説明

印刷装置および印刷システム

【課題】ユーザがより好ましい場所で印刷物を手に入れることが期待できる印刷装置および印刷システムを提供すること。
【解決手段】プリンタ100は,印刷データを記憶し,その印刷データの印刷指示を受け付けることよって印刷を開始する。また,プリンタ100は,その印刷データの印刷を許可する場所である印刷実行エリアを取得する。さらに,プリンタ100は,その印刷データの印刷実行エリア内に,自装置よりもその印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,かつ,その印刷データの印刷が可能である他プリンタが存在するか否かを判断する。そして,他プリンタが存在すると判断した場合には,その印刷データを当該他プリンタのメモリに登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,印刷装置および印刷システムに関する。さらに詳細には,印刷データを印刷装置に記憶し,ユーザからの印刷指示を受け付けたことを条件にその印刷データを印刷する印刷装置および印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,PCや携帯電話等の端末装置から印刷装置に印刷データを送信し,印刷装置はその印刷データを記憶して待機し,その後,ユーザが印刷装置に対してその印刷データの印刷指示を行ったことを契機に印刷を開始するリモート印刷技術がある。近年,公衆無線LANサービスの普及により,前述のようなリモート印刷技術が広く利用されており,例えば,駅,空港等の公共施設の印刷装置に印刷データを事前に送信しておくことで,ユーザは現地で印刷物を手に入れることができる。
【0003】
前述のリモート印刷技術を開示したものとしては,例えば特許文献1がある。特許文献1には,プリンタにセキュアジョブを登録すること,また,登録したプリンタにて認証を行ったことを契機にセキュアジョブの印刷を開始することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の技術には,次のような問題があった。すなわち,印刷データを印刷装置に登録後,その印刷装置が置き換え等によって場所を変えられてしまうことがある。その場合,移動先の場所よりもユーザが印刷物を手に入れる場所として好ましい場所に他の印刷装置が存在する可能性もあることから,改善の余地がある。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,ユーザがより好ましい場所で印刷物を手に入れることが期待できる印刷装置および印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は,印刷データを記憶する記憶部と,前記印刷データの印刷指示を受け付ける受付部と,前記受付部が前記印刷データに対する印刷指示を受け付けたことを条件に,前記印刷データを印刷する印刷部と,前記印刷データの印刷実行エリアを取得する取得部と,前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内に,自装置よりも前記印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する優先判断部と,前記優先判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合に,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する登録部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の印刷装置は,印刷データを記憶し,その印刷データの印刷指示を受け付けることよって印刷を開始する。また,本発明の印刷装置は,印刷データの印刷を許可する場所である印刷実行エリアを取得する。さらに,本発明の印刷装置は,その印刷データの印刷実行エリア内に,「自装置よりもその印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,かつ,その印刷データを印刷可能な」他の印刷装置が存在する場合には,その印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する。ここでいう「登録」は,印刷装置の記憶部へのデータ書き込みに相当する。優先度の高低は,例えば,ユーザ設定によるある地点からの距離や,ユーザ設定による場所ごとの優先度数に基づいて判断できる。
【0009】
すなわち,本発明の印刷装置は,ある印刷データについて,その印刷実行エリア内に,自装置よりもその印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,さらにその印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在する場合,その印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する。これにより,他の印刷装置との相対位置関係が変化した場合であっても,その変化に対応して,印刷データが印刷場所としてより好ましい場所に配置されている印刷装置に記憶される。
【0010】
また,本発明の印刷装置は,前記印刷データを自装置で印刷不可であり,前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内にあって,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する代替判断部を備え,前記登録部は,前記代替判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合にも,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録するとよい。
【0011】
すなわち,ある印刷データについて自装置で印刷不可の場合には,自装置からはその印刷データについての印刷物を手に入れることができない。そのため,本発明の印刷装置は,印刷データを自装置で印刷不可であり,「その印刷データの印刷実行エリア内にあって,その印刷データを印刷可能な」他の印刷装置が存在する場合には,その印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する。これにより,印刷データがその印刷データを印刷可能な印刷装置に記憶される可能性が高まり,その印刷データを印刷できないというリスクを軽減できる。なお,印刷不可の状態には,自装置が故障等によって印刷不能になっている状態の他,自装置の設置場所がその印刷データにとって印刷実行エリア外であることも該当する。
【0012】
また,本発明の印刷装置は,前記登録部による前記印刷データの登録後,自装置が前記印刷データについて印刷不可から印刷可能に復帰した場合に,前記他の印刷装置から前記印刷データを消去する復帰制御部を備えるとよい。すなわち,当初の状態に復帰した場合には,当初の状態に戻す方が好ましい。
【0013】
また,前記復帰制御部は,前記他の印刷装置で消去対象となる前記印刷データが自装置の記憶部に記憶されていないことを条件として,前記他の印刷装置から前記印刷データを消去する前に,前記印刷データを自装置の記憶部に記憶するとよい。印刷データが自装置の記憶部に記憶されていない場合にその印刷データを自装置の記憶部に記憶することで,印刷データの消失を回避できる。換言すると,印刷データが自装置の記憶部に記憶されている場合には,その印刷データの自装置への記憶処理は不要である。
【0014】
また,前記印刷データが自装置で印刷不可であり,かつ,前記代替判断部にて他の印刷装置が存在しないと判断した場合,前記印刷データが印刷実行エリア内で印刷不可である旨を報知する報知部を備えるとよい。所望の場所での印刷ができない状況では,ユーザにその旨を報知することで,ユーザの困惑の軽減が期待できる。
【0015】
また,前記印刷実行エリアは,任意の地点が特定された情報であり,前記優先判断部は,前記地点からの距離が自装置よりも他の印刷装置の方が近い場合に,当該他の印刷装置を自装置よりも印刷する場所としての優先度が高いと判断するとよい。任意の地点は,例えば,ユーザ指定による地点であってもよいし,印刷実行エリアの中心位置であってもよい。自装置よりもユーザ所望の印刷位置により近い印刷装置がある場合には,ユーザはその印刷装置から印刷物を手に入れる方が便利である。
【0016】
また,前記印刷実行エリアは,ユーザによって指定された場所であるとよい。例えば,印刷装置の設置場所を印刷実行エリアに自動的に登録(例えば,ユーザはプリンタ名を指定し,その指定プリンタの設置場所周辺を印刷実行エリアに自動的に登録)してもよいが,ユーザが印刷実行エリアを指定できることで,ユーザの意向をより反映できる。
【0017】
また,本発明の印刷装置は,前記印刷データの他の印刷装置への登録を許可するか否かを設定する設定部と,前記設定部にて前記印刷データの他の印刷装置への登録が許可されていない場合に,前記登録部による前記印刷データの他の印刷装置への登録を禁止する禁止部とを備えるとよい。他の印刷装置に印刷データを登録することによって印刷データの安全性が低下することもある。そのため,必要に応じて他の印刷装置に印刷データを登録することを禁止できる方が好ましい。
【0018】
また,本発明の印刷装置は,前記登録部にて前記印刷データを他の印刷装置に登録した場合,前記印刷データを前記記憶部から消去する消去部を備えるとよい。複数の印刷装置に印刷データを記憶すると,情報漏洩の危険性が高まり,安全性の低下が懸念される。そのため,他の印刷装置に記憶された印刷データは自装置から消去する方が好ましい。
【0019】
また,本発明は,印刷データを記憶する記憶部と,前記印刷データの印刷指示を受け付ける受付部と,前記受付部が前記印刷データに対する印刷指示を受け付けたことを条件に,前記印刷データを印刷する印刷部と,前記印刷データの印刷実行エリアを取得する取得部と,前記印刷データを自装置で印刷不可であり,前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内にあって,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する代替判断部と,前記代替判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合に,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する登録部とを備えることを特徴とする印刷装置を含んでいる。
【0020】
また,本発明は,印刷データを記憶し,前記印刷データに対する印刷指示を受け付けたことを条件に,前記印刷データを印刷する複数の印刷装置と,各印刷装置を管理するサーバとを備える印刷システムであって,前記サーバは,前記印刷データの印刷実行エリアを取得する取得部と,前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内に,前記印刷データを記憶する印刷装置よりも前記印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する優先判断部と,前記優先判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合に,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する登録部とを備えることを特徴とする印刷システムを含んでいる。
【0021】
また,本発明は,印刷データを記憶し,前記印刷データに対する印刷指示を受け付けたことを条件に,前記印刷データを印刷する複数の印刷装置と,各印刷装置を管理するサーバとを備える印刷システムであって,前記サーバは,前記印刷データの印刷実行エリアを取得する取得部と,前記印刷データが前記印刷データを記憶する印刷装置で印刷不可であり,前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内にあって,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する代替判断部と,前記代替判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合に,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する登録部とを備えることを特徴とする印刷システムを含んでいる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば,ユーザがより好ましい場所で印刷物を手に入れることが期待できる印刷装置および印刷システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態にかかるプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】第1の形態の印刷システムの動作概略を示すブロック図である。
【図3】プリンタが有する自プリンタ情報を記憶するデータベースの構成を示す図である。
【図4】プリンタが有する他プリンタ情報を記憶するデータベースの構成を示す図である。
【図5】PCから送られる印刷データの構成を示す図である。
【図6】自プリンタ設置処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】他プリンタ設置処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】プリンタ不能処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】プリンタ復帰処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の形態の印刷システムの動作概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,本発明にかかる印刷装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,広域ネットワークに接続するプリンタに本発明を適用したものである。
【0025】
[プリンタの構成]
本形態のプリンタ100(印刷装置の一例)は,図1に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34とを備えた制御部30を備えている。また,制御部30は,用紙に画像を印刷する画像形成部10と,動作状況の表示やユーザによる入力操作の受付を行う操作パネル40と,ネットワークインターフェース37と,USBインターフェース38と,無線通信インターフェース39とに電気的に接続されている。
【0026】
ROM32には,プリンタ100を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33(記憶部の一例)は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0027】
CPU31(取得部,優先判断部,登録部,代替判断部,復帰制御部,報知部,禁止部,消去部の一例)は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,プリンタ100の各構成要素を制御する。
【0028】
ネットワークインターフェース37,USBインターフェース38および無線通信インターフェース39は,他の装置との通信を可能にするインターフェースである。プリンタ100は,これらのインターフェースを介して他の装置から送信される印刷データを受信する。
【0029】
また,画像形成部10(印刷部の一例)は,用紙に画像を印刷することができればよく,画像形成方式については電子写真方式であってもインクジェット方式であってもよい。また,カラー印刷が可能であってもよく,モノクロ印刷専用であってもよい。
【0030】
また,操作パネル40(受付部の一例)は,ユーザ入力を受け付ける各種のボタンと,文字情報を表示する液晶画面とを有している。各種のボタンとしては,例えば,印刷の実行を指示するボタンや,印刷動作のキャンセルを指示するキャンセルボタンがある。
【0031】
[第1の形態]
[印刷システムの構成]
続いて,プリンタ100を含む印刷システム900の構成および動作について,図2を参照しつつ説明する。なお,印刷システム900を構成するプリンタ100以外のプリンタについては,プリンタ100と同等のスペックを有するプリンタであっても,プリンタ100とはスペックが異なるプリンタであってもよい。
【0032】
印刷システム900では,プリンタが設置されるエリアとして,複数のエリアが規定されている。このエリアは,一定の範囲を有する領域であり,例えば施設名とその範囲とがリンクして記憶されている場合には,○○空港,○○駅,○○役場,○○図書館といった施設名で記憶してもよい。各エリアは,同等のサイズであっても,異なるサイズであってもよい。また,エリア同士は,隣接していても離間していても一部が重複していてもよい。なお,本形態では,4つのエリア(エリア1,エリア2,エリア3,エリア4)が規定されているものとする。
【0033】
印刷システム900を構成するプリンタ(以下,プリンタ100として説明する)は,自プリンタのプロパティ情報として,図3に示すように,自プリンタの設置場所の情報であるエリア情報や,スペックの情報である解像度やカラー情報を,データベース341(以下,「自プリンタDB341」とする)に記憶している。自プリンタDB341は,NVRAM34に記憶される。
【0034】
具体的に,エリア情報には,プリンタ100が,印刷システム900が区画するエリアのうち,どのエリアに属するかの属性情報と,そのエリアの中心位置を(0,0)とした場合の座標情報が記憶される。プリンタ100は,このエリア情報を,ユーザ入力によって登録してもよいし,GPS(Global Positioning System)等の位置測定機能によって自動的に登録してもよい。
【0035】
また,プリンタ100は,印刷システム900を構成する自プリンタ以外のプリンタ(例えば,図2中のプリンタ101〜104)である他プリンタの情報として,図4に示すように,プリンタごとに,プリンタ名やアドレス等を記憶するプリンタの識別情報と,そのプリンタのプロパティ情報(自プリンタのプロパティ情報と同様の構成の情報)とを関連付けたプリンタ情報を,データベース342(以下,「他プリンタDB342」とする)に記憶している。他プリンタDB342も,NVRAM34に記憶される。
【0036】
印刷システム900では,PC200からプリンタ100に印刷データが投入される。プリンタ100は,印刷データを受信すると,その印刷データをRAM33あるいはNVRAM34に記憶する。その後,プリンタ100は,その印刷データの印刷指示の入力を待つ待機状態になる。すなわち,プリンタ100は,印刷データを受信した段階ではその印刷データの印刷を開始しない。
【0037】
ユーザは,プリンタ100に印刷データを投入した後,プリンタ100が設置されている場所まで移動する。そして,プリンタ100の操作パネル40を操作し,印刷データの印刷指示を入力する。プリンタ100は,その印刷指示の入力を契機にその印刷指示に対応する印刷データの印刷を開始する。
【0038】
前述した印刷データには,画像の他,印刷条件等の付随情報が記憶される。図5は,印刷データのヘッダ領域60に記憶される付随情報(以下,「ヘッダ情報」とする)を示している。ヘッダ情報には,少なくとも,印刷実行エリアと,他プリンタデータ登録設定と,解像度やカラー印刷等の印刷条件と,所有者情報とが含まれる。
【0039】
ヘッダ情報のうち,「印刷実行エリア」には,ユーザが印刷の実行を所望するエリアが記憶される。そして,印刷データは,印刷実行エリアに指定されているエリア内に存在するプリンタの何れかに保存される。具体的に「印刷実行エリア」には,ユーザ入力によって,エリア1〜4のいずれかを識別する情報が記憶される。
【0040】
また,図5に示したように,印刷実行エリアには複数のエリアを設定することができる。さらに,複数のエリアを設定した場合には,各エリアに優先付けがなされる。例えば,図5に示した例では,優先度が高い優先度1にはエリア1が設定され,優先度が低い優先度2にはエリア3が設定されている。そのため,図5に示した印刷データは,エリア1に存在するプリンタに優先的に投入される。そして,エリア1に当該印刷データを印刷可能なプリンタが存在しなければ,エリア3に存在するプリンタに投入される。
【0041】
また,ヘッダ情報のうち,「他プリンタデータ登録」(設定部の一例)は,印刷データの他プリンタへの自動登録を許可するか否かの設定である。プリンタ100は,所定の条件を満たすと,自プリンタに記憶されている印刷データを他プリンタに登録することができる。「他プリンタデータ登録」に不許可が設定されると,この印刷データの他プリンタへの登録が禁止される。なお,ここでいう他プリンタへの登録とは,他プリンタのメモリへのデータ書込みに相当する。
【0042】
印刷データの他プリンタへの登録を実行する条件としては,例えば,その印刷データの印刷実行エリア内に,自プリンタよりもその印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,かつその印刷データを印刷可能な他プリンタが存在することが該当する。この条件を満たすケースとしては,例えば,プリンタの設置場所が変更された場合や,印刷システム900内に新たなプリンタが設置された場合が該当する。なお,印刷データが印刷不可とは,例えば,印刷条件に設定されているスペックを満たしていない場合が該当する。
【0043】
また,印刷データの他プリンタへの登録を実行する他の条件としては,例えば,自プリンタがその印刷データを印刷できない状態にあり,かつその印刷データの印刷実行エリア内にその印刷データを印刷可能な他プリンタが存在することが該当する。自プリンタが印刷データを印刷できない状態としては,例えば,トナー切れ,用紙切れ,故障等による自プリンタ自身の印刷不能状態や,自プリンタがその印刷データの印刷実行エリア外に設置されていることが該当する。
【0044】
[印刷データの他プリンタへの登録制御]
[自プリンタ設置処理]
続いて,上述した印刷データの他プリンタへの登録制御について説明する。始めに,自プリンタ(本形態ではプリンタ100)の設置場所が変更された場合の処理である自プリンタ設置処理(取得部,優先判断部,登録部,代替判断部,禁止部,消去部の一例)を,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。なお,プリンタ100の設置場所の変更としては,印刷システム900内の既存のプリンタを移動させた場合の他,印刷システム900内に新規のプリンタとして投入された場合も含まれる。
【0045】
自プリンタ設置処理は,ユーザがプリンタ100を設置後,プリンタ100の操作パネル40中の所定のボタンを押下したことを契機にCPU31によって実行される。なお,プリンタ100がGPS等の位置測定機能を有する場合には,設置場所が変更されたことを自動検知し,その検知タイミングで自プリンタ設置処理を実行してもよい。
【0046】
自プリンタ設置処理では,先ず,自プリンタのプロパティ情報を自プリンタDB341から読み出し,そのプロパティ情報をプリンタ追加要求とともに印刷システム900内にブロードキャスト送信する(S101)。プリンタ追加要求は,後述する他プリンタ設置処理で利用される。次に,他プリンタDB342を参照し,他プリンタのプロパティ情報を読み出す(S102)。
【0047】
次に,自プリンタに印刷指示待ちの印刷データが有るか否かを判断する(S103)。印刷データがある場合には(S103:YES),そのうちの1つを抽出し,抽出した印刷データのヘッダ情報を読み出す(S104,取得部の一例)。
【0048】
そして,ヘッダ情報に含まれる他プリンタデータ登録の可否情報に基づいて,その印刷データの他プリンタへの登録が許可されているか否かを判断する(S105)。他プリンタへの登録が許可されていない場合には(S105:NO),S103に戻り(禁止部の一例),他に印刷データが有るか否かを判断する。
【0049】
一方,他プリンタへの登録が許可されている場合には(S105:YES),自プリンタがその印刷データに設定されている印刷実行エリア内にあるか否かを判断する(S106)。
【0050】
自プリンタが印刷実行エリア内にある場合には(S106:YES),自プリンタが設置されているエリアの優先度と,他プリンタが設置されているエリアの優先度とを比較し,自プリンタが設置されているエリアよりも優先度が高いエリアにあり,さらに印刷データを印刷可能な他プリンタがあるか否かを判断する(S107,優先判断部の一例)。優先度が高いか否かは,その印刷データに設定されている印刷実行エリアの優先度を示す指数(優先度1,優先度2等)に基づいて判断できる。印刷可能か否かは,他プリンタのスペックと印刷データの要求スペックとを比較することによって判断できる。また,他プリンタにアクセスし,他プリンタが稼働中であることを判断してもよい。
【0051】
S107の条件を満たす他プリンタがない場合には(S107:NO),その印刷データを自プリンタに保存したままとし,S103に戻り,他に印刷データが有るか否かを判断する。一方,S107の条件を満たす他プリンタがある場合には(S107:YES),当該他プリンタに印刷データを登録するため,S108に移行する。なお,S107の条件を満たす他プリンタが複数有る場合には,そのうちの1つを抽出する。
【0052】
また,自プリンタがその印刷データの印刷実行エリア外にある場合には(S106:NO),自プリンタではその印刷データを印刷することができない。そこで,その印刷データを印刷可能な他プリンタがあるか否かを判断する(S121,代替判断部の一例)。
【0053】
S121の条件を満たす他プリンタがない場合には(S121:NO),その印刷データについて印刷ができない状態になっていることを,その印刷データの所有者に報知する(S122)。すなわち,ユーザ所望の場所での印刷ができない状況に陥っていることから,ユーザにその旨を報知し,ユーザに状況を把握してもらう。S122では,例えば,印刷データを送信したPC200に対して電子メールを送信する。また,PC200に組み込まれているプリンタドライバに対してメッセージを出力する命令を,PC200に出力してもよい。S122の後は,その印刷データを自プリンタに保存したままとし,S103に戻り,他に印刷データが有るか否かを判断する。
【0054】
一方,S121の条件を満たす他プリンタがある場合には(S121:YES),当該他プリンタに印刷データを登録するため,S108に移行する。なお,S121の条件を満たす他プリンタが複数有る場合には,そのうちの1つを抽出する。
【0055】
S107あるいはS121で他プリンタがあると判断された場合には,必要に応じて当該他プリンタのスペックに合わせて印刷データを変換する(S108)。そして,その印刷データを,当該他のプリンタに送信する(S109,登録部の一例)。すなわち,その印刷データを当該他プリンタのメモリに登録する。その後,その印刷データを自プリンタのメモリから消去する(S110,消去部の一例)。これにより,印刷データが自プリンタから他プリンタに移動することになる。
【0056】
その後,移動した印刷データの所有者に対して,印刷データが移動したことを報知する(S111)。すなわち,ユーザ不在で印刷データの登録先を変更してしまっていることから,ユーザにその旨を報知し,ユーザに登録先の変更を把握してもらう。その後は,S103に戻って,他に印刷データが有るか否かを判断する。
【0057】
自プリンタ設置処理では,S104以降の処理を,自プリンタに記憶されている印刷指示待ちの印刷データ全てに対して行う。そして,S104以降の処理を行っていない印刷データがなければ(S103:NO),自プリンタ設置処理を終了する。
【0058】
前述したように,自プリンタ設置処理では,更新された自プリンタのエリア情報に基づいて,自プリンタに記憶されている印刷データにとってより優先度が高いエリアに他プリンタがあり,当該他プリンタがその印刷データの印刷が可能ならば,当該他プリンタに自プリンタの印刷データを登録している。また,自プリンタがその印刷データにとって印刷不可のエリアにあるならば,印刷可能なエリアにあってその印刷データの印刷が可能な他プリンタに印刷データを登録している。これらにより,自プリンタの配置変更に応じて,自プリンタ内の各印刷データについてその保存先の見直しが行われる。そのため,印刷データをより適切なエリアに保存することができる。
【0059】
なお,自プリンタ設置処理では,印刷データに印刷を実行するエリアの優先度を示す指数に基づいて各エリアの優先度の高低を決定している。この決定方法では,プリンタがエリアを越えた配置転換になった場合には有効であるが,エリア内での配置転換の場合には優先順位に変化がなく,印刷データの保存先の見直しは行われない。そこで,エリア情報に含まれる座標情報に基づいて,中心位置からの距離が近いプリンタほど優先度が高いとしてもよい。この場合,同じエリア内に複数のプリンタがあったとしても,そのうち最も中心位置に近いプリンタに印刷データが登録されることになる。
【0060】
この他,例えば,印刷データに指定エリア内のさらにユーザが印刷を希望する希望地点を記憶した場合,その希望地点からの距離が近いほど優先度が高いとしてもよい。この場合,ユーザが印刷を希望する希望地点に最も近いプリンタに印刷データが登録されることになる。
【0061】
[他プリンタ設置処理]
続いて,他プリンタ(本形態ではプリンタ100以外のプリンタ)の設置場所が変更された場合の処理である他プリンタ設置処理(取得部,優先判断部,登録部,禁止部,消去部の一例)を,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。他プリンタ設置処理は,他プリンタから出力されるプリンタ追加要求(自プリンタ設置処理のS101参照)を受信したことを契機にCPU31によって実行される。なお,自プリンタ設置処理と同じ処理については,同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
他プリンタ設置処理では,先ず,プリンタ追加要求を出力した他プリンタのプロパティ情報を取得する(S201)。他プリンタのプロパティ情報は,プリンタ追加要求に付随している。なお,プリンタ追加要求にプロパティ情報が付随していない場合には,プリンタ追加要求を出力した他プリンタにプロパティ情報を問い合わせて取得する。取得したプロパティ情報は,他プリンタDB342に登録される。具体的には,新たなプリンタが追加された場合には,他プリンタDB342に新しいレコードが追加される。既存のプリンタが移動した場合には,他プリンタDB342に登録されているそのプリンタのプロパティ情報が更新される。
【0063】
次に,自プリンタのプロパティ情報を自プリンタDB341から読み出す(S202)。その後は,自プリンタ設置処理と同様に,自プリンタに保存されている1つ1つの印刷データについて,その印刷データについてより優先度が高いエリアにあってその印刷データを印刷可能な他プリンタがあるならば,当該他プリンタにその印刷データを登録する。
【0064】
なお,他プリンタ設置処理では,自プリンタの設置場所が移動したわけではないことから,図7に示すように,自プリンタ設置処理のS106で行ったような自プリンタが印刷実行エリア内であるか否かの判断は省略してもよい。すなわち,自プリンタで保存している印刷データは,全て印刷実行エリアの条件を満たしているものと見做してもよい。
【0065】
前述したように,他プリンタ設置処理でも,更新された他プリンタのエリア情報に基づいて,より優先度が高いエリアに他プリンタがあるならば,当該他プリンタに自プリンタの印刷データを登録している。これにより,他プリンタに配置変更が生じたとしても,その配置変換に応じて,自プリンタ内の印刷データについてその保存先の見直しが行われる。そのため,印刷データをより適切なエリアに保存することができる。
【0066】
[プリンタ不能処理]
続いて,自プリンタがトナー切れや故障等で印刷不能に陥ったことを検知した場合の処理であるプリンタ不能処理(取得部,登録部,代替判断部,報知部,禁止部,消去部の一例)を,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。プリンタ不能処理は,自プリンタの印刷不能を検知したことを契機にCPU31によって実行される。なお,自プリンタ設置処理や他プリンタ設置処理と同じ処理については,同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
プリンタ不能処理では,先ず,他プリンタのプロパティ情報を他プリンタDB342から読み出す(S102)。また,自プリンタのプロパティ情報を自プリンタDB341から読み出す(S202)。
【0068】
その後,自プリンタに印刷データがある場合には(S103:YES),その印刷データのヘッダ情報を読み出す(S104,取得部の一例)。そして,その印刷データについて他プリンタへの登録が許可されている場合には(S105:YES),その印刷データの印刷実行エリア内にあり,その印刷データを印刷可能な他プリンタがあるか否かを判断する(S306,代替判断部の一例)。
【0069】
印刷データを印刷可能な他プリンタがある場合には(S306:YES),その印刷データの移動前に,移動する印刷データの識別情報と移動先の他プリンタの識別情報とを移動情報として自プリンタに記憶する(S307)。その後は,S108に移行し,印刷データを他プリンタに移動させる。
【0070】
印刷データを印刷可能な他プリンタがない場合には(S306:NO),その印刷データについて印刷ができない状態になっていることを,その印刷データの所有者に報知する(S122,報知部の一例)。S122の後,S103に戻る。
【0071】
すなわち,プリンタ不能処理では,自プリンタが印刷不能になった際,現状の各プリンタのエリア情報に基づいて,自プリンタ内の印刷データを印刷可能な他プリンタがあれば,当該他プリンタに印刷データを移動させる。これにより,自プリンタが印刷不能に陥った際に,自プリンタ内の印刷データについてその保存先の見直しが行われることになる。そのため,印刷データを印刷できない状況となる可能性を下げることができる。
【0072】
[プリンタ復帰処理]
続いて,自プリンタが印刷不能から印刷可能に復帰した場合の処理であるプリンタ復帰処理(復帰制御部の一例)を,図9のフローチャートを参照しつつ説明する。プリンタ復帰処理は,プリンタ100が印刷不能から印刷可能に復帰したことを契機にCPU31によって実行される。
【0073】
プリンタ復帰処理では,先ず,印刷不能になった際に記憶される移動情報(プリンタ不能処理のS307参照)があるか否かを判断する(S401)。移動情報がなければ(S401:NO),復帰させる印刷データがないと見做し,プリンタ復帰処理を終了する。
【0074】
移動情報がある場合には(S401:YES),その移動情報に記憶されている他プリンタからその移動情報に記載されている印刷データを取得する(S402,復帰制御部の一例)。その後,その印刷データの消去要求を,当該他プリンタに出力する(S403,復帰制御部の一例)。これにより,印刷データが他プリンタから自プリンタに移動することになる。つまり,元々自プリンタにあった印刷データが自プリンタに復帰する。
【0075】
その後,移動した印刷データの所有者に対して,印刷データが移動したこと,すなわち印刷データが元の記憶状態に復帰したことを報知する(S405)。S405の後,プリンタ復帰処理を終了する。
【0076】
すなわち,プリンタ不能処理では,印刷不能によって強制的に他プリンタへ印刷データを移動している。この場合,移動対象となった印刷データは,優先度が低いエリアの他プリンタに移動することもある。そのため,当初の状態に復帰した場合には,プリンタ復帰処理によって当初の状態に戻す方が好ましい。
【0077】
[第2の形態]
[印刷システムの構成]
続いて,第2の形態の印刷システム901の構成および動作について,図10を参照しつつ説明する。本形態の印刷システム901は,印刷システム901を構成するプリンタを管理するサーバ300を備えており,印刷データはサーバ300を介して各プリンタに送信される。この点,サーバ300を有してない第1の形態とは異なる。
【0078】
第2の形態の印刷システム901では,第1の形態と同様に,プリンタが設置されるエリアが規定されている。サーバ300は,印刷システム901を構成する各プリンタのプロパティ情報を記憶するデータベース(以下,「プリンタ管理DB」とする)を有しており,各プリンタがどのエリアに設置されているかを把握できる。また,サーバ300は,各プリンタに記憶されている印刷データを管理するデータベース(以下,「印刷データ管理DB」とする)を有している。
【0079】
サーバ300は,印刷データを受信すると,その印刷データの少なくともヘッダ情報を印刷データ管理DBに記憶する。ヘッダ情報には,第1の形態と同様に,少なくとも印刷実行エリアおよび印刷条件の情報が記憶されている。その後,サーバ300は,その印刷データを,指定されたプリンタに送信する。つまり,プリンタは印刷データ全体(ヘッダ情報の他,印刷対象となる画像を含むデータ)を記憶しており,サーバ300はその印刷データの少なくともヘッダ情報を印刷データ管理DBに記憶している。
【0080】
一方,印刷システム901を構成する各プリンタ(以下,プリンタ100として説明する)は,自プリンタのプロパティ情報を有しているものの,他プリンタのプロパティ情報を有していない。そのため,プリンタ100は,他プリンタのプロパティ情報が必要の際は,サーバ300に問い合わせる。
【0081】
プリンタ100は,サーバ300から印刷データを受信すると,その印刷データをRAM33あるいはNVRAM34に記憶する。その後,プリンタ100は,その印刷データの印刷指示の入力を待つ待機状態になる。つまり,プリンタ100は,印刷データを受信した段階ではその印刷データの印刷を開始しない。
【0082】
本形態では,プリンタ100に登録されている印刷データの移動を次のように行う。まず,プリンタ100の設置場所を変更した場合(もしくはプリンタ100を新たに設置した場合),プリンタ100は変更後のエリア情報をサーバ300に送信する。サーバ300は,そのエリア情報を受信すると,プリンタ管理DBに記憶されているプリンタ100のプロパティ情報を更新する。
【0083】
さらに,サーバ300は,プリンタ管理DBおよび印刷データ管理DBを参照し,第1の形態の自プリンタ設置処理と同様の処理を行って,プリンタ100に保存されている印刷データについてその保存先を見直す。すなわち,プリンタ100に保存されている各印刷データのヘッダ情報を参照し,プリンタ100が存在するエリアよりも優先度が高いエリアに他プリンタがある場合には,プリンタ100に保存されている印刷データを当該他プリンタに移動させる。
【0084】
また,サーバ300は,プリンタ100からエリア情報を受信すると,プリンタ100以外のプリンタである他プリンタに保存されている印刷データついても,プリンタ管理DBおよび印刷データ管理DBを参照し,第1の形態の他プリンタ設置処理と同様の処理を行って,各他プリンタに保存されている印刷データについてその保存先を見直す。すなわち,他プリンタに保存されている印刷データのヘッダ情報を参照し,当該他プリンタが存在するエリアよりも優先度が高いエリアにプリンタ100が設置された場合には,その印刷データをプリンタ100に移動させる。
【0085】
また,プリンタ100が印刷不能になった場合,プリンタ100は印刷不能エラーをサーバ300に送信する。サーバ300は,その印刷不能エラーを受信すると,プリンタ管理DBおよび印刷データ管理DBを参照し,第1の形態のプリンタ不能処理と同様の処理を行って,プリンタ100に保存されている印刷データを,その印刷データが印刷可能な他プリンタに移動させる。すなわち,プリンタ100に保存されている印刷データのヘッダ情報を参照し,その印刷データの印刷実行エリアに他プリンタが存在する場合には,その印刷データを当該他プリンタに移動させる。さらに,プリンタ100が印刷不能から印刷可能に復帰した場合には,サーバ300は第1の形態のプリンタ復帰処理と同様の処理を行う。
【0086】
すなわち,第2の形態では,サーバ300が,印刷データの保存先を見直す制御を行う。これにより,プリンタ個々に印刷データの保存先を見直す制御を行う必要がなく,プリンタ個々の負荷が第1の形態と比較して軽減される。一方で,第1の形態では,プリンタ個々に印刷データの保存先を見直す制御を行うことから,サーバ300が不要となる。
【0087】
以上詳細に説明したように本実施の形態のプリンタ100あるいはサーバ300は,ある印刷データの印刷実行エリア内に,その印刷データを保存するプリンタよりもその印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,さらにその印刷データを印刷可能な他プリンタが存在する場合,その印刷データを当該他プリンタに登録する。これにより,プリンタ同士の相対位置関係が変化した場合であっても,その変化に対応して,印刷データが印刷場所としてより好ましい場所に配置されているプリンタに記憶される。そのため,ユーザは,より好ましい場所で印刷物を手に入れることが期待できる。
【0088】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,プリンタは,印刷機能を備えるものであればよく,複合機や複写機であっても適用可能である。
【0089】
また,本実施の形態では,パネル操作によって,プリンタに記憶されている印刷データの印刷を開始しているが,これに限るものではない。例えば,モバイル端末装置からの印刷指令や,カードリーダ等の認証を契機に印刷を開始してもよい。
【0090】
また,本実施の形態では,自プリンタ設置処理および他プリンタ設置処理を,プリンタの場所が変更されたタイミングで実行しているが,これらの実行タイミングを限定するものではない。例えば,自プリンタ設置処理および他プリンタ設置処理を定期的に実行してもよい。また,ユーザ(プリンタあるいはサーバのメンテナンス者)による実行指示の入力を契機に実行してもよい。
【0091】
また,本実施の形態では,他プリンタに自プリンタの印刷データを送信した後,その印刷データを自プリンタのメモリから消去している,すなわち印刷データを移動させているが,印刷データを自プリンタのメモリから消去しなくてもよい。なお,消去しない場合には,複数のプリンタに印刷データが記憶されることになり,秘密性の低下が懸念される。そのため,秘密性を維持するためには,本実施の形態のように,他プリンタに記憶された印刷データを自プリンタのメモリから消去する方が好ましい。
【0092】
また,本実施の形態では,他プリンタへのデータ登録を許可する態様と許可しない態様とが選択可能であるが,この他,ユーザに問い合わせてデータ登録の可否を決定する態様を選択可能にしてもよい。
【0093】
また,本実施の形態では,印刷実行エリアを印刷データのヘッダ情報に直接記憶しているが,これに限るものではない。例えば,所有者ごとに印刷実行エリアが割り振られている場合には,その所有者と印刷実行エリアとを対応付けている情報をプリンタあるいはサーバが有し,印刷データのヘッダ情報には所有者情報を記憶し,印刷実行エリアを記憶しなくてもよい。すなわち,印刷データには印刷実行エリアを間接的に把握できる情報を記憶してもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 画像形成部
30 制御部
100 プリンタ
200 PC
300 サーバ
900 印刷システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データを記憶する記憶部と,
前記印刷データの印刷指示を受け付ける受付部と,
前記受付部が前記印刷データに対する印刷指示を受け付けたことを条件に,前記印刷データを印刷する印刷部と,
前記印刷データの印刷実行エリアを取得する取得部と,
前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内に,自装置よりも前記印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する優先判断部と,
前記優先判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合に,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する登録部と,
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷装置において,
前記印刷データを自装置で印刷不可であり,前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内にあって,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する代替判断部を備え,
前記登録部は,前記代替判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合にも,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載する印刷装置において,
前記登録部による前記印刷データの登録後,自装置が前記印刷データについて印刷不可から印刷可能に復帰した場合に,前記他の印刷装置から前記印刷データを消去する復帰制御部を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載する印刷装置において,
前記復帰制御部は,前記他の印刷装置で消去対象となる前記印刷データが自装置の記憶部に記憶されていないことを条件として,前記他の印刷装置から前記印刷データを消去する前に,前記印刷データを自装置の記憶部に記憶することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記印刷データが自装置で印刷不可であり,かつ,前記代替判断部にて他の印刷装置が存在しないと判断した場合,前記印刷データが印刷実行エリア内で印刷不可である旨を報知する報知部を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記印刷実行エリアは,任意の地点が特定された情報であり,
前記優先判断部は,前記地点からの距離が自装置よりも他の印刷装置の方が近い場合に,当該他の印刷装置を自装置よりも印刷する場所としての優先度が高いと判断することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記印刷実行エリアは,ユーザによって指定された場所であることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記印刷データの他の印刷装置への登録を許可するか否かを設定する設定部と,
前記設定部にて前記印刷データの他の印刷装置への登録が許可されていない場合に,前記登録部による前記印刷データの他の印刷装置への登録を禁止する禁止部と,
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記登録部にて前記印刷データを他の印刷装置に登録した場合,前記印刷データを前記記憶部から消去する消去部を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
印刷データを記憶する記憶部と,
前記印刷データの印刷指示を受け付ける受付部と,
前記受付部が前記印刷データに対する印刷指示を受け付けたことを条件に,前記印刷データを印刷する印刷部と,
前記印刷データの印刷実行エリアを取得する取得部と,
前記印刷データを自装置で印刷不可であり,前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内にあって,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する代替判断部と,
前記代替判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合に,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する登録部と,
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
印刷データを記憶し,前記印刷データに対する印刷指示を受け付けたことを条件に,前記印刷データを印刷する複数の印刷装置と,
各印刷装置を管理するサーバと,
を備える印刷システムにおいて,
前記サーバは,
前記印刷データの印刷実行エリアを取得する取得部と,
前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内に,前記印刷データを記憶する印刷装置よりも前記印刷データを印刷する場所としての優先度が高い場所にあり,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する優先判断部と,
前記優先判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合に,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する登録部と,
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項12】
印刷データを記憶し,前記印刷データに対する印刷指示を受け付けたことを条件に,前記印刷データを印刷する複数の印刷装置と,
各印刷装置を管理するサーバと,
を備える印刷システムにおいて,
前記サーバは,
前記印刷データの印刷実行エリアを取得する取得部と,
前記印刷データが前記印刷データを記憶する印刷装置で印刷不可であり,前記取得部によって取得した前記印刷データの印刷実行エリア内にあって,前記印刷データを印刷可能な,他の印刷装置が存在するか否かを判断する代替判断部と,
前記代替判断部にて他の印刷装置が存在すると判断した場合に,前記印刷データを当該他の印刷装置の記憶部に登録する登録部と,
を備えることを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−245691(P2012−245691A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119019(P2011−119019)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】