインキを用いる場合、ドライダウンが発生しないため、隠し画像と背景部の色差を極力抑えることができるので、UVインキ用のインキ組成物を用いることが好ましい。
【0022】
隠し画像部2を形成する網点と背景部5を形成する網点は、少なくとも濃度の異なる2種以上の網点から形成される。図1においては、隠し画像部において濃度の淡い網点3と濃度の濃い網点4を有し、背景部において濃度の淡い網点6と濃度の濃い網点7を有する。
後述するように、隠し画像部と背景部の色差を少なくすることで理想的には隠し画像部と背景部の境目をなくすことができるが、実際には限界があるため、部分的にランダムな濃度の異なる部分を設けることで、視認したときに隠し画像部と背景部の境目を目立たなくすることができる。
【0023】
一般に網点を用いる印刷物は、網点の線数とパーセントを変えることにより濃度を変えることができる。これは、網点を構成する点の大きさが変化することに伴い濃度が変わるものである。また、その他インクの種類を変えても濃度を変えることができる。
本発明では、網点の濃度の調整は、網点を構成する点の大きさで調整することが好ましい。網点を構成する点の大きさで調整することにより、インクの種類を増やすことなく濃度を調整することができる。
網点を構成する点の大きさを調整する方法としては、線数とパーセントを変化させることにより濃度を調整しても良いし、網点を構成する点の配置をそれぞれ設計し任意の点の大きさを変えることにより濃度を調整してもよい。
また、網点を構成する点の大きさは、一般的に径が0.03〜0.3mmである。
【0024】
隠し画像部2を形成する網点と背景部5を形成する網点は、それぞれ、低い濃度の網点を基調として、部分的に1種以上の高い濃度の網点を有することが好ましい。
高い濃度の網点は低い濃度の網点に対し、10〜80%有することが好ましい。この範囲であれば、隠し画像部と背景部の境目を目立たなくすることができる。
【0025】
隠し画像部2を形成する網点の色味と背景部5を形成する網点の色差△E(L*a*b*)は、0.7以内にすることが好ましい。この範囲内であればで、隠し画像部と背景部の境目を区別し難くなる。この範囲内にするためには、それぞれ着色顔料の種類や配合比等を調整することでできる。
【0026】
隠し画像部2を形成する網点と背景部5を形成する網点は、図3に示すようにそれぞれ抜け部8を設けても良い。部分的にランダムな白抜けの領域を設けることで、視認したときに隠し画像部と背景部の境目を目立たなくすることができる。
この白抜けの領域は、図5に示すように、網点を構成する点のうち、大きい点に対し面積比で3倍以上の大きさであることが好ましい。この程度であれば硬貨で擦る前において、隠し画像と背景画像の境界を目立たなくすることができる。
【0027】
また、図4に示すように、隠し画像部に背景部と同組成のインキ組成物からなる網点9をランダムに点在させ、背景部に隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点10をランダムに点在させることが好ましい。このようにすることで視認したときに隠し画像部と背景部の境目を目立たなくすることができる。
具体的には、隠し画像部中の背景部と同組成のインキ組成物からなる網点の比率が10〜30%の範囲内であり、背景部中の隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点の比率が10〜30%の範囲内とすることが好ましい。この範囲内であれば、硬貨で擦った後の隠し画像の視認性を有するとともに硬貨で擦る前の隠し画像部の隠蔽性が良好なものとなる。
【0028】
隠し画像部の網点を構成する点と背景部の網点を構成する点が一部重なっていることが好ましい。
重なっている隠し画像部と背景部の網点を構成する点の面積は、隠し画像部と背景部の網点を合わせた投影面積に対し、5〜50%の範囲内で重なっていることが好ましい。この範囲内であれば、隠し画像を崩さずにするとともに硬貨で擦る前の隠し画像部の隠蔽性が良好なものとなる。なお、図9において、(b)に隠し画像部の網点と背景部の網点の投影面積を示し、(c)に重なっている部分の面積を示す。
重なっている網点の割合は、隠し画像部と背景部の境界において、10〜60%程度であることが好ましい。この範囲内であれば、硬貨で擦った後の隠し画像の視認性を有するとともに硬貨で擦る前の隠し画像部の隠蔽性が良好なものとなる。
【0029】
また、本発明では、隠し画像は図1に示すように文字、画像パターンをポジパターンで設けても良いし、図3、4に示すように文字、画像パターンをネガパターンで設けても良い。
また、図10はネガパターンの隠し画像からなる本発明の印刷物の一例を示す平面図である。図10の(a)は背景部の版を用いて刷った印刷物の平面図で(b)は隠し画像部の版を用いて刷った印刷物の平面図である。そして(c)は背景部の版を用いて刷った後、隠し画像部の版で刷った印刷物である。図10において、背景部、隠し画像部ともに2種類ずつの濃度からなる網点で形成してなり、また隠し画像部に背景部と同組成のインキ組成物からなる網点を背景部に隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点を点在させてなり、さらにランダムに白抜け領域を設けてなり、隠し画像部と背景部の境界帰域において、一部網点が重なっているため、硬貨で擦る前の背景部と隠し画像部の境目が全く目立たないものとなっている。
【0030】
また、隠し画像部、背景部ともに、それぞれ色差が少ない対となる複数色のインキ組成物を用いて、隠し画像から背景部にかけて連続する着色画像を形成しても良い。このようにすることで、硬貨で擦る前において、背景部から隠し画像部にかけて連続した画像を形成することができ、より背景部と隠し画像部の境界をぼかすことができる。
例えば、隠し画像用のインキ組成物として酸化チタンを含むシアンインキ、酸化チタンを含むシアンマゼンダインキ、酸化チタンを含むイエローインキ、酸化チタンを含むブラックインキを用い、背景部用のインキ組成物としてシアンインキ、マゼンダインキ、イエローインキ、ブラックインキの計8種類のインキを用いて隠し画像と背景部にまたがる連続した着色画像を形成することができる。
なお、着色画像によっては、隠し画像部、背景部は、それぞれ色差が少ない対となる複数色のインキ組成物を用いて、さらにそれぞれ別の色のインキを加えても良い。
例えば、隠し画像用、背景部用のインキ組成物としてそれぞれ上記4色のインキを用い、さらに背景部用のインキ組成物として、オレンジインキを用いても良い。
【0031】
本発明では、基材上に、隠し画像部形成用のインキ組成物と背景画像部形成用のインキ組成物を印刷することにより形成することができる。
本発明では、背景画像部を形成した後、隠し画像部を形成することが好ましい。
隠し画像部上に背景画像部を設けると、硬貨等で擦った際に背景画像部により隠し画像部が遮蔽され、隠し画像が顕像化されないためである。
【0032】
基材としては特に限定するものではないが、普通紙、コーティング紙やプラスチック基材などを用いることができる。
【0033】
また、コーティング紙を用いる場合、コーティング層に発光材料が含まれていることがある。隠し画像部を形成する金属よりも硬度の大きいインキが紫外線又は発光を遮蔽する場合、硬貨等で擦らなくても紫外線を照射したときに、隠し画像以外の部分の基材が発光することにより隠し画像が認識できる場合がある。この発光材料の影響をなくすために、基材上に紫外線吸収層を設けてもよい。また、発光を隠蔽する隠蔽層を設けてもよい。
紫外線吸収層としては、紫外線を吸収する材料を含むインキを用いて形成することができる。
また、隠蔽層としては、発光材料の発光波長に吸収ピーク又は反射ピークがある材料を含むインキを用いて形成することができる。
【0034】
また、前述の発光材料の影響を避けるため、基材として無蛍光性基材を用いてもよい。例えば無蛍光紙などを用いることができる。
【0035】
また、基材上には地紋パターンを形成してもよい。地紋パターンの形成は印刷法などにより形成することができる。
基材上に地紋パターンを形成し、その上に隠し画像部、背景部を形成することにより、硬貨等で擦る前の背景部と隠し画像部の境目が全く目立たないものとなる。
地紋パターンとしては、特に制限はないが、線画、文字等を用いることができる。また、地紋パターンの面積は全体(背景部及び隠し画像部)の面積の10〜70%程度であることが好ましい。
また、地紋パターンは、硬貨等で擦る前の背景部、隠し画像部と同色、硬貨等で擦った後の隠し画像部と同色でないことが好ましい。
地紋パターンに用いるインキとしては特に制限はないが無色透明インキなどを用いることができる。
【0036】
地紋パターンを設ける場合、基材上に地紋パターンを形成した後、背景画像部、隠し画像部を形成することが好ましい。
隠し画像部上に地紋パターン、背景画像部を設けると、硬貨等で擦った際に地紋パターン、背景画像部により隠し画像部が遮蔽され、隠し画像が顕像化されないためである。
【0037】
背景部を形成する網点が、紫外線を吸収する材料又は発光を隠蔽する材料を含むインキ組成物で形成してもよい。
このようにすることで、発光材料を含むコーティング紙を用い、紫外線又は発光を吸収する材料を含むインキで隠し画像を形成した場合、硬貨等で擦らずに紫外線等を照射しても、隠し画像部、背景部ともに、紫外線または発光を遮蔽するため、隠し画像部を認識できなくすることができる。
【0038】
印刷法は特に限定するものではなく、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
また、インキジェット法を用いて形成してもよい。
【0039】
本発明の印刷物は、スクラッチくじなどに用いることができる。また、商品券、金券、株、債券などの真贋判定用に用いることができる。
【実施例】
【0040】
<実施例1>
紙基材(マットコート紙)上に、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像をオフセット印刷法により印刷した。
隠し画像形成用インキ組成物と背景画像形成用インキ組成物として下記組成からなるインキ組成物を用いた。
【0041】
(隠し画像形成用インキ組成物)
酸化チタン含有UV白インキ:FDOニュー白KR2(東洋インキ製造社製)
50重量部
酸化チタン含有UV黄インキ:FDカルトンACE黄(東洋インキ製造社製)
20重量部
酸化チタン含有UV紅インキ:FDカルトンACE紅(東洋インキ製造社製)
30重量部
(背景画像形成用インキ組成物)
UV黄インキ:FDカルトンACE黄(東洋インキ製造社製) 25重量部
UV紅インキ:FDカルトンACE紅(東洋インキ製造社製) 30重量部
UVメジウム:FDカルトンACEメジウム(東洋インキ製造社製) 30重量部
【0042】
隠し画像の網点は、淡い網点と濃い網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を30%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を30%の割合で混在させた。
【0043】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識が困難であったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0044】
<実施例2>
隠し画像の網点は、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を70%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を70%の割合で混在させた以外は実施例1と同様に形成した。
【0045】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識が困難であったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0046】
<実施例3>
実施例1と同様の基材、インキ組成物、印刷方法を用いて、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像を印刷した。
隠し画像の網点は、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。
また、隠し画像部、背景画像部に、ランダムに白抜け部を設けた。
【0047】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識がかなり困難であったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0048】
<実施例4>
実施例1と同様の基材、インキ組成物、印刷方法を用いて、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像を印刷した。
隠し画像の網点は、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。
また、隠し画像部内には、背景画像形成用インキ組成物の網点を10〜30%の割合で混在させ、背景部内には、隠し画像形成用インキ組成物の網点を10〜30%の割合で混在させた。
【0049】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識がかなり困難であったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0050】
<実施例5>
実施例1と同様の基材、インキ組成物、印刷方法を用いて、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像を印刷した。
隠し画像の網点は、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。
また、隠し画像部、背景画像部に、ランダムに白抜け部を設けた。
部を設けた。
さらに、隠し画像部内には、背景画像形成用インキ組成物の網点を10〜30%割合で混在させ、背景部内には、隠し画像形成用インキ組成物の網点を10〜30%の割合で混在させた。
また、背景部と隠し画像部の境界において、部分的に背景部の網点上に隠し画像の網点を重ねた。網点の重ねた割合は、2つの網点の投影面積に対し、5〜50%程度の割合で重ねた。
【0051】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識ができなかったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0052】
<比較例1>
実施例1と同様の基材、インキ組成物、印刷方法を用いて、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像を印刷した。
印刷は均一な網点からなる背景部と隠し画像部を形成した。
【0053】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前においても、視野角を変化させ光のあたる角度を変えるとうっすらと隠し画像の「TOPPAN」の文字が認識できてしまった。
【符号の説明】
【0054】
1・・・・印刷物
2・・・・隠し画像
3・・・・隠し画像の網点(低い濃度)
4・・・・隠し画像の網点(高い濃度)
5・・・・背景画像の網点
6・・・・背景画像の網点(低い濃度)
7・・・・背景画像の網点(高い濃度)
8・・・・抜け部
9・・・・隠し画像中の背景画像と同組成のインキ組成物からなる網点
10・・・背景画像中の隠し画像と同組成のインキ組成物からなる網点
11・・・重なった網点全体の投影面積
12・・・重なった網点の重なった部分の面積
13・・・地紋パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠れた文字を硬貨等で擦ることにより発現させることのできる特殊印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクラッチくじ等において、硬貨に用いられる金属より硬度の大きい材料を含んだインキを用いて、文字や絵柄などの隠し画像を印刷した技術が知られている(特許文献1参照)。このような印刷物は、金属製の硬貨で印刷物の隠し画像部分を擦ることにより硬貨の表面が削られ、削られた金属が隠し画像表面に付着し着色され、視認可能となる。
【0003】
このような技術を用いて隠し画像を形成する場合、硬貨で擦る前には、隠し画像部分とその他の部分の区別が困難でないといけない。しかし、周囲の背景画像と隠し画像はインキ成分が異なるため、よく見ると色味、光沢等の違いにより隠し画像部分がうっすらと認識できることがある。
【0004】
そのため、背景部分と隠し画像部分を均一な網点で設けた技術が知られている(特許文献2参照)。
また、基材上に設けた隠し画像の表面に、基材と隠し画像の色差をぼかすために低硬度な材料からなる模様層を設ける技術が知られている(特許文献3参照。
【0005】
しかし、背景部分と隠し画像部分を均一な網点で設けた技術では、背景画像部分と隠し画像部分の見当を完全に合せないと、インク組成の違いによる色味、光沢度の違いから硬貨で擦る前でも隠し画像が認識される。現実的には見当をあわせるのには限界があり、完全に隠し画像を隠蔽するのは困難である。さらに、表現できる文字、画像が均一な網点サイズに依存してしまう。
また隠し画像の表面に低硬度な材料からなる模様層を設ける技術では、高硬度の材料を含むインキで構成される隠し画像は、基材と同色でなければならず、隠し画像を形成した後に隠し画像が形成されたか否かの確認が困難であり、大量生産をする際の印刷ミス等のチェックが難しく高い品質保証ができない。さらに、模様が密に設けられていると硬貨で擦る前の隠し画像の隠蔽性が高いものの、硬貨で擦った後の隠し画像の視認性が悪くなる。模様が疎に設けられていると硬貨で擦る前の隠し画像の隠蔽性が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平06−078039号公報
【特許文献2】特許第3350806号
【特許文献3】特許第3767911号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、硬貨等で擦る前には隠し画像の認識が困難で、かつ硬貨で擦ると隠し画像が明りょうに判別できる印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材上に、背景部と隠し画像部を形成してなる印刷物であって、該隠し画像部が、金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなり、該背景部が、金属よりも硬度の大きい材料を含まないインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなることを特徴とする印刷物である。
【0009】
また、前記隠し画像部の網点と、背景部の網点の濃度が、それぞれ網点を構成する点の大きさにより調整されてなることを特徴とする印刷物である。
【0010】
また、前記隠し画像の網点を構成する点と、背景部の網点を構成する点の色差△が、0.7以内であることを特徴とする印刷物である。
【0011】
また、前記隠し画像部の濃度の異なる2種以上の網点のうち、一番低い濃度の網点に対しそれよりも高い濃度の網点が10〜80%存在することを特徴とする印刷物である。
【0012】
また、前記背景部の濃度の異なる2種以上の網点のうち、一番低い濃度の網点に対しそれよりも高い濃度の網点が30〜70%存在することを特徴とする印刷物である。
【0013】
また、前記隠し画像部に背景部と同組成のインキ組成物からなる網点が点在してなり、前記背景部に隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点が点在してなることを特徴とする印刷物である。
【0014】
また、前記隠し画像部の網点を構成する点と背景部の網点を構成する点が一部重なっていることを特徴とする印刷物である。
【0015】
また、前記基材上に地紋パターンが印刷されてなることを特徴とする印刷物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬貨等で擦る前には隠し画像が判別できず、硬貨等で擦った後は隠し画像が明りょうに確認できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
【図2】図1のXの部分を拡大した平面拡大図である。
【図3】本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
【図4】本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
【図5】本発明の印刷物の一例を説明した平面拡大図である。
【図6】本発明の印刷物の一例を説明した平面拡大図である。
【図7】図2のA−Aの部分の断面を示した断面図である。
【図8】図6のB−Bの部分の断面を示した断面図である。
【図9】本発明の網点の重なりを説明する説明図である。
【図10】本発明の印刷物の一例を示した平面図である。
【図11】本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。
図1は本発明の印刷物の一例を説明した平面模式図である。
図1において、隠し画像部2と背景部5を有する。隠し画像部2と背景部5はそれぞれ網点で形成されてなる。隠し画像2は、コイン、メダル、硬貨等の金属物品で擦ると顕像化される。具体的には、硬貨等の表面が削りとられ、隠し画像を形成する網点に付着し、画像を目視で確認できるようになる。
【0019】
隠し画像部2を形成する網点は、金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で形成される。金属よりも硬度の大きい材料としては酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化クロムなどの白色顔料があげられる。なお、これに限るものではなく、擦る際に用いる金属よりも硬度の高い材料であれば他の物質を用いることができる。
隠し画像の形成に用いるインキ組成物には、着色顔料、バインダー、溶剤等を含むことができる。
【0020】
背景部5を形成する網点は、金属よりも硬度の大きい材料を含まないインキ組成物で形成される。このようなものとしては、着色顔料、バインダー、溶剤等を含む組成物を用いることができる。
【0021】
なお、前述の隠し画像部2、背景部5を構成する網点は、インキ組成物として、例えば油性インキ用の組成物やUVインキ用の組成物を用いることができる。油性インキを用いる場合、ドライダウンによる印刷色の変化が発生することがあるが、UVインキを用いる場合、ドライダウンが発生しないため、隠し画像と背景部の色差を極力抑えることができるので、UVインキ用のインキ組成物を用いることが好ましい。
【0022】
隠し画像部2を形成する網点と背景部5を形成する網点は、少なくとも濃度の異なる2種以上の網点から形成される。図1においては、隠し画像部において濃度の淡い網点3と濃度の濃い網点4を有し、背景部において濃度の淡い網点6と濃度の濃い網点7を有する。
後述するように、隠し画像部と背景部の色差を少なくすることで理想的には隠し画像部と背景部の境目をなくすことができるが、実際には限界があるため、部分的にランダムな濃度の異なる部分を設けることで、視認したときに隠し画像部と背景部の境目を目立たなくすることができる。
【0023】
一般に網点を用いる印刷物は、網点の線数とパーセントを変えることにより濃度を変えることができる。これは、網点を構成する点の大きさが変化することに伴い濃度が変わるものである。また、その他インクの種類を変えても濃度を変えることができる。
本発明では、網点の濃度の調整は、網点を構成する点の大きさで調整することが好ましい。網点を構成する点の大きさで調整することにより、インクの種類を増やすことなく濃度を調整することができる。
網点を構成する点の大きさを調整する方法としては、線数とパーセントを変化させることにより濃度を調整しても良いし、網点を構成する点の配置をそれぞれ設計し任意の点の大きさを変えることにより濃度を調整してもよい。
また、網点を構成する点の大きさは、一般的に径が0.03〜0.3mmである。
【0024】
隠し画像部2を形成する網点と背景部5を形成する網点は、それぞれ、低い濃度の網点を基調として、部分的に1種以上の高い濃度の網点を有することが好ましい。
高い濃度の網点は低い濃度の網点に対し、10〜80%有することが好ましい。この範囲であれば、隠し画像部と背景部の境目を目立たなくすることができる。
【0025】
隠し画像部2を形成する網点の色味と背景部5を形成する網点の色差△E(L*a*b*)は、0.7以内にすることが好ましい。この範囲内であればで、隠し画像部と背景部の境目を区別し難くなる。この範囲内にするためには、それぞれ着色顔料の種類や配合比等を調整することでできる。
【0026】
隠し画像部2を形成する網点と背景部5を形成する網点は、図3に示すようにそれぞれ抜け部8を設けても良い。部分的にランダムな白抜けの領域を設けることで、視認したときに隠し画像部と背景部の境目を目立たなくすることができる。
この白抜けの領域は、図5に示すように、網点を構成する点のうち、大きい点に対し面積比で3倍以上の大きさであることが好ましい。この程度であれば硬貨で擦る前において、隠し画像と背景画像の境界を目立たなくすることができる。
【0027】
また、図4に示すように、隠し画像部に背景部と同組成のインキ組成物からなる網点9をランダムに点在させ、背景部に隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点10をランダムに点在させることが好ましい。このようにすることで視認したときに隠し画像部と背景部の境目を目立たなくすることができる。
具体的には、隠し画像部中の背景部と同組成のインキ組成物からなる網点の比率が10〜30%の範囲内であり、背景部中の隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点の比率が10〜30%の範囲内とすることが好ましい。この範囲内であれば、硬貨で擦った後の隠し画像の視認性を有するとともに硬貨で擦る前の隠し画像部の隠蔽性が良好なものとなる。
【0028】
隠し画像部の網点を構成する点と背景部の網点を構成する点が一部重なっていることが好ましい。
重なっている隠し画像部と背景部の網点を構成する点の面積は、隠し画像部と背景部の網点を合わせた投影面積に対し、5〜50%の範囲内で重なっていることが好ましい。この範囲内であれば、隠し画像を崩さずにするとともに硬貨で擦る前の隠し画像部の隠蔽性が良好なものとなる。なお、図9において、(b)に隠し画像部の網点と背景部の網点の投影面積を示し、(c)に重なっている部分の面積を示す。
重なっている網点の割合は、隠し画像部と背景部の境界において、10〜60%程度であることが好ましい。この範囲内であれば、硬貨で擦った後の隠し画像の視認性を有するとともに硬貨で擦る前の隠し画像部の隠蔽性が良好なものとなる。
【0029】
また、本発明では、隠し画像は図1に示すように文字、画像パターンをポジパターンで設けても良いし、図3、4に示すように文字、画像パターンをネガパターンで設けても良い。
また、図10はネガパターンの隠し画像からなる本発明の印刷物の一例を示す平面図である。図10の(a)は背景部の版を用いて刷った印刷物の平面図で(b)は隠し画像部の版を用いて刷った印刷物の平面図である。そして(c)は背景部の版を用いて刷った後、隠し画像部の版で刷った印刷物である。図10において、背景部、隠し画像部ともに2種類ずつの濃度からなる網点で形成してなり、また隠し画像部に背景部と同組成のインキ組成物からなる網点を背景部に隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点を点在させてなり、さらにランダムに白抜け領域を設けてなり、隠し画像部と背景部の境界帰域において、一部網点が重なっているため、硬貨で擦る前の背景部と隠し画像部の境目が全く目立たないものとなっている。
【0030】
また、隠し画像部、背景部ともに、それぞれ色差が少ない対となる複数色のインキ組成物を用いて、隠し画像から背景部にかけて連続する着色画像を形成しても良い。このようにすることで、硬貨で擦る前において、背景部から隠し画像部にかけて連続した画像を形成することができ、より背景部と隠し画像部の境界をぼかすことができる。
例えば、隠し画像用のインキ組成物として酸化チタンを含むシアンインキ、酸化チタンを含むシアンマゼンダインキ、酸化チタンを含むイエローインキ、酸化チタンを含むブラックインキを用い、背景部用のインキ組成物としてシアンインキ、マゼンダインキ、イエローインキ、ブラックインキの計8種類のインキを用いて隠し画像と背景部にまたがる連続した着色画像を形成することができる。
なお、着色画像によっては、隠し画像部、背景部は、それぞれ色差が少ない対となる複数色のインキ組成物を用いて、さらにそれぞれ別の色のインキを加えても良い。
例えば、隠し画像用、背景部用のインキ組成物としてそれぞれ上記4色のインキを用い、さらに背景部用のインキ組成物として、オレンジインキを用いても良い。
【0031】
本発明では、基材上に、隠し画像部形成用のインキ組成物と背景画像部形成用のインキ組成物を印刷することにより形成することができる。
本発明では、背景画像部を形成した後、隠し画像部を形成することが好ましい。
隠し画像部上に背景画像部を設けると、硬貨等で擦った際に背景画像部により隠し画像部が遮蔽され、隠し画像が顕像化されないためである。
【0032】
基材としては特に限定するものではないが、普通紙、コーティング紙やプラスチック基材などを用いることができる。
【0033】
また、コーティング紙を用いる場合、コーティング層に発光材料が含まれていることがある。隠し画像部を形成する金属よりも硬度の大きいインキが紫外線又は発光を遮蔽する場合、硬貨等で擦らなくても紫外線を照射したときに、隠し画像以外の部分の基材が発光することにより隠し画像が認識できる場合がある。この発光材料の影響をなくすために、基材上に紫外線吸収層を設けてもよい。また、発光を隠蔽する隠蔽層を設けてもよい。
紫外線吸収層としては、紫外線を吸収する材料を含むインキを用いて形成することができる。
また、隠蔽層としては、発光材料の発光波長に吸収ピーク又は反射ピークがある材料を含むインキを用いて形成することができる。
【0034】
また、前述の発光材料の影響を避けるため、基材として無蛍光性基材を用いてもよい。例えば無蛍光紙などを用いることができる。
【0035】
また、基材上には地紋パターンを形成してもよい。地紋パターンの形成は印刷法などにより形成することができる。
基材上に地紋パターンを形成し、その上に隠し画像部、背景部を形成することにより、硬貨等で擦る前の背景部と隠し画像部の境目が全く目立たないものとなる。
地紋パターンとしては、特に制限はないが、線画、文字等を用いることができる。また、地紋パターンの面積は全体(背景部及び隠し画像部)の面積の10〜70%程度であることが好ましい。
また、地紋パターンは、硬貨等で擦る前の背景部、隠し画像部と同色、硬貨等で擦った後の隠し画像部と同色でないことが好ましい。
地紋パターンに用いるインキとしては特に制限はないが無色透明インキなどを用いることができる。
【0036】
地紋パターンを設ける場合、基材上に地紋パターンを形成した後、背景画像部、隠し画像部を形成することが好ましい。
隠し画像部上に地紋パターン、背景画像部を設けると、硬貨等で擦った際に地紋パターン、背景画像部により隠し画像部が遮蔽され、隠し画像が顕像化されないためである。
【0037】
背景部を形成する網点が、紫外線を吸収する材料又は発光を隠蔽する材料を含むインキ組成物で形成してもよい。
このようにすることで、発光材料を含むコーティング紙を用い、紫外線又は発光を吸収する材料を含むインキで隠し画像を形成した場合、硬貨等で擦らずに紫外線等を照射しても、隠し画像部、背景部ともに、紫外線または発光を遮蔽するため、隠し画像部を認識できなくすることができる。
【0038】
印刷法は特に限定するものではなく、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
また、インキジェット法を用いて形成してもよい。
【0039】
本発明の印刷物は、スクラッチくじなどに用いることができる。また、商品券、金券、株、債券などの真贋判定用に用いることができる。
【実施例】
【0040】
<実施例1>
紙基材(マットコート紙)上に、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像をオフセット印刷法により印刷した。
隠し画像形成用インキ組成物と背景画像形成用インキ組成物として下記組成からなるインキ組成物を用いた。
【0041】
(隠し画像形成用インキ組成物)
酸化チタン含有UV白インキ:FDOニュー白KR2(東洋インキ製造社製)
50重量部
酸化チタン含有UV黄インキ:FDカルトンACE黄(東洋インキ製造社製)
20重量部
酸化チタン含有UV紅インキ:FDカルトンACE紅(東洋インキ製造社製)
30重量部
(背景画像形成用インキ組成物)
UV黄インキ:FDカルトンACE黄(東洋インキ製造社製) 25重量部
UV紅インキ:FDカルトンACE紅(東洋インキ製造社製) 30重量部
UVメジウム:FDカルトンACEメジウム(東洋インキ製造社製) 30重量部
【0042】
隠し画像の網点は、淡い網点と濃い網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を30%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を30%の割合で混在させた。
【0043】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識が困難であったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0044】
<実施例2>
隠し画像の網点は、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を70%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を70%の割合で混在させた以外は実施例1と同様に形成した。
【0045】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識が困難であったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0046】
<実施例3>
実施例1と同様の基材、インキ組成物、印刷方法を用いて、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像を印刷した。
隠し画像の網点は、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。
また、隠し画像部、背景画像部に、ランダムに白抜け部を設けた。
【0047】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識がかなり困難であったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0048】
<実施例4>
実施例1と同様の基材、インキ組成物、印刷方法を用いて、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像を印刷した。
隠し画像の網点は、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。
また、隠し画像部内には、背景画像形成用インキ組成物の網点を10〜30%の割合で混在させ、背景部内には、隠し画像形成用インキ組成物の網点を10〜30%の割合で混在させた。
【0049】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識がかなり困難であったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0050】
<実施例5>
実施例1と同様の基材、インキ組成物、印刷方法を用いて、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像を印刷した。
隠し画像の網点は、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。背景画像の網点も、低い濃度の網点と高い濃度の網点の2種類用い、低い濃度の網点に対し、高い濃度の網点を50%の割合で混在させた。
また、隠し画像部、背景画像部に、ランダムに白抜け部を設けた。
部を設けた。
さらに、隠し画像部内には、背景画像形成用インキ組成物の網点を10〜30%割合で混在させ、背景部内には、隠し画像形成用インキ組成物の網点を10〜30%の割合で混在させた。
また、背景部と隠し画像部の境界において、部分的に背景部の網点上に隠し画像の網点を重ねた。網点の重ねた割合は、2つの網点の投影面積に対し、5〜50%程度の割合で重ねた。
【0051】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前は隠し画像の認識ができなかったが、硬貨で擦ると「TOPPAN」の文字が明りょうに認識できた。
【0052】
<比較例1>
実施例1と同様の基材、インキ組成物、印刷方法を用いて、背景画像と「TOPPAN」という文字からなる隠し画像を印刷した。
印刷は均一な網点からなる背景部と隠し画像部を形成した。
【0053】
得られた印刷物の隠し画像部と背景画像部の色差は△E(L*a*b*)=0.3であった。
得られた印刷物は硬貨で擦る前においても、視野角を変化させ光のあたる角度を変えるとうっすらと隠し画像の「TOPPAN」の文字が認識できてしまった。
【符号の説明】
【0054】
1・・・・印刷物
2・・・・隠し画像
3・・・・隠し画像の網点(低い濃度)
4・・・・隠し画像の網点(高い濃度)
5・・・・背景画像の網点
6・・・・背景画像の網点(低い濃度)
7・・・・背景画像の網点(高い濃度)
8・・・・抜け部
9・・・・隠し画像中の背景画像と同組成のインキ組成物からなる網点
10・・・背景画像中の隠し画像と同組成のインキ組成物からなる網点
11・・・重なった網点全体の投影面積
12・・・重なった網点の重なった部分の面積
13・・・地紋パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、背景部と隠し画像部を形成してなる印刷物であって、
該隠し画像部が、金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなり、
該背景部が、金属よりも硬度の大きい材料を含まないインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記隠し画像部の網点と、背景部の網点の濃度が、それぞれ網点を構成する点の大きさにより調整されてなることを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記隠し画像の網点を構成する点と、背景部の網点を構成する点の色差△E(L*a*b*)が、0.7以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記隠し画像部の濃度の異なる2種以上の網点のうち、一番低い濃度の網点に対しそれよりも高い濃度の網点が30〜70%存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項5】
前記背景部の濃度の異なる2種以上の網点のうち、一番低い濃度の網点に対しそれよりも高い濃度の網点が30〜70%存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷物。
【請求項6】
前記隠し画像部に背景部と同組成のインキ組成物からなる網点が点在してなり、前記背景部に隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点が点在してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷物。
【請求項7】
前記隠し画像部の網点を構成する点と背景部の網点を構成する点が一部重なっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷物。
【請求項8】
前記基材上に地紋パターンが印刷されてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の印刷物。
【請求項1】
基材上に、背景部と隠し画像部を形成してなる印刷物であって、
該隠し画像部が、金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなり、
該背景部が、金属よりも硬度の大きい材料を含まないインキ組成物で形成され、かつ濃度の異なる2種以上の網点からなることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記隠し画像部の網点と、背景部の網点の濃度が、それぞれ網点を構成する点の大きさにより調整されてなることを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記隠し画像の網点を構成する点と、背景部の網点を構成する点の色差△E(L*a*b*)が、0.7以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記隠し画像部の濃度の異なる2種以上の網点のうち、一番低い濃度の網点に対しそれよりも高い濃度の網点が30〜70%存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項5】
前記背景部の濃度の異なる2種以上の網点のうち、一番低い濃度の網点に対しそれよりも高い濃度の網点が30〜70%存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷物。
【請求項6】
前記隠し画像部に背景部と同組成のインキ組成物からなる網点が点在してなり、前記背景部に隠し画像部と同組成のインキ組成物からなる網点が点在してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷物。
【請求項7】
前記隠し画像部の網点を構成する点と背景部の網点を構成する点が一部重なっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷物。
【請求項8】
前記基材上に地紋パターンが印刷されてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の印刷物。
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−64476(P2010−64476A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109042(P2009−109042)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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