説明

印刷装置、及び、印刷方法

【課題】媒体を搬送する搬送機構と媒体を支持する搬送ガイドとを備える印刷装置によっ
て媒体を搬送しながら印刷を行う際に、媒体の端部が搬送ガイドから外れたときに搬送機
構に働く力が急激に変化することを抑制する。
【解決手段】(媒体を搬送方向へ搬送する媒体搬送機構と、前記媒体搬送機構よりも搬送
方向上流側において前記媒体を支持する媒体支持部と、前記媒体搬送機構よりも搬送方向
下流側において前記媒体に液体を噴出して印刷を行うヘッド部と、を備える印刷装置であ
って、前記媒体支持部は前記媒体のある部分を支持する第1支持領域と、前記媒体の前記
ある部分と前記搬送方向と交差する交差方向の位置が異なる部分を支持する第2支持領域
と、を有し、前記第1支持領域の前記搬送方向の最下流側の位置と、前記第2支持領域の
前記搬送方向の最下流側の位置と、が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ローラー等を用いた搬送機構によって媒体を搬送方向へと搬送しながら、搬送方向
下流側に設けられた印字ヘッドからインクを噴出することによって印刷を行う印刷装置が
知られている。このような印刷装置として、搬送方向上流側で媒体を支持する搬送ガイド
が設けられているものがある。そして、印刷時に搬送ローラーの位置まで媒体を搬送する
(給紙する)際に、この搬送ガイドによって媒体を支持しつつ、搬送方向へと正確に導く
ことができるようになっている。しかし、搬送ガイドを有する印刷装置でも、媒体の搬送
時(印刷時)において、搬送路を形成する部品間の段差に媒体が引っかかる等の理由によ
り搬送不良が生じ、印刷画質が悪化する場合があった。
【0003】
このような搬送機構を備えた印刷装置において、媒体の搬送時に搬送ガイドのガイド位
置を変動させることで媒体の搬送経路を調整し、搬送不良を生じにくくさせる搬送ガイド
機構が提案されている。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−122625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送ガイドによって媒体を支持しながら、その搬送ガイドよりも搬送方向下流側に設け
られた搬送ローラー等によって媒体の搬送を行う印刷装置では、媒体の搬送が進行して媒
体の後端部が搬送ガイドから外れる際に、搬送ローラーに働く力が急激に変化することに
より、搬送ローラーの動作が乱されて正確な印刷が難しくなることがある。
【0006】
例えば、搬送ガイドと搬送ローラーとによって支持されていた媒体が搬送ガイドによる
支えを急に失うと、媒体はローラーのみによって支持される片持ち梁のような状態になる
。そして、急激に重力の影響を受けるようになることで、媒体後端部が鉛直下方向に下が
ったり上下方向に震動したりして、ローラーの動作を乱す。さらに、この振動が媒体を介
して搬送方向下流側にある印字ヘッドの位置まで伝わると、印字位置のズレ等を引き起こ
す要因となる。また、例えば、搬送されている媒体の端部が搬送ガイド上から外れた瞬間
、媒体を介して搬送ローラーに働いていた搬送方向逆向きの力(摩擦による抵抗力)が突
然ゼロになる。そして、搬送ローラーにかかるテンションが急激に変化することにより、
搬送ローラーの動作が乱されて媒体を正確に搬送することができなくなるため、印刷画質
が劣化する場合がある。
【0007】
このように、搬送される媒体が搬送ガイドから外れる瞬間に、搬送ローラーに働く力が
急激に変化すると、印字ズレ等によって印刷画質が劣化するおそれがある。
【0008】
本発明では、媒体を搬送する搬送機構と媒体を支持する搬送ガイドとを備える印刷装置
によって媒体を搬送しながら印刷を行う際に、媒体の端部が搬送ガイドから外れたときに
搬送機構に働く力が急激に変化することを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、媒体を搬送方向へ搬送する媒体搬送機構と、
前記媒体搬送機構よりも搬送方向上流側において前記媒体を支持する媒体支持部と前記媒
体搬送機構よりも搬送方向下流側において前記媒体にインクを噴出して印刷を行う印刷機
構と、を備える印刷装置であって、前記媒体支持部は前記媒体のある部分を支持する第1
支持領域と、前記媒体の前記ある部分と前記搬送方向と交差する交差方向の位置が異なる
部分を支持する第2支持領域と、を有し、前記第1支持領域の前記搬送方向の最下流側の
位置と、前記第2支持領域の前記搬送方向の最下流側の位置と、が異なることを特徴とす
る印刷装置である。
【0010】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1A及び図1Bは、プリンター10の構成を説明する図である。
【図2】プリンター10におけるDCモーターを用いる駆動系と制御系の関係を示す図である。
【図3A】比較例の場合における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【図3B】比較例の場合における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【図3C】比較例の場合における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【図4A】第1実施形態における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【図4B】第1実施形態における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【図4C】第1実施形態における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【図5】搬送ガイド41を外れる直前の媒体後端部のたわみの様子を概略的に示す図である。
【図6】搬送ガイド41の形状を変更した場合の一例を示す図である。
【図7】搬送ガイド41の形状を変更した場合の一例を示す図である。
【図8】搬送ガイド41の形状を変更した場合の一例を示す図である。
【図9】搬送ガイド41の形状を変更した場合の一例を示す図である。
【図10A】第2実施形態における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【図10B】第2実施形態における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【図10C】第2実施形態における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
媒体を搬送方向へ搬送する媒体搬送機構と、前記媒体搬送機構よりも搬送方向上流側に
おいて前記媒体を支持する媒体支持部と前記媒体搬送機構よりも搬送方向下流側において
前記媒体にインクを噴出して印刷を行う印刷機構と、を備える印刷装置であって、前記媒
体支持部は前記媒体のある部分を支持する第1支持領域と、前記媒体の前記ある部分と前
記搬送方向と交差する交差方向の位置が異なる部分を支持する第2支持領域と、を有し、
前記第1支持領域の前記搬送方向の最下流側の位置と、前記第2支持領域の前記搬送方向
の最下流側の位置と、が異なることを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、媒体の端部が搬送ガイドから外れたときに搬送機構に働
く力が急激に変化することを抑制することができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記媒体支持部は、前記搬送方向の下流側ほど、前記媒体を
支持する領域が狭くなることが望ましい。
このような印刷装置によれば、媒体と搬送ガイドとの間の摩擦力が搬送の進行と共に徐
々に小さくなるので、媒体がガイドを外れる瞬間に搬送機構に働く力の変化量が小さくな
り、より安定な搬送動作を実現することで印字ズレ等を抑制することができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記媒体支持部は、前記搬送方向の最下流側で、かつ、前記
交差方向の中央部において、前記媒体を支持する領域が最も狭くなることが望ましい。
このような印刷装置によれば、搬送ガイドによって媒体の幅方向中央部を最後まで支持
することで、たわみ量が媒体幅方向で左右対称となり、バランスを保つことができる。し
たがって、媒体の端部が搬送ガイドから外れたときでも、その後の搬送動作において媒体
がスキューしたりすることを抑制できる。
【0015】
かかる印刷装置であって、前記媒体支持部は、前記交差方向の異なる位置に前記搬送方
向に沿った複数のリブを有し、前記リブはそれぞれ前記搬送方向の最下流側の位置が異な
ることが望ましい。
このような印刷装置によれば、搬送ガイドにリブがある場合でも、リブが無い場合と同
様に媒体の端部が搬送ガイドから外れたときに搬送機構に働く力が急激に変化することを
抑制できる。
【0016】
かかる印刷装置であって、前記媒体支持部は、媒体搬送機構によって前記媒体が搬送さ
れる高さよりも高い位置で前記媒体を支持することが望ましい。
このような印刷装置では、搬送ガイドが媒体搬送位置よりも高い位置にあるので、搬送
時に媒体が搬送ガイドに押し付けられ、媒体と搬送ガイドとの間で摩擦が発生しやすくな
る。しかし、媒体の端部が搬送ガイドから外れたときに搬送機構に働く力が急激に変化す
ることを抑制することによって、媒体を安定して搬送させ、印字ズレを抑制するという効
果がより顕著にあらわれる。
【0017】
かかる印刷装置であって、前記媒体支持部は、前記媒体を支持する高さを変更できるこ
とが望ましい。
このような印刷装置によれば、媒体の厚さや硬さ等に合わせて最適な条件で媒体を支持
することができるので、より安定した媒体搬送を行うことにより印字ズレ等を抑制しやす
くなる。
【0018】
また、媒体搬送機構によって媒体を搬送方向へ搬送することと、前記媒体搬送機構より
も搬送方向上流側に備えられた媒体支持部であって、前記媒体支持部は前記媒体のある部
分を支持する第1支持領域と、前記媒体の前記ある部分と前記搬送方向と交差する方向の
位置が異なる部分を支持する第2支持領域と、を有し、前記第1支持領域の前記搬送方向
の最下流側の位置と、前記第2支持領域の前記搬送方向の最下流側の位置と、が異なる前
記媒体支持部によって前記媒体を支持することと、前記媒体搬送機構よりも搬送方向下流
側に備えられた印刷機構から前記媒体にインクを噴出することと、を有する印刷方法が明
らかとなる。
【0019】
===印刷装置の基本的構成===
本実施形態において用いられる印刷装置としてプリンター10及びその駆動方法につい
て説明する。本実施形態のプリンター10は、紙や薄板等の被搬送媒体を所定の方向(以
下、搬送方向とも呼ぶ)に搬送することができる搬送機構を備えた印刷装置である。また
、プリンター10は、インクジェット式のプリンターであるが、かかるインクジェット式
プリンターは、インクを噴出して印刷可能な装置であれば、いかなる噴出方法を採用した
装置でも良い。
【0020】
以下、本明細書においては、搬送方向をX方向、搬送方向に直行する方向(媒体幅方向
とも呼ぶ)をY方向、鉛直上方向をZ方向として説明を行う。
【0021】
<プリンター10の構成について>
図1A及び図1Bは、本実施形態にかかるプリンター10の構成を説明する概略図であ
る。図2は、プリンター10におけるDCモーターを用いる駆動系と制御系との関係を示
す図である。
【0022】
プリンター10は、媒体搬送機構30と、媒体支持機構40と、印刷機構50と、コン
トローラー60とから構成される。
【0023】
媒体搬送機構30は媒体を搬送方向に搬送する。媒体搬送機構30は搬送ローラー対3
1とギア輪列32とPFモーター33と回転検出部34とを有する。搬送ローラー対31
は、搬送ローラー31aと、従動ローラー31bとを具備していて、これらの間で、被搬
送媒体(例えば用紙P)を挟持可能となっている。なお、本実施形態のプリンター10に
おける媒体搬送機構30ではローラーを回転させることによって媒体を搬送しているが、
媒体搬送機構30の搬送方法はローラーを用いた方法には限られず、ベルトを用いた搬送
方法等であってもよい。PFモーター33は、搬送ローラー31aに対して、ギア輪列3
2を介して駆動力(回転力)を与えるものである(図2)。すなわち、PFモーター33
は、搬送ローラー31aを回転させる駆動力を与える駆動部に相当する。PFモーター3
3は回転方向を自在に変更することができる。以下において、媒体を搬送方向に送り出す
際のPFモーター33の回転の向きを正転方向とし、その逆方向の回転を逆転方向と称す
る。本実施形態のプリンター10では、PFモーター33を逆転方向に回転させることに
よって、媒体を搬送方向とは逆の方向に搬送することもでき、両面印刷等の種々の印刷方
法に対応することが可能となっている。なお、搬送ローラー31aを駆動する駆動部は、
PFモーター33のような「モーター」には限られず、油圧によって作動するアクチュエ
ーター等を用いてもよい。回転検出部34はPFモーター33又は搬送ローラー31aの
回転量を検出する。これにより、媒体の搬送量を監視・制御することができる。本実施形
態では回転検出部34としてロータリーエンコーダーを用いている。そのため、回転検出
部34は、円盤状スケール34aと、ロータリーセンサー34bとを具備している。円盤
状スケール34aは、その周方向に沿って一定の間隔毎に、光を透過させる透光部と、光
の透過を遮断する遮光部とを有している。また、ロータリーセンサー34bは、不図示の
発光素子と、同じく不図示の受光素子と、同じく不図示の信号処理回路を主要な構成要素
としている。
【0024】
媒体搬送機構30は、搬送ローラー対31と同様のローラー対を複数備えていてもよい
。例えば、図1Aに示されるように、搬送ローラー対31及び印刷機構50よりも搬送方
向下流側に、搬送後の媒体をプリンター10の外側に排出するための排出ローラー対35
を備えていても良い。排出ローラー対35は搬送ローラー対31と同様の構成を有し、搬
送ローラー31aの回転に合わせて回転することで、媒体を排出する。排出ローラー対3
5も駆動部となるモーターや、駆動力を伝達するギア輪列、回転検出部を有する(全て不
図示)。
【0025】
媒体支持機構40は、媒体搬送機構30の搬送方向上流側において、搬送される媒体を
支持し、搬送時における媒体の幅方向(Y方向)位置を調整する。媒体支持機構40は搬
送ガイド41と、側部ガイド板42とを有する。
【0026】
搬送ガイド41は、板状のガイドによって搬送される媒体を下側から支持する。ガイド
形状についての詳細は後で説明する。側部ガイド板42は搬送ガイド41のY方向(媒体
幅方向)の両端側に設けられた42a及び42bから構成され、媒体の幅方向の位置を固
定し、媒体が搬送経路上に正しく送り出されるように媒体を案内する。なお、側部ガイド
板42は、搬送される媒体のサイズ(幅)に合わせてY方向の位置を調節できるようにし
ておく。その際、Y方向両側のガイド板42a及び42bが両方とも移動できるようにし
てもよいし、片側(例えば42a)のY方向位置が固定され、片側(例えば42b)のみ
Y方向位置を移動できるようにしてもよい。
【0027】
媒体支持機構40は、図1Aのように搬送ローラー31aの設置位置よりもZ方向の高
い位置で、X方向に対して斜めに設置されている。これによって、媒体を斜め上方から搬
送ローラー31aの位置までスムースに供給することができる。一方、図1Bに示される
ように、媒体支持機構40がX方向と平行で搬送ローラー31aと同じ高さ(Z方向の位
置)になるように設置角度を変更し、真横から搬送ローラー31aに媒体を供給できるよ
うな構成としておくこともできる。搬送する媒体が厚かったり硬かったりすることによっ
てたわみにくい性質を有する場合には、図1Aのように媒体が搬送ローラー31aによっ
て搬送される位置よりも高い位置でガイドされていると、媒体は搬送ガイド41に押し付
けられるような状態となる。そのため、搬送ガイド41から媒体に作用する垂直抗力が大
きくなって、媒体と搬送ガイド41との間に大きな摩擦が発生することにより、搬送ロー
ラー31aによる搬送動作が乱されることがある。このような場合には、搬送ガイド41
を搬送方向と平行にすることで、媒体を安定して搬送することができるようになる。すな
わち、図1A及び図1Bで表されるように、媒体支持機構40の設置高さや角度を変更可
能にしておくことで、被搬送媒体の性質に応じて最適な条件で搬送を行うことができるよ
うになる。
【0028】
印刷機構50は、搬送ローラー対31と排出ローラー対35との間の領域において、搬
送される媒体に対してインクを噴出することにより画像を形成させる。印刷機構50はヘ
ッド51とプラテン55とを有する。
【0029】
ヘッド51は媒体のZ方向上方部から媒体にインクを噴出して、媒体上に多数のインク
滴を着弾させることにより画像を形成する。ヘッド51の下面には各インクに対応づけら
れた不図示のノズル列が設けられていて、このノズル列を構成する複数のノズルにはそれ
ぞれピエゾ素子が配置されている。不図示のインクタンクからインク通路を介してノズル
にインクが供給されると、このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズル
からインク滴を噴出することが可能となっている。なお、ヘッド51は、ピエゾ素子を用
いたピエゾ駆動方式に限られず、例えばインクをヒーターで加熱し、発生する泡の力を利
用するヒーター方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、ミストを電界で制御するミスト方式等
を採用しても良い。また、印刷に使用されるインクは、染料系インク/顔料系インク等、
いずれの種類のインクでも良い。
【0030】
プラテン55は、媒体を挟んでヘッド51と対向する位置に配設され(図1参照)、印
刷中の媒体を下側からガイドする。また、ヘッド51の表面に吸引孔を設け、空気を吸引
することにより、印刷中の媒体を吸引保持するようにしてもよい。
【0031】
コントローラー60は、搬送ローラー31aや排紙ローラー35aの回転速度や回転方
向を制御し、媒体を搬送させる。図2に示すように、コントローラー60は、CPU61
、ROM62、RAM63、PROM64、ASIC65、モータードライバー66等を
具備していて、これらが例えばバス等の伝送路67を介して相互に接続されている。また
、制御部60は、コンピューターCOMに接続されている。そして、これらのハードウエ
アと、ROM62やPROM64に記憶されているソフトウエア及び/又はデータの協働
、又は特有の処理を行う回路や構成要素の追加等によって、PFモーター33等の制御が
行われる。
【0032】
===比較例===
はじめに、比較例として搬送ガイド41の搬送方向下流側端部の形状が真直ぐな場合(
搬送ガイド41の形状が長方形の場合)における印刷時の媒体搬送について説明する。図
3A〜図3Cは比較例の場合における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。図
3A〜図3Cで上側の図はそれぞれX−Y平面を表し、下側の図はそれぞれX−Z平面を
表している。なお、搬送ガイド41は搬送方向(X方向)に対してα度傾斜した角度で設
置されているものとする(図3AのX−Z平面参照)。
【0033】
媒体の搬送が開始されると、媒体は搬送ガイド41から搬送ローラー31aへと供給さ
れ、図3Aのような状態になる。このとき、媒体と搬送ガイド41との間ではX−Y平面
の斜線部で示される領域が重複しており、この領域全体で媒体が支持されている。搬送ガ
イドは搬送方向に対して傾斜しているため(X−Z平面参照)、斜線部の領域では媒体が
搬送ガイド41に押し付けられるような力が働き、搬送中の媒体に対して搬送方向とは逆
向きの摩擦力が発生する。発生した摩擦力は媒体を介して搬送ローラー31aが正転する
のを妨げるように作用する。すなわち、媒体の搬送中、搬送ローラー31aには摩擦力に
よる搬送方向逆向きの力が働く。例えば、媒体に厚みがある場合や媒体が硬い場合には、
たわみを戻そうとする力が大きいため発生する摩擦力も大きくなり、搬送ローラー31a
に働く力も大きくなる。
また、このとき図3AのX−Z平面において、搬送ガイド41と搬送ローラー31aと
の両方によって媒体は両持ち梁のような状態で支持されている。
【0034】
その後、媒体は搬送方向に搬送され、媒体の後端部が搬送ガイド41から外れる直前に
は、図3Bのような状態になる。図3Bでは、X−Y平面の斜線部で示されるように、搬
送される媒体の後端部(搬送方向の上流側)が搬送ガイド41の搬送方向最下流部によっ
て支持される。この場合も斜線部の領域で媒体が搬送ガイド41に押し付けられるような
力が働き、摩擦が生じる。したがって、図3Aの場合と同様に搬送ローラー31aには摩
擦力による搬送方向逆向きの力が働く。なお、媒体と搬送ガイド41との間で、単位面積
当たりに働く力は媒体の搬送動作を通して変化しない。そのため、媒体と搬送ガイド41
との重複領域(面積)の大きさに応じて搬送ガイド41と媒体との間に働く垂直抗力の大
きさが変動する。よって、発生する摩擦力の大きさも変動する。例えば、図3Bの場合は
図3Aの場合よりも、媒体と搬送ガイド41との重複領域(斜線部)が狭いため、摩擦力
も小さくなる。
また、X−Z平面においても、図3Aの場合と同様に搬送ガイド41と搬送ローラー3
1aとの両方によって媒体は両持ち梁のような状態で支持される。
【0035】
さらに搬送が進行すると、媒体の後端部が搬送ガイド41から外れて、図3Cのような
状態になる。図3Cの場合では、媒体と搬送ガイド41との間で重複する領域がなくなる
ため摩擦力が発生しない。したがって、搬送ローラー31aには上述のような搬送方向逆
向きの力は作用しない。また、搬送ガイド41による支持がなくなるため、X−Z平面に
おいて媒体後端部は搬送ローラー31aによって支持される片持ち梁のような状態となる
。これにより、媒体の後端部は重力の影響を直接受けることによって媒体後端部がZ方向
の下側に下がったり上下に振動したりする。
【0036】
上述のように媒体の搬送の進行と共に媒体や搬送ローラー31aに働く力は変化するが
、特に図3Bの状態から図3Cの状態へ移行する際に、大きな変化が生じる。例えば、搬
送ガイド41と搬送ローラー31aとによって両持ち梁のような状態で支持されていた媒
体が、搬送ガイド41の支持を失って急に片持ち梁のような状態となるため、媒体後端部
にたわみが発生したり振動を生じたりする。この振動が搬送方向下流側の印刷機構50の
位置まで伝播すると、ヘッド51から噴出されるインク滴が、着弾予定の位置からズレた
位置に着弾するおそれがある。すなわち、印刷画質が劣化するおそれがある。
【0037】
また、媒体が搬送ガイド41から外れた瞬間に媒体と搬送ガイド41との間の摩擦が無
くなるため、搬送ローラー31aに働いていた搬送方向逆向きの力が急にゼロになる。そ
のため、媒体の搬送量が変わってしまい印字ズレを引き起こす要因となる。ここで、搬送
ローラー31aによる媒体搬送量はロータリーエンコーダー(回転検出部34)によって
監視されているが、ロータリーエンコーダーでは急激な変化により生じた搬送量のズレを
検出することができない。したがって、媒体搬送中に急激な変化が生じると、正確な媒体
搬送ができなくなり、印刷画質の劣化に直結する。
【0038】
このように、比較例の場合では媒体が搬送ガイド41から外れる際に急激な変化が生じ
るため、搬送ローラー31aの動作が乱されて印刷画質が劣化する。
【0039】
===第1実施形態===
第1実施形態では、搬送ガイド41の形状を変更することによって、上述の比較例のよ
うな問題を生じにくくする。すなわち、搬送される媒体が搬送ガイド41を外れる瞬間に
、搬送ローラー31aに作用する力が急激に変化することを抑制できるようなガイド形状
とする。
【0040】
図4A〜図4Cは本実施形態における媒体搬送の時間経過の様子を説明する図である。
図4A〜図4Cで上側の図はそれぞれX−Y平面を表し、下側の図はそれぞれX−Z平面
を表している。本実施形態における搬送ガイド41の具体的な形状は、図4A〜図4Cの
X−Y平面で表されるように、長方形の平板から搬送方向下流側の両隅部分が斜めに切り
取られた形状で、搬送方向(X方向)の最下流側で媒体幅方向(Y方向)の中央部におい
て媒体を支持する領域が最も狭くなる。搬送ガイド41の搬送方向(X方向)及び媒体幅
方向(Y方向)の長さは比較例における搬送ガイド41と同一である。搬送ガイド41の
形状以外のプリンター10の構成は比較例の場合と同一である。
【0041】
また、媒体の幅方向(Y方向)中央部の点線で囲まれる楕円形の領域を第1支持領域と
し、媒体の幅方向(Y方向)端部の点線で囲まれる楕円形の領域を第2支持領域と定義す
る。第1支持領域、第2支持領域ともに搬送ガイド41によって媒体が支持される領域で
ある。
【0042】
媒体の搬送が開始されると、媒体は搬送ガイド41から搬送ローラー31aへと供給さ
れ、図4Aのような状態になる。媒体は搬送ガイド41によって、X−Y平面の斜線部で
示される領域で支持される。すなわち、第1次支持領域と第2支持領域との両方の領域で
支持される。そして、比較例の図3Aの場合と同様に、斜線部の領域では媒体が搬送ガイ
ド41に押し付けられ、摩擦力が発生する。この摩擦力が搬送ローラー31aに対して搬
送方向逆向きの力として作用する。
【0043】
また、図4AのX−Z平面(A−A断面、B−B断面)において、搬送ガイド41と搬
送ローラー31aとの両方によって媒体は両持ち梁のような状態で支持されている。つま
り、媒体の第1支持領域、第2支持領域ともに両持ち梁のような状態で支持さている。
【0044】
本実施形態のような形状の搬送ガイド41を使用する場合、搬送ローラー31aや媒体
に働く力の関係は、搬送開始時においては比較例の図3Aの場合と同様である。
【0045】
次に、搬送が進行して媒体の後端部が搬送ガイド41から外れる直前には、図4Bのよ
うな状態になる。本実施形態において搬送ガイド41の形状は、搬送方向下流側ほど幅が
狭くなっているので、図4Bに示されるように、媒体は搬送ガイド41の搬送方向最下流
側でY方向中央部の領域(図4Bの斜線部)のみで支持される。つまり、媒体は第1支持
領域のみで支持され、第2支持領域の支持は外れる。媒体と搬送ガイド41との重複領域
は比較例の図3Bの場合よりもさらに狭くなり、発生する摩擦力も小さくなる。したがっ
て、本実施形態では、媒体が搬送ガイド41を外れる直前において搬送ローラー31aに
働く搬送方向逆向きの力は、比較例の場合よりも小さくなる。
【0046】
また、図4Bでは媒体の幅方向(Y方向)中央の第1支持領域におけるX−Z平面(図
のA−A断面)では媒体は搬送ガイド41と搬送ローラー31aとによって両持ち持梁の
ような状態で支持されている。一方、媒体の幅方向両端の第2支持領域におけるX−Z平
面(図のB−B断面)では媒体は搬送ローラー31aによって片持ち梁のような状態で支
持されている。すなわち、媒体は第1支持領域の部分でのみ両持ち梁状態で支持される。
図5は図4BのC−C断面を表したものであり、搬送ガイド41を外れる直前の媒体後端
部のたわみの様子を概略的に示す図である。図5に示すように媒体幅方向(Y方向)中央
部で搬送ガイド41に支持されている部分(第1支持領域)では、媒体にたわみが生じて
いない。すなわち、媒体が搬送ローラー31aと搬送ガイド41とで両持ち梁のような状
態で支持されていればたわみは生じない。一方、媒体幅方向(Y方向)両端部の搬送ガイ
ド41による支持が外れた部分では、媒体がZ方向下側にたわむ。すなわち、媒体が搬送
ローラー31aによって片持ち梁のような状態で支持されている場合は、重力の影響によ
り媒体後端部にたわみが生じる。なお、図5に示されるように、媒体に発生するたわみの
量は第1支持領域を中心として、媒体幅方向(Y方向)で左右対象となる。
【0047】
さらに搬送が進み、媒体が完全に搬送ガイド41から外れたときは、図4Cのような状
態になる。図4Cの場合は、比較例の図3Cの場合と同様、媒体と搬送ガイド41との間
で摩擦力は発生ぜず、搬送ローラー31aには搬送方向逆向きの力は作用しない。
【0048】
また、X−Z平面(A−A断面、B−B断面)において、媒体は搬送ローラー31aに
よって支持される片持ち梁のような状態となる。すなわち、媒体後端部ではY方向の全範
囲に渡ってZ方向下側にたわみが生じる。
【0049】
<搬送ガイドが媒体を支持する領域について>
本実施形態の搬送ガイド41においては、媒体のある部分を支持する第1支持領域、及
び第1支持領域とはY方向の異なる位置を支持する第2支持領域で、それぞれ搬送方向(
X方向)最下流側の位置が異なる。つまり、X方向の位置によってY方向の支持領域の大
きさが変化し、媒体が搬送されるに従って支持される領域が小さくなっていく。例えば、
媒体は、図4Aの状態では第1・第2支持領域共に支持されているが、搬送が進行した図
4Bの状態では第2支持領域の支持が外れ、第1支持領域のみで支持される。そして、図
4Cの状態では支持領域が無くなる。
【0050】
このように、媒体の搬送位置に応じてY方向の支持領域の大きさが変化することにより
、搬送中の媒体が搬送ガイド41から外れる直前における搬送ローラー31aに作用する
力と、搬送ガイド41から外れた直後における搬送ローラー31aに作用する力との差は
、比較例の場合よりも小さくなる。言い換えると、媒体が搬送ガイド41を外れる瞬間に
おいて、搬送ローラー31aに作用する力が急激に変化することが抑制される。
【0051】
上述のように、媒体が搬送ガイド41を外れる直前では(図4B)、比較例の場合(図
3B)よりも媒体に働く摩擦力が小さくなっているため、搬送ローラー31aに働く搬送
方向逆向きの力も比較例の場合よりも弱くなる。したがって、媒体が搬送ガイド41から
外れることによってこの摩擦力が急にゼロになるような場合でも、搬送ローラー31aが
受ける影響は相対的に小さくなり、印刷画質も劣化しにくくなる。
【0052】
また、比較例の場合では、媒体が搬送ガイド41を外れる直前まで、媒体後端部の幅方
向(Y方向)全体が両持ち梁のような状態で支持されている(図3B)。つまり、搬送ガ
イド41を外れる瞬間まで媒体後端部にたわみは生じない。これに対して本実施形態の場
合は、第1支持領域で支持される媒体後端部のY方向中央部のみが両持ち梁状態で支持さ
れ(図4BのA−A断面)、Y方向中央部以外のその他の部分は片持ち梁の状態で支持さ
れる(図4BのB−B断面)。この場合、図5で説明したように、第1支持領域以外では
媒体後端部にたわみが生じる。そして、媒体がさらに搬送されて、搬送ガイド41から外
れると、媒体後端部の幅方向(Y方向)全てが片持ち梁の状態となる(図4C)。この場
合、Y方向の全領域で媒体後端部にたわみが生じる。
【0053】
つまり、比較例においては、媒体が搬送ガイド41を外れる瞬間に、媒体後端部のY方
向(媒体幅方向)全ての範囲で両持ち梁状態から片持ち梁状態へと支持状態が変化して、
媒体後端部のY方向全ての範囲で突然たわみが発生する。これに対して、本実施形態にお
いては、媒体が搬送ガイド41を外れる瞬間に、両持ち梁状態から片持ち梁状態へと支持
状態が変化するのは、媒体後端部のY方向(媒体幅方向)の中央部(第1支持領域)のみ
である。すなわち、たわみの無い状態から突然たわみが発生するのは第1支持領域のみで
あり、他の領域では元からたわみが発生しているので、急激な変化にはならず、媒体後端
部における振動も生じにくい。したがって、本実施形態では、媒体が搬送ガイド41を外
れる瞬間における媒体の支持状態(たわみの状態)の変化が比較例の場合よりも小さく、
搬送ローラー31aが受ける影響も相対的に小さくなり、印刷画質も劣化しにくくなる。
【0054】
また、図4A〜4Cに示されるような形状の搬送ガイド41を用いる場合、媒体後端部
で発生するたわみの量は、Y方向(媒体幅方向)について左右対称となる(図5参照)。
Y方向でバランスが取れているため、媒体が搬送ガイド41を外れる瞬間に媒体後端部に
おいて振動が発生した場合でも、振動が不規則になりにくく、その後の搬送過程でスキュ
ー等は生じにくくなり、印字ズレを抑制しやすい。
【0055】
ところで、媒体が搬送ガイド41を外れる瞬間における媒体支持に関する力学的状態の
変化の度合いは、搬送ガイド41の形状によっても異なる。以下に、搬送ガイド41の形
状を変更した場合の例について示す。
【0056】
<ガイド形状の変更例>
図6〜図9に搬送ガイド41の形状を変更した場合の例を示す。
図6に示される搬送ガイド41は、搬送方向(X方向)下流部が階段状になっていて、
媒体との接触領域が段階的に狭くなるような形状である。また、搬送方向の上流側から下
流側に向かって3段階に狭くなるものとして、図のように第1〜第3支持領域を定義する
。搬送初期段階においては、媒体は第1〜第3の全ての領域で支持されているが、搬送が
進んで、媒体の後端部が階段状の第2段階の位置に来ると、第3支持領域が支持から外れ
る。さらに搬送が進んで、媒体の後端部が階段状の第3段階の位置に来ると、第2支持領
域も支持から外れ、媒体は第1支持領域のみで支持されるようになる。
【0057】
このように、Y方向位置の異なる第1〜第3支持領域において、搬送方向(X方向)最
下流側の支持位置をそれぞれ異ならせることによって、搬送の進行に応じて段階的に支持
領域を狭くしていくことができる。つまり、媒体が搬送ガイド41を外れる直前の支持領
域は第1支持領域のみであり、比較例の場合(図3B)よりも支持される領域が狭くなっ
ている。したがって、上述の図4A〜図4Cの場合と同様に、搬送ガイド41を外れた瞬
間における搬送ローラー31aに働く力の変化量が小さくなり、比較例の場合よりも搬送
動作が乱されにくくなるため、画質が劣化しにくい。
【0058】
図7に示される搬送ガイド41は、搬送方向(X方向)下流部を半円形とすることによ
り、搬送方向の下流側に行くほど、媒体との接触領域が連続的に狭くなるような形状であ
る。図7のように第1〜第3支持領域を定義すると、搬送の進行と共に第3支持領域、第
2支持領域、第1支持領域の順に支持が外れて行き、媒体のY方向の支持領域を徐々に狭
くしていくことができる。この場合も図6の場合と同様、搬送ガイド41を外れた瞬間に
おける搬送ローラー31aに働く力の変化量が小さくなり、媒体の搬送動作が乱されにく
くなるため、画質が劣化しにくい。
【0059】
図8に示される搬送ガイド41は、搬送方向(X方向)下流部が斜めになっており、Y
方向の一端側と他端側とでX方向のガイドの長さが異なっている。また、それに合わせて
側部ガイド板42aと42bとの長さも異なっている。図8のように、ガイドが長い方か
ら短い方に向かって順に第1〜第3支持領域を定義すると、図6,図7の場合と同様に搬
送の進行と共に第3支持領域、第2支持領域、第1支持領域の順に支持が外れて行き、媒
体のY方向の支持領域を徐々に狭くしていくことができる。
【0060】
図8の場合、搬送ガイド41がY方向に非対称な形状をしているため、媒体が搬送ガイ
ド41を外れる直前には、媒体幅方向の片側のみ(図8の第1支持領域)が支持される状
態となる。支持位置が媒体幅方向の中央部ではなくても、媒体のたわみ量は比較例の場合
よりも小さくなるので、摩擦力も小さくなる。したがって、搬送ガイド41を外れた瞬間
における搬送ローラー31aに働く力の変化量が小さくなり、媒体の搬送は乱されにくく
なる。図8のように媒体幅方向(Y方向)の一端側と他端側とでガイドの長さが異なる形
状は、媒体幅方向の中央ではなく幅方向の片側に媒体の位置を合わせて搬送を行うような
場合に特に有効である。例えば、媒体の側部を側部ガイド板42aの位置に合わせて搬送
を行う場合には、媒体が搬送ガイド41の支持を外れる瞬間には必ず第1支持領域のみで
媒体が支持されることになるので、上述の場合と同様、媒体の搬送が乱されにくくなるた
め、画質が劣化しにくい。その際、位置合わせの基準とする側部ガイド板42aを固定し
て、側部ガイド板42bをY方向に移動可能にしておくことで、媒体の幅が異なる場合に
も対応しやすくなる。
【0061】
図9に示される搬送ガイド41は、Y方向両端部が搬送方向(X方向)に突き出ており
、Y方向に対称な形状である。対称形状であるため、Y方向の半分について考え、図のよ
うに第1〜第3支持領域を定義すると、図8の場合と全く同様に考えることができる。す
なわち、媒体の搬送の進行と共に第3支持領域、第2支持領域、第1支持領域の順に支持
が外れて行き、媒体のY方向の支持領域を徐々に狭くしていくことができる。したがって
、上述の例の場合と同様に搬送ガイド41を外れた瞬間における搬送ローラー31aに働
く力の変化量が小さくなり、比較例の場合よりも搬送が乱されにくくなるため、画質が劣
化しにくい。
【0062】
<第1実施形態の効果>
本実施形態では、搬送ガイド41において、Y方向の異なる位置を支持する第1支持領
域、及び第2支持領域について、それぞれ搬送方向(X方向)最下流側の位置が異なるこ
とにより、媒体が搬送されるに従って支持される領域が小さくなっていく。これによって
、搬送される媒体が搬送ガイド41を外れる瞬間に、搬送ローラー31aに働く力が急激
に変動することを抑制して安定した媒体搬送を実現することで、印字ズレ等による印刷画
質の劣化を抑制することができる。
【0063】
===第2実施形態===
第2実施形態では、表面に搬送方向に沿った複数のリブを有する搬送ガイド41を用い
て媒体を搬送し印刷を行う。
【0064】
図10A〜図10Cは第2実施形態のプリンターを用いた印刷時における媒体搬送の時
間経過の様子を説明する図である。図10A〜図10Cで上側の図はそれぞれX−Y平面
を表し、下側の図はそれぞれX−Z平面を表している。搬送ガイド41の形状は比較例の
場合と同様の長方形とし、図のように431〜435までの5本のリブを有する。搬送ガ
イド41およびリブはY方向に対称な形状である。リブ431と435は搬送方向の長さ
が同じであり、リブ432と434も同じ長さである。リブ431〜433では搬送方向
(X方向)の長さが異なり、リブの始端は搬送方向上流側の同じ位置であるが、終端の位
置がそれぞれ異なる。搬送ガイド41のY方向中央に位置するリブ433が最も長く、Y
方向端部のリブ431が最も短くなっている。また、リブ431〜435のY方向の幅は
全て等しい。搬送ガイド41の形状以外の印刷装置の構成は比較例や第1実施形態の場合
と同じである。なお、搬送ガイド41の形状は長方形には限られず、図6〜図9で説明し
た形状の、搬送ガイド41がリブを有していてもよい。
【0065】
本実施形態では、搬送ガイド41上のリブによって媒体が支持される。リブ433によ
って支持される領域を第1支持領域とし、リブ432及び434によって支持される領域
を第2支持領域、リブ431及び435によって支持される領域を第3支持領域とする。
【0066】
図10Aは媒体の搬送開始直後の状態を表す。媒体はリブ431〜435の斜線部によ
って支持される。すなわち、第1次支持領域〜第3支持領域によって支持される。そして
、比較例の図3Aの場合と同様に、支持される領域では媒体にたわみが生じるため、たわ
みを戻そうとする力によって媒体はリブ431〜435に押し付けられ、摩擦力が発生す
る。この摩擦力が搬送ローラー31aに対して搬送方向逆向きの力として作用する。また
、X−Z平面において、リブ431〜435と搬送ローラー31aとの両方によって媒体
は両持ち梁のような状態で支持されている。つまり、媒体は第1次支持領域〜第3支持領
域で両持ち梁のような状態で支持さている。
図10Bは搬送が進行して媒体の後端部が搬送ガイド41から外れる直前の状態を表す

【0067】
上述のようにリブ431〜435は搬送方向の長さが異なるため、媒体が搬送されるに
従ってリブ431及び435(第3支持領域)、432及び434(第2支持領域)の順
に支持が外れていき、最後にはリブ433(第1支持領域)のみで支持される状態となる
。結果的に第1実施形態の場合と同様に媒体のたわみ量が小さくなるため、媒体から搬送
ガイド41(リブ433)に働く力は比較例の場合よりも小さくなり、それに応じて摩擦
力も小さくなる。したがって、搬送ローラー31aに働く搬送方向逆向きの力も比較例の
場合よりも小さくなる。また、媒体の幅方向中央におけるX−Z平面では媒体はリブ43
3と搬送ローラー31aとによって両持ち持梁のような状態で支持されている。一方、媒
体の幅方向両端部におけるX−Z平面では媒体は搬送ローラー31aによって片持ち梁の
ような状態で支持されている。すなわち、媒体は第1支持領域の部分でのみ両持ち梁状態
のように支持される。
【0068】
図10Cは媒体の後端部が搬送ガイド41から外れたときの状態を表す。比較例の図3
Cの場合と同様、媒体と搬送ガイド41(リブ)との間で摩擦力は発生ぜず、搬送ローラ
ー31aには搬送方向逆向きの力は作用しない。また、X−Z平面において、媒体後端部
は搬送ローラー31aによって支持される片持ち梁のような状態となる。
【0069】
<第2実施形態の効果>
本実施形態においても、媒体に働く摩擦力は搬送の進行と共に比較例の場合よりも小さ
くなっていく。また、媒体の支持状態も、比較例のように媒体の幅方向全範囲が両持ち梁
状態から突然片持ち梁状態に変化するのではなく、徐々に片持ち梁状態の支持範囲が大き
くなるように変化する。これによって、媒体が搬送ガイド41から外れる瞬間において、
搬送ローラー31aに働く力が急激に変動したり、媒体が振動したりすることを抑制する
。安定した媒体搬送を実現することによって印刷画質の劣化を抑制できるようになる。
【0070】
===その他の実施形態===
一実施形態としての印刷装置を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易に
するためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その
趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる
ことは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるもの
である。
【0071】
<媒体について>
上述の各実施形態において、被印刷媒体を紙等として説明しているが、媒体搬送機構に
よって搬送可能なシート状のものであれば「紙」以外の媒体を使用しても良い。例えば、
フィルム状の部材、樹脂製のシート、アルミ箔等を媒体として用いることができる。
【0072】
<制御部について>
制御部60は、上述の実施の形態のものには限られず、例えばASIC65のみでPF
モーター33の制御を司るように構成しても良く、また、これら以外に種々の周辺機器が
組み込まれた1チップマイコン等を組み合わせて、制御部60を構成するようにしても良
い。
【符号の説明】
【0073】
10 印刷装置、30 媒体搬送機構、31 搬送ローラー対、32 ギア輪列、
33 PFモーター、34 回転検出部、35 排出ローラー対
40 媒体支持機構、41 搬送ガイド、42 側部ガイド板、
431〜435 リブ、50 印刷機構、51 ヘッド、55 プラテン、
60 コントローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向へ搬送する媒体搬送機構と、
前記媒体搬送機構よりも搬送方向上流側において前記媒体を支持する媒体支持部と
前記媒体搬送機構よりも搬送方向下流側において前記媒体にインクを噴出して印刷を行
う印刷機構と、を備える印刷装置であって、
前記媒体支持部は
前記媒体のある部分を支持する第1支持領域と、
前記媒体の前記ある部分と前記搬送方向と交差する交差方向の位置が異なる部分を支
持する第2支持領域と、を有し、
前記第1支持領域の前記搬送方向の最下流側の位置と、
前記第2支持領域の前記搬送方向の最下流側の位置と、が異なる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記媒体支持部は、前記搬送方向の下流側ほど、前記媒体を支持する領域が狭くなるこ
とを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記媒体支持部は、前記搬送方向の最下流側で、かつ、前記交差方向の中央部において
、前記媒体を支持する領域が最も狭くなることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記媒体支持部は、前記交差方向の異なる位置に前記搬送方向に沿った複数のリブを有
し、
前記リブはそれぞれ前記搬送方向の最下流側の位置が異なることを特徴とする印刷装置

【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記媒体支持部は、媒体搬送機構によって前記媒体が搬送される高さよりも高い位置で
前記媒体を支持することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、
前記媒体支持部は、前記媒体を支持する高さを変更できることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
媒体搬送機構によって媒体を搬送方向へ搬送することと、
前記媒体搬送機構よりも搬送方向上流側に備えられた媒体支持部であって、
前記媒体支持部は
前記媒体のある部分を支持する第1支持領域と、
前記媒体の前記ある部分と前記搬送方向と交差する方向の位置が異なる部分を支持
する第2支持領域と、を有し、
前記第1支持領域の前記搬送方向の最下流側の位置と、
前記第2支持領域の前記搬送方向の最下流側の位置と、が異なる
前記媒体支持部によって前記媒体を支持することと、
前記媒体搬送機構よりも搬送方向下流側に備えられた印刷機構から前記媒体にインクを
噴出することと、
を有する印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公開番号】特開2012−86907(P2012−86907A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232253(P2010−232253)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】