説明

印刷装置および印刷方法

【課題】ガラス基材やプラスチックフィルム、特に生産効率の良い長尺状のプラスチックフィルムなどの可撓性基材上へ、連続的に高精細パターンを形成する印刷装置及び方法を提供する。
【解決手段】インキ剥離性のフィルム基材301を供給する供給手段と、インキ液膜を塗工する塗工手段と、インキ液膜を予備乾燥させる乾燥手段と、予備乾燥インキ膜を得た後必要な画像部パターンを凹部とした凸版を予備乾燥インキ膜に接近させる版移動手段と、予備乾燥インキ膜に加圧し接触させることで非画像部を凸版の凸部に転移させて除去し、さらにインキ剥離性のフィルム基材301上に残された予備乾燥インキ膜による画像部パターンを目的の被印刷基材表面上へ加圧し転写する加圧手段303を備えた印刷装置において、加圧ロール111は軸回転運動だけでなく、軸直線運動も可能にする手段を具備する印刷装置及び印刷方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材やプラスチックフィルム、特に生産効率の良い長尺状のプラスチックフィルムなどの可撓性基材上へ、高精細パターンを連続的に形成する印刷装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイは、省エネルギー、省スペース、可搬性などの点から据え置き型、壁掛け型、携帯型の様々な用途の画像表示装置として利用されている。
【0003】
特に携帯型においては、携帯時に落下させても破損しないような耐衝撃性や、軽量化、薄型化などの点からプラスチック化への要求がある。また、壁掛け型においても円柱状の柱へのディスプレイの設置という点から可撓性のディスプレイへの要求がある。
【0004】
しかしながら、従来のフラットパネルディスプレイは、何れもガラス基板上に製造された物であり、プラスチック基板上に製造することは難しかった。
【0005】
その理由は、従来のフラットパネルディスプレイの部材の作製には高温での加熱工程とフォトリソ工程が含まれているためである。
【0006】
例えば、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターの製造にあたっては、感光性樹脂のパターニングにあたって、現像、洗浄、ベーキングなどの工程があり、プラスチック基板の熱による損傷や伸縮が生じてしまう。
【0007】
また、ディスプレイの駆動電極である薄膜トランジスタの製造工程では、シリコン半導体や、絶縁膜の形成には300℃以上の高温工程を含み、プラスチック基板の耐熱性を上回っていた。しかも、ガラス基板上にパターンを形成する場合であっても高温工程は大きなエネルギー負荷を伴う。
【0008】
また、フォトリソ工程は、製膜、露光、現像、剥離を材料毎に行うので、水やエネルギーの消費が大きい上、製造設備も大掛かりとなり、製造のコストが高い。
【0009】
以上のことから、プラスチック基材上への精密なパターニングが可能な印刷方法が求められており、併せて、ガラス等のリジッドな基板上への安価なパターニングをも可能にする印刷方法が望まれていた。
【0010】
印刷法の一つとして、インクジェット法が検討されている。インクジェット法は、所定の部分にのみ所定の材料をパターニングできることから材料の利用効率が高く、版も使用しないことから、もっとも簡便なパターニング方法として期待されている。
【0011】
しかしながら、現状のインクジェットのインク液滴の直径は数十μm程度であり、着弾精度も数μm程度ある。
【0012】
また、インクジェット法を用いて精密なパターニングをするためには、あらかじめ基板上にフォトリソ工程により隔壁を形成しなければならず、カラーフィルターのブラックマトリクスや印刷方式の薄膜トランジスタ配線などの10μm程度のパターンを形成する方法として、単独の方法としては採用することができない。
【0013】
インクジェット法以外の方法としては、スクリーン印刷法が挙げられる。スクリーン印刷法は、電子部品における配線や抵抗体、誘電体の印刷などで実用化されている。
【0014】
しかしながら、孔版印刷であることからインキはペースト状の高粘度のものに限られ、また、スクリーンメッシュの精細度から数十μm程度のパターンを厚膜で印刷する方法としては採用できても、10μm前後の高精細度のパターンを形成する方法としては、採用できない。
【0015】
そこで、インクジェット法およびスクリーン印刷法以外の方法として、フィルムへ乾燥インキ膜をあらかじめ設けた、いわゆるドライフィルムを熱圧によりパターン除去した後、残ったパターンを目的の基材に転写する転写方法が考案された(特許文献1参照)。
【0016】
しかしながら、フィルムからインキ層を転写する際に熱圧を用いるために、フィルム基材の膨張・収縮や版の膨張、インキ層の溶融・軟化を伴うことから、数十μm程度の微小なパターンの再現性を得る事が困難である。また、熱圧を均一に与える為の装置も複雑になり、大画面への対応も困難となってしまう。
【0017】
また、版胴に巻き付けたブランケット上にインキを塗工・予備乾燥してインキ膜を形成し、その後、非画像部パターンが形成された凸版をインキ膜に押圧して除去することによりブランケット上に残された画像パターンを形成し、最後に、ブランケット上に残された画像パターンを被印刷基材上に転写し、被印刷基材上に画像パターンを形成する印刷方法が試みられている。(特許文献2参照)
この方法は、インキ膜厚を調整することが容易である。この印刷法ではインキ剥離性のブランケット上に画像パターンを形成することから、被印刷基材へのインキ転写性が良好である。また、薄膜での微細パターン形成が可能である。
【0018】
しかしながら、特許文献2の方法は、シリコーンゴムまたはシリコーン樹脂からなるブランケット上でインキの予備乾燥を行う時に、ブランケット表面のインキ濡れ性や転写性が不安定になるという問題点を有していた。これはブランケットが版胴に固定されたまま乾燥を行うために均一な予備乾燥が困難であり、塗工されたインキ中の溶剤がブランケット内に吸収され不均一に膨潤していき、印刷処理時間の経過とともに、部分的な転写性や精度の変動とバラツキの増大が生じることが原因である。
【0019】
また、転写後のクリーニングやブランケットの乾燥による膨潤量の調整を転写毎に行う必要があるため、連続加工に不向きである。また、ブランケットが版胴に固定されているので、あるパターンが形成された基材上に転写する場合に、ブランケット上のパターンと基材上のマークとの位置合わせに制約が多く、不都合があった。
【0020】
このため、最近、インキ剥離性のフィルム基材上に、インキ液膜を塗工して設け、インキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を得た後、必要な画像部パターンを凹部とした凸版の凸部に非画像部を転移させて除去し、インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥インキ膜による画像部パターンを目的の被印刷基材表面上へ転写することを特徴とする印刷方式が提案されている。
【0021】
上記の新しい印刷方式の中で、インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥インキ膜による画像部パターンを、すでに他のパターンが設けられている被印刷基材表面に転写する際に、インキ剥離性のフィルムは透明な材質を使用し、被印刷基材とインキ剥離性のフィルムとを平行に近づけて、カメラ等の観察機器を用いてインキ剥離性のフィルム基材上に残された画像部パターンと被印刷基材表面にすでに設けられた他の画像もしくは孔等のマークとの位置合わせを行うことを特徴とした方法も提案されている。
【特許文献1】特開平9−90117号公報
【特許文献2】特開2001−56405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、前記のように被印刷基材とインキ剥離性のフィルムとを平行に近づけて、カメラ等の観察機器を用いてインキ剥離性のフィルム基材上に残された画像部パターンと被印刷基材表面にすでに設けられた他の画像もしくは孔等のマークとの位置合わせを行った後、加圧ロールによって画像部パターンを被印刷基材表面上に加圧し転写する際、加圧ロールを走行させるガイドの走り平行度が10μm(1mあたり)以下で走行させないと、画像部パターンが位置あわせを行った位置から回転方向もしくは平行方向にズレて転写され印刷精度が悪化することが問題となっている。
【0023】
加圧ロールのガイドの走り平行度を10μm(1mあたり)以下に保持するには、石で形成されたエアースライドガイドを使用すれば達成できるが、高価であるという問題がある。
【0024】
更に、加圧ロールのガイドの走り平行度が10μm(1mあたり)以下で達成されたとしても、その走行に対してインキ剥離性のフィルムの搬送を水平に合わせることは非常に困難である。
【0025】
本発明は加圧ロールのガイドの走り平行度が10μm(1m)以上で構成され、さらにインキ剥離性のフィルムの搬送が加圧ロールのガイドの走りに対して水平でなくても、画像部パターンが位置合わせを行った位置から回転方向もしくは平行方向にズレて転写されることなく、印刷精度を向上させることが可能な印刷装置および印刷方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明において上記課題を達成する為に、まず、請求項1の発明では、インキ剥離性のフィルム基材を供給する供給手段と、インキ液膜を塗工する塗工手段と、前記インキ液膜を予備乾燥させる乾燥手段と、予備乾燥インキ膜を得た後必要な画像部パターンを凹部とした凸版を前記予備乾燥インキ膜に接近させる版移動手段と、前記予備乾燥インキ膜に加圧し接触させることで非画像部を前記凸版の凸部に転移させて除去し、さらに前記インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥インキ膜による画像部パターンを目的の被印刷基材表面上へ加圧し転写する手段としての加圧ロールを備えた印刷装置において、前記加圧ロールは軸回転運動だけでなく、軸直線運動も可能にする手段を具備することを特徴とする印刷装置である。
【0027】
また、請求項2の発明では、前記加圧ロールの軸直線運動をエアースライダ、LMガイド、ブッシュ、ベアリング、ボールネジの少なくとも一種を用いて構成することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置である。
【0028】
また、請求項3の発明では、前記加圧ロールを任意の位置に戻す位置決め手段を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置である。
【0029】
また、請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置を用いた印刷方法である。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に係る発明によれば、加圧ロールによってインキ剥離性のフィルム基材上の画
像部パターンを被印刷基材表面上へ加圧し転写する際、加圧ロールの走行ガイドの走り平行度に依存することなく、加圧ロールは接触しているインキ剥離性フィルムに合わせて走行し加圧方向のみ力をかけることができるため、画像パターンが被印刷基材に対して回転方向もしくは平行方向にズレて転写されることのない、つまり印刷精度を向上させることが可能となる装置を提供できる。特に被印刷基材表面にすでに設けられた他の画像もしくは孔等のマークとの位置合わせを行い、重ね合わせを行う際には非常に有効である。
【0031】
請求項2に係る発明によれば、請求項1の加圧ロールの軸直線運動を簡易にもしくは低抵抗に行うことができるので、高精度を可能にする構成を提供できる。
【0032】
加圧ロールが請求項1または2に記載の機構を採用し、連続して走行を繰り返すと、加圧ロールの位置が初期の位置から微量ではあるが移動する可能性がある。請求項3に係る発明によれば、任意の位置に戻すことが可能であり、安定して連続生産に対応できる。
【0033】
請求項4に係る発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置を用いた印刷方法により、高精細、高精度の印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の印刷装置を実施の形態に沿って以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明の印刷装置の全体構成の一例を示す概要説明図である。図2は転写ズレの状況を模式的に示す説明図である。図3は加圧ロールの走行ガイドレールによる印刷精度悪化現象の原因を説明するための模式図である。図4は本発明の実施装置の形態を加圧ロールの関連を主に説明するための模式図である。
【0036】
次に図1にて本発明の印刷装置の一例を示し、被印刷基材が可撓性フィルムとした場合の印刷工程に従って説明する。
【0037】
インキ剥離性フィルム基材巻き出し部101、インキ剥離性フィルム基材巻き取り部107、被印刷基材巻き出し部108、被印刷基材巻き取り部110等のフィルム搬送部は、それぞれの芯を装着できるマウンターを備えたシリンダーと、回転やテンションを制御してフィルム基材を搬送するモータを備えている。
【0038】
塗工部102は、可動ステージ1022と、可動ステージ上に設けられたインキ剥離性フィルム基材に対しインキを塗布する塗工装置1021が設置される。塗工装置1021はボールネジやリニアモータ等で駆動させ、可動ステージに対して、水平方向に水平を保ったまま往復運動を安定させる。更に剥離性フィルム基材を吸着することができるテーブル(図示せず)を可動ステージ上に備え、このテーブルは吸着孔か多孔質材料による吸着方式を用いる。また、フィルム搬送の際には、可動ステージ1022が下降することでフィルムの干渉を防ぐことができる構成である。本図例ではダイヘッド方式の塗工装置を図示しているが、塗工方式はその限りではない。
【0039】
乾燥部103は、上記塗工部102でインキ剥離性フィルム基材へ塗工したインキを予備乾燥させるために設置される。
【0040】
非画像部のインキ膜を除去するための凸版(パターン除去版)104は版移動手段112に連結して設置されており、インキ剥離性フィルム基材上の塗工インキ膜に前記凸版104を近づけることができ、更に版移動手段は印刷部106上から凸版(パターン除去版)104を退避させることも可能である。
【0041】
加圧ロール111はインキ剥離性フィルム基材上をガイドとアクチュエータにより走行できる。初めに、インキ剥離性フィルム基材上から凸版104に向けて加圧することで、インキ剥離性フィルム基材上の非画像部のインキを凸版104に転移させて取り除き、残された画像部パターンをインキ剥離性フィルム基材上に形成する。その後、凸版104を版移動手段112により印刷部106上から退避させる。被印刷基材としての可撓性フィルム上にインキ剥離性フィルム基材上の該画像部パターンを転写させるために加圧ロール111を再度作動させるが、この際の転写ズレ、すなわち被印刷基材との位置合わせが加圧、転写の工程でずれてしまうことを本発明により防ぐことができる。なお、加圧ロール111は金属やゴム等で構成されることが一般的であるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
アライメントカメラ部105を使用することで、インキ剥離性フィルム基材上に形成された画像部パターンと可撓性フィルムの被印刷基材上にすでに形成されたパターンとを重ね合わせることが可能となる。この場合、カメラの有効感度を与える光の波長に対して、インキ剥離性フィルム基材は透明である。
【0043】
インキ剥離性フィルム上のインキを他に転移または転写させる工程において、インキ剥離性フィルム基材と凸版104もしくは印刷部106はわずかな隙間をあけて位置決めし、加圧ロール111の押圧転動により、転移または転写させる。
【0044】
被印刷基材乾燥部109は被印刷基材上に転写されたパターンを乾燥させるために設けられる。
【0045】
一連の動作を通して説明する。まずインキ剥離性フィルム基材巻き出し部101より繰り出されたフィルム上に塗工部102でインキ膜を形成し、乾燥部103にて予備乾燥を行い、予備乾燥されたインキ膜をパターン除去のための凸版104上まで繰り出す。そしてインキ膜にパターン除去の凸版104を版移動手段112により一定の距離を設けて接近させ、加圧ロール111により、予備乾燥されたインキ膜をパターン除去の凸版104に接触させる。その後、剥離することで、インキ剥離性フィルム基材上の予備乾燥インキ膜はパターン除去の凸版104の凸部に転移され、インキ剥離性フィルム基材上に画像部パターンが残されて形成される。次に版移動手段112によりパターン除去の凸版104を退避させ、被印刷基材を画像部パターンが形成されたインキ剥離性フィルム基材の表面に接近させる。このとき被印刷基材上にすでに形成されたパターンがある場合は、アライメントカメラ部105にて孔もしくはパターンにて位置合わせを行い、加圧ロール111にて加圧し、被印刷基材上にパターンを転写させることができ、半乾燥状態の転写済みパターンを被印刷基材乾燥部109にて乾燥させて被印刷基材上にパターンを固着することが可能となる。
【0046】
このような工程を経てパターンを得る印刷方法において、加圧ローラ111の走行に歪みが発生すると、アライメントカメラ部105で位置合わせを行った後であっても、アライメントカメラ部105で合わせた位置ではなく、回転方向もしくは平行方向にズレて転写されてしまい、印刷精度が悪化する現象が起きる。
【0047】
図2は転写ズレの状況を模式的に示す説明図である。例えばアライメントマーク201にアライメントカメラ部で合わせて転写した場合、ズレがある場合、転写位置202に転写されることを示しており、アライメントマーク201に対して、転写位置202の位置をズレ量として定義する。このズレ量は高精細パターンになるほど許容値は厳しくなり、水平垂直方向に数μm以下に低減させねばならない。
【0048】
ズレの主な原因は3つ考えられる。1つ目はアライメントカメラ部から出力される画像を認識し、被印刷基材を位置合わせするアクチュエータの機械誤差、2つ目はテンションによる剥離性フィルムの伸び、3つ目は加圧ロールの走行ガイドレールの走り平行度に依
存するものである。
【0049】
本発明は加圧ロールの走行ガイドレールの走り平行度が与えるズレを低減することに関する発明である。
【0050】
図3に加圧ロールの走行ガイドレールによる印刷精度悪化現象の原因を模式図により説明する。
まず、加圧ロール部の構成の図3(c)の正面図で説明する。加圧ロール111は加圧機構303に接続されており、加圧機構303の動作により加圧ロール111を押し下げることによって、インキ剥離性フィルム基材301上から加圧し、パターン形成されたインキ膜304を被印刷基材305に転写する。加圧機構303は、例えばエアシリンダやトルクモータを使用する。加圧直前には、インキ剥離性フィルム基材301と被印刷基材305の間に数十μmから数百μmの間隔が設けられており、加圧されたインキ剥離性フィルム基材301の部分は被印刷基材305に接触させることができる。更に加圧ロール111をパターン転写範囲にわたって加圧ロールの走行ガイドレール302に沿って走行させることによって、パターンを全て被印刷基材305に転写することができる。
【0051】
図3(a)はガイド走り平行度が0の理想的な場合の上面図、図3(b)はガイド走り平行度が0でない実際の場合の上面図である。図3(a)のように加圧ロールの走行ガイドレール302が平行度0の理想的な場合、加圧ロール111は真直ぐ進むことができるため転写ズレは少なくなる。しかしながら図3(b)のように加圧ロールの走行ガイドレール302の走り平行度が0でない実際の場合は、加圧ロールは図の太い矢印ように歪んで動くため、インキ剥離性フィルム基材301を歪めながらパターンを転写することになる。これにより図2に示すような転写ズレが発生する。
【0052】
この加圧ロールの走り平行度は走行距離が長くなるにつれて、大きくなる傾向をとり、更に走行ガイドレールの走り平行度を0とすることは、事実上不可能と考えられる。
【0053】
図4に本発明の一例を模式的に示す。
【0054】
図3(b)のように加圧ロール111がインキ剥離性フィルム基材301上を歪んで動くという問題を解決するため、図4(b)に示すように加圧ロール111の軸の支持部にブッシュ401を設置し、回転運動だけでなく軸直線運動つまりは加圧ロールの自由な動き403を持たせることで、図4(a)に示すように加圧ロールの走行ガイドレール302の走り平行度が0でない場合でも、加圧ロール111は走行ガイドレールの曲がりに影響を受けずに走行できるため、インキ剥離性フィルム基材301を歪めることなく走行でき、転写ズレを無くすことが可能となる。
【0055】
また連続して加圧させる場合は加圧ロールが自由に動くため、初期位置ではなくなる。よって一度、加圧ロール111を持ち上げ、軸の端をセンタリング機構402で任意の位置に戻す位置決め手段を具備することにより、初期位置に戻す動作を行うことができ、連続して安定した加圧を行うことが可能となる。センタリング機構402は、一般的にエアーシリンダを駆動部分に使用する。
【0056】
本説明ではブッシュ401を用いているが、エアースライダ、LMガイド、ベアリング、ボールネジの少なくとも一種を用いて、ブッシュに代替することにより、加圧ロールの軸直線運動を可能にする手段とすることも可能である。
【0057】
本発明により、転写時のズレ量を低減させることが可能となり、高精度なパターニングを安定して行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の印刷装置は、ガラス基材やプラスチックフィルム等に印刷することが可能であるため、カラーパターン、ブラックマトリックス、ホワイトマトリックス、スペーサー、等のカラーフィルターの部材、ゲート電極、ソース電極、ドレン電極、ゲート絶縁膜、有機半導体材料等のトランジスタ部材、有機発光層等の有機ELの製造装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の印刷装置の全体構成の一例を示す概要説明図である。
【図2】転写ズレの状況を模式的に示す説明図である。
【図3】印刷精度悪化現象の原因を説明するための模式図である。(a)ガイド走り平行度が0の場合の上面図(b)ガイド走り平行度が0でない場合の上面図(c)加圧ロール部の正面図
【図4】本発明の実施装置の形態を加圧ロールの関連を主に説明するための模式図である。(a)本発明実施形態の上面図(b)本発明実施形態の正面図
【符号の説明】
【0060】
101…インキ剥離性フィルム基材巻き出し部
102…塗工部
103…乾燥部
104…凸版(パターン除去版)
105…アライメントカメラ部
106…印刷部
107…インキ剥離性フィルム基材巻き取り部
108…被印刷基材巻き出し部
109…被印刷基材乾燥部
110…被印刷基材巻き取り部
111…加圧ロール
112…版移動手段
201…アライメントマーク
202…転写位置
301…インキ剥離性フィルム基材
302…加圧ロールの走行ガイドレール
303…加圧機構
304…パターン形成されたインキ膜
305…被印刷基材
401…ブッシュ
402…センタリング機構
403…加圧ロールの自由な軸直線運動の動き
1021・・・塗工装置
1022・・・可動ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ剥離性のフィルム基材を供給する供給手段と、インキ液膜を塗工する塗工手段と、前記インキ液膜を予備乾燥させる乾燥手段と、予備乾燥インキ膜を得た後必要な画像部パターンを凹部とした凸版を前記予備乾燥インキ膜に接近させる版移動手段と、前記予備乾燥インキ膜に加圧し接触させることで非画像部を前記凸版の凸部に転移させて除去し、さらに前記インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥インキ膜による画像部パターンを目的の被印刷基材表面上へ加圧し転写する手段としての加圧ロールを備えた印刷装置において、前記加圧ロールは軸回転運動だけでなく、軸直線運動も可能にする手段を具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記加圧ロールの軸直線運動をエアースライダ、LMガイド、ブッシュ、ベアリング、ボールネジの少なくとも一種を用いて構成することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記加圧ロールを任意の位置に戻す位置決め手段を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置を用いた印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−214314(P2009−214314A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57530(P2008−57530)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】